説明

筋力測定装置

【課題】下肢筋力及びそれ以外の筋力を測定することが可能で、さらには被験者が1人でも容易に筋力測定を行うことが可能な筋力測定装置を提供すること。
【解決手段】この発明の筋力測定装置は、被験者の下肢を載せる下肢載置器1に、被験者の下肢の動作を検知して筋力を測定する測定器2を着脱可能に取り付けてなり、被験者は下肢載置器1に下肢を載せ、下肢を動かして測定器2に検知させることにより、容易に下肢筋力の測定が行えるようになっており、また、前記測定器2は、下肢載置器1から取り外して下肢筋力以外の筋力を測定できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下肢筋力等の筋力を測定するための筋力測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高齢者の転倒は、下肢筋力や握力の低下が大きな要因であることが明らかとなっている。高齢者が転倒による骨折によって寝たきりなどにならないようにするには、下肢筋力その他様々な筋力を自己管理することが望ましい。そのため、一般家庭、老人ホームその他介護関連施設においても、下肢筋力及びその他の筋力を容易に測定することが可能な装置が求められている。
【0003】
しかし、体重や体脂肪等については、被験者が1人で容易に測定することが可能な機器が広く一般家庭にまで普及しているのに対し、下肢筋力等の筋力については、被験者が容易に測定できるようにした装置はこれまで存在しなかった。
【0004】
そのため、下肢筋力等の筋力を測定するためには、病院、大学等の医療機関の専門家が、非特許文献1にあるように、被験者にハンドヘルドダイナモメータ等の機器を装着して測定を行う必要があった。
【非特許文献1】アニマ株式会社、“等尺性筋力測定装置 μTas F−1”、[online]、[平成18年2月8日検索]、インターネット<URL:http://www.anima.jp/f1.htm>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、下肢筋力及びそれ以外の筋力を測定することが可能で、さらには被験者が1人でも容易に筋力測定を行うことが可能な筋力測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、この発明は次のような技術的手段を講じている。
【0007】
この発明の筋力測定装置は、被験者の下肢を載せる下肢載置器1に、被験者の下肢の動作を検知して筋力を測定する測定器2を着脱可能に取り付けてなり、前記測定器2は、下肢載置器1から取り外して下肢筋力以外の筋力を測定できるようにしたものとしている。
【0008】
下肢載置器1は、前部3と後部4が連結部5を介して連結されており、前部3と後部4のいずれかを連結部5に対して位置変更可能として、前部3と後部4との間隔を調整できるようにしたものとすることができる。
【0009】
測定器2は、接触体18を備え、この接触体18に加えられた力を検知することにより筋力を測定するようにしたものであり、さらに、接触体18は、別の接触体18に交換可能としたものとすることができる。
【0010】
また、測定器2は、下肢載置器1の前部3に取り付けられ、被験者の下肢の動作で接触体18が移動することにより等尺性足背屈筋力及び等尺性膝伸展筋力の測定ができ、下肢載置器1から取り外した場合には、被験者の指の動作で接触体18が移動することにより握力の測定ができるようにしたものとすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の筋力測定装置は、上述のような構成を有しており、下肢載置器1に測定器2を取り付けた場合においては、被験者は下肢載置器1に下肢を載せ、下肢を動かして測定器2に検知させることにより、容易に下肢筋力の測定が行えるようになっており、また、下肢載置器1から測定器2を取り外した場合においては、測定器2で下肢筋力以外の筋力を測定することが可能となっている。
【0012】
下肢載置器1が、前部3と後部4が連結部5を介して連結されており、前部3と後部4のいずれかを連結部5に対して位置変更可能として、前部3と後部4との間隔を調整できるようにしたものとすれば、前部3と後部4との間隔を被験者の脚の長さに応じたものとし、適切に下肢筋力の測定が行えるものとなる。
【0013】
測定器2が、接触体18を備え、この接触体18に加えられた力を検知することにより筋力を測定するようにしたものであり、さらに、接触体18は、別の接触体18に交換可能としたものとすれば、下肢載置器1から測定器2を取り外した場合において、測定対象に応じて接触体18を選択して利用することにより、様々な筋力を適切に測定することができる。
【0014】
また、測定器2は、下肢載置器1の前部3に取り付けられ、被験者の下肢の動作で接触体18が移動することにより等尺性足背屈筋力及び等尺性膝伸展筋力の測定ができ、下肢載置器1から取り外した場合には、被験者の指の動作で接触体18が移動することにより握力の測定ができるようにしたものとすれば、前記3種の筋力の測定結果から、被験者の転倒の危険性を察知し、適切な筋力の管理の指針とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の好適な実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1はこの発明の実施形態の筋力測定装置の下肢載置器1の斜視図、図2は測定器2の斜視図、図3はこの筋力測定装置の上面図、図4はこの筋力測定装置の使用状態の説明図、図5は測定器2に握力測定用の接触体18を取り付けた場合の斜視図、図6は測定器2で握力測定を行う様子の説明図である。
【0017】
この筋力測定装置は、被験者の下肢を載せる下肢載置器1に、被験者の下肢の動作を検知して筋力を測定する測定器2を着脱可能に取り付けてなり、前記測定器2は、下肢載置器1から取り外して下肢筋力以外の筋力を測定できるようにしたものとしている。
【0018】
〔下肢載置器の構成〕
下肢載置器1は、図1に示したように、床上に設置される前部3及び後部4、並びに前部3と後部4との連結部5からなる。以下、前部3が位置する側を前側、後部4が位置する側を後側として説明する。
【0019】
前部3は、基体6と上部体7からなり、上部体7は前側にスペースができるように基体6に一体に設けられている。被験者の足(足首から先の地面を踏みしめる部分)は、前記スペースに位置させ、その踵を基体6上に載置させられるようにしている。
【0020】
基体6は、前記スペースにおいて現れる面が、踵が良くフィットするような曲面ないし平坦面となっており、また、左右側部には、連結部5が貫通する孔8が設けられている。基体6の前端部の左右両側には、ネジにより連結部5に対して固定状態及び非固定状態にすることが可能なブラケット9を設けている。
【0021】
上部体7は、その頂部10を、測定器2を取り付け可能な大きさ、形状としたものであり、頂部10が被験者の足のつま先より少し下に位置する程度の高さに位置するものとしている。頂部10には、測定器2を載置する面の左右両側に設けられた略直方体状の前側突部11と、上部体7の後壁を上方に延長した後側突部12が設けられており、測定器2は、前側突部11と後側突部12との間にほぼ隙間なく配置される。さらに、前記後側突部12の中央上端には、測定器2の離脱を防止するための棒状の留め具13が回転可能に設けられている。
【0022】
後部4は、基体14と脚バンド15からなる。基体14は、上面が平坦面ないし被験者の脹脛又は太腿が良くフィットするような曲面となっており、脚バンド15は、両端が基体14の左右両側に固定されるようにしたものとしている。また、基体14の左右側部には、前側から後方に連結部5が入る穴16が設けられている。
【0023】
連結部5は、2本の断面円形の棒状ないしパイプ状の金属製のものとしている。連結部5は、その前端側が前部3の基体6の孔8を貫通し、前記ブラケット9のネジを緩めた場合には前部3の位置が変更可能となっている。連結部5の前端部には、前記孔8より大きな径の抜け止め17が設けられている。また、連結部5の後端側は、後部4の基体14の穴16に挿入され固定されている。
【0024】
連結部5は、前記孔8及び穴16との間にほぼ隙間が生じないようにすればよく、それぞれの断面形状は円形に限定されない。また、長さについても特に限定されず、測定に支障が出なければよい。なお、連結部5の前端側が後部4の基体14に設けた孔を貫通し、後端側が前部3の基体6に設けた穴に挿入され固定されるように構成することもできる。
【0025】
このように、下肢載置器1は、前部3と後部4のいずれかが連結部5に対して位置変更可能となっているため、被験者の脚の長さに応じて、前部3と後部4との間隔を調整し、適切な測定が行われるようにすることが可能である。また、据付型ではないため、設置場所の移動や持ち運びも容易である。
【0026】
〔測定器の構成〕
測定器2は、図2に示したように、被験者に接触する移動可能な接触体18を備えたもので、この接触体18の移動を検知することにより筋力を測定できるようになっている。
【0027】
接触体18は、下肢筋力を測定するために、被験者の足裏に接する正方形の板状部分と、その裏側(前側)の四角錐状部分、四角錐状部分の中央に設けられた穴に固定された前後方向に延びる棒状の軸19から構成されている。
【0028】
さらに、この接触体18は、足バンド21を有したものとしている。足バンド21は、前記板状部分の左右側部に回動可能に取り付けられた側板22を介して取り付けられており、被験者の足背の中足骨遠位端に位置するように設けられている。
【0029】
接触体18の軸19は測定器2の本体内部に挿入されており、接触体18を押したり引いたりして力を加えると、接触体18は軸方向(下肢載置器1に取り付けた場合の前後方向)に移動し、力を加えていない場合には、所定位置に復帰するようにしている。
【0030】
測定器2の本体内部には、ひずみゲージがホイーストンブリッジ回路の一部を構成するように設けられており、被験者が接触体18を押したり引いたりして力を加えると、前記軸19の移動によりひずみゲージに直接又は間接的に力が加えられて、ひずみゲージの電気抵抗値が変化し、これを検出することによって、筋力を数値化するようにしている。
【0031】
接触体18の軸19の移動は、前後いずれの方向であっても検知できるようにしている。また、筋力の数値は、測定器2の本体の正面に設けられた液晶ディスプレイ20に表示されるようにしている。
【0032】
接触体18は、測定対象に応じて別の接触体18に交換可能であり、例えば、測定器2を握力の測定に使用する場合には、図5に示したような、表面を波形状にして指がかかりやすくした棒状で、その裏側の中央に軸19を固定してなる接触体18を、測定器2の本体に取り付けることができる。
【0033】
測定器2は、内蔵の電池や外部電源によって動作するものであり、さらに、RS232CやUSB等の通信ポートを備えたものとし、測定によって得られた筋力のデータをパソコン等に送信し、パソコン等でデータの分析や管理を行うようにすることができる。また、測定器2の筋力の測定の仕組みは、前述のものに限定されず、各種のセンサ類を利用したものとすることができる。
【0034】
〔この筋力測定装置の使用方法〕
この筋力測定装置で下肢筋力の測定を行う場合には、まず、図3に示したように、測定器2を下肢載置器1の上部体7に取り付け、その接触体18を左右の前記前側突部11の間から後方に向けて突出させた状態にする。
【0035】
次に、図4に示したように、被験者の踵を前部3に載せ、測定器2の接触体18の板状部分と足バンド21との間に被験者の足を挿入するとともに、被験者の脹脛を後部4に載せて、脚バンド15を装着する。この際、被験者の脚の長さに応じて、前部3の位置を変更し、前部3と後部4との間隔を調整することができる。
【0036】
この実施形態では、下肢筋力として、等尺性足背屈筋力及び等尺性膝伸展筋力の測定が可能である。等尺性足背屈筋力の測定は、被験者が足関節で足を後方へ適宜角度に曲げた状態にすることにより、測定器2の接触体18の足バンド21を後方に引っ張らせ、接触体18を後方に移動させることにより行う。等尺性膝伸展筋力の測定は、被験者が膝関節で脚を適宜角度に曲げた状態にすることにより、測定器2の接触体18の足バンド21を後方に引っ張らせ、接触体18を後方に移動させることにより行う。
【0037】
なお、被験者が足関節で足を前方へ適宜角度に曲げた状態にすることにより、測定器2の接触体18の板状部分を前方に押し出させ、接触体18を前方に移動させることによって、等尺性足底屈筋力の測定を行うことも可能である。
【0038】
測定器2を下肢載置器1から取り外した場合には、図6に示したように、接触体18に指をかけ、接触体18を測定器2の本体側に押して移動させることにより、握力の測定をおこなうことができる。その他、測定器2は、測定対象となる筋力に関する身体部位の形態に対応した構成の接触体を作製し、交換することにより、握力以外の筋力も測定することが可能となる。
【0039】
この筋力測定装置は、上述の通り、容易に設置して各種の筋力を測定することが可能であり、高齢者であっても1人で筋力測定を行い、自己の筋力を管理し、衰えた筋力の回復やリハビリのための処置を適切に行うことができるようになる。そして、高齢者は活動的で質の高い生活ができ、さらに高齢者を介護する者の負担も軽減されることになる。
【0040】
〔他の実施形態〕
図7は、この発明の他の実施形態の筋力測定装置の説明図、図8はその使用状態を示す説明図である。この実施形態では、下肢載置器1は、前部3及び後部4が一体に構成されたものとしており、この下肢載置器1の前端側(前部3側)に、被験者の足が接触する接触板23の下端部が軸着され、接触板23が前後方向に回動可能となっている。そして、接触板23の裏側(前側)には、測定器2の接触体18に接触する突部24が設けられている。
【0041】
測定器2は、接触板23の裏側に着脱可能に設けられる。測定器2は、基本的には前述の実施形態の測定器2と同様の構成であるが、接触体18が上下方向に移動する向きに設置される。
【0042】
この実施形態では、被験者が足で接触板23を前後いずれかの方向に回動させることにより、前記突部24が移動して測定器2の接触体18を押し下げ、あるいは接触体18が押し下げられた状態から上昇するようになっており、これを測定器2で検知することにより、筋力測定を行うことが可能となっている。
【0043】
なお、この発明は、上述の実施形態の構成に限定されるものではなく、構成、形状、寸法等を適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施形態の筋力測定装置の下肢載置器の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の筋力測定装置の測定器の斜視図である。
【図3】この発明の実施形態の筋力測定装置の上面図である。
【図4】この発明の実施形態の筋力測定装置の使用状態の説明図である。
【図5】この発明の実施形態の筋力測定装置の測定器に、握力測定用の接触体を取り付けた場合の斜視図である。
【図6】この発明の実施形態の筋力測定装置の測定器で握力測定を行う様子の説明図である。
【図7】この発明の他の実施形態の筋力測定装置の説明図である。
【図8】この発明の他の実施形態の筋力測定装置の使用状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 下肢載置器
2 測定器
3 前部
4 後部
5 連結部
18 接触体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の下肢を載せる下肢載置器(1)に、被験者の下肢の動作を検知して筋力を測定する測定器(2)を着脱可能に取り付けてなり、前記測定器(2)は、下肢載置器(1)から取り外して下肢筋力以外の筋力を測定できるようにしていることを特徴とする筋力測定装置。
【請求項2】
下肢載置器(1)は、前部(3)と後部(4)が連結部(5)を介して連結されており、前部(3)と後部(4)のいずれかを連結部(5)に対して位置変更可能として、前部(3)と後部(4)との間隔を調整できるようにしている請求項1記載の筋力測定装置。
【請求項3】
測定器(2)は、接触体(18)を備え、この接触体(18)に加えられた力を検知することにより筋力を測定するようにしたものであり、さらに、接触体(18)は、別の接触体(18)に交換可能としている請求項1又は2記載の筋力測定装置。
【請求項4】
測定器(2)は、下肢載置器(1)の前部(3)に取り付けられ、被験者の下肢の動作で接触体(18)が移動することにより等尺性足背屈筋力及び等尺性膝伸展筋力の測定ができ、下肢載置器(1)から取り外した場合には、被験者の指の動作で接触体(18)が移動することにより握力の測定ができるようにしている請求項3記載の筋力測定装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−222389(P2007−222389A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46788(P2006−46788)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(591039425)高知県 (51)