説明

端面切削装置および端面切削方法

【課題】導光板の端面を切削するバイトに付着した切り屑を効率的に取り除くことができる端面切削装置および端面切削方法を提供すること。
【解決手段】本発明の端面切削装置は、導光板2の端面に沿って移動するバイト36によって導光板の端面を切削する端面切削装置であって、導光板を所定位置に固定する固定手段14と、固定手段によって固定された導光板の端面に沿って移動しながら導光板の端面を切削するバイトと、バイトの刃先のすくい面にエアを吹き付けるエア供給手段48と、を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面切削装置および端面切削方法に関し、詳細には、液晶表示装置等に使用される導光板の端面を切削する端面切削装置および端面切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置のバックライト等に使用される導光板は、バックライト等に組み付けられる前に、端面に発生したバリ、ゲートカット痕等の除去する端面切削加工を行う必要がある。
このような切削加工を行う装置としては、テーブルに水平に固定された導光板の端面に沿って、導光板の端面の板厚より幅広の切り刃を有するバイトを導光板の端面に沿って往復動させ、導光板の端面を切削加工する装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−260075号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイトによって導光板を切削したときに発生する切り屑は、導光板に付着して光学性能を悪化させたり、導光板を傷付けたりするので、速やかに取り除く必要がある。このため、特許文献1の装置では、テーブルの上部に配置されたノズルから、導光板の端面とバイトとの間に除電エアを吹き付けて、切り屑を除去している。
【0005】
しかしながら、切り屑は導光板に付着するのみならず、バイトの刃先にも付着する。この結果、バイトの刃先との間に切り屑を挟んだ状態で導光板の端面が切削され、局所的に鏡面化することがある。この鏡面は、導光板が組み込まれるバックライトに輝線または暗線を生じさせるため、端面に鏡面が形成された導光板は、品位が低くバックライト用の導光板として使用することができないという問題があった。
さらに、バイトの刃先に付着した切り屑が、摩擦熱で融着してバイトの刃先に構成刃先を形成し、この構成刃先によって切削面が鏡面化するという問題もあった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、導光板の端面を切削するバイトに付着した切り屑を効率的に取り除くことができる端面切削装置および端面切削方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、導光板の端面に沿って移動するバイトによって該導光板の端面を切削する端面切削装置であって、前記導光板を所定位置に固定する固定手段と、該固定手段によって固定された導光板の端面に沿って移動しながら前記導光板の端面を切削するバイトと、前記バイトの刃先のすくい面にエアを吹き付けるエア供給手段と、を備えていることを特徴とする端面切削装置が提供される。
【0008】
このような構成によれば、エア供給手段からバイトの刃先のすくい面にエアが吹き付けられるので、バイトのすくい面に付着した導光板の切り屑が速やか除去され、導光板の端面が切り屑を挟んだ状態で切削されること、およびバイトの刃先に構成刃先が形成されることが防止される。この結果、バイトに付着した切り屑に起因する導光板端面の鏡面化が防止される。
【0009】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記エア供給手段が、上方から前記すくい面にエアを吹き付ける。
このような構成によれば、エアで除去された切り屑が下方に落下するので、切り屑が確実かつ速やかに切削位置近傍から排除される。
【0010】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記エア供給手段が、前記バイトとともに前記導光板の端面に沿って移動しながら前記すくい面に向けてエアを吹き付ける。
このような構成によれば、エアが確実にバイトのすくい面に吹き付けられる。
【0011】
本発明の他の好ましい態様によれば、前記導光板の端面近傍の空気を下方から吸引する吸引手段と、を備えている。
このような構成によれば、バイトの刃先から除去された切り屑が確実に切削位置近傍から除去される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、導光板の端面に沿って移動するバイトによって前記導光板の端面を切削する端面切削方法であって、固定手段によって前記導光板を切削装置の所定位置に固定する工程と、前記導光板の端面に沿って移動するバイトのすくい面にエアを吹き付けながら、前記導光板の端面を前記バイトによって切削する工程と、を備えている、ことを特徴とする端面切削方法が提供される。
【0013】
このような構成によれば、エア供給手段からバイトの刃先のすくい面にエアが吹き付けられるので、バイトのすくい面に付着した導光板の切り屑が速やかに除去され、導光板の端面が切り屑を挟んだ状態で切削されること、および構成刃先が形成されることが防止される。この結果、バイトに付着した切り屑に起因する切削面の鏡面化が防止される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、導光板の端面を切削するバイトに付着した切り屑を効率的に取り除くことができる端面切削装置および端面切削方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態の端面切削装置について説明する。図1は、本発明の好ましい実施形態の端面切削装置1の側方からの斜視図であり、図2は、端面切削装置1の後方からの斜視図である。本実施形態の端面切削装置1は、液晶表示装置等に使用される断面くさび型の導光板の端面を切削するための装置であるが、本発明は他の用途で使用される導光板、他の形状の導光板、または板状光学部品の端面の切削する端面切削装置に適用することもできる。
【0016】
端面切削装置1は、端面が切削される導光板2が上面に載置される載置部材4、6を備えている。図1および図2に示されているように、載置部材4、6は、導光板2の幅より狭い間隔をおいて平行に配置された2本のレール状部材である。
【0017】
載置部材4、6の一端(前端)側には、載置部材4、6の上面に載置された導光板2を固定する固定機構8が設けられている。また、2本の載置部材4、6の間の空間には、載置部材4、6に載置された導光板2を載置部材4、6の他端(後端)から固定機構8に向けて押圧する押圧機構10が配置されている。さらに、固定機構8を挟んで、載置部材4、6と対向する位置には、載置部材4、6に載置された導光板2の端面切削を行う切削機構12が配置されている。
【0018】
固定機構8は、載置部材4、6上で所定位置に配置される導光板2の前端部の上下で対向するように配置された上側クランプ部材14と下側クランプ部材16とを備えている。上側クランプ部材14と下側クランプ部材16は、いずれも導光板2の幅よりも長い長さを有する矩形断面の棒状部材である。
【0019】
下側クランプ部材16は、上面16aが、載置台4、6の上面4a、6aと同一の高さ位置となるように端面切削装置1の本体に固定されている。また、上側クランプ14は、エアシリンダを備えた図示しない昇降機構によって、静止部材である下側クランプ部材16に対して上下動可能に構成されている。
上側クランプ14は、上方位置に配置されたときには、下側クランプ16との間に導光板2の厚さより広い間隔を形成し、また、下方位置に配置されたときには、下側クランプ16との間で導光板2の先端部を挟持して、載置部材4、6上に載置された導光板2を所定位置に固定することができるよう構成されている。
【0020】
図3は、固定機構8を切削機構12側から見た斜視図である。図3に示されているように、上側クランプ部材14および下側クランプ16の切削機構12側には、位置決め板18が配置されている。
【0021】
位置決め板18は、上下方向に延びる板部材であり、固定機構8(上側クランプ部材14および下側クランプ16)側に位置する位置決め面18aが、上側クランプ部材14の前側面14aから切削機構12側に距離dだけ離れて位置するように配置されている。dは1〜5mmが好ましい。
【0022】
さらに、位置決め板18は、下方に配置されたエアシリンダを含む駆動機構20によって、上端部分が下側クランプ部材16の上面の高さ位置より上方に突出する突出位置(図4)と、上端が下側クランプ部材16の上面の高さ位置より下方に位置する待避位置(図5)との間で上下動するように構成されている。
【0023】
押圧機構1は、図1および図2に示されているように、載置部材4、6の間で上側クランプ部材14と平行に延びるように配置された細長い押圧板22と、押圧板22を固定機構8方向に向けて前後動させるエアシリンダを備えた前後動機構24とを備えている。押圧板22は、上方部分22aが、少なくとも導光板2の厚さより大きく載置部材4、6の上面4a、6aより上方に突出する高さ位置に配置されている。
【0024】
前後動機構24は、載置部材4、6の上面4a、6aより下方に配置されており、内蔵されたエアシリンダの作用によって、押圧板22を、前記上側クランプ部材14の後側面14bから導光板2の長さ(奥行き)より長い距離だけ離れた後退位置(図4)と、前記上側クランプ部材14の後側面14bから導光板2の長さ(奥行き)より若干短い距離だけ離れた前進位置(図5)との間で前後動させることができるように構成されている。
【0025】
載置部材4、6の前端部の幅方向外方位置には、載置部材4、6に載置された導光板2の幅方向の位置決めを行う位置決め部材26、28が配置されている(図2)。位置決め部材26、28は、載置部材4、6の上面4a、6aの高さ位置より上方に延びる部材であり、図示しない駆動機構によって、上側クランプ部材14および下側クランプ部材16等と平行に配置されたレール30に沿って移動し、載置部材4、6に載置された導光板2の幅方向の位置決めを行うことができるように構成されている。
【0026】
固定機構8を挟んで、載置部材4、6と対向する位置に設けられた切削機構12は、導光板2の端面に沿って移動する切削ヘッド32と、切削ヘッド32を移動させるボールネジ35とを備えている。図6に模式的に示すように、切削ヘッド32には、導光板2の端面切削を行う2つのバイト、粗加工バイト34と仕上げバイト36が取付けられている。粗加工バイト34と仕上げバイト36は、切削する導光板2の先端面2aの高さ(厚さ)より大きな高さを備え、導光板2の先端面2aに当接した状態で端面に沿って導光板2の幅方向に移動することにより、先端面2a全体を切削加工することができるように構成されている。
【0027】
切削ヘッド32は、カップリング40を介してサーボモータ42に連結されたボールネジネジ35の回転によって、ボールネジ35に沿って配置された一対のレールガイド44、46に案内されながら移動することができるように構成されている。ボールネジ35、一対のレールガイド44、46は、上側クランプ部材14、下側クランプ部材16等と平行に配置されているので、切削ヘッド32の移動に伴って、各バイト34、36は上側クランプ部材14、下側クランプ部材16等と平行に移動することになる。
【0028】
切削機構12は、全体が駆動機構によって、粗加工バイト34または仕上げバイト36の刃先が載置部材4、6に載置された導光板2の先端面2aに接触し先端面2aの切削が可能となる切削位置(図5)と、粗加工バイト34または仕上げバイト36の刃先が載置部材4、6に載置された導光板2の先端面2aから離れて位置決め板18による導光板2の位置決めを可能にする非切削位置(図4)との間で移動可能に構成されている。
【0029】
切削ヘッド32には、さらに、エア吹き出し部材48が取付けられている。エア吹き出し部材48は、図示しない空気供給装置に接続されたパイプであり、先端のエア吹き出し口50から除電エア等の気体を仕上げバイト36の刃先のすくい面に上方から吹き付けるように構成されている。図4ないし図6に示されているように、エア吹き出し部材48の先端側部分は、仕上げバイト36の上方位置で切削ヘッド32に固定され、切削ヘッド32と共に移動するように構成されている。エア吹き出し部材48の先端は、仕上げバイト36の刃先のすくい面に向けて除電エア等の気体を吹き付けることができるように、下方に向かって折れ曲がっている。
【0030】
図4および図5に示されているように、端面切削装置1は、載置部材4、6に載置された導光板2の先端面2a近傍の空気を下方から吸引する吸引手段52を備えている。吸引手段52は、載置部材4、6に載置された導光板2の先端面2aの近傍から下方に向かって延びる略L字形のダクト54と、このダクト54を吸引する吸引装置56等から構成されている。
【0031】
図4ないし図6に示されているように、上側クランプ部材14および下側クランプ部材16の一端側に、第2のエア吹き出し部材58が設けられている。第2のエア吹き出し部材58は、エア吹き出し部材48と同様に、図示しない空気供給装置に接続されたパイプであり、除電エア等の気体を、切削される導光板2の先端面2a付近に上方向から向けて吹き付け、切り屑を先端面2a周辺から除去できるように構成されている。
【0032】
端面切削装置1の各部を駆動するエアシリンダ、サーボモータ42等は、マイクロコンピュータを備えた制御装置(図示せず)によって所望のタイミングで所望の量だけ駆動されるように構成されている。
【0033】
次に、端面切削装置1の作動を説明する。
まず、切削機構12を切削位置に、上側クランプ部材14を上方位置に、位置決め板18を突出位置に、押圧板22を後退位置に、位置決め部材26、28を外方位置にそれぞれ配置した状態で、載置部材4、6の上面4a、6aに端面切削を行う導光板2を載置する。
【0034】
次いで、前後駆動機構24によって押圧板22を前進位置に前進させて導光板2の後端面2bを押圧板22で押圧し、導光板2の先端面2aを突出位置に配置された位置決め板18の位置決め面18aに当接させて、載置部材4、6上の導光板2を前後方向に位置決めする。さらに、位置決め26、28を内方位置に移動させ、載置部材4、6上の導光板2を幅方向に位置決めする。
【0035】
次いで、上側クランプ部材14を降下させて下方位置に配置することにより、前後方向および幅方向に位置決めされた導光板2の先端部を上側クランプ部材14と下側クランプ部材16との間で挟持し、載置部材4、6上で固定する。このとき、上側クランプ部材14および下側クランプ部材16は、その前側面14a、16aが、導光板2の先端面2aから距離dだけ後退した位置で導光板2を挟持することになる。さらに、駆動機構20を作動させ位置決め板18を待避位置に降下させ、切削の準備が完了する。
【0036】
次いで、切削機構12を移動させる駆動機構を作動させ、切削機構12を非切削位置から切削位置に移動させる。このとき、切削機構12の位置は、使用するバイト36、38によって所望の切り込み深さの切削が行われるように調整される。
さらに、サーボモータ42によってボールネジ35を回転させ切削ヘッド32を導光板2の先端面2aに沿って移動させ、切削ヘッド32に取付けられたバイト36または38によって導光板2の先端面2aを切削する。
切削は、切削ヘッド32を導光板2の先端面に沿って複数回(例えば7ないし10回)にわたり往復動させながら行うのが好ましい。
【0037】
切削作業中、空気供給装置を作動させ、除電エアをエア吹き出し部材48のエア吹き出し口50から仕上げバイト36の刃先のすくい面に上方から吹き付け、さらに、除電エアを第2のエア吹き出し部材58から導光板2の先端面2a付近に向けて吹き付け、さらに、吸引手段56が作動され、ダクト54を通して導光板2の端面2aの近傍の空気が下方に向けて吸引される。
【0038】
この結果、エア吹き出し部材48から仕上げバイト36の刃先のすくい面に上方から吹き付けられた除電エアおよび第2のエア吹き出し部材58から吹き出して導光板2の先端面2aに上方から吹き付けられた除電エアは、吸引手段56によって下方に向かって吸引され、切削によって生じた切り屑は、この気体の流れによって、速やかに吸引装置54方向に流され、仕上げバイトの刃先のすくい面並びに導光板2の先端部近傍から除去される。
【0039】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で種々の変更、変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の好ましい実施形態の端面切削装置の側方からの斜視図である。
【図2】図1の端面切削装置の後方からの斜視図である。
【図3】端面切削装置の固定機構を切削機構側から見た斜視図である。
【図4】位置決め板が突出位置に切削機構が非切削位置にそれぞれ配置された状態での、固定機構、切削機構の各要素の相対位置を示す模式的な側面図である。
【図5】位置決め板が待避位置に、切削機構が切削位置に配置された状態での、固定機構、切削機構の各要素の相対位置を示す模式的な側面図である。
【図6】切削機構が切削位置に配置された状態での、固定機構、切削機構の各要素の相対位置を示す模式的な平面図である。
【符号の説明】
【0041】
1:端面切削装置
2:導光板
2a:導光板の先端面
4、6:載置部材
8:固定機構
10:押圧機構
12:切削機構
14:上側クランプ部材
16:下側クランプ部材
18:位置決め板
22:押圧板
32:切削ヘッド
34:粗加工バイト
36:仕上げバイト
42:サーボモータ
48:エア吹き出し部材
50:エア吹き出し口
52:吸引手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板の端面に沿って移動するバイトによって該導光板の端面を切削する端面切削装置であって、
前記導光板を所定位置に固定する固定手段と、
該固定手段によって固定された導光板の端面に沿って移動しながら前記導光板の端面を切削するバイトと、
前記バイトの刃先のすくい面にエアを吹き付けるエア供給手段と、を備えている、
ことを特徴とする端面切削装置。
【請求項2】
前記エア供給手段が、上方から前記すくい面にエアを吹き付ける、
請求項1に記載の端面切削装置。
【請求項3】
前記エア供給手段が、前記バイトとともに前記導光板の端面に沿って移動しながら前記すくい面に向けてエアを吹き付ける、
請求項1または2に記載の端面切削装置。
【請求項4】
前記導光板の端面近傍の空気を下方から吸引する吸引手段と、を備えている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の端面切削装置。
【請求項5】
導光板の端面に沿って移動するバイトによって前記導光板の端面を切削する端面切削方法であって、
固定手段によって前記導光板を切削装置の所定位置に固定する工程と、
前記導光板の端面に沿って移動するバイトのすくい面にエアを吹き付けながら、前記導光板の端面を前記バイトによって切削する工程と、を備えている、
ことを特徴とする端面切削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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