説明

窒素酸化物の放出を減少させる方法および反応器集成装置

硝酸は酸化目的、例えば、(貴)金属の溶解および有機化合物の酸化反応に広く使用されている。オゾン充填ガスを反応媒体中に導入することにより硝酸の還元生成物である窒素酸化物の発生および放出を抑圧することが提案されている。適切な反応器集成装置(1)は、導管(33)により反応器(3)に結合されたオゾン含有ガス供給個別装置(5)を含む。好ましくは、導管(33)は反応媒体(17)の表面(15)の下で終わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の序文によるガス状窒素酸化物の放出を減少させる方法に関する。更に、それは該方法を実行するための反応器集成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素酸化物は、例えば、一反応体として硝酸(HNO3)を用いた酸化方法により発生する。該酸は、純粋な状態で、即ち、適当な濃度の水溶液として用いても良いし、又は他の成分と混合しても良い。最も著名な相手の一つは、金の様な貴金属を溶解するための王水を生成する塩酸である。しかしながら、酸化剤として硝酸を適用する際には有機物質の酸化反応も行われる。
【0003】
酸化反応により硝酸は還元され、それにより窒素酸化物が発生しガスとして反応媒体から離れる。しかしながら、健康および環境保護規定により、これらのガスは空気中に放出すべきではない。
【0004】
それ故に、かかる反応器からの廃ガスはガス洗浄器により取除かれ、そこで窒素酸化物が吸収され固定される。ガス洗浄器の活性成分は或る寿命を有し、そして(又は)規則的に交換しなければならない。
【0005】
窒素酸化物の放出を避ける他の可能性は、反応媒体に過酸化水素(H2O2aq)を添加することによるその場酸化である。しかしながら、それにより、水が反応媒体に添加され、反応条件に否定的な影響を与えるので結局は除去しなければならない。更に、過酸化水素溶液中に安定剤が全く存在しない場合、それは取扱いが難しく保存することが出来ない。他方、安定剤は化学反応を妨げる可能性があり、後で除去しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の一目的は、その場における窒素酸化物の発生を抑圧する方法を提案し、酸化反応を妨げる程度を減少させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この様な方法は請求項1に定義されている。更なる請求項は、好ましい態様および該方法を実行するための反応器集成装置を提供する。
【0008】
一般的に、本発明は、その場における硝酸(HNO3)の還元反応生成物を再酸化するためにオゾンを使用することが出来るという驚くべき発見に基づいている。特に、金属を酸化的に溶解するために、例えば有効量のオゾンと共に酸素を、硝酸の酸化反応を妨げることなく、反応溶液に供給出来ることが発見されたのである。
【0009】
更に、オゾン含有ガスは、有機物質を酸化するための反応混合物に供給することも出来る。しかしながら、これらの用途においては、反応および反応相手によって、オゾンは所望の酸化方法を妨害するかもしれないので、とにかくオゾンの使用又はオゾン充填ガスの組成は、無機の用途におけるよりも注意深く試験しなければならない。
【0010】
オゾン含有ガスを供給する好ましい方法は、反応媒体中に伸びる導管又は管である。オゾン含有ガスは、導管の端から出て反応媒体を通って泡立ち、それにより窒素酸化物を再酸化する。
【0011】
有利には、該泡と溶液との間のオゾンの交換速度を増加させるために、多数の小泡を造り出すためのフリットのような手段が該導管の端に設けられている。
【0012】
本発明は実施例によって説明されるであろう。
【0013】
反応器集成装置1は、オゾン含有ガス用の供給個別装置5が設けられた反応器3から成る。さもなければ、該反応器は従来の構造であってもよい。ここで、それは、モーター8により駆動される攪拌器7、及び、例えばHNO3又は王水(硝塩酸)の添加を調整出来る弁11を有する滴下漏斗10が設けられている。この例において、管13は、迅速な効果的混合のために、反応溶液17の表面15より充分下で攪拌器7の羽根19の近くまで該薬剤を導く。
【0014】
オゾン供給個別装置5は、空気、酸素、又はそれらの混合物を提供するガス供給器21を含む。該ガスは矢印25に従ってオゾン発生器23を通過する。特に、該オゾン発生器には冷却液体用の管26が設けられている。
【0015】
オゾン発生器23の出口29には、オゾン測定器具31が導管33と同様に反応器3に結合されている。保安上の理由で、逆止め弁35が導管33に一体化されている。ガス導管33は、その端36を反応溶液17の表面15より下にして反応器の内部に伸びている。該端36には、出て行くガスを小泡に細かく分割するためのフリット体37が設けられている。
【0016】
反応器3には更にガス抜き管39が設けられており、該ガス抜き管には退出ガスからオゾン残渣を除去する為のオゾン破壊個別装置40が設けられている。該破壊個別装置40の前方に、オゾン測定器具31がガス抜き管39と結合されている。反応器の前後のオゾン含量差を測定することにより、再酸化反応および間接的に主反応を観察することが出来る。
【0017】
明らかに、オゾンの不安定性およびその酸素への崩壊のため、努力せずにオゾン残渣を破壊することが出来る。オゾン供給個別装置5の諸要素およびオゾン残渣破壊個別装置40はそれら自体公知であるので、詳細に説明する必要がない。オゾンは、いかなる化学薬品を使用することもなく、熱的に破壊することが出来る。
【0018】
硝酸による酸化に対する一応用例は、金属の硝酸塩および貴金属の塩素化合物(錯体)の製造である。いくつかの典型的な反応を記載する。
【0019】
実施例1:銅
酸化
Cu + 4 HNO3 = Cu(NO3)2+ 2 NO2 + 2 H2O
オゾン化(NO2の再酸化)
2 NO2 + O3 = N2O5+ O2
水との反応
N2O5 + H2O = 2 HNO3
全反応(非還元)
Cu + 4 HNO3 + O3 = Cu(NO3)2+ 2 HNO3 + O2 + H2O
結果として、硝酸の半分が再生利用され、窒素酸化物は全く製造されない。
【0020】
実施例2:金/王水
酸化
Au + HNO3 + 4 HCl = H[AuCl4] + NO + 2 H2O
オゾン化(NO2の再酸化)
a) 2 NO + 2 O3 = 2 NO2 + 2 O2
b) 2 NO2 + O3 = N2O5+ O2
水との反応
N2O5 + H2O = 2 HNO3
全反応(非還元)
2 Au + 2 HNO3 + 8 HCl + 3 O3+ H2O =
2 H[AuCl4] + 2 HNO3 + 4 H2O + 3 O2
硝酸は全部が再生利用され、窒素酸化物は全く製造されない。
【0021】
全反応に関して、オゾンの還元生成物として酸素が生成する。対照的に、もしもH2O2を用いて同じ反応を行うと、水が生成するので、反応溶液は希釈され、製品を得るためには余分に精製した水を蒸発により除去しなければならず、かなりのエネルギーを必要とする。
【0022】
最良の結果のためには、オゾンの添加速度は他の薬剤の添加、例えば、硝酸又は王水の添加に関して化学量論的である。勿論、また、金属は、例えば金属フレークとして、該酸に連続的に添加することが出来る。
【0023】
この目的のために、二酸化窒素(NO2)の色に敏感な測光器(示されてない)を使用することが出来る。該測光器は反応器の排気ガスを検査する。もしそれがNO2を検出したら、それは、オゾンの添加速度を増加させる為に使用する適切な信号を造り出す。オゾンの添加速度は、オゾン含有ガスの全流量を調節すること、及び(又は)オゾン含量を変化させることにより、調整することが出来る。
【0024】
オゾン含量の好ましい範囲は、ガス中オゾンが2〜15重量%である。
【0025】
上述の実施例に基づいて、当業者は、特許請求の範囲により定義される保護範囲から離れることなく、本発明の多数の変形および用途を着想することが出来る。
【0026】
例えば、最初に述べたように、本方法は、有機成分の酸化方法に使用することも出来る。望ましくないことではあるが、オゾンは他の薬剤の一つ、特に有機反応体と反応するかも知れないので、適正な方法条件を決定するのに必要な予備実験は決まりきった手段である。
【0027】
オゾンと任意の窒素酸化物NOxとの反応速度は一次であるという点に他の局面が存在する。従って、硝酸濃度および(又は)オゾン濃度を変えることにより、オゾンとNOx又は反応混合物の他の成分との反応の選択性を、最良の結果および収率が得られるように調整することが出来る。
【0028】
オゾン用の同伴ガスが他の組成を有すること、例えばアルゴンのような不活性ガスを含有できることは、依然として着想し得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】反応器集成装置の略図表現を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化剤として作用するのに有効な量で存在する硝酸(HNO3)を用いた凝縮相(17)中の酸化方法におけるガス状窒素酸化物の放出を減少させる方法において、ガス流(25)を該凝縮相中に導入し(3)、そこで該ガス流が窒素酸化物ガスの発生を防ぐために有効量のオゾンを含有することを特徴とする前記方法。
【請求項2】
該凝縮相が、好ましくは主要な液体構成成分として、より好ましくは唯一の液体構成成分として、水を有する液体相であることを特徴とする、請求項1による方法。
【請求項3】
該酸化方法が硝酸との直接反応又は間接反応による金属の酸化からなり、それにより硝酸が還元されることを特徴とする、請求項1又は2による方法。
【請求項4】
該金属が水性媒体中で水素より貴重であり、より好ましくは該金属が銅および金のような貴金属の1種であることを特徴とする、請求項1〜3の1項による方法。
【請求項5】
該酸化反応が直接的に又は間接的に硝酸による有機成分の酸化から成るが、該成分はオゾンに対して実質的に不活性であることを特徴とする、請求項1〜4の1項による方法。
【請求項6】
該ガス流(25)が空気、酸素又はそれらの混合物であり、更にオゾンを含有することを特徴とする、請求項1〜5の1項による方法。
【請求項7】
該ガス流(25)が2〜15重量%のオゾンを含有することを特徴とする、請求項1〜6の1項による方法。
【請求項8】
該反応媒体中へのオゾンの導入速度が、該反応媒体から窒素酸化物、好ましくは二酸化窒素が全く出て来ない程充分高く選択されることを特徴とする、請求項1〜7の1項による方法。
【請求項9】
オゾンを含有する該ガス流(25)が該反応媒体を泡状で通過する様に該反応媒体中に導入されることを特徴とする、請求項1〜8の1項による方法。
【請求項10】
請求項1〜9の1項による方法を行うための反応器集成装置(1)において、オゾン供給個別装置(5)、及び該オゾン供給個別装置(5)を該反応器集成装置の反応器(3)と結合する導管(33)が設けられていることを特徴とする前記反応器集成装置(1)。
【請求項11】
該導管(33)の一端(29)にガスの小泡を発生させるためのフリットが設けられていることを特徴とする、請求項10による反応器集成装置(1)。
【請求項12】
オゾン導入速度がオゾン速度調整装置により調整出来、該装置がガス流量およびオゾン発生速度の少なくとも一方を調節出来ることを特徴とする、請求項10〜11の1項による反応器集成装置(1)。
【請求項13】
ガス状二酸化窒素に敏感な測光装置が設けられ、該測光装置が反応器における二酸化窒素の出現を検出するように配置され、そしてオゾン速度を二酸化窒素の発生が本質的に、好ましくは完全に抑圧される値まで自動的な方法で調整出来るようにオゾン速度調整装置に作動可能なように結合されていることを特徴とする、請求項10〜12の1項による反応器集成装置(1)。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2006−525929(P2006−525929A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−571751(P2004−571751)
【出願日】平成15年5月14日(2003.5.14)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000310
【国際公開番号】WO2004/101116
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505421858)イノベイティブ オゾン サービス インコーポレイテッド (1)