説明

筐体のせり出し回転型ヒンジ装置

【課題】開放された扉が隣接する筐体に干渉せず、内部の物の出し入れ操作の障害とらない、構造簡易な扉のヒンジ装置を提供する。
【解決手段】ヒンジ装置1は、固定枠体52に固着される水平のベース板2と、これに6,7枢支される第1及び第2のリンク板3,4と、これらに枢ピン8,9で枢支され、先端側に枢軸54で扉53を枢支する支持板5とを具備する。支持板5は、リンク板3,4に連動して元位置とせり出し位置との間を固定枠体52の前面52aに対して平行を保ちながら水平面上揺動自在である。支持板5は、それが元位置にある状態で、扉53の垂直投影面内に配置され、せり出し位置にある状態では、当該投影面から前方及び横外側方へ張り出すように配置される。それにより、扉53の開放時に、枢軸54が開口前面52aの前方横外側方へせり出して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本発明は自販機等の筐体の扉に使用されるヒンジ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の自販機等では、固定枠体に取り付けたベース板の先端部に扉の基端部を単一軸構成のピボット型ヒンジによって連結している。しかしながら、このように扉の回転中心が固定枠体に近接した位置関係にあるヒンジでは、隣に同様の自販機等が設置されている場合には、扉を大きく開放したときに隣接の自販機等に扉が衝突する干渉事故の問題が指摘されている。この干渉事故を避けようとすると、今度は十分に扉を開放することができないため、ディスプレイや金銭収納用引き出し等の引き出し操作に障害となってしまう。
そこで、扉の回転中心が固定枠体の開口部前面側に持ち出されるため、扉が隣接の自販機等に衝突する干渉事故が発生せず、また、開放された扉が引き出し等の出し入れ操作の障害となることもない自販機等の持出し回転型ヒンジが提案されている(例えば特許文献1参照)。
このヒンジは、ベース板の先端部に固定歯車を固着し、アーム板の基端部の第1軸ピンを固定歯車の垂直軸孔に嵌挿し、アーム板に支持させた中間歯車を固定歯車に噛み合わせ、第1リンク板の先端部を第2軸ピンで扉に連結し、第1リンク板の基端部に固着した第3軸ピンをアーム板の軸受孔に嵌挿し、第3軸ピンに固設した回転軸歯車を固定歯車の反対側において中間歯車に噛み合わせ、第2リンク板の基端部を第4軸ピンによってアーム板の先端部に連結し、第2リンク板の先端部を第5軸ピンによって扉に連結したものである。
しかしながら、このヒンジは、機構が複雑で、比較的高価なものとなるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−252338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、この発明の目的は、扉が閉鎖状態にあるときには扉の回転中心が扉の垂直投影面内にあって、軸受が横外側へ張り出していないが、扉の開放時には、回転中心が固定枠体の開口部前面側の横外側にせり出されるため、開放された扉が隣接の自販機等に干渉することがなく、また内部の物の出し入れ操作の障害となることがない自販機等の筐体のせり出し回転型ヒンジ装置で、構造が比較的簡単で安価に得られるもの提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するためのこの出願に係る発明のヒンジ装置1は、固定枠体52の開口前面52a側を開閉する扉53を固定枠体52に開閉自在に枢支するためのヒンジであって、固定枠体52に固着される水平のベース板2と、これに枢支される第1及び第2のリンク板3,4と、これらのリンク板3,4に枢支され、先端側に扉53を枢支する支持板5とを具備する。第1のリンク板3は、ベース板2に、横外側方の第1の枢ピン6により一端側が枢支され、元位置とせり出し位置との間を水平面上回転可能である。第2のリンク板4は、ベース板2に、第1の枢ピン6より横内側方に位置する第2の枢ピン7で一端側が枢支され、元位置とせり出し位置との間を第1のリンク板3と平行に水平面上回転可能である。支持板5は、横内側方に位置する基端と横外側方に位置する先端とを有する。支持板5の基端側は、第1及び第2のリンク板3,4の他端側に、第3、第4の枢ピン8,9により枢支され、それにより、リンク板3,4に連動して元位置とせり出し位置との間を固定枠体52の前面52aに対して平行を保ちながら水平面上揺動自在である。支持板5の先端側には、扉53が枢軸54で枢支される。支持板5は、それが元位置にある状態で、扉53の垂直投影面内に配置され、せり出し位置にある状態では、当該投影面から前方及び横外側方へ張り出すように配置される。それにより、扉53の開放時に、枢軸54が開口前面52aの前方横外側方へせり出して配置される。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明のヒンジ装置によれば、扉が閉鎖状態にあるときには、扉の回転中心が扉の垂直投影面内にあって、軸受が横外側へ張り出していないので、じゃまにならない。扉の開放時には、支持板の先端部が扉53と共に前方から横外側方向へ移動することにより、扉の回転中心が固定枠体52の開口部前方の横外側方向に持ち出されるため、開放された扉53が隣接の自販機等に干渉することがなく、また内部の物の出し入れ操作の障害となることがない。また、構造が比較的簡単で安価に得られるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るヒンジの使用状態の斜視図である。
【図2】扉が閉鎖状態にあるときの図1のヒンジ装置の平面図である。
【図3】扉が開放途上にあるときの図1のヒンジ装置の平面図である。
【図4】扉が開放途上にあるときの図1のヒンジ装置の平面図である。
【図5】扉が開放途上にあるときの図1のヒンジ装置の平面図である。
【図6】扉が全開状態にあるときの図1のヒンジ装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1において、51は自動販売機等の筐体、52は筐体1の前方開口を囲む固定枠体、53は固定枠体52の開口前面52a側を開閉する扉である。図1において、筐体51の一方の側壁51a側(左側)を横外側方といい、その反対側(右側)、すなわち開口の中央側を横内側方という(この出願において同じ)。
【0009】
ヒンジ装置1は、固定枠体52の横外側方の上下に設けられ、扉53を枢軸54で枢支する。ヒンジ装置1は、固定枠体52に固着される水平のベース板2と、これに枢支される第1及び第2のリンク板3,4と、これらのリンク板に枢支され、先端側に扉53を枢支する支持板5とを具備する。
【0010】
第1のリンク板3は、直交する第1片3aと第2片3bとからなり、第1片3aの先端側において横外側方の第1の枢ピン6により、ベース板2に枢支され、図2に示す元位置と、図6に示すせり出し位置との間を水平面上回転可能である。第1のリンク板3は、元位置において、第1片3aが固定枠体52の開口前面52aに対して平行で、第2片3bが固定枠体52の開口前面52aに対して直角に前方へ延びるように配置される。
【0011】
第2のリンク板4は、同様に、直交する第1片4aと第2片4bとからなり、第1片4aの先端側において、第2の枢ピン7でベース板2に枢支され、図2に示す元位置と、図6に示すせり出し位置との間を水平面上回転可能である。第2の枢ピン7は、第1の枢ピン6の横内側方に位置して、開口前面52aに対して平行に並んで配置される。第2のリンク板4は、元位置において、第1片4aが固定枠体52の開口前面52aに対して平行で、第2片4bが固定枠体52の開口前面52aに対して直角に前方へ延びるように配置される。
【0012】
支持板5は、横内側方の基端と横外側の先端とを有し、図2に示す元位置において固定枠体52の開口前面52aに対して平行に延びる。支持板5の基端側は、第1及び第2のリンク板3,4の他端側に、第3、第4の枢ピン8,9で枢支され、それにより、リンク板3,4に連動して図2に示す元位置と、図6に示すせり出し位置との間を固定枠体52の前面52aに対して平行を保ちながら水平面上揺動自在である。扉53の枢軸54は、第1の枢ピン6よりも横外側方に配置される。支持板5は、それが図2に示す元位置にある状態で、扉53の垂直投影面内に配置され、図6に示すせり出し位置にある状態では、扉53の投影面から前方及び横外側方へ張り出すように配置される。それにより、扉53の開放時に、枢軸54が開口前面52aの前方横外側方へせり出して配置される。
【0013】
ストッパロッド10は、固定枠体52に固定された支持部材11に、上下動自在に設けられる。ストッパロッド10は、支持部材11のガイド溝11aに挿通されたハンドル10aを摘んで手動により上下操作可能であり、下降して下端部が第1のリンク板3の回転経路上に進出したロック位置において、リンク板3を元位置に保持し、上昇して回転経路上から退去した解放位置においてリンク板3の回動を許容する。ストッパロッド10は、扉53の閉鎖状態においてロック位置に配置する。
【0014】
図2に示す閉鎖状態において、リンク板3,4はストッパロッド10で元位置に拘束されている。扉53を開放操作すると、扉53は枢軸54を中心に、図3の経過を経て図4の位置まで時計方向へ回動し、ここで図示しないストッパ機構により扉53と支持板5との相対回動が止まる。この状態で、ストッパロッド10を解放位置へ引き上げ、リンク板3,4を解放し、さらに扉54を時計方向へ回動操作すると、リンク板3,4が枢ピン6,7を中心に時計方向へ回動し、支持板5が固定枠体52の前面52aに対して平行を保ちながら図5の経過を経て図6の位置まで前方横外側方へせり出す。このため、開放された扉53が隣接の自販機等に干渉することがなく、また内部の物の出し入れ操作の障害となることがない。
扉53を閉じる場合には、まずリンク板3,4を元位置へ復帰させるように、反時計方向へ回動させるべく扉53を操作する。図3に示すように、リンク板3,4が元位置へ復帰した状態で、ストッパロッド10をロック位置へ降ろした上、さらに扉53を枢軸54を中心に反時計方向へ回動させ、図2に示す閉鎖位置へ戻し、筐体51の開口を閉じる。
なお、ストッパロッド10がなくても、扉53の開閉操作を行うことができる。
【符号の説明】
【0015】
1 ヒンジ装置
2 ベース板
3 第1リンク板
3a 第1片
3b 第2片
4 第1リンク板
4a 第1片
4b 第2片
5 支持板
6 第1枢ピン
7 第2枢ピン
8 第3枢ピン
9 第4枢ピン
10 ストッパロッド
10a ハンドル
11 支持部材
11a ガイド溝
51 筐体
51a 一方の側壁
52 固定枠体
52a 開口前面
53 扉
54 枢軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定枠体52の開口前面52a側を開閉する扉53を横外側方において固定枠体52に開閉自在に枢支するためのヒンジであって;前記固定枠体52に固着される水平のベース板2と;このベース板2に、横外側方の第1の枢ピン6により一端側が枢支され、元位置とせり出し位置との間を水平面上回転可能な第1のリンク板3と;前記ベース板2に前記第1の枢ピン6より横内側方の第2の枢ピン7により一端側が枢支され、元位置とせり出し位置との間を水平面上回転可能で、第1のリンク板3と平行に回転する第2のリンク板4と;横内側方に位置する基端と横外側方に位置する先端とを有し、基端側が前記第1及び第2のリンク板3,4の他端側にそれぞれ第3及び第4の枢ピン8,9により枢支されることにより、当該リンク板3,4に連動して元位置とせり出し位置との間を前記固定枠体52の前面52aに対して平行を保ちながら水平面上揺動自在で、先端側に前記扉53が枢軸54で枢支される支持板5と;前記支持板5は、元位置において、前記扉53が閉位置にあるときの垂直投影面内に配置され、せり出し位置において、当該投影面から前方及び横外側方へ張り出すように配置され;それにより、扉53の開放時に、前記枢軸54が前記開口前面52aの前方横外側方へせり出して配置されることを特徴とするせり出し回転型ヒンジ装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のリンク板3,4の回転経路上に進出して当該リンク板3,4を元位置に保持するロック位置と当該回転経路上から退去する解放位置との間で移動操作可能に前記固定枠体52に支持されるストッパ10をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のせり出し回転型ヒンジ装置。
【請求項3】
前記第1のリンク3板は、直交する第1片3aと第2片3bからなり、第1片3aの先端側において前記第1の枢ピン6により、前記ベース板2に枢支され、元位置において第1片3aが固定枠体52の開口前面52aに対して平行で、第2片3bが固定枠体52の開口前面52aに対して直角に前方へ延びるように配置され;前記第2のリンク板4は、直交する第1片4aと第2片4bからなり、第1片4aの先端側において、前記固定枠体52の開口前面52aに対して平行に前記第1の枢ピン6の横内側方に並ぶ前記第2の枢ピン7によりベース板2に枢支され、元位置において第1片4aが固定枠体52の開口前面52aに対して平行で、第2片4bが固定枠体52の開口前面52aに対して直角に前方へ延びるように配置され;前記支持板5は、元位置において前記固定枠体52の開口前面52aに対して平行に延び、前記枢軸54による前記扉53の枢支部が、前記第1の枢ピン6よりも横外側方に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載のせり出し回転型ヒンジ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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