説明

筆穂

【課題】 フィラメントの表面に凹凸のある筆毛を含む2種類以上の筆毛を混毛してなる塗布ブラシの場合は、各フィラメントが各々の特性しか発揮できないため、塗布ブラシ全体が均一な状態に成り難く、均一な塗布効果が得られないものになり、又、フィラメント同士の馴染みが良いので塗布ブラシのまとまりが良すぎて、塗布液が高粘度塗布液或いは塗布液の乾燥が早い速乾性の塗布液の場合に、塗布液の吐き出しが悪い問題や、塗布ブラシが凝集し易いといった問題が残されていた。
【解決手段】 合成樹脂製の複数種のフィラメントの先端にテーパー加工を施し、そのフィラメントを混毛し束ねた筆穂において、前記複数種のフィラメントの少なくとも1種類のフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したことを特徴とする塗布ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製の複数種のフィラメントの先端にテーパー加工を施し、フィラメントを混毛し束ねた塗布ブラシであって、特にアイライナーやネイルなどの化粧液、筆跡修正液、接着剤といった高粘度塗布液或いはインキの乾燥が早い速乾性の塗布具に用いられる塗布ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筆などの筆穂は、馬や鹿、豚、鼬、狸、栗鼠、貂、羊などの獣毛を使用しており、使用目的、使用者の好みなどによって筆穂の硬さ、太さなどを調整するために、上記獣毛の種類や組み合わせ方を変えて製品としている。一般的には、筆毛のテーパー形状が長くその表面状態が繊細で先端部に弾力がある獣毛のみで作った筆穂の品質が良いとされている。特に、鼬毛、羊毛、貂毛がその代表である。しかし、獣毛は天然物であるため、品質が一定なものが得難く、任意の寸法形状のものとすることが困難であり、耐摩耗性が低いといった問題があり、更には、鼬、狸、貂の収穫量の減少による高価格化といった問題もある。
【0003】
そこで、筆穂を形成する獣毛に代わり合成樹脂製の筆毛を用いることが行われている。合成樹脂製の先端をテーパー化して、獣毛のような合成樹脂製筆毛となすためには、合成樹脂製繊維を溶解又は分解する処理液に接触させる方法などが提案されている。(特許文献1参照、特許文献2参照)
【0004】
しかし、先端をテーパー化した合成樹脂製筆毛を用いた筆穂は、化粧料の保持力が低いといった問題や塗布した際に使用感がハードで悪いといった問題を有していた。これを解決するために、獣毛と先端をテーパー化した合成樹脂製の筆毛とを混毛してなる筆穂(特許文献3参照)や波状に皺曲(クリンプ)して、その波長が各々相違する多数の合成樹脂製の筆毛よりなる筆穂(特許文献4参照)や先端をテーパー化した合成樹脂製のフィラメントを用いてストレートな断面が円形な筆毛とクリンプを有する断面が円形な筆毛とストレートな断面が異形な筆毛を混毛してなる筆穂(特許文献5参照)などが提案されている。
【0005】
しかし、上記獣毛と先端をテーパー化した合成樹脂製の筆毛とを混毛したものの場合、獣毛故の欠点を合わせ持たざるを得ず、又、クリンプの波長が各々相違する多数の合成樹脂製の筆毛よりなるものの場合、空間が大きくなり易く、塗布性は向上するが、腰が弱くなったり、筆穂のまとまりが悪くなる問題もある。又、先端をテーパー化した合成樹脂製の筆毛を用いて、ストレートな断面が円形な筆毛とクリンプを有する断面が円形な筆毛とストレートな断面が異形な筆毛を混毛したものの場合、空間が大きくなりすぎて、インキの含みは良いが、繊維同士のズレが生じ易く、筆穂がバラケ易くなり、筆記性能が悪くなるといった問題を有していた。
【0006】
そこで、これらの問題を解決するために、筆毛の表面に凹凸のある筆毛を含む2種類以上の筆毛を混毛してなる筆穂(特許文献6参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭49−6159号公報(特許請求範囲)
【特許文献2】特公昭60−30556号公報(第3欄24行目〜第4欄15行目)
【特許文献3】特開昭63−102998公報(特許請求範囲)
【特許文献4】実開昭62−114781号公報(実用新案登録請求の範囲)
【特許文献5】特開2008−30335号広報(特許請求範囲)
【特許文献6】特開2008−295706号広報(特許請求範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フィラメントの表面に凹凸のある筆毛を含む2種類以上の筆毛を混毛してなる塗布ブラシの場合は、ストレートなフィラメント表面が凹凸な断面が無垢のフィラメントと、クリンプを有するフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメントとを混ぜ合わせる訳であるが、1つのフィラメントで1つの特性しか得られないので、ストレートなフィラメント表面が凹凸な断面が無垢のフィラメントがフィラメント表面の濡れを良くし、クリンプを有するフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメントが空間率を大きくするので、塗布液の含みを良くする等の各フィラメントの特性を持ってはいるが、しかし、各フィラメントが各々の特性しか発揮できないため、塗布ブラシ全体が均一な状態に成り難く、均一な塗布効果が得られないものになり、又、フィラメント同士の馴染みが良いので塗布ブラシのまとまりが良すぎて、塗布液が高粘度塗布液或いは塗布液の乾燥が早い速乾性の塗布液の場合に、塗布液の吐き出しが悪い問題や、塗布ブラシが凝集し易いといった問題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、合成樹脂製の複数種のフィラメントの先端にテーパー加工を施し、そのフィラメントを混毛し束ねた塗布ブラシにおいて、前記複数種のフィラメントの少なくとも1種類のフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したことを主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る塗布ブラシは、合成樹脂製の複数種のフィラメント先端にテーパー加工を施し、そのフィラメントを混毛し束ねた塗布ブラシにおいて、前記複数種のフィラメントの少なくとも1種類のフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成しているので、1つのフィラメントに3つの特性を兼ね備わったことになり、塗布ブラシ全体が均一な状態になり易く、どの部分も均一な塗布効果が得られるものとなる。具体的には、フィラメント表面の微細な凹凸を形成することで、塗布液が接触する表面面積が大きくなり、フィラメントの濡れを良くすると共に、波状のクリンプ加工を施すことで、インキの保持力が良好になる。又、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成しているので、塗布ブラシから塗布液が離れ易いため、インキの吐き出しが良好になる。その結果、塗布ブラシ全体として、インキ供給が良好になり、筆記時のタッチが滑らになると共に、塗布ブラシの凝集が抑えられるので、使用頻度に関係なく、いつでも、スムーズに筆記できる塗布ブラシが得られる。又、更には、1つのフィラメントに微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成しているため、微細な凹凸とクリンプ状の大きな凹凸が組み合わせることで、塗布ブラシ内のクリンプ状の空間に溜まった余分な塗布液をフィラメント表面の微細な凹凸が吸収してくれるので、塗布ブラシ全体がさらに均一な状態になり易いものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る塗布ブラシの概略の側面図である。
【図2】(a)塗布ブラシを前軸に挿入固定された横断面である。 (b)塗布ブラシを前軸に挿入固定したものを軸の前端部より挿入固定された横断面図である。
【図3】本発明に使用した各フィラメントの拡大模式図である。
【図4】フィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したフィラメント2の拡大模式図である。
【図5】本発明に係るフィラメント2のクリンプ形状の拡大模式図である。
【図6】(a)塗布ブラシの先端形状の変形例を示す正面図と上面図である。 (b)塗布ブラシの先端形状の変形例を示す正面図と上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について説明する。図1において、参照符号1は化粧液用の塗布ブラシ1であり、この塗布ブラシ1は、前軸5に挿入固定され、この前軸5は、軸6の前端に挿入固定され筆を形成している。また、塗布ブラシ1は、先端をテーパー加工したフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したフィラメント2と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が中空のフィラメント3と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメント4とを混毛したものを用いて長手方向に集束し、後端部を熱溶着や接着剤による接着などの方法により固着して形成したものである。
【0013】
塗布ブラシ1に使用するフィラメント2は、先端をテーパー加工したフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したものであるが、ここでのフィラメント表面に微細な凹凸を形成するためには、フィラメント樹脂の中に鉱物(ミネラル)などを練り込んだものを用いるのが好ましい。なぜなら、フィラメント樹脂の中に鉱物を練り込んだものは、フィラメントの表面及びフィラメント内部共に凹凸を形成しているので、テーパー加工などの溶解などでも凹凸を形成することができるからである。又、これとは逆にフィラメント表面にプラズマ処理やレーザーなどで表面に凹凸を形成したものは、テーパー加工などの溶解により、表面の凹凸が消滅したり、使用頻度によっては、表面の凹凸が脱落するため好ましくない。
【0014】
前記フィラメント2に使用している合成樹脂製の材質としては、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)などの疎水性の特性をもったものを用いることが好ましい。但し、ポリアミド(6、6―ナイロン、6―ナイロン、12−ナイロン、6、10−ナイロン、6、12−ナイロンなど)のような親水性の特性を持つ材質であっても、フィラメント表面にフッ素樹脂加工などの撥水処理を行い疎水性の特性を施せば、前記フィラメント2と同じように、フィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成すれば、同じ効果が得られるので使用しても構わない。但し、フッ素樹脂などの撥水処理を行う場合には、フィラメント表面にコーティングしたものより、フィラメント樹脂にフッ素樹脂を練り込んだものの方が好ましい。なぜなら、フィラメント表面にコーティング加工したものは、テーパー加工などの溶解により、表面の凹凸が消滅したり、使用頻度によっては、表面の凹凸が脱落するからである。
【0015】
又、フィラメント3、4に使用している合成樹脂製の材質としては、フィラメント2にポリエステル系の疎水性の特性を持ったものを使用した場合は、筆毛3、4は、ポリアミド系の親水性の特性を持ったものを使用することが好ましい。但し、ナイロンのような親水性の材質でも、疎水性の特性を施してあれば、フィラメント2に使用しても構わない。
【0016】
又、塗布ブラシ1に使用するフィラメント2、3、4の材質は同一であっても異なっても良いが、要は、フィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を持ったものとフィラメントの特性が親水性のフィラメントとを少なくとも1種類づつ必ず組み合わされていることが重要である。なぜなら、この2つの特性を持ったものを組み合わせなければ、上記のような結果が得られないからである。
【0017】
又、フィラメント2に混毛するフィラメント3、4としては、ストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が中空のフィラメント、ストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が異形なフィラメント、ストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメント等を組み合わせることができるが、これに限定されるものではない。ここでは、2種類のフィラメントをフィラメント2に混毛して構成しているが、使用する塗布ブラシ1の大きさ又は使用用途によって、1種類或いは2種類又は何種類混毛しても構わない。但し、フィラメント2に使用する材質又は特性が常に疎水性であるため、少なくとも1種類は、親水性の特性を持ったフィラメントを混毛しなければならない。その他は、疎水性であっても、親水性であっても構わない。
【0018】
この塗布ブラシ1に用いる合成樹脂製のフィラメント2、3、4の基部の直径Dは、製造用途又は大きさ(直径及び長さ)によっても異なるが、本発明に係わる化粧液用の塗布ブラシ1におけるフィラメント2、3、4の基部の直径Dは、0.05mm〜0.16mmのものを用いることが好ましい。ここで言うフィラメントの直径Dとは、テーパー加工されていない部分の直径を言うものである。
【0019】
前記合成樹脂製のフィラメント2、3、4を先端から後方に向けてテーパー化したフィラメント2、3、4、となすには、化学処理液による方法が好ましく、その具体的一例としては、ポリアミドに対してメタクレゾールと塩化カルシウム−メタノール溶液との混和液、ポリエステルに対して水酸化ナトリウムなどの組合せが挙げられる。但し、必ずしもこの方法に限定されるものではなく、例えば、グラインダー研摩など機械的にテーパー化するなどの他の方法を採用しても良い。
【0020】
先端がテーパー加工された合成樹脂製の塗布ブラシ1のフィラメント2の表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を持ったもので構成しているフィラメント2を使用する目的は、1つのフィラメントに3つの特性を兼ね備えることにあり、塗布ブラシ全体が均一な状態になり易く、どの部分も均一な塗布効果が得られるものとなる。具体的には、フィラメントの表面に微細な凹凸を形成しているので、塗布液が接触する表面面積が大きくなり、フィラメントの表面の濡れを良くすると共に、波状のクリンプ加工を施すことで、インキの保持力が良好になる。又、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成しているので、フィラメントから塗布液が離れ易く、インキの吐き出しが良好になる。その結果、塗布ブラシ全体として、インキの供給が良好になり、筆記時のタッチが滑らになると共に、塗布ブラシの凝集が抑えられるので、使用頻度に関係なく、いつでも、スムーズに筆記できる。又、更には、1つのフィラメントに微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成しているため、微細な凹凸とクリンプ状の大きな凹凸が組み合わせることで、塗布ブラシ内のクリンプ状の空間に溜まった余分な塗布液をフィラメント表面の微細な凹凸が吸収し、もって、塗布ブラシ全体がさらに均一な状態になり易いものである。
【0021】
又、前記フィラメント2は、1つのフィラメントで3つの特性が得られるので、塗布ブラシ全体が均一な状態になり易く、どの部分も均一な塗布効果が得られるバラツキの少ない品質の良い塗布ブラシ1が得られるものである。
ちなみに、1本のフィラメントに1つの特性しか得られないものは、例えば、ストレートなフィラメント表面が凹凸な断面が無垢のフィラメントとクリンプを有するフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメントとを混毛したとしても、各フィラメントが各々の特性しか発揮できないため、塗布ブラシ全体が均一な状態に成り難く、均一な塗布効果が得られないものになり、バラツキが生じ易い塗布ブラシになってしまう。
【0022】
又、前記フィラメント2の表面の微細な凹凸の算術平均値高さを80nm〜500nmの範囲で形成したものを使用することが好ましい。その理由としては、フィラメント2の表面の微細な凹凸の算術平均高さが80nmに満たないと表面の凹凸が微細すぎて、フィラメンの濡れや塗布液の含みが向上しないからである。又、フィラメント2の表面の微細な凹凸の算術平均高さが500nmを超えると、フィラメント表面の凹凸が大きくなりすぎて、フィラメント同士のズレが生じ易く、塗布ブラシのまとまりが悪くなったり、使用時のタッチがゴツゴツして使用感が悪くなるからである。
【0023】
前記フィラメント2の表面凹凸の高さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて測定した。原子間力顕微鏡は、先鋭の鋭いカンチレバーを用いて、試料表面をなぞり、試料表面と一定の間隔を保ってトレースし、その際のカンチレバーの上下方向への変位を計測することで試料表面の凹凸形状の高さを算術平均値として測定したものを使用した。
【0024】
又、前記フィラメント2のクリンプ波形形状は、クリンプ波形高さHが0.01mm〜0.5mm、波形のピッチPが1.0mm〜5.0mmの範囲のものを使用することが好ましい。その理由としては、クリンプ波形高さHが0.01mmに満たないと、ほとんどクリンプを形成しないものになってしまうことがあり、塗布液の含みが低下してしまうことがある。又、クリンプ波形高さHが0.5mmを超えると、空間率が大きくなりすぎて使用感が悪くなったり、塗布ブラシ1がバラケたり割れたりもする。又、波形のピッチPが1.0mmに満たないと波形高さHにもよるがピッチPが短すぎて使用感が悪くなったり、塗布ブラシ1がまとまりのないものになってしまう。又、波形のピッチPが5.0mmを超えると塗布ブラシ内でクリンプがほとんど形成されないものになって、塗布液の含みが低下してしまうからである。
【0025】
又、前記フィラメント2の表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施し形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したものの配合比率としては、20〜60%重量の範囲のものが好ましい。その理由は、フィラメント2の配合比率が20%に満たないと塗布ブラシ1内の空間率の低下やフィラメント表面の塗れが悪くなり、塗布液の吐出性が低下してしまう。又、フィラメント2の配合比率が60%を超えると、空間率が大きくなりすぎることやフィラメント同士の馴染みが悪くなり、塗布ブラシ1のまとまりが悪くなり、使用時のタッチを低下させてしまうからである。
【0026】
又、この塗布ブラシ1の断面形状は、製造用途又は大きさ(直径及び長さ)によっても異なるが、塗布ブラシ1の横断面形状を今回は円形状の円錐形状で作成したが、これに限定されるものではなく、楕円状或いは矩形状(図6(a)参照)又は先端斜め状の平形状(図6(b)参照)といったものに使用しても同じような効果を発揮する。
【0027】
本発明の化粧液用塗布ブラシ1を製造するに当たっては、上記フィラメント2、3、4とを混毛し、後端を溶着、接着又は後部を糸などで縛ってフィラメントの脱落を防止して、塗布ブラシ1となす訳であるが、混毛された塗布ブラシ1は、先端をテーパー加工したフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので形成したフィラメント2と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が中空のフィラメント3と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメント4とがお互いに均一に混毛され配列されていることが好ましい。
【0028】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1は、本発明の化粧液用塗布ブラシ1の使用例である筆を示すものである。参照符号1は、化粧液用の塗布ブラシ1であり、フィラメント2、3、4を混毛し、その後端部を溶着したものである。塗布ブラシ1は、前軸5に挿入固定され、この前軸5は、後軸6の前端に挿入固定され筆を形成している。
フィラメント2は、先端をテーパー加工したフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので形成したフィラメント2と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が中空のフィラメント3と先端をテーパー加工したストレートなフィラメント表面が滑らかな断面が無垢のフィラメント4を用いるが、他の条件を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1〜18、比較例1〜15の塗布ブラシのフィラメントの表面凹凸、クリンプ形状、樹脂の特性等の条件を表2(実施例1〜9)、表3(実施例10〜18)、表4(比較例1〜9)、表5(比較例10〜15)に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
上記実施例1〜18、並びに、比較例1〜15の塗布ブラシを用いて、図1に示す化粧液用塗布ブラシを形成し、化粧液の塗布試験を行った。
化粧液は、アイライナー用のインキを使用して塗布試験を実施した。
【0036】
塗布試験(モニター試験)
方法:任意に抽出したモニターに実際に化粧液用塗布ブラシを使用してもらい、使用性についてのモニター調査を実施した。その結果を表6に示す。
【0037】
【表6】

【符号の説明】
【0038】
1 塗布ブラシ
2 先端をテーパー加工したフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の特性を有したもので形成したフィラメント
3 先端をテーパー加工したストレートな表面が滑らから断面が中空のフィラメント
4 先端をテーパー加工したストレートな表面が滑らかな断面が無垢のフィラメント
5 前軸
6 軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の複数種のフィラメントの先端にテーパー加工を施し、そのフィラメントを混毛し束ねた塗布ブラシにおいて、前記複数種のフィラメントの少なくとも1種類のフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したことを特徴とする塗布ブラシ。
【請求項2】
前記合成樹脂製のフィラメント表面の微細な凹凸の算術平均値高さを80nm〜500nmの範囲で形成したことを特徴とする請求項1記載の塗布ブラシ。
【請求項3】
前記合成樹脂製のフィラメントのクリンプ波形高さを0.01mm〜0.5mm、波形ピッチ1.0mm〜5.0mmの範囲としたことを特徴とする請求項1に記載の塗布ブラシ。
【請求項4】
前記合成樹脂製のフィラメントを疎水性の材質又は特性を有したもので構成したことを特徴とする請求項1〜請求項3に記載の塗布ブラシ。
【請求項5】
前記合成樹脂製のフィラメントの材質は、少なくともPBT製のフィラメントであることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の塗布ブラシ。
【請求項6】
前記合成樹脂製のフィラメントの材質をナイロン製のフィラメントで形成すると共に、撥水処理したことを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の塗布ブラシ。
【請求項7】
前記合成樹脂製のフィラメントの表面に微細な凹凸を形成すると共に、波状のクリンプ加工を施して形成し、且つ、前記フィラメントを疎水性の材質又は特性を有したで構成したフィラメントの混毛比率は、20〜60%重量の範囲としたことを特徴とする請求項1〜請求項6の何れかに記載の塗布ブラシ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−249656(P2012−249656A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122288(P2011−122288)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】