説明

端末装置の電源切断方式

【目的】 本発明は端末装置とセンターシステムからなる設備制御システムにおいて、端末装置の電源を切断する方式に関し、端末装置単体の電源スイッチによる電源の投入/切断は行なわず、電源切断の可否をセンターシステムに委ねるようにした電源切断方式を提供することを目的とする。
【構成】 任意の端末装置20からの電源切断要求伝文と記憶装置101のテーブルからの対応する電源切断条件とは、センターシステム10内の照合手段102により照合され、電源切断の許可又は不許可を決定される。伝文返送手段103は上記の電源切断許可又は電源切断不許可の伝文を作成して端末装置20へ返送する。電源切断要求をした端末装置20は電源切断許可伝文を受信したときは電源切断手段202により自動的に電源を切断し、電源切断不許可伝文を受信したときは表示部203にその旨を表示する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は端末装置の電源切断方式に係り、特に端末装置とセンターシステムからなる設備制御システムにおいて、端末装置の電源を切断する方式に関する。
【0002】
【従来の技術】従来方式が適用される設備制御システムは例えば図8に示す如く、センターシステム1が多数の端末装置3に、通信回線2を介して接続された網である。端末装置3はターミナルステーション(TS)と称され、この設備制御システムがビル管理システムを構築している場合は、ビルの各階に配置される。端末装置3は各々例えば最大60程度の設備機器(以下、単に「設備」という)4が接続されている。
【0003】一方、センターシステム1は通信回線2に接続されたターミナルステーションコントローラ5と、このターミナルステーションコントローラ5に夫々接続されたマンマシンステーション6及びマスターステーション7とが、複数接続された、ローカルエリアネットワーク(LAN)構成とされている。
【0004】センターシステム1はビルの集中管理室などに設けられる。ターミナルステーションコントローラ5は端末装置3との間で通信を行ない、端末装置3を個々に制御すると共に、端末装置3からの設備4の情報を収集する。
【0005】マンマシンステーション6は設備4のオン/オフ、稼動状態、アラーム情報などを監視する表示装置及びキーボードであり、オペレータによって操作可能な構成とされている。マスターステーション7は或る一定時間毎にターミナルステーションコントローラ5をアクセスし、その記憶情報を収集及び記憶する。
【0006】かかる設備制御システムにおいて、保守などのために端末装置3の電源を切断する際には、従来は端末装置3の配下の設備4の接続条件を、端末装置3のオペレータが記憶を基に判断して電源切断可の場合に電源切断操作を行なっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、従来は端末装置3のオペレータの記憶誤りにより、端末装置3から制御信号を常時受信している設備4が配下に接続されている端末装置3のように、電源切断をしてはならない端末装置3に対しても電源を切断してしまい、設備4の制御を停止させるなど、ビル設備の運転に重大な支障をもたらす事故を発生させることがあった。
【0008】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、端末装置単体の電源スイッチによる電源の投入/切断は行なわず、電源切断の可否をセンターシステムに委ねることにより、上記の課題を解決した端末装置の電源切断方式を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の原理構成図を示す。請求項1記載の発明では、複数の端末装置20の各々が配下に設備30が接続されると共に、通信回線40を介してセンターシステム10に接続され、センターシステム10と複数の端末装置20との間で個別に通信を行なうシステムにおいて、センターシステム10は記憶装置101,照合手段102及び伝文返送手段103を有し、複数の端末装置20の各々は伝文発行手段201と電源切断手段202とを有する構成としたものである。
【0010】記憶装置101は端末装置20の各々のポイント毎に接続される設備30の電源切断条件をテーブルとして予め格納している。照合手段102は複数の端末装置20のうち任意の端末装置からの電源切断要求伝文と記憶装置101のテーブルからの対応する電源切断条件とを照合して電源切断の許可又は不許可を決定する。また、伝文返送手段103は上記の電源切断許可又は電源切断不許可の伝文を生成して、電源切断要求を送信した端末装置に返送する。
【0011】また、伝文発行手段201は電源切断要求の伝文をセンターシステム10に対して発行する。電源切断手段202はセンターシステム10から電源切断許可伝文が入力されたときに、自装置に対して電源を切断する。
【0012】請求項2記載の発明は、端末装置20の各々が、センターシステム10から電源切断不許可伝文が入力されたときに、その電源切断不許可伝文に基づいて電源切断不許可の理由と切断のために必要な処置を表示する表示部203を有するよう構成したものである。
【0013】請求項3記載の発明は、センターシステム10が照合手段102により電源切断不許可の照合結果が得られたときは、電源切断不許可を表示する表示部104を有するよう構成したものである。
【0014】請求項4記載の発明は、端末装置20の各々が、その配下の設備30の動作モードが変更されたときは、動作モードが変更された旨の伝文をセンターシステム10へ発行する動作モード変更伝文発行手段204を有する。
【0015】更に請求項5に記載した発明では、センターシステム10の照合手段102が、上記の設備30の動作モード変更を示す伝文が入力されたときに記憶装置101のテーブル中の対応する電源切断条件とを照合するようにしたものである。
【0016】
【作用】請求項1記載の発明では、複数の端末装置20の各々は自装置の電源の切断をする際は通信回線40を介して電源切断要求伝文をセンターシステム10に送信して電源切断の可否判断をセンターシステム10に委ねる。センターシステム10が照合手段102で照合を行なった結果、電源切断可能の照合結果が得られたときは、伝文返送手段103を介して電源切断許可伝文が電源切断を要求した端末装置20に発行されるため、その端末装置は電源切断手段202により自動的に電源を切断することができる。
【0017】また、請求項2記載の発明では、端末装置20が電源切断要求伝文を発行した場合に、センターシステム10から電源切断不許可伝文が返送されてきたときは、表示部203により電源切断不許可の原因と必要な処置を表示するようにしたため、端末装置20のオペレータに対して何らかの動作モード切替え操作が必要であることを通知することができる。
【0018】また、請求項3記載の発明では、センターシステム10が電源切断不許可を表示する表示部104を設けたため、センターシステム10のオペレータに対しても何等かの操作介入を要請することができる。
【0019】更に、請求項4及び5各記載の発明では、設備30の動作モード変更を示す伝文を動作モード変更伝文発行手段204によりセンターシステム10へ発行するようにし、またこの伝文を照合手段102で記憶装置101のテーブル中の対応するアドレスの電源切断条件と再度照合するようにしたため、設備30の動作モード変更後の電源切断要求に対して、センターシステム10が電源切断手段202による電源切断を自動的に行なわせることができる。
【0020】
【実施例】図2は本発明の一実施例の構成図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付してある。図2において、端末装置は例えば201 〜203 の3台が通信回線40を介してセンターシステム10に接続されている。センターシステム10と端末装置201 〜203とは通信回線40を介して公知のハイレベル伝送制御手順(HDLC)に従って通信を行なう。
【0021】センターシステム10内の記憶装置101内には端末装置201 〜203 のポイント毎に接続される設備(図2には便宜上、端末装置203 に接続されている設備30n のみを図示してある)の電源切断条件がテーブル11として設けられており、ここでは端末装置203 に接続されている設備30n のみ「手動モード変更」という電源切断条件がつけられているものとする。
【0022】また、センターシステム10内の表示部104は液晶などによる表示器12とキーボード13からなる。また、センターシステム10内の電源切断条件チェックプログラム14,I/O制御プログラム15,HDLC回線制御プログラム16,並びにそれらのプログラムにより動作するプロセッサなどにより照合手段102及び伝文返送手段103が構成されている。
【0023】一方、端末装置203 はHDLC回線制御プログラム21,伝文を発行したり電源切断コマンドを発行したりするプログラム及びそれらにより動作するプロセッサなどにより、前記した伝文発行手段201,電源切断手段202,動作モード変更伝文発行手段204が構成されている。
【0024】また、端末装置203 は制御監視回路22,動作モード受信部23及び電源24などを有し、スイッチ(SW)25及び表示器26に接続されている。表示器26は表示部203を構成している。他の端末装置201 ,202 も端末装置203 と同様の構成とされている。
【0025】更に、端末装置203 に接続された設備30n は動作モード切替信号発信部31,制御信号受信部32を有し、動作モード切替スイッチ(SW)33に接続されている。動作モード切替SW33は動作モードを切替える手動のスイッチで、オペレータにより操作される。
【0026】次に本実施例の動作について説明する。なお、以下の説明では端末装置203 とセンターシステム10との間の動作シーケンスについて説明するが、他の端末装置201 及び202 についても同様の動作シーケンスで処理されることは勿論である。
【0027】まず、電源切断許可時の動作について図2及び図3と共に説明する。オペレータが端末装置203 の切断要求SW25を押すと(図3のステップS1),端末装置203 内のプロセッサは切断要求信号処理を行ない、切断要求伝文を発信する(図3のステップS2)。この切断要求伝文のフォーマットは図3のステップS2で示すように、フォーマットの先頭のビットの切断要求フラグが“1”とされている。
【0028】上記の切断要求伝文がHDLC手順に従い、通信回線40を介してセンターシステム10に送信される。センターシステム10はこの切断要求伝文をHDLC手順に従い受信処理を行ない(図3のステップS3),更に電源切断条件チェックプログラム14により端末装置203 に接続されている設備の電源切断条件を、テーブル11の端末装置203 に相当するアドレスの電源切断条件と比較照合し、その結果条件を満足していると判定されると(図3のステップS4),電源切断許可伝文を発行する(図3のステップS5)。
【0029】上記の電源切断許可伝文のフォーマットは図3のステップS5に示すように、2ビット目の切断許可フラグが“1”となる。この電源切断許可伝文がHDLC回線制御プログラム16により公知のHDLC手順に従って通信回線40を介して前記した端末装置203 へ返送される。
【0030】端末装置203 のファームウェアはこの電源切断処理を行なった後(図3のステップS6),電源切断コマンドを生成し(図3のステップS7),自装置の電源24を切断する(同、ステップS8)。このように、本実施例によれば、端末装置203 のオペレータの記憶に無関係に、切断要求スイッチ(SW)25を押下げるだけで自動的に、しかも正確に電源を切断することができる。
【0031】次に電源切断不許可の動作について、図2及び図4乃至図7と共に説明する。まず、オペレータが端末装置203 の電源切断要求スイッチ(SW)25を押すと(図4のステップS11),図3と共に説明した電源切断許可時と同様に、端末装置203 による電源切断要求伝文のセンターシステム10への発信(図4のステップS12),センターシステム10による当該電源切断要求伝文の受信処理(図4のステップS13),電源切断条件テーブル中の端末装置203 の電源切断条件との比較照合(図4のステップS14)が順次に行なわれる。
【0032】ここで、ステップS14で電源切断条件を満足していない(例えば、端末装置203 の電源切断時には設備30n の動作モードが手動である必要があるのに、設備30n の動作モードは現在自動であるとき)と判定されたときは、センターシステム10は切断不許可伝文を作成して端末装置203 へ送信して(図4のステップS15),不許可要因(自動モード等)や設備のアドレス等を表示器12に表示させ(図4のステップS16),オペレータに何等かの操作介入を要請する(図4のステップS17)。
【0033】また、上記の切断不許可伝文のフォーマットは図4のステップS15に示すように3ビット目の切断不許可のフラグが“1”で、端末装置203 にて受信処理され(図4のステップS17),表示器26に不許可要因や必要な処置等を表示させる(図4のステップS18)。
【0034】端末装置203 はこの表示器26の表示を見て設備30n の動作モード切替SW33を押すことで、動作モード変更(手動)する(図4のステップS19)。これにより、設備30n の動作モード切替信号受信部31が端末装置203 に動作モード切替信号を送信する。端末装置203 はこの動作モード信号を動作モード受信部23で受信すると(図4のステップS20),動作モード変更処理を行ない図4のステップS21に示す如く第4ビット目の動作モード変更フラグが“1”の動作モード変更伝文を発生し、通信回線40を介してセンターシステム10へ送信する。
【0035】センターシステム10はこの動作モード変更伝文を受信すると(図4のステップS22),電源切断条件チェックプログラム14により、電源切断条件テーブル11中の端末装置203 に接続されている設備30n の電源切断条件と受信した動作モード変更伝文中の電源切断条件とが一致しているかを照合する(図4のステップS23)。
【0036】一致している場合は図5のステップS24に進み、センターシステム10は電源切断許可伝文を発行し、通信回線40を介して端末装置203へ送信する。端末装置203 はこの電源切断許可伝文を受信すると(図5のステップS24),電源切断コマンドを発信し(同、ステップS25),自装置の電源を切断する(同、ステップS26)。
【0037】一方、ステップS23で不一致と判定された場合は図6のステップS27へ進み、センターシステム10は電源切断不許可要因を含む電源切断不許可伝文を発行し、表示器12に表示する一方(図6のステップS28),通信回線40を介して端末装置203 へ送信する。端末装置203 はこの2回目の電源切断不許可伝文を受信すると(図6のステップS29),表示器26に不許可要因等を表示する(同、ステップS30)。
【0038】これにより、端末装置203 のオペレータは表示器26に表示されているモードに変更するべく再度設備30n の動作モード切替スイッチ33を操作し(図6のステップS31),動作モード信号を設備30n により端末装置203 へ送信させる(同、ステップS32)。
【0039】センターシステム10は上記の2回目の動作モード変更伝文を受信すると(図6のステップS34),電源切断条件チェックプログラム14により、設備30n の電源切断条件と受信した動作モード変更伝文中の電源切断条件とが一致しているかを再び照合する(図6のステップS35)。
【0040】不一致の場合は再びセンターシステム10は前記ステップS27の処理に戻る。一方、一致する場合はセンターシステム10による電源切断許可伝文の端末装置203 への発信(図7のステップS36),端末装置203 による電源切断許可伝文の受信処理(同、ステップS37),端末装置203 による電源コマンドの発信(同、ステップS38)が順次に行なわれ、最後に上記電源切断コマンドにより端末装置203 の電源24が切断される(同、ステップS39)。
【0041】
【発明の効果】上述の如く、本発明によれば、端末装置の電源切断をセンターシステム内の記憶装置に予め格納された電源切断条件テーブルと比較照合して、電源切断許可の照合結果が得られたときのみ自動的に電源を切断するようにしたため、オペレータの記憶に頼っていたために従来生ずることのあった端末装置の電源切断事故を完全に防止することができる。
【0042】また、電源切断不許可の場合は端末装置の表示部にその旨及び必要な処置を表示するようにして端末装置のオペレータに対して何らかの動作モードに切替える操作が必要であることを通知するようにしたため、所定の動作モードの切替え操作を行なうことで端末装置の電源を切断することができ、また、センターシステムに対しても上記の電源切断不許可を表示できるようにしたため、センターシステムのオペレータにも必要な操作の指示ができ、また更に本発明によれば、電源切断不許可に対して設備の動作モード変更により端末装置の電源を切断することができ、以上より設備制御システムの安全性、信頼性の向上に寄与するところ大である等の特長を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理構成図である。
【図2】本発明の一実施例の構成図である。
【図3】電源切断許可時の動作シーケンス図である。
【図4】電源切断不許可時の動作シーケンス図(その1)である。
【図5】電源切断不許可時の動作シーケンス図(その2)である。
【図6】電源切断不許可時の動作シーケンス図(その3)である。
【図7】電源切断不許可時の動作シーケンス図(その4)である。
【図8】従来方式が適用される設備制御システムの一例の構成図である。
【符号の説明】
10 センターシステム
20,201 ,202 ,203 端末装置
30,30n 設備
101 記憶装置
102 照合手段
103 伝文返送手段
104,203 表示部
201 伝文発行手段
202 電源切断手段
204 動作モード変更伝文発行手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の端末装置(20)の各々は配下に設備(30)が接続されると共に、通信回線(40)を介してセンターシステム(10)に接続され、該センターシステム(10)と該複数の端末装置(20)との間で個別に通信を行なうシステムにおいて、前記センターシステム(10)は、前記端末装置(20)の各々のポイント毎に接続される前記設備(30)の電源切断条件をテーブルとして予め格納している記憶装置(101)と、前記複数の端末装置(20)のうち任意の端末装置からの電源切断要求伝文と前記記憶装置(101)のテーブルからの対応する電源切断条件とを照合して電源切断の許可又は不許可を決定する照合手段(102)と、該照合手段(102)により決定された電源切断許可又は電源切断不許可の伝文を生成して前記電源切断要求を送信した端末装置に返送する伝文返送手段(103)とを有し、前記複数の端末装置(20)の各々は、電源切断要求の伝文を前記センターシステム(10)に対して発行する伝文発行手段(201)と、前記センターシステム(10)から電源切断許可伝文が入力されたときは自装置に対して電源を切断する電源切断手段(202)とを有することを特徴とする端末装置の電源切断方式。
【請求項2】 前記端末装置(20)の各々は、前記センターシステム(10)から前記電源切断不許可伝文が入力されたときは、該電源切断不許可伝文に基づいて電源切断不許可の理由と切断のために必要な処置を表示する表示部(203)を有することを特徴とする請求項1記載の端末装置の電源切断方式。
【請求項3】 前記センターシステム(10)は、前記照合手段(102)により電源切断不許可の照合結果が得られたときは、電源切断不許可を表示する表示部(104)を有することを特徴とする請求項1記載の端末装置の電源切断方式。
【請求項4】 前記端末装置(20)の各々は、その配下の設備(30)の動作モードが変更されたときは、動作モードが変更された旨の伝文を前記センターシステム(10)へ発行する動作モード変更伝文発行手段(204)を有することを特徴とする請求項1記載の端末装置の電源切断方式。
【請求項5】 前記センターシステム(10)の前記照合手段(102)は、前記動作モード変更伝文が入力されたときは、該伝文と前記記憶装置(101)のテーブル中の対応する電源切断条件とを照合することを特徴とする請求項4記載の端末装置の電源切断方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平5−80895
【公開日】平成5年(1993)4月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−240012
【出願日】平成3年(1991)9月19日
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)