説明

立体画像印刷物

【課題】 画像の粗さを低減した立体画像印刷物を提供する。
【解決手段】 立体画像印刷物5は、複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズ4と、レンチキュラーレンズ4の背面4aに配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物3とにより構成される。網点画像印刷物3の細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、色版ごとに複数の基準位置を中心として長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されている。レンチキュラーレンズ側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物を観察することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンチキュラーレンズを用いた立体画像印刷物に関し、特に、レンチキュラーレンズの背面に配置され、濃度階調表現に係る網点画像印刷物の網点印刷技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、商品やサービスの広告用に、ポスターや広告印刷物を見る者に目立たせるため、商品やサービスの象徴的な画像を立体的に見えるようレンチキュラーレンズを用いた立体画像印刷物が利用されている。このような立体画像印刷物は、異なる角度から撮影された画像が、短冊状に分割されて、レンチキュラーレンズの背面にその半円筒状レンズに沿って配列されたものである(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
レンチキュラーレンズの背面に配置される画像の網点印刷方式としては、FM(周波数変調)スクリーン法とAM(振幅変調)スクリーン法とが知られている(例えば、特許文献1)。FMスクリーン法は、一定の大きさを持った網点の密度によって濃度階調が表現し、AMスクリーン法は、網点の大きさによって濃度階調を表現する方法である。また、細長画像の網点印刷として、階調表現を行う最小単位の領域において、その中央を中心として長手方向にAMスクリーンにより網点印刷する方法や、網点が個々に離間するようにFMスクリーンにより網点印刷する方法が提案されている(特許文献2)。
【0004】
【特許文献1】特開平9−61950号公報
【特許文献2】特開2007−233105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の立体画像印刷物では、階調表現を行う最小単位の領域の中央の一点を中心として、長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷していたため、網点がその中央に集中してしまい、印刷対象紙の地色が、階調表現を行う最小単位の領域の縁部に現れやすくなって、画像が粗くなるという問題があった。また、網点が個々に離間するように網点印刷する場合、一点の網点を着実に着肉できる印刷機や刷版機の解像度に依存することになり、より解像度の高い印刷を実現することは困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、画像の粗さを低減した立体画像印刷物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る立体画像印刷物は、複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されていることを特徴とする。
【0008】
この立体画像印刷物によれば、網点画像印刷物の細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されているため、レンチキュラーレンズ側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物を観察することができる。
【0009】
また、この立体画像印刷物において、同じ半円筒状レンズに対応して配列された複数の細長画像における前記基準位置は、直線状に配置されていると良い。この構成により、基準位置周辺に印刷する画素が連続することで印刷領域が広がり、印刷機や刷版機による網点印刷の着肉をより確実に行うことができるようになり、印刷機や刷版機の解像度を超える階調表現が可能となる。
【0010】
さらに、上記立体画像印刷物において、隣接する半円筒状レンズに対応して配列された細長画像の直線的な前記基準位置は、互いにずれているとより好ましい。この構成により、基準位置から離れている位置ほど、網点画像印刷物の下地が見えやすくなる傾向があるが、細長画像の直線的な基準位置を、半円筒状レンズに対応する領域が異なるとずれるようにすれば、隣接する半円筒状レンズに対応する網点画像印刷物において、下地が連続しないようにすることができる。
【0011】
あるいは、本発明に係る立体画像印刷物は、複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、前記基準位置の数は、印刷される網点数に応じて異なっていることを特徴とする。
【0012】
この立体画像印刷物によれば、網点画像印刷物の細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、基準位置の数は、印刷される網点数に応じて細長画像によって異なっているため、網点画像印刷物全体で見れば、基準位置が散在することとなり、レンチキュラーレンズ側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物を観察することができる。
【0013】
または、本発明に係る立体画像印刷物は、複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、前記基準位置は、細長画像によってずれていることを特徴とする。
【0014】
この構成により、網点画像印刷物の細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、しかも、基準位置は、細長画像によってずれているため、レンチキュラーレンズ側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物を観察することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、画像の粗さを低減した立体画像印刷物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る立体画像印刷物の好適な実施形態について説明する。
【0017】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る立体画像印刷物について説明する。図1は、立体画像印刷物に用いられる網点画像印刷物3の作製方法を示した図である。図1(A)に示すように、ステレオカメラ1の各カメラ1a、1b、1c、1dを水平に配列するように設置して、被写体2を撮影する。図1(B)は、各カメラ1a〜1dによって撮影された画像を示し、図1(B)のB−1は、カメラ1aによって撮影された画像G1、図1(B)のB−2は、カメラ1bによって撮影された画像G2、図1(B)のB−3は、カメラ1cによって撮影された画像G3、図1(B)のB−4は、カメラ1dによって撮影された画像G4である。これらの画像G1〜G4は、使用されるレンチキュラーレンズの半円筒状レンズの個数に応じて、縦に分割される。
【0018】
図1(B)において、B−1の画像G1が分割された画像を左から順に、細長画像s11、s12、s13、…とする。同様に、B−2の画像G2が分割された画像を、細長画像s21、s22、s23、…とし、B−3の画像G3が分割された画像を、細長画像s31、s32、s33、…とし、B−4の画像G4が分割された画像を、細長画像s41、s42、s43、…とする。
【0019】
そして、図1(C)に示すように、画像G1〜G4の各細長画像を一つずつ画像G1〜G4の順に配列させる。すなわち、左から順に、
s11、s21、s31、s41、s12、s22、s32、s42、s13、s23、s33、s43、s14、s24、s34、s44、…
と配列する。
【0020】
そのうえで、
s11、s21、s31、s41をグループGr1、
s12、s22、s32、s42をグループGr2、
s13、s23、s33、s43をグループGr3、
s14、s24、s34、s44をグループGr4、
……
とすると、各グループGrをレンチキュラーレンズの半円筒状レンズの背面に配置されて、レンチキュラーレンズの背面全体にわたって配置されるように、上下左右方向に拡大ないし縮小して網点画像印刷物3とする。
【0021】
次に、図2を用いてレンチキュラーレンズ4の背面4aへの網点画像印刷物3の配置について説明する。図2は、立体画像印刷物5の分解斜視図である。図2に示すように、網点画像印刷物3は、各グループGrが連接されて構成され、各グループGrの細長画像は、レンチキュラーレンズ4における一つの半円筒状レンズ4bの背面に合うように配置されて、背面4aへ貼り合わされる。
【0022】
続いて、図3を用いて網点画像印刷物3に網点印刷を行う仕方について説明する。図3(A)は、網点画像印刷物3の網点印刷を説明するための図であり、図3(B)は、網点画像印刷物3に貼付されるレンチキュラーレンズ4の半円筒状レンズ4bの位置関係を説明するための図である。
【0023】
ここでは、一つの半円筒状レンズ4bの背面に貼付される細長画像が20本あり(20画素)、階調表現を行う最小単位の領域3aとして縦方向の20画素分を用いる場合について説明する。この場合、図3(A)に示すように、20本の細長画像が横方向に配列され、1本の細長画像について、縦方向20画素を用いて、CMYKのいずれか一つ又は複数の色版でその階調度に応じて格子状に網点を印刷するが、図示しているものは、一つの色版での印刷位置である。なお、隣接する画素は、互いに接しており、各画素は網点印刷の網点に対応する。
【0024】
図3(A)に示す例では、階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、ある色版を印刷するにあたって、細長画像の上下の縁から長さ1/4の位置に二本の基準線6,6を設定して、基準線6上にある画素の位置を基準位置とし、それらの基準位置を中心として、細長画像の長手方向に、すなわち、基準位置の画素の上下方向に網点を印刷する。よって、細長画像の基準位置は、直線状に配置されることになる。そして、ある色版の階調度により、印刷すべき画素数を、上下の基準位置用に二つに分け、それぞれの基準位置を中心として上下方向に、印刷すべき画素数分、網点を印刷する。
【0025】
CMYKのうち、複数の色版で網点画像印刷物3を網点印刷する場合には、色版ごとの基準線6を一致させてもよく、或いは、網点が散在して下地が現れないように、ずらすように設定してもよい。
【0026】
このように、網点画像印刷物3の細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、色版ごとに複数の基準位置を中心として長手方向に振幅変調(AM)スクリーンにより網点印刷されているため、レンチキュラーレンズ4側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物3を観察することができる。また、基準位置は、連続的で直線状に配置されているため、基準位置周辺に印刷する画素が連続することで印刷領域が広がり、印刷機や刷版機による網点印刷の着肉をより確実に行うことができるようになり、印刷機や刷版機の解像度を超える階調表現が可能となる。
【0027】
なお、上記第1実施形態においては、図3に示すように、各基準位置から印刷する画素数は、細長画像において印刷すべき画素数を均等に割当てているが、均等でなくても構わない。例えば各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷しないでおき、最低画素数を超える画素がある場合には均等に割当てるようにしてもい。または、ランダムに画素数を各基準位置に割当ててもよい。このとき、完全なランダムで割当てても構わないし、制限をつけてもよい。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷せず、最低画素数を超える画素がある場合には、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当てるといった具合いである。
【0028】
<第2実施形態>
次に、図4(B)を参照して、第2実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第1実施形態では、図4(A)に示すように、二本の基準線6,6を細長画像の上下の縁から長さ1/4の位置に設定したが、基準線6の位置はこれに限られず、第2実施形態を示す図4(B)のように、基準線6をずらしてもよい。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0029】
さらには、隣接する半円筒状レンズ4bに対応して配列された細長画像の直線的な基準位置は、ズレ幅を変えることにより、互いにずれるよう構成させると好ましい。これにより、基準位置から離れている位置ほど、網点画像印刷物3の下地が見えやすくなる傾向があるが、細長画像の直線的な基準位置を、半円筒状レンズ4bに対応する領域が異なるとズレるようにすれば、隣接する半円筒状レンズ4bに対応する網点画像印刷物3において、下地が連続しないようにすることができる。
【0030】
勿論、複数の色版で網点画像印刷物3を網点印刷する場合に、色版ごとの基準線6を、網点が散在するようにずらせば、網点画像印刷物3の下地は、より現れにくくなる。
【0031】
なお、上記第2実施形態においては、図4(B)に示すように、各基準位置から印刷する画素数は、細長画像において印刷すべき画素数を均等に割当てているが、第1実施形態における変形例で示したように、均等でなくても構わない。すなわち、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷しないでおき、最低画素数を超える画素がある場合には均等に割当てるようにしてもい。または、ランダムに画素数を各基準位置に割当ててもよい。このとき、完全なランダムで割当てても構わないし、制限をつけてもよい。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷せず、最低画素数を超える画素がある場合には、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当てるといった具合いである。
【0032】
<第3実施形態>
続いて、図4(C)を参照して、第3実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第1実施形態では、図4(A)に示すように、二本の基準線6,6を細長画像の上下の縁から長さ1/4の位置に設定しることにより、印刷すべき画素数をほぼ等分に分けて印刷したが、第3実施形態を示す図4(C)のように、上下の基準線6に割当てる階調表現画素数を、8画素と12画素というように均等にせず、各階調表現画素数の中央に各基準線6を設定してもよい。この場合、細長画像において印刷すべき画素数を、各基準線6に任意に割当ててよい。
【0033】
さらに、隣接する半円筒状レンズ4bに対応して配列された細長画像においては、互いに、上下の基準線6に割当てる階調表現画素数の比を変えるようにするとよい。これにより、隣接する半円筒状レンズ4bに対応する網点画像印刷物3において、基準位置がずれるようになり、網点画像印刷物3に下地が連続して現れないようにすることができる。勿論、上述の実施形態と同様に、複数の色版で網点画像印刷物3を網点印刷する場合に、色版ごとの基準線6を、網点が散在するようにずらせば、網点画像印刷物3の下地は、さらに現れにくくなる。
【0034】
なお、上記第3実施形態においては、基準位置から印刷する画素数は、各基準位置に任意に割当てているが、細長画像において印刷すべき画素数を、各基準線6に割当てられた画素数の比に応じて割当てても構わない。または、任意に割当てるとしても、割当てる画素数に制限をつけても良い。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷せずに、最低画素数を超える画素がある場合には、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当てるようにしてもよい。
【0035】
また、第2実施形態のように、基準位置を上下にずらしても構わない。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0036】
<第4実施形態>
続いて、図4(D)を参照して、第4実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第1実施形態では、図4(A)に示すように、基準位置は、基準線6上に直線状に配置したが、第4実施形態を示す図4(D)のように、各細長画像の基準位置7をランダムに設定する。この場合、細長画像において印刷すべき画素数を、各基準線6に任意に割当ててよい。この構成により、レンチキュラーレンズ4側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物3を観察することができる。
【0037】
さらに、複数の色版で網点画像印刷物3を網点印刷する場合に、色版で比較しても基準位置をランダムに設定すれば、さらに、網点が散在するようになり、網点画像印刷物3の下地は、より現れにくくなる。
【0038】
なお、上記第4実施形態においては、基準位置から印刷する画素数は、各基準位置に任意に割当てているが、第3実施形態における変形例と同様に、細長画像において印刷すべき画素数を、各基準線6に割当てられた画素数の比に応じて割当てても構わない。または、任意に割当てるとしても、割当てる画素数に制限をつけても良い。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、印刷すべき画素数がその数に満たない場合は、片方の基準位置のみに割当て、もう片方には画素を印刷せずに、最低画素数を超える画素がある場合には、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当てるようにしてもよい。
【0039】
勿論、第2実施形態と同様に、基準位置を上下にずらしても構わない。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0040】
<第5実施形態>
図5(A)を参照して、第5実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第5実施形態においては、細長画像の階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、印刷すべき画素数が、所定数未満、例えば10画素未満である場合には、基準線6を一本設定して、基準線6上にある画素の位置を基準位置とし、その基準位置を中心として、細長画像の長手方向の上下方向に網点を印刷する。その一方、細長画像の階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、印刷すべき画素数が、所定数以上、例えば10画素以上である場合には、基準線6を二本設定して、それらの基準線6上にある画素の位置を基準位置とし、その基準位置を中心として、細長画像の長手方向の上下方向に網点を印刷する。
【0041】
このように、基準位置の数は、印刷される網点数に応じて細長画像によって異なっているため、網点画像印刷物3全体で見れば、基準位置が散在することとなり、レンチキュラーレンズ4側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物3を観察することができる。
【0042】
なお、第5実施形態においては、図5(A)に示すように、基準位置から印刷する画素数は、細長画像において印刷すべき画素数を均等に割当てているが、均等でなくてもよい。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当ててもよい。
【0043】
また、第2実施形態のように、基準位置を上下にずらしてもよい。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0044】
<第6実施形態>
さらに、図5(B)を参照して、第6実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第6実施形態においては、細長画像の階調表現を行う最小単位の領域3aにおいて、連続して印刷される網点の画素数に上限(例えば、8画素)を設け、その上限を超えると、基準線6を二本から三本、四本と基準線6を増やすようにする。
【0045】
このように、連続して印刷される網点の画素数が上限を超えると、基準線6を増やすようにすれば、第5実施形態と同様に、基準位置や網点が散在することとなり、レンチキュラーレンズ4側から画像の粗さが低減されて立体的に網点画像印刷物3を観察することができる。
【0046】
なお、第6実施形態においては、図5(B)に示すように、基準位置から印刷する画素数は、細長画像において印刷すべき画素数を均等に割当てているが、均等でなくてもよい。例えば、各基準位置への最低割当て画素数を決めておき、最低割当て画素数を超えた数の画素のみをランダムに割当ててもよい。
【0047】
また、第2実施形態のように、基準位置を上下にずらしてもよい。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている20画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0048】
<第7実施形態>
図6及び図7を参照して、第7実施形態における網点画像印刷物3の網点印刷方法について説明する。第1〜第6実施形態は、一つのグループGrでの隣接する領域3aにおける基準位置の設定に関するものであったが、第7実施形態は、複数のGrに渡って複数の半円筒状レンズ4bに対応する網点画像印刷物3における基準位置の設定に関する。
【0049】
第7実施形態においては、図6に示すように、同じ半円筒状レンズ4bに対応して配列された複数の細長画像における振幅変調スクリーンの中心となる基準位置は、直線状に二本配置させ、その直線的な基準位置が、隣接する半円筒状レンズ4bに対応して配列された細長画像で比較すると、互いにずれているように設定する。そして、図7に示すように、基準線6上にある画素の位置を基準位置とし、それらの基準位置を中心として、細長画像の長手方向の上下に向けて、印刷すべき画素数分網点を印刷する。
【0050】
これにより、基準位置から離れている位置ほど、網点画像印刷物3の下地が見えやすくなる傾向があるが、半円筒状レンズ4bに対応する領域が異なると、細長画像の直線的な基準位置をズレるようにすれば、隣接する半円筒状レンズ4bに対応する網点画像印刷物3において、下地が連続しないようにすることができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施形態に限られない。
【0052】
上記第1〜第7実施形態において、各図では基準位置を中心として上下に延在するよう画素を印刷したが、基準位置を基点として上方向、または下方向に必要な画素数分だけ画素を印刷しても構わない。このとき、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている画素の中で、最も上の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も下の画素から上方へ向けて印刷する画素を加えていけばよく、また、印刷すべき画素が、縦方向に配列されている画素の中で、最も下の画素まで達してもなお印刷すべき画素数が残っている場合は、最も上の画素から下方へ向けて印刷する画素を加えていけばよい。
【0053】
また、上記各実施形態では、各半円筒状レンズの形状に合わせて、その直下に画像データ数分の細長画像を配列させた網点画像印刷物を貼り合せたが、各半円筒状レンズと網点画像印刷物とが対応していれば、この配置に限らなくとも良い。例えば、立体画像印刷物の中央上方から立体画像印刷物を観察することを想定し、その観察点から半円筒状レンズを通して見える範囲に、網点画像印刷物の対応する範囲を配置するようにしてもよい。この場合、半円筒状レンズに対応する網点画像印刷物の幅は、半円筒状レンズのピッチが一定であっても、半円筒状レンズの位置によって変化する。
【0054】
また、上記実施形態では、網点として矩形状の画素を用いたが、隣接する網点同士が接するよう密に配置されるならば、点状の網点であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】立体画像印刷物に用いられる網点画像印刷物の作製方法を示した図であり、 (A)はステレオカメラによって被写体を撮影する様子を示す図、 (B)はステレオカメラの各カメラによって撮影され、網点画像印刷物を作成するために分割されることを示す図、 (C)は分割された細長画像が組み合わされて作成された網点画像印刷物を示す図である。
【図2】立体画像印刷物の分解斜視図である。
【図3】第1実施形態の立体画像印刷物を説明する図であり、 (A)は網点画像印刷物を示す図であり、 (B)は網点画像印刷物に対するレンチキュラーレンズの配置を示す図である。
【図4】各実施形態の立体画像印刷物を説明する図であり、 (A)は第1実施形態の網点画像印刷物を示す図であり、 (B)は第2実施形態の網点画像印刷物を示す図であり、 (C)は第3実施形態の網点画像印刷物を示す図であり、 (D)は第4実施形態の網点画像印刷物を示す図である。
【図5】各実施形態の立体画像印刷物を説明する図であり、 (A)は第5実施形態の網点画像印刷物を示す図であり、 (B)は第6実施形態の網点画像印刷物を示す図であり、
【図6】第7実施形態の立体画像印刷物において網点画像印刷物の基準位置を説明する図である。
【図7】第7実施形態の立体画像印刷物を説明する図である。
【符号の説明】
【0056】
1…ステレオカメラ、2…被写体、3…網点画像印刷物、4…レンチキュラーレンズ、4a…背面、4b…半円筒状レンズ、5…立体画像印刷物、6…基準線、7…基準位置、s11,s12,……細長画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、
前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されていることを特徴とする立体画像印刷物。
【請求項2】
同じ半円筒状レンズに対応して配列された複数の細長画像における前記基準位置は、直線状に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の立体画像印刷物。
【請求項3】
隣接する半円筒状レンズに対応して配列された細長画像の直線的な前記基準位置は、互いにずれていることを特徴とする請求項2に記載の立体画像印刷物。
【請求項4】
複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、
前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、前記基準位置の数は、印刷される網点数に応じて異なっていることを特徴とする立体画像印刷物。
【請求項5】
複数の半円筒状レンズが連続的に配列されてなるレンチキュラーレンズと、
前記レンチキュラーレンズの背面に配置され、各半円筒状レンズに対応して複数の細長画像が連続的に配列された網点画像印刷物とを備えており、
前記細長画像は、階調表現を行う最小単位の領域において、色版ごとに複数の基準位置が設定され、基準位置ごとに連続して長手方向に振幅変調スクリーンにより網点印刷されており、前記基準位置は、細長画像によってずれていることを特徴とする立体画像印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−163035(P2009−163035A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1153(P2008−1153)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】