説明

穿刺システム

本発明は次のような穿刺システムに関する。すなわちこの穿刺システムは、複数のランセット4を搭載するランセットキャリアテープ3と、このランセットキャリアテープ3を1つの搬送方向に搬送経路にそって搬送し、それによりランセットキャリアテープ3のランセット4を順次穿刺位置に運ぶための搬送装置5、11、17と、穿刺位置に位置するランセット4を穿刺運動させるための穿刺アクチュエーター6とを備える。本発明は次のことを意図する。すなわち、穿刺運動の際、穿刺アクチュエーター6が、穿刺位置に運ばれたランセット4を、ランセットキャリアテープ3のうち当該ランセット4を搭載する部分と共に、穿刺方向に動かす。そして、1つのランセット4が穿刺位置に運ばれたのち、搬送装置5、11、17のうち搬送方向に見て穿刺位置背後に位置する少なくとも一部分が、当該ランセット4の穿刺運動前、または穿刺運動中に、1つの運動を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次のような穿刺システムに関する。すなわち、複数のランセットを備えるランセットキャリアテープと、ランセットキャリアテープを1つの搬送方向に搬送経路にそって搬送し、ランセットキャリアテープのランセットを順次穿刺位置に運ぶための搬送装置と、穿刺位置にあるランセットを穿刺運動させるための穿刺アクチュエーターとを備える穿刺システムである。この種の穿刺システムは、たとえば独国特許第2803345号明細書から知られている。
【背景技術】
【0002】
この公知の穿刺システムの場合、ランセットキャリアテープは、このテープの穴を貫通するピンに把握されて、穿刺のため捕捉され、次にランセットはテープの横方向にスライドされる。
【0003】
この公知の穿刺システムの欠点は、その機構の複雑さである。そのためランセットそのほかのシステムコンポーネントの寸法を、非常に大きくしなければならなくなる。
【発明の概要】
【0004】
したがって本発明の課題は、ランセットキャリアテープを用いる穿刺システムとしてコンパクトかつ安価なものをいかにして得るか、その方法を示すことである。
【0005】
この課題は、請求項1に記載する特徴を持つ穿刺システムによって解決される。本発明の有利な発展形を、従属請求項に記載した。この課題はそのほか、請求項12に記載の特徴を持つ穿刺システムによっても解決される。
【0006】
本発明による穿刺システムの場合、穿刺位置に運ばれたランセットが、ランセットキャリアテープの当該ランセットを載せた部分と共に、穿刺方向に動かされる。ランセットキャリアテープを捕捉して、ランセットをテープに対して相対的に変位させる複雑な措置は、したがって省かれる。しかし、穿刺の際にランセットをランセットキャリアテープと共に穿刺方向に動かすという本発明による措置には、1つの問題が生じる。すなわち、ランセットキャリアテープをデバイスハウジングに対して相対的に動かすことが可能でなければならない、という問題である。この場合ランセットキャリアテープを裂いてはならない。とくに穿刺の苦痛をできるだけ少なくするためには、ランセットキャリアテープを、穿刺されるランセットと共に、非常に迅速に動かさなければならない。
【0007】
本発明はこの問題を次のようにして解決する。すなわち、ランセットが穿刺位置に運ばれたのち、このランセットの穿刺運動前または運動中に、搬送装置のうち、搬送方向に見て穿刺位置の後ろに配置された少なくとも一部分が、1つの運動を行うようにする。
【0008】
たとえばこの搬送装置は巻取装置を備え、この巻取装置はまず、ランセットを穿刺位置に運ぶ正回転工程を行い、その後、穿刺運動のため、穿刺位置に運ばれたランセットテープを巻取装置から巻き戻す逆回転工程を行う。
【0009】
正回転工程の際、ランセットは穿刺位置に引かれ、テープもまた緊張する。つづく逆回転工程によってテープは巻取装置から引き出され、穿刺運動に十分なテープ長さが得られる。この場合、逆回転工程を穿刺運動開始前に行って、穿刺位置と巻取装置間のランセットキャリアテープを緩め、テンション解除することができる。そうすると、ランセットを穿刺位置で支持するテープ部分を、穿刺運動の際、巻取装置に対して相対的に問題なく動かすことができる。逆回転工程はこのような場合、巻取装置を逆方向に駆動することによって行うことができる。
【0010】
この逆回転工程を穿刺運動中に行うこともできる。たとえば正回転工程の際に巻取装置を駆動するため巻取装置と結合される駆動エレメントを、逆回転工程のため、巻取装置から結合解除することができる。そうすると巻取装置は自由に動いて、穿刺運動中に引っ張られても逆回転によってそれにしたがうことができ、穿刺運動に必要なテープ長さが自由になる。駆動エレメントは、たとえば切替クラッチ、たとえばフリーホイールのような自動切り替えするクラッチとすることができる。この切替クラッチは、正回転のためのトルクを巻取装置に伝達するが、逆回転の際には結合解除されるので、巻取装置は自由に逆方向に回転できる。外部切替方式のクラッチ、たとえば穿刺アクチュエーター装置を作動すると開く爪クラッチを用いることも可能である。
【0011】
搬送装置の上記少なくとも一部分の本発明による運動は、たとえばテープ案内エレメントによっても行うことができる。このエレメントは、搬送経路の曲がり箇所に配置され、このエレメントを回ってランセットキャリアテープが曲げられる。このようなテープ案内エレメントは、搬送装置の一部として、1つの運動によってテープの曲げを軽減し、穿刺運動のためのテープ長さをあたえる。好ましくは穿刺位置は、2つの可動型テープ案内エレメントの間に位置し、これらエレメントを回ってランセットキャリアテープが曲げられるものとする。
【0012】
好ましくは上記少なくとも1つのテープ案内エレメントは、次のような第1の位置と第2の位置の間を動くことができるものとする。第1の位置とは、ランセットキャリアテープが、第1の曲げ角度でテープ案内エレメントを回って曲げられている位置である。第2の位置とは、ランセットキャリアテープが、上記より少なく曲げられ、またはまったく曲げられていない位置である。そしてこのテープ案内エレメントは、ランセットが穿刺位置で位置決めされたのち、第2の位置に向かって動かすことができる。
【0013】
テープ案内エレメントの本発明によるこの可動性は、たとえばこのエレメントを変位可能な状態で軸受することによって得られる。この方法によれば、テープ案内エレメントは、スプリング力に対抗する変位運動によって、穿刺運動によって高くなったテープテンションにしたがうことができる。
【0014】
搬送装置の上記少なくとも一部分の本発明による運動は、次のような旋回運動とすることもできる。すなわちこの旋回運動は、たとえば穿刺運動の際に2本の旋回アームによって行われ、これらのアーム間に穿刺位置があり、またアームそれぞれテープ案内エレメントを1つずつ持つ。このテープ案内エレメントは、搬送経路の曲がり箇所に配置され、このエレメントを回ってランセットキャリアテープが曲げられている。
【0015】
たとえば両者旋回アームは、それらテープ案内エレメントによってU字形のテープ案内を生じることができる。このテープ案内は、穿刺の際に、穿刺方向に直角に方向付けされた1つのジオメトリー的な軸を中心に旋回される。ここで穿刺するランセットを載せるテープ部分は、穿刺運動を、旋回運動として、または線形運動として行うことができる。
【0016】
ランセットは、ランセットキャリアテープ上で、好ましくはこのテープの長手方向を横切って方向付けされているものとする。ランセットキャリアテープ上の各ランセット間には、ランセット穿刺によって得られた体液サンプルを検査する試験フィールドを配置することができる。そうすれば体液サンプル採取のため、試験フィールドを穿刺位置に運んで、穿刺アクチュエーターを穿刺運動のために用いることができる。この穿刺運動によって、試験フィールドは、それ以前にランセット穿刺によって生じていた穿刺傷に動かされる。
【0017】
ランセットキャリアテープは、ランセット穿刺の際に穿刺アクチュエーターによって動かされるが、その際、穿刺するランセットとランセットキャリアテープが、結合されたままとなるのが好ましい。ランセットキャリアテープは、穿刺運動の際、穿刺方向前側のテープ長手周縁に作用する曲げ装置によって曲げられ、その結果として、ランセットの先端はランセットキャリアテープから突出するのが好ましい。この場合ランセットは、テープ先端の反対側に当たる穿刺方向後ろ側の部分によって、穿刺運動の間全体を通じて、ランセットキャリアテープにとどまる。
【0018】
この搬送装置は、好ましくは1つの巻取装置を備え、この巻取装置は、ランセットキャリアテープを工程動作として巻き取ることによって、ランセットを順次穿刺位置に運ぶ。この穿刺運動は、巻取装置の回転の軸となるジオメトリー的な軸に平行して、またはこの軸に垂直に行うことができる。
【0019】
しかし穿刺運動に必要なランセットキャリアテープの可動性は、逆回転工程を用いないで生じることもできる。そのためには、請求項12に記載するように、穿刺運動時に弾性伸長するランセットキャリアテープを用いる。穿刺運動の際、ランセットキャリアテープのうち、穿刺位置と巻取装置の間にある部分の長さが変化する。この長さ変化は、上記段落に記載した通り、巻取装置からランセットキャリアテープを引き出すことによって生じることができ、またはランセットキャリアテープの弾性伸長として行うことができる。
【0020】
本発明のそのほかの詳細と利点を、実施例を用い、添付の図面に関連付けしながら説明する。ここで説明する各特徴は、個別にまたは組み合わせとして、特許請求範囲の対象物とすることができる。添付の各図面で、同じ部品および、たがいに相当する部品には、同じ符号を付した。図面の示す内容は下記の通り:
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】穿刺運動前における1つの実施例を模式的に示す。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の実施例であって穿刺運動実行時のものを示す図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】穿刺運動前におけるもう1つの実施例を模式的に示す図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】図5の実施例であって穿刺運動実行時のものを示す図である。
【図8】図7の側面図である。
【図9】穿刺運動前におけるもう1つの実施例を模式的に示す図である。
【図10】図9の実施例であって穿刺運動実行時のものを示す図である。
【図11】穿刺運動前におけるもう1つの実施例を模式的に示す図である。
【図12】図11の側面図である。
【図13】図11の実施例であって穿刺運動実行時のものを示す図である。
【図14】図13の側面図である。
【図15】穿刺運動前におけるもう1つの実施例を模式的に示す図である。
【図16】図15の側面図である。
【図17】図15の実施例であって穿刺運動実行時のものを示す図である。
【図18】図17の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、穿刺システム1の実施例を、ハウジング2が開放された形で模式的に示す。穿刺システム1には、複数のランセット4を載せているランセットキャリアテープ3が属し、これらランセットは、テープ3の長手方向を横切って配置されている。この実施例では駆動されるローラーとして形成されている巻取装置5を用いて、ランセットキャリアテープ3を巻き取り、その際テープの長手方向に動かすことができる。その結果、ランセットキャリアテープ3のランセット4は、順次穿刺位置に到着し、この位置で、ランセットを載せているテープ部分を、穿刺アクチュエーター6によって、穿刺運動のため加速することができる。これは、図1の側面図である図2に示すように、ハウジング開口16にあてがわれた身体部分7に穿刺するためである。
【0023】
ランセットキャリアテープ3は、図示の実施例の場合、音声テープカセットと同様に、供給ローラー8に巻き取られていて、このローラーから引き出され、工程動作として、巻取装置5の駆動されるローラーに巻き取られる。ランセットキャリアテープ3は、交換可能な状態で、穿刺デバイスのハウジング2に、たとえばカセットの一部として収めることができ、または1つのデバイスに組み込んで固定することができる。このデバイスは、ランセットキャリアテープ3のランセット4が消費されると、ただちに規則にのっとって廃棄される。供給ローラー8の代わりに、たとえばランセットキャリアテープ3をジグザグに畳んでスタックとし、このスタックを用いることもできる。
【0024】
テープ搬送の際、ランセットが穿刺位置に達する前に、ランセットキャリアテープ3はランセット4とともに、方向変換装置10aを通過し、この方向変換装置はランセットキャリアテープ3に90°のねじりを生じる。ランセット4の使用後、キャリアテープ3の該当部分は第2の方向変換装置10bを通過し、この装置によって、キャリアテープはふたたびねじられて、当初の方向付けに戻される。ランセットキャリアテープ3は、この経路において案内エレメント11によって案内されるが、穿刺位置はこれら案内エレメントの間に位置する。好ましくは案内エレメント11は、ピンとして形成されるものとする。できるだけ摩擦の少ないテープ搬送を可能とするために、ローラーを用いることも可能である。
【0025】
巻取装置5、案内エレメント11、方向変換装置10a、10bは、この実施例では搬送装置を形成し、この搬送装置によって、ランセットキャリアテープ3が1つの搬送方向に搬送経路にそって搬送されて、ランセットキャリアテープ3のランセット4を順次穿刺位置に運ぶ。
【0026】
図2は図1の模式的な側面図であって、ハウジング開口16にあてがわれた身体部分7、すなわち指が記載されている。体液サンプルを得るため、この指に穿刺傷を生じさせたい。
【0027】
巻取装置5の正回転工程の際、ランセット4が図1の穿刺位置に到達するまで、ランセットキャリアテープ3を長手方向に動かす。たとえばランセット4は、キャリアテープ3上に突起を形成し、ランセット4が穿刺位置に到達すると、この突起は、穿刺アクチュエーター6の結合ヘッド6aのストッパーに突き当たる。たとえばこの結合ヘッド6aは、2つの相互間に動くことができるクランプ面から形成することができる。これらクランプ面の間には、開放位置にあるとき空隙が存在し、ランセットキャリアテープ3はこの空隙を通って案内される。このときランセット4は、穿刺位置で空隙の狭い箇所に衝突する。穿刺の際、結合ヘッドの両者クランプ面は圧縮されて、ランセット4とランセットキャリアテープ3とを確実に捕捉する。穿刺ののち、クランプ面はたがいに離されるので、空隙は広く開放されて、今は使用済みのランセット4は空隙を通過することができる。
【0028】
巻取装置5は駆動エレメント9によって駆動され、この駆動エレメントは、巻取装置ローラーの正回転の際、巻取装置5と結合する。この正回転は、ランセット4を穿刺位置に位置決めするために行われるものである。図示の実施例の場合、駆動エレメント9は歯車であって、この歯車は、正回転のためのトルクを巻取装置5に伝達するが、穿刺運動の際には巻取装置5から結合解除されるので、巻取装置は自由に逆回転できる。
【0029】
駆動エレメント9は、図1では、巻取装置5と結合された位置にあるものが示され、図3では、結合解除された位置にあるものが示されている。駆動エレメント9は駆動ヘッド6aと、ここに示す実施例では1本のロッドを介して結合する。そして穿刺の際には、穿刺方向に動かされる。駆動エレメント9は、歯車として、より正確には円筒形歯車として形成され、結合位置においてはラック13に、そして図3に示す巻取装置5の駆動歯車14に接触する。巻取装置5の駆動歯車14は、ラック13のそばにあるので、駆動エレメントはラック13のみならず駆動歯車14とも結合する。
【0030】
ランセット4を穿刺位置に位置決めするため巻取装置を作動するには、ハウジング2から突出するラック13を、ユーザーが内側に押し込む。ラック13の運動は、駆動エレメント9とここには示さない巻取装置5の駆動歯車とを介して、巻取装置に伝達されるので、巻取装置は回転する。穿刺の際には、駆動エレメント9は、結合ヘッド6aと共に穿刺方向に動かされ、このようにしてラックと巻取装置の駆動歯車とから離れる。その結果、駆動エレメントは巻取装置5から結合解除され、巻取装置を自由に回転させることができる。
【0031】
穿刺運動の際、正回転のため巻取装置5と結合されている駆動エレメントは、巻取装置5から結合解除されるので、巻取装置5は逆方向に自由に回転することができる。したがって穿刺運動の際、ランセットキャリアテープ3は、供給ローラー8からも巻取装置5からも引き出され、このようにして、穿刺運動時に行われるストロークに十分な可動性を得る。
【0032】
ラック13はそのほか、穿刺アクチュエーター6のここには図示しない駆動バネにテンションをかけるためにも用いられる。このため穿刺アクチュエーター6のここには図示しない駆動エレメントが、ラック13の歯と噛み合う。
【0033】
巻取装置5は、スリップクラッチを介して駆動エレメント9と結合すする。このようにしてラックを、常に同一経路でデバイスハウジング2の中へ押し込むことができる。ランセット4が穿刺位置に到達すると、ただちにテープ3は停止され、スリップクラッチは巻取装置5を、ラック13のさらなる運動から結合解除する。
【0034】
図3は、図1の実施例が穿刺運動にあるもの、すなわち穿刺アクチュエーターが最大ストロークとなり運動が方向転換点にあるものを示す。その側面図が図4である。
【0035】
図示の実施例の場合、穿刺運動の際に両者案内エレメント11もまた穿刺方向に共に動かされる。この措置には、テープ3の可動性が向上されて、体液サンプル採取のための穿刺運動を、できるだけ迅速かつ苦痛を少なく行うことができるという利点がある。
【0036】
穿刺運動の際、穿刺方向前側のテープ3長手周縁が曲げられるので、穿刺するランセット4の先端がテープ3から突出し、デバイス開口9にあてがわれた身体部分7に、テープ3に妨げられることなく差し込まれることができる。テープ3の長手周縁の曲げは、たとえば穿刺位置の横に配置された斜面12によって、たとえば1つの段付部によって、生じることができる。その結果、このテープ周縁は、穿刺運動の際に斜面に当たって向きを曲げられる。斜面12を持つこれに適した曲げ装置を、図2および4に示す。図1および3では、単純化のためこの曲げ装置を省略する。
【0037】
ランセットキャリアテープ3は、ランセット4の間に、ランセット穿刺によって得られた体液サンプルを検査するための試験フィールド14を搭載する。穿刺ののち、巻取装置5は、試験フィールド14を穿刺位置に運ぶため、さらに正回転工程を行う。つづいて穿刺アクチュエーター6の結合ヘッド6aがさらなる穿刺運動を行い、その際、試験フィールド14は、体液サンプル採取のため、ハウジング開口9にあてがわれた身体部分7の穿刺傷まで動かされる。この穿刺傷は、それ以前にランセット穿刺によって生じられたものである。この穿刺運動の際、巻取装置5は、ランセット4が行う穿刺運動の場合と同様、逆回転工程を行って、必要なテープ可動性を生じる。
【0038】
試験フィールド14によるサンプル採取後、巻取装置5はさらなる正回転工程を行う。これは、採取された体液サンプルを含む試験フィールド14を検査位置に動かすためであって、この検査位置で、体液サンプルは穿刺システムの測定装置15によって検査される。たとえば試験フィールド14は、検出試薬を含むものとすることができ、この検出試薬は、体液サンプルに含まれる検体と反応して、その際に変色を生じる。この変色を、検体濃度、たとえばグルコース濃度を測定するため、測光によって評価することができる。測定装置15は、測光測定装置として形成し、この測定装置に濃度測定のための評価ユニットを組み込むことができる。検査結果は、デバイスハウジング2の外部に配置されたディスプレイ装置、たとえば液晶ディスプレイに表示することができる。
【0039】
図5〜8は、穿刺システムのもう1つの実施例を模式的に示す。この実施例が前記の実施例と異なるのは、巻取装置5の回転の中心となるジオメトリー的な回転軸と平行に、穿刺運動が行われる点である。この実施例の場合、穿刺症を生じさせたい身体部分7が、ハウジング2の上面に配置されたハウジング開口16にあてがわれるが、図1〜4の実施例の場合、対応するハウジング開口16は、狭い方の面に存在する。したがってランセットキャリアテープ3をねじるための方向変換装置は、図5〜8の実施例の場合存在しないので、テープ案内はそれに応じて単純となる。
【0040】
またこれらの実施例を前記の実施例と同様に形成し、とくに巻取装置5からは、逆回転工程によって、穿刺運動の際のテープ可動性が得られるようにすることもできよう。
【0041】
しかし図5〜8に模式的に示した実施例の場合、穿刺運動のためのテープ可動性は、案内エレメント11の運動によって得られる。図5には、第1の位置にある案内エレメント11を示した。この位置で、ランセットキャリアテープ3は、曲げ角度70°〜110°、好ましくは90°で、案内エレメント11を回って曲げられている。新しいランセット4を穿刺位置に運ぶため、ランセット供給テープ3が搬送方向に動かされるとき、案内エレメント11はこの第1の位置にある。
【0042】
図7は、第2の位置にある案内エレメント11を示す。この位置で、ランセット供給テープ3は、上記より小さい曲げ角度で、案内エレメント11を回って曲げられている。その違いを分かりやすくするため、図7ではさらに、第1の位置にある案内エレメント11をも示した。穿刺の際、案内エレメント11は第2の位置にある。
【0043】
案内エレメント11は変位可能に支承されているので、第1と第2の位置間を動くことができる。案内エレメント11をバネと結合し、このバネは、第1の位置から第2の位置の方向への変位の際、復元力を生じるようにすることができる。テープのテンションが高くなる場合、とくに穿刺運動の結果として高くなる場合、案内エレメント11は第2の位置に向かって変位を生じる。この第1および第2の位置は、この場合極値位置を形成し、これらの位置が取られることはきわめてまれであるか、まったくない。なぜならば、テープ搬送の場合でも、わずかなテンションが存在する可能性があり、このテンションだけでも第1の位置からのわずかな変位が生じるからである。
【0044】
案内エレメント11を第1と第2の位置間で能動的に動かして、穿刺運動のためのテープの可動性を得ることもできる。たとえば、ランセット4が穿刺位置に到達しているが、まだ穿刺が開始されないとき、案内エレメント11を、アクチュエーターによって第1の位置から第2の位置に動かすことができる。
【0045】
上記の可動型テープ案内エレメント11は、逆回転可能な巻取装置の代わりに、図1〜4の実施例に記載するようなテープ案内にも用いることができる。
【0046】
可動型のテープ案内エレメント11の利点は、巻取装置5に逆回転防止装置を設けることができる点である。図1および3に示すようなラック13を、スリップクラッチを介して巻取装置5に結合することも可能であって、さらに容易である。
【0047】
図5〜8の実施例の場合、摩擦トルクを最小限に抑えるため補足的な措置として、案内エレメント11が穿刺方向にも動くことができるようにする。そのためには、案内エレメント11をスリーブとして形成し、このスリーブが穿刺方向に変位可能に支承され、たとえばベアリングピンに支承されて、テープ搬送時にスリーブがこのベアリングピンを中心に回転できれば、好都合である。
【0048】
図示を単純化するため、穿刺アクチュエーター6と巻取装置5の駆動装置の細部を、図5〜8では示さなかった。これらの細部は、原則として、前記実施例と同様に形成することができる。
【0049】
図9および10は、穿刺システムのもう1つの実施例を示す。この場合、穿刺方向は、図5〜8の実施例と同様に、巻取装置5がランセットキャリアテープ3を巻き取る際、その回転の中心となるジオメトリー的な軸と平行なものとする。この搬送装置は2つの旋回アーム17を備え、これら旋回アームの間に穿刺位置が決まり、またこれら旋回アームはそれぞれテープ案内エレメント11を1つずつ搭載する。このテープ案内エレメントは搬送経路の曲がり箇所に配置され、このエレメントを回ってランセットキャリアテープ3が曲げられる。穿刺運動の際には、旋回アーム17が旋回運動を行い、その際図9に示した位置から図10に示した位置に到達する。
【0050】
テープ案内エレメント17は、この実施例の場合、前記実施例の場合と同様に形成することができる。たとえば、テープ案内エレメントを湾曲した案内面として形成し、この案内面にランセットキャリアテープ3が接触し、そしてこの案内面は搬送方向に延びるものとすることもできる。
【0051】
2つの旋回軸17は、それぞれの末端を結合され、したがって1つの馬蹄形フレームを形成することができる。しかしこれら旋回軸17は、たがいに接触しないのが好ましい。図示の実施例の場合、これら旋回軸17の間に、穿刺位置と結合ヘッド6aが位置する。そして結合ヘッド6aは、穿刺位置に運ばれたランセット4を、ランセットを載せたテープ部分を把握するが、しかし前記実施例と同様に線形運動する。
【0052】
旋回アーム17の旋回運動は、穿刺方向に垂直に方向づけられたジオメトリー的な軸を中心に行われる。
【0053】
図9および10の実施例は1つのテープカセットであって、このテープカセットは、ランセットキャリアテープ3と、穿刺アクチュエーター6の結合ヘッド6aとを含む。このテープカセットが、穿刺デバイスの適当する収納スペースに規定通りに挿入されると、穿刺デバイスの穿刺アクチュエーター6は、図示のテープカセットの結合ヘッド6aに連結される。穿刺デバイス6は、挿入されたテープカセットを巻取装置5に連結するアクチュエーター、テープの長手周縁を曲げるための曲げ装置などをも含む。
【0054】
図示のテープカセットは、それに適した穿刺デバイスとともに、1つの穿刺システムを形成する。ランセットキャリアテープのすべてのランセットが使用済みとなったテープカセットを、新しいテープカセットと交換することによって、この場合、穿刺デバイスを繰り返し使用できる。
【0055】
図11〜14は、穿刺システムのもう1つの実施例を模式的に示す。この場合のテープ案内は、図1〜4の実施例と同様、ランセットキャリアテープ3を90°ねじることを意図する。図11〜14の実施例の巻取装置5は、逆回転防止装置、たとえば回り止め機構と連結されているので、巻取装置5は正方向にのみ回転できる。穿刺運動に必要なテープ可動性は、ランセットキャリアテープ3の弾性挙動によって得られる。穿刺運動の際には、ランセットキャリアテープ3は弾性伸長し、こうしてランセットキャリアテープ3のうち、穿刺するランセット4から巻取装置5まで達する部分の長さに、必要な伸長が得られる。
【0056】
図15〜18は、穿刺システムのもう1つの実施例を示す。この場合のテープ案内は、図5〜8の実施例のテープ案内と同じである。穿刺運動の際、ランセット4は、巻取装置5の回転の中心となるジオメトリー的な軸と、平行に動かされる。この実施例の場合も、巻取装置の逆回転は逆回転防止装置によって防止され、ランセットキャリアテープ3の必要とされる可動性は、弾性伸長によって得られる。
【符号の説明】
【0057】
1 穿刺システム
2 ハウジング
3 ランセットキャリアテープ
4 ランセット
5 巻取装置
6 穿刺アクチュエーター
6a 穿刺アクチュエーターの結合ヘッド
7 身体部分
8 供給ローラー
9 駆動エレメント
10a、10b 方向変換装置
11 案内エレメント
12 曲げ装置の斜面
13 ラック
14 試験フィールド
15 測定装置
16 ハウジング開口
17 旋回アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
当該ランセットキャリアテープの長手方向を横切って配置された複数のランセット(4)を搭載するランセットキャリアテープ(3)と、
上記ランセットキャリアテープ(3)を1つの搬送方向に搬送経路にそって搬送し、それによりランセットキャリアテープ(3)のランセット(4)を順次穿刺位置に運ぶための搬送装置(5、11、17)と、
穿刺位置に位置するランセット(4)を穿刺運動させるための穿刺アクチュエーター(6)とを備える
穿刺システムであって、
穿刺運動の際、穿刺アクチュエーター(6)が、穿刺位置に運ばれたランセット(4)を、ランセットキャリアテープ(3)のうち当該ランセット(4)を搭載する部分と共に、穿刺方向に動かすことと、
−1つのランセット(4)が穿刺位置に運ばれたのち、搬送装置(5、11、17)のうち搬送方向に見て穿刺位置背後に位置する少なくとも一部分が、当該ランセット(4)の穿刺運動前、または穿刺運動中に、1つの運動を行うことを特徴とする上記穿刺システム。
【請求項2】
前記搬送装置(5、11、17)が1つの巻取装置(5)を備え、当該巻取装置が、ランセットキャリアテープ(3)を工程動作によって巻き取ることにより、ランセット(4)を順次穿刺位置に運ぶことを特徴とする請求項1記載の穿刺システム。
【請求項3】
搬送装置(5、11)の少なくとも一部分の前記運動が、巻取装置(5)の逆回転工程であって、この場合、巻取装置(5)は、ランセット(4)を穿刺位置に運ぶために正回転工程を行い、その後、穿刺位置に運ばれたランセット(4)の穿刺運動のためテープを巻取装置(5)から引き出すために逆回転工程を行うことを特徴とする請求項2記載の穿刺システム。
【請求項4】
前記逆回転工程が穿刺運動の間行われることを特徴とする請求項3記載の穿刺システム。
【請求項5】
前記正回転工程では、巻取装置(5)を駆動するため巻取装置(5)と結合され、そして逆回転工程では巻取装置(5)から結合解除される駆動エレメント(9)を特徴とする請求項3または4記載の穿刺システム。
【請求項6】
前記搬送装置(5、11、17)が、搬送方向に見て穿刺位置の背後に配置された案内エレメント(11)を含み、当該案内エレメントは、搬送経路の曲がり箇所に配置され、当該案内エレメントを回ってランセットキャリアテープ(3)が曲げられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の穿刺システム。
【請求項7】
前記テープ案内装置(11)を第1の位置と第2の位置の間で動かすことができ、この場合、第1の位置とは、ランセットキャリアテープ(3)が第1の曲げ角度でテープ案内エレメント(11)を回って曲げられる位置であり、第2の位置とは、ランセットキャリアテープ(3)が上記より少なく曲げられるか、またはまったく曲げられない位置であり、またこの場合、テープ案内エレメント(11)は、ランセット(4)が穿刺位置に位置決めされた後、第2の位置に向かって動かされることを特徴とする請求項6記載の穿刺システム。
【請求項8】
前記テープ案内エレメント(11)が2つ設けられ、当該テープ案内エレメント間に穿刺位置が位置することを特徴とする請求項6または7記載の穿刺システム。
【請求項9】
前記搬送装置(5、11、17)が2つの旋回アーム(17)を備え、当該旋回アーム間に穿刺位置が位置し、また当該旋回アームはそれぞれテープ案内エレメント(11)を1つずつ備え、当該テープ案内エレメントは搬送経路の曲がり箇所に配置され、また当該テープ案内エレメントを回ってランセットキャリアテープ(3)が曲げられ、この場合、旋回アームが穿刺運動の際に旋回運動を行うことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の穿刺システム。
【請求項10】
前記旋回運動が、穿刺方向に垂直に方向付けされたジオメトリー的な軸を中心に行われることを特徴とする請求項9記載の穿刺システム。
【請求項11】
前記ランセットキャリアテープ(3)が、各ランセット(4)間に、ランセット穿刺によって得られた体液サンプルを検査するための試験フィールド(14)を搭載することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の穿刺システム。
【請求項12】
前記穿刺運動の際、穿刺方向前側にあるランセットキャリアテープ(3)の長手周縁が曲げられることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の穿刺システム。
【請求項13】
前記穿刺位置に運ばれたランセット(4)の先端が、穿刺運動の間、ランセットキャリアテープ(3)から離れることを特徴とする請求項12記載の穿刺システム。
【請求項14】
前記搬送装置(5、11、17)がスリップクラッチを介して駆動エレメント(9)に連結されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の穿刺システム。
【請求項15】
前記穿刺アクチュエーター(6)が、ランセットキャリアテープ(3)に結合するため結合ヘッド(6a)を備え、当該結合ヘッドは1つの空隙を備え、ランセットキャリアテープ(3)が当該空隙内を通過することを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の穿刺システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2010−536516(P2010−536516A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−522226(P2010−522226)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/006797
【国際公開番号】WO2009/030359
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】