説明

管体配管工法及び搬送台車

【課題】人が内部に入ることができない小口径のさや管内において、新設管用の搬送台車のローリングを抑制する。
【解決手段】 人が内部に入ることができない小口径のさや管1内を走行可能な搬送台車10に新設管2を固定し、前記搬送台車10を管軸方向に沿って走行させることにより前記新設管2を前記さや管1内に配管する。前記搬送台車10の車輪15には、その搬送台車10及び前記新設管2の荷重が作用し、その荷重の作用により、前記車輪15は、前記さや管1の底に押し付けられて、走行中に車輪15が周方向へずれることを抑制するようにした。搬送台車10及び新設管2の自重で、車輪15をさや管1の底に押し付けて周方向へずれることを抑制したので、軌条をさや管内に敷設する作業が不要であり、小口径のさや管1においても搬送台車10のローリングは抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設されたさや管内に、そのさや管よりも小径の管体を差し入れて配管する管体配管工法、及びその管体配管工法に用いる管体用の搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設されたさや管内に、電線や通信線、光ファイバーケーブル等の各種ケーブル類を通す場合、そのさや管内に小径の管体(以下、「新設管」という)を差し入れて配管する場合がある。
【0003】
多くの場合、新設管は前記さや管内に複数本固定され、前記電線等は、その種別に応じて対応する新設管内に通される。
【0004】
さや管内に新設管を差し入れる場合、さや管の一端と他端に地表へと通じる立坑がそれぞれ設けられており、その一端の立坑から他端の立坑に向かって、新設管が順次接続されながら差し入れられていく。
【0005】
さや管内の底には、その内面にねじ込まれたボルト等によって、管軸方向に伸びる軌条が動かないように固定されている。新設管は、一端の立坑内に吊りおろされた後、その軌条に沿って走行する搬送台車に固定される。搬送台車は、ロッド(連結棒)を介して管軸方向に複数台連結することができる。
【0006】
新たに取りおろした新設管は、既に、先行する搬送台車に固定されてさや管内に入り込んでいる他の新設管に接続されるとともに、新たな新設管を支える搬送台車と他の新設管を支える搬送台車とをロッドで連結する。この作業を繰り返し、さや管内に順次新設管を配管していく。
【0007】
このとき、軌条がさや管に対して動かないように固定されているから、搬送台車がローリングする(搬送台車が、さや管の管軸周りに回転する)ことがない。このため、新設管をさや管内にねじれなく配管することができる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−83470号公報
【特許文献2】特開平6−265050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の方法によると、さや管内に軌条を動かないように固定する必要がある。この作業は、前述のように、さや管内においてボルト固定等によって行われる。
しかし、さや管の内径が小さい場合、人がさや管内に入ることができないので、軌条をさや管に固定する作業が困難である。
【0010】
特に、φ800未満(内径800mm未満)のさや管の場合、国の通達で人がさや管内に入ることが禁止されていることから、このような小径管の場合、軌条を敷設することができなかった。
【0011】
そこで、この発明は、人が内部に入ることができない小口径のさや管内において、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、この発明は、人が内部に入ることができない内径のさや管内に搬送台車を走行可能とし、その搬送台車は、車輪を有する管支持部を備え、その管支持部に前記さや管よりも小径の新設管が固定され、前記車輪が前記さや管内の底に直接触れた状態で転動しながら前記搬送台車が管軸方向に沿って走行し、その車輪は、前記搬送台車及び前記新設管の荷重により前記さや管内の底に押し付けられて、その押し付けにより、前記車輪が前記さや管内の底から周方向へずれることが抑制されるようにした構成を採用した。
【0013】
搬送台車及び新設管の自重で、車輪がさや管内面に押し付けられて周方向に動きにくくなる。すなわち、搬送台車は、その搬送台車及び新設管の自重によって車輪がさや管の底からずれないように走行するので、搬送台車にローリングは生じない。
このように軌条の固定作業が不要であるから、人が内部に入ることができない小口径のさや管内においても、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することができる。
【0014】
この構成において、前記さや管内の底に押し付けられる車輪は、前記さや管の管軸周りに沿って1箇所のみ設けられている構成とすることができる。
【0015】
さや管内の底に押し付けられる車輪を、周方向に1箇所のみとすることによって、搬送台車及び新設管の荷重のほとんどが、その単一の車輪に作用することとなる。このため、車輪の押し付け力が向上し、ローリングをより確実に防止することができる。また、その車輪は、さや管内の最も低い部分を転動することが望ましい。
【0016】
また、前記車輪は、前記管支持部に対して、管径方向に配置した操舵軸周りに回動自在に設けられている構成とすることができる。
車輪が回動自在であれば、例えば、車輪がさや管内面をせり上がっていこうとした際に、前記搬送台車及び前記新設管の荷重による押し付け力によって、その車輪がいわゆる操舵機能を発揮する。すなわち、車輪は、そのせり上がりを打ち消す方向に向きを変えて、管軸方向へ走行しながら搬送台車を前記せり上がり前の元の状態に復帰させる。このため、ローリングを防止する上でさらに効果的である。
【0017】
この操舵機能を有する車輪によるローリング防止は、その車輪が、さや管内の底の最も低い部分を走行する際に、特に効果的である。
【0018】
なお、さや管内の底に押し付けられる車輪は、さや管内面の周方向に沿って複数とすることもできる。例えば、さや管内面のうち、管軸を含む水平面よりも下側に位置する部分において、さや管内面の周方向に沿って所定の間隔で2個、又は3個、あるいはそれ以上の車輪が宛がわれる構成とすることもできる。
【0019】
また、前記さや管内の底に押し付けられる車輪を、前記管支持部を挟んで管軸方向両側に設ければ、搬送台車の進行方向前後方向に対するバランスがよくなり、その走行安定性が向上する。
【0020】
前記管支持部は、上下方向に伸びる縦フレームに水平方向に伸びる横フレームが固定された十字状を成し、前記新設管は、前記縦フレームと前記横フレームとの間に掛け渡された保持具によって前記管支持部に固定される構成とすることができる。
管支持部が十字状であれば、その十字中央の交差部を中心に、縦フレームと横フレームとに挟まれた空間を少なくとも4箇所確保できる。この4箇所の空間に、それぞれ保持具を用いて新設管を固定すれば、その固定された新設管の自重は、縦フレームを通じて車輪に伝達されるようにできる。
【0021】
なお、4箇所の空間、すなわち縦フレームと横フレームとに挟まれた空間にそれぞれ固定する新設管の本数は、1箇所につき1本ずつであってもよいし、1箇所につき複数本ずつであってもよい。
また、搬送台車の走行安定性の確保のため、その搬送台車及び新設管の自重が、縦フレームを中心に左右で均等になることが望ましい。
【0022】
また、この搬送台車を用いて、さや管内に新設管を順次接続しながら差し入れていく場合において、前記新設管が、受口側の端部外周に段部を有し、前記新設管は、その受口側の端部が前記段部の挿し口側で前記管支持部に固定され、その固定された新設管の受口に、後続する別の新設管の挿し口が嵌められ、前記後続する別の新設管は、後続する別の搬送台車の管支持部でその受口側の端部が固定されている構成とすることができる。
【0023】
受口の段部の挿し口側が搬送台車の管支持部に固定されていれば、さや管が上下方向あるいは左右方向にカーブしている区間においても、その段部が介在することによって、新設管が管支持部からはずれにくい。受口側の端部が管支持部からはずれにくければ、その受口に嵌められた別の新設管の挿し口も管支持部からはずれにくい。
なお、新設管を固定した搬送台車と、後続する別の新設管を固定した搬送台車とをロッドで繋いでおけば、両搬送台車間の管軸方向への距離が一定に保たれるので、受口から挿し口が抜けることをさらに確実に防止できる。
また、そのロッドの長さは、新設管を接続した時の長さよりも長く、新設管を接続した時に受口内で管本体同士の間に管軸方向の隙間を生じるものとすれば、さや管の曲線部での新設管の受口内での管本体同士の干渉を防ぐことができる。
【0024】
また、前記搬送台車に、管径方向外側に突出する案内輪を設け、その案内輪が前記搬送台車の走行とともに前記さや管の内面に転動する構成とすることができる。案内輪がさや管内面に転動すれば、搬送台車の走行安定性が向上する。
【0025】
さらに、前記案内輪が上方へ突出して設けられる場合には、その上方に突出する案内輪が前記さや管内面から受ける反力が、前記下向きの車輪の押し付け力として付与されるので、搬送台車のローリングを防止する上でさらに望ましい。
【0026】
これらの各管体配管工法に使用する搬送台車として、以下の構成を採用することができる。すなわち、上下方向に伸びる縦フレームと前記縦フレームの下部に設けられた車輪とを有する管支持部を備え、その管支持部に前記さや管よりも小径の新設管が固定され、前記車輪が前記さや管内の底に直接触れた状態で転動しながら前記搬送台車が管軸方向に沿って走行し、その車輪は、前記搬送台車及び前記新設管の荷重により前記さや管内の底に押し付けられて、その押し付けにより、前記車輪が前記さや管内の底から周方向へずれることが抑制される機能を備えた新設管用の搬送台車である。
【発明の効果】
【0027】
この発明は搬送台車及び新設管の自重で、車輪がさや管内の底に押し付けられて周方向にずれないようにしたので、人が内部に入ることができない小口径のさや管内においても、新設管用の搬送台車のローリングを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は側面図
【図2】搬送台車の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図、(d)は底面図、(e)は(c)のe−e断面図
【図3】車輪の詳細を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図
【図4】下部スペース用の保持具の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図
【図5】上部スペース用の保持具の詳細を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は側面図
【図6】搬送台車を用いて、さや管内に新設管を配管していく状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
一実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、図6に示すように、対の立坑3,4間を結ぶように地中に埋設されたさや管1内に、複数本の新設管2を順次接続しながら配管していくものである。
【0030】
図6の右側に示す立坑(一端の立坑)4は、さや管1を推進施工する際の到達側立坑4であり、左側に示す立坑(他端の立坑)3は、さや管1の発進側立坑3である。
なお、さや管1は、人が内部に入ることができない内径である。
【0031】
さや管1内を走行する搬送台車10は、図1(a)(b)に示すように、上下方向に伸びる縦フレーム12に水平方向に伸びる横フレーム13が固定された十字状を成す管支持部11を備えている。
【0032】
この管支持部11に対し、前記新設管2は、前記縦フレーム12と前記横フレーム13との間に掛け渡された保持具30によって前記管支持部11に固定される。
【0033】
保持具30は、図4に示す下部スペース用の保持具30と、図5に示す上部スペース用の保持具30とがある。
下部スペース用の保持具30は、新設管2の外周面に沿う弧状部32と、その弧状部32の周方向両端に設けられる係止部31とを備えている。弧状部32の内面には、弾性部材32aが取り付けられているので、保持具30と新設管2の外面とが弾力を持って接するようになっている。
【0034】
係止部31は、断面L字状の鋼材であり、前記弧状部32に溶接等により固定されている。また、その係止部31には、長孔状の係止孔31aが設けられている。
前記縦フレーム12及び横フレーム13の端部に、それぞれ基部19が設けられている。この実施形態では、合計4箇所の基部19が設けられている。各基部19には、係止孔19aが設けられている。この係止孔19aは、各フレーム12,13を貫通するように形成されている。
【0035】
係止部31の係止孔31aと基部19の係止孔19aとを位置合わせした後、その両係止孔31a,19aにボルトを挿通する。そのボルトにナットを締付けることにより、保持具30は両係止部31で管支持部11に固定される。
【0036】
また、上部スペース用の保持具30には、前記下部スペース用の保持具30の構成に加えて、添架部材33及び突出片34が設けられているので、その添架部材33上にも新設管2が固定できるようになっている。
【0037】
なお、この実施形態では、4箇所の基部19のそれぞれにおいて、その基部19を挟んで両側に、保持具30の係止部31が対向して配置されている。すなわち、基部19の両側に位置する別々の保持具30の各係止部31が、共通の基部19に共通のボルト、ナットによって固定されている。
【0038】
また、前記縦フレーム12の下部には、図3(b)に矢印で示すように、その向きが管支持部11に対して操舵軸15d周りに回動し、且つ、さや管1内の底に直接接しながら転動することができる車輪15が設けられている。車輪15は、さや管1内面の周方向に沿うフラットな転動面を有している。
【0039】
縦フレーム12への車輪15の固定方法について、その図3に基づいて説明すると、前記車輪15を回転自在に取り付けた車輪用固定枠15aが、支持プレート15cに取り付けられている。車輪固定用枠15aは、その支持プレート15cに対して上下方向に伸びる操舵軸15d周りに回動可能に支持されている。すなわち、この操舵軸15dは、搬送台車10がさや管1内に入り込んだ状態で、そのさや管1の管径方向に向くように配置されている。
また、前記縦フレーム12の下部に設けられた基部19に、管軸方向両側に突出する車輪受部14が設けられている。この車輪受部14には固定用孔14aが形成されており、その固定用孔14aを介して、前記支持プレート15cを一体に支持した固定用プレート15bが、ボルト等により前記車輪受部14に固定される。
【0040】
また、前記縦フレーム12の上方、及び前記横フレーム13の両端の各基部19には、案内輪17が設けられている。
【0041】
この案内輪17の前記縦フレーム12及び横フレーム13への固定方法について説明すると、前記縦フレーム12及び前記横フレーム13の各基部19に、管軸方向両側に突出する案内輪受部16が設けられている。
この案内輪受部16には固定用孔16aが形成されており、その固定用孔16aを介して前記案内輪17を回転自在に取り付けた案内輪用固定枠17aが、ボルト及びナットにより固定されている。
【0042】
新設管2の敷設方法について説明すると、まず、到達側立坑4を通じて、前記搬送台車10をさや管1内に搬入する。
【0043】
つぎに、同じく到達側立坑4を通じて、地上から新設管2を順次搬入する。この実施形態では、さや管1よりも小径の新設管2を4本並列して配管するほか、さらに小径の新設管2を、前記添架部材33上に並列して3本配管する工程を示している(図1(a)参照)。
【0044】
最初に、発進側立坑3に向かって先頭となる新設管2を前記搬送台車10の管支持部11に固定する。管支持部11へは、新設管2の挿し口2b側の端部を前記保持具30で固定する。また、新設管2の受口2aは、後方に配置した別の搬送台車10の管支持部11に固定する。
【0045】
両搬送台車10はロッド(連結棒)20を介して管軸方向に連結され、管軸方向に一定の距離を保ちながら、それぞれ同方向に走行可能である。
ロッド20は、その両端が、搬送台車10に設けたロッド接続部21に接続されるようになっている。この実施形態では、ロッド接続部21に接続用孔21aが形成されており、ロッド20の両端にも接続用孔が形成されている。ロッド接続部21とロッド20の両接続用孔の位置合わせを行い、ボルト及びナットで接続される。
また、ロッド20の長さは、接続する新設管2同士の管軸方向への位置関係が、新設管2の挿し口2bを受口2aの奥部に当たる位置まで完全に嵌め込んで接続した時の長さよりも長くなるように、すなわち、新設管2同士を接続した時に受口2a内で管本体同士の間に管軸方向の隙間を生じるように設定され、これにより、さや管1の曲線部での新設管2の受口2a内での管本体同士の干渉を防ぐことができる。
【0046】
搬送台車10を発進側立坑3に向かって少し走行させ、後方側の搬送台車10に固定されている新設管2の受口2aに、新たに吊りおろした次なる新設管2の挿し口2bを嵌める。次なる新設管2の挿し口2bが先行する新設管2の受口2aに嵌ることにより、次なる新設管2の挿し口2b側の端部は管支持部11に対して保持される。
【0047】
また、次なる新設管2の受口2a側の端部は、後方に配置したさらに別の搬送台車10の管支持部11に固定される。その搬送台車10についても、すぐ前方の搬送台車10とロッド20で連結される。
【0048】
なお、このとき、前記並列する4本の新設管2がそれぞれ接続されるほか、添架部材33上の並列する3本の新設管2も、これと同じ方法により接続される。
【0049】
このように、新たに取りおろした新設管2を、既に先行する搬送台車10に固定されてさや管1内に入り込んでいる他の新設管2に接続し、その新たな新設管2を支える搬送台車10と先行の新設管2を支える搬送台車10とをロッド20で連結する。この作業を繰り返し、さや管内に順次新設管を配管していく。
【0050】
このとき、前記搬送台車10の車輪15には、その搬送台車10及び前記新設管2の荷重が下向きに作用する。その荷重の作用により、前記車輪15は、前記さや管1の底に押し付けられる。車輪15が押し付けられれば、その車輪15は、走行中において、さや管1内面の最も低い部分である底部から、そのさや管1内面を周方向にせり上がっていくことが抑制される。これにより、搬送台車10のローリングが防止される。
【0051】
さらに、この実施形態では、車輪15が操舵軸15d周りに回動自在であることから、車輪15がさや管1内面をせり上がっていこうとした際に、前記搬送台車10及び前記新設管2の荷重による押し付け力によって、その車輪15がいわゆる操舵機能を発揮する。
すなわち、車輪15は、その押し付け力によってせり上がりを打ち消す方向に向きを変えて、その向きを変えた車輪15は、管軸方向へ走行しながらさや管1の底の最も低い部分にスムーズに戻っていく。車輪15が最も低い部分に戻れば、その車輪15は、新設管2の推進とともに管軸方向に沿った向きに戻り、搬送台車10は、ローリングの生じていない正常な体勢で引き続き走行することができる。
【0052】
また、この実施形態では、前記さや管1の底に押し付けられる車輪15が1箇所のみであることから、搬送台車10及び前記新設管2の荷重がほとんど全てがその車輪15に作用し、さや管1内面への押し付け力がしっかりとしたものとなっている。
【0053】
さらに、搬送台車10の幅方向両側において、側方に突出する前記案内輪17が設けられているので、その案内輪17が前記搬送台車10の走行とともに前記さや管1の内面に転動する。このため、搬送台車10の転倒が防止される。
【0054】
また、前記案内輪17は上方側へも突出して設けられている。このため、その上方に突出する案内輪17が前記さや管1の内面(天井面)に当たった場合、その内面から受ける反力が、車輪15によるさや管1内の底への押し付け力として作用し、ローリング防止の機能が高められている。また、上方の案内輪17は、エアモルタル充填時の新設管2の浮上も防止する。
【0055】
また、この実施形態の新設管2は、その受口2a側の端部外周に段部2cを有しており、その段部2cを境に受口2a側が、他の管径一定の部分よりもやや拡径した形状となっている。
【0056】
搬送台車10の管支持部11は、前記保持具30を介して、その新設管2の前記段部2cよりも挿し口2b側の外周を保持している。
管支持部11が、段部2cに隣接した部分を保持しているから、さや管1が上下方向あるいは左右方向にカーブしている区間においても、その管支持部11又は保持具30が段部2cに引っ掛かることによって、新設管2が管支持部11からはずれることが防止される。
【0057】
また、新設管2の受口2a側の端部が管支持部11からはずれにくければ、その受口2aに嵌められた別の新設管2の挿し口2bも管支持部11からはずれにくい。
【0058】
さらに、このとき、新設管2を固定した搬送台車10と、後続する別の新設管2を固定した搬送台車10とがロッド20で繋がれているので、両搬送台車10間の管軸方向への距離が一定に保たれ、受口2aから挿し口2bが抜けることをさらに確実に防止できる。
【0059】
この実施形態では、さや管1を推進施工する際の到達側立坑4から発進側立坑3に向かって、搬送台車10及び新設管2を差し入れる構成としたが、向きを逆にして、発進側立坑3から到達側立坑4に向かって施工することも可能である。
また、搬送台車10には、けん引用孔22aを備えたけん引部22が設けられているので、そのけん引用孔22aにワイヤー等を係止すれば、搬送台車10を前方より引張ることも可能である。
また、新設管2を、さや管1の到達側立抗4から発進側立抗3に向かって施工する場合、管搬送台車10には、けん引用孔22aを備えたけん引部22が設けられているので、そのけん引用孔22aにワイヤ等を係止して、順次施工することもできる。さらに、けん引用孔22aにワイヤ等を係止して、搬送台車10を前方より引張ることも可能である。
【0060】
なお、搬送台車10の管支持部11を構成する縦フレーム12及び横フレーム13の本数は自由に選択できる。例えば、さや管1内の中央に位置する1本の縦フレーム12に対し、2本又は3本、あるいはそれ以上の本数の横フレーム13を十字状に固定した態様も考えられる。この態様においても、搬送台車10及び新設管2の荷重は、縦フレーム12を通じて下部の車輪15に伝達されるようにすることが望ましい。
【0061】
また、上記実施形態では、操舵機能を有する車輪15を採用したが、このような操舵機能によるせり上がり防止を期待しない場合は、走行方向を一定とした車輪15を採用してもよい。車輪15の向きが一定であっても、前述の搬送台車10及び新設管2の荷重に伴う押し付け力の効果で、前記ローリング防止の効果を発揮し得る。
【0062】
また、縦フレーム12を、例えば2本又は3本並列させた構成、さや管1が大口径の場合は、3本以上の縦フレーム12を搬送台車10の幅方向に並列させた構成も考えられる。このとき、並列する各縦フレーム12の下部にそれぞれ車輪15を設けることができる。
【0063】
また、この実施形態では、電線や通信線、その他光ファイバーケーブル等を通すための新設管2をその対象としたが、他の用途からなる新設管2をさや管1内に配管する場合においても、この発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 さや管
2 新設管
2a 受口
2b 挿し口
2c 段部
3 立坑(さや管の発進側立坑)
4 立坑(さや管の到達側立坑)
10 搬送台車
11 管支持部
12 縦フレーム
13 横フレーム
14 車輪受部
14a 固定用孔
15 車輪
15a 車輪用固定枠
15d 操舵軸
16 案内輪受部
16a 固定用孔
17 案内輪
17a 案内輪用固定枠
18 フレーム交差部
19 基部
20 ロッド(連結棒)
21 ロッド接続部
21a 接続用孔
22 けん引部
22a けん引用孔
30 保持具
31 係止部
31a 係止孔
32 弧状部
33 添架部材
34 突出片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が内部に入ることができない内径のさや管(1)内に搬送台車(10)を走行可能とし、その搬送台車(10)は、車輪(15)を有する管支持部(11)を備え、その管支持部(11)に前記さや管(1)よりも小径の新設管(2)が固定され、前記車輪(15)が前記さや管(1)内の底に直接触れた状態で転動しながら前記搬送台車(10)が管軸方向に沿って走行し、その車輪(15)は、前記搬送台車(10)及び前記新設管(2)の荷重により前記さや管(1)内の底に押し付けられて、その押し付けにより、前記車輪(15)が前記さや管(1)内の底から周方向へずれることが抑制されるようにしたことを特徴とする管体配管工法。
【請求項2】
前記さや管(1)内の底に押し付けられる車輪(15)は、前記さや管(1)の管軸周りに沿って1箇所のみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の管体配管工法。
【請求項3】
前記車輪(15)は、前記管支持部(11)に対して、管径方向に配置した操舵軸(15d)周りに回動自在に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管体配管工法。
【請求項4】
前記さや管(1)内の底に押し付けられる車輪(15)は、前記管支持部(11)を挟んで管軸方向両側に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項5】
前記管支持部(11)は、上下方向に伸びる縦フレーム(12)に水平方向に伸びる横フレーム(13)が固定された十字状を成し、前記新設管(2)は、前記縦フレーム(12)と前記横フレーム(13)との間に掛け渡された保持具(30)によって前記管支持部(11)に固定されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項6】
前記新設管(2)は、受口(2a)側の端部外周に段部(2c)を有し、前記新設管(2)は、その受口(2a)側の端部が前記段部(2c)の挿し口(2b)側で前記管支持部(11)に固定され、その固定された新設管(2)の受口(2a)に、後続する別の新設管(2)の挿し口(2b)が嵌められ、前記後続する別の新設管(2)は、後続する別の搬送台車(10)の管支持部(11)でその受口(2a)側の端部が固定されていることを特徴とする請求項5に記載の管体配管工法。
【請求項7】
前記搬送台車(10)に、管径方向外側に突出する案内輪(17)を設け、その案内輪(17)が前記搬送台車(10)の走行とともに前記さや管(1)の内面に転動することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の管体配管工法。
【請求項8】
前記案内輪(17)は上方へ突出して設けられ、その上方に突出する案内輪(17)が前記さや管(1)内面から受ける反力が、前記車輪(15)を通じて前記さや管(1)内の底に付与されることを特徴とする請求項7に記載の管体配管工法。
【請求項9】
請求項1乃至8に記載の管体配管工法に使用する搬送台車(10)であって、上下方向に伸びる縦フレーム(12)と前記縦フレーム(12)の下部に設けられた車輪(15)とを有する管支持部(11)を備え、その管支持部(11)に前記さや管(1)よりも小径の新設管(2)が固定され、前記車輪(15)が前記さや管(1)内の底に直接触れた状態で転動しながら前記搬送台車(10)が管軸方向に沿って走行し、その車輪(15)は、前記搬送台車(10)及び前記新設管(2)の荷重により前記さや管(1)内の底に押し付けられて、その押し付けにより、前記車輪(15)が前記さや管(1)内の底から周方向へずれることが抑制される機能を備えた搬送台車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−164073(P2010−164073A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4623(P2009−4623)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000164885)栗本化成工業株式会社 (32)