説明

立体製品の製造装置

本発明は、立体製品を製造するための装置であって、この装置は、この立体製品を形成するための作業台と、この作業台上に薄肉の粉末層を塗布して粉末ベッドを形成するように構成した粉末ディスペンサと、粉末にエネルギーを伝達して粉末を溶融させる照射ガンとを有し、更に、内部を大気圧に対して減圧したケーシングであって、その中に作業台及び照射ガンを配置したケーシングを有する装置であって、粉末ディスペンサ又は粉末ディスペンサに接続した供給パイプの一部をケーシングの外側に配置した装置に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元製品即ち立体製品を製造するための装置であって、この装置が、この立体製品を形成するための作業台と、この作業台上に薄肉の粉末層を塗布して粉末ベッドを形成するようにした粉末ディスペンサと、粉末にエネルギーを伝達して粉末を溶融させる照射ガンとを有し、更にこの装置が、内部圧力を大気圧に対して減圧したケーシングであって、その中に作業台及び照射ガンを配置したケーシングを有する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、米国特許第4,863,538号明細書により、作業台上に塗布した粉末層の選択部分を順次溶融させることにより立体製品を製造する装置が既知となっている。この装置は、立体製品を形成するための作業台と、この作業台上に薄肉の粉末層を塗布させ粉末ベッドを形成するようにした粉末ディスペンサと、エネルギーを粉末に伝達することにより粉末を溶融させる照射ガンと、照射ガンにより放出された放射を粉末ベッド上で案内し、粉末ベッドの一部を溶融させることにより立体製品の断面を形成するための案内手段と、この立体製品の順次の断面に関する情報を保存する制御コンピュータとを有する。順次に塗布した粉末層の選択部分を溶融することにより、立体製品を形成する。制御コンピュータは、予め定めたパターンを再生する操作プランに従って、照射ガンにより発生した放射を粉末ベッド上で偏向させるためのものである。操作プランに従って粉末層の必要な領域を溶融させると、立体製品本体の断面が形成される。立体製品は、粉末ディスペンサにより順次塗布した粉末層中に順次形成した断面を順次溶融処理することにより形成する。
【0003】
上述した米国特許第4,863,538号明細書による装置は、種々の材料、例えば金属又はプラスチックの立体製品本体を製造するように設計されている。しかしある種の材料を用いると不所望な副反応により問題が生じる。従って、この装置は、ケーシングを有し、その中に作業台と、粉末ディスペンサと、照射ガンとを設けたものとして設計されている。このケーシング内を減圧することにより真空が生じる。このようにして、不所望な副反応が回避される。
【0004】
しかし、粉末ディスペンサ内に粉末を補充することに関して問題が生じる。粉末の補充に際しては、真空チャンバを開いて、粉末を補充し、この真空チャンバを閉じて、再度真空を生じさせる必要がある。これらの処理により、製造工程が中断する。更に、作業台上の製品が冷却してしまうおそれもある。このことは、特に、異なる層間の融着が損なわれる、即ち次の粉末層の接着力が弱くなるおそれがあることを意味する。この場合、製品にクラックが生じるおそれがある。
【0005】
従って、このような装置における粉末の補充に関連するこれらの問題を解決する必要がある。
【発明の開示】
【0006】
上述した問題は、粉末ディスペンサの一部をケーシングの外側に設ける本発明により解決される。このような粉末ディスペンサは、本発明によれば、この粉末ディスペンサの一部をケーシングの外側に設け且つ他の部分をケーシングの内側に設けるように構成する。このようにすれば、製造工程を中断する必要なく、粉末を粉末ディスペンサに加えることができる。
【0007】
ケーシングの壁部を通じて供給パイプを取付ければ、ケーシングの壁部を通じて粉末ディスペンサを取付けた場合と同様に、本発明の効果が得られる。粉末ディスペンサをケーシングの内側に設けるが、ケーシングを通じて取付けた供給パイプに連結する例も本発明の範囲内にある。
【0008】
圧力が増大するのを防止するために、本発明による装置は、粉末ディスペンサと周囲環境との連通が、ケーシング内側の圧力条件に影響を与えるのを防止する手段を有する。このケーシング内側の圧力条件を維持するための手段は、例えば、粉末ディスペンサ内における粉末柱とすることができる。また、ケーシング内の圧力条件を維持するための他の手段として、粉末ディスペンサに弁を具えるカバーを設けることもできる。このような弁を具えたカバーは、例えば、粉末ディスペンサの頂部又は底部に設けることができる。しかし、ケーシング内側の圧力条件が維持されるようにするには、装置の使用の際に、粉末ディスペンサに常にある高さの粉末柱を存在させるのが重要である。粉末柱の高さは、1000mmとするのが好ましい。粉末が、以下のパラメータを満足する場合には、1000mmの高さの粉末柱は、約140mmの直径の粉末柱に関して、圧力条件を維持するのに充分なものである。上述のパラメータは、106μmを超える粒径の粒子が存在しないこと、40μmより小さい粒径の粒子が殆どないこと、殆どの粒子(50%を超える粒子)の粒径が80μmであることである。
【0009】
本発明の例によれば、装置は、作業台を包囲する第1チャンバと、照射ガンを包囲する第2チャンバとを有しており、これら第1及び第2チャンバを、前記ケーシングの内側に配置し且つ互いにダクトを介して連結する。粉末ディスペンサは、この第1チャンバに関連して設けるのが好ましい。
【0010】
本発明の例によれば、装置は、隔室を具えた容器の形態の供給手段を有し、これらの隔室は、異なる隔室から粉末を粉末ディスペンサに供給しうるように移動可能にする。
【0011】
図1は、参照符号1により一般的に示される立体製品の製造装置の断面図である。この装置は、立体製品3を製造するための作業台2と、粉末ディスペンサ4と、この作業台2上に薄肉の粉末層を塗布して粉末ベッド5を形成する機器28と、この粉末ベッド5にエネルギーを伝達し粉末ベッドの一部を溶融させる照射ガン6と、この照射ガン6から放出された放射エネルギーを作業台2にわたって案内し、粉末を溶融させることにより立体製品の断面を形成する案内手段7と、立体製品を形成することになる立体製品の順次の断面に関する情報を記憶する制御コンピュータ8とを有する。図示する例によれば、作業サイクル中に、粉末層を塗布する度に照射ガンに対して作業台を徐々に下降させる。
【0012】
本発明の好適例では、このような動作を可能にするために、作業台は、垂直方向、即ち矢印Pで示す方向に移動しうるように構成する。このことは、作業台が、必要な厚さの第1粉末層を塗布した初期位置2′でスタートすることを意味する。第1粉末層を満足な品質のものとし且つその下にある作業台を損傷させないように、この第1粉末層は、その上に塗布する他の層より厚肉にして、それによりこの第1粉末層を溶融しつくすのを防止する。
【0013】
その後、新たな粉末層を塗布させるのに関連して、作業台を下降させ立体製品の新たな断面を形成する。この目的のために、本発明の例では、作業台2をスタンド9上に支持し、このスタンド9には、歯11を設けた少なくとも1個のラック10を設ける。歯車13を設けたステッピング又はサーボモータ12により、作業台2を必要な高さにセットする。作業台の作業高さを設定するのに当業者に既知の他の構成も使用することができる。例えば、歯車の代わりに調整ねじを使用することができる。
【0014】
本発明の他の例によれば、上述した例のように作業台を下降させる代わりに、装置中の粉末を塗布する手段を徐々に上昇させることもできる。
【0015】
機器28は、粉末ディスペンサと相互に作用するよう構成し、この機器28に材料が補充されるようにする。更に、既に知られるように、サーボモータ(図示せず)により、機器28を粉末ベッド5に沿って延在する案内レール29に従って移動させることにより、この機器28が作業台表面にわたって走査するようにする。
【0016】
新たな粉末層を塗布するに際して、この新たな粉末層の厚さは、それまでに塗布した層に対して作業台をどれだけ降下させたかにより決定される。このことは、所望に応じて層厚を変化させうることを意味する。従って、隣接する層の間で断面が大きな形状変化を有する場合には、層をより薄肉にすることで表面の微細度を高くすることができ、また、断面の形状変化がない又は殆どない場合には、層を放射に対する最大の貫入厚にすることができる。
【0017】
本発明の好適例では、照射ガン6は、電子銃から構成し、この照射ガン6の放射エネルギーを案内する案内手段7は、偏向コイル7″から構成する。この偏向コイル7″は、磁界を発生し、この磁界により電子銃により発生された放射エネルギーを案内し、それにより粉末ベッドの層表面を必要な位置で溶融させることができる。
【0018】
更に、照射ガン6は、高電圧回路20を具えており、この高電圧回路20は、既知のように、この照射ガン内に設けた放出電極21のための加速電圧を照射ガンに供給するためのものである。この放出電極は、既知のように放出電極21を加熱し電子を放出させるのに用いる電力源22に接続する。照射ガンの機能及び構成は当業者に周知の事項である。
【0019】
偏向コイルは、溶解すべき各層に対して行う操作プランに従って制御コンピュータ8により制御し、それにより、必要な操作プランに従って放射エネルギーを案内することができる。
【0020】
更に、作業台上の粉末ベッドの表面上に放射エネルギーを収束させるようにした少なくとも1個の収束コイル7′を設ける。偏向コイル及び収束コイルは、当業者に既知の複数の方法で設けることができる。
【0021】
装置は、照射ガン6及び粉末ベッド2を包囲するケーシング15内に入れる。このケーシング15は、粉末ベッド2を包囲する第1チャンバ23と、照射ガン6を包囲する第2チャンバ24とを具える。これら第1チャンバ23及び第2チャンバ24は、ダクト25を介して互いに連結し、それにより、第2チャンバ内で高圧電界で加速された放出電子が、続けて第1チャンバに入りその後作業台2上の粉末ベッドに衝突しうるようにする。
【0022】
粉末ディスペンサ4は、その一部をケーシング15の外側に設け且つ一部をケーシングの内側に設けることにより周囲と連絡を取れるようにする。粉末ディスペンサ4の第1部分4aは、第1チャンバ23内に設け、第2部分4bはケーシング15の外側に設ける。粉末ディスペンサ4は、ケーシング15を開放したり製造処理を中断したりする必要なく、バッチ処理で又は連続的に粉末を補充することができる。
【0023】
粉末ディスペンサ4への粉末の供給は種々の方法で行うことができる。本発明の一例によれば(図示せず)、粉末ディスペンサ4上のねじを用いて粉末を供給する。他の例によれば(図示せず)、可動式隔室を具えた容器を介して粉末ディスペンサ4に粉末を供給する。この可動式隔室は、空になった隔室が粉末ディスペンサの開口から離れてその代わりに充填された隔室に置き換わり、それにより粉末ディスペンサに対する粉末の補充を継続しうるように移動させることができる。
【0024】
一例においては、第1チャンバ23に真空ポンプ26を連結し、この第1チャンバ23内を好ましくは約10-3〜10-5mBar(1bar=105 Pa)の圧力まで減圧する。第2チャンバ24を真空ポンプ27に連結し、この第2チャンバ24内を好ましくは約10-4〜10-6mBarの圧力まで減圧するのが好ましい。他の例では、これら第1及び第2チャンバの双方を同じ真空ポンプに連結することができる。
【0025】
真空ポンプ26及び27によりケーシング15内に発生した真空状態を維持する、又はそこでの圧力上昇を僅かなものにするために、粉末ディスペンサ4が粉末柱30を有するようにするのが重要である。この粉末柱30の存在にも拘わらず発生するいかなる圧力上昇に対しても真空ポンプ26及び27で解消することができる。圧力上昇を解消するのに必要な電力は、代表的にはケーシング15内に当初真空を発生させるのに必要な最大電力の1/100〜1/20程度である。
【0026】
更に、制御コンピュータ8は、照射ガン6に接続して照射ガンの放出出力を制御させ、且つステッピングモータ12に接続して粉末層の順次の塗布処理の間の作業台の高さ位置を設定させることにより、各粉末層の厚さを変化させうるようにするのが好ましい。
【0027】
更に、制御コンピュータ8を作業台表面上に粉末を塗布する機器28に接続する。この機器28は、作業台表面にわたり走査することにより粉末層を塗布するようにする。機器28は、この制御コンピュータ8により制御されるサーボモータ(図示せず)により駆動する。制御コンピュータ8は、機器28の走査する長さを制御し、必要に応じて粉末が確実に補充されるようにする。この目的のために、機器28に荷重センサを設け、それにより機器28が空であるという情報を制御コンピュータが得られるようにする。
【0028】
図2は、本発明の他の例による装置1の断面図である。図2による装置1は、更に、粉末ディスペンサ4に粉末を供給する供給装置31と、固定装置32とを有する点を除いて図1による装置に対応するもので。この供給装置31は、粉末ディスペンサ4上方に設けた容器からなる。
【0029】
図3は、図2による装置1を図2の左側から見たものである。換言すると、図3における装置1は、図2の位置に対して右方向に90°回転させたものである。図3の装置は断面図で示すものではない。供給装置31は複数の隔室を有し、固定装置32上を移動しうるようになっている。このようにすると、隔室が空になったときに、供給装置31を左から右へ、又はその逆に移動させて、粉末ディスペンサへの補充を粉末の充填されている隔室から行うことができる。
【0030】
上述した例は、本発明をどのように実施しうるかを示す一実施例にすぎない。本発明の特許請求の範囲に記載した範囲内において他の例を実施することもできる。例えば、装置に1個より多い粉末ディスペンサを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の例による装置の断面図である。
【図2】図2は、本発明の他の例による装置の断面図である。
【図3】図3は、図2の例による装置を異なる方向から見た線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台であって、この作業台上で立体製品を形成するようになっている当該作業台と、
この作業台上に薄肉の粉末層を塗布して粉末ベッドを形成するようにした粉末ディスペンサと、
前記粉末にエネルギーを伝達して粉末を溶融させる照射ガンと
内部圧力を大気圧に対して減圧したケーシングであって、その中に前記作業台及び前記照射ガンを配置した当該ケーシングと
を有する立体製品を製造するための装置において、
粉末ディスペンサ又は粉末ディスペンサに接続した供給パイプの一部を前記ケーシングの外側に配置したことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記装置は、前記粉末ディスペンサと周囲環境との連通が、前記ケーシング内側の圧力条件に影響を与えることを防止する圧力条件維持手段を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ケーシング内側の圧力条件を維持するための前記圧力条件維持手段は、前記粉末ディスペンサ内にある粉末柱である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記粉末柱の高さは、1000mmである請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、前記作業台を包囲する第1チャンバ(23)と、前記照射ガン(6)を包囲する第2チャンバ(24)とを有しており、これら第1及び第2チャンバを、前記ケーシングの内側に配置し且つダクト(25)を介して互いに連結した請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記粉末ディスペンサは、前記第1チャンバに関連させて設けたものである請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置は、隔室を具えた容器の形態の供給装置(31)を有し、前記隔室が、異なる隔室から粉末を前記粉末ディスペンサ(4)に供給しうるように移動しうるものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−509914(P2006−509914A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560215(P2004−560215)
【出願日】平成15年12月10日(2003.12.10)
【国際出願番号】PCT/SE2003/001932
【国際公開番号】WO2004/054743
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(505221605)アルカム アーベー (7)
【Fターム(参考)】