説明

筆記具の軸筒

【課題】 組立が容易な筆記具の軸筒を提供すること。
【解決手段】 グリップ装着用係合部(4)を有し軸筒の他の部分よりも小径の把持部(3)と、前記グリップ装着用係合部(4)と係合する被係合部(8b)を有し前記グリップ装着用係合部(4)と前記被係合部(8b)とが係合して周方向の位置決めがされて前記把持部(3)に装着されるグリップ部材(G)と、を有する筆記具の軸筒(1)であって、硬質樹脂(8)と軟質樹脂(9)との二色成形により形成され、前記硬質樹脂(8)の一部が外部に露出し且つ内部に前記硬質樹脂と前記軟質樹脂とが露出するとともに、内部に露出した前記硬質樹脂に前記被係合部(8b)が形成された前記グリップ部材(G)を備えたことを特徴とする筆記具の軸筒(1)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸筒の把持部にグリップ部材を装着してなる筆記具の軸筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、軸筒の把持部に、弾性体からなるグリップ部材を装着してなる筆記具の軸筒はよく知られている。
【0003】
こうした筆記具において、グリップ部材は、二色成形により軸筒と一体形成したり、予め形成したグリップ部材を口先部材と軸筒の把持部を他の軸筒より小径にすることにより形成される段部間に嵌挿させて配設している。
【0004】
また、硬質樹脂の一部が外部に露出するように、軟質樹脂を二色成形により被覆して形成した筆記具として、本願出願人は、特開平10−297161(特願平9−123441)号公報「筆記具または塗布具の軸筒」にて開示している。
【0005】
また、予め形成したグリップ部材を口先部材と軸筒の把持部を他の軸筒より小径にすることにより形成される段部間に、グリップ部材が回転しないように嵌挿する構造として、実開平7−7985号公報「筆記具の滑り止め装置」に、筆記具本体の先端側の指当部の外周面に突縁ないし凹入縁を、ゴム等の弾性素材より成る弾性筒体の内周面に凹入縁ないし突縁を、少なくともそれぞれの軸線方向に沿わせて部分的に設け、指当部の凹入縁ないし突縁を弾性筒体の突縁ないし凹入縁に係合して弾性筒体に前記指当部を挾入した、筆記具の滑り止め装置が開示されている。
【特許文献1】「特開平10−297161(特願平9−123441)号公報」
【特許文献2】「実開平7−7985号公報」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、軟質樹脂を二色成形により被覆することによって、軸筒に対しグリップ部材が回転しにくく、あるいは回転しなくなるので好ましいが、軸筒と一体で、尚且つ前述したように硬質樹脂の一部が外部に露出させることを考慮すると、露出する部分の形状は、その他の軸筒形状によって制限されてしまうことがあった。また、肉厚が厚くなるため露出する部分に成形時のヒケ(くぼみ)が発生する恐れもあった。
【0007】
また、グリップ部材の内壁に形成した凹部及び/または凸部(被係合部)と、軸筒に形成した凸部及び/または凹部(グリップ装着用係合部)を凹凸係合させて回り止めを行うと、グリップ部材が軟質樹脂であるため、グリップ部材の内壁に形成した凹部及び/または凸部と、これに対応する位置に軸筒に形成した凸部及び/または凹部がない状態であっても、ある程度の押圧力を加えると、軟質樹脂の凸部は弾性変形し、あるいは、軸筒の凸部に対向する部分も弾性変形して嵌挿できてしまう。そのため、グリップ部材の回転方向の位置を、軸筒に対して一定にすることが難しく、特に機械組みにおいてグリップの回転方向の位置を一定にすることは難しいという問題があった。本発明のような硬質樹脂の一部が外部に露出し、装飾的に方向性を有するグリップ部材では、グリップ部材の回転方向の位置を、軸筒に対して一定にすることが重要となる。
【0008】
前述の事情に鑑み、本発明は、組立が容易な筆記具の軸筒を提供することを第1の技術的課題とする。
また、グリップ部材の回転方向の位置を一定にすることを第2の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の具体例(実施例)の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0010】
(本発明)
前記技術的課題を解決するために、本発明の筆記具の軸筒(1)は、グリップ装着用係合部(4)を有し軸筒の他の部分よりも小径の把持部(3)と、前記グリップ装着用係合部(4)と係合する被係合部(8b)を有し前記グリップ装着用係合部(4)と前記被係合部(8b)とが係合して周方向の位置決めがされて前記把持部(3)に装着されるグリップ部材(G)と、を有する筆記具の軸筒(1)であって、
硬質樹脂(8)と軟質樹脂(9)との二色成形により形成され、前記硬質樹脂(8)の一部が外部に露出し且つ内部に前記硬質樹脂(8)と前記軟質樹脂(9)とが露出するとともに、内部に露出した前記硬質樹脂(8)に前記グリップ装着用係合部(4)が形成された前記グリップ部材(G)を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、前記グリップ部材(G)の軸方向の少なくとも一方の端部(9b)を前記軟質樹脂(9)で形成することも可能である。
【0012】
さらに、内部に露出した前記軟質樹脂(9)の内壁(9a)が前記把持部(3)に圧入嵌合して前記把持部(3)に装着される前記グリップ部材(G)とすることも可能である。
【0013】
また、前記グリップ装着用係合部(4)と、前記硬質樹脂(8)に形成された前記被係合部(8b)とが係合を開始した後に、前記軟質樹脂(9)の内壁(9a)が軸筒の把持部(3)に圧入嵌合を開始するように構成することも可能である。
【0014】
さらに、前記グリップ部材(G)が、軸筒と色の異なる硬質樹脂(8)、軸筒及び硬質樹脂(8)と色の異なる軟質樹脂(9)で形成することも可能である。
【0015】
本発明の硬質樹脂(8)は、AS樹脂、ABS樹脂、POM樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PBT(ポリブチレンテレフタレート)樹脂、PP樹脂、PMMA(ポリメタクリル)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂等の硬質樹脂(8)である。
【0016】
本発明の軟質樹脂(9)は、ポリスチレン系、ポリウレタン系、ポリオレフィン系の熱可塑性エラストマー等、筆記具のグリップ部材(G)として一般的に知られている熱可塑性エラストマーや熱融着性エラストマーのなかから、前述した硬質樹脂(8)に二色成形により被覆することを鑑みて、選択した硬質樹脂(8)との成形性や融着性等を考慮して適宜選定すればよい。
【0017】
(本発明の作用)
前記構成要件を備えた本発明の筆記具の軸筒(1)では、グリップ部材(G)は、硬質樹脂(8)と軟質樹脂(9)との二色成形により形成され、前記硬質樹脂(8)の一部が外部に露出し、内部に前記硬質樹脂(8)と前記軟質樹脂(9)とが露出するとともに、前記グリップ装着用係合部(4)を内部に露出した硬質樹脂(8)に形成している。硬質樹脂(8)にグリップ装着用係合部(4)を形成することにより、筆記具の軸筒(1)を容易に組み立てることができると共に、グリップ部材(G)の回転方向の位置を一定にすることができる。また、内部に露出した軟質樹脂(9)が前記グリップ部材(G)の軸方向の少なくとも一方の端部(9b)に形成されている場合、軟質樹脂(9)を圧縮して保持することができるので、寸法精度を厳密にしなくてもグリップ部材(G)の位置や軟質樹脂(9)に当接して位置が決まる部材の位置が隙間無く定まる。また、前記グリップ部材(G)が前記把持部(3)に装着される際に、内部に露出した前記軟質樹脂(9)の内壁(9a)が前記把持部(3)に圧入嵌合される場合、グリップ部材(G)のガタツキや回転を防止できるので、筆記具の軸筒(1)を容易に組み立てることができる。さらに、前記グリップ装着用係合部(4)と前記硬質樹脂(8)に形成された前記被係合部(8b)とが係合を開始した後に、前記軟質樹脂(9)の内壁(9a)が軸筒の把持部(3)に圧入嵌合を開始するようにした場合、圧入前にグリップ部材(G)の位置出しができるので、さらに組立が容易なる。また、前記グリップ部材(G)を、軸筒と色の異なる硬質樹脂(8)、軸筒及び硬質樹脂(8)と色の異なる軟質樹脂(9)で形成した場合、装飾的なグリップ部材(G)を提供できる。
【発明の効果】
【0018】
前述の本発明により、組立が容易で、かつグリップ部材が回転することなく、装飾的なグリップ部材の位置を一定にすることが容易な筆記具の軸筒を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
装飾的なグリップ部材の位置を一定にする筆記具の軸筒を提供する目的を、組立性を損なわずに実現した。
【実施例1】
【0020】
図1から図4に示す筆記具の軸筒1は、軸筒本体2の外径を小径に形成した把持部3にグリップ部材Gを装着するが、グリップ部材Gは予め青色の硬質樹脂8(ABS樹脂)に、硬質樹脂8の一部が外部に露出し、グリップ部材Gの内壁に、硬質樹脂部8aと軟質樹脂部9aとを形成するように、黒色の軟質樹脂9(オレフィン系の融着性エラストマー)を二色成形により被覆して形成してある。
【0021】
グリップ部材Gを軸筒本体2の把持部3に装着する時には、把持部3に形成した凸部(グリップ装着用係合部)4と、グリップ部材Gの硬質樹脂部の内壁8aに形成した、凸部4に対応する凹部(被係合部)8bとを係合する。
【0022】
また、グリップ部材Gの凹部8bと把持部3の凸部4との凹凸係合の開始(図4のAの状態)し、その後、さらにグリップ部材Gの装着が進む(図4の矢印方向)と、グリップ部材Gの軟質樹脂部の内壁9aと把持部3が圧入嵌合を開始(図4のBの状態)するように、軟質樹脂部の内壁9aと、硬質樹脂部の内壁8aと、把持部3の凸部4との位置関係を設定し、軟質樹脂部の内壁9aの最小内径Lと、硬質樹脂部の内壁8aの最小内径Mと、把持部3の最大外径Nの関係をL<N<Mとする。その後、口先部材6の内壁に形成した雌ねじ部7を、軸筒本体2の先端に形成した雄ねじ部5に螺着して筆記具の軸筒を得ている。図示はしていないが、筆記具として使用する場合には、軸筒内には、先端にボールペンチップを装着したボールペンレフィルを収納する。
【0023】
硬質樹脂の軸筒本体2の把持部3に形成した凸部4と、グリップ部材Gの硬質樹脂部8の内壁8aに形成した凹部8bとを凹凸係合するので、グリップ部材Gの位置出しが容易なり、さらに、軟質樹脂部9の内壁9aが、軸筒本体2の把持部3に圧入嵌合するので、グリップ部材Gのガタツキ及び回転を確実に防止する。
【0024】
また、硬質樹脂の軸筒本体2の把持部3に形成した凸部4と、グリップ部材Gの硬質樹脂部8の内壁8aに形成した凹部8bとを凹凸係合を開始した後に、軟質樹脂部9の内壁9aが、軸筒本体2の把持部3に圧入嵌合を開始することによって、圧入前にグリップ部材Gの位置出しができるので、さらに組立が容易なるので好ましい。
【0025】
また、グリップ部材Gのどちらか一方、好ましくは両方の端面9bを軟質樹脂で形成することにより、口先部材6を螺合する時に、軟質樹脂9を圧縮して保持することができ、寸法精度を厳密にしなくても、或いは経時による寸法変化等により、口先部材6とグリップ部材Gとの間に隙間が形成されないので好ましい。
【0026】
本実施の形態では、便宜上、軟質樹脂部9の内壁9aの最小内径Lと、硬質樹脂部8の最小内径Mと、把持部3の最大外径Nの関係をL<N<Mとし、把持部3に形成した凸部4と、硬質樹脂部8に形成した凹部8bとが係合を開始した後に、軟質樹脂部9の内壁9aが軸筒1の把持部3に圧入するようにしてあるが、図示はしていないが、軟質樹脂部9の内壁9aの最小内径と、硬質樹脂部8の最小内径とを同一とし、軟質樹脂部9の内壁9aに対応する把持部3の外径と、硬質樹脂部8の内壁8aに対応する把持部3の外径とを変えることにより、把持部3に形成した凸部4と、硬質樹脂部8に形成した凹部8bとが係合を開始した後に、軟質樹脂部8の内壁8aが軸筒1の把持部3に圧入するようにしてもよい。
【0027】
また、本実施例では、グリップ装着用係合部として凸部4を例示し、被係合部として凹部8bを例示したが、これに限定されず、グリップ装着用係合部として凹部または凸部と凹部との組み合わせを使用することも可能であり、被係合部として前記グリップ装着用係合部に対応して凸部や凹部と凸部との組み合わせを使用することも可能である。
さらに、本実施例では、把持部3に圧入する軟質樹脂部9の内壁9aを先端部に配置したが、これに限定されず、後端部や中央部に配置することも可能である。例えば、前記圧入が行われる部分を後端部に配置し、先端部分の軟質樹脂部9の内壁9aと把持部3とが圧入せず、口先部材6で圧縮可能な構成とすることも可能である。さらに、本実施例では、把持部3とグリップ部材Gとが圧入する構成と、軟質樹脂9を端部に設ける構成の両方を使用したが、何れか一方の構成のみを備えた軸筒1とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0028】
軸筒にクリップや文字や絵などの装飾を施し、軸筒とグリップ部材の位置の特定が不可欠な用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の筆記具の軸筒の実施例の説明図であり、図1Aは本発明の筆記具の軸筒を示す一部省略した要部縦断面図であり、図1Bは図1Aの矢印IB方向から見た上面図である。
【図2】図1における組立前の筆記具の軸筒を示す図である。
【図3】図1AのIII−III線断面図である。
【図4】筆記具の軸筒におけるのグリップ部材の組立行程を示す図であり、図4Aはグリップ装着用係合部と被係合部とが係合を開始した状態の説明図、図4Bはグリップ部材の内壁と把持部とが圧入嵌合を開始した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0030】
1 筆記具の軸筒、
2 軸筒本体、
3 把持部、
4 凸部(グリップ装着用係合部)、
5 雄ねじ部、
6 口先部材、
7 雌ねじ部、
8 硬質樹脂、
8a 硬質樹脂部の内壁、
8b 凹部(被係合部)、
9 軟質樹脂部、
9a 軟質樹脂部の内壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリップ装着用係合部を有し軸筒の他の部分よりも小径の把持部と、前記グリップ装着用係合部と係合する被係合部を有し前記グリップ装着用係合部と前記被係合部とが係合して周方向の位置決めがされて前記把持部に装着されるグリップ部材と、を有する筆記具の軸筒であって、
硬質樹脂と軟質樹脂との二色成形により形成され、前記硬質樹脂の一部が外部に露出し且つ内部に前記硬質樹脂と前記軟質樹脂とが露出するとともに、内部に露出した前記硬質樹脂に前記グリップ装着用係合部が形成された前記グリップ部材を備えた前記筆記具の軸筒。
【請求項2】
前記グリップ部材の軸方向の少なくとも一方の端部が前記軟質樹脂で形成されたグリップ部材を備えた請求項1に記載の筆記具の軸筒。
【請求項3】
内部に露出した前記軟質樹脂の内壁が前記把持部に圧入嵌合して前記把持部に装着される前記グリップ部材を有する請求項1または2に記載の筆記具の軸筒。
【請求項4】
前記グリップ装着用係合部と、前記硬質樹脂に形成された前記被係合部とが係合を開始した後に、前記軟質樹脂の内壁が軸筒の把持部に圧入嵌合を開始することを特徴とする請求項3に記載の筆記具の軸筒。
【請求項5】
前記グリップ部材が、軸筒と色の異なる硬質樹脂、軸筒及び硬質樹脂と色の異なる軟質樹脂で形成したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の筆記具の軸筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/012001
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512503(P2005−512503)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010723
【国際出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(303022891)株式会社パイロットコーポレーション (647)