説明

窒素供給装置および培養システム

【課題】 培養装置の恒温室の環境条件を維持し、安定的な培養を可能とすること。
【解決手段】 所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置に、窒素ガスを供給する窒素供給装置であって、窒素ガスを発生する発生部と、窒素ガスを培養装置に供給する供給部と、恒温室内の環境条件が変動する操作または環境条件を予め定め、操作または撮影条件を検知し、変動を予測する予測情報を培養装置から取得する取得部と、予測情報に応じて、供給部による窒素ガスの供給量を制御する制御部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置に、窒素ガスを供給する窒素供給装置、および、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置と、培養装置に窒素ガスを供給する窒素供給装置とからなる培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種の微生物や細胞を培養するために恒温室を備えた培養装置が一般的に知られている(例えば、特許文献1参照)。このような培養装置では、恒温室の環境条件(例えば、温度、湿度、二酸化炭素濃度、酸素濃度、窒素濃度など)を監視し、変化に応じて上記の各パラメータを調整することにより、恒温室の内部を所定の環境条件に保っている。
【0003】
このような培養装置による培養に関して、近年、受精卵やES細胞等の生体試料の培養を行う際に、酸素濃度を通常大気以下の濃度に維持して培養を行う、いわゆる「低酸素培養」が盛んである。
【特許文献1】特開2004−16194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した低酸素培養においては、培養装置の恒温室の環境条件が変化すると、生体試料の培養に影響を及ぼす可能性があるため、恒温室の環境条件の維持が特に重要であることが知られている。上述した公知技術のように、恒温室の内部を所定の環境条件に保つための様々なアプローチが従来から行われているが、低酸素培養においては、恒温室の環境条件のさらに厳密な維持が求められている。
【0005】
本発明の窒素供給装置および培養装置は、培養装置の恒温室の環境条件を維持し、安定的な培養を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の窒素供給装置は、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置に、窒素ガスを供給する窒素供給装置であって、前記窒素ガスを発生する発生部と、前記窒素ガスを培養装置に供給する供給部と、前記恒温室内の環境条件が変動する操作または環境条件を予め定め、前記操作または撮影条件を検知し、変動を予測する予測情報を前記培養装置から取得する取得部と、前記予測情報に応じて、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御する制御部とを備える。
【0007】
なお、好ましくは、前記供給部は、前記発生部により発生した前記窒素ガスを貯蔵するバッファタンクを備え、前記制御部は、前記予測情報に応じて、前記バッファタンクからの前記窒素ガスの供給量を制御することにより、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御しても良い。
【0008】
また、好ましくは、前記制御部は、前記予測情報に応じて、前記発生部による前記窒素ガスの発生量を制御することにより、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御しても良い。
【0009】
本発明の培養システムは、上述した何れかの窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、前記培養装置は、前記培養容器を出し入れ可能な開閉部と、前記開閉部の開閉情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部とを備える。
【0010】
本発明の別の培養システムは、上述した何れかの窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、前記培養装置は、前記恒温室の環境条件の設定変更情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部を備える。
【0011】
本発明の別の培養システムは、上述した何れかの窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、前記培養装置は、前記恒温室の環境条件を評価する評価部と、前記評価部による評価情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部とを備える。
【0012】
なお、好ましくは、前記窒素供給装置は、前記制御部による前記窒素ガスの供給量の制御の可否を判断する判断部と、前記判断部による判断情報を前記培養装置に出力する情報出力部を備え、前記培養装置は、前記判断情報を取得する取得部と、前記判断情報に応じて、前記開閉部の開閉の可否を制御する制御部とを備えても良い。
【0013】
また、好ましくは、前記窒素供給装置は、前記培養装置と隔離して設置され、前記培養装置は、第1筐体と、前記第1筐体と隔離して設置される第2筐体とからなるとともに、顕微鏡を具備し、前記顕微鏡は、前記第1筐体内に試料台および前記恒温室を有し、前記第2筐体内に前記試料台の駆動部と前記試料台に載置された試料を観察する顕微鏡の対物レンズの駆動部とを有しても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の窒素供給装置および培養装置によれば、培養装置の恒温室の環境条件を維持し、安定的な培養を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。
【0016】
図1は本実施形態の培養システムの全体構成を示す概要正面図である。培養システムは、培養装置1と窒素供給装置2とからなる。窒素供給装置2は、培養装置1と隔離して設置されている。そして、培養装置1は、第1筐体10と、第2筐体11とで構成されている。また、図2は、培養装置1の全体構成を示す概要正面図である。
【0017】
第1筐体10は、第2筐体11の上側に配置されている。第1筐体10の内部には、断熱材で覆われた恒温室12が形成されている。第1筐体10の正面側は開口部10aをなしている。そして、この開口部10aは観音開きの正面扉13によって開閉可能に閉塞されている。また、第1筐体10の右側面下寄りの位置には、培養容器(ウエルプレート、フラスコ、ディッシュ等)が通過可能な搬出入口15が形成されている。この搬出入口15は、駆動機構16によりスライドする自動扉17で開閉可能に閉塞されている。さらに、第1筐体10の底面には、後述の顕微鏡ユニット26の配置用の開口部(不図示)が正面からみて左寄りの位置に形成されている。
【0018】
恒温室12の内部の各壁面には、ペルチェ素子等を用いた温度調整装置が複数内蔵されている。温度調整装置の構成は公知技術と同様であるため説明を省略する。また、恒温室12の内部には、噴霧装置等を備えた湿度調整装置が備えられている。湿度調整装置の構成は公知技術と同様であるため説明を省略する。さらに、恒温室12内部の壁面にはガス導入部21が配置されている。ガス導入部21は窒素供給装置2および外気供給装置(不図示)と接続されている。そして、ガス導入部21は各供給装置から恒温室12にガスを導入して、恒温室12内の二酸化炭素濃度、酸素濃度および窒素濃度を調整する。さらに、恒温室12の内側の上面には、恒温室12の内部の環境条件を検出するための内部センサ22が配置されている。
【0019】
第1筐体10の恒温室12内には、収納部23と、容器搬送機構24と、容器搬出入機構25と、顕微鏡ユニット26とが収納される。
【0020】
収納部23は、ストッカー等を備え、第1筐体10の正面からみて恒温室12内の右側に配置される。収納部23の内部は、例えば、複数の棚で上下に区画されている。そして、収納部23には培養容器を水平に収納できるようになっている。また、収納部23の最下段は容器搬出入機構25を配置するスペースとなっている。
【0021】
培養容器は、容器搬送機構24による運搬を容易にするために、例えば、トレー状のホルダー等に載置されて取り扱われる。容器搬送機構24は、第1筐体10の正面からみて恒温室12内の中央に配置される。容器搬送機構24は、不図示の搬送アームやモータ等を備え、培養容器が載置されたホルダーを左右方向、上下方向、前後方向の各方向に移動させることが可能である。したがって、容器搬送機構24は、培養容器が載置されたホルダーを、収納部23、容器搬出入機構25、顕微鏡ユニット26の間で相互に移動可能である。
【0022】
容器搬出入機構25は、収納部23の最下段において搬出入口15の近傍に設置されている。容器搬出入機構25は、培養容器が載置されたホルダーを載置可能な搬送テーブルを搬出入口15の外部へ往復動させるモータユニット等を有している。
【0023】
顕微鏡ユニット26は、第1筐体10の正面からみて恒温室12内の左側に配置される。顕微鏡ユニット26は、培養容器等を載置する試料台等を有している。この顕微鏡ユニット26は第1筐体10の底面の開口部に嵌め込まれて配置されている。そして、試料台は第1筐体10の恒温室12内に配置されるが、試料台の駆動機構であるモータ等や顕微鏡ユニット26の対物レンズのZ方向駆動機構等は第2筐体11側に収納されており、第1筐体10と第2筐体11とは隔離されている。また、照明装置の光源は、第2筐体11内に設置される。そして、光源からの光を第1筐体10内の試料台に導く光学系が第2筐体11から第1筐体10へと延設されている。この光学系は、第1筐体10と隔離するように構成されている。
【0024】
一方、第2筐体11には、上記の顕微鏡ユニット26の本体部分と、培養装置制御ユニット40とが格納されている。なお、図1および図2で示した培養装置1は、一例であり、その構成はこの例に限定されない。
【0025】
窒素供給装置2の内部には、窒素ガスを培養装置1に供給する窒素供給部50、窒素ガスを発生する窒素発生部51、窒素ガスを貯蔵するバッファタンク52、各部を制御する供給装置制御ユニット60が収納される。
【0026】
窒素供給部50は、窒素発生部51とバッファタンク52との少なくとも一方から供給される窒素ガスを培養装置1に供給する。なお、窒素供給部50により出力された窒素ガスは、培養装置1のガス導入部21に供給される。窒素発生部51は、供給装置制御ユニット60の指示に応じて、窒素ガスを発生する。なお、窒素発生部51により発生した窒素ガスは、窒素供給部50に直接供給されるか、または、バッファタンク52に供給された後に(バッファタンク52を経由して)窒素供給部50に供給される。窒素発生部51からの窒素ガスの供給方法は、供給装置制御ユニット60の指示にしたがって制御される。また、バッファタンク52は、不図示の残量センサを備え、内部に貯蔵した窒素ガスの残量(=貯蔵量)を検出して供給装置制御ユニット60に出力する。
【0027】
図3は、培養システムにおける培養装置1と窒素供給装置2との関係を示すブロック図である。
【0028】
培養装置1の培養装置制御ユニット40は、培養装置CPU41と、動作指示部42と、表示パネル43とを有している。培養装置CPU41は、駆動機構16、ガス導入部21、内部センサ22、容器搬送機構24、容器搬出入機構25、顕微鏡ユニット26と接続されている。そして、培養装置CPU41は所定のプログラムにしたがって上記各部を制御する。
【0029】
動作指示部42はキーボード等の入力手段を有しており、培養装置CPU41を介して培養装置1の各部を動作させる。すなわち、培養装置CPU41は、動作指示部42からの入力に基づき、恒温室12内の環境条件の調整、恒温室12内外への培養容器の搬出入、培養容器の試料の観察、恒温室12内での培養容器の搬送などの動作を実行する。ここで、動作指示部42の指示は、ユーザの直接入力による指示と、予めプログラムで設定された指示とのいずれもが含まれる。また、表示パネル43は培養装置CPU41から出力された恒温室12の環境条件などを出力表示する。
【0030】
窒素供給装置2の供給装置制御ユニット60は、供給装置CPU61を有している。供給装置CPU61は、窒素供給部50、窒素発生部51、バッファタンク52と接続されている。そして、供給装置CPU61は所定のプログラムにしたがって上記各部を制御する。また、培養装置CPU41と供給装置CPU61とは接続される。
【0031】
以下、本実施形態の培養システムの動作を説明する。まず、培養システムの各部の一般的な動作について簡単に説明する。
【0032】
培養システムの動作時には、培養装置CPU41は内部センサ22により恒温室12内の環境条件を監視する。環境条件に変動がある場合には、培養装置CPU41は不図示の温度調整装置、湿度調整装置、ガス導入部21のいずれかを動作させて恒温室12内の環境条件を一定に調整する。なお、培養装置CPU41は、ガス導入部21を動作させる場合には、供給装置CPU61に指示を行い、窒素供給装置2を動作させる(詳細は後述する)。
【0033】
動作指示部42から培養容器の搬送指示がある場合、CPUは容器搬送機構24のモータをそれぞれ駆動させて培養容器や培養容器が載置されたホルダーを搬送する。このとき、容器搬送機構24は、(1)収納部23内での培養容器の入れ替え、(2)容器搬出入機構23への培養容器の受け渡し、(3)顕微鏡ユニット26への培養容器の受け渡し、のいずれかを実行する。
【0034】
動作指示部42から培養容器の観察指示がある場合、培養装置CPU41は顕微鏡ユニット26を動作させて培養容器の試料を観察する。このとき、培養装置CPU41は顕微鏡ユニット26の照明装置で試料を照明する。そして、培養装置CPU41は動作指示部42からの指示に応じて試料台を水平方向に移動させる。これにより、培養容器の任意位置における試料の観察が可能となる。
【0035】
動作指示部42から培養容器の搬出指示がある場合、培養装置CPU41は駆動機構16を動作させて自動扉17を開放する。そして、培養装置CPU41は容器搬出入機構25のモータユニットを駆動させて搬送テーブルの培養容器およびホルダーを恒温室12外に搬出する。同様に、動作指示部42から培養容器の搬入指示がある場合、培養装置CPU41は容器搬出入機構25のモータユニットを駆動させて搬送テーブルの培養容器およびホルダーを恒温室12内に搬入する。そして、培養装置CPU41は駆動機構16を動作させて自動扉17を閉鎖する。
【0036】
次に、培養システムの動作時の供給装置CPU61の動作を、図4のフローチャートを参照して説明する。なお、培養システム動作時に、一定量(例えば、毎分3リットル)の窒素ガスが窒素発生部51からガス導入部21に恒常的に供給される前提で説明を行う。
【0037】
ステップS1において、供給装置CPU61は、窒素発生部51からガス導入部21に窒素ガスを供給する。通常動作時、供給装置CPU61は、バッファタンク52を経由せずに、窒素発生部51からガス導入部21に窒素ガスを供給する。このときの供給量は、培養装置CPU41からの指示にしたがって制御される。
【0038】
ステップS2において、供給装置CPU61は、培養装置CPU41から予測情報を取得したか否かを判定する。そして、予測情報を取得したと判定すると、供給装置CPU61は、ステップS3に進む。
【0039】
予測情報とは、恒温室12の内部の環境条件が変動すると思われる操作や環境条件を予め定め、これらの操作や環境条件を検知して変動を予測し、培養装置CPU41が供給装置CPU61に出力する情報である。培養装置CPU41は、(1)培養装置1の外部から内部へ、または、内部から外部への培養容器の搬出・搬入指示があり、自動扉17の開閉が予測される場合、(2)動作指示部42へのユーザ指示やレシピなどに基づいて、恒温室12の内部の環境条件の積極的な変更が予測される場合、(3)恒温室12の内部の環境条件の異常を検出した場合、のいずれかの場合に、予測情報を供給装置CPU61に出力する。
【0040】
ステップS3において、供給装置CPU61は、窒素発生部51における窒素ガスの発生量を増加する。窒素発生部51における窒素ガスの発生可能量にはある程度の幅がある(例えば、毎分0〜20リットル等)。そこで、供給装置CPU61は、後述するバッファタンク52への窒素ガスの貯蔵に備えて、窒素発生部51における窒素ガスの発生量を増加する。
【0041】
ステップS4において、供給装置CPU61は、バッファタンク52への窒素ガスの貯蔵を開始する。供給装置CPU61は、窒素発生部51からガス導入部21への窒素ガスの供給を継続しつつ、バッファタンク52への窒素ガスの貯蔵を開始する。この結果、窒素ガスがバッファタンク52に貯蔵されることになる。
【0042】
ステップS5において、供給装置CPU61は、培養装置CPU41から窒素供給量増加指示を受け付けたか否かを判定する。そして、窒素供給量増加指示を受け付けたと判定すると、供給装置CPU61は、ステップS6に進む。
【0043】
窒素供給量増加指示とは、恒温室12の内部の環境条件を調整するために、培養装置CPU41が供給装置CPU61に出力する情報である。培養装置CPU41は、窒素供給量増加指示として、恒温室12の内部の環境条件を調整するために必要な窒素供給量を算出し、算出した窒素供給量を示す数値情報等を供給装置CPU61に出力する。
【0044】
また、培養装置CPU41は、(1)自動扉17の開閉により、恒温室12に窒素ガスを供給する必要がある場合、(2)恒温室12の内部の環境条件を変更するために、恒温室12に窒素ガスを供給する必要がある場合、(3)恒温室12の内部の環境条件の異常を正常化するために、恒温室12に窒素ガスを供給する必要がある場合、のいずれかの場合に、窒素供給量増加指示を供給装置CPU61に出力する。
【0045】
ステップS6において、供給装置CPU61は、バッファタンク52の残量センサの出力に基づいて、窒素ガスの残量が十分であるか否かを判定する。そして、窒素ガスの残量が十分であると判定すると、供給装置CPU61は、ステップS7に進む。一方、窒素ガスの残量が十分でないと判定すると、供給装置CPU61は、後述するステップS9に進む。
【0046】
供給装置CPU61は、残量が十分であるか否かの判定を、ステップS5で受け付けた窒素供給量増加指示における窒素供給量を示す数値と、バッファタンク52の残量センサの出力とに基づいて行う。
【0047】
ステップS7において、供給装置CPU61は、窒素発生部51とバッファタンク52との両方からガス導入部21に窒素ガスを供給する。なお、供給装置CPU61は、バッファタンク52からの窒素ガスの供給量と、窒素発生部51からの窒素ガスの供給量に関して、それぞれのガス圧や流量を調整し、バッファタンク52内の窒素ガスの残量と窒素発生部51における窒素ガスの発生量とに基づいて、それぞれの供給分担を適宜制御する。
【0048】
ステップS8において、供給装置CPU61は、培養装置CPU41から窒素供給量正常化指示を受け付けたか否かを判定する。そして、窒素供給量正常化指示を受け付けたと判定すると、供給装置CPU61は、ステップS1に戻る。
【0049】
窒素供給量正常化指示とは、ステップS5で説明した窒素供給量増加指示から所定の時間後に、窒素供給量を通常状態に戻すために、培養装置CPU41が供給装置CPU61に出力する情報である。培養装置CPU41は、所定の時間として、恒温室12の内部の環境条件を調整するために必要な時間を経過すると、窒素供給量正常化指示を供給装置CPU61に出力する。
【0050】
ステップS9において、供給装置CPU61は、培養装置CPU41にエラー情報を送信する。供給装置CPU61からエラー情報を受け付けると、培養装置CPU41は、(1)自動扉17の開閉を禁止する、(2)表示パネル43を介して警告・報知を行う、の少なくとも一方を行う。(1)のような処理を行うことにより、バッファタンク52の窒素ガス残量が不十分で、自動扉17の開閉に伴う恒温室12の内部の環境条件の調整を行うことができない場合でも、それ以上の環境条件の変化を防ぐことができる。また、(2)のような処理を行うことにより、ユーザに供給装置2による窒素ガスの供給に関する状況を報知することができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、培養装置1と窒素供給装置2とを連動して制御することにより、培養装置の恒温室の環境条件を維持し、安定的な培養を可能とすることができる。特に、低酸素培養等、恒温室の環境条件のさらに厳密な維持が求められる状況にも対応することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、バッファタンク52を備え、窒素ガスを貯蔵する例を挙げたが、バッファタンク52を備える代わりに、発生可能量の幅の大きい窒素発生部51を備える構成としても良い。この場合、窒素発生部51とバッファタンク52との両方からガス導入部21に窒素ガスを供給する代わりに、窒素発生部51における窒素ガスの発生量を大幅に多くすることにより、本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、本実施形態では、自動扉17は、駆動機構16により自動で開閉する例を挙げたが、手動の扉に関して同様に本発明を適用することができる。この場合、扉の開閉部に開閉センサを備えるとともに、培養装置CPU41により扉を遠隔操作可能なロック機構を備えれば良い。
【0054】
また、本実施形態では、培養装置1の培養装置CPU41をメインCPUとする例を挙げて説明したが、培養装置1および窒素供給装置2を統括的に制御するコンピュータのCPUをメインCPUとしても良い。また、窒素供給装置2の供給装置CPU61をメインCPUとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】培養システムの全体構成を示す概要正面図である。
【図2】培養装置1の全体構成を示す概要正面図である。
【図3】培養システムにおける培養装置1と窒素供給装置2との関係を示すブロック図である。
【図4】培養システムの動作時の供給装置CPU61の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1…培養装置、2…窒素供給装置、12…恒温室、15…搬出入口、16…駆動機構、17…自動扉、21…ガス導入部、22…内部センサ、24…容器搬送機構、25…容器搬出入機構、26…顕微鏡ユニット、40…培養装置制御ユニット、41…培養装置CPU、42…動作指示部、43…表示部、50…窒素供給部、51…窒素発生部、52…バッファタンク、60…供給装置制御ユニット、61…供給装置CPU


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置に、窒素ガスを供給する窒素供給装置であって、
前記窒素ガスを発生する発生部と、
前記窒素ガスを培養装置に供給する供給部と、
前記恒温室内の環境条件が変動する操作または環境条件を予め定め、前記操作または撮影条件を検知し、変動を予測する予測情報を前記培養装置から取得する取得部と、
前記予測情報に応じて、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御する制御部と
を備えることを特徴とする窒素供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の窒素供給装置において、
前記供給部は、前記発生部により発生した前記窒素ガスを貯蔵するバッファタンクを備え、
前記制御部は、前記予測情報に応じて、前記バッファタンクからの前記窒素ガスの供給量を制御することにより、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御する
ことを特徴とする窒素供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の窒素供給装置において、
前記制御部は、前記予測情報に応じて、前記発生部による前記窒素ガスの発生量を制御することにより、前記供給部による前記窒素ガスの供給量を制御する
ことを特徴とする窒素供給装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、
前記培養装置は、
前記培養容器を出し入れ可能な開閉部と、
前記開閉部の開閉情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部とを備える
ことを特徴とする培養システム。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、
前記培養装置は、
前記恒温室の環境条件の設定変更情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部を備える
ことを特徴とする培養システム。
【請求項6】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の窒素供給装置と、所定の環境条件に調整された恒温室内で培養容器の試料を培養する培養装置とからなる培養システムであって、
前記培養装置は、
前記恒温室の環境条件を評価する評価部と、
前記評価部による評価情報を、前記予測情報として前記取得部に出力する情報出力部とを備える
ことを特徴とする培養システム。
【請求項7】
請求項4に記載の培養システムにおいて、
前記窒素供給装置は、
前記制御部による前記窒素ガスの供給量の制御の可否を判断する判断部と、
前記判断部による判断情報を前記培養装置に出力する情報出力部を備え、
前記培養装置は、
前記判断情報を取得する取得部と、
前記判断情報に応じて、前記開閉部の開閉の可否を制御する制御部とを備える
ことを特徴とする培養システム。
【請求項8】
請求項4から請求項7の何れか1項に記載の培養システムにおいて、
前記窒素供給装置は、
前記培養装置と隔離して設置され、
前記培養装置は、
第1筐体と、前記第1筐体と隔離して設置される第2筐体とからなるとともに、顕微鏡を具備し、
前記顕微鏡は、
前記第1筐体内に試料台および前記恒温室を有し、前記第2筐体内に前記試料台の駆動部と前記試料台に載置された試料を観察する顕微鏡の対物レンズの駆動部とを有する
ことを特徴とする培養システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−219365(P2009−219365A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64104(P2008−64104)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】