説明

穿刺傷をつけるためのランセット装置およびランセット駆動組立体

【課題】要求事項(最小の苦痛の感覚、容易な操作性、小型のデザイン、原価効率の良い構造)を同時に、そして出来るだけ、満たすこと。
【解決手段】皮膚の表面に穿刺をつけるランセット装置に関し、ランセットが穿刺の経路上を移動出来るハウジングと、駆動ばねによって駆動されることが出来る駆動ローターを持ったランセット駆動部、駆動ローターの回転運動を、ランセット駆動部の作動サイクルのあいだにランセットの穿刺および帰還動作に転換するランセット連結機構、ランセットと関係し、またハウジングと関係して可動である参照素子、穿刺中はランセット駆動部に関係して規定の位置に固定されて、その接触面が皮膚の表面に対して位置するようにし、穿刺動作によって再生できる穿刺の深さを持った穿刺傷がつくようにし、また、参照素子を動かすためにランセット駆動部に連結されている参照素子連結機構を備える。本発明はさらにこの形式のランセット装置に適するランセット駆動組立体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は穿刺傷をつけるためのランセット装置、特に診断を目的として体液を採取するためのランセット装置、およびランセット装置のランセット駆動組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
分析−診断目的で、身体の一部(通常は指または耳朶)から少量の体液(血液および/または間隙液)を採取するため、穿刺傷をつけるためにそれぞれの身体部分に刺すランセットが用いられる。もしこれが手動で行なわれるならば、このために特別に訓練された人員が必要になる。その場合でも、穿刺にはかなり苦痛を伴う。
【0003】
ランセット装置と、対応するランセット装置に適用されるランセットからなる血液採取システムは、長年にわたって用いられてきた。ランセット装置のハウジングは、ランセットが機械的に皮膚の中へ刺さるようにするランセット駆動部を含む。ばねが、穿刺動作の駆動素子の役割を果たす。当初、ランセットが細長いハウジングに配置された圧縮ばねの一端に直接取り付けられた、きわめて単純なデザインが一般的であった(たとえば、米国特許番号4,469,110)。
【0004】
しかし、この種の血液採取システムは、定期的な血液分析値の監視を必要とする場合に満たされるべき困難な要件を満たしていない。これは特に、一定の限度内に血糖値を保つために、インシュリンを注射することにより頻繁に血糖値の制御を要する糖尿病患者に当てはまる。一日最低4回の分析を伴う集中的な治療計画により、糖尿病によるきわめて激しい二次損傷(たとえば、患者を結果として盲目にする網膜炎)を劇的に低減可能であることが、詳細な科学的調査で示されている。
【0005】
この種の集中治療の必須条件は、採血に伴う苦痛を最小限にするというものである。これを改良するために、多くのさまざまな採血方法が開発されてきた。
【0006】
ランセット装置によって、ほとんど苦痛なしに採血することが可能になっている。ランセット装置のランセット駆動部は駆動ローターを含む。この駆動ローターは、一方では一方の側(駆動側)の駆動ばねにより駆動軸で回転動作させられ、他方では、駆動ばねの緩み動作の結果生じる駆動ローターの回転を穿刺動作に変換させるように、(出力側の)連結機構を介してランセットに連結される。本発明は、種々の実施態様において知られているこの種のローター・ランセット駆動部を有するランセット装置に関する。
【0007】
通常は、出力側の連結機構は、ランセットが穿刺および帰還動作(ランセット駆動部の動作の駆動フェーズ)のあいだ中駆動ローターに連結されることによりランセットの動作が駆動ローターの対応する動作によって完全に制御されるようにデザインされている。この種のデザインの初期の例は米国特許番号4,924,879に示されている。より最近の実施態様は、たとえば、米国特許番号6,409,740や6,419,661に示されている。
【0008】
公知のローター・ランセット駆動部は通常、適切な「ドライブ側連結機構」によって、駆動ばねの力に抗して、ローターを後ろ向きに回転させることによって張力を持たせてある。より最近では、駆動ばねに張力を与えるために追加の張力付与ローターを用いたデザインが知られるようになった。これは、張力付与ローターを駆動フェーズの駆動ローターの回転と同一の方向に回転させることによって、ランセット駆動部の張力付与をその動作の張力付与フェーズで進行することが出来るようにするものである。この駆動原理はOWADAC(一方向交互駆動およびコッキング)とも呼ばれている。この形式のローター・ドライブは、たとえば、EP1384438A1に記述されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
広範囲の開発作業にも関らず、ある程度矛盾した、要求事項(最小の苦痛の感覚、容易な操作性、小型のデザイン、原価効率の良い構造)を同時に、そして出来るだけ、満たすようなランセット装置に大きい関心が寄せられている。更なる要求事項としては、その使用中、出て来る血によるランセット装置の汚染が無いかまたは出来るだけ少ないことがある。本発明の目的は出来る範囲までこれらの要求事項を満たすことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、皮膚の表面に穿刺傷をつけるランセット装置、特に診断のために血液を採取するランセット装置であって、ランセットが穿刺通路上で移動可能なハウジングと、駆動ばねによって駆動され得る駆動ローターを持ったランセット駆動部と、駆動ローターの回転動作をランセット駆動部の作動サイクルのあいだ、ランセットの穿刺および帰還動作に転換するランセット連結機構と、ランセットに相対的にまたハウジングに相対的に可動であり、穿刺時にはランセット駆動部に相対的な位置に(そしてそのため穿刺通路に)あり、また穿刺動作によって皮膚の表面に定められた穿刺の深さの穿刺傷がつくように、その接触表面を持った皮膚の表面に置かれた参照素子と、および参照素子を動かすための、ランセット駆動部に連結されている参照素子連結機構とからなるランセット装置によって実現される。
【0011】
関連した苦痛が出来るだけ小さくなるようにした穿刺により診断の目的で十分な量の血液を採取するためには、最適な穿刺の深さが最も重要なことである。0.05mm前後の変化で、苦痛の感覚および/または穿刺で得られる血液の量が大きく変化することがある。
【0012】
ローター・ランセット駆動部を持ったランセットの場合には、ランセットの動作は上記のように、駆動ローターとの連結を通じて正確に制御される。このことに関連して、穿刺の深さはランセット動作の最低点(反転点)と皮膚の接触表面の平面とのあいだの距離に相当する。既知の装置はハウジングの前端の開口部を取囲むリング型の接触面を持っている。接触表面はそこから血液が取り出される元の身体部に対して圧迫される。その軸位置(すなわち、穿刺方向の位置)は穿刺の深さの調節が出来るように調整可能である。
【0013】
もし接触面に囲まれた開口部がランセットの直径よりも僅かに大きいだけであれば、穿刺の深さは良好に再現できる。しかし、穿刺によって得られた血液の量は比較的少量で、特に血液の試料をランセット装置の内部で分析するべき、統合システム用には不十分である。もし接触表面に囲まれたハウジング開口部が大きい目で皮膚がその中へ膨れこむような場合には、血液循環がより良いために穿刺によってより多くの量の血液が採取可能である。
【0014】
発明者らは、ハウジングの前端の静止した皮膚接触面を用いて、ランセット装置が皮膚に対して圧迫されたとき接触面に囲まれているハウジング開口部内に皮膚が膨れこむ時には、最適な穿刺の深さの再現可能性を達成することが可能でないことがしばしばあることを発見した。そのような場合にはハウジング開口部の内部リムは穿刺の深さに対する不正確な参照を提供するに過ぎないので、この効果は顕著にはならなくて、より少量の血液が得られるに過ぎず、ランセット装置が穿刺傷から出る血液によって汚染される確率が高くなる。
【0015】
従来は、接触面の内径、すなわちハウジング開口部のサイズ、に対する最適な妥協点を見出すことによってこの問題を解決しようと試みられていた。この習慣的な手法から反れて、本発明によるランセット装置は、(ランセットおよびハウジングに関連して)可動となっていて、穿刺中は接触面によって患者の皮膚に対して置かれる参照素子、からなる。ランセット連結機構に加えて設けられた、参照素子連結機構は、参照素子を動かす役をする。穿刺時には、ランセルの先端が少なくともその皮膚への最大貫通点に達した時点で、可動の参照素子がランセット駆動部に関係した規定された位置に置かれる。下記の説明に基づき、この型のデザインによって、皮膚の膨れにも関らず穿刺傷の深さをきわめて良好に再現することが出来るようになったことが明らかとなるであろう。
【0016】
本発明によるランセット装置の参照素子は、互いに対して隣接した、ガイド手段、特にランセットに対する誘導チャンネルと、血液試料を受取るための試料受領チャンネルとからなる、試料吸収ユニットとしてデザインされることが出来る。試料吸収ユニットからは、血液試料は更なる加工ステーションへ(たとえば、分析のため)移送されることができる。しかし、試料吸収ユニットは完全な分析素子を形成するように一体的な構成要素として試薬との反応領域を持つことが好ましい。反応領域での試料の試薬との反応は、試料に含まれた分析物の濃度を決定するための基礎として用いることが出来る物理的状態の変化(たとえば、変色または、電気化学的な分析素子の場合は、電流の流れの変化)を生ぜしめる。この型の分析素子は公知であるから、ここで一層詳細に試験原理について記述する必要はない。一度使用した後は分析素子(または他の試料吸収ユニット)は処分される。この理由で、穿刺傷から出た血液による汚染の可能性には重要性が無い。
【0017】
それを通して試料が引き取られる試料受取りチャンネルのオリフィスは、ガイドチャンネルのオリフィスから空間的に分離されているのであるから、試料吸収ユニットは穿刺後には試料受取りチャンネルのオリフィスが試料を受取るための穿刺傷の所へ移動されるように、動かされなければならない。この機能はランセット駆動部連結機構に加えて存在する参照素子結合機構によって与えられる。原則として、チャンネルは空間的に分離されず、また上に説明した動作は必要でないようにするために、試料受取りチャンネルに対してもランセット・ガイド・チャンネルのオリフィスを用いることができる。しかし、発明の一部として、別のチャンネルを設けて穿刺後に穿刺傷に対して試料受取りチャンネルのオリフィスを、たとえば、軸回転運動によって、動かすことも、一層好ましいことが認められた。
【0018】
別の例示的な実施態様は、参照素子がランセット装置の多重使用可能な構成部品である場合に関する。この場合には、穿刺傷から出る血液による参照素子の汚染は明らかに望ましくない。この理由で、本発明の好ましい展開によれば、穿刺後、存在する血液によって汚染されるようになる前に、参照素子を穿刺傷から迅速に取り除くことである。
【0019】
発明の文脈では、穿刺中に参照素子が皮膚に対して押圧される圧力は穿刺傷から血液が出るのと反作用することが認められた。この発見が、血液が出て参照素子を(厄介な程度まで)汚染する前に十分急速な運動によってこの参照素子を穿刺傷から取り除くことに利用されている。
【0020】
好ましくは、参照素子は穿刺後、50ミリ秒以内に、穿刺傷から少なくとも2mm、動かされる。そのような参照素子の急速な帰還動作は好ましくはランセット駆動部の駆動ローターによって達成される。ランセットもまた、苦痛を最小にするために高速で動かされなければならない。この理由で、参照素子連結機構は好ましくは駆動ローターの回転運動を、好ましくは遷移動作である、参照素子の回転動作に転換させる。
【0021】
本発明によるランセット装置の重要な構成部品であるが、しかしまた別のアイテムとしても重要であるものは、駆動ばねによって駆動できる駆動ローターと、駆動ばねに張力を与える張力ローターとを持ったランセット駆動部と、駆動ローターの回転動作をランセットの穿刺および帰還動作に転換させるための第1ランセット連結機構、およびランセット駆動部に連結された更なる連結機構、からなるランセット駆動組立体である。
【0022】
更なる連結機構は好ましくは参照素子を動かす役をするが、しかしまたたとえば、試験片を持ったカートリッジの動作に(たとえば、一体化されたランセット装置を持った分析機械で)付加的な工程を行なわせるため、穿刺部位に消毒剤の塗布のため、または試験フィールドでの試料の受け入れのために用いることも出来る。
【0023】
以下、図面に示した例示的な実施態様に基づいて本発明を一層詳細に説明する。その中に記述した特長事項は、好ましい実施態様を生成させるために、個々に、または組み合わせて使用することが出来る。同一の、または相当する構成要素は一貫した参照番号によって同定した。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】ランセット装置の斜視図を示す。
【図2】ハウジングを取外したランセット装置の斜視図を示す。
【図2a】第2図に示したランセット装置の模式的詳細横断面図を示す。
【図3】ドラム・カートリッジをつけたランセット駆動組立体の斜視図を示す。
【図4】第2および3図に示した例示の実施態様の更なる斜視図を示す。
【図5】ランセットの動作の、および駆動ローターの回転角位置の機能として第3図の組立体の参照素子の、グラフ表示図を示す。
【図6】ランセット駆動組立体の更なる例示実施態様の斜視図を示す。
【図7】張力付与ローターの回転角位置としての第6図の組立体のランセットの、および参照素子の動作のグラフ図を示す。
【図8】ランセット駆動組立体の更なる例示実施態様の斜視図を示す。
【図9】第8図に示した例示実施態様の部品の斜視展開図を示す。
【図10】試料採取ユニットの様式中の参照素子の模式図を示す。
【図11】ランセット駆動組立体の更なる例示実施態様の部分斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1図に示したランセット装置1は診断目的で採血するための穿刺傷をつけるのに資する。そのハウジング2はハウジング開口部3を備える。穿刺傷は、ハウジング2の穿刺通路上で可動であるランセットの先端によってハウジング開口部の正面に配置された身体部分につけられる。
【0026】
ハウジング開口部3は、穿刺のために、たとえば、指先のような身体の一部に対してランセット装置を圧迫するために用いられるリング型の接触表面6によって囲まれている。これによって皮膚の表面はハウジング開口部3内に膨れ込む。皮膚の膨れこみは、0.5mmから2mmの比較的小さい穿刺深さであっても、診断目的に十分な量の血液が取り出せるように血液の流出を促進させる。皮膚に対して装置を繰り返し圧迫することによって、この効果はさらに増大させることが出来る(「ポンプ効果」)。その上、このデザインの血液採取装置は、血液をさほど良く供給されていないが痛みにそれほど敏感でない身体部分からでも一滴の血液を採取するために用いることが出来る。所望のポンプ効果を得るようにするためには、接触表面6の内径を比較的大きくするべきであり、好ましくは少なくとも7mm、またはさらに少なくとも9mmである。
【0027】
好ましくは、接触表面6はハウジング開口部3の方へ内方へ先細りになっている。特に、接触面6を、上記のように身体部分に対して圧迫したときにより良いポンプ効果が得られる、たとえば、ポリウレタンまたはゴムのような、変形可能な材料で作ると有利である。接触表面6の一層の詳細および択一的な実施態様については、この点で参照のため本書に含めてある、DE10026172に記述されている。その中で、接触表面にはそのポンプ効果のために圧縮ユニットと定義された構成部品が設けてある。
【0028】
上述のデザインの結果、ランセット装置に関係した、皮膚の表面の正確な位置は、それによって装置が皮膚に対して圧迫される圧力の機能および更なる要素(たとえば、皮膚の張力)である。したがって、正確には定義されない。第2および3図に基づいて、以下に、どのようにすれば所定の穿刺深さの穿刺傷が、ランセットの穿刺動作中につけることが保証できるのかを説明する。
【0029】
第2図は、ハウジングを取外したランセット装置1を示し、第3図はドラムカートリッジ16と結合しているランセット組立体10を示す。組立体10は駆動ばねによって駆動される駆動ローター12と、駆動ばねに張力をかけるための張力かけローター13とからなる。図示を明瞭にするために、駆動ローター12と張力かけローター13とのあいだに配置された駆動ばねは第2および3図には示されていない。駆動ばね11は第4図だけに示されている。予備張力かけされて、その端部の一つが駆動ローター12に蝶番付けされ、他端が張力かけローター13に蝶番付けされているのは、ねじればねである。
【0030】
ランセット駆動組立体10の更なる構成部品は、軸の回りを回転させることが出来る、駆動ローター12の回転動作を、ランセット駆動部の駆動フェーズで、その中で穿刺傷をつけるために高速度で穿刺方向へランセットが動かされる穿刺動作に転換させる、出力側のランセット連結機構24である。同様に、ランセットの帰還動作部は、ランセット連結機構24によって、駆動ローター12の回転動作によって駆動され、制御される。(穿刺および帰還動作を含む)全駆動フェーズのあいだは、駆動ローター12から離れる方向に面する駆動ばねの端は張力かけローターに対して支持されて、これは(駆動ローターの回転方向に対して)後方へは回転できないように駆動フェーズで停止されている。駆動ばねに張力をかけるためには、ランセット駆動動作の張力付与フェーズで、駆動ローター12が妨害されているあいだに、同一の回転方向に、張力かけのローターを回転させればよい。そこで、駆動フェーズのあいだ、駆動ローターは回転する。この型のランセット駆動部はEP1384438A1に記載されており、その内容、特にランセット駆動部の詳細に関しては、参照のため本出願に組み入れてある。
【0031】
その上、ランセット駆動組立体10は、参照素子14の動作またはランセット駆動部の他の構成部材の動作に変換されるべきランセット駆動部の回転している構成部品の回転動作が出来るようにする更なる連結機構38からなっている。この更なる連結機構38は、記述した例示の実施態様では、参照素子14を動かす役をするので、この意味でそれは「参照素子連結機構」と定義されている。
【0032】
参照素子はランセットに関連して、またハウジングに関連して、可動となっている。それは、皮膚を穿刺している時にその接触表面がランセット駆動部に関連して規定された位置で患者の皮膚の表面に対して定まるように、設けられ、かつ、配置されている。これによって、参照素子の接触表面と穿刺の方向のランセット先端の最も伸張された(最低の)位置とのあいだの距離に相当する、既定の穿刺の深さを持った穿刺傷が確実に作られる。
【0033】
第2図に示した例示の実施態様では、参照素子14は、複数のランセットがその中に保存される、ドラム・カートリッジ16と、ドラム・カートリッジ16を取囲む保護キャップ17とからなる。接触表面15が保護キャップ17上に設けられて、それによって参照素子14が皮膚の表面に対して位置する。第2図の参照素子14の前部の模式図に特に示したように、接触表面15にランセット開口部18が設けられていて、ハウジングの開口3に対して(すなわち、接触表面6に対して)押圧されている指に穿刺傷をつけるために、それを通ってランセットが出るようになっている。第4図は、その保護キャップ17を取外した参照素子14を示し、また、参照素子の参照素子連結機構38への接続を示す。
【0034】
使用時までのランセットの無菌保存のためには、ドラム・カートリッジ16が複数の室からなることが好ましく、その各々に単一のランセットが保存されるようにする。しかし、個々の室に再分割されていないリングになったドラム・カートリッジ16の内側にランセットを配置することも可能である。ドラム・カートリッジ16に保存されたランセットの数は実際には自由に選択可能である。好ましくは、ドラム・カートリッジ16は3から12、特に好ましくは4から8、のランセットを含む。ドラム・カートリッジ16の出口開口部20が穿刺のために連続した順序でランセット開口部18と登録して位置することが出来るように、ドラム・カートリッジ16は保護キャップ17のランセット開口部18に関連して回転することが出来る。
【0035】
ランセット連結機構24もまた、回転することが出来ないようにハウジングに取り付けられている押圧シリンダー25を含む。連結棒26はこのシリンダー25から延びて、穿刺および帰還動作中は、それぞれ一つの(「活性の」)ランセットに接続される。ランセット連結機構24は駆動ローター12の回転運動をカーブ推進によって活性ランセットの移行運動に転換させる。
【0036】
このために、押圧シリンダー25には、推進カーブ27を形成し、また、それに沿って駆動ローター12の推進カーブ・トラベラー28が動く、溝の形になった凹部が設けてある。示した実施態様では、推進カーブ・トラベラー28は、溝と係合し、そして駆動ローター12を原初とする推進アーム29の端部に位置する、推進釘の形で設けられている。押圧シリンダー25には、押圧シリンダー25が回転に対してロックされるが穿刺方向に可動になるようにハウジング2に接続されるように設けるために、ハウジング2(図示せず)の内壁に軸方向に延びる長手方向の溝と係合するガイド素子32が設けてある。示した実施態様では、ガイド素子32は2つの釘の形状で実施されている。
【0037】
第3および4図を参照して以下に記述する参照素子連結機構38は、穿刺の後、穿刺傷から参照素子14を後退させるために用いられ、またカーブ推進によって作動する。その推進カーブ33は、推進釘の形の推進カーブ・トラベラー34によって係合される溝の形の駆動ローター12の凹部によって形成される。連結アーム35によって、それはドラム・カートリッジ16が取り付けられたガイド棒36に接続されている。連結アーム35は参照素子14を持っている。ガイド棒36は、ドラム・カートリッジ16がガイド棒36によって参照素子14内で回転出来るように、連結アーム35に関係して回転され得る。こうして、ドラム・カートリッジ16に保存されたランセットは連続的に使用出来る。
【0038】
穿刺の深さを設定するためには、ドラム・カートリッジ16と接触表面15を形成している保護キャップ17とのあいだの距離が、糸(図示せず)によって参照素子14の長さを調節することによって、変更される。この設定は、歯をつけた車21を介して、参照素子14の歯のついたリム22と係合する、第2図に示した軸19によって行なわれる。
【0039】
駆動ばねを伸張するには、伸張ローター13が、好ましくはバッテリー駆動の電気モーター40(第2図)によって駆動されるギヤ・リング37によって回転される。しかし、伸張ローター13はまた、ハウジング2から突出した軸棒によって手動ででも駆動することが出来る。
【0040】
迅速な穿刺および帰還動作のために駆動ばね11のばね力を出来るだけ効率的に利用するために、駆動ばねの伸張の前に、または駆動ばねの伸張中よりもなるべく早く、ランセットおよび参照素子14の準備動作を行なうことが有利なことが証明された。
【0041】
このために、駆動ローター12および伸張ローター13は、最初はばねが伸張される前に準備フェーズで回転角の予備範囲を通って回転する。工程中では、伸張ローター13の回転動作は、駆動ローター12が準備フェーズの少なくとも一部で、伸張ローター13と一緒に(すなわち、必ずしもではないが同時発生的に、好ましくは同時に)回転させられるように、予備伸張された駆動ばねによって駆動ローター12へ移される。連結機構の一つによって、回転角の準備範囲にある駆動ローター12の動作はドラム・カートリッジ16に関係して連結棒26の準備モーション内へ移される。そこでは連結棒26はランセット開口部18から反対側に位置する挿入開口部(図示せず)を通って貫通してドラム・カートリッジ16の一つの室へ入って、その中に置かれている一つのランセットとロックする。適当な連結機構の更なる詳細および択一的な実施態様は、W0 02/36010A1に記述されている。これに関して、W0 02/36010A1は、参照により開示に含まれる。
【0042】
駆動ローター12および伸張ローター13は回転角の準備範囲を貫通するが、参照素子連結機構38は参照素子14をその接触面15が患者の皮膚に対して静止し得る程度まで、ハウジング2内でそのハウジング開口部3の方向へ前進させる。接触表面6の内径の大きさによって、接触表面6に対して置かれた指の先は僅かに膨れてランセット装置1のハウジング開口部3内へ入り込む(第1図)。その結果、接触面がハウジングの内部に接触表面15が接触表面6の内側のリム7を通って延びる平面の背後に一定の距離を置いて配置される位置にあっても、参照素子14の接触面15は皮膚に対して静止する。
【0043】
一旦駆動ローター12が回転角の予備範囲を通って回転すれば、ランセット駆動動作のその後の伸張フェーズのあいだ、それは伸張ローター13がさらに回転したとき駆動ばねが伸張されるようにロッキング素子41によってロックされる。示された実施態様では、ロッキング素子41は、ハウジング2の内壁に対して剛性を持って所在し、そして駆動ローター12から生じて、駆動ローター12をロックするためのハウジングの内壁の凹部と係合する、トリガー・タングとして設けられている。推進釘28を持ったトリガー・タングおよび推進アーム42は射出成型部品の形式の単一部品として製造されている。
【0044】
駆動ローター12がロッキング素子41によってロックされたときは、伸張ローター13のそれ以上の回転は駆動ばねの伸張を起こさせる。電気接点(図示せず)は、一旦伸張ローター13が所定の伸張角範囲を通り過ぎると電気モーター40を遮断するための伸張ローター13上に置かれる。これが伸張フェーズを完成させる。もし伸張ローター13が手動で駆動されたならば、それは伸張角範囲を回転通過した後に機械的ロック手段によってロックされることが出来る。
【0045】
伸張工程が完了した後、駆動フェーズで駆動ばねによって駆動されている駆動ローター12がその置かれた位置まできわめて迅速に回転してくるように、ロック素子41をそのロック係合から外すことによって、穿刺動作が開始される。それが駆動ばねを伸張させるときに、それは伸張ローター13と同一方向へ回転する。この駆動ローター12の迅速な動作はランセット連結機構24によってランセットの穿刺および帰還の動作に転換され、また参照素子連結機構38によって参照素子14の帰還動作に転換される。
【0046】
参照素子14の帰還動作およびランセットの帰還動作はそれぞれ軸方向への遷移動作である。参照素子14の帰還動作並びにランセットの帰還動作のために駆動ローター12の迅速な動作を利用することによって、参照素子14は十分早く穿刺傷から除かれて、出る血液による汚染を本質的に避ける。
【0047】
穿刺処理は、たとえば、所定の最小の力で参照素子14の接触表面15を皮膚に対して圧迫することによって、開始(起す)される。好ましくは、参照素子14は、一旦所定の最小圧力を超える圧力が接触表面15に掛けられると穿刺動作を起すために必要とする信号を発生させるために用いることが出来る圧力センサーからなる。圧力センサーは、たとえば、ばねを圧縮したときだけに電気的接触がされるように、接触表面15をばねの上に受けることによって、達成することが出来る。
【0048】
これに代るかまたは追加して、トリガー・ボタン5をランセット装置1(第1図)のハウジング2の上に設けることができる。示した実施態様の穿刺処理を開始するためには、最初に電気信号を発生させ、それによって電気モーター40が活性化される。こうすると、回転角の増大によって伸張ローター13を回転させる。第3図から明らかなように、伸張ローター13は、一旦伸張ローター13が所定の回転角の位置を越えて回転すると、トリガー機構45を活性化させ、それによって駆動ローター12の以前に掛かっていたロックを解除する、トリガー・カム44からなっている。
【0049】
示した実施態様では、トリガー機構45は、ベアリング・ペッグ46の回りを軸回転可能な、ハウジング2に取り付けられているロッカーの形で設けられている。伸張ローター13のトリガー・カム44は、ロッカー45の一端を持ち上げ、また、その上にヘッド部47が位置するロッカー45の他端を下げる。ロック素子41は帰還表面48を持ったショルダーからなっている。この動作のフェーズ(第3図には示されていない)では、ヘッド部47はロック素子41の上方に位置して、トリガー・タング41の帰還面48の上を圧迫し、それによって後者はハウジング3の凹部との係合を解除されるようになっている。ロック素子41が駆動ローター12をもはや塞がなくなれば直ぐ、駆動ばねは緩んで、ランセット駆動の動作の駆動フェーズが進行する。
【0050】
第5図は、連結機構24、38によって駆動ローター12の回転動作によって駆動および制御されているランセットの、および参照素子14の、動作を説明する。第5図では、トラベル、すなわち連結軸26の軸方向の動作がカーブA、そして参照素子14のトラベルがカーブB対駆動ローター12の回転角位置としてプロットされる。これらの図は合計360度の駆動ローターの回転動作からなるランセット駆動部の全作動サイクルを示している。作動サイクルは伸張ローターの回転動作の開始で始まり、穿刺後のランセットの帰還動作の終わりで完結する。
【0051】
作動サイクルの始めには、駆動ローター12は(上述の、伸張ローターと同時の比較的遅い動作での)回転角γの準備範囲を貫通する。それは約120度で終る(第5図に垂直線によって示す)。参照素子14の接触表面15が皮膚に対向の位置を取り、そして連結棒26がランセットに連結されるまで、連結棒26と参照素子14との両方共が装置内を(ハウジング開口部3の方向へ)前進させられるように、回転角の準備範囲での駆動ローター12の動作は二つの連結機構24、28によって転換される。
【0052】
接触表面15は穿刺時には皮膚に対向の位置を取るので、穿刺傷の深さは接触面15を超えて延びる連結棒のトラベルの断面Δhによって正確に予定される。穿刺の後には連結棒26と参照素子14とはそれらの始めの位置まで戻される。回転角の準備範囲に続く(そして穿刺および帰還動作からなる、ランセット駆動動作の駆動フェーズに相当する)回転角の駆動範囲を通る動きが、100ms、未満、好ましくは20ms未満で起こる。
【0053】
第6図はランセット駆動組立体10の更なる実施態様を示す。参照素子14は第6図には示してないが、これは、その上にドラム・カートリッジが差し込まれたガイド棒36のヘッド50が、また、穿刺用のランセットでロックする連結棒26が、より良く見えるようにするためである。また、連結棒ヘッド49がランセットとの形式適合連結が出来るようになる拡大からなっていることも明らかである。第2および3図に基いて記述した例示的実施態様でのように、駆動ローター12と伸張ローター13とのあいだに設けられた駆動ばねは示してない。
【0054】
第6図は、駆動ローター12と伸張ローター13とが、ローター12、13の停止位置で互いに対して当接し、そのため伸張ローター13に関係した駆動ローター12の回転動作を停止させる、停止部51からなっていることを示す。この形式の停止部51は先に記述した実施態様にも出ている。それらは、特に、穿刺および帰還動作の終わりに駆動ばねの予備張力を支えたり、また駆動ローター12を停止させたりする役をする。
【0055】
先に記述したように、予備回転角の範囲では、この回転の範囲で伸張ローター13と駆動ローター12とが一緒に回転するように、伸張ローター13の回転動作は駆動ばね11によって駆動ローター12へ移送される。駆動ばね11を予備伸張すると、共同回転中に伸張ローター13の回転角位置が駆動ローター12の回転角位置から10度以下、好ましくは5度以下で、逸れるように、伸張ローター13の駆動ローター12への強い連結が出来る。それゆえ、駆動ばね11の十分強力な予備伸張を用いて大きく同調した動作が、すなわち、二つのローターの同一の角度および速度で、達成出来る。これは、連結機構24、38の動作が一層正確に制御出来る点で有利である。或いは、二つのローター12、13の同調動作は、それらが予備範囲の回転角を通過しながら作動する強靭な連結手段(図示せず)によっても達成することが出来る。
【0056】
本実施態様の他の詳細もまた、第2から第4図を参照して記述された実施態様のものと大部分同一である。この意味で、一つの相違は、参照素子連結機構38が伸張ローター13の(駆動ローターのではない)回転動作を参照素子14の動作に変換することである。このために、(再度、溝型の凹部として表した)参照素子連結機構38の推進カーブ33が伸張ローター13に設けられる。このデザインでは、穿刺の後には参照素子連結機構38は参照素子14の急速帰還動作には用いられないが、しかし、寧ろ参照素子14のスローモーションによって穿刺の深さの正確な設定のために用いられる。第5図に示したように、穿刺の深さは穿刺の際の連結棒26に関係しての参照素子14の制御面15の位置の機能である。穿刺の深さを設定するためには、参照素子14は穿刺前に連結棒26に関係して軸方向に動かされる。この設定動作は穿刺動作とは独立して進み、またスローモーションとして行なうことが出来る。好ましくは設定した位置は完全な穿刺動作のあいだは変えてはならない。このため、参照素子連結機構38は比較的ゆっくりと動く伸張ローター13に連結されるのが好ましい。
【0057】
第7図は連結棒26の動作を示し、そしてカ−ブCの形のランセットの動作を、また、参照素子14の動作をカーブDを、伸張ローター13の回転角位置の機能として示す。
【0058】
穿刺の深さが伸張の後で設定されることが好ましい。参照素子連結機構の推進カーブ33の第1セクションは、参照素子14を最初に穿刺中の最小貫通深さに相当する最大位置Mに動かす役をする。もし伸張ローター13がその後さらに回転させられるならば、参照素子14は最大位置から所望の穿刺深さに相当する位置(「穿刺位置」)まで後退させられる。参照素子14が連結棒26に関係して後退すればするほど、その後の穿刺の深さは大きくなる。一旦所望の穿刺深さを持った穿刺位置に達したら、電気モーター40を止めて、伸張ローター13をこの位置にロックする。トリガーの後で、伸張ローター13はそれが最初の位置に達するまで動作セクションQで回転させられることによってその作動サイクルを完了する。
【0059】
上述の穿刺深さを設定する手順において、伸張ローター13の回転角位置が正確に所望の位置にロックされていることが非常に重要である。伸張ローター13の回転角位置の不正確な位置決めは設定した穿刺深さの相当する不正確さを招く。示した実施態様では、伸張ローター13の回転角位置がウオームギア対37の一つまたはそれ以上の部品の回転数の電子計算によって正確に調整できるように、電気モーター40は二段ウオームギア対37によって伸張ローター13を駆動する。
【0060】
第2から4図および第6図の例示的実施態様は、穿刺動作をトリガーする前に穿刺深さを設定するために第1参照素子連結機構が参照素子14を伸張ローター13に連結し、そして穿刺後、参照素子14を動かすために第2参照素子連結機構が参照素子14を駆動ローター12に連結するように組み合わせることが可能である。こうして、電気モーター40によって実施することが困難である急速帰還動作に駆動ばねが利用され、一方、そのためには駆動ばねはあまり良く適していないとされる低速穿刺深さ設定動作のために電気モーター40が利用される。
【0061】
また、穿刺動作の準備の際、参照素子14を所望の位置まで動かすために、また、参照素子14の帰還動作のため別の帰還ばねを設けるために、参照素子14を伸張ローター13に連結することも可能であるが、その帰還ばねは参照素子14の前進のあいだは伸張ローター13によって伸張されている。伸張された帰還ばねの力は、たとえば、ハウジング上の所望の位置にラッチされている参照素子14によって支承されることが出来る。この意味で、穿刺後の皮膚参照の後退、すなわち、掛け金外しは、駆動ローター12によって、好ましくは伸張ローター13によって、トリガーされることが出来る。
【0062】
第8および9図はランセット駆動組立体10の更なる実施態様を示す。これまで記した実施態様とは異なって、この実施態様では参照素子14は試料吸収ユニット60の形で設けられている。第10図に一層明瞭に示されたように、試料吸収ユニット60はランセット4用の手引きチャンネル61と、試料受取り用のオリフィス63aを持った試料受取りチャンネル63とからなる。試料吸収ユニット60はさらに試料受取りチャンネル63を通して試料が供給された、試薬を持った反応領域64を含む。
【0063】
他の実施態様でのように、ランセット駆動組立体10は駆動ばね11によって駆動されることが出来、そして軸59の周りを回転可能な駆動ローター12と、駆動ばね11を伸張するための伸張ローター13とからなっている。駆動ローター12と伸張ローター13とは同軸になるようにしてある。第8および9図に示した例示的な実施態様では、駆動ばね11はヘリカル・スプリングの形式になった脚ばねである。或いは、駆動ばね11として機能している螺旋ばねも用いられる。
【0064】
駆動ばね11の巻線は摩擦損失を最小にするために互いに対して間隔を開けて巻くか、または回転の振動を減衰させるために互いに対して接近して巻くか、することが出来る。引き手方向の予備伸張をすれば巻線のあいだの摩擦を減少する備えが出来る。
【0065】
駆動ばね11の予備伸張を支えるために、伸張ローター13は駆動ローター12の止め釘53の形式と嵌め合わされた止め溝52形状の停止部を備える。予備伸張は止め釘53を円型のアーク型の止め溝52の一端に対して止め釘53を押圧し、その上に止め釘がその静止位置に当接する。
【0066】
穿刺の後では、傷から出ている試料液の取り込みが出来るようにするために、試料受け入れチャンネル63のオリフィス63aがつけた穿刺傷へ動かされる。このために、参照素子連結機構38が、二つの軸受釘69の回りを軸旋回させるために吊り下げられたブッシング65からなるようにする。ブッシング65の堅固な推進アーム66は、推進カーブ・トラベラー67として作用して、溝状の凹部によって形成された駆動ローター12の推進カーブ68を係合する推進釘を有する。推進カーブ68は異なった半径を持った二つの半円形の断面を有する。これらの二つの断面のあいだを動く推進カーブ・トラベラー67はブッシング65に軸旋回運動を行なわせる。ランセット連結機構24の連結棒70はランセット4の穿刺および帰還動作を与えるためにブッシング65の遷移動作を行なうことが出来る。連結棒70は接続棒71を経て駆動ローター12によって駆動される。接続棒71は駆動ローター12の穿孔75を係合するクランクピン72を持っている。
【0067】
試料吸収ユニット60の試料受け入れチャンネル63によって、穿刺傷から出る試料液を出来るだけ多く取り込むために、示した例示的な実施態様は試料吸収ユニット60を幾らか穿刺動作の後で後退させ、そして軸旋回運動の後で再度それを前進させるようにして、試料受け入れチャンネル63によって一滴の血液でも受取られることが出来るようにする第2の参照素子連結機構39を備える。
【0068】
第2参照素子連結機構39は、ブッシング77からなり、そこからは溝の形をした凹部によって形成されている駆動ローター12の推進カーブ73と係合する推進カーブ・トラベラー79として機能する推進釘を持った堅固な推進アーム78が延びている。示された例示的な実施態様には、推進カーブ68は駆動ローター12の第1側(前面側)に配置され、そして推進カーブ73はその後ろ側に配置されている。ブッシング77は連結棒70の回りで第1参照素子連結機構38のブッシング65の内部に配置されている。
【0069】
第8および9図に示されたランセット装置の完全な作用サイクルは下記のように進行する:
ランセット装置は、試料採り出しユニット16によって形成されている参照素子14の接触表面15が皮膚の表面に対向して位置するように、患者の身体の一部に対して置かれる。駆動ばね11を伸張するためには、駆動ローター12がロッキング素子(図示せず)によってロックされているあいだに、伸張ローター13が180度回転させられる。穿刺をトリガーするためには、止め釘53が伸張ローター53の止め溝52の終端に対して衝突するまで、駆動ローター12が180度のスナッピング動作を行なうように、ロッキング素子(図示せず)が緩められる。
【0070】
駆動ローター12のこの動作のあいだ、ランセット4の穿刺動作がランセット連結機構24の接続棒71と連結棒70とによって行なわれるように、クランクピンが円形の経路の下半分に沿って運動する。駆動ローター12のスナッピング動作の最後の部分のあいだは、第2参照素子連結機構39が、推進カーブ73によって、ブッシング77とその中に保持されていた試料採り出しユニット60との後退を生ぜしめる。接触表面15はもはや皮膚の表面に対して位置しないため、血液は出ることが出来る。
【0071】
その後、伸張ローター13はモーター40によって再度180度回転させられ、駆動ローター12は駆動ばね11の予備伸張によってこの180度動作にしたがう。推進カーブ68の形によって、これはブッシング65の軸旋回運動を招来する。この動作は、試料吸収ユニット60のオリフィス63a(第10図)が穿刺部位の方へ向けられるように寸法設定される。工程では、溝73は試料採り出しユニット60を接続棒71と連結棒70とによって再度前進させて、オリフィス63aが出てくる血液に接触して音を出すようにする。
【0072】
クランクピン72と接続棒71との代りに、駆動ローターに第3の溝を用いて、第3推進カーブ・トラベラーによって連結棒70を駆動させることも出来る。
その上、血液の排出を向上させるために、たとえば、ブッシング77の下端のような圧力片を作って穿刺部位近傍の皮膚の表面に作用させることも出来る。そのような圧力片の圧迫作用によって、血液は穿刺傷から絞られて試料採取ユニット60に受けられる。採血が完了した後に圧力が下がると、穿刺傷は閉じる。圧力片による血液採取のサポートに関する更なる詳細についてはヨーロッパ特許出願EP04008691.0に開示されている。この点に関して、EP04008691.0は、参照により開示に含まれる。
【0073】
さらに、試料取り出しユニット60には、吸引による試料受け入れチャンネル63の毛細管力をサポートするため、ポンプピストン76(第10図)が設けてある。試料取り出しユニット60には、穿刺が完了した後には緩んでポンプピストン76を後退する支柱80が設けられていて、血液が試料受け入れチャンネル63に吸引されるようになっている。
【0074】
血液取り出しを支持するポンプ動作も、推進カーブ68および73、および/または連結機構38、39を適切な設計することによって、たとえば、伸張ローター13と駆動ローター12を小範囲の角度で前進後退させることによって設けることが出来る。もし駆動ばね11の伸張力が、張力ローター12と駆動ローター13とを基本的に同期動作させるに十分強いならば、特にそれらの回転角が10度未満の相対偏差であるならば、前進運動ばかりでなく後退動作も可能になり、動作を正確に操ることができる。
【0075】
第11図は駆動ローター12および伸張ローター13を持ったランセット駆動組立体10の更なる実施態様の部分斜視図を示す。簡素化のために、駆動ばねは第11図には示してない。示した組立体10の特殊性は、推進カーブ・トラベラー28が取り付けられたレバー81からなるランセット連結機構24であって、そのトラベラーは溝の形で設けられている駆動ローター12の推進カーブ27に沿って移動する。レバー81はピボット82のベアリングに支持されてピボット動作が出来るようになっているため、このためランセットホルダー83によって移動した距離は、てこ作用のために推進カーブ27の対応する側面の軸方向のストロークよりも大きくなる。
【0076】
ピボット82の何れかの側のレバー81の断面84、85はそれぞれレバー・アームを形成し、こうして達成されたトラベルの拡大が二つのレバー・アーム84,85の長さの比率に相当する。これらの長さはそれぞれピボット82から外方へ測定され、すなわち推進カーブ・トラベラー28および/またはレバー81によって動かされるランセットホルダ83となる。
【0077】
上に記述した、てこ作用は小さいローター12で大きいトラベルを達成することができる、すなわち、一層小さくコンパクトな装置で出来る。先行技術によると、大きいトラベルは、対応する推進カーブ27の直径を比較的大きくすることによってのみ達成することができる。そうしなければ自己ロッキング、すなわち推進カーブ・トラベラー28がロックアップして、どの大きさのトルクによって再度の動作が不可能になる危険性がある。これは、もし摩擦係数の関数である推進カーブ27の傾斜角が臨界値を超えたときに生じる。しかし上述のてこ作用では、たとえ推進カーブ27のフランクの傾斜が少ない場合であっても大きいトラベルが達成することができる。
【0078】
示した実施態様では、穿刺の深さは尖軸82を移動することによって調整することが出来るというように、てこ作用はランセットの連結機構24の一部分となっている。しかし、てこ作用の利点は駆動ローターまたは伸張ローターに連結出来る他の連結機構にも利用できる。
【0079】
示した実施態様では、尖軸82が、移動可能な基盤87上に釘の形状で設けられている。基盤87は繋がれたスピンドル88によって移動されて穿刺の深さを設定することが出来る。繋がれたスピンドル88の代りに、たとえば、偏心器または楔も、尖軸82の位置を設定するために用いることが出来る。
【0080】
示した実施態様では、伸張ローター13が、駆動ローター12を通って延びるように設計されている。伸張ローター13は推進カーブ33を持ち、それに沿って参照素子連結機構38の推進カーブ・トラベラー34が運動するようになっている。駆動ばね(図示せず)を伸張するために伸張ローター13が回転させられると、参照素子連結機構38が参照素子キャリア91を前進させる。参照素子キャリア91は、工程中にハウジング(図示せず)とスナップ・インする、スナップ・イン・フックの形をしたスナップ・イン機構90を有する。これによって、参照素子はランセット・ドライブ9と関係して、また、穿刺の目的でハウジング(図示せず)と関係して、固定される。
【0081】
穿刺中は参照素子は皮膚に対して押圧されるので、押圧力が作用して、それが、この手段によって、スナップ・イン機構90を経てハウジングによって支えられることが出来る。これは、ランセット・ドライブ9のカーブ推進器27、33が圧力に曝されず、摩擦が最小になる点で有利である。
【0082】
その後伸張ローター13がさらにそれ以上回転させられると、伸張ローター13に取り付けられているトリガリング・カム92が、穿刺をトリガする。対応するトリガの機構は第1から5図に基いて説明された実施態様のように設計することが出来る。それゆえ、それは簡素化のために第11図には示してない。
【0083】
伸張ローター13は、スナップ・イン機構90を形成するスナップ・イン・フックを解除するために適当な機構(図示せず)と共に用いられる、更なるトリガリング・カム93を持っている。これは、参照素子キャリア91、したがって参照素子が、穿刺後に後退されることが出来るようにするためのものである。
【符号の説明】
【0084】
1 ランセット装置
2 ハウジング
3 ハウジング開口部
4 ランセット
5 トリガリングボタン
6 接触面
7 端部
8 指容器
10 ランセット駆動組立体
11 駆動ばね
12 駆動ローター
13 伸張ローター
14 参照素子
15 接触面
16 ドラムカートリッジ
17 保護キャップ
18 ランセット開口部
19 軸棒
20 出口開口部
21 歯付きホイール
22 歯付きリム
24 ランセット連結機構
25 押圧シリンダー
26 連結棒
27 推進カーブ
28 推進カーブ・トラベラー
29 推進アーム
32 ガイド素子
33 推進カーブ
34 推進カーブ・トラベラー
35 連結アーム
36 案内棒
37 ギア
38 参照素子連結機構
39 参照素子連結機構
40 電気モーター
41 ロック素子
44 トリガリングカム
45 トリガリング機構
46 ベアリング釘
47 ヘッド部
48 帰還面
49 連結棒のヘッド
50 ヘッド
51 停止部品
52 停止溝
53 停止釘
59 軸
60 試料取り込みユニット
61 ガイドチャンネル
63 試料受入れチャンネル
63a オリフィス
64 反応領域
65 ブッシング
66 推進アーム
67 推進カーブ・トラベラー
68 推進カーブ
69 ベアリング釘
70 連結棒
71 接続棒
72 クランクピン
73 推進カーブ
75 穿孔
76 ポンプピストン
77 ブッシング
78 推進アーム
79 推進カーブ・トラベラー
80 支柱
81 レバー
82 軸回転
83 ランセットホルダー
84、85 レバーアーム
86 ランセットホルダーの取付け点
87 移行可能なベース
88 繋がれたスピンドル
90 スナップ・イン機構
91 参照素子キャリア
92 トリガリングカム
93 カム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランセット(4)が穿刺通路に沿って移動可能なハウジング(2)と、
穿刺ばね(11)によって駆動可能な駆動ローター(12)を持ったランセット駆動部(9)と、
ランセット(4)と関係して、またハウジング(2)と関係して可動であるが、穿刺の時にはランセット駆動部(9)に関係して規定された位置に置かれ、また、穿刺動作によって再現可能な穿刺深さを持った穿刺傷が生じるように、皮膚表面に対してその接触表面(15)で静止する参照素子(14)と
を備える、皮膚の表面に穿刺傷をつけ、診断の目的で体液を採取するためのランセット装置であって、
前記ランセット装置が、参照素子(14)を移動するためのランセット駆動部(9)に連結されている参照素子連結機構(38、39)をさらに備え、
前記参照素子(14)が、汚染されないように穿刺後に傷口から離間されてなる
ことを特徴とするランセット装置。
【請求項2】
前記参照素子(14)が、穿刺後50ミリ秒間だけ傷口から2mm離間されてなることを特徴とする請求項1記載のランセット装置。
【請求項3】
前記参照素子(14)の復帰運動が駆動ローター(12)によってなされ、当該駆動ローター(12)がランセット連結機構(24)によって前記ランセットに連結されてなることを特徴とする請求項1記載のランセット装置。
【請求項4】
前記ランセット連結機構(24)が、前記駆動ローター(12)の回転運動を参照素子(14)の運動に変換することを特徴とする請求項3記載のランセット装置。
【請求項5】
前記参照素子の運動が並進運動であることを特徴とする請求項4記載のランセット装置。
【請求項6】
前記参照素子が、前記ランセット(4)を案内するための試料取り出しユニット(60)を備え、当該試料取り出しユニット(60)が血液サンプルを受け取る試料受取りチャンネル(63)を有してなることを特徴とする請求項1記載のランセット装置。
【請求項7】
前記試料取り出しユニット(60)が、分析素子として機能するために試薬を備えた反応領域(64)を有してなることを特徴とする請求項6記載のランセット装置。
【請求項8】
ローター(12または13)と、
推進カーブ(27)を有し、該推進カーブ(27)に沿って推進カーブ・トラベラー(28)が移動して前記ローター(12)の回転運動を、前記ローターに連結された素子の前後進運動に変換する連結機構(24)とを備え、
前記推進カーブ・トラベラー(28)がレバー(81)に設けられ、当該レバー(81)が尖点の回りを旋回し、前記尖点上で前記レバーの各部がレーバー・アームを形成して、レバー・アーム(84、85)の長さの比に対応する移動範囲の拡大が達成され、前記推進カーブ(27)の側面から得られる運動距離が増大するランセット駆動組立体。
【請求項9】
前記尖点(82)が移動して前記レバーの移動距離を調節することを特徴とする請求項8記載のランセット駆動組立体。
【請求項10】
前記尖点が、移動可能な基盤(87)上に設けられてなることを特徴とする請求項9記載のランセット駆動組立体。
【請求項11】
前記基盤(87)を移動するための装置が、ネジが刻設されたスピンドル、偏心機構または楔からなる群から選択されることを特徴とする請求項10記載のランセット駆動組立体。
【請求項12】
前記ローターが駆動ローター(12)であり、当該駆動ローター(12)が駆動バネによって駆動し、前記駆動ローター(12)の回転運動をランセット駆動機構の前後進運動に変換することを特徴とする請求項8記載のランセット駆動組立体。
【請求項13】
前記ローターが伸張ローター(13)であり、当該伸張ロータ(13)がランセット組立体の駆動バネを伸張するために回転することを特徴とする請求項8記載のランセット駆動組立体。

【図1】
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【図2】
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【図2a】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−213933(P2009−213933A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157932(P2009−157932)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【分割の表示】特願2005−354776(P2005−354776)の分割
【原出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(501205108)エフ ホフマン−ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト (285)
【Fターム(参考)】