説明

管体配管工法及び搬送台車

【課題】人が内部に入ることができない小口径のさや管内において、新設管用の搬送台車のローリングを抑制する。
【解決手段】人が内部に入ることができない小口径のさや管1内に、管軸方向に伸びる軌条40を移動自在に載置する。その軌条40に沿って走行可能な搬送台車10に新設管2を固定し、前記搬送台車10を前記軌条40に沿って走行させることにより前記新設管2を前記さや管1内に配管する。前記軌条40には、前記搬送台車10の車輪15を通じてその搬送台車10及び前記新設管2の荷重が作用し、その荷重の作用により、前記軌条40は、前記さや管1の底に押し付けられて動かないように固定されるようにした。搬送台車10及び新設管2の自重で、軌条40がさや管内面に押し付けられて動かないようになるので、軌条40をさや管内にボルト等により固定する作業が不要であり、この軌条40によって、搬送台車10のローリングは抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設されたさや管内に、そのさや管よりも小径の管体を差し入れて配管する管体配管工法、及びその管体配管工法に用いる管体用の搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたさや管内に、電線や通信線、光ファイバーケーブル等の各種ケーブル類を通す場合、そのさや管内に小径の管体(以下、「新設管」という)を差し入れて配管する場合がある。
【0003】
多くの場合、新設管は前記さや管内に複数本固定され、前記電線等は、その種別に応じて対応する新設管内に通される。
【0004】
さや管内に新設管を差し入れる場合、さや管の一端と他端に地表へと通じる立坑がそれぞれ設けられており、その一端の立坑から他端の立坑に向かって、新設管が順次接続されながら差し入れられていく。
【0005】
さや管内の底には、その内面にねじ込まれたボルト等によって、管軸方向に伸びる軌条が動かないように固定されている。新設管は、一端の立坑内に吊りおろされた後、その軌条に沿って走行する搬送台車に固定される。搬送台車は、ロッド(連結棒)を介して管軸方向に複数台連結することができる。
【0006】
新たに取りおろした新設管は、既に、先行する搬送台車に固定されてさや管内に入り込んでいる他の新設管に接続されるとともに、新たな新設管を支える搬送台車と他の新設管を支える搬送台車とをロッドで連結する。この作業を繰り返し、さや管内に順次新設管を配管していく。
【0007】
このとき、軌条がさや管に対して動かないように固定されているから、搬送台車がローリングする(搬送台車が、さや管の管軸周りに回転する)ことがない。このため、新設管をさや管内にねじれなく配管することができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−83470号公報
【特許文献2】特開平6−265050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の方法によると、さや管内に軌条を動かないように固定する必要がある。この作業は、前述のように、さや管内においてボルト固定等によって行われる。
しかし、さや管の内径が小さい場合、人がさや管内に入ることができないので、軌条をさや管に固定する作業が困難である。
【0010】
特に、φ800未満(内径800mm未満)のさや管の場合、国の通達で人がさや管内に入ることが禁止されていることから、このような小径管の場合、軌条を敷設することができなかった。
【0011】
そこで、この発明は、人が内部に入ることができない小口径のさや管内において、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、さや管内に管軸方向に伸びる軌条を敷設し、その軌条に沿って走行可能な搬送台車にそのさや管よりも小径の新設管を固定し、前記搬送台車を前記軌条に沿って走行させることにより、その搬送台車に固定した前記新設管を前記さや管内で移動させてその新設管を前記さや管内に配管する管体配管工法において、
前記さや管は、人が内部に入ることができない内径であり、前記軌条は前記さや管の底に移動自在に載置されるとともに、前記軌条にはその軌条を走行する前記搬送台車の車輪を通じてその搬送台車及び前記新設管の荷重が作用し、その荷重の作用により、前記軌条は、前記さや管の底に押し付けられて動かないように固定される構成を採用した。
【0013】
搬送台車及び新設管の自重で、軌条がさや管内面に押し付けられて動かないようになるので、軌条をさや管内にボルト等により固定する作業が不要である。すなわち、搬送台車は、その搬送台車及び新設管の自重によって動かないように固定された軌条に沿って走行し、搬送台車にローリングは生じない。
このように軌条の固定作業が不要であるから、人が内部に入ることができない小口径のさや管内においても、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することができる。
【0014】
この構成において、前記軌条は、前記さや管の底に1本のみ載置され、前記搬送台車に設けられる下向きの車輪は、前記軌条を走行するために管周方向に1箇所のみ設けられる構成とすることができる。
例えば、軌条を走行する車輪以外に、別の下向き車輪を設けて、その別の下向き車輪をさや管内面に宛がって転動させることも可能である。
しかし、このように、下向きの車輪を軌条走行用のみとすることによって、搬送台車及び新設管の荷重のほとんどが軌条に作用することとなるので、軌条に対する押し付け力が向上し、軌条の移動を防止することができる。
【0015】
また、前記搬送台車は、上下方向に伸びる縦フレームを有する管支持部を備え、前記新設管は前記管支持部に固定されるようになっており、前記車輪は、前記縦フレームの下部に設けられる構成とすることができる。
軌条走行用の車輪を縦フレームの下部に設けることによって、その縦フレームに固定された新設管の荷重が、その縦フレームに沿ってダイレクトに車輪に伝わりやすい。このため、軌条に対する押し付け力を向上させることができる。
【0016】
その縦フレームを設けた構成において、前記管支持部を、前記縦フレームに水平方向に伸びる横フレームが固定された十字状を成すものとすることができる。このとき、前記新設管は、前記縦フレームと前記横フレームとの間に掛け渡された保持具によって、前記管支持部に固定される構成とすることができる。
管支持部が十字状であれば、その十字中央の交差部を中心に、縦フレームと横フレームとに挟まれた空間を少なくとも4箇所確保できる。この4箇所の空間に、それぞれ保持具を用いて新設管を固定すれば、その固定された新設管の自重は、縦フレームを通じて車輪に伝達されるようにできる。
【0017】
なお、4箇所の空間、すなわち縦フレームと横フレームとに挟まれた空間にそれぞれ固定する新設管の本数は、1箇所につき1本ずつであってもよいし、1箇所につき複数本ずつであってもよい。
また、搬送台車の走行安定性の確保のため、その搬送台車及び新設管の自重が、縦フレームを中心に左右で均等になることが望ましい。
【0018】
この搬送台車を用いて、さや管内に新設管を順次接続しながら差し入れていく場合において、前記新設管が、受口側の端部外周に段部を有し、前記新設管は、その受口側の端部が前記段部の挿し口側で前記管支持部に固定され、その固定された新設管の受口に、後続する別の新設管の挿し口が嵌められ、前記後続する別の新設管は、後続する別の搬送台車の管支持部でその受口側の端部が固定されている構成とすることができる。
【0019】
受口の段部の挿し口側が搬送台車の管支持部に固定されていれば、さや管が上下方向あるいは左右方向にカーブしている区間においても、その段部が介在することによって、新設管が管支持部からはずれにくい。受口側の端部が管支持部からはずれにくければ、その受口に嵌められた別の新設管の挿し口も管支持部からはずれにくい。
なお、新設管を固定した搬送台車と、後続する別の新設管を固定した搬送台車とをロッドで繋いでおけば、両搬送台車間の管軸方向への距離が一定に保たれるので、受口から挿し口が抜けることをさらに確実に防止できる。
また、そのロッドの長さは、新設管を接続した時の長さよりも長く、新設管を接続した時に受口内で管本体同士の間に管軸方向の隙間を生じるものとすれば、さや管の曲線部での新設管の受口内での管本体同士の干渉を防ぐことができる。
【0020】
また、前記軌条を走行する車輪を、前記管支持部を挟んで管軸方向両側に設ければ、搬送台車の進行方向前後方向に対するバランスがよくなり、その走行安定性が向上する。
【0021】
さらに、前記軌条は、下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面を有し、前記車輪はその外周に沿って溝が設けられており、前記車輪の溝は、前記軌条の上端に嵌る構成とすることができる。
軌条は下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面であるから、車輪からの荷重は、軌条上端の比較的小さい面積からなるエリアに作用する。また、軌条は、上端から下端に向かうほど幅が広くなるから、軌条へ伝達された荷重は、さや管の底に対して、より幅の広い範囲に伝達される。このため、軌条の押し付け力が、さや管に対してより幅の広い範囲に作用し、その軌条が動きにくくなる。
【0022】
下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面の軌条としては、例えば、異なる面方向の対の平面部が屈曲部で繋がれた断面L字状の鋼材で構成することができる。断面L字状の鋼材の前記屈曲部の外面が上向き状態となっていれば、軌条は、下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面となり得る。
【0023】
また、前記搬送台車に、管径方向外側に突出する案内輪を設け、その案内輪が前記搬送台車の走行とともに前記さや管の内面に転動する構成とすることができる。案内輪がさや管内面に転動すれば、搬送台車の走行安定性が向上する。
【0024】
さらに、前記案内輪が上方へ突出して設けられる場合には、その上方に突出する案内輪が前記さや管内面から受ける反力が、前記下向きの車輪を通じて前記軌条に付与される構成とすれば、軌条に対する押し付け力が向上するので、軌条を動かないように固定する上でさらに望ましい。
【0025】
これらの各管体配管工法に使用する搬送台車として、以下の構成を採用することができる。すなわち、前記さや管の底に移動自在に載置された軌条を走行する車輪を備え、前記車輪を通じてその搬送台車及び前記搬送台車に固定した新設管の荷重が作用するようになっており、その荷重の作用により、前記軌条を前記さや管の底に押し付けて動かないように固定できる機能を備えた新設管用の搬送台車である。
【発明の効果】
【0026】
この発明は搬送台車及び新設管の自重で、軌条がさや管内面に押し付けられて動かないようにしたので、人が内部に入ることができない小口径のさや管内においても、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は(a)の要部拡大図
【図2】搬送台車の詳細を示し、(a)は(b)のa−a断面図、(b)は正面図、(c)は(b)のc−c断面図、(d)は底面図、(e)は(c)のe−e断面図
【図3】下部スペース用の保持具の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図
【図4】上部スペース用の保持具の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は底面図、(d)は側面図
【図5】搬送台車を用いて、さや管内に新設管を配管していく状態を示す説明図
【図6】軌条の詳細を示す正面図
【図7】先端部に用いられる軌条の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図
【図8】他の実施形態の先端部に用いられる軌条の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、図5に示すように、対の立坑3,4間を結ぶように地中に埋設されたさや管1内に、複数本の新設管2を順次接続しながら配管していくものである。
【0029】
図5の右側に示す立坑(一端の立坑)4は、さや管1を推進施工する際の到達側立坑4であり、左側に示す立坑(他端の立坑)3は、さや管1の発進側立坑3である。
【0030】
そのさや管1内に、管軸方向に伸びる軌条40を敷設する。軌条40は、到達側立坑4から発進側立坑3に向かって、一定長さのものを順次接続しながらさや管1内に差し入れていく。この実施形態では、軌条40は、さや管1の底に1本のみ配置される。
【0031】
軌条40の詳細を、図6及び図7に示す。軌条40は、互いに面方向が直交する対の平面部44が屈曲部43で繋がれた断面L字状の鋼材で構成されている。この屈曲部43の外面が上向き状態となっているので、前記軌条40は、下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面となっている。
【0032】
軌条40同士の接続は、図6に示すように、軌条40の一端に平板状の接続部材45が2個取り付けられている。この接続部材45を、図中に矢印で示すように、別の軌条40の他端に差し入れ、孔44a、雌ネジ45aを位置合わせした後、その孔44aにボルトを挿通し締付けて両者を固定する。この接続作業を繰り返して、軌条40をさや管1内に伸ばしていく。
【0033】
先頭の軌条40には、図7に示すように、円形の引込具42が取り付けられている。この引込具42にはねじ軸部42aが設けられている。このねじ軸部42aが軌条40の一端に溶接により固定されている。
【0034】
また、前記引込具42の後方には、軌条40の底面に沿って誘導板41が設けられている。さらに、その誘導板41の下に、引込ガイド46が設けられている。誘導板41は、さや管1の内面に沿う形状を有しており、引込ガイド46は、軌条40の先端とさや管1の内面とが接する面積を最小限に抑え、軌条40を差し入れる際のさや管1との摩擦抵抗を低減する機能を有している。なお、図8に示すような、断面弧状の誘導板41を採用することもできる。誘導板41がさや管1の内面に面接触しながら、軌条40の差し入れを誘導する。
【0035】
さや管1は、人が内部に入ることができない内径であり、その軌条40は、到達側立坑4から順次接続しながら差し入れられて、さや管1の底に移動自在に載置される。ボルト等により、さや管1内に軌条40を不動に固定することは行っていない。
【0036】
また、この軌条40を走行する車輪15は、図1、図2に示すように、その外周に沿って溝が設けられている。このため、軌条40上端の屈曲部43が前記車輪15の溝に嵌った状態で車輪15が回転し、その車輪15は軌条40から外れないようになっている。
【0037】
新設管2は、図5に示す到達側立坑4内に取りおろされた後、その軌条40に沿ってさや管1内を走行する搬送台車10に固定される。
【0038】

搬送台車10は、図1、図2に示すように、上下方向に伸びる縦フレーム12に水平方向に伸びる横フレーム13が固定された十字状を成す管支持部11を備えている。
【0039】
この管支持部11に対し、前記新設管2は、前記縦フレーム12と前記横フレーム13との間に掛け渡された保持具30によって前記管支持部11に固定される。
【0040】
保持具30は、図3に示す下部スペース用の保持具30と、図4に示す上部スペース用の保持具30とがある。
下部スペース用の保持具30は、新設管2の外周面に沿う弧状部32と、その弧状部32の周方向両端に設けられる係止部31とを備えている。弧状部32の内面には、弾性部材32aが取り付けられているので、保持具30と新設管2の外面とが弾力を持って接するようになっている。
【0041】
係止部31は、断面L字状の鋼材であり、前記弧状部32に溶接等により固定されている。また、その係止部31には、長孔状の係止孔31aが設けられている。
前記縦フレーム12及び横フレーム13の端部に、それぞれ基部19が設けられている。この実施形態では、合計4箇所の基部19が設けられている。各基部19には、係止孔19aが設けられている。この係止孔19aは、各フレーム12,13を貫通するように形成されている。
【0042】
係止部31の係止孔31aと基部19の係止孔19aとを位置合わせした後、その両係止孔31a,19aにボルトを挿通する。そのボルトにナットを締付けることにより、保持具30は両係止部31で管支持部11に固定される。
【0043】
また、上部スペース用の保持具30には、前記下部スペース用の保持具30の構成に加えて、添架部材33及び突出片34が設けられているので、その添架部材33上にも新設管2が固定できるようになっている。
【0044】
なお、この実施形態では、4箇所の基部19のそれぞれにおいて、その基部19を挟んで両側に、保持具30の係止部31が対向して配置されている。すなわち、基部19の両側に位置する別々の保持具30の各係止部31が、共通の基部19に共通のボルト、ナットによって固定されている。
【0045】
前記軌条40を走行するための車輪15は、前記縦フレーム12の下部に設けられている。
【0046】
縦フレーム12への車輪15の固定方法について説明すると、前記縦フレーム12の下部に設けられた基部19に、管軸方向両側に突出する車輪受部14が設けられている。
この車輪受部14には固定用孔14aが形成されており、その固定用孔14aを介して前記車輪15を回転自在に取り付けた車輪用固定枠15aが、ボルト及びナットにより固定されている。
【0047】
また、前記縦フレーム12の上方、及び前記横フレーム13の両端の各基部19には、案内輪17が設けられている。
【0048】
この案内輪17の前記縦フレーム12及び横フレーム13への固定方法について説明すると、前記縦フレーム12及び前記横フレーム13の各基部19に、管軸方向両側に突出する案内輪受部16が設けられている。
この案内輪受部16には固定用孔16aが形成されており、その固定用孔16aを介して前記案内輪17を回転自在に取り付けた案内輪用固定枠17aが、ボルト及びナットにより固定されている。
【0049】
新設管2の敷設方法について説明すると、まず、さや管1内に管軸方向に伸びる軌条40が両立坑3,4間を結ぶように敷設される。また、到達側立坑4を通じて、前記軌条40に沿って走行可能な前記搬送台車10をさや管1内に搬入する。
【0050】
つぎに、同じく到達側立坑4を通じて、地上から新設管2を順次搬入する。この実施形態では、さや管1よりも小径の新設管2を4本並列して配管するほか、さらに小径の新設管2を、前記添架部材33上に並列して3本配管する工程を示している(図1(a)参照)。
【0051】
最初に、発進側立坑3に向かって先頭となる新設管2を前記搬送台車10の管支持部11に固定する。管支持部11へは、新設管2の挿し口2b側の端部を前記保持具30で固定する。また、新設管2の受口2aは、後方に配置した別の搬送台車10の管支持部11に固定する。
【0052】
両搬送台車10はロッド(連結棒)20を介して管軸方向に連結され、管軸方向に一定の距離を保ちながら、それぞれ軌条40に沿って走行可能である。
ロッド20は、その両端が、搬送台車10に設けたロッド接続部21に接続されるようになっている。この実施形態では、ロッド接続部21に接続用孔21aが形成されており、ロッド20の両端にも接続用孔が形成されている。ロッド接続部21とロッド20の両接続用孔の位置合わせを行い、ボルト及びナットで接続される。
【0053】
搬送台車10を発進側立坑3に向かって少し走行させ、後方側の搬送台車10に固定されている新設管2の受口2aに、新たに吊りおろした次なる新設管2の挿し口2bを嵌める。次なる新設管2の挿し口2bが先行する新設管2の受口2aに嵌ることにより、次なる新設管2の挿し口2b側の端部は管支持部11に対して保持される。
【0054】
また、次なる新設管2の受口2a側の端部は、後方に配置したさらに別の搬送台車10の管支持部11に固定される。その搬送台車10についても、すぐ前方の搬送台車10とロッド20で連結される。
【0055】
なお、このとき、前記並列する4本の新設管2がそれぞれ接続されるほか、添架部材33上の並列する3本の新設管2も、これと同じ方法により接続される。
【0056】
このように、新たに取りおろした新設管2を、既に先行する搬送台車10に固定されてさや管1内に入り込んでいる他の新設管2に接続し、その新たな新設管2を支える搬送台車10と先行の新設管2を支える搬送台車10とをロッド20で連結する。この作業を繰り返し、さや管内に順次新設管を配管していく。
【0057】
このとき、前記軌条40には、その軌条40を走行する前記搬送台車10の車輪15を通じてその搬送台車10及び前記新設管2の荷重が下向きに作用する。その荷重の作用により、前記軌条40は、前記さや管1の底に押し付けられて動かないように固定される。軌条40が動かないように固定されているので、搬送台車10のローリングが防止される。
【0058】
また、この実施形態では、前記軌条40は、前記さや管1の底に1本のみ載置され、前記搬送台車10に設けられる下向きの車輪15は、その軌条40を走行する車輪15のみであることから、搬送台車10及び前記新設管2の荷重がほとんど全て軌条40に作用し、さや管1への固定がしっかりとしたものとなっている。
【0059】
さらに、搬送台車10の幅方向両側において、側方に突出する前記案内輪17が設けられているので、その案内輪17が前記搬送台車10の走行とともに前記さや管1の内面に転動する。このため、搬送台車10の転倒が防止される。
【0060】
また、前記案内輪17は上方側へも突出して設けられている。このため、その上方に突出する案内輪17が前記さや管1の内面(天井面)に当たった場合、その内面から受ける反力が、車輪15を通じて軌条40に付与され、軌条40へ作用する荷重が高められている。また、上方の案内輪17は、エアモルタル充填時の新設管2の浮上も防止する。
【0061】
さらに、この実施形態の新設管2は、その受口2a側の端部外周に段部2cを有しており、その段部2cを境に受口2a側が、他の管径一定の部分よりもやや拡径した形状となっている。
【0062】
搬送台車10の管支持部11は、前記保持具30を介して、その新設管2の前記段部2cよりも挿し口2b側の外周を保持している。
管支持部11が、段部2cに隣接した部分を保持しているから、さや管1が上下方向あるいは左右方向にカーブしている区間においても、その管支持部11又は保持具30が段部2cに引っ掛かることによって、新設管2が管支持部11から外れることが防止される。
【0063】
また、新設管2の受口2a側の端部が管支持部11からはずれにくければ、その受口2aに嵌められた別の新設管2の挿し口2bも管支持部11からはずれにくい。
【0064】
さらに、このとき、新設管2を固定した搬送台車10と、後続する別の新設管2を固定した搬送台車10とがロッド20で繋がれているので、両搬送台車10間の管軸方向への距離が一定に保たれ、受口2aから挿し口2bが抜けることをさらに確実に防止できる。
また、ロッド20の長さは、接続する新設管2同士の管軸方向への位置関係が、新設管2の挿し口2bを受口2aの奥部に当たる位置まで完全に嵌め込んで接続した時の長さよりも長くなるように、すなわち、新設管2同士を接続した時に受口2a内で管本体同士の間に管軸方向の隙間を生じるように設定され、これにより、さや管1の曲線部での新設管2の受口2a内での管本体同士の干渉を防ぐことができる。
【0065】
この実施形態では、さや管1を推進施工する際の到達側立坑4から発進側立坑3に向かって、搬送台車10及び新設管2を差し入れる構成としたが、向きを逆にして、発進側立坑3から到達側立坑4に向かって施工することも可能である。
また、新設管2を、さや管1の到達側立抗4から発進側立抗3に向かって施工する場合、管搬送台車10には、けん引用孔22aを備えたけん引部22が設けられているので、そのけん引用孔22aにワイヤ等を係止して、順次施工することもできる。さらに、けん引用孔22aにワイヤ等を係止して、搬送台車10を前方より引張ることも可能である。
【0066】
また、搬送台車10の管支持部11を構成する縦フレーム12及び横フレーム13の本数は自由に選択できる。例えば、さや管1内の中央に位置する1本の縦フレーム12に対し、2本又は3本、あるいはそれ以上の本数の横フレーム13を十字状に固定した態様も考えられる。この態様においても、搬送台車10及び新設管2の荷重は、縦フレーム12を通じて下部の車輪15に伝達されるようにすることが望ましい。
【0067】
また、縦フレーム12を、例えば2本又は3本並列させた構成、さや管1が大口径の場合は、3本以上の縦フレーム12を搬送台車10の幅方向に並列させた構成も考えられる。このとき、並列する各縦フレーム12の下部に車輪15を設けることが望ましく、その場合、軌条40は車輪15の並列数に対応する本数とすることができる。
【0068】
また、この実施形態では、電線や通信線、その他光ファイバーケーブル等を通すための新設管2をその対象としたが、他の用途からなる新設管2をさや管1内に配管する場合においても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 さや管
2 新設管
2a 受口
2b 挿し口
2c 段部
3 立坑(さや管の発進側立坑)
4 立坑(さや管の到達側立坑)
10 搬送台車
11 管支持部
12 縦フレーム
13 横フレーム
14 車輪受部
14a 固定用孔
15 車輪
15a 車輪用固定枠
16 案内輪受部
16a 固定用孔
17 案内輪
17a 案内輪用固定枠
18 フレーム交差部
19 基部
20 ロッド(連結棒)
21 ロッド接続部
21a 接続用孔
22 けん引部
22a けん引用孔
30 保持具
31 係止部
31a 係止孔
32 弧状部
33 添架部材
34 突出片
40 軌条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
さや管(1)内に管軸方向に伸びる軌条(40)を敷設し、その軌条(40)に沿って走行可能な搬送台車(10)にそのさや管(1)よりも小径の新設管(2)を固定し、前記搬送台車(10)を前記軌条(40)に沿って走行させることにより、その搬送台車(10)に固定した前記新設管(2)を前記さや管(1)内で移動させてその新設管(2)を前記さや管(1)内に配管する管体配管工法において、
前記さや管(1)は、人が内部に入ることができない内径であり、前記軌条(40)は前記さや管(1)の底に移動自在に載置されるとともに、前記軌条(40)にはその軌条(40)を走行する前記搬送台車(10)の車輪(15)を通じてその搬送台車(10)及び前記新設管(2)の荷重が作用し、その荷重の作用により、前記軌条(40)は、前記さや管(1)の底に押し付けられて動かないように固定されることを特徴とする管体配管工法。
【請求項2】
前記軌条(40)は、前記さや管(1)の底に1本のみ載置され、前記搬送台車(10)に設けられる下向きの車輪(15)は前記軌条(40)を走行するために管周方向に1箇所のみ設けられることを特徴とする請求項1に記載の管体配管工法。
【請求項3】
前記搬送台車(10)は、上下方向に伸びる縦フレーム(12)を有する管支持部(11)を備え、前記新設管(2)は前記管支持部(11)に固定されるようになっており、前記車輪(15)は、前記縦フレーム(12)の下部に設けられることを特徴とする請求項2に記載の管体配管工法。
【請求項4】
前記管支持部(11)は、前記縦フレーム(12)に水平方向に伸びる横フレーム(13)が固定された十字状を成し、前記新設管(2)は、前記縦フレーム(12)と前記横フレーム(13)との間に掛け渡された保持具(30)によって前記管支持部(11)に固定されることを特徴とする請求項3に記載の管体配管工法。
【請求項5】
前記新設管(2)は、受口(2a)側の端部外周に段部(2c)を有し、前記新設管(2)は、その受口(2a)側の端部が前記段部(2c)の挿し口(2b)側で前記管支持部(11)に固定され、その固定された新設管(2)の受口(2a)に、後続する別の新設管(2)の挿し口(2b)が嵌められ、前記後続する別の新設管(2)は、後続する別の搬送台車(10)の管支持部(11)でその受口(2a)側の端部が固定されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の管体配管工法。
【請求項6】
前記車輪(15)は、前記管支持部(11)を挟んで管軸方向両側に設けられることを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項7】
前記軌条(40)は、下端から上端に向かうにつれて徐々に幅が細くなる断面を有し、前記車輪(15)はその外周に沿って溝が設けられており、前記車輪(15)の溝は、前記軌条(40)の上端に嵌ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項8】
前記軌条(40)は、異なる面方向の対の平面部が屈曲部で繋がれた断面L字状の鋼材で構成され、前記屈曲部の外面が上向き状態となっていることを特徴とする請求項7に記載の管体配管工法。
【請求項9】
前記搬送台車(10)に、管径方向外側に突出する案内輪(17)を設け、その案内輪(17)が前記搬送台車(10)の走行とともに前記さや管(1)の内面に転動することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項10】
前記案内輪(17)は上方へ突出して設けられ、その上方に突出する案内輪(17)が前記さや管(1)内面から受ける反力が、前記下向きの車輪(15)を通じて前記軌条(40)に付与されることを特徴とする請求項9に記載の管体配管工法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれかに記載の管体配管工法に使用する搬送台車(10)であって、前記さや管(1)の底に移動自在に載置された軌条(40)を走行する車輪(15)を備え、前記車輪(15)を通じてその搬送台車(10)及び前記搬送台車(10)に固定した新設管(2)の荷重が作用するようになっており、その荷重の作用により、前記軌条(40)を前記さや管(1)の底に押し付けて動かないように固定できる機能を備えた搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164072(P2010−164072A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4616(P2009−4616)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)