説明

筒形タンクの足場システムその構築方法

【課題】 部品点数が少なく、安価で、安全に筒型タンクの頂部開口にアクセスできる足場システムおよびその構築方法を提供する。
【解決手段】 本発明にかかる直立設置された筒型タンク用の足場システムは、前記タンクの外周に回される紐状または帯状のベルトと、当該ベルトに取り付けられ垂直方向に竪管を挿通する複数のリング部材と、当該リング部材に挿通され垂直方向に延在する複数本の竪管と、前記タンクの頂部近傍において水平方向に渡され前記竪管同士を連結する横管と、当該横管に支持され固定される足場板とを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの足場システムおよびその構築方法に関し、特に、円筒形状のろ過タンクや貯水タンク等に適用する簡単かつ安価な足場システムおよびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばろ過タンクや建物屋上の貯水タンクなどの円筒形タンクにおけるろ材の交換や内部洗浄には、タンク上部のアクセス口まで作業員が上がり作業を行う必要がある。ここで円筒形タンクには通常登るための梯子が取り付けられているが、この梯子には1人しか乗れず、また足下が安定せず、現実に作業を行うのは困難であった。このため、タンクを取り囲むように足場を組み、ろ材の交換等の作業を行う必要があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の金属パイプで組まれる足場は自立式であり、タンクの周囲に所定のスペースを必要とする。したがって、タンク周囲に十分なスペースが存在しない場合は足場が組めない問題があった。近年では円形に足場を組むユニットも開発されているが、これは汎用性に欠けるとともに導入コストが高いものである。また、円筒形タンクの周りを取り囲むように足場を組むには面倒な作業が伴うとともに、部品点数が多く、運搬や保管の手間がかかるものであった。
【0004】
本発明はこのような点に鑑みなされたものであり、ろ過タンクや小型の貯水タンクなど円筒形タンクに簡単に足場を組んで頂部開口にアクセスすることができ、部品点数が少なく、安価で、安全な足場システムおよびその構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、直立設置された筒型タンク用の足場システムであって、前記タンクの外周に回される紐状または帯状のベルトと、当該ベルトに取り付けられ垂直方向に竪管を挿通する複数のリング部材と、当該リング部材に挿通され垂直方向に延在する複数本の竪管と、前記タンクの頂部近傍において水平方向に渡され前記竪管同士を連結する横管と、当該横管に支持され固定される足場板とを具えることを特徴とする。
【0006】
この足場システムにおいて、前記リング部材は、前記ベルトに摺動可能に取り付けられていることが有効である。
【0007】
前記ベルトは、ラッシングベルトであることが有効である。
【0008】
前記ベルトが少なくとも2本以上あり、前記竪管は各々のベルトに取り付けられたリング部材に貫挿されることが有効である。
【0009】
本発明の筒型タンク用の足場システムの構築方法は、前記タンクの外周に紐状または帯状のベルトをまわして固定する工程と、当該ベルト部材に取り付けられた各リング部材に竪管を上下方向に挿通させる工程と、前記タンクの頂部近傍において水平方向に横管を渡して前記竪管と連結する工程と、前記横管に足場板を固定する工程と、を具えることを特徴とする。
【0010】
前記ベルトを固定する工程は位置を違えて2本以上のベルトをタンクに固定するとともに、前記リング部材に竪管を挿通する工程は前記2本以上のベルトにそれぞれ取り付けられた2以上のリング部材に竪管を挿通することが有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の足場システムは、筒型タンクの外周にベルトをまわしてこれに竪管を固定するため、タンクの周りに自立式の四角い鉄筋足場を組む必要がなくなり、部品点数を抑えて非常に簡便且つ低コストに足場を組むことができる。同時に、タンクの外周に沿わせて竪管を立てるため周囲に十分なスペースがない場合にも足場を組むことができる。
【0012】
また、足場の竪管を保持するリング部材をベルトに対して摺動可能としたため、径の異なるタンクに適用する場合にも適切な位置にリング部材を再配置することが可能となり、汎用性が向上する。
【0013】
また、タンクの外周にまわして固定するベルトにラッシングベルトを用いると、タンクへの取り付けおよび固定が容易になるとともに、径の異なる多様なタンクへ適用することが可能となり汎用性が向上する。このベルトはタンクの高さ等に応じて2本以上用いると竪管ひいては足場の安定性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を実施するための最良の実施形態について図面を参照しながら以下に詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の足場システムの構成を示す図である。本発明の足場システムはろ過タンクや建物の屋上に設置される小型の貯水タンク等の筒状タンクに適用する足場システムであり、筒型タンクの頂部アクセス口の近傍に足場板を組むものである。図1に示すように、本発明の足場システムは筒型タンク1の外周に回される紐状または帯状のベルト11と、当該ベルト11に取り付けられ垂直方向に竪管13を挿通する複数のリング部材12と、当該リング部材12に挿通され垂直方向に延在する複数本の竪管13と、タンク1の頂部近傍において水平方向に渡され竪管13同士を連結する横管14と、当該横管14に支持され固定される足場板15とを具えている。
【0016】
ベルト11は、例えばポリエステル等の高強度合成繊維でなるラッシングベルトであり、幅20〜50mm、引っ張り強度3500kg以上のものを好適に用いることができる。ベルト11はタンク1の外周以上の長さのものを用い、バックル11aにより確実に締め上げることができ、また所定の操作により容易に取り外すことができる。ベルト11及びバックル11aは公知のものを用いることができ、例えばバックル11aはラチェット式であってもよい。このベルト11はタンク1の高さに応じてほぼ等間隔で2本以上取り付けられる。なお、ベルト11も上記の構成に限らず、紐状であってもよい。
【0017】
図2は、ベルト11とリング部材12の取り付け構造の一例を示す図である。リング部材12はパイプ固定リング12aと、ベルト11を貫挿するアジャスタ12bとを具える。アジャスタ12bはベルト11に固定されず、ベルト11に対してスライド可能である。アジャスタ11bはパイプ固定リング12aと固定されていてもよいし、着脱可能に構成されてもよい。このアジャスタ11bは好ましくはベルト11と同様に強度のある合成繊維によるキャンパス地で構成され、タンク1の外周及び/又はベルト11の湾曲に沿って変形する。このようにタンク1の外周カーブに沿って変形することにより、足場組み立て時にリング部材12がベルト11に固定され、予期せぬ位置ずれが防止される。パイプ固定リング12aは他の部材と同様にキャンパス地で構成されてもよいし、金属など硬くて丈夫な材質であってもよい。パイプ固定リング12aは適用する竪管13の太さによって適切な径のものを選択するようにする。あるいは、パイプ固定リング12aはそれ自身が太さを変更可能に構成されていてもよい。すなわち、例えばパイプ固定リング12aを両端が開放された帯状布材で構成し面ファスナで任意の太さに留め付ける構成としたり、リング状の金属部材をほぼ2分割したものを互いの距離を調整可能にねじで連結する構成として、適用する竪管13に合わせてその太さを変更可能に構成してもよい。
【0018】
リング部材12の数は任意であってよいが、図1に示す実施例では竪管13を4本用いるため4つのリング部材12が各ベルト11に取り付けられている。これは適用する竪管の本数に応じて増減することができる。
【0019】
竪管13は、適用するタンク1の高さ以上の長さのものが用いられ、図1に示すように、各ベルト11に取り付けられたリング部材12に垂直方向に保持される。竪管13はその後横管14に連結されることにより安定するため、各リング部材12に確実に固定される必要はない。竪管12の下端部はそのまま床面に当接し、リング部材12に保持されて直立する。竪管12の下端部にゴム製のカバーを設けてクッション性を付与し、床面が傷つかないようにしてもよい。
【0020】
このようにして竪管13を配設したら、その頂部近傍において水平方向に横管14を渡して竪管と連結する。この連結は公知の足場金物を用いて実現することができる。これにより隣接する竪管同士が横管により確実に固定される。その後、水平方向に渡した横管14の上に足場板15を載置して、下の横管14及び/又は竪管13に番線(図示せず)で緊結する。図1の実施例では横管14が四角く渡されており、各横管14に沿って4枚の足場板15が固定される。これにより、タンク1の上部アクセス口1aとほぼ同じ高さの位置に足場を組むことができる。さらに、必要に応じて横管14に梯子16を取り付け、楽に上がれるようにしてもよい。また、竪管13の頂部には十分な強度を有する綱材(親綱)17を渡して、作業時の落下防止手すりとして構成する。
【0021】
このようにタンク足場を構築すると、タンクの周囲に従来のような自立式の足場を組む必要がなくなり、部品点数を大幅に削減できるとともに、タンク周りに十分なスペースがない場合にもタンク足場を組むことができる。また、タンク1の上部アクセス口1aに近接させて足場板15を渡すことができるため、アクセス口1aへの作業が容易になる。この足場システムは構築および撤去が容易で、安価に導入することができ、またタンクの外径や外周形状の変化にも容易に対応することができる。すなわち、タンクの外径が大きい場合には周囲に5本以上の竪管13を立てることにより構造を安定させることができ、またベルト11に布製ベルトを用いるとタンクが断面四角形であると六角形であるとを問わず、タンク周囲に回して竪管13を配設することができる。なお、タンク1の高さがある場合は2本以上の竪管を継ぎ手で連結して適用してもよい。
【0022】
以上に本発明の一実施例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施例に限定されるものではなく、他の様々な変形例として構成することができる。例えば本発明の足場システムの上端部にさらに櫓を組んでチェーンブロック等を吊下できるようにしてもよい。なお、本願書類において縦方向および横方向に渡される鉄骨部材を竪管および横管と称しているが、これは本発明の足場システムの構造を支持できるものであれば管状でない鉄筋であってもよいし、他の丈夫な素材からなる棒状部材であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明にかかるタンク足場システムは、タンクのろ材交換などの設備処理業、建設業、清掃業などに好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかるタンク足場システムの一実施例の構成を示す図である。
【図2】足場システムを構成するベルトとリング部材との連結構造を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 タンク
1a 上部アクセス口
11 ベルト
11a バックル
12 リング部材
13 竪管
14 横管
15 足場板
16 梯子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直立設置された筒型タンク用の足場システムであって、前記タンクの外周に回される紐状または帯状のベルトと、当該ベルトに取り付けられ垂直方向に竪管を挿通する複数のリング部材と、当該リング部材に挿通され垂直方向に延在する複数本の竪管と、前記タンクの頂部近傍において水平方向に渡され前記竪管同士を連結する横管と、当該横管に支持され固定される足場板と、を具えることを特徴とする足場システム。
【請求項2】
請求項1に記載の足場システムにおいて、前記リング部材は、前記ベルトに摺動可能に取り付けられていることを特徴とする足場システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の足場システムにおいて、前記ベルトは、ラッシングベルトであることを特徴とする足場システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の足場システムにおいて、前記ベルトが少なくとも2本以上あり、前記竪管は各々のベルトに取り付けられたリング部材に貫挿されることを特徴とする足場システム。
【請求項5】
筒型タンク用の足場システムの構築方法であって、前記タンクの外周に紐状または帯状のベルトをまわして固定する工程と、当該ベルト部材に取り付けられた各リング部材に竪管を上下方向に挿通させる工程と、前記タンクの頂部近傍において水平方向に横管を渡して前記竪管と連結する工程と、前記横管に足場板を固定する工程と、を具えることを特徴とする足場システムの構築方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法において、前記ベルトを固定する工程は位置を違えて2本以上のベルトをタンクに固定するとともに、前記リング部材に竪管を挿通する工程は前記2本以上のベルトにそれぞれ取り付けられた2以上のリング部材に竪管を挿通することを特徴とする足場システムの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−85051(P2007−85051A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−273704(P2005−273704)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(592101736)株式会社日本水処理技研 (9)
【出願人】(503462648)