説明

立ち上がり時間の自動調節

治療中に患者の吸気時間に関連付けられた尺度を求める工程と、患者の吸息相の少なくとも一部分の間に、吸気気道陽圧(IPAP)レベルで患者に向けて呼吸気体のフローを供給する工程と、患者の呼息相の少なくとも一部分の間にIPAPレベルよりも少ない呼気気道陽圧(EPAP)レベルで患者に向けて呼吸気体のフローを供給する工程と、患者の吸気時間に関連付けられた尺度に基づいてEPAPレベルからIPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定する工程とを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、西暦2008年12月9日付けで出願された米国仮特許出願第61/120955号の、米国特許法第119条(c)の下での優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般に、バイレベル気道陽圧サポート・システムに関し、特に、圧力サポートの呼息相から吸息相までの圧力の遷移の立ち上がり時間が自動的に調節されるバイレベル陽圧サポートを提供するバイレベル陽圧サポートのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医的障害を治療するために加圧時に患者の気道への呼吸気体のフローを供給する圧力サポート・システムは周知である。圧力サポート・システムのうちの1つの基本形態には、通常、患者の呼吸周期にわたり、定圧で患者の気道に、空気などの呼吸気体のフローを供給することが関係する。例えば、閉塞性睡眠無呼吸(OSA)を治療するために使用する場合、この定圧は、患者の気道抵抗を克服するのに十分なレベルで供給される。
【0004】
患者の呼吸周期により、患者に供給される気体の圧力が変動するバイレベル陽圧治療を提供することも知られている。吸気気道陽圧(IPAP)が呼吸周期の患者の吸息相の間に供給され、呼気気道陽圧(EPAP)が呼息相の間に供給される。EPAPはIPAPよりも低いので、患者は、IPAP圧力に対して比較的低い圧力に対して、息を吐き出す。Philips Respironics社(本社:米国ペンシルベニア州Murrysville)によって製造されている圧力サポート装置のBiPAP(登録商標)ファミリは、圧力サポート治療の前述のバイレベル形態を提供する圧力サポート装置の例である。更に、米国特許第5433193号、米国特許第5313937号、米国特許第5239995号、米国特許第5148802号、米国特許第6532960号、及び米国特許第6640806号を含むいくつかの米国特許は、前述のバイレベル圧力サポート・システムを詳細に説明している。これらの全ての内容は、本明細書及び特許請求の範囲にその全部が記載されているかのように、参照により、本明細書及び特許請求の範囲に明示的に援用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のバイレベル圧力サポート・システムは多くの場合、限定列挙でないが、OSAなどの種々の呼吸障害を治療するために、家庭内の環境において使用される。バイレベル圧力サポート・システムの家庭内の使用では現在、患者に対して適切なタイプの治療を提供するよう上記システムが適切にセットアップされることを確実にするために、熟練した提供者が患者の家庭を少なくとも一回、多くの場合、数回は訪問することが必要である。よって、家庭内の使用のためのバイレベル圧力サポート・システムのセットアップ及び保守は,現在、時間がかかり、したがって、費用が高くつく問題である。よって、このセットアップ時間を削減し、かつ/又は、患者の家への追跡調査の訪問を最小にするという構成は、医療従事者によって、価値あるものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施例では、本発明は、治療中に患者の吸気時間に関連付けられた尺度を求める工程と、患者の吸息相の少なくとも一部分の間に吸気気道陽圧(IPAP)レベルで患者に呼吸気体のフローを供給する工程と、患者の呼息相の少なくとも一部分の間にIPAPレベルよりも少ない呼気気道陽圧(EPAP)で患者に呼吸気体のフローを供給する工程と、患者の吸息相に関連付けられた尺度に基づいてEPAPレベルからIPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定する工程とを含む、圧力サポートを患者に対して提供する方法を提供する。
【0007】
特定の一実施例では、患者の吸気時間に関連付けられた尺度は、所定数の呼吸周期又は所定の期間にわたって求められた患者の平均吸気時間である。別の実施例では、患者の吸気時間に関連付けられた尺度は、特定の呼吸周期に関連付けられた患者の吸気時間である。
【0008】
自動的に設定する工程は、患者の吸気時間に関連付けられた尺度を所定の定数で乗算する工程を含み得る。あるいは、自動的に設定する工程は、患者の吸気時間に関連付けられた尺度を使用して、記憶されたルックアップ・テーブルを照会して立ち上がり時間を求める工程を含む。
【0009】
別の実施例では、方法は、圧力サポート・システムを使用している間に、患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を求める工程を更に含む。この実施例では、自動的に設定する工程は、患者の吸気時間に関連付けられた尺度、及び患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度に基づいてEPAPレベルからIPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定する工程を含む。患者の吸気時間に関連付けられた尺度は患者の平均吸気時間であり得、患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は患者の平均合計呼吸時間であり得る。あるいは、患者の吸気時間に関連付けられた尺度は特定の呼吸周期に関連付けられた患者の吸気時間であり得、患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は、特定の呼吸周期に関連付けられた患者の合計呼吸時間であり得る。更に、自動的に設定する工程は、この実施例では、患者の吸気時間に関連付けられた尺度、及び患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を使用して、記憶されたルックアップ・テーブルに照会して立ち上がり時間を求める工程を含む。
【0010】
別の実施例では、本発明は、呼吸気体のフローを生成するよう適合された圧力生成システムと、動作するよう圧力生成システムに結合され、患者の気道に呼吸気体のフローを供給する患者回路と、動作するよう圧力生成システムに結合されたコントローラとを含む圧力サポート・システムを提供する。コントローラは、前述の種々の実施例における方法を実現するよう圧力生成システムを制御するよう適合される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バイレベル気道陽圧サポート・システムによって出力される理論モデル圧力曲線出力を示す概略図である。
【図2A】EPAPからIPAPへの(種々の程度での)緩やかな遷移を有する例示的な圧力曲線を示す図である。
【図2B】EPAPからIPAPへの(種々の程度での)緩やかな遷移を有する例示的な圧力曲線を示す図である。
【図2C】EPAPからIPAPへの(種々の程度での)緩やかな遷移を有する例示的な圧力曲線を示す図である。
【図3】本発明の限定的でない特定の一実施例による圧力サポート・システムを示す概略図である。
【図4】本発明の限定的でない特定の一実施例による、立ち上がり時間を自動的に調節する方法を示すフロー図である。
【図5】本発明の限定的でない特定の一実施例による、立ち上がり時間を自動的に調節する方法を示すフロー図である。
【図6】立ち上がり時間を自動的に調節する更に別の方法を示すフロー図である。
【図7】立ち上がり時間を自動的に調節する更に別の方法を示すフロー図である。
【図8A】特定の一実施例による、求められた平均吸気時間を使用して、記憶されたいくつかの圧力プロファイルのうちの1つを選択する工程を示す図である。
【図8B】特定の一実施例による、求められた平均吸気時間を使用して、記憶されたいくつかの圧力プロファイルのうちの1つを選択する工程を示す図である。
【図8C】特定の一実施例による、求められた平均吸気時間を使用して、記憶されたいくつかの圧力プロファイルのうちの1つを選択する工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の前述並びに他の目的、構成、及び特性、並びに、製造の経済性と部品の組合せ、及び構造の関連した構成要素の機能は、添付図面を参照して以下の明細書及び特許請求の範囲を考慮することにより、更に明らかになるであろう。これらは全て本明細書の一部を形成する。同じ参照符号は、種々の図中の対応する部分を表す。しかし、図面は例証及び説明の目的に過ぎず、本発明の範囲の定義として意図しているものでない。明細書及び特許請求の範囲に記載の「a」、「an」、及び「the」の単数形は、複数の指示対象を含む(前後関係で明示しているものは除く)。
【実施例】
【0013】
上述の通り、バイレベル陽圧サポート・システムは、吸気中に患者の気道に吸気気道陽圧(IPAP)を供給し、呼気中に呼気気道陽圧(EPAP)を供給する。実際に、一部の患者の場合、大気圧と同様に低いEPAPレベルに設定することが知られている。バイレベル治療を必要とする大半の患者の場合、吸気中に気道の開通性を維持するためには、より高いIPAP圧力が必要であり、呼気中に気道の開通性を維持するためには、ずっと低いEPAP圧力で十分である。実際に、一部の患者の場合、EPAPレベルを大気圧まで下げて設定することが知られている。必要な最低のEPAP圧力でバイレベル圧力サポートを提供することにより、呼気するうえで患者に必要な仕事は削減され、よって、患者の快適さが増大する。このことは、同様に、処方された治療に対する患者コンプライアンスを促進する。
【0014】
図1は、バイレベル気道陽圧サポート・システムによって出力された理論モデル圧力曲線5を略示している。患者の呼吸周期の呼息相中に、圧力曲線5は、呼気圧力(EPAP)10にある。呼気の終了時に、すなわち、患者の呼吸周期のその後の吸息相の開始時には、圧力曲線5は、吸気圧力(IPAP)15に変わる。システムが吸気の終了を(すなわち、後続呼息相の開始時に)検出すると、圧力曲線5は、より低い呼気圧力(EPAP)10に戻り、周期は再び始まる。EPAP10とIPAP15との間での圧力の差は、図1中でΔPと表し、通常、圧力サポートとして表す。図1に示す理論上のモデルでは、この圧力変動は即座に生じる。よって、図1は、モデル圧力曲線5を方形波として示す。
【0015】
しかし、理論モデルに応じた圧力曲線5が患者に施された場合、患者の快適さは最適にされないことがあり得る。特に、(圧力曲線5における場合と同様に)EPAPからIPAPへの瞬時の遷移でなく、わずかに更に緩やかな遷移がEPAPからIPAPへ、及び逆方向に行われた場合、患者の快適さを最適にし得る。図2A、図2B、及び図2Cは、例示的な圧力曲線20、25及び30においてEPAP10からIPAP15への(種々の程度での)前述の緩やかな遷移を示す。前述の緩やかな遷移の作用は、EPAP10からIPAP15にシステム圧力が上昇するうえで要する時間で測定され、バイレベル圧力サポート・システムの「立ち上がり時間」として表す。
【0016】
同様に、IPAP15からEPAP10への瞬時の遷移でなく、図2A、図2B、及び図2Cは、IPAP15からEPAP10へのシステム圧力の緩やかな遷移を示す。この緩やかな遷移作用は、IPAP15からEPAP10にシステム圧力が降下するうえで要する時間で測定され、バイレベル圧力サポート・システムの「立ち下がり時間」として表す。本明細書及び特許請求の範囲に更に詳細に説明するように、かつ、本発明の実施例によれば、例示的な圧力曲線20、25、及び、30、並びに、緩やかな立ち上がり時間を有する他の同様な圧力曲線は、図3に示すバイレベル圧力サポート・システム50によって生成し得る。
【0017】
図2A、図2B、及び図2Cそれぞれに示すように、各周期は、EPAP10において、場合に応じて圧力曲線20、25、30から始まる。患者が呼気を終えたか、若しくは吸気を始めたこと、又は、特定の他のプロンプト・イベントが生じたことを圧力サポート・システムが検出すると、システム圧力がIPAP15のレベルに向けて強められる。最終的には、図2A、図2B、及び図2Cにみられるように、各ケースにおけるシステム圧力はIPAP15に達し、IPAP15でレベルオフする。よって、図2A、図2B及び図2Cそれぞれにおける立ち上がり時間はΔT、ΔT、及びΔTそれぞれによって示す。
【0018】
更に、EPAP10からIPAP15への遷移は図2A、図2B及び図2Cそれぞれにおいて指数ランプとして示しているが、これは例示的なものに過ぎず、ランプは、概ね一定の一レベルから別のレベルへの直線又は他の何れかの遷移波形でもあり得る。例えば、何れかの単調増加関数(限定でないが、sin(2pit/Trtalpha)など。ここでtは時間である)を使用し得る。Trtは、振幅67%までの立ち上がり時間であり、alphaは、arcsin(RT%)/(2pi)で表す暫定因数である(ここで、特定のプロダクトの場合、RT%は67%であるが、0%超100%の範囲に一般化することが可能である。)
更に、EPAP10及びEPAP15は図2A、図2B及び図2Cにおいて一定であるが、EPAP10及びEPAP15は、治療中、必ずしも一定でなくてよい。例えば、患者フロー又は予め確立されたフローのプロファイルの関数としてIPAP及び/又はEPAP圧力を変えることを開示している、それらの内容それぞれを参照により、本明細書及び特許請求の範囲に援用する米国特許第5535738号、米国特許第5794615、及び米国特許第6105575号を参照されたい。
【0019】
更に、図2A、図2B、及び図2Cに示す例では、立ち上がり時間は、EPAP10からIPAP15にシステム圧力が変わるための時間の尺度である。しかし、このことは、限定的であることを意味するものでない。例えば、EPAPとIPAPとの間のピークツーピークからの立ち上がり時間を測定するのでなく、立ち上がり時間は、その当初圧力値(例えば、EPAP)の10%などの一割合からその最終圧力値(例えば、IPAP)の90%などの一割合にシステム圧力が変わるために要する時間としても定義することが可能である。限定的でない特定の一実施例では、立ち上がり時間は、EPAPとK(IPAP−EPAP)との間の時間として定義され、ここで、Kは、(必ずしもそうでなくてよいが、)通常、50%と90%との間(例えば、67%)である。よって、本明細書及び特許請求の範囲で使用するように、「立ち上がり時間」という語は、当初の所定の圧力レベル(例えば、EPAP又はその特定の割合)から最終の所定の圧力レベル(例えば、IPAP、その特定のパーセンテージ、又は、(IPAPーEPAP)の特定のパーセンテージ又は割合)にシステム圧力が変わるために要する時間の尺度を表す。
【0020】
図2A、図2B、及び図2Cにみられるように、圧力曲線20の立ち上がり時間ΔTは曲線25の立ち上がり時間ΔTよりも短く、同様に、立ち上がり時間ΔTは圧力曲線30の立ち上がり時間ΔTよりも短い。一般に、立ち上がり時間がより短いことにより、圧力における、より「鋭い」遷移が理由で、患者の快適さの低減がもたらされる。しかし、より短い立ち上がり時間は、システム治療の効果性の増加をもたらすとも考えられる。よって、立ち上がり時間ΔTは立ち上がり時間ΔTよりも短いので、患者の快適さが減少するが、治療の効果性が増加することをもたらす可能性が高くなる。図示した最短の例示的な立ち上がり時間である立ち上がり時間ΔTにより、患者の快適さが更に低減するが、治療の効果性が更に増加することをもたらす可能性が高くなる。
【0021】
本明細書及び特許請求の範囲に更に詳細に説明するように、本発明は、バイレベル圧力サポート・システム、及びバイレベル圧力サポートを提供する方法であって、圧力サポートの立ち上がり時間が、いくつかの呼吸周期の間に測定された患者の平均吸気時間に基づいて(例えば、図2A、図2B及び図2Cに示すような種々の値に)自動的に調節され、よって、立ち上がり時間パラメータの手動の設定及び調節に対する必要性がなくなる。特に、より速い立ち上がり時間がより速い呼吸の期間中には望ましく、より遅い立ち上がり時間が正常呼吸又は静かな呼吸(比較的遅い呼吸)の期間中には望ましく、よって、吸気時間の関数として立ち上がり時間を自動的に調節する工程は、最適な立ち上がり時間をリアルタイムで使用することを可能にする。
【0022】
本発明は、種々の実施例における、本明細書及び特許請求の範囲記載の立ち上がり時間調節アルゴリズムが、マイクロプロセッサ(又は同様なコントローラ)ベースのバイレベル圧力サポート・システムにおいて実現されるということも想定している。前述のシステムは、患者に供給される呼吸気体のフローに関連付けられた1つ又は複数の特性を示す1つ又は複数の信号を生成する1つ又は複数のセンサ(例えば、流量センサ、圧力センサ、又は何れかの他の適切なセンサなど)を有する。更に、本発明の少なくとも1つの実施例において、かつ、本明細書及び特許請求の範囲に更に詳細に説明するように、立ち上がり時間を自動的に制御するために使用される患者の平均測定吸気時間は、受信された信号に基づいてマイクロプロセッサ(又は同様なコントローラ)により、リアルタイムで求められる。圧力サポート・システムは、アルゴリズムの実現形態によって定められるように立ち上がり時間をマイクロプロセッサ(又は同様なコントローラ)が変えることを可能にするための制御ハードウェアも含む。例えば、本発明の自動立ち上がり時間制御を実現するために使用することが可能な適切な圧力サポート装置には、米国ペンシルベニア州MurrysvilleのPhilips Respironics社によって製造されているBiPAP(登録商標)Duets(登録商標)Bi−level System、又は、BiPAP(登録商標)Duet(登録商標)LX Bi−level Systemがある。前述の圧力サポート装置は、マイクロプロセッサ、メモリ、圧力センサ及び流量センサを有し、「C」又は特定の他のコンピュータ言語でプログラミングすることが可能である。
【0023】
図3は、その種々の実施例において本発明を例証するために本明細書及び特許請求の範囲において使用される本発明の限定的でない特定の一実施例による圧力サポート・システム50の概略図である。図3を参照するに、圧力サポート・システム50は、図3は、何れかの適切なソース(例えば、窒素又は空気の加圧タンク、周囲雰囲気、又はそれらの組合せ)から、矢印Cで概ね示す、呼吸気体を受け取る通常のCPAP又はバイレベル圧力サポート装置において使用されるブローワなどの気体フロー生成器52を含む。気体フロー生成器52は、比較的に、より高い圧力及びより低い圧力(すなわち、周囲雰囲気圧力以上で)で患者54の気道に供給するために呼吸気体(空気、酸素、又はそれらの混合物など)のフローを生成する。
【0024】
気体フロー生成器52からの矢印Dによって概ね示される、呼吸気体の加圧フローは、通常、患者54の気道に呼吸気体のフローを輸送するために患者54が身につけるか又は患者54に他のやり方で取り付けられた何れかの既知の構成の呼吸マスク又は患者インタフェース58に供給コンジット56を介して供給される。供給コンジット56及び患者インタフェース装置58は通常、併せて、患者回路として表す。例示的な実施例では、圧力サポート・システム50は、動作するようコントローラ64に結合され、患者に供給される気体の圧力を測定する圧力センサを含む。この圧力管理は、患者インタフェースで、又は、圧力生成器52の近くで得ることが可能である。
【0025】
図3に示す圧力サポート・システム50は、片脚システムとして知られているものであり、これは、患者の回路が、圧力サポート・システム50に患者54を接続する供給コンジット56のみを含むということを意味している。そういうものとして、矢印Eによって示すようにシステムから、呼気された気体を排出するために、呼気ベント57が供給コンジット56に設けられる。呼気ベント57は、患者インタフェース装置58内などの供給コンジット56内に加えて、又は前述の供給コンジット56内の代わりに他の場所に設けることが可能である。更に、呼気ベント57は、圧力サポート・システム50から気体をベントする所望のやり方に応じた各種構成を有し得る。
【0026】
本発明は、患者54に接続された呼気コンジット及び供給コンジットを有する二脚システムであり得る。二脚システムでは、呼気コンジットは、患者54からの呼気気体を運び、患者54の遠端部に呼気弁を含む。前述の実施例における呼気弁は通常、一般に、呼気終末陽圧(PEEP)として知られている、システム内の所望のレベル又は圧力を維持するようアクティブに制御される。
【0027】
更に、図3に示す本発明の、図示した例示的な実施例では、患者インタフェース58は鼻マスクである。しかし、患者インタフェース58は、鼻マスク/口マスク、鼻枕、気管チューブ、又は適切な気体フロー輸送機能を提供する何れかの他の装置を含み得る。更に、本発明の目的で、「患者インタフェース」の句は、加圧呼吸気体のソースを患者に接続する供給コンジット56及び何れかの他の構造を含み得る。
【0028】
図示した実施例では、圧力サポート・システム50は、供給コンジット56内に設けられる弁60の形態の圧力コントローラを含む。弁60は、患者54に供給される、フロー生成器52からの呼吸気体のフローの圧力を制御する。前述の目的では、フロー生成器52及び弁60は、患者に供給される気体のフロー及び/又は圧力を制御するために協調するので、併せて、圧力生成システムと表す。しかし、患者に供給される気体の圧力を制御するための他の手法(フロー生成器52のブローワ速度を変える工程など)が、単独で、又は圧力制御弁と組み合わせて本発明によって想定される。よって、弁60は、患者54に供給される呼吸気体のフローの圧力を制御するために使用される手法に応じて任意である。弁60をなくした場合、圧力生成システムは、フロー生成器52のみに対応し、患者の回路における気体の圧力は、例えば、フロー生成器52のモータ速度を制御することによって制御される。
【0029】
圧力サポート・システム50は、供給コンジット56内の呼吸気体のフローを測定する流量センサ62を更に含む。図3に示す特定の実施例では、流量センサ62は、(例えば、弁60の下流に)供給コンジット56に沿って挿入される。流量センサ62は、フロー信号QMEASUREDを生成し、上記フロー信号QMEASUREDは、コントローラ64に供給され、患者54における気体のフローを求めるためにコントローラ64によって使用される。当然、患者54の呼吸フローを測定するための他の手法(限定列挙でないが、直接、患者において、又は、供給コンジット56に沿った他の場所でフローを測定する工程と、フロー生成器52の動作に基づいて患者フローを測定する工程と、弁60の上流にある流量センサを使用して患者フローを測定する工程など)が本発明によって想定される。
【0030】
コントローラ64は、例えば、本明細書に更に詳細に説明するように呼吸気体のフローを制御する工程、及び患者の呼吸の特性を監視する工程を含む、圧力サポート・システム50の動作を制御するためにコントローラ64によって実行可能なソフトウェア及びデータの記憶媒体を備えるメモリ(図示せず)を含むか、又は動作するよう前記メモリ(図示せず)に結合されたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は他の特定の適切な処理装置であり得る。最後に、入出力装置66が、圧力サポート・システム50によって使用される種々のパラメータを設定するために、かつ、臨床医又は介護者などのユーザに向けて情報及びデータを表示し、出力するために提供される。
【0031】
本明細書の他の箇所で更に詳細に説明しているように、その種々の実施例における本発明の局面に応じて、患者の吸気時間に関するデータは、動作中に圧力サポート・システム50により、連続して処理され、その結果、患者の吸気時間に関係したデータに基づいて、立ち上がり時間に対する連続した自動調節が行われる。立ち上がり時間は自動的に調節されるので、十分な治療に必要な立ち上がり時間が、特定の患者に対して患者毎、夜毎、及び分毎に最適化し得、患者又は介護者の介入を必要としない。
【0032】
図4は、本発明の限定的でない特定の一実施例による、立ち上がり時間を自動的に調節する方法を示すフロー図である。以下に更に詳細に説明するように、図4に示す方法は、N個の周期にわたり、患者の平均吸気時間を測定し、求められた平均吸気時間に基づいて患者に供給されるバイレベル陽性サポート治療の立ち上がり時間を調節する。あるいは、一定数の周期にわたり、患者の平均吸気時間を測定するのでなく、患者の平均吸気時間は、(30秒などの)一定の期間にわたって測定し得る。更に、図4に示す方法は、平均吸気時間の算出のために時間を累算するために使用される合計吸気時間変数、呼吸周期をカウントするために使用される周期カウンタ変数、及び患者に提供されるバイレベル陽圧サポートの立ち上がり時間を制御するために使用される立ち上がり時間変数を使用する。更に、確立されたIPAPレベル及びEPAPレベルは、例えば、入出力装置66を使用して圧力サポート・システム50に値を入力することにより、提供される対象の治療のために臨床医(又は患者)によって設定される。
【0033】
図4を参照すれば、方法は工程100から始まり、工程100では、合計呼気時間及び周期カウンタの変数がゼロ値に初期化される。次に、工程105で、立ち上がり時間変数が、入出力装置66を使用して圧力サポート・システム50に値を入力することにより、臨床医(又は患者)によって設定される。工程110では、バイレベル陽圧サポートが、次いで、単一の呼吸周期の現在の立ち上がり時間、及び確立されたIPAPレベル及びEPAPレベルにおいて圧力サポート・システムにより、患者に提供される。工程115では、呼吸周期に対する吸気時間が測定される。これは、いくつかの適切な既知の、又はその後、開発されたやり方の何れかで行い得る。例えば、吸気時間は、次いで、患者インタフェース58の一部である圧力センサによって生成される圧力信号、及び周知のいくつかの手法のうちの何れかを使用して流量センサ62によって生成されるフロー信号QMEASUREDに基づいて求め得る。あるいは、吸気時間は、呼吸筋からの測定されたEMG信号、測定された呼気CO2、温度若しくは湿度、又は、誘導プレチスモグラフィを使用して胸壁の測定された移動に基づいて求め得る。
【0034】
次に、工程120では、合計吸気時間変数は、測定された吸気時間に等しい量だけ増加させ、周期カウンタ変数は1だけ増加させる。工程125では、次いで、周期カウンタがN(これは、平均吸気時間を算出する呼吸周期の数である)に等しいか否かについて判定される。答えがいいえの場合、方法は、連続したバイレベル陽圧治療のために工程110に戻る。しかし、工程125における答えがはいの場合、工程130で、平均吸気時間が合計吸気時間変数に基づいて算出される(すなわち、合計吸気時間変数をNで除算して平均を得る)。
【0035】
次に、工程135で、立ち上がり時間変数の新たな値が、算出された平均吸気時間に基づいて求められる。これは、いくつかのやり方で行い得る。一実施例では、算出された平均吸気時間を、立ち上がり時間の新たな値を得るために所定の定数で乗算する(すなわち、立ち上がり時間=K平均呼気時間)。例えば、吸気時間の通常の範囲は、極値で0.5秒乃至3秒であり、1乃至2秒がより一般的である。平均吸気時間1秒に対する「快適な」立ち上がり時間は0.2秒であり得、よって、この実施例内での定数Kは、0.2秒/1秒、すなわち、0.2になる。定数Kには、単位がない。平均吸気時間が1.5秒に増加した場合、次いで、この実施例により、立ち上がり時間の新たな値は0.21.5秒、すなわち0.3秒になる。同様に、平均吸気時間が0.5秒に縮小した場合、次いで、この実施例により、立ち上がり時間の新たな値は0.20.5秒、すなわち0.1秒になる。この実施例では、立ち上がり時間の新たな値は、特定の所定の高い安全限度内及び低い安全限度内にのみ、更に制約される。よって、算出された値の新たな値が上記限度(高い限度又は低い限度)を超えた場合、この実施例では、限度値に等しく設定される。
【0036】
前述の実施例では、供給された圧力プロファイルPp(t)は立ち上がり時間IPAP及びEPAPで完全に表され、Pp(t)=(1−e−αt/Trt)・(IPAP−EPAP)+EPAPで表し得る。値αは、規定されたパーセンテージIPAP−EPAPに達するために要する時間として立ち上がり時間(Trt)を定義することが可能であるようにその挙動を調節する。αが1に設定された場合、この例におけるPp(t)の第1項は、t=TrtにおいてIPAP−EPAPの63.2%に達する。これは、その単純性及び業界によって受け入れられていることが理由で、有利な方法である。しかし、立ち上がり時間からPp(t)を計算するために他の機能を有し得る。例えば、正弦波の第1の4分の1周期は、Pp(t)=(IPAP−EPAP)sin(2παt/Trt)+EPAPとして表されるように作用し得る。ここで、α=l/4である(Pp(Trt)=IPAPの場合)か、又はα=0.117である(Pp(t)=0.67(IPAP−EPAP)+EPAPの場合)。あるいは、組合せ方法は、Pp(t)=(l−e−αt/Trt)・(IPAP−EPAP)+EPAP(Tinsp<1.5秒の場合)及びPp(t)=(IPAP−EPAP)sin(2τrt/Trt)+EPAP(その他の場合)を含み得る。
【0037】
別の実施例では、立ち上がり時間の対応する値に、複数の平均呼気時間値(又は前述の値の範囲)それぞれをマッピングするルックアップ・テーブルを圧力サポート・システム50によって確立し、記憶し得る。この実施例では、工程135は、よって、ルックアップ・テーブルに照会して、工程130において算出される平均吸気時間に対応する立ち上がり時間の値を求める工程を含む。なお更なる実施例では、定数Kで乗算されると、立ち上がり時間の値をもたらす対応する第1の値に、複数の平均吸気時間値(又は前述の値の範囲)それぞれをマッピングする圧力サポート・システム50によって確立し、記憶し得る。この実施例では、工程135は、工程130において算出された平均吸気時間に対応する第1の値を求めるためにルックアップ・テーブルに照会し、次いで、得られた第1の値を定数で乗算して、立ち上がり時間の新たな値を得る。
【0038】
工程135に続き、どのように実現されても、方法は工程140に続き、ここで、立ち上がり時間変数は、工程135において判定される新たな値に等しく設定される。更に、合計吸気時間及び周期カウンタ変数が工程140でゼロに再設定される。工程140に続き、方法は工程110に戻り、ここで、バイレベル陽圧サポート治療が、新たな(現在の)立ち上がり時間において患者に提供される。
【0039】
更に、求められた平均吸気時間は、図8A、図8B、及び図8Cに示すグラフによって例証されるテーブルに記憶されたいくつかの圧力プロファイルのうちの1つを選択するために使用することが可能である。時間及び振幅は、線形補間、又は信号処理において周知の何れかの他の方法を使用して、必要なIPAP−EPAP、及びTrtをマッチングさせるよう調節することが可能である。
【0040】
時には、患者の呼気時間は比較的一定の状態に留まる(例えば、±20%のみ変動する)。一方、合計呼吸時間(呼吸周期全体の持続時間であり、吸気時間及び呼気時間を含む)はずっと変動し得る。例えば、通常の合計呼吸時間は、1.5秒から6秒の範囲に及び得る。特定の吸気時間の場合、患者は、合計呼吸時間が減少するにつれ、より短い立ち上がり時間を好み得る。ここでの臨床の考えは、遅い呼吸(すなわち、15BPM未満又は4秒超の合計呼吸時間)は、速い立ち上がり時間を要しないが、より速いペースの呼吸の場合、患者は、より短い立ち上がり時間を好む可能性が高い(例えば、20BPMを上回るか、又は、3秒未満の合計呼吸時間)を好む可能性が高い。よって、一部の場合には、呼気時間のみならず、合計呼吸時間にも基づいてバイレベル陽圧サポート治療における立ち上がり時間を自動的に調節することが望ましいことがあり得る。
【0041】
図5は、本発明の限定的でない特定の別の実施例による、立ち上がり時間を自動的に調節する方法であって、立ち上がり時間の調節が吸気時間及び合計呼吸時間に基づく方法を示すフロー図である。以下に更に詳細に説明するように、図5に示す方法は、N個の周期にわたり、患者の平均合計呼吸時間及び平均吸気時間を測定し、求められた平均吸気時間及び求められた平均合計呼吸時間に基づいて(すなわち、求められた平均吸気時間及び求められた平均合計呼吸時間の関数として)患者に供給されるバイレベル陽性サポート治療の立ち上がり時間を調節する。あるいは、一定数の周期にわたり、患者の平均吸気時間及び平均合計呼吸時間を測定するのでなく、患者の平均吸気時間は、(60秒などの)一定の期間にわたって測定し得る。更に、図4に示す方法のように、図5に示す方法は、合計吸気時間変数、周期カウンタ変数、及び本明細書の他の箇所に記載の立ち上がり時間変数を使用する。更に、図5の方法は、平均合計呼吸時間の算出のための時間を累算するために使用される累積合計呼吸時間変数も使用する。更に、本明細書の他の箇所に記載するように、確立されたIPAP及びEPAPレベルが使用される。
【0042】
図5を参照すれば、方法は工程150から始まり、合計呼気時間変数、累積合計呼吸時間変数、及び周期カウンタ変数がゼロ値に初期化される。次に、工程155で、立ち上がり時間変数が、入出力装置66を使用して圧力サポート・システム50に値を入力することにより、臨床医(又は患者)によって設定される初期値に等しく設定される。工程160では、バイレベル陽圧サポートが、単一の呼吸周期の現在の立ち上がり時間、及び確立されたIPAPレベル及びEPAPレベルにおいて圧力サポート・システムにより、患者に提供される。工程165では、呼吸周期に対する合計呼吸時間及び吸気時間が測定される。これは、いくつかの適切な既知の、又はその後、開発されたやり方の何れかで行い得る。例えば、吸気時間及び合計呼吸時間は、患者インタフェース58の一部である圧力センサによって生成される圧力信号、及び周知のいくつかの手法のうちの何れかを使用して流量センサ62によって生成されるフロー信号QMEASUREDに基づいて求め得る。あるいは、吸気時間及び合計呼吸時間は、呼吸筋からの測定されたEMG信号、測定された呼気CO2、温度若しくは湿度、又は、誘導プレチスモグラフィを使用して胸壁の測定された移動に基づいて求め得る。
【0043】
次に、工程170では、合計吸気時間変数は、測定された合計吸気時間に等しい量だけ増加させ、累積合計呼吸時間変数は、測定された合計呼吸時間に等しい量だけ増加させ、周期カウンタ変数は1だけ増加させる。工程175では、次いで、周期カウンタがN(これは、平均吸気時間及び平均合計呼吸時間を算出する呼吸周期の数である)に等しいか否かについて判定される。答えがいいえの場合、方法は、現在の立ち上がり時間において、連続したバイレベル陽性圧力治療のために工程160に戻る。しかし、工程175における答えがはいの場合、工程180で、平均吸気時間が、合計吸気時間変数に基づいて算出され(すなわち、平均を得るために、合計吸気時間変数がNで除算され)、平均合計呼吸時間は、累積合計呼吸時間変数に基づいて計算される(すなわち、累積合計呼吸時間変数をNで分けて、平均を得る)。
【0044】
次に、工程185で、立ち上がり時間変数の新たな値が、算出された平均吸気時間及び算出された平均呼吸時間に基づいて求められる。これは、いくつかのやり方で行い得る。限定的でない実施例では、ルックアップ・テーブルは、平均吸気時間値、及び平均合計呼吸時間値を、立ち上がり時間の対応する値にマッピングする圧力サポート・システム50により、確立され、記憶される。例えば、前述のテーブルは、平均吸気時間及び平均合計呼吸時間の、いくつかの関連付けられた範囲の対を提供し、立ち上がり時間の値にマッピングし得る。よって、算出された平均吸気時間の値及び平均合計呼吸時間の値の何れかの特定の対について、値の前述の対は、特定の関連付けられた範囲の対内に収まり、立ち上がり時間の値にマッピングし得る。よって、この実施例では、工程185は、工程180で算出された平均合計呼吸時間及び平均吸気時間に対応する立ち上がり時間の値を求めるためにルックアップ・テーブルを照会する工程を含む。
【0045】
どのように実現されても、工程185に続き、方法は工程190に続き、ここで、立ち上がり時間変数は、工程185において判定される新たな値に等しく設定される。更に、合計吸気時間変数、累積合計呼吸時間変数、及び周期カウンタ変数が工程190でゼロにリセットされる。工程190に続き、方法は工程160に戻り、ここで、バイレベル陽圧サポート治療が、新たな(現在の)立ち上がり時間において患者に提供される。
【0046】
図4及び図5に示す特定の方法では、特定の患者呼吸パラメータ(すなわち、吸気時間及び合計呼吸時間)の平均値が、伝統的な「平均化」手法(すなわち、真の平均値)を使用することによって算出される。しかし、これは限定的であることを意味するものでなく、他の「平均化」手法も使用し得る。よって、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「平均」という語は、限定列挙でないが、平均、メジアン、モード又は本明細書及び特許請求の範囲記載の判定された別の同様な値を含むデータ群の中央の傾向を示す値を意味する。例えば、図4及び図5に示す手法の代替策として、吸気時間及び呼吸時間の「平均化」を、不規則な吸気時間及び呼吸時間の影響をなくすためにフィルタリングを使用して行い得る。前述のフィルタリング手法は有用であり得る。しかし、現実の臨床アプリケーションでは、患者は、咳をし、話し、げっぷを出し、しゃっくりし、及び/又は、移動するなどの特定のことを行う。これにより、多くの場合、いくつかの呼吸が不規則になる。本明細書及び特許請求の範囲記載の、更新された立ち上がり時間を計算する前に呼吸統計から前述の呼吸を除去するための前述のフィルタリング手法の使用が有益になる。本発明は、選択/拒否基準が、呼吸に関連していない咳、くしゃみ、しゃっくり、人体の運動、又は呼吸に関連していない他の外部イベントによって生成されていることがあり得る呼吸統計を削除するために課されるということを想定している。よって、現在の呼吸時間は、生理的に妥当な時間に対して検査されるものとする。例えば、これは、
(1)Texp>Tinsp>4Texp、(2)3秒>Tinsp>0.5秒、及び
(3)6秒>Tbreath>1秒
の基準で定義し得る。ここで、Txpは呼気時間であり、Tinspは吸気時間であり、Tbreathは合計呼吸時間である。更に、統計解析を使用して、「通常の」呼吸値(呼気時間及び合計呼吸時間)を求め、よって、不規則な呼気時間及び呼吸時間をなくし得る。
【0047】
更に、フィルタリングを行うためのメジアン・フィルタは、極端部上のデータが完全に無視されているという点で効果的である。更に、上記メジアン・フィルタ又は同様なフィルタを使用した「平均化」は、図4及び図5に記載したN個の連続した呼吸から平均時間が計算されるブロック手法、又は、いわゆる周知のボックスカー平均(ここで、その考え方は、平均が、各呼吸後に計算されるというものである)を使用して行い得る。当然、各呼吸からの計算から、L個の各呼吸の後での計算までの連続体が存在している。ここで、L=1であり(クラシック・ボックスカー平均の場合)、L=Nである(N個の連続ブロックの平均の場合)。
【0048】
上記図4及び図5の方法は、特定の患者呼吸パラメータ(例えば、吸気時間及び合計呼吸時間)の平均値に基づいて立ち上がり時間を自動的に調節する。よって、上述の実施例における立ち上がり時間は、複数の呼吸周期に続いて周期的に調節される。あるいは、患者の呼吸パラメータの現在の値に基づいて呼吸周期毎に調節し得る。図6及び図7は、このようにして立ち上がり時間を調節する方法の例示的な実施例のフロー図である。
【0049】
図6を参照すれば、本明細書及び特許請求の範囲記載の方法において、吸気時間が、各呼吸周期後に測定され、立ち上がり時間が、測定値に基づいて、次の周期について調節される。方法は、工程200から始まり、工程200では、立ち上がり時間変数が、入出力装置66を使用して圧力サポート・システム50に値を入力することにより、臨床医(又は患者)によって設定される初期値に等しく設定される。工程205では、バイレベル陽圧サポートが、次いで、単一の呼吸周期の現在の立ち上がり時間、及び確立されたIPAPレベル及びEPAPレベルにおいて圧力サポート・システムにより、患者に提供される。工程210では、吸気時間が測定される。本明細書の他の箇所で説明するように、これは、いくつかの適切な既知の、又はその後、開発されたやり方の何れかで行い得る。次に、工程215で、立ち上がり時間変数の新たな値が、求められた吸気時間に基づいて求められる。本明細書の別の箇所に記載の通り、このことは、いくつかのやり方で(例えば、定数で乗算することにより、又はルックアップ・テーブルを照会することにより、)行い得る。工程215に続き、どのように実現されていても、方法は工程220に進む。ここで、立ち上がり時間変数は、工程215で判定される新たな値に等しく設定される。工程220に続き、方法は工程205に戻り、工程205では、バイレベル陽圧サポート治療が、新たな(現在の)立ち上がり時間において患者に提供される。
【0050】
図7を参照すれば、本明細書及び特許請求の範囲記載の方法において、吸気時間及び合計呼吸時間が、各呼吸周期後に測定され、立ち上がり時間が、測定値に基づいて、次の周期について調節される。方法は、工程225から始まり、工程225では、立ち上がり時間変数が、入出力装置66を使用して圧力サポート・システム50に値を入力することにより、臨床医(又は患者)によって設定される初期値に等しく設定される。工程230では、バイレベル陽圧サポートが、単一の呼吸周期の現在の立ち上がり時間、及び確立されたIPAPレベル及びEPAPレベルにおいて圧力サポート・システム50により、患者に提供される。工程235では、吸気時間及び合計呼吸時間が測定される。本明細書の他の箇所で説明するように、これは、いくつかの適切な既知の、又はその後、開発されたやり方の何れかで行い得る。
【0051】
次に、工程240で、立ち上がり時間変数の新たな値が、求められた吸気時間及び求められた合計呼吸時間に基づいて求められる。これは、別々のいくつかのやり方で行い得る。限定的でない例示的な一実施例では、これは、本明細書及び特許請求の範囲記載のルックアップ・テーブルを照会することによって行われる。工程240に続き、どのように実現されていても、方法は工程245に進む。ここで、立ち上がり時間変数は、工程240で求められる新たな値に等しく設定される。工程245に続き、方法は工程230に戻り、工程230では、バイレベル陽圧サポート治療が、新たな(現在の)立ち上がり時間において患者に提供される。
【0052】
よって、本明細書に詳細に記載の通り、本発明は、バイレベル陽圧サポート治療の立ち上がり時間を自動的に調節する適切な圧力サポート・システムにおいて実現し得る、別々のいくつかの方法の実施例を提供する。バイレベル陽圧サポート治療の立ち上がり時間を自動的に調節するために、家庭内の環境におけるバイレベル陽圧サポート治療の提供に関連付けられたコストは最小にし得る。臨床医又は他の提供者によって必要な家庭訪問が少なくなるからである。
【0053】
本発明は、最も実用的であり、例示的な実施例であると現在、みなされることに基づいて、例証の目的で詳細に説明しているが、前述の詳細は、その目的に過ぎず、本発明は、開示された実施例に限定されないばかりか、逆に、添付の請求項の趣旨及び範囲内に収まる修正及び均等な構成を包含することを意図している。例えば、本発明は、できる限り、何れかの実施例の1つ又は複数の特徴を、何れかの他の実施例の1つ又は複数の特徴と組合せ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力サポート・システムであって、
呼吸気体のフローを生成するよう適合された圧力生成システムと、
動作するよう前記圧力生成システムに結合され、患者の気道に前記呼吸気体のフローを供給するための患者回路と、
動作するよう前記圧力生成システムに結合されたコントローラと
を備え、前記コントローラは、前記圧力サポート・システムを使用している間に、前記患者の吸気時間に関連付けられた尺度を求め、前記圧力生成システムを制御して、(i)前記患者の吸息相の少なくとも一部分の間に吸気気道陽圧(IPAP)レベルで前記患者に前記呼吸気体のフローを供給し、前記患者の呼息相の少なくとも一部分の間に前記IPAPレベルよりも少ない呼気気道陽圧(EPAP)レベルで前記患者に前記呼吸気体のフローを供給し、(ii)前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定するよう適合された圧力サポート・システム。
【請求項2】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、動作するよう前記コントローラに結合されたセンサを更に備え、前記センサは、前記呼吸気体のフローに関連付けられた特性を測定し、それを示す信号を生成するよう適合され、前記コントローラは、前記信号を受け取り、それに基づいて前記患者の吸気時間に関連付けられた尺度を求めるよう適合される圧力サポート・システム。
【請求項3】
請求項2記載の圧力サポート・システムであって、前記センサは流量センサを含み、前記信号はフロー信号を含み、又は、前記センサは圧力センサを含み、前記信号は圧力信号を含む圧力サポート・システム。
【請求項4】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度は、(a)所定数の呼吸周期、又は(b)所定の期間にわたって判定される前記患者の平均吸気時間である圧力サポート・システム。
【請求項5】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度は、特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の吸気時間である圧力サポート・システム。
【請求項6】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、前記コントローラは、(a)前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度を所定の定数で乗算して前記立ち上がり時間を求める機能、又は、(b)前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度を使用して、記憶されたルックアップ・テーブルに照会して前記立ち上がり時間を求める機能により、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定するよう適合される圧力サポート・システム。
【請求項7】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、前記コントローラは、前記圧力サポート・システムを使用している間に、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を求め、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度、及び前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの前記遷移に関連付けられた前記立ち上がり時間を自動的に設定するよう適合される圧力サポート・システム。
【請求項8】
請求項7記載の圧力サポート・システムであって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度は前記患者の平均吸気時間であり、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は前記患者の平均合計呼吸時間である圧力サポート・システム。
【請求項9】
請求項7記載の圧力サポート・システムであって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度は特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の吸気時間であり、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は前記特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の合計呼吸時間である圧力サポート・システム。
【請求項10】
請求項7記載の圧力サポート・システムであって、前記コントローラは、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度、及び前記立ち上がり時間を求めるために前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を用いて、記憶されたルックアップ・テーブルに照会することにより、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度、及び前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定するよう適合される圧力サポート・システム。
【請求項11】
請求項1記載の圧力サポート・システムであって、前記EPAPレベルから前記OPAPレベルへの遷移は、(a)可変の傾斜を有する指数ランプ、又は、(b)一定の傾斜を有する直線ランプである圧力サポート・システム。
【請求項12】
患者に圧力サポートを提供する方法であって、
治療中に前記患者の吸気時間に関連付けられた尺度を求める工程と、
前記患者の吸息相の少なくとも一部分の間に、吸気気道陽圧(IPAP)レベルで前記患者に向けて呼吸気体のフローを供給する工程と、
前記患者の呼息相の少なくとも一部分の間に前記IPAPレベルよりも少ない呼気気道陽圧(EPAP)レベルで前記患者に向けて呼吸気体のフローを供給する工程と、
前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの遷移に関連付けられた立ち上がり時間を自動的に設定する工程とを含む方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度は、(a)所定数の呼吸周期、又は(b)所定の期間にわたって判定される前記患者の平均吸気時間である方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度は、特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の吸気時間である方法。
【請求項15】
請求項12記載の方法であって、前記自動的に設定する工程は、(a)前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度を、所定の定数で乗算して前記立ち上がり時間を求める工程、又は(b)前記患者の前記吸気時間に関連付けられた前記尺度を使用して、記憶されたルックアップ・テーブルに照会して、前記立ち上がり時間を求める工程を含む方法。
【請求項16】
請求項12記載の方法であって、前記圧力サポート・システムを使用している間に、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を求める工程を更に備え、前記自動的に設定する工程は、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度、及び前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度に基づいて前記EPAPレベルから前記IPAPレベルへの前記遷移に関連付けられた前記立ち上がり時間を自動的に設定する工程を含む方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度は前記患者の平均吸気時間であり、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は前記患者の平均合計呼吸時間である方法。
【請求項18】
請求項16記載の方法であって、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度は特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の吸気時間であり、前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度は前記特定の呼吸周期に関連付けられた前記患者の合計呼吸時間である方法。
【請求項19】
請求項16記載の方法であって、前記自動的に設定する工程は、前記患者の前記吸気時間に関連付けられた尺度、及び前記患者の合計呼吸時間に関連付けられた尺度を使用して、記憶されたルックアップ・テーブルを照会して前記立ち上がり時間を求める工程を含む方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【公表番号】特表2012−511338(P2012−511338A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539128(P2011−539128)
【出願日】平成21年11月21日(2009.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055248
【国際公開番号】WO2010/067236
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)