説明

筆記具の軸筒

【課題】 内側層に対し表面層を被覆する組立性のよい、グリップ部材を積層とした筆記具の軸筒を提供すること。
【解決手段】軸筒本体(2)の把持部(3)に、軟質材からなる内側層(4)と表面層(5)との積層構造からなるグリップ部材(G)を装着してなる筆記具の軸筒(1)において、前記内側層(4)に対し前記表面層(5)を被覆して配設するとともに、前記内側層(4)の外壁面(4b)及び前記表面層(5)の内壁面(5b)の少なくとも一方の壁面に、前記内側層(4)に対して前記表面層(5)を容易に挿入可能とする円滑挿入可能形状を設けたことを特徴とする筆記具の軸筒(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒本体の把持部に、グリップ部材を装着した筆記具の軸筒に関し、さらに詳しくは、軟質材からなる内側層と表面層とを配設した積層構造のグリップ部材を装着してなる筆記具の軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸筒本体の把持部に、軟質材からなる内側層と表面層とを配設した積層構造のグリップ部材を装着してなる筆記具の軸筒は知られている。
【0003】
こうした筆記具の軸筒において、特開平8ー197883号公報の「筆記具、塗布具における把持部構造」に、内部に気体又は液体又はゲル状体又はゼリー状体を封入した変形可能な筒状の把持体を配置してなる筆記具が開示されている。
【0004】
また、特開2000ー355185号公報の「筆記具のグリップ」に、内側層のショアー硬度がHs(JIS A)5〜30、表面層のショアー硬度がHs(JIS A)40以上としてなる筆記具のグリップや特開平09ー169194号公報「筆記具のグリップ」に、硬度の異なる2種類の樹脂部材を部分的に融合させてなるものが開示されている。
【0005】
【特許文献1】「特開平8ー197883号公報」
【特許文献2】「特開2000ー355185号公報」
【特許文献3】「特開平9ー169194号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前者は、内部に気体又は液体又はゲル状体又はゼリー状体を封入した変形可能な筒状の把持体を配置する製造が困難であり、また内部に封入した気体又は液体又はゲル状体又はゼリー状体が漏れ出す恐れがある。
【0007】
また後者は、内側層と表面層をディッピング(浸積被覆法)や吹き付け塗装によってグリップ本体を製造したり、2色成形等により成形時に積層する等、内側層に対し表面層の境界面を予め融合或いは接着しているが、これは、面粗度等の表面状態によっても異なるが、軟質材同士が接触すると、軟質材と硬質材との摩擦抵抗に比べ、抵抗力が強くなるので、予め形成していた内側層に、単純に表面層を被覆することは非常に困難であり、組立性が著しく低下するためであると考えられる。
【0008】
しかし、内側層と表面層の境界面を融合するには、製造が困難で、かつ製造コストが高くなり低価格品には不向きであったり、表面層と内側層の融合部で硬度が変化してしまったり、表面層が透明または半透明で、且つ表面層と内側層で色が異なる場合には、融合部で色が混ざり合ってしまい、求める色感が得られないなどの問題があった。
【0009】
本発明の目的は、内側層に対し表面層を被覆する組立性のよい、グリップ部材を積層とした筆記具の軸筒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明)
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の具体例(実施例)の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0011】
前記技術的課題を解決するために、本発明は、軸筒本体(2)の把持部(3)に、軟質材からなる内側層(4,14)と表面層(5,15)との積層構造からなるグリップ部材(G,G’)を装着してなる筆記具の軸筒(1,11)において、前記内側層(4,14)に対し前記表面層(5,15)を被覆して配設するとともに、前記内側層(4,14)の外壁面(4b,14b)及び前記表面層(5,15)の内壁面(5b,15b)の少なくとも一方の壁面に、前記内側層(4,14)に対して前記表面層(5,15)を容易に挿入可能とする円滑挿入可能形状(31,41,51)を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、凹凸形状により構成された前記円滑挿入可能形状(31,41,51)を設けることができる。
【0013】
さらに、テーパー形状により構成された前記円滑挿入可能形状を設けることができる。
【0014】
さらにまた、前記表面層(5,15)を、前記内側層(4,14)及び軸筒本体(2)に対し着脱自在に被覆することができる。
【0015】
さらにまた、前記表面層(5,15)を透明または半透明とし、前記内側層(4,14)を前記表面層(5,15)と異なる色で形成することができる。
【0016】
さらにまた、前記表面層(5)の内側を光沢面とすることができる。
【0017】
さらにまた、前記表面層(5,15)と内側層(4,14)を、硬度の異なる軟質材で形成するとともに、前記内側層(4,14)を硬度の低い軟質材で構成し、前記表面層(5,15)を硬度の硬い軟質材で構成することができる。
【0018】
さらにまた、前記内側層(4,14)の外径に対し、それに対応する前記表面層(5,15)の内径を大きくするとともに、前記軸筒本体(2)の前記把持部(3)に、前記表面層(5,15)を軸方向に圧縮した状態で装着することができる。
【0019】
さらにまた、前記表面層(15)の先端部に、軸心に向かって延びる突起部(20)を形成し、前記突起部(20)の後端面(20a)を、前記内側層(14)の先端面(14a)に当接させることができる。
【0020】
さらにまた、前記内側層(4,14)に対応する前記表面層(5,15)の平均厚さを、1mm以上、5mm以下にすることができる。
【0021】
(本発明の作用)
前記構成要件を備えた本発明の筆記具の軸筒(1,11)では、軟質材からなる内側層(4,14)と表面層(5,15)との積層構造からなるグリップ部材(G,G’)は、軸筒本体(2)の把持部(3)に装着される。前記表面層(5,15)は、前記内側層(4,14)に対しを被覆して配設される。そして、前記内側層(4,14)の外壁面(4b,14b)及び前記表面層(5,15)の内壁面(5b,15b)の少なくとも一方の壁面には、前記内側層(4,14)に対して前記表面層(5,15)を容易に挿入可能とする円滑挿入可能形状(31,41,51)が設けられている。
したがって、本発明の筆記具の軸筒(1,11)は、表面層(5,15)を内側層(4,14)に容易に被覆して装着することができるので、グリップ部材(G,G’)の組立性を向上させることができる。
【0022】
また、前記円滑挿入可能形状(31,41,51)を凹凸形状により構成した場合、前記凹凸形状により接触抵抗を低減できるので、表面層(5)を内側層(4)に容易に装着できる。また、表面層(5)が変形して表面層(5)と内側層(4)とが密着状態になった時に、凹凸形状にすることによって表面層(5)と内側層(4)との間に空気が進入しやすくなるので、密着状態から元の状態に戻りやすい。
【0023】
さらに、前記円滑挿入可能形状をテーパー形状により構成した場合、テーパー形状により、表面層(5,15)を内側層(4,14)に容易に装着できる。
【0024】
さらにまた、前記表面層(5,15)が、前記内側層(4,14)及び軸筒本体(2)に対し着脱自在に被覆した場合、接着や融合した場合に比べ、表面層(5,15)を使用者の好みの色や硬度の軟質材に変更できる。
【0025】
さらにまた、前記表面層(5,15)を透明または半透明とし、前記内側層(4,14)を前記表面層(5,15)と異なる色で形成した場合、内側層(4,14)に施された名入れや装飾を使用者が視認できるので、装飾効果を出すことができる。
【0026】
さらにまた、前記表面層(5)の内側を光沢面とした場合、外部から内側層(4)や、内側層(4)に施された文字や装飾等を視認しやすくすることができる。
【0027】
さらにまた、前記表面層(5,15)と内側層(4,14)が、硬度の異なる軟質材で形成されるとともに、前記内側層(4,14)を硬度の低い軟質材で構成し、前記表面層(5,15)を硬度の硬い軟質材で構成した場合、表面層(5,15)に経時により膨潤しにくい硬度の高い軟質材を使用しているので、膨潤により表面層(5,15)が内側層(4,14)から外れてしまうことを低減できる。
【0028】
さらにまた、前記内側層(4,14)の外径に対し、それに対応する前記表面層(5,15)の内径を大きくするとともに、前記軸筒本体(2)の前記把持部(3)に、前記表面層(5,15)を軸方向に圧縮した状態で装着した場合、内側層(4,14)の外径に対して前記表面層(5,15)の内径が大きいので、表面層(5,15)を内側層(4,14)に装着しやすい。また、軸筒本体(2)の前記把持部(3)に、前記表面層(5,15)を軸方向に圧縮した状態で装着しているので、筆記の時に力が加わっても表面層(5,15)の位置ずれを起こしにくくすることができる。
【0029】
さらにまた、前記表面層(15)の先端部(15a)に、軸心に向かって延びる突起部(20)を形成し、前記突起部(20)の後端面(20a)を、前記内側層(14)の先端面(14a)に当接させた場合、先端部における内側層(14)と表面層(15)の接触する部分が多くなり、抵抗力が強くなるので、表面層(15)の位置ずれ防止効果を向上することができる。
【0030】
さらにまた、前記内側層(4,14)に対応する前記表面層(5,15)の平均厚さを、1mm以上、5mm以下にした場合、表面層(5,15)を1mm未満で形成した場合に比べ、表面層(5,15)の変形を抑えることができ、内側層(4,14)に被覆しやすく、表面層(5,15)が変形して表面層(5,15)と内側層(4,14)とが密着状態になった時に元の状態に戻りやすい。また、表面層(5,15)が5mmより大きい場合に比べ、内側層(4,14)の硬度や色等の効果が出やすい。
【0031】
前述の本発明の軟質材は、弾性変形可能なシリコーンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、塩化ビニル樹脂、ブタジエンゴム、ウレタンゴム、ポリエチレン樹脂、その他合成ゴム、熱可塑性エラストマー等、筆記具のグリップ部材(G,G’)として一般的に知られている弾性体のなかから適宜選定すればよい。また、硬度の異なる軟質材は、同一の種類でも異なる種類の軟質材であってもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明の筆記具は前述したような構造なので、内側層に対し表面層を被覆する組立性のよい、グリップ部材を積層とした筆記具の軸筒を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施例を図面を用いて説明する。同じ部材、同じ箇所を示すものは同じ符号を付す。
【実施例1】
【0034】
図1、図2に示す第1の実施例を示す筆記具の軸筒1は、先ず、軸筒本体2をエチレンニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)で成形する。軸筒本体2の把持部3は、外径が小径に形成してある。その把持部3にグリップ部材Gを装着するが、グリップ部材Gは、予めシリコーンゴムにて、ショアー硬度がHs(JIS A)30の青色の内側層4と、ショアー硬度がHs(JIS A)70の透明の表面層5を成形してあり、軸筒本体2の把持部3に内側層4を装着し、その後、表面層5を積層させて被覆してある。さらにその後、口先部材6の内壁に形成した雌ねじ部7を、軸筒先端に形成した雄ねじ部8に螺着し、口先部材6の後端面6aが内側層4の先端面4a及び表面層5の先端面5aに当接し、内側層4及び表面層5を圧縮した状態で保持して筆記具の軸筒1を得る。図示はしていないが、筆記具として使用する場合には、例えば、軸筒内に、先端にボールペンチップを装着したボールペンレフィルを収納する。
【0035】
内側層4の外壁面4b及びそれ対応する表面層5の内壁面5bは、微細な凹凸面状(円滑挿入可能形状)としてあり、内側層4に対し外側層5を被覆する時に、内側層4の外壁面4b及び表面層5の内壁面5bが接触しても、接触抵抗を低減し組立性を向上することができ、さらに筆記時の筆圧等によって、表面層5の内壁面5b及び内側層4の外壁面4bが密着状態になったとしても、本発明の軟質材は、弾性変形可能であるため元の状態に戻るが、内側層4の外壁面4b及び表面層5の内壁面5bを凹凸面状とすることによって空気が進入し易くなるので、密着状態から元の状態に戻りやすい。凹凸面の形成方法や凹凸形状は、特に限定されるものでないが、内側層の外壁面及び表面層の内壁面を梨地面に仕上げる等、全面に渡って微細な凹凸部を形成するほうが好ましい。
【0036】
内側層4の外壁面及びそれに対応する前記表面層4の内壁面を後端側に向かって徐々に拡径する、内側層4の先端部外径m、後端部外径nに対し、それに対応する表面層5の先端部内径M、後端部外径Nとした時、m<n,M<Nの関係からなるテーパー状(円滑挿入可能形状)とすることで、表面層4を被覆しやすくすることができる。
【0037】
また、グリップ部材Gに使用される軟質材は、少なからず水分や油分を吸収し、膨潤し、取付時に比べ経時により内側層4の外径及び表面層5の内径が拡径してしまう。その結果、筆記時に軸筒先端側への力が加わると、グリップ部材が移動し、ひどい場合には軸筒本体2から表面層5が外れてしまったりすることがあるので、内側層4の外壁面4b及びそれに対応する表面層5の内壁面5bを後端側に向かって徐々に拡径するテーパー状とし、表面層5の先端面5a側の肉厚Kをより厚くすることによって、口先部材6によって保持される面積が多くなり筆記の時に軸筒先端に力が加わっても位置ずれを起こしにくくす
ることができる。
【0038】
また、内側層4の先端部外径m、及び後端部外径nに対し、それに対応する表面層5の先端部内径M、後端部外径Nを大きくする(m<M,n<N)ことによって、表面層5を被覆する時の挿入性を向上することができ、被覆した後に、内側層4と表面層5が密着しにくくすることができる。この時、成形条件等による寸法精度を考慮し、内側層4の外径に対し、それに対応する表面層5の内径が0.05mm程度大きくしてあればよい。
【実施例2】
【0039】
図3、図4に示す第2の実施例を示す筆記具の軸筒11は、グリップ部材G’(14,15)が、軸筒の把持部に配設した状態で、ショアー硬度がHs(JIS A)70の半透明の表面層15の先端部に、内側に延びる凸部(突起部)20を形成し、ショアー硬度がHs(JIS A)50の透明の内側層14の先端面14aが、凸部20の後端面20aに当接させて被覆した以外は、第1の実施例と同様にして筆記具の軸筒11を得ている。
【0040】
表面層15の先端部に、内側に延びる凸部20を形成し、この凸部20の後端面20aが、内側層14の先端面14aに当接することによって、先端部における内側層14と表面層15の接触する部分が多くなり、抵抗力が強くなるので、表面層15の位置ずれ防止効果を向上することができる。また、凸部20を形成することによって、表面層15の先端部の肉厚K’が厚くなるので、経時によって内側層14及び表面層15が膨潤しても、口先部材6の後端面の外径Lより、表面層15の先端面の内径M’が大きくなりにくく位置ずれを起こしにくい。
【0041】
また、第1の実施例と同様に、内側層14の外壁面14b及びそれに対応する前記表面層15の内壁面15bを後端側に向かって徐々に拡径する、内側層14の先端部外径m’、後端部外径n’に対し、それに対応する表面層15の先端部内径M’、後端部外径N’とした時、m’<M’、n’<N’の関係からなるテーパー状(円滑挿入可能形状)とすることで、内側層14に対し表面層15を被覆しやすくしてある。
【実施例3】
【0042】
次に本発明の実施例3の筆記具の軸筒の説明を行うが、この実施例3の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例3は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0043】
図5は筆記具の軸筒の実施例3の内側層の斜視説明図である。
図5において、実施例3の内側層4の外壁面4bには、軸方向に沿う複数の溝(円滑挿入可能形状)31が形成されている。
したがって、実施例3の筆記具の軸筒1では、表面層5を内側層4に挿入して装着して被覆する際に、前記溝31により接触面積が減少しているので、接触抵抗(摩擦抵抗)が小さく、容易に装着することができる。また、筆記時の筆圧等によって、表面層5の内壁面5b及び内側層4の外壁面4bが密着状態になったとしても、軸方向に沿って形成された前記溝31により表面層5と内側層との間に空気が進入し易くなるので、密着状態から元の状態に戻りやすい。
なお、実施例3では、溝31を内側層4の外壁面4bに形成したが、表面層5の内壁面5bに形成することも可能であり、内側層4の外壁面4b及び表面層5の内壁面5bの両方の壁面に形成することも可能である。
【実施例4】
【0044】
次に本発明の実施例4の筆記具の軸筒の説明を行うが、この実施例4の説明において、前記実施例3の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例4は、下記の点で前記実施例3と相違しているが、他の点では前記実施例3と同様に構成されている。
【0045】
図6は筆記具の軸筒の実施例4の内側層の斜視説明図である。
図6において、実施例4の内側層4の外壁面4bには、軸方向に沿う複数の溝(円滑挿入可能形状)41が形成されている。前記各溝41は、先端側溝41aと後端側溝41bとを有しており、前記先端側溝41aと後端側溝41bとの間には溝が形成されていない非溝部42が形成されている。そして、図6に示すように、外壁面4bの周方向に隣接する各非溝部42は、軸方向に沿ってずれた位置に形成されている。
したがって、実施例4の筆記具の軸筒1でも、前記実施例3の場合と同様に、表面層5を内側層4に容易に装着できる。
なお、前記先端側溝41aや後端側溝41b、非溝部42の位置やサイズ等は、デザイン等に応じて変更可能である。
【実施例5】
【0046】
次に本発明の実施例5の筆記具の軸筒の説明を行うが、この実施例5の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例5は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0047】
図7は筆記具の軸筒の実施例5の内側層の斜視説明図である。
図7において、実施例5の内側層4の外壁面4bには、複数の半球状の凸部(円滑挿入可能形状)51が形成されている。
したがって、複数の凸部51による凹凸形状により構成された外壁面4bを有する実施例5の筆記具の軸筒1は、微細な凹凸形状(梨地面、円滑挿入可能形状)を有する前記実施例1と同様に、摩擦抵抗が少なく、表面層5bを容易に装着できる。
【実施例6】
【0048】
次に本発明の実施例6の筆記具の軸筒の説明を行うが、この実施例6の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
この実施例6は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0049】
図8は筆記具の軸筒の実施例6の内側層の斜視説明図である。
図8において、実施例6の内側層4の外壁面4bは、実施例1と同様に微細な凹凸形状(梨地面、円滑挿入可能形状)により構成されている。そして、前記外壁面4bには、顧客の名前がプリントされている(名入れされている)。なお、図示しない表面層5は、実施例1と同様に、透明部材により構成されている。
したがって、実施例6の筆記具の軸筒1では、内側層4の外壁面4bに名入れが施されており且つ、表面層5が透明部材により構成されているので、使用者が名前を視認できる。また、軸筒本体2の把持部3に直接名入れをするとグリップ部材Gの厚みが厚いので視認しにくくなる場合があるが、実施例6の筆記具の軸筒1では、内側層4に名入れが施されているので、名入れがされた部分から外部までの肉厚(表面層5の厚さ)を薄くでき、名入れした文字を視認しやすい。
【0050】
なお、前記内側層4の外壁面4bには、顧客の名前の名入れに限定されず、商品名やメーカー名を名入れしたり、柄やパターン等の装飾を施すことも可能である。また、前記表面層5は、半透明部材により構成することも可能であり、内側層4も半透明部材または透明部材により構成することも可能である。さらに、表面層5の内側を光沢面とし、内側層4の外壁面を凹凸面状とした場合、外部からの内側層や前記した文字や装飾が確認しやすくできる。
【0051】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例を下記に例示する。
【0052】
本発明のグリップ部材の色は特に限定されないが、表面層を透明又は半透明とし、内側層を表面層と異なる色で形成することにより、装飾効果を有するので好ましい。
【0053】
また、表面層及び内側層の硬度は特に限定されるものではないが、低硬度の軟質材、特にショアー硬度がHs40未満の軟質材は、経時によって膨潤しやすいことを考慮し、低硬度の軟質材を内側層に配設するほうが望ましい。
【0054】
さらに、前記各実施例では、予め成形した内側層及び表面層を、内側層を軸筒本体の把持部に装着した後、表面層を被覆してあるが、内側層は軸筒本体と2色成形に形成してもよい。また、内側層の把持部側に、他の層を形成してもよい。
【0055】
また、本発明は、内側層に対し表面層を被覆して配設するが、内側層と、対応する表面層の境界面を融合或いは接着せずに、内側層に対し表面層を被覆してあれば、軸筒本体に内側層を装着した後に、表面層を被覆してもよいし、内側層に表面層を被覆した後に、軸筒本体に装着してもよい。また、内側層に表面層を被覆した後に、内側層の外壁及び表面層の内壁に影響のないように接着や融合しても構わないが、使用者の好みの色や硬度の軟質材に変更できるので、表面層を内側層及び軸筒本体に対し着脱自在に被覆するほうが好ましい。
【0056】
また、表面層及び内側層の肉厚は、特に限定されないが、1mm未満では表面層が変形しやすく、被覆しにくく、密着状態になったときに、元の状態に戻りにくく、また、内側層に対応する表面層の平均厚さが5mmを越えると、内側層の硬度、色等、内側層の影響を受けにくくなるので、内側層に対応する表面層の平均厚さを1mm以上、5mm以下としたほうが好ましい。内側層に対応する表面層の平均厚さとは、内側層と表面層が積層構造となっている表面層の肉厚の平均値を示すものである。
【0057】
さらに、前記実施例3、4において、円滑挿入可能形状としての凹凸形状として溝31、41を設けたが、これに変えて、外壁面4bから外方に突出するリブを設けることも可能である。
また、実施例1、2において、グリップ部材G、G’は凹凸面状とテーパー状の2つの円滑挿入可能形状を有しているが、いずれか一方の円滑挿入可能形状のみを有するように構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施例を示す、筆記具の軸筒の一部省略した断面図である。
【図2】図1における組立工程を示す、要部を断面とした図である。
【図3】第2の実施例を示す、筆記具の軸筒の一部省略した断面図である。
【図4】図3における組立工程を示す、要部を断面とした図である。
【図5】図5は筆記具の軸筒の実施例3の内側層の斜視説明図である。
【図6】図6は筆記具の軸筒の実施例4の内側層の斜視説明図である。
【図7】図7は筆記具の軸筒の実施例5の内側層の斜視説明図である。
【図8】図8は筆記具の軸筒の実施例6の内側層の斜視説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1,11…筆記具の軸筒、
2…軸筒本体、
3…把持部、
4,14…内側層、
4a,14a…先端面、
4b,14b…外壁面、
5,15…表面層、
5a,15a…先端面、
5b,15b…内壁面、
6…口先部材、
6a…後端面、
7…雄ねじ部、
8…雌ねじ部、
14a…先端面、
20…突起部、
20a…後端面、
31,41,51…円滑挿入可能形状、
G,G’…グリップ部材、
K,K’…表面層の先端面の肉厚、
L…口先部材の後端面の外径、
m,m’…内側層の先端部外径、
n,n’…内側層の後端部外径、
M,M’…表面層の先端部外径、
N,N’…表面層の後端部外径。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒本体の把持部に、軟質材からなる内側層と表面層との積層構造からなるグリップ部材を装着してなる筆記具の軸筒において、前記内側層に対し前記表面層を被覆して配設するとともに、前記内側層の外壁面及び前記表面層の内壁面の少なくとも一方の壁面に、前記内側層に対して前記表面層を容易に挿入可能とする円滑挿入可能形状を設けたことを特徴とする前記筆記具の軸筒。
【請求項2】
凹凸形状により構成された前記円滑挿入可能形状を設けたことを特徴とする請求項1記載の筆記具の軸筒。
【請求項3】
テーパー形状により構成された前記円滑挿入可能形状を設けたことを特徴とする請求項1記載の筆記具の軸筒。
【請求項4】
前記表面層を、前記内側層及び軸筒本体に対し着脱自在に被覆したことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。
【請求項5】
前記表面層を透明または半透明とし、前記内側層を前記表面層と異なる色で形成したことを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。
【請求項6】
前記表面層の内側を光沢面としたことを特徴とする請求項5に記載の筆記具の軸筒。
【請求項7】
前記表面層と内側層が、硬度の異なる軟質材で形成されるとともに、前記内側層を硬度の低い軟質材で構成し、前記表面層を硬度の硬い軟質材で構成したことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の筆記具の軸筒。
【請求項8】
前記内側層の外径に対し、それに対応する前記表面層の内径を大きくするとともに、前記軸筒本体の前記把持部に、前記表面層を軸方向に圧縮した状態で装着したことを特徴とする請求項1ないし7の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。
【請求項9】
前記表面層の先端部に、軸心に向かって延びる突起部を形成し、前記突起部の後端面が、前記内側層の先端面に当接することを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。
【請求項10】
前記内側層に対応する前記表面層の平均厚さが、1mm以上、5mm以下であることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の筆記具の軸筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2005/000600
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510996(P2005−510996)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008448
【国際出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)