説明

筆記装置におけるXレールの移動制御装置

【構成】ケーシングフレーム1に対しY軸方向に移動するXレール2と、Xレール2に対してX軸方向に移動自在に設けられたペンアーム5とを備えるとともに、ケーシングフレーム1には、Xレール2の左右端部の近傍に各々ラックレール6をY軸方向に敷設し、該ラックレール6に噛合するピニオン10をXレール2の左右端部に各々連動するように配置した。
【効果】Xレール2がY軸方向に移動する場合、Xレール2の左右両端のピニオン10がそれぞれラックレール6上を噛合状態を保持したまま転動する。両側のピニオン10は同時に同方向に同回転数だけ回転するから、ペンアーム5が強制的にY軸方向に引き出された場合であっても、左右はずれることがなく、Xレール2は常に平行に移動し、筆記不良が生じることがない。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、ケーシングフレームにX軸方向に移動自在に設けられたXレールと、Xレール上にY軸方向に移動自在に設けられて筆記具を保持するペンアームとを備えた筆記装置において、上記XレールをピニオンとラックレールによってY軸方向に移動制御するXレールの移動制御装置に関する。
【0002】
【従来技術】
ケーシングフレームに対してY軸方向に移動するXレールとXレールに対してX軸方向に移動するペンアームとを有し、ペンアームの端部に筆記具を備えた筆記装置においては、Xレールは正確にY軸方向に移動するように確保されなければならない。そのため、Xレールの移動制御手段として、従来はXレールの左右両端をそれぞれY軸方向に張設されたタイミングベルトに固定し、一方のタイミングベルトを駆動させることにより、XレールをY軸方向に移動自在とした構造が知られている。この構造では、各タイミングベルトの両端はケーシングフレームに設けられた歯車に噛合していた。
【0003】
このような構造では、通常の筆記動作時には支障はないが、例えば筆記具を装着するためにペンアームを強制的にケーシングフレームから離れた位置に引き出したときなどの場合は、ペンアームがX軸方向の中心から左右いずれの側に偏っていたかによって一方だけが強く引っ張られるので、ペンアームの左右が均一に移動できず、強く引っ張られた方のタイミングベルトの歯が噛合していたピニオンの歯の次の歯に噛合してしまう、いわゆる歯飛び現象が発生し、左右の移動量が1ピッチずれることにより、このためX軸方向の移動とY軸方向がずれてしまい、筆記不良が生じるという問題があった。
【0004】
【考案の目的】
本考案は前記問題点を解消し、特にXレールのY軸方向の移動を常に平行となるように確保することができるXレールの移動制御装置を提供することをその目的とする。
【0005】
【目的を達成するための手段】
前記目的を達成するため、本考案に係る筆記装置におけるXレールの移動制御装置は、ケーシングフレームに対しY軸方向に移動するXレールと、Xレールに対してX軸方向に移動自在に懸架されたXキャリッジと、Xキャリッジに基端を支持されるとともに先端に筆記具を設けたペンアームとを備えた筆記装置において、前記ケーシングフレームには、前記Xレールの左右端部の近傍に各々ラックレールをY軸方向に敷設し、該ラックレールに噛合するピニオンを前記Xレールの左右端部に各々配置して互いに連動させたことを特徴とする。
【0006】
なお、前記ラックレールのラック部を下方に向けて形成するのが好ましい。
【0007】
また、前記ピニオンに刻設される歯は左右において半ピッチずらして形成され、ラックレールのラック部も前記ピニオンに対応して半ピッチずらして形成されているのが好ましい。
【0008】
【考案の作用、効果】
前記構成によれば、筆記用紙面に文字や図形を描く際、XレールをY軸方向に、ペンアームをX軸方向に移動させて所定の文字や図形を描いていくが、XレールがY軸方向に移動するときに、Xレールの左右両端のピニオンもそれぞれラックレール上を噛合状態を保持したまま転動する。両側のピニオンは互いに連動するから、同時に同方向に同回転数だけ回転する。したがって、ペンアームが強制的にY軸方向に引き出された場合であっても、左右はずれることがなく、Xレールは常に平行に移動し、筆記不良が生じることがない。
【0009】
なお、ラックレールの歯を下側に刻設すると、ゴミ・埃等がラックレールの歯部に付着しにくく、ラックレールとピニオンの噛合を円滑に保つことができ、作画等の品質が安定する。
【0010】
また、ラックレールのラック部とピニオンの歯とをそれぞれ半ピッチずらした場合は、タイミングベルト等で発生する反転時のずれ(歯車にあってはバックラッシュ)が解消でき、作画等の品質をより向上させることができる。
【0011】
【実施例】
以下、図面によって本考案の実施例について説明すると、図1、図2は筆記装置を示すもので、この筆記装置には、ケーシングフレーム1に対しY軸方向に移動自在に設けられたXレール2と、Xレール2に対してX軸方向に移動自在に懸架されたXキャリッジ3と、Xキャリッジ3に対し基端を支持されるとともに先端に筆記具4を設けたペンアーム5と、Xレール2とXキャリッジ3とを駆動する駆動機構A、Bと、各駆動機構A、Bを制御する制御手段とが設けられている。
【0012】
ケーシングフレーム1のXレール2の左右端部の近傍には、各々ラックレール6がY軸方向に平行に敷設されている。各ラックレール6はケーシングフレーム1の底部の上方に一定の間隔をおいて配置され、ラック部7は下方に向くように設けられている。
【0013】
これに対し、Xレール2の両端にはYキャリッジ8が固定されているとともに、両側のYキャリッジ8はXレール2の下方に配置された連結軸9によって連結されている。この連結軸9の端部には図3、図4に示すようにピニオン10が固定され、該ピニオン10は上記ラックレール6に噛合している。また、ピニオン10の内側には転動ローラ11が同軸上に固定され、転動ローラ11はケーシングフレーム1の底部12に当接し、ピニオン10のラックレール6に対する噛合を保持している。
【0014】
なお、ピニオン10のラックレール6に対する噛合が解除されないように確保する手段としては、要するにピニオン10がラックレール6から離れないようにするものであればよく、転動ローラ11に限定されない。
【0015】
また、上記ピニオン10に刻設される歯13a、13bは、図5(a) (b) のように左右において半ピッチずらして形成され、これに対応してラックレール6のラック部7a、7bもピニオン10に噛合するように半ピッチずらして形成してもよい。
【0016】
次に、ペンアーム5の基端はヒンジを介してXキャリッジ3に対し上下方向に回動自在に支持されている。ペンアーム5の先端には筆記具4が装着されている。Xキャリッジ3にはローラ24がXレール2の両側縁を挟むように配置され、Xキャリッジ3はローラ24を介してXレール2に沿って自由に移動できるように形成されている。
【0017】
なお、Xレール2の前部にはペンアップレール14が回動自在に支持されている。このペンアップレール14は上方に回動するときにペンアーム5の下面に当たってペンアーム5の筆記具4が筆記用紙面から離反するように押し上げ、ペンアップレール14が下方に回動するときにペンアーム5が自重によって降下して筆記具4が筆記用紙面に接触するのを許容するものである。ペンアップレール14の回動はソレノイド22と捻りコイルバネ23を利用した公知の回動制御機構によって行なえばよい。
【0018】
次に、図1、図2に示すように、ケーシングフレーム1にはXレール2とXキャリッジ3とを駆動する駆動機構A、Bが設けられている。Xレール2の駆動機構Aは、ケーシングフレーム1に対しY軸方向に張設されたタイミングベルト15をY軸駆動用ステップモータ16に連係させるとともに、上記タイミングベルト15の一部に一方のYキャリッジ8を固定することによって構成されている。
また、Xキャリッジ3の駆動機構Bは、上記タイミングベルト15の下方にY軸方向に配置された回転軸18をX軸駆動用ステップモータ17に連係させ、上記回転軸18に対し摺動自在で且つ回転軸18とともに回転する歯車19を上記一方のYキャリッジ8に設けるとともに、上記歯車19と他方のYキャリッジ8に設けた歯車20とにタイミングベルト21を懸架し、該タイミングベルト21の一部にXキャリッジ3を固定することによって構成されている。
【0019】
前記駆動機構A、Bにおいて、Y軸駆動用ステップモータ16を作動させると、タイミングベルト15が回転移動し、これに追従してYキャリッジ8もY軸方向に移動するから、Xレール2はY軸方向に移動し、これに応じてXレール2上のペンアーム5もY軸方向に移動する。また、X軸駆動用ステップモータ17を作動させると、回転軸18が回転するから、この回転量に応じて歯車19、20を介してタイミングベルト21が回転移動し、これに追従してXキャリッジ3もX軸方向に移動し、このためペンアーム5はX軸方向に移動する。上記Y軸駆動用ステップモータ16とX軸駆動用ステップモータ17は、それぞれマイコンによる制御手段(図示せず)に連係し、制御手段のコマンドによって所定の回転量だけ回転する。なお、回転軸18側のYキャリッジ8は上記回転軸18に対し摺動自在に設けられている。
【0020】
前記構成の筆記装置により筆記用紙面に文字や図形を書く場合、ペンアーム5を筆記用紙面に接触させたり離反させたりしながら、Xレール2をY軸方向に、ペンアーム5をX軸方向に移動させて所定の文字や図形を描いていく。この場合、Xレール2がY軸方向に移動する場合、Xレール2の左右両端のYキャリッジの連結軸9上の転動ローラ11がケーシングフレームの底部12上を転動するとともに、ピニオン10がそれぞれラックレール6上を噛合状態を保持したまま転動する。したがって、タイミングベルト15がXレール2の一側にのみ配置されていても、両側のピニオン10は互いに連動し、同時に同方向に同回転数だけ回転するから、ペンアーム5が強制的にY軸方向に引き出された場合であっても、左右はずれることがなく、Xレール2は常に平行に移動し、筆記不良が生じることがない。また、ラックレール6の歯が下側に刻設されているため、ゴミ・埃等がラックレール6の歯部に付着しにくく、ラックレール6とピニオン10の噛合を円滑に保つことができ、作画等の品質が安定する。さらに、ラックレール6のラック部7とピニオン10の歯とをそれぞれ半ピッチずらした場合は、タイミングベルト等で発生する反転時のずれ(歯車にあってはバックラッシュ)が解消でき、作画等の品質をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】筆記装置の斜視図である。
【図2】上記筆記装置の平面図である。
【図3】ラックレールとピニオンの噛合状態と転動ローラの転動状態を示す説明図である。
【図4】図2のXーX線上の断面図である。
【図5】(a) (b) はそれぞれ半ピッチずつずれたラックレールとピニオンの噛合関係を示す側面図及び正面図である。
【符号の説明】
1 ケーシングフレーム
2 Xレール
3 Xキャリッジ
4 筆記具
5 ペンアーム
6 ラックレール
10 ピニオン
14 ペンアップレール

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 ケーシングフレームに対しY軸方向に移動するXレールと、Xレールに対してX軸方向に移動自在に懸架されたXキャリッジと、Xキャリッジに基端を支持されるとともに先端に筆記具を設けたペンアームとを備えた筆記装置において、前記ケーシングフレームには、前記Xレールの左右端部の近傍に各々ラックレールをY軸方向に敷設し、該ラックレールに噛合するピニオンを前記Xレールの左右端部に各々配置して互いに連動させたことを特徴とする筆記装置におけるXレールの移動制御装置。
【請求項2】前記ラックレールのラック部を下方に向けて形成したことを特徴とする請求項1記載の筆記装置におけるXレールの移動制御装置。
【請求項3】前記ピニオンに刻設される歯は左右において半ピッチずらして形成され、ラックレールのラック部も前記ピニオンに対応して半ピッチずらして形成されていることを特徴とする請求項1記載の筆記装置におけるXレールの移動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】実開平5−72487
【公開日】平成5年(1993)10月5日
【考案の名称】筆記装置におけるXレールの移動制御装置
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−21356
【出願日】平成4年(1992)3月10日
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)