説明

立体塗り絵シート

【課題】着色された絵を単に平面的でなく、視覚的効果、とりわけ立体的視覚効果が得られるように鑑賞可能な立体塗り絵シートを提供する。
【解決手段】彩色可能な下絵が描かれている下絵領域21と、前記下絵領域21以外の領域であって黒色又は暗色にあらかじめ着色されている背景領域22とを備えたことを特徴とする立体塗り絵シート20。下絵領域21に有彩色の筆記具30で描画された絵は、プリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40を通して見ることで、立体的に鑑賞可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下絵に彩色して楽しむ塗り絵シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より主に子供用の遊戯具の一種として、白紙のシートに絵模様の輪郭線で下絵が描かれ、その下絵に種々な色彩で自由に着色して遊ぶ、塗り絵というものが多数提供されている。その中には下記特許文献1に開示されているもののように、色を塗るための手本とセットになっているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−199645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記先行技術を含む従来技術では、下絵に自由に着色して楽しむことは可能であるが、着色された絵はあくまで平面的にしか見えないものである。よって、下絵に着色すること自体、また、その着色された絵を見て楽しむ以外の付加的な楽しみ方は提供されていないものであった。
そこで本発明は、着色された絵を単に平面的でなく、視覚的効果、とりわけ立体的視覚効果が得られるように鑑賞可能な立体塗り絵シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)第1の発明
上記課題に鑑み、本件発明に係る立体塗り絵シート20は、彩色可能な下絵が描かれている下絵領域21と、前記下絵領域21以外の領域であって黒色又は暗色にあらかじめ着色されている背景領域22とを備えたことを特徴とする。
すなわち、下絵領域21内は、従来の塗り絵と同様、輪郭線が描かれている以外は白色の地色が見えていて彩色可能な状態になっている。一方、この下絵領域21以外の領域、換言すると下絵領域21の周囲の領域である背景領域22には、あらかじめ黒色又は暗色で着色がされている。ここで、暗色とは、各色相において黒色に近い、低明度の色彩をいう。たとえば、暗灰色や濃紺などがこの暗色として挙げられる。この背景領域22の着色は、下絵領域21を印刷する際に同時に黒色又は暗色等で印刷することで行うことができる。
【0006】
下絵領域21内には、筆記具30によって彩色可能である。この筆記具30は特に有彩色で描画可能なものであれば特に種類は限定されない。ここで、「有彩色」とは黒・白及びこれらの混色以外の色で、彩度がプラス値であるものをいう。なお、彩度の値は、各色相において最高値又はそれに近い値であることが望ましい。
このようにして、立体塗り絵シート20上の下絵領域21に有彩色の筆記具30で描画された絵は、プリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40を通して見ることで、立体的に鑑賞することが可能となっている。このような立体メガネ40としては、たとえば米国クロマテック社製のクロマデプス(商品名)3Dメガネがある。このような立体メガネは、プリズムの分光特性を利用し、左右で色彩ごとに分光視差を生じさせるものである。ここで、下絵領域21の周囲は黒色又は暗色の背景領域22となっている。つまり、彩色された下絵領域21は黒色又は暗色を背景とすることとなる。このような状況で、この立体メガネで彩色された下絵領域21を鑑賞すると、たとえば赤色は手前に、青色は奧に見えるという視覚効果が得られる。このような立体的視覚効果は黒色を背景領域22とした場合最も顕著に発揮される。
【0007】
なお、筆記具30は、少なくとも赤色及び青色で描画可能なものであることが望ましい。すなわち、プリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40による立体的視覚効果は、特に赤色が近くに見え、青色が遠くに見えるように分光視差を生じさせるものである。よって、筆記具30として赤色と青色との2色を最低限備えていれば、この2色の対比による立体的視覚効果を得ることができる。
また、前記筆記具30としてはさらに、赤色及び青色以外の色相で描画可能であるものも揃えることが望ましい。赤色及び青色以外の色相、たとえば橙色、黄色、緑色のような色彩は、前記プリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネ40による分光視差は、赤色及び青色の中間段階に位置することになる。また紫色の場合は青色よりもより遠くに見えることになる。よってこれらの色彩で描画可能な筆記具30を揃えれば、赤色及び青色の筆記具30のみの場合に比べより複雑微妙な立体的視覚効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記のように構成されているので、以下に記す効果を奏する。
すなわち、本発明に係る立体塗り絵シートの下絵領域を有彩色で着色すると、着色された絵の周囲が黒色又は暗色の背景となっているので、これをプリズム特性のあるレンズを備えた立体メガネで鑑賞するときには、平面的でなく、視覚的効果、とりわけ立体的視覚効果が得られるように鑑賞可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態に係る立体塗り絵シート20は、図1に示すように、長方形の用紙として形成されている。この用紙に輪郭線が印刷されることで下絵領域21が描かれている。下絵領域21内は、輪郭線の部分を除いて用紙の地色である白色となっている。一方、この下絵領域21以外の部分は黒一色で印刷された背景領域22となっている。
上記下絵領域21には、図1に示す筆記具30で彩色が可能である。ここで、赤色及び青色を含む複数色のものが用いられる。たとえば、出願人製品の「POSCA」(商品名)の1セットが用いられる。この筆記具30は被覆性に優れており、重ね描きが可能となっている。よって、一旦塗った箇所の上からまた別な色で被覆することが可能となっている。
【0011】
下絵領域21を筆記具30で彩色した後は、図1に示す立体メガネ40での鑑賞に供される。
ここで、立体メガネ40としては、米国クロマテック社製のクロマデプス(商品名)3Dメガネが用いられる。この立体メガネ40は、紙製のメガネ枠41に、1対のマイクロプリズムレンズ42R,42Lが装着されているものである。そして、右側のマイクロプリズムレンズ42Rは、赤色は右方へ変位し、青色は左方へ変位するような分光特性を備えている。一方、左側のマイクロプリズムレンズ43Lはこの逆に、赤色は左方へ変位し、青色は右方へ変位するような分光特性を備えている。これは、同一の分光特性のマイクロプリズムレンズを、左右で逆向きにメガネ枠41に装着することで可能となる。このような分光特性の結果、赤色で描かれた部分の視差は実際の用紙上より大きくなるため、その部分は手前にあるように見えることになる。逆に青色で描かれた部分の視差は小さくなるので奥側に見えることになる。また、その他の色彩、たとえば橙色、黄色、緑色等、赤色と青色との間の波長の色彩の場合は、その波長に応じて赤色と青色との間に位置して見えることとなる。また、紫色など、青色より短波長の色彩の場合は青色よりも奧側に見えることとなる。このような立体的視覚効果は、背景領域22を黒色としているため顕著に発揮されるものである。
【0012】
なお、図1に示す立体塗り絵シート20は、同図中に示した上述の筆記具30及び立体メガネ40とともに立体塗り絵セット10を構成するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明は、黒色又は暗色の描画用紙上に有彩色の筆記具で立体画を描画し、それを立体メガネを用いて立体視で鑑賞するような描画セットとして利用可能である。
【符号の説明】
【0014】
10 立体塗り絵セット
20 立体塗り絵シート 21 下絵領域 22 背景領域
30 筆記具
40 立体メガネ 41 メガネ枠
42R 右側のマイクロプリズムレンズ
42L 左側のマイクロプリズムレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
彩色可能な下絵が描かれている下絵領域と、前記下絵領域以外の領域であって黒色又は暗色にあらかじめ着色されている背景領域とを備えたことを特徴とする立体塗り絵シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−40087(P2012−40087A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182136(P2010−182136)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】