説明

立ち面上に試験人員を固定するための装置

本発明は、立ち面上に試験人員を固定するための装置に関し、その際試験人員に付けられた腰ベルトのうちの1つと立ち面の下方に配置されている止め板の間に、少なくとも1つのロープが張られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立ち面上に試験人員を固定するための装置に関する。
【0002】
本発明は特に、人員を無重力状態で固定することを可能にし、その結果人員の立ち面(支持面)上でその力を行使することができる装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の装置は、フットループとロープシステムを基本としている。フットループは、一般にどちらかと言えば動かない作業の場合の移動および固定に用いられるが、スポーツ活動は排除されていない。ロープシステムは、たいていの場合床に固定され、上半身のハーネスを使用して宇宙船の構造体に人員を固定する。フットループでは耐久性のある固定は不可能である。さらに、被験者を可変の力で支持面に固定するためには不適当である。ロープシステムは人員を可変に固定することはできるが、その配置が原因で横方向に大きなガイド力を供給する。
【0004】
目を閉じた状態での片足立ちまたは両足立ちなどの標準練習では、その基本は試験人員が定められた期間可能な限り動かないで立ち続けることであり、その際すべての動きが検知され評価される。そのような練習は従来の装置では条件付きでしか可能でない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、立ち面上に試験人員を固定するための装置を提示することであり、この装置では横方向のガイド力を低減する一方で引き続き可変の垂直の力が被験者に作用することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、適用される請求項1の特徴を備えた装置によって解決される。有利な実施形態は従属請求項の対象である。
【0007】
本発明により、試験人員に付けられた腰ベルトの1つと、立ち面の下方に配置されている止め板との間に少なくとも1つのロープが張られる。
【0008】
その際この固定は、試験人員に可変で垂直の(重力をシミュレーションする)力をかけることが可能であり、その際発生する水平の力が最小化されるように形成される。固定の種類によって人員は運動を復元力または支持力をかけるために最大の運動自由性が与えられ、このことは、特に調整的平衡能訓練の重要な要件である。
【0009】
目的に合わせて、少なくとも2つのロープが腰ベルトと止め板の間に張られる。さらに、有利には立ち面が開口部を備え、この開口部を通ってロープが案内される。この開口部は適切に、立ち面上に垂直に投影された試験人員の重心の範囲に設けられている。目的に合わせてロープは、ロープが試験人員に接触しないように案内される。試験人員の身長に応じて、つまり立ち面上の腰ベルトの高さに応じて、ロープを腰ベルトに水平に間隔を置いて固定することが必要であり得る。
【0010】
本発明および本発明の有利な実施形態を、図を使用して以下で詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一の実施形態の図である。
【図2】本発明の第二の実施形態の図である。
【図3】本発明の第三の実施形態の図である。
【図4】本発明の第四の実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第一の、図1に示された実施形態では、目的に合わせて伸縮性のあるロープSが止め板H上の固定点Pにまとめられる。図1では、例として2つのロープが備えられ、その際1つのロープSが試験人員Tの腹の前の範囲に、および他のロープSが背中の後の範囲に固定される。
【0013】
固定点Pは、ここでは目的に合わせて、立ち面SF上の垂線および身体重心KSの立ち面SF上への投影を通って張られるレベルにあるように選択される。
目的に合わせて、各ロープのために専用の固定点Pを、挙げられたレベル内で選択することができる。
【0014】
目的に合わせて、立ち面SFは開口部Oを備え(拡大図)、この開口部は立ち面SF上に垂直に投影された試験人員の重心KSの範囲に設けられる。止め板Hは、目的に合わせて開口部Oより大きい面積を備える。止め板Hは、この止め板が水平レベル(矢印方向)で自由に動けるように立ち面SFの下方に支持される。ロープSおよびSは、開口部Oを通って案内され、試験人員Tの腰ベルトと止め板Hを結合する。
試験人員Tの腰ベルトが水平に動揺(位置P1から位置P2へ)する場合、身体重心KSの動きが固定点Pに固定され、これによって伸縮性のあるロープSおよびSもやはり水平レベルの動きによって長さ変化と力変化を受けない。従ってこのシステムでは、張りロープSおよびSの伸びから生じるただ1つの垂直の力Fが作用する。
【0015】
図2に示された本発明の第二の一実施形態では、試験人員Tが例として、2つの交差した伸縮性のあるロープSおよびSが立ち面SF上に固定される。ロープSおよびSは、見やすくするためにそれぞれ試験人員Tの腰ベルトの側に取り付けられている。しかし、目的に合わせて4つのロープを使用することができ、その際それぞれ1つの、別のロープを試験人員Tの腹および背中の範囲に固定してよく、場合によっては45°、つまり腰の前後で横方向に外側に回してもよい(図示せず)。
【0016】
止め板Hは、目的に合わせて間隔dを置いて立ち面SFの下面の下方に配置されている。止め板Hは、この実施形態ではスライド不可能で、例えば止め板は立ち面SFの下面とスペーサーAHを使用して結合されている。開口部Oに関して、第一の実施形態に示された説明はこの実施形態でも有効である。
【0017】
止め板Hの伸縮性のあるロープSおよびSの固定点BおよびBは、ロープSおよびSが交点SPで立ち面SFと交差するように選択される。この装置の利点は、必要なスペースが非常に狭く、水平の力が非常に小さいことである。一方でロープSおよびSが立ち面SFに固定される角度が比較的大きく、力のコサイン部分が、側方へ張りを緩める場合よりも非常に小さく、他方でロープSおよびSのX形状の配置が交互に起こる水平の力FHLを生じさせる。こうして水平の復元力FHLは、位置1から位置2への動きの場合、ロープSが立ち面SFに対して垂直になるとまずその最大値に到達し、次に復元力が再度減少する。
【0018】
本発明の第三の実施形態は図3に示されている。止め板H上には少なくとも3つの滑車U(図面の都合で2つの滑車のみ示されている)が、滑車Uから構成される面(図示せず)の重心が止め板H上に投影される試験人員Tの重心KSと重なり、かつ周りを巡るロープSが、試験人員Tに付けられている腰ベルトから滑車Uを介して腰ベルトに戻るように配置されている。
【0019】
周りを巡るスチールロープSは、手動ウィンチで張ることができる。引っ張り力を検知するために、ばね秤を使用してよい。ロープ長が一定であることにより、およびほぼ摩擦のない滑車の使用により、ロープは常に腰の動きに水平レベルで追随する。
図3から、右への腰の動き(位置1から位置2へ)が右側のロープSのたわみをもたらすことは明かである。この、右側のロープセクションSA1(滑車と腰ベルトの間のセクション)の短縮は、左側のロープセクションSA2の伸張をもたらす。なぜならロープSは一定の長さであるからである。片側のロープがたわむと同時にもう片側のロープが伸張するため、水平の力がシステム内で大幅に低減される。腰の動きを円軌道と仮定すると、腰の垂直の移動も最小になるが、このことはシステム内の力の釣合いにほとんど影響を及ぼさない。身体の揺れが示された円軌道上で±10°になると、示された解決法ではロープ長の相違が最大で5mmになる。このことによって引き起こされる垂直の力成分Fの減少は非常に小さい。
【0020】
本発明の第四の実施形態は図4に示されている。この実施形態は、第一と第二の実施形態の組み合わせである。第一の実施形態(図1)のスライド可能な止め板Hは立ち面の下方に間隔AHを置いて配置されている。このことにより、膝関節の交叉靱帯に似た張力が生じる。記述された装置で生じたロール−滑走機構により、身体重心KSの動きの水平のレベルの動きの張りが生じ、起こりうる身体の傾斜運動が同時に交差したロープS、Sによって相殺される。
【0021】
本発明により装置が無重力状態において、水中または通常条件下において使用することが有利であり得る。
【0022】
本発明による装置により、形状寸法および機構に起因して垂直の力が引き起こされる可能性があるが、起こりうる水平の力は低減される。発生した垂直の力は、人員を無重力状態でプラットフォームに固定するために、または重量ベストのような追加荷重を加えるためには必要である。
水平の力を低減は、張りを防止することで動きが安定することを意味する。
そのような張りの目的は、例えば追加の側方ガイドによって練習者の練習を容易にすることではなく、練習実施の難度を得ること(無重力状態)または高めること(地上で)である。これは張り/固定によって加えられる追加の垂直の力により達成が可能である。
【0023】
本発明による装置の水中での有利な使用は、身体をほぼ無重力にするために沈められた身体の浮力を使用することである。本発明による装置の水中での、例えばそのために備えられた水槽での使用により、試験人員のためにトレーニング構成を実現でき、このトレーニング構成はトレーニングを可能にし、調整可能な負荷の下で練習者のために練習を実施することができる。練習者の負荷は一方で練習者をどれほど深く水中に沈めるかによって調整でき、他方で追加の垂直の力の調整によって、本発明による練習者の立ち面上での固定が調整され得る。練習者に作用する力は、練習者が入っている水槽の水位の高さと、浮力が反対に作用する垂直の力とによって生み出され、この垂直の力によって練習者が立ち面上に固定される。
【0024】
特にスポーツ傷害のようなけがのリハビリテーションでは、医学的な治療の直後から最初は負荷を低減した状態で重要な運動プロセスのトレーニングに復帰することができる。水によって負荷が低減されることで、高齢者分野または治療での発展の導入がさらに可能になる。負荷はトレーニングが進行すると再び高めることができる。
【0025】
有利な使用の構造の実施形態は、基本的に、他のトレーニングバリエーション、例えば水中でのルームランナートレーニングが知られているが、これは感覚運動トレーニングの実施のためではない。本発明による装置の水中での有利な使用は、練習者にさらなる利点を提供するよう拡大する。
【0026】
リハビリテーション、治療、老人医学およびスポーツと並んで、本発明による装置の水中での有利な使用は、上記の宇宙飛行士をトレーニングするための非常に効果的な使用を提供する。宇宙飛行中に同じ条件で繰り返して行うことができる感覚運動練習を宇宙飛行前に修了しておくことにより、無重力状態への適合、つまり協調運動障害および宇宙病のような既知の問題を既知の方法と比べてより迅速に克服可能であることが不可欠である。
【0027】
これにより、すでにミッション開始前に地上で目的とする惑星のさまざまな重力条件下でシミュレーションを行い、トレーニングすることができる。すでに実施された科学的実験により、一度獲得した感覚運動能力は、比較的短時間、定期的に練習を実施することによって維持可能であることが想定される。
【符号の説明】
【0028】
AH 間隔、スペーサー
固定点
固定点
d 間隔
HL 水平の力
垂直の力
H 止め板
KS 身体重心
O 開口部
P 固定点
P1 位置
P2 位置
S ロープ
SA1 ロープセクション
SA2 ロープセクション
ロープ
ロープ
SF 立ち面
T 試験人員
U 滑車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立ち面上に試験人員を固定するための装置において、試験人員に付けられた腰ベルトのうちの1つと立ち面の下方に配置されている止め板の間に、少なくとも1つのロープが張られていることを特徴とする装置。
【請求項2】
少なくとも2つのロープが、前記試験人員に付けられた腰ベルトと前記止め板との間に張られ、および前記立ち面が1つの、垂直に前記立ち面に投影された前記試験人員の重心の範囲に設けられた開口部を備えており、該開口部を通って少なくとも2つのロープが案内されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記止め板がある間隔を置いて前記立ち面の下方に配置されており、および前記試験人員の前記腰ベルトと前記止め板との間の前記ロープが、前記ロープが前記立ち面のレベルで交差するように前記開口部を通って案内されることを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記止め板が水平にスライド可能であることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記ロープが伸縮性を備えていることを特徴とする、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記止め板上に少なくとも3つの滑車が、前記滑車によって形成された面の重心が前記止め板上に投影された前記試験人員の重心と重なり、周りを巡るロープが前記試験人員に付けられた腰ベルトから前記滑車を介して前記腰ベルトに戻るように案内されるように配置されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記ロープが柔軟性を備えたスチールロープであることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に従った装置の、無重力状態でのまたは水中での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−519459(P2013−519459A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553175(P2012−553175)
【出願日】平成23年2月5日(2011.2.5)
【国際出願番号】PCT/DE2011/000107
【国際公開番号】WO2011/100948
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(512202923)アストリウム ゲーエムベーハー (1)