説明

立方晶構造を持つ受動光学セラミックス、同一のものの製造方法およびそれらの使用

【課題】立方晶構造を持つ受動光学セラミックス、同一のものの製造方法およびそれらの使用を提供する。
【解決手段】光学セラミックスは、結晶マトリックス、すなわち多結晶物質からなり、化学量論の化合物一般式として、A(2+x)ByDzE7で表され、Aha希土類酸化物の群から選ばれ、Bは4価のカチオンであり、Dは5価カチオンであり、Eは2価アニオンであり、単一結晶子の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%が立方晶黄緑石または蛍石構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学セラミックス、それら製造物の方法およびそれらの使用に属する。本発明は、また画像光学部品類だけでなく光学セラミックスを製造する屈折、透過および回折光学要素に属する。これらの光学セラミックスおよび光学要素は、可視光および/または赤外線を透過可能である。光学セラミックスは、結晶網からなる、すなわちそれらは多数の個々の結晶から構成される多結晶物質を構成する。
【0002】
本発明に係る光学セラミックスは実質的に単相、多結晶であり、かつ酸化物または他のカルコゲンに基づく高透明物質である。光学セラミックスは下位のセラミックスである。この文脈の“単相”は物質の95重量%以上、好ましくは少なくとも97重量%、さらに好ましくは少なくとも99重量%および最も好ましくは物質の99.5から99.9重量%が所望組成(目標組成)の結晶の形態で存在することを意味する。個々の結晶は緻密に配置され、かつそれらの理論密度を基準として少なくとも99%、好ましくは少なくとも99.9%、さらに好ましくは少なくとも99.99%の密度を有する。したがって、光学セラミックスはほぼ気孔なしである。
【0003】
画像光学製品類の使用は、光の入射および/または出口位置で曲面を持つ形状の本発明に係る光学セラミックス、すなわちそれらは好ましくはレンズ形状を有する、の使用に属する。
【0004】
光学セラミックスは、ガラスセラミックスが高比率のアモルファスガラス相、次に結晶相を含む事実によってガラスセラミックスから区別される。
【0005】
同様に、光学セラミックスと従来のセラミックスの間の区別は従来のセラミックスで達できない光学セラミックスの高密度である。
【0006】
ガラスセラミックスばかりではなく従来のセラミックスは屈折率、アッベ数、相対部分分散値および特に可視および/または赤外線スペクトル範囲で光に対する有益な高透明性のような光学セラミックスの有益な特性を有する。
【0007】
本発明に係る光学セラミックスは光学適用に対して適切であるべき十分に透明である。好ましくは、光学セラミックスは可視スペクトル範囲または赤外スペクトル範囲で透明である。最も好ましくは、これらは赤外スペクトル域だけでなく可視で透明である。
【0008】
本発明の文脈で“可視スペクトル範囲における透明度”は2 mmの層厚さ、好ましくは3 mmの層厚さ、特に好ましくは5 mmの層厚さにおいて、少なくとも200 nmの範囲、380 nmと800 nmの間の幅、例えば400から600 nmの範囲、450から750 nmの範囲の幅、または好ましくは600から800 nmの範囲の幅で、70%を上回る、好ましくは80%を上回る、さらに好ましくは90%を上回る、特に好ましくは95%を上回る内部透過率で表される。
【0009】
上に挙げられた内部透過率のパーセンテージは、それぞれの光学セラミックスからなる物質で理論的に達成できる最大内部透過率に関連する。ある物質で理論的に達成できる最大内部透過率は同じ物質で作られる単結晶の内部透過率を測定することによって決められる。したがって、内部透過率のパーセンテージは多結晶物質の粒界での反射および散乱損失の指標であるが、隣接雰囲気と物質間の相界での吸収および反射は無視される。
【0010】
本発明の文脈の“赤外スペクトル範囲における透明度”は2 mmの層厚さ、好ましくは3 mmの層厚さ、特に好ましくは5 mmの層厚さにおいて、少なくとも1000 nmの範囲、800 nmと5000 nmの間の幅、例えば1000から2000 nmの範囲、1500から2500 nmの範囲の幅、またはさらに好ましくは3000から4000 nmの範囲の幅で、70%を上回る、好ましくは>80%、さらに好ましくは>90%、特に好ましくは>95%の内部透過率で表される。
【0011】
理想的に、物質は3 mmの層厚さにおいて、200 nmを超える波長域、5000 nmと8000 nmの間の幅で20%を超える透過率(反射損失を含む)を表す。
【0012】
ここで詳述される光学セラミックスから得ることが可能な光学要素は、例えば換算色収差(reduced colour aberrations)、特にアポクロマート画像特性、を持つ対物レンズのような画像光学製品類の使用に特に適する。本発明に係る光学セラミックスから製造される光学要素は、特にデジタルカメラに加えて、顕微鏡検査、マイクロリソグラフィ、光学データ記録または他の適用の分野のガラスレンズおよび他のセラミックレンズに関連するレンズ系に使用可能である。
【背景技術】
【0013】
画像光学製品類の開発での主要目標は、小型および好ましくは光学システムの軽量構造物を維持しながら、十分な光学品質である。例えばデジタルカメラ、携帯電話等の対物レンズのような電子デバイスのデジタル画像収集の特に適用で、光学画像システムは非常に小さくかつ軽くしなければならない。換言すれば、画像レンズの総数は可能な限り低く保持しなければならない。
【0014】
回折をほぼ制限される顕微鏡検査において、画像光学製品類は対物レンズだけでなく接眼レンズを必要とする。
【0015】
軍事防衛部門にとって、透明光学システムは必要であり、それは8000 nmまで、理想的に10000 nmまでの赤外だけでなく可視波長領域(380から800 nm)で高透過率を好ましくは示す。さらに、これらの光学システムは例えば腐食、温度、温度の変化、圧力等のような機械的影響のような外部攻撃に耐性であらねばならない。
【0016】
例えばデジタルプロジェックションおよび表示技術のような多くの他の技術にとって、高透明物質は必要である。しかしながら、光学記録技術のような主に淡色適用において小型システムは高屈折率を持つ物質の適用によって実現することができる。
【0017】
今日、画像光学製品類の開発は入手可能な物質の光学パラメータで制限される。今日、利用できるガラス溶融、成形技術のせいで、そのようなガラス種のみがアッベ数=80/屈折率=1.7およびアッベ数=10/屈折率=2.0の点を通して走る線下のアッベグラフに位置される十分な品質で製造できる。より正確に、約1.9 と約2.2の間の屈折率および約30から約40の範囲のアッベ数を持つガラスは不安定になる傾向があり、それによって十分な量および十分な品質のそのようなガラスを製造することを非常に困難にする。同様に、約1.8と約2.1の間の屈折率および約30から55の範囲のアッベ数を持つガラスは不安定になる傾向がある。
【0018】
屈折率およびアッベ数の次に相対部分分散もまた光学物質を選択するときに重要である。殆どアポクロマート光学システムを製造する意向であれば、殆ど等しい相対部分分散およびアッベ数の大差を持つ物質の組合せが必要になる、もし、部分分散Pg,Fがアッベ数にプロットされるならば、殆どのガラスは線(“正規線(normal line)”)上に横たわる。アッベ数および相対部分分散の組合せが正規線から外れる物質が望ましい。
【0019】
屈折率nd、アッベ数νdおよび相対部分分散Pg,Fの定義は、当業者に知られ、かつ適切な技術文献を学ぶことによって理解できる。定義は“The properties of optical glass; Bach, Hans; Neuroth, Norbert (Hrsg.), Berlin (u.a.): Springer, 1995. - (Schott series on glass and glass ceramics: science, technology, and applications; 1), XVII, 410 p. - 2., corr. Print., 1998, XVII, 414 S”に見出すことができる。
【0020】
今日、前述のアッベグラフの線上に位置する入手可能な物質は単結晶および多結晶物質である。公知の結晶育成技術による単結晶の製造は、しかしながら非常に高価な育成るつぼ材料の理由で、特に高融点成分に対して非常に高価であり、さらにこの方法は化学組成に関して制限することを受けやすい。さらに、結晶はニアネットシェイプまたはニアネットホーマット手法で製造できず、十分な後プロセス努力を結果としてもたらす。
【0021】
R2Ti2O7単結晶は高屈折率を示すことができる(Shcherbakova et al., Russ. Chem. Rev. 48, 423 (1979)参照)。単結晶の製造は、上に示したように、非常に高価で、かつ大量の光学要素の製造を可能にしない。
【0022】
記事K.N. Portnoi et al., Izvestiya Akademii Nauk SSSR, Neorganicheskie Materialy, Vol. 6, No. 1, 91 (1970)は幾つかのデータまたは多結晶物質の屈折率に関するヒントを含まない。
【0023】
Malkin et al. Phys. Rev. B 70, 075112 (2004)で説明される結晶は、Yb2Ti2O7から作られ、かつ大きな単位体でフローティングゾーン法を通して得られる。厚さは、1.5mmまでであるとして指摘されている。
【0024】
しかしながら、多結晶セラミックスは広い範囲の組成で得られ、それらは不十分な光学品質、特に屈折率および透過率の均一性に限っていえば、を示す。僅かな組成範囲および構造型のみによって、十分な光学品質を持つ透明セラミックスを提供することが知られている。
【0025】
例えば、日本公開特許出願JP 2000-203933はある焼成プロセスの適用による多結晶YAGの製造を開示している。受動直線光学適用に対するYAGの不利益さは、アッベ図またはPg,F -図(nd = 1.83, アッベ数 = 52.8; Pg,F = 0.558; デルタ Pg,F = 0.0031)に位置であり、それは十分に珍しくなく殆どの適用に対して十分ではない。YAGシステムは、化学変化性が高いものの、構造が3価カチオンのみを受容する理由で不都合である。UVバンドギャップ構造によって影響を受ける光学特性、他の要因に比べて、の変化の可能性はそれゆえ多くの目的に対して十分ではない。
【0026】
US 6,908,872において、半透明セラミック材料はセラミック中の必須成分としてバリウム酸化物を利用することを述べている。従って得られたセラミックはペロブスカイト構造を示し、かつ常誘電性である。しかしながら、そのようなペロブスカイト構造を持つバリウム含有相を含むセラミックスは不十分な光学画像品質を示す。これは、多くのペロブスカイトの傾向を結果として生じ、ゆがんだ強誘電性結晶を形成し、従ってそれらの光学異方性を緩む。この物事についてセラミックから作られる結晶の望ましくない複屈折を導く。さらに、青色スペクトル領域(波長約380 nm)における透過率は不十分である。
【0027】
組成La2Hf2O7 (LHO)の透明セラミックスは、Ji et al., “Fabrication of transparent La2Hf2O7 ceramics from combustion synthesized powders”, Mat. Res. Bull. 40 (3) 553-559 (2005)”から知られている。この点で、燃焼反応によって得られる、目標組成の粉末が用いられる。試料厚さ<1 mmで光学適用に対してあまりに低い70%の透明度を示すそのようなセラミックスのみが得られる。
【0028】
シンチレータ適用のための透明セラミック物質としてのTi4+含有、活性La2Hf2O7は、Ji et al., “La2Hf2O7:Ti4+ ceramic scintillator for x-光線 imaging” J. Mater. Res., Vol. 20 (3) 567-570 (2005)ならびにCN 1 587 196 Aから知られている。
【0029】
透明セラミック物質としての0.5 at%−5 at% Tb3+ドープ活性LHOは、Ji, YM; Jiang, DY; Shi, JL in “Preparation and spectroscopic properties of La2Hf2O7 : Tb” (MATERIALS LETTERS, 59 (8-9): 868-871 APR 2005)に詳述されている。これらの活性、すなわち発光、ランタン化合物は受動光学要素として望ましい適用に対して適切ではない。
【0030】
DE 10 2006 045 072 A1は単相光学セラミックを含む光学要素を述べる。しかしながら、この物質はY2O3で安定化したZrO2型の立方晶構造である。そのような結晶構造は安定立方晶黄緑石または安定蛍石構造と異なり、かつ類似の不都合さをこうむる。
【0031】
Klimin et al in “Physics of solid state. Vol. 47, No. 8, 2005”は単結晶物質および多結晶化合物を述べているが、幾つかの多結晶物質の光学品位透明度を対処しない。多結晶物質は、1400℃未満の全く低い温度で僅かに固まった圧粉体の形態である。この手法は、十分な光学特性を持つ物質をもたらすことができない。
【0032】
WO 2007/060816は、主成分として一般式AxByOw(ここで、1.00 ≦ x/y ≦1.10の条件を満たし、かつwが電気的に中性条件を維持するための正数である)によって表される半透明セラミックを述べている。この主成分の結晶系は黄緑石型化合物を含む立方晶結晶系である。ここで、ある酸素リッチ雰囲気での予備焼成、それからO2流れでの第2焼成でA2B2O7半透明セラミックスとした後予備粉末を導くA2O3リッチ組成が述べられている。しかしながら、この参考文献で述べられる光学セラミックスは立方晶黄緑石構造を有し、それらは光学欠乏を導くA2O3成分中でリッチである。
【0033】
EP 1 992 599は化学量論A2+xByDzE7、ここで0 ≦x ≦ 1および0≦y ≦2および0 ≦z≦ならびに3x+4y+5z = 8、かつAは希土類金属酸化物の群からの少なくとも1つの3価カチオンであり、好ましくはY, Gd, Yb, Lu, La, Sc; Bは少なくとも1つの4価カチオンであり、特にTi, Zr, Hf, Sn および/またはGe;Dは少なくとも1つの5価カチオンであり、特にNbおよび/またはTa;およびEは本質的に2価である少なくとも1つのアニオンである、の酸化物を含む多結晶光学セラミックを述べている。ここで、真空焼結後にA2B2O7透明セラミックスを導くA2O3リッチ組成が述べられている。しかしながら、この参考文献で述べられる光学セラミックスは立方晶黄緑石構造を有し、それらは光学欠乏を導くA2O3成分中でリッチである。
【発明の概要】
【0034】
本発明に係る透過光学要素は電磁気線を通過する特性を有する。ある角度で光学要素に導入される光線は共平面性を想定し、従って要素の入口および出口で曲率が足りず、同じ角度で要素を抜ける。これは、電磁気線が透過光学要素を通過しながら、その方向に変化しないことを意味する。
【0035】
本発明の意義における回折光学要素(DOE)は構造が光学的に有効な機能を実行する少なくとも1つの表面を含む要素であり、表面は電磁気線波長の寸法範囲における構造を備える。これらの構造は、例えばホログラフィック火格子または光学機能を実行するホログラムまたはフルネル帯板である。それらの構造は、これら全体断面に亘る高屈折有効性を有する。
【0036】
本発明の目的は、高屈折率および/または高アッベ数および/または優れた特別相対部分分散を持つ光学セラミック物質を提供し、特性は従来のガラス、単結晶物質または他の多結晶セラミックスまたは物質で達成できない。
【0037】
本発明の他の側面によれば、請求される物質ファミリーは異なる価数の金属イオン置換の意義における高い変化可能性を有し、それによって光学特性は広い範囲で変化できる。さらに、光学セラミック物質の費用有効生産が可能になる。
【0038】
本発明のさらなる側面によれば、光学要素は可視および/または赤外波長域において高く、安定した透過率特性を示す、上に示される物質から供される。さらに、そのような物質から作られる光学要素を含む光学画像システムが提供される。
【0039】
本発明のさらなる側面よれば、633nmで1.98と2.8の間の屈折率、60%試料厚さ3mmで60%を上回るインライン透過率および5nm/cmを下回る光学複屈折を有するレンズまたはパネルとして使用のための透明光学セラミック要素の製造に適する光学セラミック組成物を提供する。
【0040】
個々で述べられる目標組成物に関し、画像挙動を改良しながら、減少表面角度で用いることができる光学セラミック光学要素を提供することができる。
【0041】
セラミック組成物に選ばれる成分の選択および量は最終光学セラミックを達成すべき屈折率に依存する。透明光学要素の厚さ減少と同時に、屈折角度はあまりにも変化し、それによって光学要素の焦点を変化させる。その結果、1,98を上回る高屈折率を持つ物質は光学要素の最小化に必要である。
【0042】
新規光学レンズシステムの製造のための前述の光学特性を持つ透明セラミックスが立方晶黄緑石または蛍石構造の次の化学量論組成を持つセラミックスを供することによって得ることができることを驚くべきことに見出した。
【0043】
A2+xByDzE7
ここで、-1,15 ≦x ≦ 0 および0 ≦ y ≦ 3 および 0 ≦ z ≦ 1,6 ならびに3x + 4y + 5z = 8、かつAは希土類イオンの群から選ばれる少なくとも1つの3価カチオンであり、Bは少なくとも1つの4価カチオンであり、Dは少なくとも1つの5価カチオンであり、およびEは少なくとも1つの2価アニオンである。
【0044】
-1,0 ≦ x ≦ 0,さらに好ましくは-0,55 ≦ x ≦ 0、より好ましくは0,4 ≦ x ≦ 0,より好ましくは-0,25 ≦ x ≦ 0、さらに好ましくは-0,1 ≦ x ≦ 0 ,さらに好ましくは-0,05 ≦ x ≦ 0および最も好ましくは-0,02 ≦ x ≦ 0であることが好ましい。本発明の好ましい態様において、x<0。x < -0,01が特に好ましい。
【0045】
そのような光学セラミックスのみが対称的結晶、立方晶構造を有することで本発明によれば好ましい。これは、鉱物黄緑石または蛍石の立方晶に対して類似物であるそのような構造に属する。
【0046】
コンプライアンスが上に挙げられる前提条件を持つと、本発明の有益な光学セラミックスを得ることができる。これは有益な透過率特性にも特に当てはまる。
【0047】
好ましいAはY, Gd, Yb, Lu, Sc および Laの非着色酸化物およびその混合物の希土類イオンの群から選択される3価カチオンである。より好ましいAは、Y, Gd, Yb, Lu および Sc、ならびにその混合物からなるイオンの群から選択される。最も好ましいAはGd, Lu および Yb、ならびにその混合物から選択される。特に好ましい態様はGd, Lu またはその混合物としてAを規定する。
【0048】
さらに、B4+は好ましくは群Ti, Zr, Hf, Sn または Geおよびその混合物からの4価イオンである。より好ましいBはZr, Ti, Hfおよびその混合物からなるイオンの群から選択される。
【0049】
Bの位置において、Nb5+ or Ta5+ような5価カチオンであってもよい。帰結として、Bの位置が黄緑石相におけるD5+によってのみ半分占め、次の半分は3価カチオン、例えば希土類イオンのような、好ましくはY, La, Gd, Yb, Lu, Sc.のような、によって占められる。それから一般式は、A123+A23+D5+E7であるか、もしA13+ = A23+ ならば結果がA33+D5+E7である。
【0050】
しかしながら、立方晶蛍石構造を持つA33+D5+E7 または A23+B24+E7の化学量論を持つ相もまた請求される。
【0051】
Eが実質的に2価である少なくとも1つのアニオンである表示は、Eは1つのアニオンまたは1つ以上のアニオンによって置き換えることができ、かつ殆どの部分、すなわち少なくとも90 at%、好ましくは95at%、特に好ましくは少なくとも98at%で、このアニオンまたはこれらのアニオンが2価アニオン、好ましくはO または Sを含む。残余、10 at%まで、好ましくは5 at%まで、特に好ましくは3 at%まで、は異なる原子価を持つアニオン、好ましくは1価アニオンであってもよい。1価アニオンとしてハロゲンイオンの群は特に好ましく、群F, Cl およびBrが特に好ましい。好ましくは、Eはカルコゲン、すなわち元素周期律表のVIB族の元素である。本発明の組成物に添加される化合物は、例えばA2E3 または BE2のような化合物の形態で通常添加される。そのような化合物は、この後に“カルコゲナイド”として示される。
【0052】
好ましい態様において、E = O1-nSn および n ≦ 0.5が有効である。
【0053】
成分A, B, D および/または Eが1つ以上のカチオンまたはアニオンで組み立てられる、好ましい態様のそのような組成物において、結果として生じる組成物は立方晶黄緑石または蛍石構造を持つ安定混合結晶相である。
【0054】
黄緑石の群は、非常に広範囲である。結晶構造は、立方晶であり、かつBと同様Aの位置において異なる原子価を持つ多数の同形置換を受容する。イオン半径に依存して化学量論A2B2E7 または A3DE7の組成物は斜方晶ウェーバライト型、単斜ペロブスカイト型、立方晶蛍石型または立方晶黄緑石型として任意に結晶化される。最後に述べる立方晶形のみが光学セラミックスまたはレンズとしてのそれらの適用として請求される。
【0055】
黄緑石構造を持つ複数の組成物に亘る概観は、“Oxide Pyrochlores - A review” by Subramanian et al. (Prog. Solid. St. Chem. Vol. 15, p. 55-143 (1983))に見出すことができる。
【0056】
一般式A23+B24+E7 または A33+D5+E7の黄緑石または蛍石構造を持つ立方晶粒子(結晶、晶子)からなる本発明に係る光学セラミックスは少なくとも1つのカルコゲンまたは希土類カルコゲン、好ましくはA3+ = Y, Gd, Yb, Lu, La, Scを持つ種類A3+2E3の、B4+ = Ti, Zr, Hf, Sn, Geを持つ種類B4+E2の、およびD5+ = Nb, Taを持つ種類D25+E5のカルコゲンを焼結することによって製造することが好ましい。
【0057】
純粋成分の相を含む光学セラミックスは別として、混合結晶相もまた可能である。混合結晶相において、Aカチオンは第2Aカチオンによって絶対量で置換できる。50モル%まで、さらに好ましくは40モル%までの第1Aカチオンが第2Aカチオンによって置換されることが好ましい。25モル%までの第1Aカチオンが第2Aカチオンによって置換されることが特に好ましい。同じことはBおよび D位置にも当てはまる。
【0058】
混合物の成分比は組成物A23+B24+E7 または A33+D5+E7に関連する黄緑石または蛍石の立方晶構造が維持されるように選択されることがここで本質的である。本発明の範囲において、立方晶構造を持つセラミックは結晶マトリックス、ここで単結晶は立方晶構造を有する、からなるセラミックである。好ましくは、物質は95%を超える立方晶相、さらに好ましくは98%を超える立方晶相、より好ましくは99%を超える立方晶相、からなる。
【0059】
本発明に係る全ての混合結晶相は立方晶構造、Y2Ti2O7 または La2Zr2O7 (黄緑石)または Y3NbO7 (蛍石)のそれと同形を示す。これら構造の種類は、例えばTerki et al.: “Full potential linearized augmented plane wave investigations of structural and electronic properties of pyrochlore systems”, J. Appl. Phys. Vol. 96(11)6482-6487 (2001)に記述されている。
【0060】
本発明の多結晶光学セラミックスが構成される晶子は、立方晶構造を有する。これは、同形、複屈折なし光学挙動を導く。それらは、絶縁特性を有する、すなわちそれらの立方晶構造のために永久双極子は生じることがなく、かつ物質は光学的に等方性である。したがって、光学特性もまた等方性である。
【0061】
さらに、本発明に係る多結晶光学セラミックスの晶子は500nmを超える、好ましくは1000nmを超える平均粒子径を有することが好ましい。ここで、平均粒子径(または平均粒子径)はS. A. Saltykov, “Stereometrische Metallographie”,原料産業に関するドイツ出版物、ライプツィヒ、1974に従って決定されるような平均粒子径であるべきと理解される。
【0062】
本発明によれば、前記問題は前述の光学セラミックを含む屈折、透過または回折光学要素によって解決する。好ましくは、そのような要素はレンズとして表される。最良の効果は、もし光学要素が本発明に係る光学セラミックからなるならば、達成できる。
【0063】
本発明の別の側面によれば、レンズを有する光学画像システムが提供され、前記システムは少なくとも2つの異なる透明材料を含み、ここで少なくとも1つのレンズは上に説明したような光学セラミックから製造される。本発明は、光学画像システム内の2つの異なる透明レンズ物質、例えば対物レンズのような、の適用によって、新規な画像特性が提供できることの洞察に基づく。特に、光学画像システムの色消し(achromatisation)可能性は比較的に低い数の屈折光学要素を持つことができ、結果は従来のガラス型の適用によって達されることができなかった。
【0064】
例は、ほぼつや消し画像特性を持つ小型対物レンズ構造に対して3つの屈折光学要素のみの適用である。合計で、本発明は非常に低重量、低深さの据え付き空間および低コストを持つ色消し光学収差の補正のために光学画像システムを提供でき、システムは従来技術に係る多数レンズシステムに比べるときに小型である。
【0065】
この点で、本発明の別の側面によればレンズは屈折だけを構築できる。レンズは孤立して、または互いにある距離をあけて配列できる。幾つかのレンズはレンズ群に、例えばレンズ対またはレンズ三つ組等として、基本的に組み込むことができる。
【0066】
本発明のさらに他の側面によれば、少なくとも1つのレンズは回折構造を有することができ、その構造は例えばフレネルゾーン板、回折グレ−ディング、ブレーズ回折グレーディングの形態のような、例えばレンズの表面または体積中に埋め込まれ、加圧され、かつ刻み込まれる。
【0067】
本発明の他の好ましい態様によれば、光学画像システムはガラスから作られる少なくとも1つのレンズを備え、したがって光学画像システムは前に述べたような透明光学セラミックスから製造される少なくとも1つのレンズを備え、かつ少なくとも1つのレンズは整合ガラスから作られる。
【0068】
前述のレンズは予め決められた焦点距離を持つ小型対物レンズに組み込まれる。本発明のさらなる態様によれば、光学画像システムの対象側の第1レンズは、純屈折、好ましくは球状レンズにできる。
【0069】
優れた透過光学要素にとって、光学セラミックは透明保護要素、好ましくは窓として用いることができる。
【0070】
以下に、本発明は随伴する図面を参照して具体的に説明し、それによって形態、有益さおよび解決すべき問題が明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係る光学セラミックスから製造される光学要素の4つの例を示す。
【0072】
図1に示される本発明に係る透過および/または屈折光学要素の4つの例は、両凸レンズ1、両凹レンズ2、純透過光学要素3および球状レンズ4である。示されるレンズ1,2,4は光学要素に関係する本発明に係る光学セラミックスの適用に好ましい。
【0073】
好ましい態様の詳細な説明
次に述べるように、本発明に係る光学セラミックスは約1.90を上回るか等しい、好ましくは約2.0と約2.7の間、特に好ましくは約2.1と約 2.7の間の屈折率ndを持つ透明物質である。最も好ましくは約2.25、より好ましくは2.30の屈折率である。同時に、アッベ数は約10から45の範囲、好ましくは約10と40の間、特に好ましくは約12と35の間である。これは、色収差矯正レンズ系における使用のための新規な物質組み合わせを促進する。
【0074】
請求される光学セラミックスの全ては、系、すなわちそれらは異なる原子価(A, B, Dの位置)の少なくとも2つのカチオンからなる、を混合する。酸化物粉末バッチまたは最終化合物粉末の化学量論は従ってこの化学量論に正確に思考されなければならない。理想的に、組成物は目標組成物から10モル%まで、理想的に5 モル%までの範囲でのみ異なる。換言すれば、さらに望ましい相(異なる屈折率または立方晶以外の異なる構造対称を持つ)は焼結の間に作り出され得る。幾つかの目標相にとって、混合結晶相が結果として生じる、すなわちカルコゲニドの一つの不十分なドーズ/過剰ドーズは結晶構造によって補償し得る。
【0075】
これらは例えば相La2Zr2O7 およびLa2Hf2O7であり、(製陶業者の相図; No. 5232)の相図は目標化学量論近くで25モル%(すなわち-12.5%/+12.5%)までの大きさの混合結晶領域を示す。La2Hf2O7について、これは相図(製陶業者の相図;No. 2371)に従って約20モル%±10 モル%である。たとえ混合結晶相が存在しなくとも、高品質を持つ光学セラミックスの製造は可能である(例えばYAGの比較;相図No. 2344参照)。
【0076】
全ての物質は立方晶構造を有する。これらの各位置においけるA-, B- および D-カチオンの混合物もまた可能で、これは例えば(Yb,Y)2Ti2O7, La2(Hf,Zr)2O7 および (La,Gd)2(Hf,Zr)2O7に当てはまる。また、単一位置での3つの異なる要素の配置は可能であり、それは屈折率および分散を調節するために多重度の可能性を促進する。
【0077】
2つまたはそれ以上の末端要素の混合物もまた可能であり、単一成分としての要素は異なる構造、すなわち立方晶黄緑石または立方晶蛍石構造(例えばY2Ti2O7;黄緑石およびY2Zr2O7;蛍石構造)を有する。
【0078】
変形もまた3つまたは3つ以上のカチオンを持つことも可能である。
【0079】
カルコゲニドは本発明に従って化合物の形態に適用でき、それは可視スペクトル域、すなわち約380から800 nmで、にて光学活性を通常示さない、すなわちこのスペクトル域の光が吸収するだけでなく放出もする。セラミックスは通常、実質的に無色であり、蛍光が現れない。
【0080】
本発明に係る受動要素(例えばレンズ)に対して、可能な蛍光は意図的に低減されなければならない。これは非常に高純度の原料の使用を望む。光学的に活性な不純物(例えば希土類元素(RE)または遷移金属の群からの活性イオン)の含有量は本発明の態様によれば最小に低減される。これは好ましくは<100 ppm、さらに好ましくは<10 ppm特に好ましくは<1 ppmであり、かつ最も好ましい光学セラミックスはイオンPr, Nd, Sm, Eu, Tb, Dy, Ho, Er, Tmなしである。
【0081】
酸化物の適切な組み合わせによって、透明度、屈折率、アッベ数および部分分散のような光学特性はそれぞれの必要条件に調節できる。
【0082】
好ましくは、本発明に係る光学セラミックスの屈折率は約1.9を上回るか等しい、さらに好ましくは約2.0と約2.7の間、特に好ましくは約2.1と約2.7の間、アッベ数は約10と約45の間、好ましくは約10と約40の間、特に好ましくは約12と約35の間である。
【0083】
本発明によれば、光学セラミックスの内部透過率の値は600 nmでの内部透過率の値を比較するとき、600 nmから800 nm の波長範囲、好ましくは500 nmから800 nmの波長域で約10%までだけ異なる。本発明に係る光学セラミックスの透過率は従ってそれらの使用に対して好ましい波長域で非常に安定している。
【0084】
本発明に係る光学セラミックスの製造
本発明に係る特に好ましい光学セラミックスは、酸化物を焼結することによって製造される(単一成分の反応焼結または粉末の焼結は目標化学量論で既に提供される)。この経路は単純でかつ費用有効であり、かつ先進の光学セラミックスの望ましい光学パラメータに容易に合致される。この経路を経由する製造は、次により詳細に説明される工程を実行する。これらの工程は、粉末製造、粉末調整、成形およびアニールである。好ましくは、例えばHIP工程のような処理工程が続く。
【0085】
好ましくは、焼結は真空で遂行される。粉末床は回避される。ここで述べられるような光学セラミックスの製造のためのプロセスの好ましい態様によれば、熱間静水圧プレスでさらなる焼結が生じる。
【0086】
1.粉末製造
光学セラミックスの製造は、適切な粉末の適用によってなされる。この方法は、(共)析出、炎加水分解、ガス凝縮、レーザアブレーション、プラズマsp光線法(CVS法)、ゾルゲル法、水熱法、燃焼等である。高パックに関して密度粒子形状は丸いか球状であることが好ましく、粒子はファンデールワールス力(穏やかな集合)によって互いに緩慢にのみ結合している。粒子は、焼結ネックの形態での弱い架橋によって互いに理想的にのみ結合している。化学析出に関し、粒子分画の大きな依存および析出条件からの形状である。例えば硝酸または塩酸溶液の、例えばY-硝酸(硝酸イットリウム)またはY-塩酸(塩酸イットリウム)の析出媒体(炭素析出、水酸化物析出、シュウ酸塩析出)の選択は、広いスペクトルの焼結粉末の製造をできる。乾燥スラッジ(単純空気乾燥、凍結乾燥、共沸混合物蒸留)の異なる乾燥方法もまた異なる粉末品質および出発特性(例えば比表面積のような)の結果をもたらす。さらに析出の間に、多数のさらなるパラメータ(pH値、拡販、回転、温度、析出体積等)は制御されなければならない。
【0087】
粉末の純度は、重要な基準である。幾つかの不純物は、変化する焼結条件または光学特性の不均一な分布を導くことができる。不純物は、液相形成を導くことができ、最悪な場合において広い不均一粒界領域を導くことができる。粒界相(非晶質または結晶質)の形成は、回避べきであり、なぜならばこれらは分散による透過率損失が光通過で起こる結果で屈折率の相違をもたらす。
【0088】
硬質凝集塊の使用、すなわち析出または焼成の間に多数のブリッジを累積する一次粒子がこれらの環境によって多かれ少なかれ互いに焼成される、は適用方法に依存することができる。例えばJ. Mouzonは粒界気孔、すなわち粒子間気孔を回避するために異なる焼結が好都合であるイットリア系に対して公開された論文“Synthesis of Yb:Y2O3 nanoparticles and Fabrication of Transparent Polycrystalline Yttria Ceramic”, Lulea University of Technology, Int. No. 2005:29で述べている。これは、硬質凝集塊によって提供される。この点で、凝縮塊内の一次粒子は第1工程で焼結し、残存気孔は粒界領域に好ましくは位置される。これらは熱“静水圧プレス”の方法を適用することによって系から取り除くことができる。
【0089】
(共)析出粉末の製造において、ある薬剤を意図を持って添加することによって凝集に向かう傾向を減少させる可能性が存在する。それによって、粉砕工程の必要は回避される。この目的のために、析出シュウ酸塩懸濁物の焼成前にNH4OH添加の可能性が存在する。
【0090】
調節および組成を変化することによる光学特性の微細調節が関連する限り、より大きな柔軟性は反応焼結による前述した光学セラミックスを製造することを可能にする。反応焼結において、焼結プロセスの間に望ましい組成になるために反応するカルコゲニド混合物が用いられる。
【0091】
目標組成の予備反応した粉末を得るための可能性は、相図に依存する900と1300℃の間の温度範囲での混合カルコゲニド粉末の焼成工程である。
【0092】
2.粉末条件
粉末は、成形に依存してさらに様々に処理される。一般的に、粉末の粉砕はもし添加物が添加されるならば、a)存在した凝集塊の分解、b)粉末の均質化の目的で行われる。粉砕は乾燥または湿式ででき、後者は例えばアルコールまたは水基媒体である。粉砕時間は、24時間までで達成できるが、粉砕要素(Al2O3, ZrO2)から、またはミルの内部ライニングから、の摩滅を回避するように選択すべきである。ミルとして環状ギャップミル、粉砕機ミル、ボールミル等が適切である。媒体として例えば水、液体アルコールまたはヘプタンのような液体炭化水素もしくはその他を用いることができる。
【0093】
バッチ乾燥は低温にて空気で行うことができ、最も好ましい場合において粉砕懸濁物はsp光線乾燥を通して乾燥される。ここで、規定された寸法および品質の粒子を得ることができる。sp光線乾燥の間に、バインダを使用すべきであり、好ましくはsp光線乾燥は軟質の凝集塊を導く。凝集塊寸法は、100μmを超えるべきではなく、10から50μmの寸法範囲の凝集塊が好ましく、凝集塊<10μmが理想である。凍結乾燥のみならず遠心徐滴流乾燥もまた可能である。
【0094】
添加物は、もしナノ粉末またはナノ粉末凝集塊が処理すべきであるならば、必要かもしれない。キャスティング、例えばスリップキャスティング、ダイキャスティング、遠心キャスティングによる成形にとって、粉末バッチは適切な液体に分散しなければならない。この目的のために、例えばダルバン(Darvan)、ドラピックス(Dolapix)、ポリアクリル酸、シュウ酸アンモニウムモノハイドレイト、シュウ酸、ソルビトールクエン酸アンモニウムまたはその他が適用される。
【0095】
プラスチック成形(押出成形、ダイキャスティング、ホットキャスティング)のために、型式ポリオレフィン例えばClariant によるHOSTAMOND(登録商標)の有機バインダまたは例えばBASFによる型式CATAMOLD(登録商標)のような触媒作用分解バインダを添加しなければならず、かつ適切な方法で均質化しなければならない。
【0096】
3.成形
原理的に、幾つかの想像しうるセラミック成形方法は適用できる。これらは液体、プラスチックおよび乾燥成形方法である。理想的に、次の液体成形方法:スリップキャスティング、圧力スリップキャスティング、真空ダイキャスティングまたはゲルキャスティング、が特に好ましい。プラスチック成形方法としてホットキャスティング、セラミック注入ダイキャスティングまたは押出成形が可能である。乾燥成形は、特に一軸および/または冷間静水圧成形に属する。
【0097】
それぞれの成形方法の選択は最終製品の必要条件(品質、寸法および量)または望ましい特性に合わせる。
【0098】
好ましい態様において、成形道具は成形工程に用いることができ、成形道具はニアネットシェイプであるように設計され、従ってさらなる処理を回避するかまたは少なくとも処理を減少する。このニアネットシェイプによってコストが低減される。そのような成形物は例えば特許出願DE 10 2007 002 078.5に説明されている。この特許出願の開示は、本発明に係る光学セラミックスに関する限り、参照によってこの出願に十分に組み込まれている。
【0099】
4.アニーリング
真空焼結は圧粉体から開口気孔の除去を促進する。真空条件は0-3 mbar (= 10-3 hPa)を上回り、好ましくは10-5 と10-6 mbarの間( = 10-5 から10-6 hPa)の圧力が適用される。焼結条件は、それぞれの物質で変化する。例としてT=500℃から1900℃および1と10時間の間の焼結時間でのプログラムが言及される。
【0100】
択一的に、焼結は特別な雰囲気(He、水素[乾燥または湿式]、N2, Ar)で行うことができる。
【0101】
真空焼結の間に、注意は粒成長があまりにも速くなくかつ制御されないように払われなければならない。粒子中に気孔が含まれないことの目的である。この目的のために、例えば焼結温度は低く保持されるべきである。試料は、高気孔密度によってその後に不透明であってもよいが、気孔は閉じられる。
【0102】
HIP工程後に適用することによって、粒界の閉じた気孔を系から加圧することができる。例示的条件は、1500℃から1800℃および100 MPa (1000 bar) と300 MPa (2000 bar)の間の圧力である。1と10時間の間の焼結時間(加熱せず、かつ冷却段階)は、常である。発熱体としてWおよびMo、グラファイトも可能を用いることができる。
【0103】
圧力ガスとしてアルゴンを用いることができる。粒界、例えばガラス状中間相、中のアルゴン溶液を回避するために、試料は特定の粉末に埋め込まれる。それによって、表面の物質の還元による着色またはオーブン中の発熱体による試料の汚染を回避でき、空気での“引き続く焼き戻し”が必要がなくなる。もし引き続く焼き戻しが必要であれば、空気または酸素で行うべきである。例示的条件は1400℃までで1から48時間である。
【0104】
特別な処理実施を適用することによって、やはり粒子内微小孔を低減できる。これは、粒子に含まれる気孔体積の領域に亘る粒界成長を新たに起こすような意図的な粒成長によって起こる。この目的のために試料はHIP工程後に別の焼結処理を受ける。
【0105】
HIP工程に引き続く真空焼結の代わりに、“真空ホットプレス”の組み合わせ工程もまた適用できる。
【0106】
例えばフレームSp光線熱分解または共析出によって得られた目標組成の粉末でのセラミックの製造もまた可能である。
【0107】
次に、言及した光学セラミックスの製造のための幾つかの例を述べる。例はこの発明の範囲を制限するために支持しなく、物質および方法は必要ならば変更できる。例は本発明の好ましい態様であることを気が付くべきである。
【0108】
1.乾燥加圧(反応焼結)によるGd-Hf-黄緑石からの透明セラミックを製造する例
径<1μmで一次粒子を持つ粉末、好ましくはナノ寸法(<100 nm)のGd2O3 およびHfO2を26モル%Gd2O3および74モル%HfO2の配分で計量し、ボールミル中で混合した。粉砕をZrO2ボールおよびエタノールを用いて同じ時間行って懸濁物を調製した。さらに、バインダおよび表面感応(surface sensitive)添加物を添加する。混合および粉砕は12 時間遂行する。
【0109】
粉砕懸濁物をヒータまたはsp光線ドライヤーで乾燥する。
【0110】
粉末はその後に一軸的にディスクに加圧し、好ましくは成形物を少なくとも表面が所望のレンズの輪郭を有するように設計する。圧力条件は10 と50 MPaの間であり、圧力時間は数秒、最高で1分までである。プリフォームを冷間静水圧プレスでさらに緻密にし、ここで圧力は100と300 MPaの間である。圧力媒体は水である。
【0111】
その後、バインダを700℃の温度、3時間で第1熱工程にて燃焼する。焼成グリーン物体をその後に真空、焼結オーブン(圧力:10-2 から10-6 mbar 10-5 から10-6 mbar)中、1500から1900℃の範囲の温度、で焼結し、任意に焼結を水素またはアルゴン、1600から1900℃、3から20時間行う。目標組成物がこの焼結工程で形成できる。
【0112】
引き続く熱間静水圧プレス(HIP)において、閉気孔が取り除かれる。HIP条件は例えば1780℃、60分、Ar、200 MPaである。
【0113】
レンズを得るためにさらに処理することができる、光学的に透明および均質な物体を得る。
【0114】
2.遠心ダイキャスティング(反応焼結)によるLu-Zr-黄緑石からの透明セラミックの製造例
サブミクロン(<1μm)の粉末、好ましくはナノ寸法(<100 nm)一次粒子を配分15モル%Lu2O3 および85モル%ZrO2で計量する。1100℃での粉末の焼成は目標組成の予備反応粉末を結果として得た。その後に予備反応粉末をボールミルで混合し、溶媒(51重量%)、分散剤(5重量%炭酸エステル)、バインダ(4重量%PVA)、可塑剤(4.5重量%グリセロール、エチレングリコールおよびポリアクリレート)、消泡剤(0.25重量%)およびテンサイド(0.25重量%)を持つナノ寸法セラミック粉末(35重量%)のスリップを得る。その後、得られた塊を遠心分離機に移し、かつ全体の塊がプラスチック(PMMA)容器の底に沈殿するまで1分当たり3000回転で遠心分離し、それから遠心分離は別に15分遂行する。遠心分離機の底は、レンズ形状になっている。変形およびバインダの燃焼は、100 K/hの加熱速度および8時間の滞留時間にて600℃でなす。真空焼結を1300℃まで300 K/hの加熱速度および3時間の滞留時間にて10-5 to 10-6 mbarで行い、1750℃の高温度で、5時間に亘る工程が続く。HIPはその後に1800℃まで300 K/hの加熱速度、5時間の滞留時間および200 MPaの圧力でなされる。
【0115】
3.熱間キャスティング(反応焼結)によるGd-Hf-Ti-黄緑石からの透明セラミックの製造例
加熱ボールミルにおいて、セラミックナノ寸法Gd2O3 (32モル%), TiO2-HfO2 (68モル%) 粉末混合物は80℃で熱可塑性バインダ (75重量%パラフィンおよび25重量%のナノ寸法ワックスの混合物)および表面活性成分シロキサンポリグリコールエーテル (セラミック粒子表面の単一分子カバレッジ)と混合する。その点で最終スリップの粘度は60 vol%の固体粒子含有量で2.5 Pasである。1 MPa のキャスティング圧力で、スリップはプラスチック成形(ホットキャスティング)に直接移す。バインダの排除は、適用ワックスの融点を上回って変形した後になされ、ここで要求される安定性を供するために約3重量%がグリーン圧粉体に残る。バインダおよびグリーン圧粉体に残る界面活性剤は引き続く焼結工程の間に燃焼される。真空焼結は1600℃まで300 K/hの加熱速度および10時間の滞留時間で行われる。焼結の間に、目標組成物Gd2(Hf,Ti)2O7が形成される真空条件は、10-5 to 10-6 mbarの間である。HIPは1780℃まで300 K/分、10時間の滞留時間および200 MPaの圧力で行なう。後アニーリングは150 K/h の加熱速度で空気中、1100℃の温度で行う。
【0116】
4.一軸加圧によるGd3TaO7からの透明セラミックの製造例
サブミクロン(<1μm)の粉末、好ましくはナノ寸法(<100 nm)のGd2O3 およびTa2O5を目標組成の配分で計量し、ボールミル中で混合または均質化する。粉砕をZrO2ボールを持つエタノールで行い、ここで粉砕懸濁物はバインダおよび表面感応(surface sensitive)添加物等をさらに含む。粉砕懸濁物はヒータで任意に乾燥されるか、または懸濁物はsp光線乾燥機で粒子化される。
【0117】
粉末は、一軸的にディスクに加圧される。圧力条件は、10と50 MPaの間であり、圧力時間は僅かな秒、最高で1分までである。
【0118】
プリフォームは冷間静水圧プレスで再緻密化され、ここで圧力は100と300 MPaの間である。圧力媒体は水である。
【0119】
その後に、バインダは第1熱工程で燃焼される。アニーリング時間および温度は60分、550℃の間である。
【0120】
燃焼グリーン物体は、その後に真空焼結オーブン(低圧10-5 to 10-6 mbar、任意に水素またはヘリウム中)で焼結される。焼結は、1700℃の温度で、3時間なされる。目標組成物が、この熱工程の間で形成される。
【0121】
引き続く熱間静水圧プレスにおいて、閉気孔が取り除かれる。HIP条件は、例えば1800℃-60 分-Ar-200 MPaである。化学的性質および還元への系の感応に依存して試料はさらに熱工程(例えば1000℃、5時間、空気)で再酸化できる。
【0122】
最後に、さらにレンズに処理することができる透明かつ均質な物体が得られる。本発明に係る光学セラミックスは特許出願DE 10 2007 002 079.3に述べられる製造方法の適用によるニアネットシェイプ手法で光学要素を得るために処理することができる。この参照によって述べた古い特許出願の内容が本出願に取り込まれる。
【0123】
5.一軸加圧(反応焼結を含む)によるYb-Ti-黄緑石からの透明セラミックの製造例
径<1μmの一次粒子を持つ粉末、好ましくはナノ寸法(<100 nm)のYb2O3 (33モル%)およびTiO2 (67モル%)を計量する。分散剤およびバインダの添加後、バッチがボールミル中のエタノールおよびZrO2ボールで12から16時間混合される。
【0124】
粉砕懸濁物は任意にヒータまたはsp光線乾燥機で乾燥される。
【0125】
粉末はその後に一軸的にディスクに加圧し、好ましくは成形物を少なくとも表面が所望のレンズの輪郭を有するように設計する。圧力条件は10 と50 MPaの間であり、圧力時間は数秒、最高で1分までである。このプリフォーム物体を冷間静水圧プレスで再緻密化され、ここで圧力は100と300 MPaの間である。圧力導入媒体は水または油である。
【0126】
その後、グリーン物体の焼成が800℃の温度、3時間続く。それで得られた物体をその後に真空焼結オーブン(低圧:10-5−10-6 mbar (hPa))中、焼結し、任意に焼結を水素またはアルゴンで行う。ほぼナノポーラス物体への焼結が2から10時間の範囲の焼結時間で1600と1800℃の間にて起こる。
【0127】
引き続く熱間静水圧プレス(HIP)において、閉気孔が取り除かれる。HIP条件は例えば1780℃、アルゴン下で約2時間の時間、200 MPa(1780℃-2h-Ar-200MPaでなす短縮した同上)である。化学的性質および還元への系の感応に依存して試料はさらに熱工程(例えば1000℃、5時間、O2流れを使用)で再酸化できる。
【0128】
レンズを得るためにさらに処理することができる、光学的に透明および均質な物体を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の結晶の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも98重量%が立方晶黄緑石または蛍石構造をを有し、化学量論の化合物
A2+xByDzE7
ここで、-1,15 ≦x ≦ 0 および0 ≦ y ≦ 3 および 0 ≦ z ≦ 1,6 ならびに3x + 4y + 5z = 8、かつAは希土類金属酸化物の群から選ばれる少なくとも1つの3価カチオンであり、Bは少なくとも1つの4価カチオンであり、Dは少なくとも1つの5価カチオンであり、およびEは少なくとも1つの2価アニオンである、
を含む多結晶、透明光学セラミックス。
【請求項2】
AはY, Gd, Yb, Lu, ScおよびLaから選択される請求項1記載の光学セラミックス。
【請求項3】
BはTi, Zr, Hf, SnおよびGeから選択される請求項1または2記載の光学セラミックス。
【請求項4】
DはNbおよび/またはTaである請求項1から3の1つもしくはそれ以上記載の光学セラミックス。
【請求項5】
屈折率が約1.9を上回るか等しく、好ましくは約2.0と2.7の間、特に好ましくは約2.1と約2.7の間、かつアッベ数が約10と約45の間、好ましくは約10と約40の間、特に好ましくは約12と約35の間である前述の請求項の1つまたはそれ以上記載の光学セラミックス。
【請求項6】
可視光に透明である前述の請求項の1つまたはそれ以上記載の光学セラミックス。
【請求項7】
赤外線光に透明である前述の請求項の1つまたはそれ以上記載の光学セラミックス。
【請求項8】
可視だけでなく赤外線光にも透明である前述の請求項の1つまたはそれ以上記載の光学セラミックス。
【請求項9】
前述の請求項1から8の1つまたはそれ以上に規定される単相光学セラミックを実質的に含む屈折、透過または回折光学要素。
【請求項10】
前記光学要素がレンズとして形付けられる請求項9記載の光学要素。
【請求項11】
少なくとも2つの異なる透明物質で構成される光学画像システムであって、少なくとも1つのレンズが前述の請求項に記載の光学要素として構成されるシステム。
【請求項12】
透明保護要素、好ましくは窓または遮光板、として請求項1から8の1つに記載の光学セラミックの使用。
【請求項13】
単化合物の反応焼結により製造される請求項1から8の1つまたはそれ以上記載の光学セラミック。
【請求項14】
目標組成の予備反応粉末の焼結によって製造される請求項1から8の1つまたはそれ以上記載の光学セラミック。

【図1】
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【公開番号】特開2010−241677(P2010−241677A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−82118(P2010−82118)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(505458670)ショット・アーゲー (32)