説明

端面加工偏光板の製造方法

【課題】延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、フィルムの剥離が生じることなく、かつ切削後の端面を良好な状態で仕上げる端面加工偏光板の製造方法を提供すること。
【解決手段】偏光フィルムと延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える偏光板が、複数枚積み重ねられている偏光板積層体の端面を切削加工して、端面加工偏光板を製造する方法であって、円柱状回転体と複数の切削刃とを備える切削回転体を用い、前記切削回転体を、その切削刃が前記偏光板積層体の切削加工されるべき端面を削り取るように当接させながら、その回転軸を中心に回転させ、前記偏光板積層体と前記切削回転体は、両者の当接部において、前者の切削加工されるべき端面長手方向を基準に、前者の移動方向と後者の回転方向とが逆向きとなるように、かつ前者に対する後者の相対移動速度が500mm/分以上2000mm/分以下となるように、相対的に移動させながら前記切削加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端面加工偏光板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費電力が低く、低電圧で動作し、軽量でかつ薄型の液晶表示装置が、携帯電話、携帯情報端末、コンピュータ用のモニター、およびテレビ等の情報用表示デバイスとして急速に普及している。さらに、液晶技術の発展に伴い、様々なモードの液晶表示装置が提案され、従来、応答速度、コントラスト、および視野角等の液晶表示装置の問題とされていた点が解消されつつある。
【0003】
一方で、液晶表示装置のさらなる薄型軽量化を望む強い市場要求を受けて、液晶表示装置を構成する液晶パネル、拡散板、バックライトユニット、および駆動IC等の薄型化や小型化が進められている。このような状況下、液晶パネルを構成する部材である偏光板も10μmの単位で薄型化することが求められている。そこで、偏光板の保護フィルムとして一般的に使用されているトリアセチルセルロースフィルムを、従来80μm〜120μmであったものからより薄いものへ代替することが行なわれている。
【0004】
しかし、トリアセチルセルロースフィルムを保護フィルムとした偏光板は、しばしば耐湿熱性や耐冷熱衝撃性に劣り、特に上記のように薄膜化された保護フィルムからなるものは、高温多湿または高低温繰り返し等の過酷な環境下で偏光性能の劣化を引き起こしたり、偏光フィルムが損傷を受けたりする場合があった。
【0005】
偏光板がしばしば耐湿熱性等に劣る理由としては、その構成要素であるトリアセチルセルロースフィルムの透湿度や吸水率が高いことが挙げられる。そこで、トリアセチルセルロースフィルムに代えて、上記薄肉化にも対応した、比較的低透湿性で低吸水性でもある延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとすることも検討されている(たとえば特許文献1)。
【0006】
一方、偏光板を液晶表示装置に用いる場合、所定の形状および寸法に裁断する必要があり、また、裁断時の圧力による粘着剤のはみだしを除去するために、裁断後に端面を加工する必要がある。
【0007】
上記の端面の加工方法については、例えば特許文献2に開示されている。特許文献2の端面加工方法では、円板状の回転体に切削刃が設置されており、シート部材の端面の垂線方向に沿って延びる回転軸を中心に回転させながら端面を切削している。
【0008】
しかしながら、特許文献2に示される形態での加工方法では、偏光板積層体の積層位置によって切削される状態が異なるため、上記延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとした偏光板積層体においては、積層位置によって一部、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの凝集剥離が生じ、積層枚数が限定されてしまう場合が見られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−157348号公報
【特許文献2】特開2007−223021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板において、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離が生じることなく、かつ切削後の端面を良好な状態で仕上げる端面加工偏光板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、その表面に接着剤を介して積層されている延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える偏光板が、複数枚積み重ねられている偏光板積層体の端面を切削加工して、端面加工偏光板を製造する方法であって、
前記偏光板積層体の切削加工されるべき端面に平行であって、厚み方向に平行にまたはある角度をもって回転軸が延びる円柱状回転体と、該円柱状回転体の側面の回転軸方向に沿って配設された複数の切削刃とを備える切削回転体を用い、
前記切削回転体を、その切削刃が前記偏光板積層体の切削加工されるべき端面を削り取るように当接させながら、その回転軸を中心に回転させ、
前記偏光板積層体と前記切削回転体は、両者の当接部において、前者の切削加工されるべき端面長手方向を基準に、前者の移動方向と後者の回転方向とが逆向きとなるように、かつ前者に対する後者の相対移動速度が500mm/分以上2000mm/分以下となるように、相対的に移動させながら前記切削加工を行う、
端面加工偏光板の製造方法が提供される。
【0012】
また、前記切削回転体を、その回転軸と偏光板積層体の厚み方向とのなす角度が25度以下となるように配置して、両者を相対的に移動させながら切削加工を行うことが好ましい。
【0013】
さらに、上記端面加工偏光板の製造方法においては、上記切削回転体の位置を固定し、偏光板積層体を移動させながら切削加工を行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを保護フィルムとする偏光板の端部剥がれを抑制しつつ、端面を良好な状態で仕上げることが可能な端面加工偏光板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の切削方法の具体的方法を示す図である。
【図2】本発明の切削方法の具体的方法を示す図(図1の実施形態の上部からみた図)である。
【図3】本発明の切削方法の具体的方法を示す図(別実施形態)である。
【図4】本発明の切削方法の具体的方法を示す図(別実施形態)である。
【図5】本発明でない切削方法の具体的方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<フィルムの端面加工方法>
本発明の具体的な実施形態について図1、2、3により説明する。図1は、本発明における偏光板積層体の端面加工方法の一例を示す概略図である。偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して積層された延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えた偏光板の積層体Wは、長方形のフィルムを重ね合わせた直方体形であり、押さえ具20、21により積層体を挟持し固定される。
【0017】
また、下押さえ具21には、積層方向zを中心として旋回する回転テーブル31が、上押さえ具20には上記旋回テーブル31と同方向に回転する押し具30が備えられており、上記旋回テーブル31と上記押し具30が同期して旋回させるようになっており、偏光板積層体Wを上下ずれることなく回転させることができる。
【0018】
図2は、図1に示す偏光板積層体の端面加工方法の一例を積層方向から見た図である。図2(a)に示す一例では、2つの切削刃を備えた回転体10、11が偏光板積層体の向かい合う両端辺41、42にそれぞれ設けられている。回転体10、11は、積層体Wの大きさに合わせてy方向に移動させることで切削量を任意に調整することができる。切削に当たっては、上記回転体10、11を固定した状態にて回転軸を中心に回転させ、偏光板積層体Wを加工装置により向かい合う回転体10、11の間を通過するようにx方向に水平移動させることで偏光板端辺41、42を同時に切削できる。
【0019】
また、偏光板積層体Wの他の2辺43、44については、図2(a)に示す上記切削加工後、図1に示す旋回テーブル31と上記押し具32により積層体Wを90度回転させ、図2(b)に示すように偏光板積層体Wをx方向に水平移動させることにより端面を切削できる。この際、2つの切削回転体10、11はy方向に移動させその間隔を切削量に合わせて調整すればよい。
【0020】
本発明の端面加工偏光板の製造方法では、切削回転体を、その切削刃が偏光板積層体の切削加工される端面を削り取るように当接させながら、その回転軸を中心に回転させ、前記偏光板積層体と前記切削回転体は、両者の当接部において、前者の切削加工される端面長手方向を基準に、前者の移動方向と後者の回転方向とが逆向きとなるように、相対的に移動させながら切削加工を行う。すなわち、図2(a)に示す一例においては、偏光板積層体Wの進行方向に対して切削回転体10は反時計回り、切削回転体11は時計周りに回転される。これにより偏光板端面の外観を損なわれることなく切削可能となる。
【0021】
本発明における端面加工偏光板の製造方法は図1、図2に示す方法に限定されるものではなく、例えば、図3に示すように偏光板積層体Wを固定した状態で切削回転体を回転させながら積層体端辺に沿って水平移動することで切削してもよい。この場合、図3に示すように、切削回転体10は反時計回り、切削回転体11は時計周りに回転しながら偏光板積層体Wの端辺41、42に沿って回転切削体を左方向に移動させればよく、また、偏光板積層体Wの他の2辺43、44についても積層体Wを90度回転させて同様に切削すればよい。ただし、加工装置の駆動制御の観点から、切削回転体の位置を固定し、偏光板積層体を水平移動させながら切削加工を行う方法が好ましい。
【0022】
さらに、図1、2、3に示す一例では、2つの回転体によって偏光板積層体を2辺同時に切削しているが、本発明における切削方法においては、これらに限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない限り、1つの回転体で切削してもよい。その場合、偏光板積層体の全周を切削するためには計4回実施する必要があることから、生産性の観点から図2に示すような前記2つの切削回転体を用いて行う方が好ましい。
【0023】
本発明の端面加工偏光板の製造方法においては、前記切削回転体に対する前記偏光板積層体の相対移動速度は500mm/分以上2000mm/分以下である。切削速度が500mm/分を下回る場合、偏光板積層体と切削刃との摩擦熱による端部焼付けおよび延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの剥離が生じ、また、切削速度が2000m/分を上回る場合は端面の仕上げが不十分となり偏光板端部にクラックが生じることがある。
【0024】
また、本発明の端面加工偏光板の製造方法において、切削回転体は、その回転軸と偏光板積層体の厚み方向とのなす角度が25度以下であることが好ましい。回転軸が25度を超える場合、偏光板積層体の有効切削範囲が小さくなり積層高さが制約される。切削刃の寿命、もしくは、積層される偏光板に粘着剤が備えられている場合の切削刃への粘着剤の付着の観点から、上記範囲内において、回転軸は傾斜していることが好ましい。
【0025】
前記回転切削刃による偏光板積層体端面の切削量は、特に限定されるものではないが、0.2mm以上10mm以下が好ましく、0.5mm以上5mm以下がより好ましい。切削量が0.2mmを下回る場合、切削精度が悪くなり、また、10mmを上回る場合は刃の劣化が著しくなるとともに端部への衝撃が大きくなるためクラックが生じやすくなる。
【0026】
前記切削刃を備えた回転体の切削時における回転速度は、特に限定されるものではないが、2000rpm以上8000rpm以下が好ましく、2500rpm以上6000rpm以下がより好ましい。2000rpmを下回る場合、偏光板積層体と切削刃との摩擦熱による端部焼付けが生じることがあり、また、8000rpmを上回る場合、偏光板端部にクラックが生じることがある。なお、切削回転体の直径は、5〜20cm程度である。
【0027】
<偏光板>
本発明の切削方法に用いられる偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して延伸ポリエチレンテレフタレートが積層されている。
【0028】
(偏光フィルム)
本発明に用いられる偏光フィルムは、特に限定されるものではないが、通常、公知の方法によってポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、およびホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造されるものである。
【0029】
ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、たとえば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、およびアンモニウム基を有するアクリルアミド類等が挙げられる。
【0030】
ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常、85〜100mol%程度であり、98mol%以上が好ましい。このポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、たとえば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマールおよびポリビニルアセタール等を用いることができる。また、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常、1,000〜10,000程度であり、1,500〜5,000程度が好ましい。
【0031】
このようなポリビニルアルコール系樹脂を製膜したものが、偏光フィルムの原反フィルムとして用いられる。ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。ポリビニルアルコール系原反フィルムの膜厚は、たとえば、10μm〜150μm程度とすることができる。
【0032】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素の染色前、染色と同時、または染色の後に行なうことができる。一軸延伸を染色の後で行なう場合には、この一軸延伸は、ホウ酸処理の前またはホウ酸処理中に行なってもよい。また、これらの複数の段階で一軸延伸を行なってもよい。
【0033】
一軸延伸にあたっては、周速の異なるロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また、一軸延伸は、大気中で延伸を行なう乾式延伸であってもよいし、溶剤を用い、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行なう湿式延伸であってもよい。延伸倍率は、通常、3〜8倍程度である。
【0034】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素が含有された水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素として、具体的には、ヨウ素や二色性染料が用いられる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0035】
二色性色素としてヨウ素を用いる場合は、通常、ヨウ素およびヨウ化カリウムを含有する水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液におけるヨウ素の含有量は、通常、水100重量部あたり0.01〜1重量部程度である。また、ヨウ化カリウムの含有量は、通常、水100重量部あたり0.5〜20重量部程度である。染色に用いる水溶液の温度は、通常、20〜40℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、20〜1,800秒程度である。
【0036】
一方、二色性色素として二色性染料を用いる場合は、通常、水溶性二色性染料を含む水溶液に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬して染色する方法が採用される。この水溶液における二色性染料の含有量は、通常、水100重量部あたり1×10-4〜10重量部程度であり、1×10-3〜1重量部程度が好ましい。この水溶液は、硫酸ナトリウム等の無機塩を染色助剤として含有していてもよい。染色に用いる二色性染料水溶液の温度は、通常、20〜80℃程度である。また、この水溶液への浸漬時間(染色時間)は、通常、10〜1,800秒程度である。
【0037】
二色性色素による染色後のホウ酸処理は、通常、染色されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬することにより行なうことができる。
【0038】
ホウ酸含有水溶液におけるホウ酸の量は、通常、水100重量部あたり、2〜15重量部程度であり、5〜12重量部が好ましい。二色性色素としてヨウ素を用いる場合には、このホウ酸含有水溶液はヨウ化カリウムを含有することが好ましい。ホウ酸含有水溶液におけるヨウ化カリウムの量は、通常、水100重量部あたり、0.1〜15重量部程度であり、5〜12重量部程度が好ましい。ホウ酸含有水溶液への浸漬時間は、通常、60〜1,200秒程度であり、150〜600秒程度が好ましく、200〜400秒程度がより好ましい。ホウ酸含有水溶液の温度は、通常、50℃以上であり、50〜85℃が好ましく、60〜80℃がより好ましい。
【0039】
ホウ酸処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、通常、水洗処理される。水洗処理は、たとえば、ホウ酸処理されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムを水に浸漬することにより行なうことができる。水洗処理における水の温度は、通常、5〜40℃程度である。また、浸漬時間は、通常、1〜120秒程度である。
【0040】
水洗後は乾燥処理が施されて、偏光フィルムが得られる。偏光フィルムの厚みは、通常、5〜40μm程度である。乾燥処理は、熱風乾燥機や遠赤外線ヒーターを用いて行なうことができる。乾燥処理の温度は、通常、30〜100℃程度であり、50〜80℃が好ましい。乾燥処理の時間は、通常、60〜600秒程度であり、120〜600秒が好ましい。
【0041】
乾燥処理によって、偏光フィルムの水分率は実用程度にまで低減される。その水分率は、通常、5〜20重量%であり、8〜15重量%が好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光フィルムの可撓性が失われ、偏光フィルムがその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光フィルムの熱安定性に劣る場合がある。
【0042】
(延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)
本発明に用いられる偏光板は、偏光フィルムの少なくとも一方の面に接着剤を介して延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層されている。積層される延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、特に限定されるものではないが、例えば、一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、その後引き続いて縦延伸し、次いで横延伸してなる一層以上の二軸延伸フィルム、または一種以上のポリエチレンテレフタレート系樹脂を溶融押出によって製膜し、横延伸してなる一層以上の一軸延伸フィルムを用いることができる。
【0043】
また、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、必要に応じて添加剤を含有することができる。添加剤としては、たとえば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤および耐衝撃性改良剤等が挙げられる。その添加量は、光学物性に悪影響を与えない範囲にとどめることが好ましい。さらに、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムには、必要に応じて片面、または両面に防眩層、導電層、ハードコート層、平滑化層、易滑化層、ブロッキング防止層、および易接着層等の機能層を積層することができる。中でも、この延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは偏光フィルムと接着剤層を介して積層されることから易接着層が積層されていることが好ましい。
【0044】
こうして得られる延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは、市販品を容易に入手することが可能であり、たとえば、それぞれ商品名で、「ダイアホイル」、「ホスタファン」、「フュージョン」(以上、三菱樹脂株式会社製)、「テイジンテトロンフィルム」、「メリネックス」、「マイラー」、「テフレックス」(以上、帝人デュポンフィルム株式会社製)、「東洋紡エステルフィルム」、「東洋紡エスペットフィルム」、「コスモシャイン」、「クリスパー」(以上、東洋紡績株式会社製)、「ルミラー」(東レフィルム加工株式会社製)、「エンブロン」、「エンブレット」(ユニチカ株式会社製)、「スカイロール」(エス・ケー・シー社製)、「コーフィル」(株式会社高合製)、「瑞通ポリエステルフィルム」(株式会社瑞通製)、および「太閤ポリエステルフィルム」(フタムラ化学株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
(保護フィルム、光学補償フィルム)
本発明に用いられる偏光板はまた、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された側とは反対側に、保護フィルムまたは光学補償フィルムが積層されていてもよい。保護フィルムまたは光学補償フィルムとしては、たとえばトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)などのセルロース系樹脂フィルム、オレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルムなどの透明フィルムが挙げられる。
【0046】
(接着剤層)
また、本発明に用いられる偏光板は、上述したように偏光フィルムの一方側に接着剤層を介して延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層され、また必要に応じて、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された側とは反対の面に保護フィルムまたは光学補償フィルムが積層される。これらのフィルム同士の貼合に用いられる接着剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂またはウレタン樹脂を用いた組成物を主成分として水に溶解したものまたは水に分散させた水系接着剤や光硬化性エポキシ樹脂と光カチオン重合開始剤などを含有する無溶剤の光硬化性接着剤が挙げられる。中でも、接着剤を乾燥させる工程が不要になる等、生産性向上の観点から、無溶剤の光硬化性接着剤が好ましい。なお、偏光フィルムの両面にそれぞれフィルムを貼合する場合、同種の接着剤を用いてもよく、また、それぞれ異種の接着剤を用いてもよい。
【0047】
(粘着剤層)
前記偏光板には、当該偏光板を液晶セル等の他部材に貼合するための、粘着剤層を設けることができる。このような粘着剤層に用いられる粘着剤としては、従来公知の適宜の粘着剤を特に制限なく用いることができ、たとえばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられる。中でも、透明性、粘着力、信頼性、リワーク性などの観点から、アクリル系粘着剤が好ましく用いられる。粘着剤層は、このような粘着剤を、たとえば有機溶剤溶液のかたちで用い、それを基材フィルム上にダイコータやグラビアコータなどによって塗布し、乾燥させる方法によって設けることができる他、離型処理が施されたプラスチックフィルム(セパレートフィルムと呼ばれる)上に形成されたシート状粘着剤を基材フィルムに転写する方法によっても設けることができる。粘着剤層の厚みについても特に制限はないが、一般に2〜40μmの範囲内であることが好ましい。
【0048】
(表面保護フィルム)
また、前記偏光板の最外面には、保護フィルムの損傷やほこりの付着を防ぐ目的で粘着剤層を有する表面保護フィルム(プロテクトフィルムと呼ばれる)も設けることができる。表面保護フィルムの構成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が挙げられるが、その中でも、透湿性や機械的強度の観点からポリエチレンテレフタレートの延伸フィルムが好ましい。
【0049】
表面保護フィルムに付与される粘着剤層は、特に限定されるものではなく、アクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリアミドやポリエーテル、フッ素系やゴム系など適宜なポリマーをベースポリマーとして用いることができる。また、表面保護フィルムに付与される離型処理層は、離形性を有するものであれば特に限定されるものではなく、硬化型シリコーン樹脂を主成分とするタイプでもよいし、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂等の有機樹脂とのグラフト重合等による変性シリコーンタイプ等を使用してもよいが、それらの中でも、硬化型シリコーン樹脂を主成分としたタイプが好ましい。また、表面保護フィルム上への形成についても、特に限定されるものではなく、適宜の方法で行うことができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、これらの例中、含有量ないし使用量を表す%および部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0051】
[延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを備えた端面加工用偏光板の製造例]
平均重合度約2400、ケン化度99.9モル%以上で厚み75μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の純水に浸漬した後、ヨウ素/ヨウ化カリウム/水の重量比が0.02/2/100の水溶液に30℃で浸漬した。その後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水の重量比が12/5/100の水溶液に56.5℃で浸漬した。引き続き8℃の純水で洗浄した後、65℃で乾燥して、ポリビニルアルコールにヨウ素が吸着配向された偏光フィルムを得た。延伸は、主に、ヨウ素染色およびホウ酸処理の工程で行い、トータル延伸倍率は5.3倍であった。
【0052】
上述のようにして得られた偏光フィルムの一方側に、厚み38μmの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを、偏光フィルムの延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが積層された側とは反対側には、厚み70μmの延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルムを、それぞれその貼合面にコロナ処理を施した後、光硬化型接着剤を介して接着して、偏光板を得た。
【0053】
次いで、得られた偏光板の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム外面に、粘着剤層を有するプロテクトフィルムを、また、延伸ノルボルネン系樹脂からなる光学補償フィルム外面には、厚み20μmのアクリル系粘着剤の層を設け、さらに、その粘着剤層外面に離型処理が施されたセパレートフィルムを貼り合せて、粘着剤層付き偏光板を得た。
【0054】
このようにして得られた前記粘着剤層付き偏光板は、707mm×401mmのサイズに裁断して切削加工用偏光板を得た。
【0055】
<実施例1>
前記製造例にて得られた切削加工用偏光板を400枚積層し、図2(a)および(b)に示す加工方法、すなわち、切削回転体10、11の位置を固定した状態にて回転軸を中心にそれぞれ、切削回転体10は反時計回り、切削回転体11は時計周りに回転させ、前記製造例にて得られた偏光板の積層体をx方向(図2の左矢印方向)に移動させて端面を切削した。
【0056】
また、その他の条件として、切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度は、1000mm/分、偏光板積層体端面の切削量は、各端面1.0mm、切削回転体の回転速度は、4800rpmとし、切削回転体を、その回転軸と偏光板積層体の厚み方向とのなす角度を0度になるように配置した。得られた偏光板に対して、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0057】
<実施例2>
切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度を、500mm/分とした以外は実施例1と同様に端面加工を行った。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0058】
<実施例3>
切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度を、2000mm/分とした以外は実施例1と同様に端面加工を行った。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0059】
<実施例4>
図4に示すように切削回転体の回転軸と偏光板積層体の厚み方向とのなす角度を25度になるように切削回転体を配置した以外は実施例1と同様に端面加工を行った。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0060】
<比較例1>
実施例1において、切削回転体10、11の回転方向を逆とした、すなわち、図2(a)および(b)において、切削回転体10は時計回り、切削回転体11は反時計周りに回転させた以外は実施例1と同様に端面加工を行った。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0061】
<比較例2>
切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度を、250mm/分とした以外は実施例1と同様に端面加工を行った。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した。評価結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
表1の結果からもわかるように、本発明における切削加工方法では、切削後の延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの剥がれおよび端面状態は、400枚の偏光板を積層した場合においても良好であった。一方、切削回転体と偏光板積層体が当接される部において、切削刃の回転方向と偏光板積層体の移動方向を同方向とした比較例1においては、剥がれの発生は見られていないものの、端部の白化、発塵が発生した。また、切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度を250mm/分とした比較例2においては、剥がれの発生とともに、摩擦熱による端部変色が見られた。
【0064】
<比較例3>
前記製造例にて得られた切削加工用偏光板を400枚積層し、図5に示す端面加工方法、すなわち、円周部分に積層体端面側に突き出た切削刃が設けられた円盤状の回転体が、その回転体の位置は固定された状態にて偏光板積層体端面の垂線方向に沿って延びる回転軸を中心に回転させながら、偏光板積層体をx方向に移動させて端面を切削した。端面加工条件として、切削回転体に対する偏光板積層体の移動速度は、1000mm/分、偏光板積層体端面の切削量は、各端面1.0mm、切削回転体の回転速度は、4800rpmとした。得られた偏光板に対して、実施例1と同様に、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれ有無および端面外観を評価した結果、端面外観は良好であったが、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの端部剥がれが、積層上部の偏光板において発生した。
【符号の説明】
【0065】
10、11 本発明に用いられる切削回転体
12、13 本発明に用いられない円盤状切削回転体
20 上部押さえ具
21 下部押さえ具
30 押し具
31 旋回テーブル
41、42、43、44 偏光板積層体端面
W 偏光板積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光フィルムと、その表面に接着剤を介して積層されている延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える偏光板が、複数枚積み重ねられている偏光板積層体の端面を切削加工して、端面加工偏光板を製造する方法であって、
前記偏光板積層体の切削加工されるべき端面に平行であって、厚み方向に平行にまたはある角度をもって回転軸が延びる円柱状回転体と、該円柱状回転体の側面の回転軸方向に沿って配設された複数の切削刃とを備える切削回転体を用い、
前記切削回転体を、その切削刃が前記偏光板積層体の切削加工されるべき端面を削り取るように当接させながら、その回転軸を中心に回転させ、
前記偏光板積層体と前記切削回転体は、両者の当接部において、前者の切削加工されるべき端面長手方向を基準に、前者の移動方向と後者の回転方向とが逆向きとなるように、かつ前者に対する後者の相対移動速度が500mm/分以上2000mm/分以下となるように、相対的に移動させながら前記切削加工を行う、
端面加工偏光板の製造方法。
【請求項2】
切削回転体を、その回転軸と偏光板積層体の厚み方向とのなす角度が25度以下となるように配置して、両者を相対的に移動させながら切削加工を行う、請求項1に記載の端面加工偏光板の製造方法。
【請求項3】
切削回転体の位置を固定し、偏光板積層体を移動させながら切削加工を行う、請求項1または2に記載の端面加工偏光板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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