穿刺深さを調整可能な穿刺装置
【課題】煩雑なメンテナンスを必要とせず、衛生的に、長期間にわたって安定して穿刺深さを調整できるようにする。
【解決手段】皮膚に対する穿刺要素21の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、ハウジングに対して穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体6と、この変位体6と穿刺および退避方向に一体動するカバー7と、を備え、ハウジングからカバー7を取り外した状態で、上記穿刺要素21を保持させることができる。
【解決手段】皮膚に対する穿刺要素21の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、ハウジングに対して穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体6と、この変位体6と穿刺および退避方向に一体動するカバー7と、を備え、ハウジングからカバー7を取り外した状態で、上記穿刺要素21を保持させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺要素を移動させて穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置に関する。より具体的には、本発明は、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整することができる穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穿刺装置における穿刺深さを調整するための調整機構としては、たとえば本願の図19あるいは図20に示したように、内部スリーブ90A,90B、中間リング91A,91Bおよび外部スリーブ92A,92Bの3部材からなるものがある(たとえば特許文献1および2参照)。
【0003】
図19に示した調整機構9Aは、内部スリーブ90Aに対して中間リング91Aが固定され、この中間リング91Aに対して外部スリーブ92Aが図中の矢印N1,N2方向に移動するように構成されたものである。より具体的には、中間リング91Aにおける矢印N1方向側の端面93Aが傾斜状に形成されている一方で、外部スリーブ92Aの内部に、中間リング91Aの端面93Aに当接しうる傾斜面94Aが形成されている。この構成では、外部スリーブ92Aを回転させることにより、中間リング91Aおよび内部スリーブ90Aに対して外部スリーブ92AがN1,N2方向に移動する。
【0004】
一方、図20に示した調整機構9Bは、外部スリーブ92Bに対して中間リング91Bが固定され、この中間リング91Bが内部スリーブ90Bに対して図中の矢印N1,N2方向に移動するように構成されたものである。より具体的には、中間リング91Bの内面にねじ溝95Bが形成されている一方で、内部スリーブ90Bの先端部の外面にねじ山96Bが形成されている。この構成では、外部スリーブ92Bを回転させることにより、内部スリーブ90Bに対して中間リング91Bおよび外部スリーブ92BがN1,N2方向に移動する。
【0005】
調整機構9A,9Bを穿刺装置に組み込んだ場合には、ランセットLの矢印N1方向への移動は、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bにおいて制限される。したがって、内部スリーブ90A,90Bに対して外部スリーブ92A,92BをN1,N2方向に移動させることにより、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bと外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bとの距離、ひいては外部スリーブ92A,92BからランセットLの針部L′が突出する長さを調整することができる。
【0006】
調整機構9A,9Bでは、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97BにおいてランセットLの移動を制限するとともに、外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bと、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bとの距離を調整することにより、穿刺深さの調整が行われる。そのため、図21に示したように、外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bと、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bとの間に、血液Bが溜まりやすく、不衛生である。したがって、衛生面を考慮した場合には、調整機構9A,9Bの分解・洗浄を頻繁に行い、その後に再び調整機構9A,9Bを組み立てる必要がある。しかしながら、調整機構9A,9Bは、組み立てた状態で穿刺装置の本体部に対して着脱することを予定しており、調整機構9A,9Bを分解し、組み立てる作業は容易ではなく、使用者は煩わしい作業を強いられる。その上、調整機構9A,9Bを頻繁に分解し、組み立てることになれば、調整機構9A,9Bが破損する可能性や外部スリーブ92A,92Bなどの部品を紛失する可能性が高くなる。また、複数の複雑な部品を洗浄するのは手間であるばかりか、洗浄が行き届かない部分が残る可能性が高い。さらに、調整機構9A,9Bは、破損や紛失を避けるために、分解できないように構成されることもあり、その場合には、洗浄が行き届かない部分が残る可能性が一層高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第97/4707号パンフレット
【特許文献2】特表平10−508527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとに考えだされたものであって、煩雑なメンテナンスを必要とせず、衛生的に、長期間にわたって安定して穿刺深さを調整できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記した課題を解決するため、次の技術的手段を講じている。
【0010】
すなわち、本発明においては、ハウジング内に保持させた穿刺要素を穿刺方向に移動させ、上記穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置であって、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、上記穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、上記ハウジングに対して上記穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体と、この変位体と上記穿刺および退避方向に一体動するカバーと、を備えていることを特徴とする、穿刺深さを調整可能な穿刺装置が提供される。
【0011】
カム機構は、たとえば変位体を移動させるための操作体であって、軸部を有する操作体と、ハウジングおよび上記変位体に設けられ、上記軸部の移動を許容するための第1および第2溝部と、を備えたものとして構成される。この場合、穿刺深さ調整機構は、軸部を第1および第2溝部において移動させることにより、ハウジングに対する上記変位体の位置が変化するように構成するのが好ましい。
【0012】
この穿刺装置では、カバーを変位体に対して着脱自在とし、穿刺深さ調整機構を、カバーを取り外した状態で変位体に負荷作用させることにより、ハウジングに対する上記変位体の位置が調整されるように構成するのが好ましい。カバーは、たとえば変位体の少なくとも一部を覆うようにして変位体に対して装着されるように構成される。
【0013】
カバーは、たとえば内部が観察できるように透明または半透明に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の参考例に係る穿刺装置を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した状態からカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示した穿刺装置の先端部の分解斜視図である。
【図5】図1に示した穿刺装置におけるガイド部材の断面図である。
【図6】(a)は図1に示した穿刺装置における回転体の全体斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図7】図1に示した穿刺装置にランセットを装着する動作を説明するための断面図である。
【図8】図1に示した穿刺装置にランセットを装着する動作を説明するための断面図である。
【図9】図1に示した穿刺装置において、穿刺深さを調整する動作を説明するための断面図である。
【図10】図1に示した穿刺装置における穿刺動作を説明するための断面図である。
【図11】図1に示した穿刺装置における穿刺動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る穿刺装置の断面図である。
【図13】図12に示した穿刺装置の穿刺動作を説明するための模式図である。
【図14】本発明の他の参考例に係る穿刺装置の要部断面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る穿刺装置の全体斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】図15に示した穿刺装置の穿刺動作を説明するための断面図である。
【図19】従来の穿刺装置における穿刺深さ調整機構の一例を説明するための図であり、(a)は分解斜視図、(b)は分解断面図で示したものである。
【図20】従来の穿刺装置における穿刺深さ調整機構の他の例を説明するための図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て断面図で示したものである。
【図21】従来の調整機構における課題を説明するための調整機構の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態および参考例について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1ないし図3に示した穿刺装置1は、本発明の参考例に係り、図3に良く表れているようにランセット2を装着して使用するものである。ランセット2は、本体部20から針部21が突出した形態を有している。針部21は、たとえば合成樹脂により本体部20を成形する際に、インサート成形により本体部20に一体化されている。
【0017】
穿刺装置1は、ハウジング3、ランセットホルダ4、操作キャップ5、回転体6およびカバー7を備えている。
【0018】
ハウジング3は、ランセットホルダ4を収容するためのものである。このハウジング3は、本体部30に対してガイド部材31を固定した構成を有している。
【0019】
本体部30は、貫通孔32、凸部33および環状凹部34を有している。貫通孔32は、操作キャップ5の移動を許容するためのものであり、ハウジング3の上壁35に設けられている。凸部33は、コイルバネS1,S2を保持するとともに、ランセットホルダ4を係合させるためのものである。環状凹部34は、本体部30に対してガイド部材31を固定するためのものである。
【0020】
ガイド部材31は、後述するランセットホルダ4の穿刺方向N1への移動を制限するとともに、回転体6を支持するためのものである。このガイド部材31は、図4および図5に良く表れているように、アウタフランジ部36、インナフランジ部37、複数の直線凹部38、および螺旋凹部39を備えている。
【0021】
アウタフランジ部36は、ガイド部材31を本体部30に固定するために利用されるものであり、本体部30の環状凹部34に嵌合されている。これにより、本体部30に対してガイド部材31が回転不能に固定される。インナフランジ部37は、後述するランセットホルダ4のフランジ部42を干渉させるためのものである(図3参照)。複数の直線凹部38は、後述する回転体6における可動部60の突起64(図6(a)参照)を係合させるためのものであり、穿刺および退避方向N1,N2に延びるとともに、ガイド部材31の内面における周方向において一定間隔で設けられている。螺旋凹部39は、後述する回転体6における突出片61A,61Bの傾斜突起65A,65B(図6(a)および(b)参照)を係合させるためのものである。
【0022】
ランセットホルダ4は、図3から分かるように、ランセット2を保持するためのものであり、操作キャップ5の押圧操作によって穿刺方向N1方向に向けて移動できるようになされている。このランセットホルダ4には、一対の係合爪40、凹部41およびフランジ部42が設けられている。
【0023】
一対の係合爪40は、ハウジング3の凸部33に係合可能であり、互いに近接離間可能な弾性を有している(図10参照)。凹部41は、ランセット2を保持するためのものである。フランジ部42は、上述したようにするガイド部材31のインナフランジ部37に干渉する部分であるとともに、ハウジング3の凸部33とともにコイルバネS1を保持するために利用される。コイルバネS1は、一対の係合爪40を凸部33に係合させた状態では、圧縮状態となるようになっている。したがって、凸部33に一対の係合爪40が係合した状態を解除すれば、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1に移動させられる(図10および図11参照)。
【0024】
操作キャップ5は、ランセットホルダ4を穿刺方向N1に移動させる際に操作される部分であり、ハウジング3の貫通孔32からその一部が突出するようにしてハウジング3にスライド可能に保持されている。操作キャップ5は、フランジ部50および一対の押圧部51を有している。フランジ部50とハウジング3の凸部33との間にはコイルバネS2が配置されている。フランジ部50は、自然状態ではハウジング3の上壁35に当接している。一方、操作キャップ5が穿刺方向N1方向に押圧された場合には、操作キャップ5がコイルバネS2を圧縮させながら穿刺方向N1に移動する(図10参照)。これに対して、操作キャップ5に対する押圧力が取り除かれた場合には、コイルバネS2の弾発力によって操作キャップ5が元の位置に復帰する(図11参照)。
【0025】
各押圧部51は、図10に示したように操作キャップ5が穿刺方向N1に一定距離以上移動させられた場合に一対の係合爪40を押圧し、それらの端部どうしが互いに近接するように各係合爪40を変移させるものである。一対の係合爪40は、押圧部51の作用により、凸部33との係合状態(ラッチ状態)が解除され、上述したように、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1方向に移動させられる(図11参照)。
【0026】
図6(a)および(b)に示したように、回転体6は、穿刺深さを調整する際に操作される部分であり、可動部60、一対の突出片61A,61Bおよびフランジ部62を有している。
【0027】
可動部60は、L字状の切欠63を設けることにより、バネ性が付与されたものであり、矢印N1,N2方向に延びる突起64を有している。突起64は、上述したように、ガイド部材31における直線凹部38(図5参照)を係合させるためのものである。一対の突出片61A,61Bは、回転体6の中心を挟んで対面した状態で矢印N2方向に突出しているとともに、互いに高さが異なったものとされている。各突出片61A,61Bには、傾斜突起65A,65Bが形成されている。傾斜突起65A,65Bは、上述したように、ガイド部材31の螺旋凹部39に係合させるためのものであり、螺旋凹部39と同一ピッチの螺旋軌跡上に配置されている(図5参照)。ただし、回転体6においては、突出片の数は、2個には限定されず、1であっても3以上であってもよい。フランジ部62は、カバー7を装着する際に利用されるものであり、後述するカバー7の環状凸部71を係合させるための環状凹部66を有している(図3参照)。
【0028】
回転体6の端部67には、目盛68が付されている。この目盛68は、穿刺深さを調整する際に利用されるものである。より具体的には、図2および図4に示したように、回転体6を回転させて、目盛68における目的とする数字をガイド部材31の外面に設けられたマークMに位置合わせすることにより、穿刺深さを調整することができる。
【0029】
図4ないし図6から予想されるように、突起64および傾斜突起65A,65Bをガイド部材31の直線凹部38および螺旋凹部39に係合させた状態で回転体6を回転させれば、傾斜突起65A,65Bが螺旋凹部39において移動し、傾斜突起65A,65Bが螺旋運動を行うこととなる。その結果、回転体6は、ガイド部材31に対して穿刺または退避方向N1,N2方向に移動することとなる(図9(a)および(b)参照)。一方、突起64は、回転体6の回転にともなって傾斜突起65A,65Bと同様に螺旋運動を行うこととなるが、このときに、傾斜突起65A,65Bの位置に対応した直線凹部38に係合する。したがって、回転体6を回転させた場合には、突起64と直線凹部38との係合によってクリック感が得られるとともに、突起64と直線凹部38とが係合した状態において回転体6の回転を停止することにより、ガイド部材31に対して回転体6が固定された状態が維持される。
【0030】
図1ないし図4に示したカバー7は、ランセット2の針部21を皮膚に突き刺すときに、皮膚に当接させるためのものであり、カバー7の内部が観察できるように、全体が透明なものに形成されている。したがって、回転体6にカバー7を装着した状態においても、ランセットホルダ4にランセット2が装着されているか否かを確認することができるため、誤操作を抑制することができるようになる。さらに、穿刺後において、カバー7の内部に血液が入り込んだか否かを確認することができるようになる。その結果、カバー7の内部に血液が入り込んだときにカバー7の洗浄を行えばよく、穿刺を行うたびにカバー7を洗浄する必要がなくなるため、メンテナンスの手間が軽減される。
【0031】
このカバー7は、先端部に設けられた貫通孔70と、内面に設けられた環状凸部71と、を有している。貫通孔70は、ランセット2の針部21が突出するのを許容するためのものである。環状凸部71は、上述したように回転体6のフランジ部62に係合させるためのものである。この環状凸部71は、図面上には明確に表れていないが、その幅寸法や高さ寸法が回転体6のフランジ部62の幅寸法や深さ寸法よりも小さくされている。したがって、カバー7を回転させた場合には、このカバー7が回転体6に対して独立して回転し、またカバー7は回転体6に対して着脱自在となっている。その結果、第1に、カバー7に外力が作用し、あるいは使用者がカバー7を回転させたとしても、そのときに回転体6が回転することがなく、一旦設定した穿刺深さが不用意に変更されることはない。第2に、カバー7の内部に血液が入り込んだとしても、カバー7を取り外すことにより、容易かつ確実に洗浄することができるため、メンテナンス手間が軽減される上に衛生的である。また、カバー7の内部の洗浄は、カバー7を取り外して行うことができるために、穿刺深さを調整するための機構の全体を分解する必要がなくなる。この点においても、メンテナンスの負担が軽減されるといえる。
【0032】
上述のように、カバー7は、その内面に設けられた環状凸部71を回転体6のフランジ部62に係合させることにより回転体6に装着される。したがって、回転体6にカバー7を装着した状態では、回転体6における目盛68が付された端部67は、カバー7の内部に収容されることとなる。その結果、回転体6にカバー7を装着した状態では目盛68が外部に露出していないために目盛68が視界に入りにくく、使用者においては、回転体6を操作すべきとの脅迫観念や衝動から開放される。そのため、穿刺装置1の操作が煩雑な印象を与えることを抑制することができるようになる。
【0033】
次に、穿刺装置1の使用方法を説明する。穿刺作業に当たっては、まず図3に示したようにランセットホルダ4にランセット2を装着した状態とする。ランセット2の装着は、図7に示したように、ハウジング3からカバー7を取り外した状態で、ランセットホルダ4の凹部41に対して、保護キャップ22が付いたランセット2の本体部20を、針部21とは反対の側から嵌め込むことにより行われる。この際、ランセットホルダ4の一対の係合爪40をハウジング3の凸部33に係合させてラッチ状態を達成してもよい。もちろん、ラッチ状態は、ランセット2を保持させる動作とは別に行ってもよい。つまり、ランセット2を保持させる前に、ラッチ状態を達成しておいてもよい。
【0034】
ランセットホルダ4に保護キャップ22が付いたランセット2を装着した場合には、図8に示したように保護キャップ22を取り外す。保護キャップ22の取り外しは、たとえば保護キャップ22を指先で摘んで保護キャップ22を捻り切ることにより行われる。
【0035】
このようなランセット2の装着と前後して、必要に応じて穿刺深さを調整する。穿刺深さの調整は、回転体6を回転させてハウジング3に対して回転体6を穿刺または退避方向N1,N2方向に移動させることにより行われる。穿刺深さの選択は、上述したように、回転体6における目盛68の数字を、ガイド部材31のマークMに位置合わせすることにより行われる。図9(a)および(b)に仮想線で示したように、回転体6には、後においてカバー7が装着されるため、回転体6を穿刺または退避方向N1,N2に移動させることにより、穿刺時におけるカバー7の位置、ひいてはカバー7の貫通孔70の位置を選択することができる。ここで、ランセットホルダ4は、フランジ部42がガイド部材31のインナフランジ部37と干渉することにより穿刺方向N1への移動が制限されるが、インナフランジ部37の位置は、回転体6の回転によらず固定化されている。そのため、ランセットホルダ4が停止させられる位置は、回転体6の位置に関係なく一定化される。したがって、回転体6を回転させてカバー7(貫通孔70)の位置を変化させることにより、貫通孔7からランセット2の針部21が突出する量を調整することができる。
【0036】
次いで、図10に示したように、回転体6に対してカバー7を装着した上で、カバー7の端面71を皮膚Skに密着させた後、図11に示したように、ランセット2を穿刺方向N1に移動させてランセット2の針部21を皮膚Skに突き刺す。皮膚Skに対する針部21の突き刺しは、図10に示すように、操作キャップ5を穿刺方向N1に押し下げて、ランセットホルダ4のラッチ状態を解除させることにより行われる。これにより、図11に示したように、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1に移動し、ランセット2の針部21が皮膚Skに突き刺さる。このとき、皮膚Skが切開され、皮膚から血液が出液する。針部21が皮膚Skに突き刺さった状態においては、コイルバネS1は、コイルバネS1がハウジング3の凸部33およびランセットホルダ4のフランジ部42に固定されているために伸長させられる。したがって、針部21は、コイルバネS1の弾発力によって皮膚Skから即座に抜き取られるため、皮膚Skに針部21が突き刺さっている時間が短く、穿刺痛を低減することができる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係る穿刺装置について、図12および図13を参照して説明する。
【0038】
図12に示した穿刺装置1Bは、上記参考例に係る穿刺装置1(図3参照)と同様な穿刺深さ調整機構を備えたものである。すなわち、穿刺深さ調整機構は、回転体6に対してカバー7を一体動可能に保持させるとともに、ガイド部材31に対して回転体6を螺合した構成を有している。
【0039】
一方、穿刺装置1Bは、ランセットホルダ45Bを移動させる構成が穿刺装置1(図3参照)とは異なっている。すなわち、穿刺装置1Bでは、カム機構4Bを利用してランセット2を移動させ、ハウジング3Bに干渉させることなくランセット2の穿刺方向N1への移動を規制するように構成されている。
【0040】
カム機構4Bは、リンク部材43B、移動プレート44B、およびランセットホルダ45Bを有しており、移動プレート44Bの往復運動を、リンク部材43Bの円運動を介してランセットホルダ45Bの往復運動へと変換するように構成されている。
【0041】
リンク部材43Bは、移動プレート44Bとランセットホルダ45Bとを連結し、移動プレート44Bが移動したときにその動きに連動させてランセットホルダ45Bを移動させるためのものである。このリンク部材43Bは、第1可動ピン43Ba、第2可動ピン43Bbおよび固定ピン43Bcを有している。これらのピン43Ba,43Bb,43Bcは、アーム部材43Bd,43Beを介して相互に連結されている。固定ピン43Bcは、図面上には明確に表れていないが、ハウジング3Bに固定されている。これにより、リンク部材43Bは、ハウジング3Bに対して固定ピン43Bcを中心として回転することができる。
【0042】
移動プレート44Bは、ハウジング3Bに対して穿刺および退避方向N1,N2に移動可能なものであり、ハウジング3Bに対してコイルバネS3を介して連結されている。この移動プレート44Bは、溝44Ba、操作部44Bbおよびフック部44Bcを有している。溝44Baは、リンク部材43Bにおける第1可動ピン43Baの移動を許容するためのものである。操作部44Bbは、移動プレート44Bを手動で移動させる際に利用するものであり、ハウジング3Bの開口部38Bにより穿刺および退避方向N1,N2への移動が許容されている。フック部44Bcは、ハウジング3Bの突出部33Bに係合させて移動プレート44Bをハウジング3Bにラッチさせるためのものである。フック部44Bcを突出部33Bに係合させた状態では、コイルバネS3が伸ばされ、移動プレート44Bは退避方向N2側に付勢される。したがって、フック部44Bcが突出部33Bに係合した状態を解除した場合には、コイルバネS3の弾発力によって、移動プレート44Bが穿刺方向N1に移動する。フック部44Bcの係合状態の解除は、ラッチ解除部材46Bを利用して行われる。このラッチ解除部材46Bは、適度な弾性を有するとともに、固定端部46Baにおいてハウジング3Bに固定されており、自由端部46Bbが固定端部46Baを支点として揺動することができるように構成されている。自由端部46Bbは、フック部44Bcに近接して配置されており、自由端部46Bbを押下することにより、フック部44Bcに干渉するように構成されている。
【0043】
ランセットホルダ45Bは、ランセット2を保持し、このランセット2を移動させるためのものであり、移動プレート44Bと同様に、穿刺および退避方向N1,N2に移動可能とされている。このランセットホルダ45Bは、ランセット2を保持するためのホルダ部45Baと、移動プレート44Bに対してリンク部材43Bを介して連結するための溝45Bbとを有している。溝45Bbは、リンク部材43Bにおける第2可動ピン43Bbの移動を許容するためのものであり、穿刺および退避方向N1,N2と直交する方向に延びている。
【0044】
穿刺装置1Bにおいては、図12および図13に示したように、移動プレート44Bのフック部44Bcを突出部33Bに係合した後に、ラッチ解除部材46Bの自由端部46Bbを押下することにより、ランセット2の針部21を皮膚Skに突き刺すことができる。ラッチ解除部材46Bの自由端部46Bbを押下した場合には、自由端部46Bbがフック部44Bcに作用して、突出部33Bにフック部44Bcが係合された状態が解除される。このとき、図13(a)および(b)に示したように、移動プレート44Bが退避方向N2に向けて移動し、これに伴ってリンク部材43Bが時計回り方向に回転してランセットホルダ45Bを穿刺方向N1に押し下げ、ランセット2の針部21が皮膚Skに突き刺さる。その後、図13(b)および(c)に示したように、移動プレート44Bが退避方向N2にさらに移動し、これに伴ってランセットホルダ45Bが退避方向N2に持ち上げられ、皮膚Skからランセット2の針部21が抜き去られる。
【0045】
本実施の形態におけるカム機構は一例であり、他のカム機構を利用してランセットホルダを穿刺および退避方向に移動させるように構成してもよい。たとえば、移動プレートに対応する部材をハウジングにおいて円運動させ、その円運動に連動させてランセットホルダを穿刺または退避方向に移動させるように構成することもできる。
【0046】
次に、本発明の他の参考例に係る穿刺装置について、図14を参照して説明する。
【0047】
図14に示した穿刺装置1Cでは、上記実施の形態とは異なる穿刺深さ調整機構が採用されている。この穿刺深さ調整機構は、ガイド部材31C、回転体6Cおよびカバー7Cを備えている。
【0048】
ガイド部材31Cは、ハウジング3Cの本体部30Cに対して回転不能に固定されている。回転体6Cは、ガイド部材31Cに螺合されており、穿刺または退避方向N1,N2周りに回転させることにより、穿刺または退避方向N1,N2に移動するように構成されている。この回転体6Cには、ランセットホルダ4Cを干渉させるためのフランジ部69Cが設けられている。カバー7Cは、ガイド部材31Cに対して回転可能かつ穿刺および退避方向N1,N2に移動不能に固定されているとともに、ガイド部材31Cに対して着脱自在とされている。
【0049】
この構成では、回転体6Cを回転させることにより、カバー7Cの端面71Cと回転体6Cのフランジ部69Cとの距離を変化させることができるため、フランジ部69Cの位置を調整することにより穿刺深さを調整することができる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態に係る穿刺装置について、図15ないし図18を参照して説明する。
【0051】
図15ないし図17に示した穿刺装置1Dは、カム機構8Dを利用して穿刺深さを調整するように構成されたものであり、ハウジング3D、ランセットホルダ4D、変位体6Dおよびカバー7Dを有している。
【0052】
カム機構8Dは、第1溝部80D、第2溝部81Dおよび操作体82Dを有している。第1溝部80Dは、ハウジング3Dにおいて貫通して設けられており、穿刺および退避方向N1,N2に対して傾斜している。第2溝部81Dは、変位体6Dにおいて非貫通状に設けられており、穿刺および退避方向N1,N2に対して直交している。操作体82Dは、第1および第2溝部80D,81Dを移動可能な軸部83Dを有している。
【0053】
ハウジング3D、ランセットホルダ4Dおよびカバー7Dは、第1の実施の形態とは形態が異なるものの、その機能においては基本的に同様である。すなわち、ハウジング3Dの内部において、ランセットホルダ4Dが移動可能であり、ランセットホルダ4Dが穿刺方向N1に移動することによりランセット2の針部21が皮膚に突き刺さる。穿刺方向N1に対するランセットホルダ4Dの移動は、ハウジング3Dのフランジ部37Dに干渉することにより停止させられる。ただし、ハウジング3Dにおいては、上述したようにカム機構8Dを構成する第1溝部80Dが設けられており、その点において第1の実施の形態とは異なっている。
【0054】
穿刺装置1Dでは、図18(a)〜(c)に示したように、操作体82Dを穿刺および退避方向N1,N2に直交する方向に移動させることにより穿刺深さを調整することができる。より具体的には、操作体82Dを移動させた場合には、軸部83Dが第1および第2溝部80D,81Dを直進運動する。このとき、第1溝部80Dが傾斜状に設けられているために、軸部83Dは変位体6Dを穿刺または退避方向N1,N2に移動させつつ第2溝部81Dを移動する。ここで、カバー7Dは、変位体6Dと一体動するため、変位体6Dの移動に伴ってハウジング3Dに対するカバー7Dの位置が変化する。したがって、操作体82Dを移動させて変位体6Dを移動させれば、カバー7Dを移動させて穿刺深さの調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1B,1C,1D 穿刺装置
21 (ランセットの)針部(穿刺要素)
3,3B,3D ハウジング
30,30C (ハウジングの)本体部
31,31C (ハウジングの)ガイド部材
37 (ガイド部材の)インナフランジ部(段部)
37D (ハウジングの)フランジ部(段部)
4,4C,4D ランセットホルダ(移動体)
6,6C 回転体(変位体)
6D 変位体
64 (回転体の)突起(1以上の凸部)
65A,65B (回転体の)傾斜突起(凸部)
68 (回転体の)目盛
69C フランジ部
7 カバー
8D カム機構
80D (カム機構の)第1溝部
81D (カム機構の)第2溝部
82D (カム機構の)操作体
Sk 皮膚
N1 穿刺方向
N2 退避方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿刺要素を移動させて穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置に関する。より具体的には、本発明は、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整することができる穿刺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穿刺装置における穿刺深さを調整するための調整機構としては、たとえば本願の図19あるいは図20に示したように、内部スリーブ90A,90B、中間リング91A,91Bおよび外部スリーブ92A,92Bの3部材からなるものがある(たとえば特許文献1および2参照)。
【0003】
図19に示した調整機構9Aは、内部スリーブ90Aに対して中間リング91Aが固定され、この中間リング91Aに対して外部スリーブ92Aが図中の矢印N1,N2方向に移動するように構成されたものである。より具体的には、中間リング91Aにおける矢印N1方向側の端面93Aが傾斜状に形成されている一方で、外部スリーブ92Aの内部に、中間リング91Aの端面93Aに当接しうる傾斜面94Aが形成されている。この構成では、外部スリーブ92Aを回転させることにより、中間リング91Aおよび内部スリーブ90Aに対して外部スリーブ92AがN1,N2方向に移動する。
【0004】
一方、図20に示した調整機構9Bは、外部スリーブ92Bに対して中間リング91Bが固定され、この中間リング91Bが内部スリーブ90Bに対して図中の矢印N1,N2方向に移動するように構成されたものである。より具体的には、中間リング91Bの内面にねじ溝95Bが形成されている一方で、内部スリーブ90Bの先端部の外面にねじ山96Bが形成されている。この構成では、外部スリーブ92Bを回転させることにより、内部スリーブ90Bに対して中間リング91Bおよび外部スリーブ92BがN1,N2方向に移動する。
【0005】
調整機構9A,9Bを穿刺装置に組み込んだ場合には、ランセットLの矢印N1方向への移動は、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bにおいて制限される。したがって、内部スリーブ90A,90Bに対して外部スリーブ92A,92BをN1,N2方向に移動させることにより、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bと外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bとの距離、ひいては外部スリーブ92A,92BからランセットLの針部L′が突出する長さを調整することができる。
【0006】
調整機構9A,9Bでは、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97BにおいてランセットLの移動を制限するとともに、外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bと、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bとの距離を調整することにより、穿刺深さの調整が行われる。そのため、図21に示したように、外部スリーブ92A,92Bの先端部98A,98Bと、内部スリーブ90A,90Bの先端部97A,97Bとの間に、血液Bが溜まりやすく、不衛生である。したがって、衛生面を考慮した場合には、調整機構9A,9Bの分解・洗浄を頻繁に行い、その後に再び調整機構9A,9Bを組み立てる必要がある。しかしながら、調整機構9A,9Bは、組み立てた状態で穿刺装置の本体部に対して着脱することを予定しており、調整機構9A,9Bを分解し、組み立てる作業は容易ではなく、使用者は煩わしい作業を強いられる。その上、調整機構9A,9Bを頻繁に分解し、組み立てることになれば、調整機構9A,9Bが破損する可能性や外部スリーブ92A,92Bなどの部品を紛失する可能性が高くなる。また、複数の複雑な部品を洗浄するのは手間であるばかりか、洗浄が行き届かない部分が残る可能性が高い。さらに、調整機構9A,9Bは、破損や紛失を避けるために、分解できないように構成されることもあり、その場合には、洗浄が行き届かない部分が残る可能性が一層高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第97/4707号パンフレット
【特許文献2】特表平10−508527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情のもとに考えだされたものであって、煩雑なメンテナンスを必要とせず、衛生的に、長期間にわたって安定して穿刺深さを調整できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、上記した課題を解決するため、次の技術的手段を講じている。
【0010】
すなわち、本発明においては、ハウジング内に保持させた穿刺要素を穿刺方向に移動させ、上記穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置であって、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、上記穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、上記ハウジングに対して上記穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体と、この変位体と上記穿刺および退避方向に一体動するカバーと、を備えていることを特徴とする、穿刺深さを調整可能な穿刺装置が提供される。
【0011】
カム機構は、たとえば変位体を移動させるための操作体であって、軸部を有する操作体と、ハウジングおよび上記変位体に設けられ、上記軸部の移動を許容するための第1および第2溝部と、を備えたものとして構成される。この場合、穿刺深さ調整機構は、軸部を第1および第2溝部において移動させることにより、ハウジングに対する上記変位体の位置が変化するように構成するのが好ましい。
【0012】
この穿刺装置では、カバーを変位体に対して着脱自在とし、穿刺深さ調整機構を、カバーを取り外した状態で変位体に負荷作用させることにより、ハウジングに対する上記変位体の位置が調整されるように構成するのが好ましい。カバーは、たとえば変位体の少なくとも一部を覆うようにして変位体に対して装着されるように構成される。
【0013】
カバーは、たとえば内部が観察できるように透明または半透明に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の参考例に係る穿刺装置を示す全体斜視図である。
【図2】図1に示した状態からカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1に示した穿刺装置の先端部の分解斜視図である。
【図5】図1に示した穿刺装置におけるガイド部材の断面図である。
【図6】(a)は図1に示した穿刺装置における回転体の全体斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図7】図1に示した穿刺装置にランセットを装着する動作を説明するための断面図である。
【図8】図1に示した穿刺装置にランセットを装着する動作を説明するための断面図である。
【図9】図1に示した穿刺装置において、穿刺深さを調整する動作を説明するための断面図である。
【図10】図1に示した穿刺装置における穿刺動作を説明するための断面図である。
【図11】図1に示した穿刺装置における穿刺動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明の実施形態に係る穿刺装置の断面図である。
【図13】図12に示した穿刺装置の穿刺動作を説明するための模式図である。
【図14】本発明の他の参考例に係る穿刺装置の要部断面図である。
【図15】本発明の他の実施の形態に係る穿刺装置の全体斜視図である。
【図16】図15のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図15のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】図15に示した穿刺装置の穿刺動作を説明するための断面図である。
【図19】従来の穿刺装置における穿刺深さ調整機構の一例を説明するための図であり、(a)は分解斜視図、(b)は分解断面図で示したものである。
【図20】従来の穿刺装置における穿刺深さ調整機構の他の例を説明するための図であり、(a)は分解斜視図、(b)は組み立て断面図で示したものである。
【図21】従来の調整機構における課題を説明するための調整機構の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態および参考例について、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1ないし図3に示した穿刺装置1は、本発明の参考例に係り、図3に良く表れているようにランセット2を装着して使用するものである。ランセット2は、本体部20から針部21が突出した形態を有している。針部21は、たとえば合成樹脂により本体部20を成形する際に、インサート成形により本体部20に一体化されている。
【0017】
穿刺装置1は、ハウジング3、ランセットホルダ4、操作キャップ5、回転体6およびカバー7を備えている。
【0018】
ハウジング3は、ランセットホルダ4を収容するためのものである。このハウジング3は、本体部30に対してガイド部材31を固定した構成を有している。
【0019】
本体部30は、貫通孔32、凸部33および環状凹部34を有している。貫通孔32は、操作キャップ5の移動を許容するためのものであり、ハウジング3の上壁35に設けられている。凸部33は、コイルバネS1,S2を保持するとともに、ランセットホルダ4を係合させるためのものである。環状凹部34は、本体部30に対してガイド部材31を固定するためのものである。
【0020】
ガイド部材31は、後述するランセットホルダ4の穿刺方向N1への移動を制限するとともに、回転体6を支持するためのものである。このガイド部材31は、図4および図5に良く表れているように、アウタフランジ部36、インナフランジ部37、複数の直線凹部38、および螺旋凹部39を備えている。
【0021】
アウタフランジ部36は、ガイド部材31を本体部30に固定するために利用されるものであり、本体部30の環状凹部34に嵌合されている。これにより、本体部30に対してガイド部材31が回転不能に固定される。インナフランジ部37は、後述するランセットホルダ4のフランジ部42を干渉させるためのものである(図3参照)。複数の直線凹部38は、後述する回転体6における可動部60の突起64(図6(a)参照)を係合させるためのものであり、穿刺および退避方向N1,N2に延びるとともに、ガイド部材31の内面における周方向において一定間隔で設けられている。螺旋凹部39は、後述する回転体6における突出片61A,61Bの傾斜突起65A,65B(図6(a)および(b)参照)を係合させるためのものである。
【0022】
ランセットホルダ4は、図3から分かるように、ランセット2を保持するためのものであり、操作キャップ5の押圧操作によって穿刺方向N1方向に向けて移動できるようになされている。このランセットホルダ4には、一対の係合爪40、凹部41およびフランジ部42が設けられている。
【0023】
一対の係合爪40は、ハウジング3の凸部33に係合可能であり、互いに近接離間可能な弾性を有している(図10参照)。凹部41は、ランセット2を保持するためのものである。フランジ部42は、上述したようにするガイド部材31のインナフランジ部37に干渉する部分であるとともに、ハウジング3の凸部33とともにコイルバネS1を保持するために利用される。コイルバネS1は、一対の係合爪40を凸部33に係合させた状態では、圧縮状態となるようになっている。したがって、凸部33に一対の係合爪40が係合した状態を解除すれば、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1に移動させられる(図10および図11参照)。
【0024】
操作キャップ5は、ランセットホルダ4を穿刺方向N1に移動させる際に操作される部分であり、ハウジング3の貫通孔32からその一部が突出するようにしてハウジング3にスライド可能に保持されている。操作キャップ5は、フランジ部50および一対の押圧部51を有している。フランジ部50とハウジング3の凸部33との間にはコイルバネS2が配置されている。フランジ部50は、自然状態ではハウジング3の上壁35に当接している。一方、操作キャップ5が穿刺方向N1方向に押圧された場合には、操作キャップ5がコイルバネS2を圧縮させながら穿刺方向N1に移動する(図10参照)。これに対して、操作キャップ5に対する押圧力が取り除かれた場合には、コイルバネS2の弾発力によって操作キャップ5が元の位置に復帰する(図11参照)。
【0025】
各押圧部51は、図10に示したように操作キャップ5が穿刺方向N1に一定距離以上移動させられた場合に一対の係合爪40を押圧し、それらの端部どうしが互いに近接するように各係合爪40を変移させるものである。一対の係合爪40は、押圧部51の作用により、凸部33との係合状態(ラッチ状態)が解除され、上述したように、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1方向に移動させられる(図11参照)。
【0026】
図6(a)および(b)に示したように、回転体6は、穿刺深さを調整する際に操作される部分であり、可動部60、一対の突出片61A,61Bおよびフランジ部62を有している。
【0027】
可動部60は、L字状の切欠63を設けることにより、バネ性が付与されたものであり、矢印N1,N2方向に延びる突起64を有している。突起64は、上述したように、ガイド部材31における直線凹部38(図5参照)を係合させるためのものである。一対の突出片61A,61Bは、回転体6の中心を挟んで対面した状態で矢印N2方向に突出しているとともに、互いに高さが異なったものとされている。各突出片61A,61Bには、傾斜突起65A,65Bが形成されている。傾斜突起65A,65Bは、上述したように、ガイド部材31の螺旋凹部39に係合させるためのものであり、螺旋凹部39と同一ピッチの螺旋軌跡上に配置されている(図5参照)。ただし、回転体6においては、突出片の数は、2個には限定されず、1であっても3以上であってもよい。フランジ部62は、カバー7を装着する際に利用されるものであり、後述するカバー7の環状凸部71を係合させるための環状凹部66を有している(図3参照)。
【0028】
回転体6の端部67には、目盛68が付されている。この目盛68は、穿刺深さを調整する際に利用されるものである。より具体的には、図2および図4に示したように、回転体6を回転させて、目盛68における目的とする数字をガイド部材31の外面に設けられたマークMに位置合わせすることにより、穿刺深さを調整することができる。
【0029】
図4ないし図6から予想されるように、突起64および傾斜突起65A,65Bをガイド部材31の直線凹部38および螺旋凹部39に係合させた状態で回転体6を回転させれば、傾斜突起65A,65Bが螺旋凹部39において移動し、傾斜突起65A,65Bが螺旋運動を行うこととなる。その結果、回転体6は、ガイド部材31に対して穿刺または退避方向N1,N2方向に移動することとなる(図9(a)および(b)参照)。一方、突起64は、回転体6の回転にともなって傾斜突起65A,65Bと同様に螺旋運動を行うこととなるが、このときに、傾斜突起65A,65Bの位置に対応した直線凹部38に係合する。したがって、回転体6を回転させた場合には、突起64と直線凹部38との係合によってクリック感が得られるとともに、突起64と直線凹部38とが係合した状態において回転体6の回転を停止することにより、ガイド部材31に対して回転体6が固定された状態が維持される。
【0030】
図1ないし図4に示したカバー7は、ランセット2の針部21を皮膚に突き刺すときに、皮膚に当接させるためのものであり、カバー7の内部が観察できるように、全体が透明なものに形成されている。したがって、回転体6にカバー7を装着した状態においても、ランセットホルダ4にランセット2が装着されているか否かを確認することができるため、誤操作を抑制することができるようになる。さらに、穿刺後において、カバー7の内部に血液が入り込んだか否かを確認することができるようになる。その結果、カバー7の内部に血液が入り込んだときにカバー7の洗浄を行えばよく、穿刺を行うたびにカバー7を洗浄する必要がなくなるため、メンテナンスの手間が軽減される。
【0031】
このカバー7は、先端部に設けられた貫通孔70と、内面に設けられた環状凸部71と、を有している。貫通孔70は、ランセット2の針部21が突出するのを許容するためのものである。環状凸部71は、上述したように回転体6のフランジ部62に係合させるためのものである。この環状凸部71は、図面上には明確に表れていないが、その幅寸法や高さ寸法が回転体6のフランジ部62の幅寸法や深さ寸法よりも小さくされている。したがって、カバー7を回転させた場合には、このカバー7が回転体6に対して独立して回転し、またカバー7は回転体6に対して着脱自在となっている。その結果、第1に、カバー7に外力が作用し、あるいは使用者がカバー7を回転させたとしても、そのときに回転体6が回転することがなく、一旦設定した穿刺深さが不用意に変更されることはない。第2に、カバー7の内部に血液が入り込んだとしても、カバー7を取り外すことにより、容易かつ確実に洗浄することができるため、メンテナンス手間が軽減される上に衛生的である。また、カバー7の内部の洗浄は、カバー7を取り外して行うことができるために、穿刺深さを調整するための機構の全体を分解する必要がなくなる。この点においても、メンテナンスの負担が軽減されるといえる。
【0032】
上述のように、カバー7は、その内面に設けられた環状凸部71を回転体6のフランジ部62に係合させることにより回転体6に装着される。したがって、回転体6にカバー7を装着した状態では、回転体6における目盛68が付された端部67は、カバー7の内部に収容されることとなる。その結果、回転体6にカバー7を装着した状態では目盛68が外部に露出していないために目盛68が視界に入りにくく、使用者においては、回転体6を操作すべきとの脅迫観念や衝動から開放される。そのため、穿刺装置1の操作が煩雑な印象を与えることを抑制することができるようになる。
【0033】
次に、穿刺装置1の使用方法を説明する。穿刺作業に当たっては、まず図3に示したようにランセットホルダ4にランセット2を装着した状態とする。ランセット2の装着は、図7に示したように、ハウジング3からカバー7を取り外した状態で、ランセットホルダ4の凹部41に対して、保護キャップ22が付いたランセット2の本体部20を、針部21とは反対の側から嵌め込むことにより行われる。この際、ランセットホルダ4の一対の係合爪40をハウジング3の凸部33に係合させてラッチ状態を達成してもよい。もちろん、ラッチ状態は、ランセット2を保持させる動作とは別に行ってもよい。つまり、ランセット2を保持させる前に、ラッチ状態を達成しておいてもよい。
【0034】
ランセットホルダ4に保護キャップ22が付いたランセット2を装着した場合には、図8に示したように保護キャップ22を取り外す。保護キャップ22の取り外しは、たとえば保護キャップ22を指先で摘んで保護キャップ22を捻り切ることにより行われる。
【0035】
このようなランセット2の装着と前後して、必要に応じて穿刺深さを調整する。穿刺深さの調整は、回転体6を回転させてハウジング3に対して回転体6を穿刺または退避方向N1,N2方向に移動させることにより行われる。穿刺深さの選択は、上述したように、回転体6における目盛68の数字を、ガイド部材31のマークMに位置合わせすることにより行われる。図9(a)および(b)に仮想線で示したように、回転体6には、後においてカバー7が装着されるため、回転体6を穿刺または退避方向N1,N2に移動させることにより、穿刺時におけるカバー7の位置、ひいてはカバー7の貫通孔70の位置を選択することができる。ここで、ランセットホルダ4は、フランジ部42がガイド部材31のインナフランジ部37と干渉することにより穿刺方向N1への移動が制限されるが、インナフランジ部37の位置は、回転体6の回転によらず固定化されている。そのため、ランセットホルダ4が停止させられる位置は、回転体6の位置に関係なく一定化される。したがって、回転体6を回転させてカバー7(貫通孔70)の位置を変化させることにより、貫通孔7からランセット2の針部21が突出する量を調整することができる。
【0036】
次いで、図10に示したように、回転体6に対してカバー7を装着した上で、カバー7の端面71を皮膚Skに密着させた後、図11に示したように、ランセット2を穿刺方向N1に移動させてランセット2の針部21を皮膚Skに突き刺す。皮膚Skに対する針部21の突き刺しは、図10に示すように、操作キャップ5を穿刺方向N1に押し下げて、ランセットホルダ4のラッチ状態を解除させることにより行われる。これにより、図11に示したように、コイルバネS1の弾発力によってランセットホルダ4が穿刺方向N1に移動し、ランセット2の針部21が皮膚Skに突き刺さる。このとき、皮膚Skが切開され、皮膚から血液が出液する。針部21が皮膚Skに突き刺さった状態においては、コイルバネS1は、コイルバネS1がハウジング3の凸部33およびランセットホルダ4のフランジ部42に固定されているために伸長させられる。したがって、針部21は、コイルバネS1の弾発力によって皮膚Skから即座に抜き取られるため、皮膚Skに針部21が突き刺さっている時間が短く、穿刺痛を低減することができる。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係る穿刺装置について、図12および図13を参照して説明する。
【0038】
図12に示した穿刺装置1Bは、上記参考例に係る穿刺装置1(図3参照)と同様な穿刺深さ調整機構を備えたものである。すなわち、穿刺深さ調整機構は、回転体6に対してカバー7を一体動可能に保持させるとともに、ガイド部材31に対して回転体6を螺合した構成を有している。
【0039】
一方、穿刺装置1Bは、ランセットホルダ45Bを移動させる構成が穿刺装置1(図3参照)とは異なっている。すなわち、穿刺装置1Bでは、カム機構4Bを利用してランセット2を移動させ、ハウジング3Bに干渉させることなくランセット2の穿刺方向N1への移動を規制するように構成されている。
【0040】
カム機構4Bは、リンク部材43B、移動プレート44B、およびランセットホルダ45Bを有しており、移動プレート44Bの往復運動を、リンク部材43Bの円運動を介してランセットホルダ45Bの往復運動へと変換するように構成されている。
【0041】
リンク部材43Bは、移動プレート44Bとランセットホルダ45Bとを連結し、移動プレート44Bが移動したときにその動きに連動させてランセットホルダ45Bを移動させるためのものである。このリンク部材43Bは、第1可動ピン43Ba、第2可動ピン43Bbおよび固定ピン43Bcを有している。これらのピン43Ba,43Bb,43Bcは、アーム部材43Bd,43Beを介して相互に連結されている。固定ピン43Bcは、図面上には明確に表れていないが、ハウジング3Bに固定されている。これにより、リンク部材43Bは、ハウジング3Bに対して固定ピン43Bcを中心として回転することができる。
【0042】
移動プレート44Bは、ハウジング3Bに対して穿刺および退避方向N1,N2に移動可能なものであり、ハウジング3Bに対してコイルバネS3を介して連結されている。この移動プレート44Bは、溝44Ba、操作部44Bbおよびフック部44Bcを有している。溝44Baは、リンク部材43Bにおける第1可動ピン43Baの移動を許容するためのものである。操作部44Bbは、移動プレート44Bを手動で移動させる際に利用するものであり、ハウジング3Bの開口部38Bにより穿刺および退避方向N1,N2への移動が許容されている。フック部44Bcは、ハウジング3Bの突出部33Bに係合させて移動プレート44Bをハウジング3Bにラッチさせるためのものである。フック部44Bcを突出部33Bに係合させた状態では、コイルバネS3が伸ばされ、移動プレート44Bは退避方向N2側に付勢される。したがって、フック部44Bcが突出部33Bに係合した状態を解除した場合には、コイルバネS3の弾発力によって、移動プレート44Bが穿刺方向N1に移動する。フック部44Bcの係合状態の解除は、ラッチ解除部材46Bを利用して行われる。このラッチ解除部材46Bは、適度な弾性を有するとともに、固定端部46Baにおいてハウジング3Bに固定されており、自由端部46Bbが固定端部46Baを支点として揺動することができるように構成されている。自由端部46Bbは、フック部44Bcに近接して配置されており、自由端部46Bbを押下することにより、フック部44Bcに干渉するように構成されている。
【0043】
ランセットホルダ45Bは、ランセット2を保持し、このランセット2を移動させるためのものであり、移動プレート44Bと同様に、穿刺および退避方向N1,N2に移動可能とされている。このランセットホルダ45Bは、ランセット2を保持するためのホルダ部45Baと、移動プレート44Bに対してリンク部材43Bを介して連結するための溝45Bbとを有している。溝45Bbは、リンク部材43Bにおける第2可動ピン43Bbの移動を許容するためのものであり、穿刺および退避方向N1,N2と直交する方向に延びている。
【0044】
穿刺装置1Bにおいては、図12および図13に示したように、移動プレート44Bのフック部44Bcを突出部33Bに係合した後に、ラッチ解除部材46Bの自由端部46Bbを押下することにより、ランセット2の針部21を皮膚Skに突き刺すことができる。ラッチ解除部材46Bの自由端部46Bbを押下した場合には、自由端部46Bbがフック部44Bcに作用して、突出部33Bにフック部44Bcが係合された状態が解除される。このとき、図13(a)および(b)に示したように、移動プレート44Bが退避方向N2に向けて移動し、これに伴ってリンク部材43Bが時計回り方向に回転してランセットホルダ45Bを穿刺方向N1に押し下げ、ランセット2の針部21が皮膚Skに突き刺さる。その後、図13(b)および(c)に示したように、移動プレート44Bが退避方向N2にさらに移動し、これに伴ってランセットホルダ45Bが退避方向N2に持ち上げられ、皮膚Skからランセット2の針部21が抜き去られる。
【0045】
本実施の形態におけるカム機構は一例であり、他のカム機構を利用してランセットホルダを穿刺および退避方向に移動させるように構成してもよい。たとえば、移動プレートに対応する部材をハウジングにおいて円運動させ、その円運動に連動させてランセットホルダを穿刺または退避方向に移動させるように構成することもできる。
【0046】
次に、本発明の他の参考例に係る穿刺装置について、図14を参照して説明する。
【0047】
図14に示した穿刺装置1Cでは、上記実施の形態とは異なる穿刺深さ調整機構が採用されている。この穿刺深さ調整機構は、ガイド部材31C、回転体6Cおよびカバー7Cを備えている。
【0048】
ガイド部材31Cは、ハウジング3Cの本体部30Cに対して回転不能に固定されている。回転体6Cは、ガイド部材31Cに螺合されており、穿刺または退避方向N1,N2周りに回転させることにより、穿刺または退避方向N1,N2に移動するように構成されている。この回転体6Cには、ランセットホルダ4Cを干渉させるためのフランジ部69Cが設けられている。カバー7Cは、ガイド部材31Cに対して回転可能かつ穿刺および退避方向N1,N2に移動不能に固定されているとともに、ガイド部材31Cに対して着脱自在とされている。
【0049】
この構成では、回転体6Cを回転させることにより、カバー7Cの端面71Cと回転体6Cのフランジ部69Cとの距離を変化させることができるため、フランジ部69Cの位置を調整することにより穿刺深さを調整することができる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態に係る穿刺装置について、図15ないし図18を参照して説明する。
【0051】
図15ないし図17に示した穿刺装置1Dは、カム機構8Dを利用して穿刺深さを調整するように構成されたものであり、ハウジング3D、ランセットホルダ4D、変位体6Dおよびカバー7Dを有している。
【0052】
カム機構8Dは、第1溝部80D、第2溝部81Dおよび操作体82Dを有している。第1溝部80Dは、ハウジング3Dにおいて貫通して設けられており、穿刺および退避方向N1,N2に対して傾斜している。第2溝部81Dは、変位体6Dにおいて非貫通状に設けられており、穿刺および退避方向N1,N2に対して直交している。操作体82Dは、第1および第2溝部80D,81Dを移動可能な軸部83Dを有している。
【0053】
ハウジング3D、ランセットホルダ4Dおよびカバー7Dは、第1の実施の形態とは形態が異なるものの、その機能においては基本的に同様である。すなわち、ハウジング3Dの内部において、ランセットホルダ4Dが移動可能であり、ランセットホルダ4Dが穿刺方向N1に移動することによりランセット2の針部21が皮膚に突き刺さる。穿刺方向N1に対するランセットホルダ4Dの移動は、ハウジング3Dのフランジ部37Dに干渉することにより停止させられる。ただし、ハウジング3Dにおいては、上述したようにカム機構8Dを構成する第1溝部80Dが設けられており、その点において第1の実施の形態とは異なっている。
【0054】
穿刺装置1Dでは、図18(a)〜(c)に示したように、操作体82Dを穿刺および退避方向N1,N2に直交する方向に移動させることにより穿刺深さを調整することができる。より具体的には、操作体82Dを移動させた場合には、軸部83Dが第1および第2溝部80D,81Dを直進運動する。このとき、第1溝部80Dが傾斜状に設けられているために、軸部83Dは変位体6Dを穿刺または退避方向N1,N2に移動させつつ第2溝部81Dを移動する。ここで、カバー7Dは、変位体6Dと一体動するため、変位体6Dの移動に伴ってハウジング3Dに対するカバー7Dの位置が変化する。したがって、操作体82Dを移動させて変位体6Dを移動させれば、カバー7Dを移動させて穿刺深さの調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1B,1C,1D 穿刺装置
21 (ランセットの)針部(穿刺要素)
3,3B,3D ハウジング
30,30C (ハウジングの)本体部
31,31C (ハウジングの)ガイド部材
37 (ガイド部材の)インナフランジ部(段部)
37D (ハウジングの)フランジ部(段部)
4,4C,4D ランセットホルダ(移動体)
6,6C 回転体(変位体)
6D 変位体
64 (回転体の)突起(1以上の凸部)
65A,65B (回転体の)傾斜突起(凸部)
68 (回転体の)目盛
69C フランジ部
7 カバー
8D カム機構
80D (カム機構の)第1溝部
81D (カム機構の)第2溝部
82D (カム機構の)操作体
Sk 皮膚
N1 穿刺方向
N2 退避方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に保持させた穿刺要素を穿刺方向に移動させ、上記穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置であって、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、
上記穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、上記ハウジングに対して上記穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体と、この変位体と上記穿刺および退避方向に一体動するカバーと、を備え、
上記ハウジングから上記カバーを取り外した状態で、上記穿刺要素を保持させることができることを特徴とする、穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項2】
上記カム機構は、上記変位体を移動させるための操作体であって、軸部を有する操作体と、上記ハウジングおよび上記変位体に設けられ、上記軸部の移動を許容するための第1および第2溝部と、を備えており、かつ、
上記軸部を上記第1および第2溝部において移動させることにより、上記ハウジングに対する上記変位体の位置が変化するように構成されている、請求項1に記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項3】
上記カバーは、上記変位体に対して着脱自在とされており、上記カバーを取り外した状態で上記変位体に負荷作用させることにより、上記ハウジングに対する上記変位体の位置が調整されるように構成されている、請求項1または2に記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項4】
上記カバーは、内部が観察できるように透明または半透明に形成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項1】
ハウジング内に保持させた穿刺要素を穿刺方向に移動させ、上記穿刺要素を皮膚に突き刺すための穿刺装置であって、皮膚に対する上記穿刺要素の突き刺し深さを調整するための穿刺深さ調整機構を備えた穿刺装置において、
上記穿刺深さ調整機構は、カム機構を利用したものであり、かつ、上記ハウジングに対して上記穿刺方向またはこの穿刺方向とは反対方向である退避方向に移動可能な変位体と、この変位体と上記穿刺および退避方向に一体動するカバーと、を備え、
上記ハウジングから上記カバーを取り外した状態で、上記穿刺要素を保持させることができることを特徴とする、穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項2】
上記カム機構は、上記変位体を移動させるための操作体であって、軸部を有する操作体と、上記ハウジングおよび上記変位体に設けられ、上記軸部の移動を許容するための第1および第2溝部と、を備えており、かつ、
上記軸部を上記第1および第2溝部において移動させることにより、上記ハウジングに対する上記変位体の位置が変化するように構成されている、請求項1に記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項3】
上記カバーは、上記変位体に対して着脱自在とされており、上記カバーを取り外した状態で上記変位体に負荷作用させることにより、上記ハウジングに対する上記変位体の位置が調整されるように構成されている、請求項1または2に記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【請求項4】
上記カバーは、内部が観察できるように透明または半透明に形成されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の穿刺深さを調整可能な穿刺装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公開番号】特開2011−177523(P2011−177523A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91694(P2011−91694)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2003−143193(P2003−143193)の分割
【原出願日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【分割の表示】特願2003−143193(P2003−143193)の分割
【原出願日】平成15年5月21日(2003.5.21)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】
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