説明

立旋盤

【課題】ワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削する立旋盤において、加工時間の短縮及び部品点数の削減を図りつつ、ワークの上下方向における加工可能な範囲の減少を防ぐ。
【解決手段】立旋盤は、ラム14の下端で支持され、ワークの回転軸と平行に延びる中心軸の周りに所定間隔で配置される複数の工具101,102の刃先101c,102cが前記中心軸から見て外向きに突出するような姿勢で各工具101,102を保持する工具ホルダ18を備え、ラム14は、鉛直移動軸方向に延びる収容空間42aを内部に有するラム本体42と、鉛直移動軸方向に延びる姿勢で収容空間42aに挿入されるとともにその軸回りに回転可能となるようにラム本体42に外側から支持され、ラム本体42から下方に突出して工具ホルダ18を同軸となるように支持する支持軸部44と、支持軸部44をその軸回りに回転させる支持軸部駆動装置48とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立旋盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工物であるワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながらそのワークの旋削加工を行う立旋盤が知られており、下記特許文献1には、このような立旋盤の一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に開示された立旋盤は、縦軸回りに回転可能な回転テーブルと、その回転テーブルを回転させる駆動手段と、回転テーブルの上方で水平方向に延びるクロスレールと、そのクロスレールに沿って移動可能に設けられたサドルと、そのサドルに鉛直方向に移動可能に設けられたラムと、ラムの下端部の側面に設けられ、複数のバイト工具を保持するタレット型の工具ホルダとを備えている。この立旋盤では、回転テーブルが駆動手段によって回転駆動されることによりその回転テーブル上にセットされたワークを縦軸回りに回転させるとともに、そのワークにサドル及び/又はラムの移動に伴って移送されるバイト工具を当てて当該ワークの旋削加工を行う。
【0004】
タレット型の工具ホルダは、サドルの移動方向及びラムの移動方向に対して垂直に延びる水平軸回りに回転可能にラムに取り付けられている。工具ホルダは、複数のバイト工具が当該工具ホルダの回転軸を中心とした放射状に配置されるように各バイト工具を保持する。工具ホルダに保持された各バイト工具の刃先は、工具ホルダの径方向外側へ突出しており、この刃先によりワークが旋削される。そして、工具ホルダを回転させることにより、ワークの旋削に用いられているバイト工具を工具ホルダに保持された他のバイト工具に変更することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−71602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
立旋盤において上記のようなタレット型の工具ホルダが設けられている場合には、ワークの旋削中に工具を変更する際、工具の着脱に要する手間を削減できるとともに、バイト工具毎に個別に工具ホルダを用意する必要がなくなり、ワークの加工時間の短縮及び立旋盤の部品点数の削減を図ることが可能である。
【0007】
しかしながら、この構成では、上下方向におけるワークの加工可能な範囲が小さくなるという問題点がある。
【0008】
具体的には、工具ホルダから水平方向において側方に突出したバイト工具の刃先でワークの外面を上から下へ旋削する場合には、そのバイト工具よりも下側に工具ホルダの下半分の部位とその工具ホルダの下端から下向きに突出する別のバイト工具とが存在するため、この別のバイト工具と回転テーブルとの干渉を避けるため、工具ホルダの降下範囲が制限される。その結果、上下方向におけるワークの加工可能な範囲が小さくなる。
【0009】
この発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、ワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削する立旋盤において、ワークの加工時間の短縮及び部品点数の削減を図りつつ、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明による立旋盤は、ワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削加工する立旋盤であって、ワークを下から支持しながら前記縦軸回りに回転させるワーク回転装置と、前記ワーク回転装置の上方において当該ワーク回転装置によるワークの回転軸に垂直な第1移動軸方向に延びるクロスレールと、前記クロスレールに沿って前記第1移動軸方向に移動可能となるように当該クロスレールに支持されるサドルと、前記サドルを前記クロスレールに沿って前記第1移動軸方向に移送する第1移送装置と、前記ワークの回転軸と平行な第2移動軸方向に移動可能となるように前記サドルに支持されるラムと、前記ラムを前記第2移動軸方向に移送する第2移送装置と、前記ラムの下端で支持され、ワークを旋削するための複数の工具がワークの回転軸と平行に延びる中心軸の周りに所定間隔で配置されるようにそれらの工具を保持するとともに、その各工具の刃先が前記中心軸から見て外向きに突出するような姿勢でそれらの工具を保持する工具ホルダとを備え、前記ラムは、前記サドルに支持され、前記第2移動軸方向に延びる収容空間を内部に有するラム本体と、前記第2移動軸方向に延びる姿勢で前記収容空間に挿入されるとともにその軸回りに回転可能となるように前記ラム本体に外側から支持され、前記ラム本体から下方に突出して前記工具ホルダを同軸となるように支持する支持軸部と、前記ラム本体内に設けられ、前記支持軸部をその軸回りに回転させる駆動装置とを有する。
【0011】
この立旋盤は、ラムの下端で支持された工具ホルダをワークの回転軸と平行に上下に延びる軸回りに回転させて、刃先が中心軸から外向きに突出するような姿勢で工具ホルダに保持された複数の工具のうちのいずれかの工具にワークを実際に旋削する工具を変更できるように構成されているため、タレット型の工具ホルダがラムの下端部の側面に水平軸回りに回転可能となるように取り付けられた従来の立旋盤に比べて、工具ホルダ及びその工具ホルダに保持された工具のうちワークを実際に旋削する工具の刃先よりも下側に位置する部位を小さくすることができ、その結果、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことができる。しかも、この立旋盤では、工具ホルダに保持された複数の工具のうちのいずれかの工具にワークを実際に旋削する工具を変更することができるため、工具の変更のために工具の着脱を行わなくてもよいとともに、工具毎に個別に工具ホルダを用意しなくてもよく、ワークの加工時間の短縮及び立旋盤の部品点数の削減を図ることができる。従って、この立旋盤では、ワークの加工時間の短縮及び部品点数の削減を図りつつ、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことができる。
【0012】
上記立旋盤において、前記ラム本体は、前記支持軸部の軸回りにおける前記工具ホルダの旋回を許容する旋回許容状態と、前記工具ホルダによって保持された各工具の刃先が前記第1移動軸方向においてワークの径方向内側又は径方向外側に向かうような前記支持軸部の軸回りの複数の旋回位置で前記工具ホルダの旋回を阻止する旋回阻止状態とに切り替わる切替装置を有することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、工具ホルダを旋回させてワークを旋削する工具の変更を実施できるようにしつつ、ワークの旋削時には、工具ホルダに保持された工具の刃先が第1移動軸方向においてワークの径方向内側又は径方向外側に向かうような姿勢でその工具を停止させて第1移動軸方向におけるワークの旋削を行うことができる。
【0014】
この場合において、前記切替装置は、前記ラム本体の下端に設けられたラム側固定用係合部と、前記工具ホルダを前記第2移動軸方向において昇降させる昇降装置とを含み、前記工具ホルダは、その上端に設けられ、前記支持軸部の軸回りの複数の位置で前記ラム側固定用係合部に対して前記支持軸部の軸回りに旋回しないように前記第2移動軸方向において係合可能なホルダ側固定用係合部を有し、前記昇降装置は、前記ホルダ側固定用係合部が前記ラム側固定用係合部から離脱する高さ位置である離脱位置に前記工具ホルダを降下させることにより前記切替装置を前記旋回許容状態とする一方、前記離脱位置よりも上方の位置でかつ前記ホルダ側固定用係合部が前記ラム側固定用係合部に係合する高さ位置である係合位置に前記工具ホルダを上昇させて保持することにより前記切替装置を前記旋回阻止状態とすることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、支持軸部の軸回りにおける工具ホルダの旋回を許容する旋回許容状態と、支持軸部の軸回りの前記複数の旋回位置で工具ホルダの旋回を阻止する旋回阻止状態とに切り替わる切替装置の具体的な構造を構成することができる。
【0016】
さらにこの場合において、前記ラム側固定用係合部は、前記支持軸部の軸心の周りに所定間隔で配設され、前記支持軸部の径方向外側へ延びるとともに下向きに突出する複数のラム側歯部を有し、前記ホルダ側固定用係合部は、前記工具ホルダの中心軸の周りに前記複数のラム側歯部と等しい間隔で配設され、前記工具ホルダの径方向外側へ延びるとともに上向きに突出し、前記支持軸部の軸回りの複数の位置で前記複数のラム側歯部と前記第2移動軸方向において噛合可能な複数のホルダ側歯部を有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、前記旋回阻止状態において複数のラム側歯部と複数のホルダ側歯部とが噛合するため、支持軸部の軸回りの工具ホルダの旋回を強固に阻止することができる。その結果、ワークの旋削時に回転するワークから工具がそのワークの回転方向への大きな外力を受けたとしても、その外力に十分に対抗して工具が支持軸部の軸回りに変位するのを確実に阻止することができる。
【0018】
上記昇降装置が旋回許容状態では工具ホルダを離脱位置に降下させる構成において、前記工具ホルダは、ホルダ側接続用係合部を有し、前記支持軸部は、前記工具ホルダが前記離脱位置に降下することにより前記ホルダ側接続用係合部と係合して当該支持軸部に対する前記工具ホルダの旋回を阻止する支持軸側接続用係合部を有することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、工具ホルダが離脱位置に降下した時には、工具ホルダが支持軸部に対して軸回りに旋回しないように固定されるため、駆動装置により支持軸部を回転させて工具ホルダをその軸回りに旋回させることが可能となる。従って、この構成では、ワークの旋削時にはラム本体に工具ホルダを固定してその工具ホルダに保持された工具により正確なワークの旋削を行えるようにしつつ、ワークを旋削する工具の変更時には工具ホルダを旋回させて別の工具に変更することが可能な立旋盤の具体的な構造を構成することができる。
【0020】
上記立旋盤において、前記支持軸部は、前記第2移動軸方向に延びるとともに前記収容空間に挿入され、その軸回りに回転可能となるように前記ラム本体に外側から支持された筒体と、前記筒体内に下側から挿入されるとともにその筒体から下方に突出するように設けられ、前記筒体の下側で前記工具ホルダを支持する支持部と、前記筒体内に設けられ、その筒体内に挿入された前記支持部を把持する把持状態とその支持部を放す解放状態とに切り替わるクランプ部とを有し、前記ラム本体には、前記クランプ部が前記把持状態と前記解放状態との間で切り替わるようにそのクランプ部を駆動するためのクランプ部駆動機構が設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、クランプ部駆動機構を作動させることによりクランプ部を把持状態と解放状態とに切り替えて、ラム本体に支持された前記筒体に対する支持部の着脱を行うことができる。このため、工具ホルダを支持部ごと容易に交換することができ、工具ホルダの交換のために取り付けねじの脱着作業を行う必要があるような構成に比べて、工具ホルダの交換作業にかかる作業負担を軽減することができる。
【0022】
上記立旋盤において、前記工具ホルダは、その中心軸の周りに所定間隔で配設され、工具が前記中心軸に対して垂直に延びるとともにその工具の刃先が当該工具ホルダの径方向外側へ向かうような姿勢で工具をそれぞれ保持する複数の第1工具保持部と、前記中心軸の周りに所定間隔で配設され、工具が前記中心軸に対して平行に延びるとともにその工具の刃先が下向きでかつ当該工具ホルダの径方向外側へ向かうような姿勢で工具をそれぞれ保持する複数の第2工具保持部とを有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、工具ホルダに保持される工具の姿勢のバリエーションを増やすことができ、そのことに起因して、ワークの旋削の形態のバリエーションを増やすことができる。
【0024】
この場合において、前記立旋盤は、円筒状の内周面及び外周面を有するワークの当該内周面及び外周面をそれぞれ旋削するために用いられ、前記第1工具保持部によって保持される工具としては、ワークの径方向外側の位置でその刃先がワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの外周面を旋削する第1内向き旋削工具と、この第1内向き旋削工具と逆向きに刃先が設けられ、ワークの径方向内側の位置でその刃先がワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの内周面を旋削する第1外向き旋削工具とがあり、前記第2工具保持部によって保持される工具としては、その刃先がワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向外側から径方向内側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2内向き旋削工具と、この第2内向き旋削工具と逆向きに刃先が設けられ、その刃先がワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向内側から径方向外側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2外向き旋削工具とがあり、前記第1工具保持部は、前記第1内向き旋削工具と前記第1外向き旋削工具をいずれも保持可能に構成され、前記第2工具保持部は、前記第2内向き旋削工具と前記第2外向き旋削工具をいずれも保持可能に構成されていることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、円筒状の内周面及び外周面を有するワークのその内周面及び外周面を旋削可能であるとともに、そのワークの上端面を径方向外側から径方向内側へ向かって、また、その上端面を径方向内側から径方向外側へ向かって旋削可能な立旋盤を構成することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように、本発明によれば、ワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削する立旋盤において、ワークの加工時間の短縮及び部品点数の削減を図りつつ、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態による立旋盤の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示した立旋盤のラム及び工具ホルダの軸方向に沿った縦断面図である。
【図3】工具ホルダの正面図である。
【図4】図3に示した工具ホルダの下面図である。
【図5】工具ホルダ及び工具の図4中のV−V線に沿った断面を部分的に示す断面図である。
【図6】工具ホルダが係合位置に上昇させられた状態を示すラムの下端部及び工具ホルダの軸方向に沿った縦断面図である。
【図7】工具ホルダが離脱位置に降下させられた状態を示すラムの下端部及び工具ホルダの図6に対応する断面図である。
【図8】工具ホルダが係合位置に上昇させられた状態を示すラムの下端部及び工具ホルダの図6と異なる位置での部分的な縦断面図である。
【図9】工具ホルダが離脱位置に降下させられた状態を示すラムの下端部及び工具ホルダの図8に対応する部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0029】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態による立旋盤の全体構成について説明する。
【0030】
本実施形態による立旋盤は、被加工物であるワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削加工するものである。なお、本実施形態では、円筒状の内周面及び外周面をもつワークの旋削を行う例について説明する。
【0031】
本実施形態の立旋盤は、ワーク回転装置4と、一対のコラム5と、クロスレール6と、第1鉛直移送装置8と、サドル10と、水平移送装置12と、ラム14と、図略の第2鉛直移送装置と、工具ホルダ18とを備えている。
【0032】
ワーク回転装置4は、ワークの軸方向が上下に延びるような姿勢でワークを下から支持しながらそのワークの軸回り(鉛直軸回り)に一方向に回転させるものである。このワーク回転装置4は、所定の設置場所に設置されたベース4aと、そのベース4a上に鉛直軸回りに回転可能に設けられたテーブル4bと、そのテーブル4bを回転させる図略の駆動部とを有している。テーブル4bの上面は、水平面となっており、この上面上にワークが当該テーブル4bの回転軸と同軸となるようにセットされる。テーブル4b上にセットされたワークは、前記駆動部によってテーブル4bが回転させられるのに伴ってその軸回りに回転する。このワーク回転装置4では、テーブル4bを上から見て左回りに回転させることにより、ワークを上から見て左回りに回転させる。
【0033】
一対のコラム5は、ワーク回転装置4の両側に分かれて立設されている。各コラム5は、鉛直方向に延びている。
【0034】
クロスレール6は、一対のコラム5に掛け渡されており、ワーク回転装置4のテーブル4bの上方においてワークの回転軸(テーブル4bの回転軸)に垂直な水平移動軸方向に延びている。なお、前記水平移動軸は、本発明の第1移動軸の概念に含まれる。また、クロスレール6は、コラム5に沿って前記水平移動軸に垂直な鉛直方向に延びる第1鉛直移動軸方向に移動可能となるように当該コラム5の前面で支持されている。
【0035】
第1鉛直移送装置8は、クロスレール6をコラム5に沿って前記第1鉛直移動軸方向に移送するものである。この第1鉛直移送装置8は、駆動源としてのサーボモータと、各コラム5の前側の位置にその各コラム5にそれぞれ隣接するように設けられ、鉛直方向に延びる図略のボールねじと、サーボモータの動力を各ボールねじに伝達してその各ボールねじを各々の軸回りに回転させる図略の動力伝達機構とを有する。クロスレール6のうち各ボールねじに対応する位置には、図略のナット部がそれぞれ設けられており、その各ナット部が対応するボールねじにそれぞれ螺合している。このような構成により、サーボモータが作動して各ボールねじが共通の一方向に回転すると、ナット部とともにクロスレール6が上方へ移送される一方、各ボールねじが逆方向に回転すると、ナット部とともにクロスレール6が下方へ移送される。
【0036】
サドル10は、クロスレール6に沿って前記水平移動軸方向に移動可能となるようにクロスレール6の前面で支持されている。すなわち、サドル10は、テーブル4bの上方においてそのテーブル4bを横切るように移動可能となっている。このサドル10は、鉛直方向に延びている。
【0037】
水平移送装置12は、サドル10をクロスレール6に沿って前記水平移動軸方向に移送するものである。この水平移送装置12は、本発明の第1移送装置の概念に含まれるものである。この水平移送装置12は、クロスレール6に設けられたボールねじと、駆動源としてのサーボモータとを有する。この水平移送装置12のボールねじは、クロスレール6に沿って水平移動軸方向に延びる姿勢で設けられており、サーボモータは、そのボールねじをその軸回りに回転させる。サドル10は、この水平移送装置12のボールねじと螺合するナット部を有している。サドル10は、この水平移送装置12のボールねじがサーボモータによって回転駆動される向きに応じて当該サドル10に設けられたナット部とともに水平移動軸方向において一方側又はその反対側である他方側へ移送される。
【0038】
ラム14は、ワークの回転軸(テーブル4bの回転軸)と平行な第2鉛直移動軸方向(上下方向)に移動可能となるようにサドル10に支持されている。なお、前記第2鉛直移動軸は、本発明の第2移動軸の概念に含まれる。
【0039】
前記図略の第2鉛直移送装置は、ラム14をサドル10に沿って第2鉛直移動軸方向に移送するものである。この第2鉛直移送装置は、本発明の第2移送装置の概念に含まれる。この第2鉛直移送装置は、サドル10に設けられたボールねじと、駆動源としてのサーボモータとを有する。この第2鉛直移送装置のボールねじは、第2鉛直移動軸方向(上下方向)に延びる姿勢で設けられており、サーボモータは、そのボールねじをその軸回りに回転させる。ラム14は、この第2鉛直移送装置のボールねじと螺合する図略のナット部を有している。ラム14は、この第2鉛直移送装置のボールねじがサーボモータによって回転駆動される向きに応じて当該ラム14に設けられたナット部とともに上方又は下方へ移送される。
【0040】
工具ホルダ18は、ワークを旋削するための工具を保持するものであり、ラム14の下端で支持される。この工具ホルダ18は、いわゆるタレット型の工具ホルダであり、複数の工具を保持可能である。工具ホルダ18は、略円柱状の外形を有しており、その中心軸の周りに複数の工具が等間隔で配置されるようにそれらの工具を保持するとともに、その各工具の刃先が中心軸から見て外向き(当該工具ホルダ18の径方向における外向き)に突出するような姿勢でそれらの工具を保持する。そして、この工具ホルダ18は、その中心軸がワークの回転軸と平行な上下方向に延びる姿勢でラム14と同軸となるようにラム14に支持されており、ラム14に対してその軸回りに旋回可能となっている。
【0041】
次に、図1〜図9を参照して、本実施形態による立旋盤の工具ホルダ18とその工具ホルダ18を支持するラム14の詳細な構造について説明する。
【0042】
工具ホルダ18は、図3及び図4に示すように、当該工具ホルダ18の中心軸と軸心が一致する略円柱状のホルダ本体部20と、ホルダ本体部20に設けられ、工具101を水平方向に延びる姿勢で保持する4つの第1工具保持部22と、ホルダ本体部20に設けられ、工具102を鉛直方向に延びる姿勢で保持する4つの第2工具保持部24と、ホルダ本体部20の上面に設けられたホルダ側カービック26とを有する。
【0043】
ホルダ本体部20は、図6に示すように、ラム14の後述する支持軸部44の下端部を内部に収容する収容部32と、収容部32内に設けられ、後述する支持軸部44と係合する支持部係合部34と、その収容部32の上端に取り付けられた端板部36と、環状部38とを有する。
【0044】
収容部32は、ホルダ本体部20の大部分を占めており、その中央部に後述する支持軸部44の下端部を収容する凹部32aが設けられている。凹部32aは、その軸心がホルダ本体部20の軸心と一致するように形成された断面円形の凹部であり、その上部が開口している。また、収容部32の上端部は、それよりも下側の部位に比べて小径の円筒状の外周面を有する。
【0045】
支持部係合部34は、後述する支持軸部44の支持部74と係合するものであり、前記凹部32a内に設けられている。この支持部係合部34は、前記凹部32a内の底面に固定された基部34aと、その基部34aから上方へ突設された円筒部34bとを有する。支持部係合部34のうち円筒部34bは、支持部74と嵌合する部分であり、この円筒部34bは、収容部32(工具ホルダ18)と同軸となるように配置されている。
【0046】
端板部36は、中央に貫通穴36aが設けられた円盤状に形成されており、収容部32と同軸となるようにその収容部32の上端面に固定されている。すなわち、端板部36の貫通穴36aは、当該端板部36が収容部32に取り付けられた状態でその収容部32の凹部32aと同軸となるように配置されている。なお、端板部36は、収容部32から取り外し可能となっている。また、端板部36の貫通穴36aは、収容部32の凹部32aの内径よりも小さい内径を有している。この端板部36のうち凹部32aの径方向内側へ延出された部分の下面には、複数のピン穴36b(図8参照)が当該端板部36の周方向に所定間隔で設けられている。このピン穴36bは、本発明のホルダ側接続用係合部の概念に含まれるものである。
【0047】
環状部38は、円環状に形成されており、収容部32の上端部にその収容部32と同軸となるように外嵌している。この環状部38の外径は、ラム14の後述する突設部54の外装体54aの外径と等しくなっており、その外装体54aと上下方向において嵌合可能となっている。
【0048】
4つの第1工具保持部22(図4参照)は、ホルダ本体部20の収容部32の下面に設けられており、工具101が工具ホルダ18の中心軸に対して垂直に延びるとともにその工具101の刃先101cが工具ホルダ18の径方向外側へ向かうような姿勢で工具101をそれぞれ保持する。この第1工具保持部22によって保持される工具101としては、ワークの径方向外側の位置でその刃先101cがワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの外周面を旋削する第1内向き旋削工具101aと、ワークの径方向内側の位置でその刃先101cがワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの内周面を旋削する第1外向き旋削工具101bとがある。なお、第1内向き旋削工具101aは、その刃先101cがワークの径方向内側を向く姿勢でワークの径方向外側から径方向内側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削することも可能であり、第1外向き旋削工具101bは、その刃先101cがワークの径方向外側を向く姿勢でワークの径方向内側から径方向外側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削することも可能である。第1工具保持部22は、これらの工具101a,101bをいずれも保持可能であり、これらの工具101a,101bから選択された一方の工具が第1工具保持部22に装着される。本実施形態では、4つの第1工具保持部22のうち2つの第1工具保持部22が第1内向き旋削工具101aを保持し、残りの2つの第1工具保持部22が第1外向き旋削工具101bを保持している。
【0049】
第1内向き旋削工具101aは、特定方向に延びる棒状に形成されている。この第1内向き旋削工具101aの先端部は、図3に示すように、それよりも基端側の部分から僅かに屈曲している。第1内向き旋削工具101aは、その先端部の屈曲している側が下側になるように第1工具保持部22によって水平姿勢で保持される。また、第1内向き旋削工具101aは、その先端にワークを旋削するための刃先101c(チップ)を有する。この刃先101cは、第1内向き旋削工具101aが第1工具保持部22によって保持された状態で当該工具101aの先端部のうち当該工具101aの長手方向に垂直な水平方向における一方の側面と下面との間の角部に設けられており、その工具101aの先端部から僅かに工具ホルダ18の径方向外側へ向かって突出している。この第1内向き旋削工具101aは、図1に示す立旋盤を正面(前面)から見てワーク回転装置4上のワークに対して右側の旋削位置でその刃先101cが水平移動軸方向においてワークの径方向内側へ向かうように配置され、その状態でワークの外周面を旋削する。この第1内向き旋削工具101aの刃先101cが設けられた側面は、ワークの外周面の旋削時にワークの回転方向に対して対向するように配置される。
【0050】
また、第1内向き旋削工具101aのうち第1工具保持部22によって保持される部分は、その長手方向に垂直な断面が矩形状となっており、この部分には、後述する第1工具固定ボルト22dが挿通される複数の挿通穴101d(図4参照)が設けられている。この複数の挿通穴101dは、第1内向き旋削工具101aの長手方向に所定間隔で配設されているとともに、当該工具101aが第1工具保持部22によって保持された状態で当該工具101aを上下に貫通している。
【0051】
第1外向き旋削工具101bは、その刃先101cの向き以外は第1内向き旋削工具101aと同様に構成されている。すなわち、第1外向き旋削工具101bの刃先101cは、第1内向き旋削工具101aの刃先101cと逆向きに設けられている。具体的には、当該第1外向き旋削工具101bの刃先101cは、当該工具101bが第1工具保持部22によって保持された状態で当該工具101bの先端部のうち前記第1内向き旋削工具101aの刃先101cが設けられた側面に対して反対側の側面と下面との間の角部に設けられている。この第1外向き旋削工具101bは、図1に示す立旋盤を正面(前面)から見てワーク回転装置4上のワークの回転軸の右側の旋削位置でその刃先101cが水平移動軸方向においてワークの径方向外側へ向かうように配置され、その状態でワークの内周面を旋削する。この第1外向き旋削工具101bの刃先101cが設けられた側面は、ワークの内周面の旋削時にワークの回転方向に対して対向するように配置される。
【0052】
そして、前記4つの第1工具保持部22は、工具ホルダ18の中心軸の周りにホルダ本体部20の周方向に等間隔(本実施形態では45°間隔)で配設されている。各第1工具保持部22は、ホルダ本体部20の収容部32の下面に形成された第1保持溝22aと、その第1保持溝22aに嵌め込まれる第1スペーサ22b及び第1押さえ部材22cと、複数の第1工具固定ボルト22dと、複数の第1押さえボルト22eとからなる。
【0053】
第1保持溝22aは、収容部32の下面にその中心近傍から収容部32の径方向外側へ直線的に延びるように形成され、収容部32の外周面及び下面に開口する溝部である。この第1保持溝22aの長手方向に垂直な断面は、矩形状となっている。第1保持溝22a内の底面(下方に向かう面)は、収容部32の中心軸に対して垂直な水平面であり、この第1保持溝22a内の幅方向の2つの側面は、前記底面の幅方向両側の端部からその底面に対して垂直に下方へ延びている。第1保持溝22a内の底面には、8つのボルト穴22g(図5参照)が形成されている。具体的には、第1保持溝22a内の底面には、第1保持溝22aの長手方向に前記工具101の挿通穴101dの配設間隔と等しい間隔で配設された4つのボルト穴22gの列が2列分、第1保持溝22aの幅方向に並んで設けられている。工具101の各挿通穴101dには、第1工具固定ボルト22dがそれぞれ挿通され、その各第1工具固定ボルト22dが前記2列のボルト穴22gのうちの1列の対応するボルト穴22gにそれぞれ螺合されて締め込まれることにより、第1保持溝22a内で工具101が上下方向において固定される。
【0054】
第1スペーサ22bは、第1保持溝22a内で工具101と第1押さえ部材22cとの間に挟み込まれる。この第1スペーサ22bは、直線的に延びる細長い板状の部材からなる。第1スペーサ22bの幅方向(厚み方向)の一方の側面は、工具101の幅方向の一方の側面に当接する工具当接面22hであり、工具ホルダ18の中心軸に対して平行に上下に延びる平面からなる。また、第1スペーサ22bの幅方向の他方の側面は、第1押さえ部材22cの幅方向の一方の側面に当接する押さえ部材当接面22iであり、上側へ向かうにつれて前記工具当接面22hから徐々に遠ざかるように直線的に傾斜した斜面からなる。
【0055】
第1押さえ部材22cは、第1スペーサ22bを介して工具101を第1保持溝22a内の幅方向の一方の側面に押さえ付けるものである。この第1押さえ部材22cは、直線的に延びる棒状の部材からなる。第1押さえ部材22cの長手方向に垂直な方向でかつ水平方向における一方の側面は、第1保持溝22a内の2つの側面のうち工具101が当接する側面と反対側の側面に当接する保持溝当接面22kであり、工具ホルダ18の中心軸に対して平行に上下に延びる平面からなる。また、第1押さえ部材22cのうち前記保持溝当接面22kと反対側の側面は、第1スペーサ22bの押さえ部材当接面22iに当接するスペーサ当接面22mであり、上側へ向かうにつれて前記保持溝当接面22kに徐々に接近するように直線的に傾斜した斜面からなる。
【0056】
また、第1押さえ部材22cには、第1押さえボルト22eが挿通される複数の挿通穴22pが設けられている。この複数の挿通穴22pは、第1保持溝22aの長手方向に並ぶボルト穴22gの配設間隔と等しい間隔で第1押さえ部材22cの長手方向に並んで配設されているとともに、第1押さえ部材22cが第1保持溝22a内に配設された状態で当該第1押さえ部材22cを上下に貫通している。この各挿通穴22pに下から挿通された第1押さえボルト22eが前記2列のボルト穴22gのうち前記第1工具固定ボルト22dが螺合されるものとは別の列の対応するボルト穴22gにそれぞれ螺合されて締め込まれることにより、第1保持溝22a内で第1押さえ部材22cのスペーサ当接面22mから第1スペーサ22bの押さえ部材当接面22iに工具101側への押圧力が付与され、その結果、第1スペーサ22bが工具101を第1保持溝22a内の対応する側面に押し付ける。これによって、工具101は、第1スペーサ22bと第1保持溝22a内の対応する側面との間で水平方向において挟持されて固定される。
【0057】
なお、図5では、第1工具保持部22が第1外向き旋削工具101bを保持している状態が示されているが、第1工具保持部22が第1内向き旋削工具101aを保持する場合には、第1内向き旋削工具101aは第1保持溝22a内のうち図5において第1押さえ部材22cが配設されている側に配設されるとともに、第1スペーサ22b及び第1押さえ部材22cは図5において第1外向き旋削工具101bが配設されている側に配設される。そして、この場合には、第1スペーサ22b及び第1押さえ部材22cは、図5の状態に対して左右反転して配置され、図5で第1工具固定ボルト22dが螺合しているボルト穴22gに第1押さえボルト22eが螺合される。また、図5で第1押さえボルト22eが螺合しているボルト穴22gには、第1工具固定ボルト22dが螺合される。
【0058】
4つの第2工具保持部24(図3及び図4参照)は、ホルダ本体部20の収容部32の外周面に設けられており、工具102が工具ホルダ18の中心軸に対して平行に延びるとともにその工具102の刃先が下向きでかつ工具ホルダ18の径方向外側へ向かうような姿勢で工具102をそれぞれ保持する。この第2工具保持部24によって保持される工具102としては、その刃先102cがワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向外側から径方向内側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2内向き旋削工具102aと、その刃先102cがワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向内側から径方向外側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2外向き旋削工具102bとがある。第2工具保持部24は、これらの工具102a,102bをいずれも保持可能であり、これらの工具102a,102bから選択された一方の工具が第2工具保持部24に装着される。本実施形態では、4つの第2工具保持部24のうち2つの第2工具保持部24が第2内向き旋削工具102aを保持し、残りの2つの第2工具保持部24が第2外向き旋削工具102bを保持している。
【0059】
第2内向き旋削工具102aは、挿通穴102d以外は前記第1内向き旋削工具101aと同様の形状に形成されており、第2外向き旋削工具102bは、挿通穴102d以外は前記第1外向き旋削工具101bと同様の形状に形成されている。
【0060】
具体的には、第2内向き旋削工具102aの挿通穴102dは、後述する第2工具固定ボルト24dの頭部が嵌め込まれる部分が当該工具102aのうち先端部が屈曲している側の側面に開口するように形成されていて、前記第1内向き旋削工具101aの挿通穴101dと逆向きに形成されている。また、第2外向き旋削工具102bの挿通穴102dは、第2内向き旋削工具102aの挿通穴102dと同様に形成されている。
【0061】
そして、前記4つの第2工具保持部24は、ホルダ本体部20の周方向に等間隔で配設されている。各第2工具保持部24は、ホルダ本体部20の収容部32の外周面に形成された第2保持溝24aと、その第2保持溝24aに嵌め込まれる第2スペーサ24b及び第2押さえ部材24cと、複数の第2工具固定ボルト24dと、複数の第2押さえボルト24eとからなる。
【0062】
第2保持溝24aは、収容部32の外周面に工具ホルダ18の中心軸に対して平行な上下方向に直線的に延びるように形成され、収容部32の外周面及び上下両面に開口する溝部である。この第2保持溝24aは、前記第1保持溝22aと延びる方向が異なる以外はその第1保持溝22aと同様の形状を有している。この第2保持溝24a内の底面(第2保持溝24aの内面のうち収容部32の径方向外側に向かう面)には、前記第1保持溝22aの複数のボルト穴22gと同様の複数のボルト穴(図示せず)が形成されている。
【0063】
第2スペーサ24b、第2押さえ部材24c、第2工具固定ボルト24d及び第2押さえボルト24eは、第1スペーサ22b、第1押さえ部材22c、第1工具固定ボルト22d及び第1押さえボルト22eと同様の構造を有している。これらの第2スペーサ24b、第2押さえ部材24c、第2工具固定ボルト24d及び第2押さえボルト24eによる第2保持溝24a内での工具102の固定方法は、第1スペーサ22b、第1押さえ部材22c、第1工具固定ボルト22d及び第1押さえボルト22eによる第1保持溝22a内での工具101の固定方法と同様である。
【0064】
ホルダ側カービック26は、ホルダ本体部20の端板部36の上面に固定されている。このホルダ側カービック26は、本発明のホルダ側固定用係合部の概念に含まれるものである。ホルダ側カービック26は、中央に貫通穴を有する円板状に形成されており、工具ホルダ18の中心軸と同軸となるように配設されている。ホルダ側カービック26は、その上面に周方向に等間隔で形成された複数のホルダ側歯部26aを有する。このホルダ側歯部26aは、工具ホルダ18の中心軸から見て放射状に工具ホルダ18の径方向外側へ向かって直線的に延びるとともに上向きに突出している。
【0065】
ラム14は、ラム本体42と、支持軸部44と、クランプ部駆動機構46と、支持軸部駆動装置48とを備えている。
【0066】
ラム本体42(図2参照)は、第2鉛直移動軸方向(上下方向)に移動可能となるようにサドル10に支持されている。このラム本体42は、その内部に第2移動軸方向に延びる収容空間42aを有している。
【0067】
ラム本体42は、筐体51と、2つの軸受け56と、切替装置58とを有する。
【0068】
筐体51は、サドル10によって支持される本体部52と、その本体部52の下端から下向きに突設されている突設部54とを有する。ラム本体42の収容空間42aは、この筐体51内に設けられている。
【0069】
本体部52は、鉛直方向に延びる略直方体状の外形を有しており、中空に形成されている。突設部54は、本体部52と同軸となるようにその本体部52の下端から突設されている。この突設部54は、本体部52と同軸に配置された略円筒状の外装体54aと、その外装体54aの内部に同軸に配設された筒状の内装体54bとを有する。これら外装体54aと内装体54bは、共に本体部52の下端に固定されている。内装体54bは、円筒状の内周面を有しており、この内装体54b内の空間と本体部52内の空間は連続している。この内装体54b内の空間及び本体部52内の空間によって収容空間42aが構成されており、この収容空間42aに支持軸部44が上下方向に延びる姿勢で挿入されている。また、外装体54aの内周面と内装体54bの外周面との間には、スペースが形成されている。
【0070】
前記2つの軸受け56は、図6に示すように、突設部54の内装体54bの内側に設けられている。この2つの軸受け56は、上下方向に延びる支持軸部44をその軸回りに回転可能となるようにその外側から支持する。
【0071】
切替装置58は、支持軸部44の軸回りにおける工具ホルダ18の旋回を許容する旋回許容状態と、工具ホルダ18によって保持された各工具101,102の刃先101c,102cが水平移動軸方向においてワークの径方向内側又は径方向外側に向かうような支持軸部44の軸回りの複数の旋回位置で工具ホルダ18の旋回を阻止する旋回阻止状態とに切り替わるものである。なお、前記旋回位置は、工具が外側旋削用工具101a,102aである場合には、その工具101a,102aの刃先101c,102cがワークの旋削位置においてワークの径方向内側に向かうように配置される工具ホルダ18の旋回位置であり、工具が内側旋削用工具101b,102bである場合には、その工具101b,102bの刃先101c,102cがワークの旋削位置においてワークの径方向外側に向かうように配置される工具ホルダ18の旋回位置である。
【0072】
切替装置58は、ラム本体42の突設部54の内装体54bの下端面に設けられたラム側カービック62と、工具ホルダ18を第2鉛直移動軸方向において昇降させる昇降装置64とを有する。
【0073】
ラム側カービック62は、本発明のラム側固定用係合部の概念に含まれるものである。このラム側カービック62は、中央に貫通穴を有する円板状に形成されており、支持軸部44と同軸となるように配設されている。ラム側カービック62は、その下面に周方向に等間隔で形成された複数のラム側歯部62aを有する。各ラム側歯部62aは、放射状に支持軸部44の径方向外側へ向かって直線的に延びるとともに下向きに突出している。このラム側カービック62の複数のラム側歯部62aとホルダ側カービック26のホルダ側歯部26aは、支持軸部44の軸回りの複数の位置で互いに係合可能となっている。
【0074】
昇降装置64は、ホルダ側カービック26のホルダ側歯部26aがラム側カービック62のラム側歯部62aから離脱する高さ位置である離脱位置に工具ホルダ18を降下させて切替装置58を旋回許容状態(図7参照)とする一方、前記離脱位置よりも上方の位置でかつホルダ側カービック26のホルダ側歯部26aがラム側カービック62のラム側歯部62aに係合(噛合)する高さ位置である係合位置に工具ホルダ18を上昇させて保持することにより切替装置58を旋回阻止状態(図6参照)とする。
【0075】
具体的には、昇降装置64は、複数の昇降用コレット66と、コレット駆動部材68と、図略の油圧供給装置とを有する。
【0076】
複数の昇降用コレット66は、ラム本体42の突設部54の外装体54aの内周面と内装体54bの外周面との間のスペースに設けられており、内装体54bの周方向に所定間隔で配設されている。各昇降用コレット66は、その上部に外装体54aの径方向内側へ突出する係止部66aを有するとともに、その下端部に外装体54aの径方向内側へ突出する引掛部66bを有する。引掛部66bは、工具ホルダ18を上昇させる時にホルダ本体部20の前記端板部36のうち径方向外側に突出した外縁部を引っ掛けて引き上げるための部分である。
【0077】
コレット駆動部材68は、リング状に形成されており、外装体54aの内周面と内装体54bの外周面との間のスペースで上下方向に変位可能な状態で内装体54bに外嵌されている。このコレット駆動部材68は、その上部に設けられたピストン部68aと、そのピストン部68aから下方へ延びる作動部68bとを有する。
【0078】
ピストン部68aは、外装体54aの内周面と内装体54bの外周面との間のスペースのうち上部を占める油圧室54c内に上下方向に変位可能に収容されている。この油圧室54c内のうちピストン部68aの上下に位置するスペースには、それぞれ図略の油圧供給装置が接続されている。油圧供給装置から油圧室54c内のうちピストン部68aの上側のスペースに油圧が供給されると、その油圧によってコレット駆動部材68は下方へ駆動され、油圧供給装置から油圧室54c内のうちピストン部68aの下側のスペースに油圧が供給されると、その油圧によってコレット駆動部材68は上方へ駆動される。
【0079】
作動部68bの外周面には、当該作動部68bの周方向に延びる溝部68cが形成されており、この溝部68cに昇降用コレット66の係止部66aが係合されている。
【0080】
ワークを旋削するために工具ホルダ18がラム本体42に固定される時には、コレット駆動部材68が上方へ油圧駆動されて作動部68bが各昇降用コレット66を引き上げ、それに伴って各昇降用コレット66がその引掛部66bにより工具ホルダ18の端板部36を引き上げて工具ホルダ18を前記係合位置でクランプする。一方、ワークの旋削に用いる工具101,102の変更が行われる時には、コレット駆動部材68が下方へ油圧駆動されて各昇降用コレット66が降下し、それに伴って工具ホルダ18が自重により前記離脱位置に降下して工具ホルダ18がラム本体42に対して旋回可能となる。
【0081】
支持軸部44は、ラム本体42から下方に突出して工具ホルダ18を当該支持軸部44と同軸となるように支持する。
【0082】
具体的には、支持軸部44は、筒体72と、支持部74と、クランプ部76とを有している。
【0083】
筒体72は、略円筒状に形成されており、第2鉛直移動軸方向(上下方向)に延びるようにラム本体42の収容空間42aに挿入されている。この筒体72は、ラム本体42と同軸となるように配置されており、その軸回りに回転可能となるようにラム本体42の軸受け56によって外側から支持されている。筒体72の下端部の内周面は、上方へ向かうにつれて徐々に小径となっている。
【0084】
支持部74は、工具ホルダ18を支持する部分であり、ラム本体42から下方に突出している。この支持部74は、筒体72と別体に設けられており、筒体72内に下側から挿嵌されている。支持部74は、支持部本体82と、被係合部84と、結合部86とを有する。
【0085】
支持部本体82は、当該支持部本体82の下部に配置され、平たい円板状に形成された支持部本体基部82aと、その支持部本体基部82aから上方に突設された挿嵌部82bとを有する。
【0086】
支持部本体基部82aのうち挿嵌部82bの周りに位置する部位には、複数のピン88(図8参照)が設けられている。これらのピン88は、前記端板部36の各ピン穴36bにそれぞれ対応する位置に設けられている。各ピン88の上端部は、支持部本体基部82aの上面から突出している。なお、このピン88は、本発明の支持軸側接続用係合部の概念に含まれるものである。
【0087】
支持部本体基部82aの下面には、被係合部84が固定されている。この支持部本体基部82aと被係合部84は、前記収容部32の凹部32a内の底面と端板部36のうち凹部32aの径方向内側に延出された部分の下面との間で収容部32に対して軸方向(上下方向)に相対移動可能に凹部32a内に収容されている。
【0088】
被係合部84は、前記支持部係合部34の円筒部34bと係合する部分である。この被係合部84は、その軸心が収容部32(工具ホルダ18)の中心軸と一致するように配置され、下側が開口した環状の溝部84aを有しており、この溝部84aに円筒部34bが軸方向(上下方向)に相対移動可能となるように下側から挿嵌されている。このような構成により、工具ホルダ18は、支持部74に対して相対的にその軸方向(上下方向)に移動可能となっている。
【0089】
昇降装置64が工具ホルダ18を支持部74に対して降下させたときには、図9に示すように端板部36の各ピン穴36bに対応するピン88の上端部がそれぞれ挿嵌され、これにより、支持部74に対する工具ホルダ18の軸回りの旋回が阻止される。一方、昇降装置64が工具ホルダ18を支持部74に対して上昇させたときには、図8に示すように各ピン穴36bからピン88が離脱し、これにより、支持部74に対する工具ホルダ18の旋回の阻止が解除される。
【0090】
挿嵌部82bは、筒体72内に下から挿嵌される部分であり、端板部36の貫通穴36a及びホルダ側カービック26の中央の貫通穴を通って上方に延びている。この挿嵌部82bは、上端へ向かうにつれて徐々に小径となる円錐台状の部分を有しており、この部分の形状は、筒体72の下端部の上方へ向かうにつれて徐々に小径となる内周面に適合した形状となっている。挿嵌部82bのこの部分が筒体72の下端部内に下側から挿嵌される。
【0091】
結合部86は、クランプ部76によってクランプされる部分である。この結合部86は、挿嵌部82bの上端部から上方へ突出するように挿嵌部82bに取り付けられている。結合部86は、挿嵌部82bから突出した部分の軸方向の中間部位が小径となって括れているとともに上端部がその中間部位よりも大径であるような形状に形成されている。
【0092】
クランプ部76は、筒体72内に設けられ、その筒体72内に挿入された支持部74の結合部86をクランプするためのものである。このクランプ部76は、筒体72内に挿入された支持部74の結合部86を把持する把持状態とその結合部86を放す解放状態とに切り替わるように構成されている。
【0093】
具体的には、クランプ部76は、図2に示すように、複数の結合用コレット90と、クランプ用ロッド91と、バネ部材92とを有する。
【0094】
クランプ用ロッド91は、筒体72内で当該筒体72と同軸となるように上下方向に延びている。筒体72内においてクランプ用ロッド91の周りには、バネ部材92が配設されており、クランプ用ロッド91は、このバネ部材92によって上方に付勢されている。クランプ用ロッド91の下端(先端)には、コレット係止部91aが設けられている。コレット係止部91aは、図8に示すように、クランプ用ロッド91から下方に突出した直後に小径となって括れた小径部91bと、その小径部91bの下側に連続し、その小径部91bよりも大径の大径部91cとを有する。
【0095】
複数の結合用コレット90は、支持部74の結合部86をクランプする部材であり、筒体72内においてコレット係止部91aの周りに配設されている。各結合用コレット90は、その上端部に筒体72の径方向内側へ向かって突出する被係止部90aを有している。この被係止部90aは、コレット係止部91aの小径部91bの周りに嵌り込んでいる。また、各結合用コレット90は、その下端部に筒体72の径方向内側へ向かって突出する把持部90bを有する。この把持部90bは、クランプ用ロッド91が上方に引っ張られて結合用コレット90が引き上げられるのに伴って、支持部74の結合部86の小径部91bの外周面に当接するとともに当該結合部86の大径部91cを引っ掛けるようにして結合部86を把持する。これにより、クランプ部76は、前記把持状態となる。一方、把持部90bは、クランプ用ロッド91が下方に移動して結合用コレット90が押し下げられるのに伴って、結合部86から径方向外側に離反して結合部86を解放する。これにより、クランプ部76は、前記解放状態となる。また、各結合用コレット90のうち被係止部90aと把持部90bとの間の中間部90cは、把持部90bが結合部86を把持している状態では、下方へ向かうにつれて徐々に筒体72の径方向内側へ向かうように傾斜している。
【0096】
クランプ部駆動機構46(図2参照)は、クランプ部76を駆動するためのものであり、ラム本体42の本体部52内において支持軸部44の上側に設けられている。
【0097】
このクランプ部駆動機構46は、油圧シリンダ94と、シリンダロッド95と、図略の油圧供給装置とを備えている。
【0098】
油圧シリンダ94は、その内部にピストン部(図示せず)を有しており、このピストン部とシリンダロッド95の上端が結合している。ピストン部は、油圧供給装置から油圧シリンダ94に供給される油圧によって油圧シリンダ94内で上下に油圧駆動され、それに伴ってシリンダロッド95が上下に駆動される。シリンダロッド95は、クランプ用ロッド91と同軸となるようにそのクランプ用ロッド91の上端から上方へ延びている。シリンダロッド95の下端部は、クランプ用ロッド91が当該シリンダロッド95に対して軸回りに回転可能となるようにそのクランプ用ロッド91の上端部に係合している。このシリンダロッド95が上下に駆動されると、クランプ用ロッド91はシリンダロッド95と一体的に上下に移動する。クランプ部駆動機構46は、このようにクランプ用ロッド91を上下に移動させることによって、クランプ部76を駆動して当該クランプ部76を前記把持状態と前記解放状態とに切り替える。
【0099】
支持軸部駆動装置48は、工具ホルダ18を旋回させる際に支持軸部44をその軸回りに回転させるものである。この支持軸部駆動装置48は、ラム本体42の本体部52内に設けられており、サーボモータ97と、減速機98とを有する。
【0100】
サーボモータ97と減速機98は、ラム本体42の本体部52内において支持軸部44よりも上側の位置に設けられている。サーボモータ97の駆動軸は、減速機98に接続されており、サーボモータ97が駆動されることによりその駆動軸から減速機98に回転力が入力される。減速機98は、支持軸部44の筒体72に接続されており、サーボモータ97から入力された回転力を減速して筒体72に出力する。これにより、支持軸部44がその軸回りに回転させられるようになっている。
【0101】
次に、本実施形態による立旋盤においてワークの旋削に用いられる工具の変更が行われる際の動作について説明する。
【0102】
まず、切替装置58の昇降装置64が工具ホルダ18を前記係合位置から前記離脱位置へ降下させる。これにより、ラム側カービック62のラム側歯部62aとホルダ側カービック26のホルダ側歯部26aとの噛合が解除されるとともに、端板部36の各ピン穴36bに対応するピン88がそれぞれ挿嵌される。
【0103】
そして、支持軸部駆動装置48のサーボモータ97が駆動され、その駆動力が減速機98により減速されて筒体72へ入力される。これにより、支持軸部44は、その軸回りに回転する。ここで、支持軸部44の支持部74が各ピン88を介して工具ホルダ18と繋がっているため、工具ホルダ18は、支持軸部44とともにその軸回りに一体的に旋回する。そして、サーボモータ97は、工具ホルダ18に保持された工具101,102のうち次にワークの旋削に用いる工具がその工具に応じたワークの旋削姿勢(向き)に配置されるような旋回位置まで工具ホルダ18を旋回させて駆動を停止する。
【0104】
この後、昇降装置64が工具ホルダを前記係合位置へ上昇させる。これにより、ホルダ側カービック26のホルダ側歯部26aがラム側カービック62のラム側歯部62aに噛み合い、その状態で工具ホルダ18がラム本体42にクランプされる。
【0105】
このようにしてワークの旋削に用いられる工具の変更が行われる。
【0106】
以上説明したように、本実施形態の立旋盤は、ラム14の下端で支持された工具ホルダ18をワークの回転軸と平行に上下に延びる軸回りに回転させてワークを実際に旋削する工具を刃先101c,102cが外向きに突出するような姿勢で工具ホルダ18に保持されたいずれかの工具101,102に変更するように構成されているため、タレット型の工具ホルダがラムの下端部の側面に水平軸回りに回転可能となるように取り付けられた従来の立旋盤に比べて、工具ホルダ18及びその工具ホルダ18に保持された工具101,102のうちワークを実際に旋削する工具101(102)の刃先101c(102c)よりも下側に位置する部位を小さくすることができる。その結果、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことができる。しかも、本実施形態では、工具ホルダ18に保持された複数の工具101,102のうちのいずれかの工具にワークを実際に旋削する工具を変更することができるため、工具の変更のために工具の着脱を行わなくてもよいとともに、工具毎に個別に工具ホルダを用意しなくてもよく、ワークの加工時間の短縮及び立旋盤の部品点数の削減を図ることができる。従って、本実施形態では、ワークの加工時間の短縮及び部品点数の削減を図りつつ、上下方向におけるワークの加工可能な範囲の減少を防ぐことができる。
【0107】
また、本実施形態では、ラム本体42に設けられた切替装置58により、工具ホルダ18を旋回させてワークを旋削する工具の変更を実施できるようにしつつ、ワークの旋削時には、工具ホルダ18に保持された工具101(102)の刃先101c(102c)が水平移動軸方向においてワークの径方向内側又は径方向外側に向かうような姿勢でその工具101(102)を停止させて水平移動軸方向におけるワークの旋削を行うことができる。
【0108】
また、本実施形態では、切替装置58が旋回阻止状態である場合にラム側カービック62の複数のラム側歯部62aとホルダ側カービック26の複数のホルダ側歯部26aとが噛合するため、支持軸部44の軸回りの工具ホルダ18の旋回を強固に阻止することができる。その結果、ワークの旋削時に回転するワークから工具101(102)がワークの回転方向への大きな外力を受けたとしても、その外力に十分に対抗して工具101(102)が支持軸部44の軸回りに変位するのを確実に阻止することができる。
【0109】
また、本実施形態では、工具ホルダ18が離脱位置に降下した時には、工具ホルダ18のピン穴36bが支持軸部44の支持部74のピン88と係合して工具ホルダ18が支持軸部44に対して軸回りに旋回しないように固定されるため、支持軸部駆動装置48により支持軸部44を回転させて工具ホルダ18をその軸回りに旋回させることが可能となる。従って、本実施形態では、ワークの旋削時にはラム本体42に工具ホルダ18を固定してその工具ホルダ18に保持された工具101,102により正確なワークの旋削を行えるようにしつつ、ワークを旋削する工具101,102の変更時には工具ホルダ18を旋回させて別の工具101,102に変更することが可能な立旋盤を構成することができる。
【0110】
また、本実施形態では、クランプ部駆動機構46を作動させることによりクランプ部76を把持状態と解放状態とに切り替えて、ラム本体42に支持された筒体72に対する支持部74の着脱を行うことができる。このため、工具ホルダ18を支持部74ごと容易に交換することができ、工具ホルダの交換のために取り付けねじの脱着作業を行う必要があるような構成に比べて、工具ホルダ18の交換作業にかかる作業負担を軽減することができる。
【0111】
また、本実施形態では、工具ホルダ18が複数の第1工具保持部22と複数の第2工具保持部24とを有するため、工具ホルダ18に保持される工具の姿勢のバリエーションを増やすことができる。その結果、ワークの旋削の形態のバリエーションを増やすことができる。
【0112】
また、本実施形態では、第1工具保持部22が第1内向き旋削工具101a及び第1外向き旋削工具101bのいずれも保持可能であるとともに、第2工具保持部24が第2内向き旋削工具102a及び第2外向き旋削工具102bのいずれも保持可能であるため、円筒状の内周面及び外周面を有するワークをその径方向外側から径方向内側へ向かって旋削することができるとともに径方向内側から径方向外側へ向かって旋削することが可能な立旋盤を構成することができる。
【0113】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0114】
例えば、工具ホルダ18が複数の第1工具保持部22と複数の第2工具保持部24とのうちいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0115】
また、工具ホルダ18は、4つ以外の数の第1工具保持部及び/又は4つ以外の数の第2工具保持部を備えていてもよい。
【0116】
また、前記旋回許容状態と前記旋回阻止状態とに切り替わる切替装置は、上記構成以外の構成のものであってもよい。
【0117】
また、本発明の立旋盤は、円筒状の内周面及び外周面を有するワーク以外のワークを旋削するためにも用いることが可能である。例えば、ワークの外周面のみの旋削、ワークの内周面のみの旋削、ワークの上端面のみの旋削等を本発明の立旋盤によって行うことができる。この場合には、その旋削形態に適した工具を対応する工具保持部に装着してそのワークの旋削を行えばよい。
【符号の説明】
【0118】
4 ワーク回転装置
6 クロスレール
10 サドル
12 水平移送装置(第1移送装置)
14 ラム
18 工具ホルダ
22 第1工具保持部
24 第2工具保持部
26 ホルダ側カービック(ホルダ側固定用係合部)
26a ホルダ側歯部
36b ピン穴(ホルダ側接続用係合部)
42 ラム本体
42a 収容空間
44 支持軸部
46 クランプ部駆動機構
48 支持軸部駆動装置
58 切替装置
62 ラム側カービック(ラム側固定用係合部)
62a ラム側歯部
64 昇降装置
72 筒体
74 支持部
76 クランプ部
88 ピン(支持軸側接続用係合部)
101 工具
102 工具
101a 第1内向き旋削工具
101b 第1外向き旋削工具
102a 第2内向き旋削工具
102b 第2外向き旋削工具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを上下方向に延びる縦軸回りに回転させながら旋削加工する立旋盤であって、
ワークを下から支持しながら前記縦軸回りに回転させるワーク回転装置と、
前記ワーク回転装置の上方において当該ワーク回転装置によるワークの回転軸に垂直な第1移動軸方向に延びるクロスレールと、
前記クロスレールに沿って前記第1移動軸方向に移動可能となるように当該クロスレールに支持されるサドルと、
前記サドルを前記クロスレールに沿って前記第1移動軸方向に移送する第1移送装置と、
前記ワークの回転軸と平行な第2移動軸方向に移動可能となるように前記サドルに支持されるラムと、
前記ラムを前記第2移動軸方向に移送する第2移送装置と、
前記ラムの下端で支持され、ワークを旋削するための複数の工具がワークの回転軸と平行に延びる中心軸の周りに所定間隔で配置されるようにそれらの工具を保持するとともに、その各工具の刃先が前記中心軸から見て外向きに突出するような姿勢でそれらの工具を保持する工具ホルダとを備え、
前記ラムは、前記サドルに支持され、前記第2移動軸方向に延びる収容空間を内部に有するラム本体と、前記第2移動軸方向に延びる姿勢で前記収容空間に挿入されるとともにその軸回りに回転可能となるように前記ラム本体に外側から支持され、前記ラム本体から下方に突出して前記工具ホルダを同軸となるように支持する支持軸部と、前記ラム本体内に設けられ、前記支持軸部をその軸回りに回転させる駆動装置とを有する、立旋盤。
【請求項2】
前記ラム本体は、前記支持軸部の軸回りにおける前記工具ホルダの旋回を許容する旋回許容状態と、前記工具ホルダによって保持された各工具の刃先が前記第1移動軸方向においてワークの径方向内側又は径方向外側に向かうような前記支持軸部の軸回りの複数の旋回位置で前記工具ホルダの旋回を阻止する旋回阻止状態とに切り替わる切替装置を有する、請求項1に記載の立旋盤。
【請求項3】
前記切替装置は、前記ラム本体の下端に設けられたラム側固定用係合部と、前記工具ホルダを前記第2移動軸方向において昇降させる昇降装置とを含み、
前記工具ホルダは、その上端に設けられ、前記支持軸部の軸回りの複数の位置で前記ラム側固定用係合部に対して前記支持軸部の軸回りに旋回しないように前記第2移動軸方向において係合可能なホルダ側固定用係合部を有し、
前記昇降装置は、前記ホルダ側固定用係合部が前記ラム側固定用係合部から離脱する高さ位置である離脱位置に前記工具ホルダを降下させることにより前記切替装置を前記旋回許容状態とする一方、前記離脱位置よりも上方の位置でかつ前記ホルダ側固定用係合部が前記ラム側固定用係合部に係合する高さ位置である係合位置に前記工具ホルダを上昇させて保持することにより前記切替装置を前記旋回阻止状態とする、請求項2に記載の立旋盤。
【請求項4】
前記ラム側固定用係合部は、前記支持軸部の軸心の周りに所定間隔で配設され、前記支持軸部の径方向外側へ延びるとともに下向きに突出する複数のラム側歯部を有し、
前記ホルダ側固定用係合部は、前記工具ホルダの中心軸の周りに前記複数のラム側歯部と等しい間隔で配設され、前記工具ホルダの径方向外側へ延びるとともに上向きに突出し、前記支持軸部の軸回りの複数の位置で前記複数のラム側歯部と前記第2移動軸方向において噛合可能な複数のホルダ側歯部を有する、請求項3に記載の立旋盤。
【請求項5】
前記工具ホルダは、ホルダ側接続用係合部を有し、
前記支持軸部は、前記工具ホルダが前記離脱位置に降下することにより前記ホルダ側接続用係合部と係合して当該支持軸部に対する前記工具ホルダの旋回を阻止する支持軸側接続用係合部を有する、請求項3又は4に記載の立旋盤。
【請求項6】
前記支持軸部は、前記第2移動軸方向に延びるとともに前記収容空間に挿入され、その軸回りに回転可能となるように前記ラム本体に外側から支持された筒体と、前記筒体内に下側から挿入されるとともにその筒体から下方に突出するように設けられ、前記筒体の下側で前記工具ホルダを支持する支持部と、前記筒体内に設けられ、その筒体内に挿入された前記支持部を把持する把持状態とその支持部を放す解放状態とに切り替わるクランプ部とを有し、
前記ラム本体には、前記クランプ部が前記把持状態と前記解放状態との間で切り替わるようにそのクランプ部を駆動するためのクランプ部駆動機構が設けられている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の立旋盤。
【請求項7】
前記工具ホルダは、その中心軸の周りに所定間隔で配設され、工具が前記中心軸に対して垂直に延びるとともにその工具の刃先が当該工具ホルダの径方向外側へ向かうような姿勢で工具をそれぞれ保持する複数の第1工具保持部と、前記中心軸の周りに所定間隔で配設され、工具が前記中心軸に対して平行に延びるとともにその工具の刃先が下向きでかつ当該工具ホルダの径方向外側へ向かうような姿勢で工具をそれぞれ保持する複数の第2工具保持部とを有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の立旋盤。
【請求項8】
前記立旋盤は、円筒状の内周面及び外周面を有するワークの当該内周面及び外周面をそれぞれ旋削するために用いられ、
前記第1工具保持部によって保持される工具としては、ワークの径方向外側の位置でその刃先がワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの外周面を旋削する第1内向き旋削工具と、この第1内向き旋削工具と逆向きに刃先が設けられ、ワークの径方向内側の位置でその刃先がワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、上下方向に移送されてワークの内周面を旋削する第1外向き旋削工具とがあり、
前記第2工具保持部によって保持される工具としては、その刃先がワークの径方向内側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向外側から径方向内側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2内向き旋削工具と、この第2内向き旋削工具と逆向きに刃先が設けられ、その刃先がワークの径方向外側を向くような姿勢で配置され、ワークの径方向内側から径方向外側へ向かって移送されてワークの上端面を旋削する第2外向き旋削工具とがあり、
前記第1工具保持部は、前記第1内向き旋削工具と前記第1外向き旋削工具をいずれも保持可能に構成され、
前記第2工具保持部は、前記第2内向き旋削工具と前記第2外向き旋削工具をいずれも保持可能に構成されている、請求項7に記載の立旋盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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