説明

立体的回路基板の製造方法

【課題】 円筒体にフィルム状回路基板を貼り付けて立体的回路基板を製造する際に、フィルム状回路基板の両端部に発生した両端部間の間隙の段差を低減することができる製造方法を提供する。
【解決手段】 円筒体11にフィルム状接着剤12を両端部間に間隙12aを残して貼り付ける第1工程と、該フィルム状接着剤12上にフィルム状回路基板13を両端部間の間隙13aがフィルム状接着剤12の間隙12aとが重ならないように貼り付ける第2工程とを備え、第2工程での貼り付け時に押付圧を加えることでフィルム状接着剤12が流動し、間隙12aを埋め戻して隙間のない接着剤層を形成すると同時に、フィルム状回路基板13の両端部間の間隙13aに接着剤を盛り上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒体の表面に接着剤を介してフィルム状回路基板を貼り付けた立体的回路基板に関し、特に、貼り付けの際にフィルム状回路基板の両端部に生じる間隙に接着剤を盛り上げて埋めるようにした立体的回路基板の製造方法、並びにその製造方法で得られる立体的回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化や多機能化及び低コスト化に伴い、回路基板として平面的なものだけではなく立体的なものが必要となり、円筒体などの筐体の内周面や外周面に回路基板をコンパクトに形成することが要求されている。例えば特開平06−059568号公報(特許文献1)には、複写機の現像用ローラーなどの分野において、ローラー表面の一部又は全周に回路を形成することにより立体的回路基板とすることが提案されている。
【0003】
このような円筒体であるローラー表面の全周に回路を形成する方法として、ポリイミドなどの絶縁性フィルムの表面に銅などによる導体層を設けた基板を用い、その導体層をパターニングしてフィルム状回路基板とした後、これをローラーの表面全周に貼り付けする方法が考えられる。このようなフィルム状回路基板は多量に且つ安価に製造することができるため、これをローラー表面に高精度で貼り付けすることができれば、立体的回路基板の製造方法として極めて有利である。
【0004】
ところで、フィルムを円筒体に貼り付ける方法としては、特開平10−236446号公報(特許文献2)に、円筒形状の缶体にロータリーカッター方式で貼り付けする方法が記載されている。即ち、自立保持不能な柔軟性フィルムを高い精度で所定長さに切断し、切断したフィルムを缶体に供給してラミネートを行うことにより、フィルムの缶体への貼り付けが可能であるとしている。
【0005】
より具体的には、巻取状態にある自立保持不能な柔軟性フィルムをカッティングロールに真空吸着させて巻き付け、フィルムにテンションを与えながら、カッティングロールの真空吸着部位を複数に分割して真空強度を調整することによりフィルムに滑りを付与し、切断後のフィルムに一定の間隔を作って缶体へのラミネートのタイミングを得、ラミネートロールのラミネート部位では加圧してフィルムの窪みを無くし、缶体とフィルムの間に空気を残存させずにラミネートを行っている。
【0006】
上記特許文献2に記載されたロータリーカッター方式による貼り付け方法は、缶体やボトルなどの飲料容器の表面にラベルを貼ることを目的として開発されたものである。そのため、飲料容器にラベルを貼る位置などの精度を厳密に管理する必要がなく、また、飲料容器の表面全周にラベルを貼り付けする場合は、フィルムに重なりや間隙が生じても問題となることはない。
【0007】
これに対して、複写機その他の電子機器に用いる立体的回路基板では、絶縁性フィルム表面に配線回路を形成したフィルム状回路基板をローラーの表面全周に貼り付けする場合、フィルム状回路基板の両端部に重なりや間隙、あるいは浮きが生じたりすると、回路を構成する配線に短絡や導通不良が発生し、回路の電気的特性に影響を及ぼすため大きな問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平06−059568号公報
【特許文献2】特開平10−236446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、特許文献2に記載されたロータリーカッター方式による貼り付け方法は、フィルムの切断や貼り付けの精度に問題があるうえ、カッティングロールやラミネートロール自体にも仕上がり径のバラツキが存在する。そのため、この方法を立体的回路基板の製造に適用した場合、円筒体に貼り付けたフィルム状回路基板の両端部間において重なりや間隙の発生を無くすことができていないのが現状である。
【0010】
また、上記方法での貼り付けの際にフィルム状回路基板の両端部に発生した間隙については、短絡や導通不良を防止するためフィルム状回路基板の表面に塗布する保護用の樹脂で間隙を埋めることが考えられる。しかしながら、表面保護用の樹脂を機械的に塗布する方法では、間隙の段差を十分に埋めきれず、その間隙内にフィルム状回路基板の端部が露出してしまう場合があった。
【0011】
本発明は、このような従来の事情に鑑み、円筒体の外周面にフィルム状回路基板を貼り付けて立体的回路基板を製造する場合に、ロータリーカッター方式などの特殊な装置を用いることなく且つ簡単な方法によって、両端部間に生じた間隙の段差を低減することができる立体的回路基板の製造方法、並びに、その方法により得られる立体的回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明が提供する立体的回路基板の製造方法は、円筒体の外周面上にフィルム状接着剤を両端部間に間隙を残して貼り付ける第1工程と、該フィルム状接着剤上に、絶縁性フィルム表面に配線回路が形成されたフィルム状回路基板を、両端部間に間隙を残し且つ該両端部間の間隙と前記フィルム状接着剤の両端部間の間隙とが重ならないように貼り付ける第2工程とを備え、該第2工程での貼り付け時に加える押付圧によって、前記フィルム状接着剤の両端部間の間隙をその接着剤で埋め戻して隙間のない接着剤層を形成すると同時に、前記フィルム状回路基板の両端部間の間隙に該接着剤層を盛り上げることを特徴とする。
【0013】
また、本発明が提供する立体的回路基板は、絶縁性フィルムの表面に配線回路を形成したフィルム状回路基板を、円筒体の外周面上に接着剤層を介して貼り付けた立体的回路基板であって、フィルム状回路基板の絶縁性フィルムの厚さが13μm以下であり、フィルム状回路基板と円筒体の間に接着剤層が隙間なく配置されると共に、フィルム状回路基板の対向する両端部間の間隙に接着剤層が盛り上がって該両端部間の段差を減じていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、円筒体に貼り付けたフィルム状接着剤の両端部及びその上に貼り付けたフィルム状回路基板の両端部間にそれぞれ間隙を残したうえで、そのフィルム状回路基板の貼り付け時の押付圧により接着剤を流動させて、フィルム状回路基板の両端部の間隙内に接着剤層を盛り上げることができる。
【0015】
また同時に、上記押付圧による接着剤の流動によって、フィルム状接着剤の両端部の間隙を埋め戻し、円筒体表面の凹みやフィルム状回路基板の切断バリの表面出現をなくすことができる。更に、フィルム状回路基板に使用する絶縁性フィルムの厚さを13μm以下とすることにより、上記接着剤の流動と相まって、フィルム状回路基板の両端部間に残っている間隙の段差を一層小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明方法を説明するための図面であり、(a)は第1工程によりフィルム状接着剤を円筒体に貼り付けた状態を示す概略の断面図、(b)は第2工程により更にフィルム状回路基板を貼り付けた状態を示す概略の断面図である。
【0017】
【図2】本発明の立体的回路基板の要部を示す概略の断面図である。
【0018】
【図3】本発明によるフィルム状回路基板の貼り付け方法の具体例を示す概略の断面図である。
【0019】
【図4】本発明によるフィルム状回路基板の貼り付け方法の別の具体例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による立体的回路基板の製造方法は、図1に示すように、円筒体11の外周面上に、フィルム状接着剤12を両端部間に間隙12aを残して貼り付ける第1工程(図1(a)参照)と、そのフィルム状接着剤12上に、絶縁性フィルム表面に配線回路を形成したフィルム状回路基板13を両端部間に間隙13aを残し、且つその両端部間の間隙13aとフィルム状接着剤12の両端部間の間隙12aとが重ならないように貼り付ける第2工程(図1(b)参照)とを備えている。
【0021】
上記第2工程では、フィルム状接着剤12上にフィルム状回路基板13を貼り付ける際に所定の押付圧を加えることにより、円筒体11とフィルム状回路基板13との間でフィルム状接着剤12の接着剤が押されて流動する。その結果、図1(b)に示すように、フィルム状接着剤12の両端部間の間隙12aが接着剤で埋め戻され、その埋め戻し部12bにより隙間のない接着剤層が形成される。同時に、フィルム状回路基板13の両端部間にある間隙13a内にはフィルム状接着剤12から接着剤が盛り上がるので、その間隙13aを埋めてフィルム状回路基板13の両端部間の段差が減少する。
【0022】
上記第1の工程で円筒体の外周面に貼り付けるフィルム状接着剤は、市販のものを使用することができ、その厚さは50〜150μm程度が好ましい。また、円筒体の外周面に貼り付ける際にフィルム状接着剤の両端部間に生じる間隙の幅は、厚さが50〜150μm程度のフィルム状接着剤の場合で、50μm未満にすることは難しく、500μmを超えると接着剤の流動により埋め戻すことができなくなるため、50〜500μmの範囲とすることが好ましい。
【0023】
上記第2の工程でフィルム状回路基板の両端部間に生じる間隙の幅は、10μm未満にすることは難しく、300μmを超えると接着剤の盛り上がりが不十分となり、間隙の間に5μmを超える段差が残り易くなるため、10〜300μmの範囲とすることが好ましい。また、上記第2の工程で加える押付圧は、0.01MPa未満では接着剤の流動が不十分となるため0.01MPa以上が好ましい。押付圧の上限は、円筒体が変形しない程度とする。
【0024】
また、上記第1工程で円筒体11にフィルム状接着剤12を貼り付ける方法、及び第2工程でフィルム状回路基板13を貼り付ける方法は、特に限定するものではいが、円筒体11を回転させながら貼り付ける方法が好ましい。例えば、フィルム状接着剤12又はフィルム状回路基板13を基台上に配置して、円筒体11を回転させながら押し付けて貼り付ける方法が特に好ましい。尚、基台上に配置するフィルム状回路基板13及びフィルム状接着剤12は、金型によって所定の大きさに予め切断しておく。
【0025】
上記第2工程においては、円筒体11を回転させてフィルム状回路基板13を貼り付けた後、そのフィルム状回路基板13を貼り付けた円筒体11を更に1回転以上回転させることにより、再び押付圧を加えて再貼り付けを行うことが好ましい。この再貼り付けにより、フィルム状回路基板13の浮きを防ぐだけでなく、フィルム状接着剤12を構成する接着剤の流動量を増やすことができるので、フィルム状接着剤12の両端部間の間隙12aを接着剤で完全に埋め戻すと共に、フィルム状回路基板13の両端部間にある間隙13aを接着剤で更に埋めて段差をより一層減少させることができる。
【0026】
上記方法により得られる本発明の立体的回路基板は、図2に示すように、円筒体11の外周面上に、絶縁性フィルム1の表面に配線回路2を形成したフィルム状回路基板13が、フィルム状接着剤12から形成された接着剤層を介して貼り付けられた構造を有している。フィルム状回路基板13の両端部間の間隙13a内にはフィルム状接着剤12の接着剤が盛り上がり、その両端部間の段差を減少させている。
【0027】
フィルム状回路基板13の両端部間の間隙13aにある段差は、上記のごとく両端部間の間隙13a内にフィルム状接着剤12の接着剤が盛り上がることで減少するが、フィルム状回路基板13を構成する絶縁性フィルム1の厚さを13μm以下とすることによって更に段差を減少させることができる。ただし、絶縁性フィルム1の厚さは、薄すぎると配線回路の形成や取り扱いが困難になるため、3〜13μmの範囲が好ましい。
【0028】
尚、上記円筒体は特に限定されず、複写機の各種ローラーなど電子機器部品であればよい。上記フィルム状接着剤やフィルム状回路基板についても、特に限定されず、電気機器などに通常使用されているものを用いることができる。また、上記絶縁性フィルムについては、フィルム状回路基板に通常使用されるものであればよく、例えばポリイミドフィルムなどを好適に用いることができる。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
ポリイミドフィルムに銅の配線回路が形成され、その配線回路上に保護フィルムを備えたフィルム状回路基板を準備し、金型を用いて幅50.2mm×長さ250mmの大きさに切断した。尚、上記フィルム状回路基板としては、ポリイミドフィルムの厚さが38μm、25μm、12.5μm、7.5μmの4種類を用いた。また、円筒体として、平均直径16mm(外周50.24mm)、長さ300mmのアルミパイプを使用した。
【0030】
フィルム状接着剤として、両面に剥離紙を備えた接着テープ(ソニーケミカル社製、T4900:厚さ50μm)を使用し、予め金型を用いて50.2mm×250mmの大きさに切断した。この切断したフィルム状接着剤の片方の剥離紙を取り除き、円筒体を0.1MPaの押付圧で回転させることにより、外周面にフィルム状接着剤を貼り付けた(第1工程)。円筒体に貼り付けたフィルム状接着剤の両端部間に間隙が生じ、その平均幅を測定したところ下記表1に示すように約100μmであった。
【0031】
次に、円筒体に貼り付けたフィルム状接着剤の表面に残っている剥離紙を除去し、0.2MPaの押付圧で円筒体を回転させることにより、両端部間の間隙が上記フィルム状接着剤の間隙と重ならないように、フィルム状接着剤上にフィルム状回路基板を貼り付けた(第2工程)。尚、フィルム状回路基板の両端部間に生じる間隙の位置は、フィルム状接着剤の両端部間の間隙に対して約90°の角度だけずれる位置とした。
【0032】
上記第2工程を具体的に説明する。図3に示すように、基台14上の貼り付けエリア(イ)にフィルム状回路基板13を配置し、剥離紙が除去されたフィルム状接着剤12が貼り付けてある円筒体11を上方から0.2MPaの押付圧をかけながら、フィルム状回路基板13の一端(図中のA)から矢印方向に他端(図中のB)まで移動させることにより、円筒体11を回転させてフィルム状回路基板13を貼り付けた。
【0033】
引き続き、上記のごとくフィルム状回路基板13が貼り付けられた円筒体10を、上方から0.2MPaの押付圧をかけながら、更に矢印方向に、貼り付けエリア(イ)と同等以上の距離を有する再貼り付けエリア(ロ)の終点(図中のC)まで基台14上を移動させることにより、円筒体10を回転させて再貼り付けを行った。
【0034】
この再貼り付け終了後、得られた立体的回路基板では、円筒体上に貼り付けられたフィルム状接着剤12が隙間なく配置されて接着剤層を形成しており、フィルム状回路基板13の端部に浮きは存在せず、フィルム状回路基板13の両端部間に生じた間隙を測定したところ、その平均幅は下記表2に示すように約130μmであった。
【0035】
得られた立体的回路基板について、上記4種類の厚さのポリイミドフィルムごとに、フィルム状回路基板10本の両端部間に残っている間隙の深さ(段差)を3点(一端、中央、他端)で測定し、その平均値を求めて下記表1に示した。
【0036】
【表1】

【0037】
この結果から分るように、ポリイミドフィルムの厚さが13μm以下のときに間隙の平均段差が5μm以下となり、接着剤がフィルム状回路基板の両端部の間隙内に盛り上がって間隙のほとんどを埋めた状態となっていた。
【0038】
尚、上記第1工程で円筒体にフィルム状接着剤を貼り付ける方法は、上記図3で示したフィルム状回路基板を貼り付ける方法とほぼ同様であるため、詳しい説明を省略した。
【0039】
[参考例]
上記実施例1と同じ4種類の厚さのポリイミドフィルムに銅の配線回路が形成され、その配線回路上に保護フィルムを備えたフィルム状回路基板と、両面に剥離紙を備えた接着テープからなるフィルム状接着剤と、アルミパイプの円筒体とを用い、以下のごとく立体的回路基板を作製した。尚、これらのフィルム状回路基板、フィルム状接着剤及び円筒体は、上記実施例1と同じものである。
【0040】
フィルム状接着剤の片方の剥離紙を取り除き、ラミネーターを使用して0.1MPaの圧力でフィルム状回路基板のポリイミドフィルム側に貼り付けた後、金型を用いて50.2mm×250mmの大きさに打ち抜いた。
【0041】
次に、打ち抜いたフィルム状回路基板のフィルム状接着剤から剥離紙を取り除き、フィルム状接着剤を上にして基台に配置し、上方から0.2MPaの押付圧をかけながら円筒体を横方向に移動させることにより、円筒体を回転させてフィルム状回路基板を貼り付けた。このときフィルム状回路基板1の両端部間に生じた間隙の幅は、約0.15mmであった。
【0042】
しかし、上記のごとく予めフィルム状接着剤を貼り付けたフィルム状回路基板を打ち抜いてから円筒体に貼り付けた場合、フィルム状接着剤の両端部間に生じる間隙とフィルム状回路基板の両端部間に生じる間隙とが同じ位置になる。そのため、円筒体への貼り付け時に接着剤が流動しても、フィルム状回路基板の間隙内に盛り上がることができず、間隙内に円筒体表面が現れているものが複数発生した。
【0043】
[実施例2]
上記実施例1で準備したフィルム状回路基板と同一で、ポリイミドフィルムの厚さが25μmと12.5μmの2種類のものを用意し、金型で50.2mm×250mmの大きさに打ち抜いた。これらのフィルム状回路基板を、フィルム状接着剤を貼り付けたアルミパイプの円筒体に、図4に示す方法で貼り付けた。尚、円筒体へのフィルム状接着剤の貼り付けは上記実施例1の第1工程と同様に実施し、フィルム状接着剤の両端部間に生じた間隙の平均幅を測定したところ、下記表2に示すように約100μmであった。
【0044】
第2工程では、図4に示すように、1対のローラー15上に上記第1工程でフィルム状接着剤12を貼り付けた円筒体11を乗せ、基台14の貼り付けエリア(イ)にはバキューム方式によって上記フィルム状回路基板13を保持した。この状態で、フィルム状接着剤の表面に残っている剥離紙を除去し、下方から基台14に0.2MPaの押付圧で円筒体11を押し付けながら矢印方向に1対のローラー15を移動させた。
【0045】
このとき、フィルム状接着剤12を貼り付けた円筒体11が回転して貼り付けエリア(イ)を移動することにより、両端部間の間隙が上記フィルム状接着剤12の間隙と重ならないように、フィルム状接着剤12上にフィルム状回路基板13を貼り付けた(第2工程)。尚、フィルム状回路基板の両端部間に生じる間隙の位置は、フィルム状接着剤の両端部間の間隙に対して約90°の角度だけずれる位置とした。
【0046】
引き続き、1対のローラー15に乗せた円筒体11を再貼り付けエリア(ロ)で移動させた。この再貼り付け終了後、得られた立体的回路基板では、円筒体11上に貼り付けられたフィルム状接着剤12が隙間なく配置されて接着剤層を形成しており、フィルム状回路基板13の端部に浮きは存在せず、フィルム状回路基板13の両端部間に生じた間隙の平均幅を測定したところ、下記表2に示すように約130μmであった。
【0047】
得られた立体的回路基板について、上記2種類の厚さのポリイミドフィルムごとに、フィルム状回路基板10本の両端部間に残っている間隙の深さ(段差)を3点(一端、中央、他端)で測定し、その平均値を求めて下記表2に示した。
【0048】
【表2】

【0049】
上記実施例1と異なる貼り付け方法であっても、ポリイミドフィルムの厚さが13μm以下の場合には、接着剤がフィルム状回路基板の両端部の間隙内に盛り上がって間隙のほとんどを埋めることができ、間隙の深さ(段差)を5μm以下とすることができた。
【符号の説明】
【0050】
1 絶縁性フィルム
2 配線回路
11 円筒体
12 フィルム状接着剤
12a フィルム状接着剤の間隙
12b 埋め戻し部
13 フィルム状回路基板
13a フィルム状回路基板の間隙
14 基台
15 ローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の外周面上にフィルム状接着剤を両端部間に間隙を残して貼り付ける第1工程と、該フィルム状接着剤上に、絶縁性フィルム表面に配線回路が形成されたフィルム状回路基板を、両端部間に間隙を残し且つ該両端部間の間隙と前記フィルム状接着剤の両端部間の間隙とが重ならないように貼り付ける第2工程とを備え、該第2工程での貼り付け時に加える押付圧によって、前記フィルム状接着剤の両端部間の間隙をその接着剤で埋め戻して隙間のない接着剤を形成すると同時に、前記フィルム状回路基板の両端部間の間隙に該接着剤を盛り上げることを特徴とする立体的回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2工程において、前記円筒体を回転させることでフィルム状回路基板を貼り付けた後、そのフィルム状回路基板を貼り付けた円筒体を更に押付圧を加えながら1回転以上回転させることを特徴とする、請求項1に記載の立体的回路基板の製造方法。
【請求項3】
絶縁性フィルムの表面に配線回路を形成したフィルム状回路基板を、円筒体の外周面上に接着剤を介して貼り付けた立体的回路基板であって、フィルム状回路基板の絶縁性フィルムの厚さが13μm以下であり、フィルム状回路基板と円筒体の間に接着剤が隙間なく配置されると共に、フィルム状回路基板の対向する両端部間の間隙に接着剤が盛り上がって該両端部間の段差を減じていることを特徴とする立体的回路基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−66209(P2011−66209A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215655(P2009−215655)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】