説明

筆記具

【課題】 平均毛細管半径が大きいペン先側は、ペン先材質の濡れ性にも左右されるが、ペン先を生成する部材間の隙間が小さく設定される為、インキ中の固形物が詰まりやすいという問題がある。よって、下向きに保管される事によって、例えば、顔料成分を含んだインキでは顔料の沈降によってペン先先端の詰まりが発生し、筆記カスレが発生しやすい。
【解決手段】 筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記各々のキャップの外接円形を異ならしめ、その外接円形の大きなキャップを平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着すると共に、一方、外接円形の小さなキャップを平均毛細管半径の小さな筆記部側に装着した筆記具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にインキが収容された筆記具本体の両端に、毛細管力の異なる二つのペン先を持った、いわゆる両頭式の筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一本の筆記具の両端に、二つのペン先を有する、いわゆる両頭式の筆記具において、多種多用な筆記線を描けるという事から、一方のペン先を太字用、また、他方のペン先を細字用として、筆記線幅の異なる二つのペン先を備える筆記具が多くもちいられている。
筆記線幅の異なるペン先は、ペン先形状にて筆記線幅に変化を付ける事もあるが、ペン先へのインキの毛細管力に変化を持たせ、吐出量を調整するという事も必要であり、両頭式の場合、細字側のペン先の毛細管力を上げ、吐出を少なくし、細字用に対応させる一方、太字側のペン先の毛細管力を下げ、吐出を多くし、太字用に対応させるというペン先設計を従来行ってきた。この毛細管力の設定はインキの粘度、表面張力、接触角度等にもよって設定されるものであるが、インキ物性など全てをまとめて、下記ウォッシュバルの式(数1)における平均毛細管半径にて表せる。つまり、平均毛細管半径が大きい物は、毛細管力が大きいと言える。また、インキが太字、細字共通で有る場合、それらの平均毛細管半径の大小は、ペン先の材質、及び、毛細管を発生させるペン先を生成する部材間の隙間によって決定する。
このようなペン先の設定(設計)によって、筆記線幅の異なる二つのペン先を備えた両頭式筆記具の外装は、特許文献1にも記載の通り、一目でペン先の太さが解るよう、太字用のペン先側の外径は太く、また、細字用のペン先側の外径は細くなっている。また、細字用のペン先は、細かい箇所への筆記に使用される事が多く、ペン先の視認性も重要で有ることから、細字用のペン先側の軸が細く設計される事は視認性の面からもより良い。
また、このような両頭式筆記具に、利便性の点からクリップを設ける場合、デザイン上からも、クリップ機能上からも、ペン先の識別性からも、外装が太い側のキャップにクリップが取り付ける事が行われてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−39878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記記載のように、筆記線幅の異なる二つのペン先を持つ両頭式筆記具の外装は、外形が両端で異なるが、一般的に軸が太く、クリップ等がついている側が上向きに保管される事が多い。つまり、太字側(平均毛細管半径が小さいペン先側)が上向きに、細字側(平均毛細管半径が大きいペン先側)が下向きに保管される事になる。
しかしながら、平均毛細管半径が大きいペン先側は、ペン先材質の濡れ性にも左右されるが、ペン先を生成する部材間の隙間が小さく設定される為、インキ中の固形物が詰まりやすいという問題がある。よって、下向きに保管される事によって、例えば、顔料成分を含んだインキでは顔料の沈降によってペン先先端の詰まりが発生し、筆記カスレが発生しやすい。また、顔料成分を含まないインキであっても、キャップ内でのペン先先端の微少な乾燥によって、ペン先先端のインキが高粘度化し、その高粘度化したインキがペン先先端に蓄積する事によって、筆記カスレが発生しやすいという問題があった。
また、平均毛細管半径が小さいペン先側は、ペン先材質の濡れ性にも左右されるが、ペン先を生成する部材間の隙間が小さく設定される為、インキの動きが大きい。よって、上向きに保管される事によって、インキ下がりが発生し、筆記カスレが発生しやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に、下記(数1;ウォッシュバルの式)における平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記各々のキャップの外接円形を異ならしめ、その外接円形の大きなキャップを平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着すると共に、一方、外接円形の小さなキャップを平均毛細管半径の小さな筆記部側に装着したことを第1の要旨とし、
筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に下記(数1;ウォッシュバルの式)における平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着するキャップの外面に装飾を施したことを第2の要旨とする。
【0006】
【数1】

【発明の効果】
【0007】
筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記各々のキャップの外接円形を異ならしめ、その外接円形の大きなキャップを平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着すると共に、一方、外接円形の小さなキャップを平均毛細管半径の小さな筆記部側に装着したことを第1の要旨とし、
筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着するキャップの外面に装飾を施したことを第2の要旨としたので、保管時に平均毛細管半径の大きい(細字用)ペン先側は上向きになり、その細字用のペン先には顔料等の沈降詰まりや、高粘度化したインキの詰まりを防ぐ事が出来る。また、その細字用のペン先は平均毛細管半径が大きい為、インキ下がりは発生しにくい。
一方、平均毛細管半径の小さいペン先、つまり太字用のペン先側は下向きに保管される為、インキ下がりを防ぐ事が出来る。また、その太字用のペン先は平均毛細管半径が小さい為、ペン先を生成する部材間の隙間は、細字側に比べると大きく、その結果、顔料等の沈降詰まりや、高粘度化したインキの詰まりは発生しにくい。つまり、製品全体として、経時による不良が発生しづらく、製品寿命を長く保つ事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1例を示す縦断面図。
【図2】図1の外観図。
【図3】第2例の外観図。
【図4】第3例の外観図。
【図5】第4例の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
筆記具本体は、両端に平均毛細管半径の異なる二つのペン先を備え、内部にインキ収容室を備える軸体である。その筆記具本体の材質としては、金属や、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスチレン、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリメタクリレートなどの合成樹脂が例示でき、中でも、内部のインキ透過などによるインキ減量性、価格、成形性、インキの主媒体である水やイソプロピルアルコールなどとの溶解、変形、膨潤などの反応性、更には内部のインキ消費状況が視認可能な透明性などを考慮すると、ポリプロピレンやポリエチレンが好適に使用出来る。合成樹脂の成形法としては、ブロー成形、射出成形などが適宜利用できる。
【0010】
筆記具本体の両端に設けられるペン先としては、ボールペンのボールが回転自在に配置されたチップ、繊維収束体、ウレタンなどの多孔質体、連通孔を有する合成樹脂製塗布先など適宜使用可能である。平均毛細管半径とは、前記ウォッシュバルの式(数1)により求まるrの値であり、ペン先単体にてインキの吸い上げを行った際に、インキが単位高さ辺りを吸い上がるまでの時間によって求める事が出来る。尚、同一インキにおけるペン先での比較である為、下記(数2)は一定であり、平均毛細管半径rをr=H/tと簡略化して平均毛細管半径の大小を比較する。
【0011】
【数2】

【0012】
筆記具本体へのインキの収容方法は、繊維収束体などのインキ吸蔵体に浸透させたり、インキ吸蔵体などを使用せずに、本体内に直接自由状態で収容してもよい。使用されるインキも、着色剤として染料及び/又は顔料が使用でき、主媒体も水、有機溶剤が適宜使用できる。
筆記具本体の両端には、ペン先の乾燥を防止する為に、ペン先を気密に保持出来るキャップが着脱可能に嵌合されている。キャップは、細字ペン先側には細字用のキャップが、太字ペン先側には太字用のキャップが設けられ、各々が各々のペン先側にのみ嵌合されるよう、筆記具本体の細字用ペン先挿入側の外形と細字用キャップ内形が同形状に、また、太字用ペン先挿入側の外形と太字用キャップ内形が同形状となっている。しかし、細字用ペン先挿入側の外形と、太字用ペン先挿入側の外形は異なっている。
キャップの外径は、太字用キャップよりも細字用キャップの方が大きく、ペン立て等に立てられる際に細字用ペン先が上向きに保管されるようなしてある。また、細字用キャップに装飾を施したり、デザイン性の優れたキャップとすることで、より細字用ペン先側が上向きに保管される。また、細字用キャップの外面にクリップを設けたり、ストラップ紐を付加することで、筆記具を持ち運ぶ際にも細字用ペン先が上向きに保管されやすくなる。
【0013】
以下、図面に基づき説明する。図1に示したものは、本発明の筆記具を、一方のペン先は繊維収束体、もう一方のペン先は合成樹脂製の塗布先を用いた両頭式筆記具に適用させた例である。
【0014】
本発明実施の形態は、図1、図2(第1例)に示すように、筆記具本体1の上端開口部には合成樹脂よりなる細字ペン先2がペン先ホルダー3を介して挿入され、下端開口部には繊維収束体よりなる太字ペン先4が挿入されている。細字ペン先2とペン先ホルダー3は圧入により接続され、太字ペン先4と筆記具本体1も圧入により接続されている。
【0015】
各ペン先の、先に記載のウォッシュバルの式より求められる平均毛細管半径rは、同一インキにより吸い上げ試験を行い、(数2)は一定である為、r=H/tとして次の様に求まった。前記細字ペン先2は、19mmの吸い上げ距離を4.5秒で吸い上がる為、80.2mm/sである。一方、太字ペン先4は19mmの吸い上げ距離を15秒で吸い上がる為、24.0mm/sである。よって、本実施例は、細字ペン先の方が太字ペン先と比較して、平均毛細管半径が大きい。
【0016】
前記筆記具本体1の内部には、油性の染料インキを吸蔵させた吸蔵体5を収容されている。その吸蔵体5の前端部と後端部には、細字ペン先2及び太字ペン先4の後端近傍部が挿入状態にて接続されている。
【0017】
前記ペン先ホルダー3の周囲には細字キャップ6が、キャップ嵌合部3aにて着脱可能に嵌合され、細字ペン先2を気密に保持している。
また、筆記具本体1の下端周囲には太字キャップ7が、キャップ嵌合部1aにて着脱可能に嵌合され、太字ペン先4を気密に保持している。
前記ペン先ホルダー3に設けたキャップ嵌合部3aの外径は、筆記具本体1に設けたキャップ嵌合部1aの外径よりも大きく、太字キャップ7はペン先ホルダー3のキャップ嵌合部3a側には嵌合しない形状をなしている。また、細字キャップ6の内形は細字ペン先2の外形に近似させており、太字ペン先4よりも内部空間が狭く、細字キャップ6は筆記具本体1のキャップ嵌合部1a側には嵌合しない形状をなしている。
【0018】
図2の本実施例の外観図より、細字キャップ6の最外径は、太字キャップ7の最外径より大きくなっている。即ち、細字キャップ6の横断面の最大外接円形は、太字キャップ7の横断面の最大外接円形よりも大きくなっている。つまり、ペン立て等に立てられる際に細字ペン先2が上向きに保管されるようなしてある。よって、平均毛細管半径が大きい細字ペン先2が上向きに保管される為、高粘度化したインキの詰まりは発生しにくく、且つ、平均毛細管半径の小さい太字ペン先4が下向きに保管される為、インキ下がりが発生しない。つまり、どちらのペン先も筆記カスレが発生しにくい状態を保つ事が出来る。
【0019】
図3に本発明に基づいた第2例を示す。その図3は図2同様、上側が細字ペン先側、下側が太字ペン先側となっている。
前記第1例と異なる点として、細字キャップ6の外装に装飾及び/又は目印となる文字、ドットやラインなどの幾何学模様、星やハートなどの図柄などを、公知の機械加工、レーザー加工、エッチング、めっき、印刷、塗装などの方法で形成している。また、細字キャップ6の天面には、天然石及び/又は鏡、ガラスに、カット及び磨き加工等を行ったモチーフ6aを設けた。これによって、ペン立て等に立てられる際に、見栄えの観点から装飾が施されている細字ペン先2が上向きに、太字ペン先4が下向きに保管されるようになる。よって、筆記カスレを発生しにくくする事が可能となる。
【0020】
図4に本発明に基づいた第3例を記載する。図4は図2同様、上側が細字ペン先側、下側が太字ペン先側となっている。
前記第1例と異なる点として、細字キャップ6にクリップ6bを設けた。細字キャップ6にクリップ6bを設ける事により、ペン立てではもちろん、筆記具をポケット等に挿入した状態で持ち歩く際にも、細字ペン先2が上向きに、太字ペン先4が下向きに保管されるようになる。よって、筆記カスレを発生しにくくする事が可能である。
尚、本実施例におけるクリップの表面に、動物や植物、或いは、幾何学模様と言った装飾効果を施しても良い。より一層、細字ペン先2を上向きにした状態で保管がなされるようになる。
また、本実施例においても細字キャップ6の横断面の最大外接円形は、太字キャップ7の横断面の最大外接円形よりも大きなものとなっている。
【0021】
図5に本発明に基づいた第4例を記載する。図5は図2同様、上側が細字ペン先側、下側が太字ペン先側となっている。
前記第1例と異なる点として、細字キャップ6の天面に紐を取り付ける取り付け孔6cを設け、その取り付け孔6cに実用性、或いは、装飾効果としても発揮する紐8を設けた。紐8を細字キャップ6の天面に設ける事により、ペン立て及びポケットではもちろん、筆記具を首から提げたり、ストラップとして紐にて吊り下げて保管出来るようになる。即ち、より細字ペン先2が上向きに、太字ペン先4が下向きに保管される。よって、より筆記カスレを発生しにくくする事が可能である。
尚、本実施例においても細字キャップ6の横断面の最大外接円形は、太字キャップ7の横断面の最大外接円形よりも大きなものとなっている。
【符号の説明】
【0022】
1 筆記具本体
1a キャップ嵌合部
2 細字ペン先
3 ペン先ホルダー
3a キャップ嵌合部
4 太字ペン先
5 吸蔵体
6 細字キャップ
6a モチーフ
6b クリップ
6c 紐取り付け孔
7 太字キャップ
8 紐

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記各々のキャップの外接円形を異ならしめ、その外接円形の大きなキャップを平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着すると共に、一方、外接円形の小さなキャップを平均毛細管半径の小さな筆記部側に装着した筆記具。
【請求項2】
筆記本体の内部にインキを収容し、その筆記具本体の両端に平均毛細管半径の異なる筆記部を有する筆記具であって、その各々の筆記部を被覆するキャップを前記筆記具本体の両端部に各々着脱自在に装着すると共に、前記平均毛細管半径の大きな筆記部側に装着するキャップの外面に装飾を施した筆記具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−135920(P2012−135920A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289113(P2010−289113)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】