説明

竹の地下茎枯殺方法及び地下茎枯殺作業具

【課題】竹の子(筍)の発生を防止し不用な竹の増殖を抑制する竹の地下茎枯殺方法及び地下茎枯殺作業具を提供する。
【解決手段】地面G上に露出した竹の切株40の上端中央部に、上端にグリップ部22を有する串状の穿孔部材2を槌3で叩いて打ち込んで切株40の稈節41の隔壁部42に貫通孔部4を次々に形成し、グリップ部22を手で把持して穿孔部材2を切株40から引き抜き、切株40の上端開口部40aに地下茎43を枯死させる液剤を注入し、貫通孔部4を通して切株40の下部44まで到達させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竹の地下茎枯殺方法及び地下茎枯殺作業具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、竹林の繁茂を防止するために、不用な竹を伐採して処理する方法が採られてきた。
そこで、本発明の出願人は、竹を地面に近い位置で切断できる伐採機を提案している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−171947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、竹は、地面の下を這う地下茎を介して竹の子(筍)を発生し、毎年のように繁茂する植物であり、従来のように地面の上の竹を伐採する方法では、地下茎の成長を阻止することができないため、翌年の竹の子(筍)の発生を抑制することができなかった。
【0005】
そこで、本発明は、竹の子(筍)の発生を防止し不用な竹の増殖を抑制する竹の地下茎枯殺方法及び地下茎枯殺作業具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る竹の地下茎枯殺方法は、地面上に露出した竹の切株の上端中央部に、上端にグリップ部を有する串状の穿孔部材を槌で叩いて打ち込んで上記切株の稈節の隔壁部に貫通孔部を次々に形成し、上記グリップ部を手で把持して上記穿孔部材を上記切株から引き抜き、上記切株の上端開口部に上記地下茎を枯死させる液剤を注入し、上記貫通孔部を通して上記切株の下部まで到達させる方法である。
【0007】
また、上記液剤を注入した後、上記切株の上から防水用の閉栓部材を被せて上記貫通孔部を閉塞する方法である。
また、上記槌により上記穿孔部材を打ち込んで上記隔壁部に横断面多角形状乃至星形状の貫通孔部を形成し、上記手により上記穿孔部材を捩じって該貫通孔部を円形に拡大して引き抜く方法である。
また、上記液剤が、塩化ナトリウム水溶液である方法である。
【0008】
また、本発明に係る地下茎枯殺作業具は、竹を伐採した後の切株に突き刺して稈節の隔壁部に貫通孔部を形成する串状の穿孔部材と、該穿孔部材を叩いて上記切株に打ち込むための槌と、を備え、上記穿孔部材が、先端部を上記切株の下部に達するような長さ寸法を有する串本体部と、該串本体部の基端部に固着されたグリップ部とを、有するものである。
【0009】
また、上記穿孔部材の串本体部を断面多角形状乃至星形状に形成したものである。
また、上記槌は、ヘッド部から握り柄部にわたって上記穿孔部材を収納可能な挿入孔部が形成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の竹の地下茎枯殺方法によれば、竹の切株の地下茎を確実に枯死させて、成長を阻止することができる。
【0011】
また、本発明の地下茎枯殺作業具によれば、伐採した竹の切株の下部まで液剤を到達させることができ、確実に地下茎を枯死させて成長を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の竹の地下茎枯殺方法の実施の一形態を示した断面側面図である。
【図2】竹の地下茎枯殺方法を示した断面側面図である。
【図3】竹の地下茎枯殺方法を示した断面側面図である。
【図4】竹の地下茎枯殺方法を示した断面側面図である。
【図5】本発明の地下茎枯殺作業具の実施の一形態を示した斜視図である。
【図6】穿孔部材の一例を示した要部断面図である。
【図7】穿孔部材の他の例を示した要部断面図である。
【図8】成長抑制地帯を示した説明用簡略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
まず、本発明の地下茎枯殺作業具について説明する。
図1,図2及び図5に示すように、地下茎枯殺作業具1は、竹を伐採した後の切株40に突き刺して稈節41の隔壁部42に貫通孔部4を形成する串状の穿孔部材2と、穿孔部材2を叩いて切株40に打ち込むための槌3とを、備えている。
穿孔部材2は、先端部21を鋭利に尖らせた細い棒状であって、切株40の下部44に達するような長さ寸法Lを有する串本体部20を備えている。串本体部20は、基端部23に、槌3の叩きを受けるための頭20aを有し、頭20a寄りに人の手Hにて把持しやすい太さの丸棒(円柱)状であって両端部22a,22bを左右方向に突出し串本体部20と十字を成すグリップ部22を固着している。
槌3は、金属製のヘッド部31を有するハンマーであり、握り柄部32を合成樹脂部材で被覆している。槌3には、ヘッド部31から握り柄部32にわたって挿入孔部30が形成されている。挿入孔部30は、ヘッド部31の上端中央部に開口する細長の空洞であり、穿孔部材2の先端部21からグリップ部22までを挿入して収納可能としている。
【0014】
図6に示すように、穿孔部材2は、串本体部20を断面視正六角形状に形成している。串本体部20は、外周面に複数のエッジ24…を有している。なお、串本体部20は、外接円が略真円形であって断面形状が複数のエッジ24…を有する多角形状であれば、適宜設計変更可能とし、断面視四角形状に形成するもよく、又は、鋭く尖ったエッジ24…を有する断面視星形状(図7参照)に形成するもよい。
【0015】
次に、本発明の竹の地下茎枯殺方法(上述した地下茎枯殺作業具の使用方法)について説明する。
図1に示すように、地面G上に露出した竹の切株40の上端中央部に、上端にグリップ部22を有する串状の穿孔部材2を槌3で叩いて打ち込んで切株40の稈節41の隔壁部42に貫通孔部4を次々に形成する。この際、槌3により打ち込まれる穿孔部材2は、隔壁部42に正六角形状(星形状)の貫通孔部4を形成する。穿孔部材2は、鋭利に尖った先端部21にて隔壁部42を突き破り、稈節41に割れを発生させることなく切株40の下部44に達する。切株40は、地面Gから深くなるにつれて次第に稈節41の間隔が狭くなり、隔壁部42に貫通孔部4を貫通形成するのに大きな力が必要となるが、槌3で頭20aを叩くことで、穿孔部材2が下部44に確実に達するまで打ち込まれる。
図2に示すように、グリップ部22を手Hで把持して穿孔部材2を切株40から引き抜き、切株40の上端開口部40aから下部44までを連通状とする。この際、手Hにより穿孔部材2を捩じり軸心N廻りに捩じって、串本体部20のエッジ24…により貫通孔部4を円形に拡大する。貫通孔部4は、図6及び図7に2点鎖線にて示すように、串本体部20の外接円状に形成される。
穿孔部材2は、槌3により打ち込まれた際に隔壁部42(貫通孔部4)に挟圧され引抜きにくくなっているが、貫通孔部4を円形に拡大することで串本体部20と隔壁部42との接触面積を減少させ、引抜きが容易となる。また、穿孔部材2は、グリップ部22の両端部22a,22bを左右方向に突出しているため、テコの原理を利用して捩じることができ、貫通孔部4の拡大を容易に行える。
【0016】
次に、図3に示すように、切株40の上端開口部40aに液剤Sを注入する。液剤Sは、無毒で、かつ、土壌を汚染する虞のない(高濃度の)塩化ナトリウム水溶液を用いるのが望ましい。液剤Sは、貫通孔部4を通して切株40の下部44まで到達する。なお、塩化ナトリウム水溶液は、溶解度に達した飽和状態乃至溶解度近くまで濃度を高めた高濃度の溶液とするのが好ましく、予め加熱して高濃度の塩化ナトリウム水溶液を調整するも好ましい。
図4に示すように、液剤Sを注入した後、切株40の上から防水用の閉栓部材5を被せて貫通孔部4を閉塞するも好ましい。閉栓部材5は、ゴムや合成樹脂等から成り、切株40の上端開口部40aから雨水が浸入して液剤Sを希釈するのを防止し、かつ、液剤Sの溶液の蒸発を抑制する。
液剤Sは、切株40の中に滞留し、その後、竹の蒸散作用により下部44から吸い上げられて地下茎43を枯死させる。
【0017】
図8に示すように、本発明の地下茎枯殺方法は、半径Rが3m〜5mの成長抑制地帯6毎に施行するのが望ましい。液剤Sは、切株40を中心として半径Rが3m〜5mの範囲にわたって地下茎43を枯死させ、周囲の竹を枯らす。複数の成長抑制地帯6…の切株40…に対して適切に処理作業を行なうことにより、より広い範囲の竹林の成長を効果的に抑制することが可能である。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更が可能である。
【0018】
以上のように、本発明の竹の地下茎枯殺方法によれば、地面G上に露出した竹の切株40の上端中央部に、上端にグリップ部22を有する串状の穿孔部材2を槌3で叩いて打ち込んで切株40の稈節41の隔壁部42に貫通孔部4を次々に形成し、グリップ部22を手Hで把持して穿孔部材2を切株40から引き抜き、切株40の上端開口部40aに地下茎43を枯死させる液剤Sを注入し、貫通孔部4を通して切株40の下部44まで到達させるので、竹の切株40の地下茎43を確実に枯死させて、成長を阻止することができる。即ち、翌年の竹の子(筍)の発生を抑制し、年毎に竹を伐採する手間を省くことができる。
【0019】
また、液剤Sを注入した後、切株40の上から防水用の閉栓部材5を被せて貫通孔部4を閉塞するので、切株40の上端開口部40aから雨水が浸入して液剤Sが薄まるのを防止でき、かつ、液剤Sの溶液の蒸発を抑制でき、より確実に地下茎43の成長を阻止することができる。
【0020】
また、槌3により穿孔部材2を打ち込んで隔壁部42に横断面多角形状乃至星形状の貫通孔部4を形成し、手Hにより穿孔部材2を捩じって貫通孔部4を円形に拡大して引き抜くので、人の手Hにて小さな力で容易に引抜くことができる。
【0021】
また、液剤Sが、(高濃度の)塩化ナトリウム水溶液であるので、人体に無害で、薬害を発生させず、環境を汚染することがなく安全である。しかも、安価で容易に調製できる。
【0022】
また、本発明の地下茎枯殺作業具によれば、竹を伐採した後の切株40に突き刺して稈節41の隔壁部42に貫通孔部4を形成する串状の穿孔部材2と、穿孔部材2を叩いて切株40に打ち込むための槌3とを、備え、穿孔部材2が、先端部21を切株40の下部44に達するような長さ寸法Lを有する串本体部20と、串本体部20の基端部23に固着されたグリップ部22とを、有するので、切株40の下部44まで液剤Sを到達させることができ、確実に地下茎43を枯死させて成長を阻止することができる。
【0023】
また、穿孔部材2の串本体部20を断面多角形状乃至星形状に形成したので、人の手Hにて小さな力で容易に引抜くことができる。
【0024】
また、槌3は、ヘッド部31から握り柄部32にわたって穿孔部材2を収納可能な挿入孔部30が形成されているので、穿孔部材2を槌3に収納して持ち歩くことができ、作業効率を低下させない。
【符号の説明】
【0025】
2 穿孔部材
3 槌
4 貫通孔部
5 閉栓部材
20 串本体部
21 先端部
22 グリップ部
23 基端部
30 挿入孔部
31 ヘッド部
32 握り柄部
40 切株
40a 上端開口部
41 稈節
42 隔壁部
43 地下茎
44 下部
G 地面
H 手
S 液剤
L 長さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面(G)上に露出した竹の切株(40)の上端中央部に、上端にグリップ部(22)を有する串状の穿孔部材(2)を槌(3)で叩いて打ち込んで上記切株(40)の稈節(41)の隔壁部(42)に貫通孔部(4)を次々に形成し、上記グリップ部(22)を手(H)で把持して上記穿孔部材(2)を上記切株(40)から引き抜き、
上記切株(40)の上端開口部(40a)に上記地下茎(43)を枯死させる液剤(S)を注入し、上記貫通孔部(4)を通して上記切株(40)の下部(44)まで到達させることを特徴とする竹の地下茎枯殺方法。
【請求項2】
上記液剤(S)を注入した後、上記切株(40)の上から防水用の閉栓部材(5)を被せて上記貫通孔部(4)を閉塞する請求項1記載の竹の地下茎枯殺方法。
【請求項3】
上記槌(3)により上記穿孔部材(2)を打ち込んで上記隔壁部(42)に横断面多角形状乃至星形状の貫通孔部(4)を形成し、上記手(H)により上記穿孔部材(2)を捩じって該貫通孔部(4)を円形に拡大して引き抜く請求項1又は2記載の竹の地下茎枯殺方法。
【請求項4】
上記液剤(S)が、塩化ナトリウム水溶液である請求項1,2又は3記載の竹の地下茎枯殺方法。
【請求項5】
竹を伐採した後の切株(40)に突き刺して稈節(41)の隔壁部(42)に貫通孔部(4)を形成する串状の穿孔部材(2)と、該穿孔部材(2)を叩いて上記切株(40)に打ち込むための槌(3)とを、備え、
上記穿孔部材(2)が、先端部(21)を上記切株(40)の下部(44)に達するような長さ寸法(L)を有する串本体部(20)と、該串本体部(20)の基端部(23)に固着されたグリップ部(22)とを、有することを特徴とする地下茎枯殺作業具。
【請求項6】
上記穿孔部材(2)の串本体部(20)を断面多角形状乃至星形状に形成した請求項5記載の地下茎枯殺作業具。
【請求項7】
上記槌(3)は、ヘッド部(31)から握り柄部(32)にわたって上記穿孔部材(2)を収納可能な挿入孔部(30)が形成されている請求項5又は6記載の地下茎枯殺作業具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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