説明

端子ブロック分離型電力量計用結線器

【課題】簡易な構成により、端子ブロック分離型電力量計本体の電圧端子、電流端子と試験装置の電源部とを容易に結線可能とする。
【解決手段】端子ブロック分離型電力量計本体51の電圧端子54a〜54c及び電流端子53a〜53dと電力量計本体51の電気的性能を試験する試験装置の電源部とを結線するための結線器において、前記電源部の電圧回路に接続され、かつ、電力量計本体51を結線器10にセットした際に電圧端子54a〜54cと接触する電圧端子結線部5a〜5cと、前記電源部の電流回路に接続され、かつ、電流端子53a〜53dと接離可能に形成された電流端子結線部8a〜8dと、電流端子結線部8a〜8dを移動させて絶縁性の板状部材である仕切り板9との間に電流端子53a〜53dを圧接し、電流端子結線部8a〜8dと電流端子53a〜53dとを接続するシリンダ6及び可動部6mからなる駆動部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子ブロック分離型電力量計本体の外部端子(電圧端子、電流端子)と前記電力量計本体の電気的性能を試験する試験装置の電源部とを結線するための結線器の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力量計は、端子ブロックと電力量計本体との関係において、端子ブロック一体型と端子ブロック分離型とに分けることができる。ここで、端子ブロック一体型の電力量計を、結線器を介して試験装置に接続し、電力量計の電気的性能を試験する場合には、例えば特許文献1に記載された結線器が用いられている。
【0003】
特許文献1に記載された結線器は、電力量計の底面(下面)に配置された円筒状の電流端子に割端子を挿入し、割端子内部の上下する押出しピンを上げ、割端子を開いて前記電流端子に接触させることで、試験装置の電源部から電力量計に電流を通流させている。また、押出しピンの動作に連動させて電圧外部端子を前後させることにより、前記電源部から電力量計に電圧を印加する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−185402号公報(段落[0023]〜[0043]、図1〜図5等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
端子ブロック一体型電力量計(以下、単に一体型電力量計ともいう)と端子ブロック分離型電力量計本体(同じく、分離型電力量計本体ともいう)とでは各外部端子の構造や配置が異なるため、特許文献1に記載されているような結線器をそのまま分離型電力量計本体に適用することが難しい。
以下に、分離型電力量計本体における外部端子構造、及び、分離型電力量計本体に結線器を接続する場合の課題について説明する。
【0006】
まず、図5(a)は端子ブロック分離型電力量計50の概略的な正面図、同(b)は電力量計本体51の底面図(下面図)であり、52は端子ブロック55が接続される端子ブロック接続部、53a〜53dは電流端子、54a〜54cは電圧端子を示している。
また、図6(a)は端子ブロック一体型電力量計60の概略的な正面図、同(b)は底面図(下面図)であり、61は電力量計本体、62は電力量計本体61と一体的に形成された端子ブロック、63a〜63dは電流端子、64a,64bは電圧端子を示している。
【0007】
図5(a),(b)に示すように、分離型電力量計本体51では、一般に電流端子53a〜53dが平板状に形成されており、図6(a),(b)の一体型電力量計60の電流端子63a〜63dのように円筒状ではないため、割端子を用いた開閉構造を採ることは困難である。
また、分離型電力量計本体51の電圧端子54a〜54cは、一体型電力量計60の電圧端子64a,64bのように側面に配置されておらず、電力量計本体51の底面に配置されている。更に、分離型電力量計本体51を前面から見ると、電圧端子54a〜54cは電流端子53a〜53dの奥(一部は背後)に配置されているため、電力量計本体51の前方から電圧端子54a〜54cに結線器を接続することが難しい等の問題がある。
【0008】
そこで、本発明の解決課題は、簡易な構成により端子ブロック分離型電力量計本体の電圧端子、電流端子と試験装置の電源部とを容易に結線可能とした端子ブロック分離型電力量計用結線器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、端子ブロック分離型電力量計本体の電圧端子及び電流端子と、前記電力量計本体の電気的性能を試験する試験装置の電源部と、を結線するための端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電源部の電圧回路に接続され、かつ、電力量計本体を前記結線器にセットした際に前記電圧端子と接触する電圧端子結線部と、
前記電源部の電流回路に接続され、かつ、前記電力量計本体を前記結線器にセットした際に前記電流端子と接離可能に形成された電流端子結線部と、
前記電流端子結線部を移動させてこの電流端子結線部と絶縁性の板状部材との間に前記電流端子を圧接し、前記電流端子結線部と前記電流端子とを接続するための駆動部と、を備えたものである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記電流端子結線部を覆う透明材料からなるカバーを備えたものである。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記電力量計本体を支持するレール状の支持具を前記カバーの上端部に固定すると共に、前記支持具の長手方向に移動可能な位置決め固定具により前記電力量計本体を位置決めし、固定するものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、前記電圧端子結線部を、前記電力量計本体から突設された電圧端子に適合して接触するように凹面状に形成したものである。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項4において、前記電圧端子結線部の平面形状を長円状に形成したものである。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1〜請求項5のいずれか1項において、前記絶縁性の板状部材の端部に、前記電力量計の電流端子を導入するためのテーパ加工を施したものである。
【0015】
請求項7に係る発明は、請求項1〜請求項6のいずれか1項において、前記電流端子結線部を、前記電力量計本体の電流端子よりも幅広に形成したものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、端子ブロック分離型電力量計本体を結線器にセットして電力量計本体の電圧端子と結線器の電圧端子結線部とを接触させ、更に、駆動部の動作によって移動する電流端子結線部により板状部材との間で電力量計本体の電流端子を圧接することで、電力量計本体の電流端子と結線器の電流端子結線部とを接触させることができる。
これにより、平板状の電流端子を備え、かつ、電流端子の背後に電圧端子が配置されているような端子構造の端子ブロック分離型電力量計本体に対し、簡単な構成によって電流端子及び電圧端子との接続を行うことができ、本発明に係る結線器を介して試験装置の電源部と端子ブロック分離型電力量計本体とを確実に接続することができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、電流端子結線部等の結線状態をカバーの外部から確認することができ、しかも、使用者が電流端子結線部等に接触して感電する心配もない。
また、請求項3に係る発明によれば、位置決め固定具をレール状の支持具の長手方向に移動させて電力量計本体の固定位置を調整可能であるため、メーカーや定格、端子部の形状、寸法等が異なる各種の端子ブロック分離型電力量計本体にも対応可能な結線器を得ることができる。
更に、電力量計本体をセットする際に、電力量計本体及び電流端子と結線器側の電流端子結線部との間に支持具が介在する位置関係としたので、電力量計本体または電流端子によって電流端子結線部を損傷するおそれもない。
【0018】
請求項4または請求項5に係る発明によれば、電力量計本体の電圧端子と結線器の電圧端子結線部とを広い接触面積にて接触させ、また、電力量計本体の電圧端子の形状、寸法等が若干異なる場合でも、これらの電圧端子に対し長円状の電圧端子結線部によって適合させることができる。
【0019】
請求項6または請求項7に係る発明によれば、電力量計本体の電流端子の導入が容易になり、また、幅が若干異なる電流端子であっても電流端子結線部に確実に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る結線器の正面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る結線器の平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る結線器の側面断面図(非結線時)である。
【図4】本発明の実施形態に係る結線器の側面断面図(結線時)である。
【図5】端子ブロック分離型電力量計の概略的な正面図(図5(a))及び電力量計本体の底面図(図5(b))である。
【図6】端子ブロック一体型電力量計の概略的な正面図(図6(a))及び底面図(図6(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る端子ブロック分離型電力量計用結線器の正面図であり、図2は平面図(上面図)、図3,図4は側面断面図である。なお、図3は非結線時、図4は結線時の状態を示している。
【0022】
まず、図1〜図4に示す端子ブロック分離型電力量計用結線器10は、図5に示したように、底面に電流端子53a〜53d及び電圧端子54a〜54cを備えた端子ブロック分離型電力量計本体51と試験装置(図示せず)の電源側とを結線するためのものである。
【0023】
図1、図2において、結線器10は、固定プレート1と、固定プレート1の前面に取り付けられた透明材料からなるカバー2とを備えている。
固定プレート1は、図示されていない試験装置に固定されていると共に、端子ブロック分離型電力量計50の電力量計本体51を固定するための板状部材であり、電力量計本体51を固定プレート1に斜め掛けした場合にもその重量を支えられるような強度を有している。なお、図3、図4に示すごとく、電力量計本体51は固定プレート1の前面に配置される。
【0024】
カバー2は、結線器10の使用者が後述する電流端子結線部8a〜8dに接触しないように電流端子結線部8a〜8dを外部から覆うものである。カバー2を透明材料にて形成することにより、結線状態の確認が容易になる。
カバー2の上部には切り欠きが設けられており、この切り欠きにはレール状の支持具3が固定されている。この支持具3は、その上に載置される電力量計本体51を支持するものであり、支持具3の長手方向に移動して任意の位置に固定可能な位置決め固定具4a,4bのストッパーを締めることで、電力量計本体51を所望の位置に位置決めする。これにより、電力量計本体51の電圧端子、電流端子が配置された端子部の形状や寸法が異なる場合でも、同一の結線器10により適用可能としている。
【0025】
電流端子7a〜7dは、試験装置の電源側(電流回路)に接続されていると共に、支持具3の下方において可動ブロック7に一体的に固定されている。電流端子7a〜7dの上端部は固定プレート1側に延設され、電流端子結線部8a〜8dを構成している。後述するが、可動ブロック7は、図2〜図4の矢印a方向(図1の紙面に対して直交する方向)に移動可能である。
図2に示すように、電流端子結線部8a〜8dと固定プレート1との間には、試験装置の電源側(電圧回路)と接続された電圧端子結線部5a〜5cが配置されている。
【0026】
更に、図3に示すように、固定プレート1の前面にはシリンダ6が固定され、その可動部6mには前記可動ブロック7が固定されている。ここで、シリンダ6及び可動部6mは、請求項における駆動部を構成している。
上記シリンダ6及び可動部6mの動作によって可動ブロック7が矢印a方向に移動し、電流端子7a〜7dひいては電流端子結線部8a〜8dがこれに連動する。
【0027】
図2及び図3において、5は電圧端子結線部5a〜5cが配置された電圧端子ブロックであり、その前面には絶縁性の仕切り板9が配置されている。電圧端子結線部5a〜5cは、電力量計本体51の底面に突設された電圧端子54a〜54cに線接触または面接触するように凹面状に形成され、電圧端子結線部5a〜5cと電圧端子54a〜54cとが広い面積で確実に接触するように考慮されている。更に、図2に示すごとく、電圧端子結線部5a〜5cの平面形状を長円状に形成することで、電力量計本体51の定格やメーカーに応じた電圧端子54a〜54cの配置や寸法の相違に対応可能である。
【0028】
次に、この実施形態の動作を図3、図4を参照しつつ説明する。
図3に示すように、電力量計50の電力量計本体51を支持部3の上面に載置し、電力量計本体51側の電圧端子54a〜54cが結線器10側の電圧端子結線部5a〜5cに合致するように、位置決め固定具4a,4bを用いて電力量計本体51を位置決めしつつ結線器10に固定する。このとき、電力量計本体51の底面から突設された電流端子53a〜53dは仕切り板9の前面に配置されると共に、間隙を介して、結線器10側の電流端子結線部8a〜8dの背後に位置しており、電流端子53a〜53dと電流端子結線部8a〜8dとは非結線状態である。なお、仕切り板9の上端部にテーパ加工を施すことにより、電流端子53a〜53dを円滑に導入することができる。
【0029】
この状態でシリンダ6を駆動すると、可動部6mが矢印a方向に移動する。これによって可動ブロック7及び電流端子結線部8a〜8dが同じ方向に移動し、図4に示すごとく電流端子53a〜53dを仕切り板9との間に挟み込んで圧接する。これにより、電力量計本体51の電流端子53a〜53dと結線器10の電流端子結線部8a〜8dとを確実に接触させることができる。
特に、電流端子53a〜53dの端面と電流端子結線部8a〜8dの表面とを面接触させることにより、接触面積を大きくし、確実な電気的接続状態を得ることができる。従って、試験装置と電力量計本体51との間で、本実施形態に係る結線器10を介して電圧の印加及び電流の通流を容易かつ確実に行うことが可能である。
【0030】
なお、本発明は、電力量計本体の底面から平板状の電流端子が突設され、その奥に電圧端子が配置されているような外部端子構造を持つ端子ブロック分離型電力量計本体であれば、上述した電力量計50に限らず適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1:固定プレート
2:カバー
3:支持具
4a,4b:位置決め固定具
5:電圧端子ブロック
5a〜5c:電圧端子結線部
6:シリンダ
6m:可動部
7:可動ブロック
7a〜7d:電流端子
8a〜8d:電流端子結線部
9:仕切り板
10:結線器
50:端子ブロック分離型電力量計
51:電力量計本体
52:端子ブロック接続部
53a〜53d:電流端子
54a〜54c:電圧端子
55:端子ブロック
60:端子ブロック一体型電力量計
61:電力量計本体
62:端子ブロック
63a〜63d:電流端子
64a,64b:電圧端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子ブロック分離型電力量計本体の電圧端子及び電流端子と、前記電力量計本体の電気的性能を試験する試験装置の電源部と、を結線するための端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電源部の電圧回路に接続され、かつ、電力量計本体を前記結線器にセットした際に前記電圧端子と接触する電圧端子結線部と、
前記電源部の電流回路に接続され、かつ、前記電力量計本体を前記結線器にセットした際に前記電流端子と接離可能に形成された電流端子結線部と、
前記電流端子結線部を移動させてこの電流端子結線部と絶縁性の板状部材との間に前記電流端子を圧接し、前記電流端子結線部と前記電流端子とを接続するための駆動部と、
を備えたことを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項2】
請求項1に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電流端子結線部を覆う透明材料からなるカバーを備えたことを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項3】
請求項2に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電力量計本体を支持するレール状の支持具を前記カバーの上端部に固定すると共に、前記支持具の長手方向に移動可能な位置決め固定具により前記電力量計本体を位置決めし、固定することを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電圧端子結線部を、前記電力量計本体から突設された電圧端子に適合して接触するように凹面状に形成したことを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項5】
請求項4に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電圧端子結線部の平面形状が長円状であることを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記絶縁性の板状部材の端部に、前記電流端子を導入するためのテーパ加工を施したことを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した端子ブロック分離型電力量計用結線器において、
前記電流端子結線部を、前記電流端子よりも幅広に形成したことを特徴とする端子ブロック分離型電力量計用結線器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−242325(P2011−242325A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116097(P2010−116097)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(309042071)東光東芝メーターシステムズ株式会社 (41)