説明

管内導入装置

【課題】分岐口の内周面側開口周縁が穿孔時のバリが発生した鋭利な角部に形成されている条件下においても、管内作業機器やケーブル等の損傷を抑制した状態で管内作業機器を分岐管部から流体管内に確実、スムーズに導入する。
【解決手段】分岐管部3の下流側に接続可能な導入作業ケース15に、管内作業機器Aを分岐軸芯Y方向に沿った姿勢で着脱可能に保持する保持手段D1と、これを分岐軸芯Y方向に沿って分岐管部3から流体管1側に送り込む移送手段D2と、保持手段D1から流体圧で押し出される管内作業機器Aを分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pから流体管1の管軸芯X側に離れた位置を通して下流側に移動案内する移動案内手段D3とが設けられ、移動案内手段D3が、保持手段D1から分岐口2の下流側部位Pに当接する状態で少なくとも下流側部位にまで延出された移動案内部材19から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体管内を移動可能な管内検査機器や管内異物除去具等の管内作業機器を前記流体管に形成された分岐口に連通する分岐管部から導入する管内導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の管内導入装置では、流体管の分岐管部に副弁を介して連結された導入作業ケースに、前記管内作業機器を分岐軸芯方向に沿った姿勢で着脱可能に保持する保持手段と、前記保持手段を分岐軸芯方向に沿って分岐管部から流体管内に位置する設定送り込み位置にまで送り込む移送手段とが設けられている。
【0003】
また、前記保持手段を構成するに、前記導入作業ケースに対して昇降操作可能に貫通支持された移送手段の移送棒の下端部に、管内作業機器を分岐軸芯方向に沿った姿勢で受止める半割り筒状の案内部材を設けるとともに、前記案内部材には、これに受止められた管内作業機器を仮止め保持可能で、且つ、流体管内の流体圧によって管内作業機器の仮止め状態が自動的に解除されるホルダを設けていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−346272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の管内導入装置では、管内作業機器を管内に導入するに当たって、流体管の分岐管部に連結された閉弁操作状態の副弁に、前記保持手段の案内部材に管内作業機器をホルダで仮止め保持させてある導入作業ケースを取付けたのち、前記副弁を開弁操作して前記移送手段の移送棒を送り込み操作し、前記保持手段の案内部材が流体管内の設定送り込み位置に位置すると、この案内部材にホルダで仮保持されていた管内作業機器が流体圧によって自動的に保持解除され、流体管の下流側に向けて送り込まれる。
【0006】
このとき、前記案内部材にホルダで仮保持されていた管内作業機器は、案内部材の流体管内の設定送り込み位置への送り込み操作に連れてその送り込み先端側から流体圧を受け、分岐軸芯方向に沿った姿勢から傾動しながら流体管の管軸芯方向に沿う姿勢に姿勢変化するため、その姿勢変化途中の傾動姿勢で管内作業機器の外周面が流体管に形成されている分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に衝突して損傷を招来する可能性がある。
【0007】
しかも、前記管内作業機器の下流側への送り込みに連れて当該管内作業機器から導出されるケーブルが分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に摺接して損傷する可能性もあり、特に、前記分岐口の内周面側開口周縁が、穿孔時のバリが発生した鋭利な角部を形成している場合では、管内作業機器及びケーブルに大きな損傷を与え易い。
【0008】
さらに、前記管内作業機器の全長が分岐口の直径及び流体管の内径に近づく又は分岐口の直径及び流体管の内径よりも大に構成されている場合には、管内作業機器の全長が分岐口の直径及び流体管の内径よりもかなり小なる寸法に構成されている場合に比して、前記案内部材から流体圧で離脱移動する管内作業機器の外周面が分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に衝突する可能性が高くなる。
【0009】
本発明は、上述の実状に鑑みて為されたものであって、その主たる課題は、例え、前記分岐口の内周面側開口周縁が穿孔時のバリが発生した鋭利な角部に形成されている条件下においても、管内作業機器やケーブル等の損傷を抑制した状態で管内作業機器を分岐管部から流体管内に確実、スムーズに導入することのできる管内導入装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による第1の特徴構成は、流体管内を移動可能な管内作業機器を前記流体管に形成された分岐口に連通する分岐管部から導入する管内導入装置であって、
前記分岐管部の下流側に接続可能な導入作業ケースに、前記管内作業機器を分岐管部の分岐軸芯方向に沿った姿勢で着脱可能に保持する保持手段と、前記保持手段を分岐軸芯方向に沿って分岐管部から流体管内に少なくとも管内作業機器の一部が臨む設定送り込み位置にまで送り込む移送手段と、前記設定送り込み位置にある保持手段から保持解除されて流体圧で押し出される管内作業機器を流体管の分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内する移動案内手段とが設けられているとともに、前記移動案内手段が、前記保持手段又は移送手段から分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に当接又は近接する状態で少なくとも前記下流側部位又は当該下流側部位に相当する箇所にまで延出された移動案内部材から構成されている点にある。
【0011】
上記構成によれば、前記管内作業機器を流体管内に導入するにあたって、前記分岐管部の下流側に、管内作業機器を分岐管部の分岐軸芯方向に沿った姿勢で着脱可能に保持させてある保持手段と移送手段とを備えた導入作業ケースを接続し、前記移送手段で保持手段を設定送り込み位置に送り込む。
【0012】
この設定送り込み位置では、前記保持手段に保持された管内作業機器の少なくとも一部が流体管内に臨む状態にあり、この状態で保持手段から保持解除された管内作業機器が流体圧で押し出されると、当該管内作業機器が分岐軸芯方向に沿った姿勢から傾動しながら流体管の管軸芯方向に沿う姿勢に姿勢変化する際、前記移動案内手段によって管内作業機器が流体管の分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内されるから、前記分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に対して管内作業機器の外周面が衝突したり、或いは、管内作業機器から導出されるケーブルが摺接することを抑制することができる。
【0013】
しかも、前記保持手段又は移送手段から分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位又は当該下流側部位に相当する箇所にまで移動案内部材が延出されているから、例えば、分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に相当する箇所にだけ移動案内部材を設ける場合に比して、前記保持手段から保持解除された管内作業機器及びケーブルを極力早い時期から良好に移動案内することができる。
【0014】
したがって、前記分岐口の内周面側開口周縁が穿孔時のバリが発生した鋭利な角部に形成されている条件下においても、管内作業機器やケーブル等の損傷を抑制した状態で管内作業機器を分岐管部から流体管内に確実、スムーズに導入することができる。
【0015】
本発明による第2の特徴構成は、前記保持手段には、前記移送手段に取付けられる固定カバーと当該固定カバーとの間に管内作業機器の収納空間を形成する状態で前記固定カバーの送り込み方向上手側の基端部に対して開閉自在に連結される可動カバーとが備えられているとともに、前記可動カバーが、設定送り込み位置で開動操作された可動カバーの先端が少なくとも分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位又は当該下流側部位に相当する箇所に位置する長さに形成され、当該可動カバーをもって前記移動案内手段の移動案内部材が構成されている点にある。
【0016】
上記構成によれば、前記移送手段で保持手段を設定送り込み位置に送り込み、前記保持手段の可動カバーを固定カバーに対して開動操作すると、この可動カバーと固定カバーとの対向面間の収納空間に収納さていた管内作業機器が流体圧を受けて可動カバーの開動開始と共に押し出され、管内作業機器が分岐軸芯方向に沿った姿勢から流体管の管軸芯方向に沿う姿勢に姿勢変化する際、管内作業機器が可動カバーの内面に沿って分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内される。
【0017】
したがって、前記固定カバーとの間で管内作業機器の収納空間を形成する可動カバーを利用して移動案内手段の移動案内部材を構成することができるとともに、前記可動カバーの開動当初から管内作業機器を確実に移動案内することができる。
【0018】
本発明による第3の特徴構成は、前記可動カバーを流体圧に抗して閉じ姿勢に保持する閉じ操作状態と可動カバーを流体圧によって開き作動させる開き操作状態とに切り替え操作するカバー開閉操作手段が設けられている点にある。
【0019】
上記構成によれば、前記移送手段で保持手段を設定送り込み位置に送り込むまでは、カバー開閉操作手段を閉じ操作状態にして、可動カバーが設定送り込み位置の手前で流体圧によって不測に開動することを防止することができる。
そして、前記保持手段が設定送り込み位置に到達したときには、カバー開閉操作手段を開き操作状態にして可動カバーを流体圧によって開動させることができるから、設定送り込み位置において可動カバーの開動当初から管内作業機器を確実に移動案内することができる。
【0020】
本発明による第4の特徴構成は、前記カバー開閉操作手段には、繰り出し及び巻取り操作可能な索状体が備えられ、この索状体は、前記管内作業機器の外径よりも大なる間隔を隔てて可動カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位から固定カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位を経由して導入作業ケース側に導出されている点にある。
【0021】
上記構成によれば、前記移送手段で保持手段を設定送り込み位置に送り込んだ時点で、前記カバー開閉操作手段の索状体を繰り出し操作すると、可動カバーが流体圧を受けて開動すると同時に、可動カバーと固定カバーとの対向面間に収納さていた管内作業機器が流体圧を受けて押し出され、可動カバーが最大開動位置に到達した時点で、管内作業機器が可動カバーの内面に沿って分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内される。
【0022】
また、管内作業終了時に管内作業機器を設定送り込み位置にある固定カバー内に回収する際、可動カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位から固定カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位にわたって、管内作業機器の外径よりも大なる間隔を隔てて一対の索状体が配設されているため、この一対の索状体と回収される管内作業機器との接触によって管内作業機器の回収姿勢を修正することができ、管内作業機器を固定カバー内にスムーズに回収することができる。
【0023】
本発明による第5の特徴構成は、前記分岐口の直径が流体管の内径と略同じに構成されているとともに、前記管内作業機器の全長が前記分岐口の直径よりも大に構成されている点にある。
【0024】
上記構成によれば、前記移送手段で保持手段を設定送り込み位置に送り込んだ状態において、前記保持手段に保持された管内作業機器の一部が分岐口を通して分岐管部側に突出する場合でも、前記保持手段から保持解除された管内作業機器が流体圧で押し出されると、分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内する移動案内手段により、分岐軸芯方向に沿った姿勢にある管内作業機器を流体管内にスムーズに引き込みながら流体管の管軸芯方向に沿う姿勢に姿勢変化させることができる。
【0025】
本発明による第6の特徴構成は、前記管内作業機器には、管内撮像用のカメラと管内照明具が装備されている点にある。
【0026】
上記構成によれば、前記分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位との衝突に起因する管内作業機器のカメラや管内照明具の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の第1実施形態の管内導入装置を装着するための準備作業となる穿孔作業工程を示す一部切欠き側面図
【図2】管内導入装置を装着したときの縦断側面図
【図3】管内導入装置の要部の拡大側面図
【図4】図3におけるIV−IV線拡大断面図
【図5】保持手段を設定送り込み位置に送り込んだときの縦断側面図
【図6】保持手段を保持解除したときの縦断側面図
【図7】管内検査機器の送り込み開始時の縦断側面図
【図8】本願発明の第2実施形態を示す縦断側面図
【図9】本願発明の第3実施形態を示す縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
図1は、鋳鉄管や鋼管等から構成される流体管の一例である水道管1の配管系統において、前記水道管1内を水流又は搭載原動部の推進力で移動自在な管内作業機器の一例で、管内撮像用のテレビカメラ30及び管内照明具31を備えた管内検査機器Aで管内検査する必要のある検査対象領域の水道管1の管壁に、水道水(上水)の流れを維持した不断水状態で管内検査機器Aを管内に導入するための分岐口(穿孔口)2を貫通形成する穿孔作業工程を示す。
【0029】
この穿孔作業工程では、前記水道管1の外周面に、水道管1の管軸芯Xに対して直交する鉛直方向(分岐軸芯Y方向)に沿って外方に突出する分岐管部3を一体形成してある鋳鉄製の管継手Bが水密状態で外装固定され、前記管継手Bの分岐管部3の連結フランジ3Aには、スライド開閉可能な弁体4Cを備えた仕切弁4の上流側連結フランジ4Aが複数本のボルト10・ナット11で水密状態に固定連結されているとともに、前記仕切弁4の下流側連結フランジ4Bには、前記分岐口2を形成する回転切削具の一例であるホールソー5を備えた穿孔装置Cの穿孔ハウジング6の連結フランジ6Aが複数本のボルト10・ナット11で水密状態に固定連結されている。
【0030】
前記管継手Bは、水道管1に対して外装可能に管周方向で複数に分割(当該実施形態では三分割)され、且つ、そのうちの一つに前記分岐管部3が一体形成されている分割継手体7〜9から構成され、各分割継手体7〜9の管周方向両端部には、水道管1に外装された分割継手体7〜9の隣接端部同士を複数本のボルト10・ナット11で固定連結するための連結部7A〜9Aが一体的に突出形成されているとともに、前記各分割継手体7〜9には、水道管1の外周面との間及び連結部7A〜9Aの連結面間を密封する合成ゴム製のシール材12が装着されている。
【0031】
そして、前記穿孔装置Cのホールソー5を駆動回転して仕切弁4内の流路及び分岐管部3内の流路を通して分岐軸芯Y方向に送り込むことにより、水道管1の管壁に分岐口(穿孔口)2を貫通形成する。
【0032】
前記分岐口2の直径は、水道管1の内径と略等しい又は水道管1の内径よりも小なる寸法で、且つ、前記分岐管部3の内径と略等しい又は分岐管部3の内径よりも小なる寸法に構成されている。
【0033】
図2〜図7は、前記管内検査機器Aを管継手Bの分岐管部3から水道管1に穿孔形成された前記分岐口2を通して水道管1内に導入する管内導入装置Dを示し、前記分岐管部3の下流側部位である前記仕切弁4の下流側連結フランジ4Bに複数本のボルト10・ナット11を介して水密状態に固定連結される導入作業ケース15に、前記管内検査機器Aを分岐管部3の分岐軸芯Y方向に沿った姿勢で着脱可能に保持する保持手段D1と、前記保持手段D1を分岐軸芯Y方向に沿って分岐管部3から水道管1内に少なくとも管内検査機器Aの一部が臨む設定送り込み位置にまで送り込む移送手段D2と、前記設定送り込み位置にある保持手段D1から保持解除されて水圧(流体圧)で押し出される管内検査機器Aを水道管1の分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pから水道管1の管軸芯X側に離れた位置を通して下流側に移動案内する、換言すれば、水圧(流体圧)で押し出される管内検査機器Aが水道管1の分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに衝突することを回避する迂回経路を通して下流側に移動案内する移動案内手段D3とが設けられている。
【0034】
前記導入作業ケース15は、仕切弁4の下流側連結フランジ4Bにボルト10・ナット11を介して固定連結される同一外径の板フランジ15Aと、前記管内検査機器Aを保持した保持手段D1を収納可能な内径を備えた導入作業筒15Bとから構成されているとともに、前記導入作業筒15Bは、前記板フランジ15Aのうち、前記分岐軸芯Yから水道管1の管軸芯X方向に沿って上流側に偏倚した部位において、上下方向に水密状態で摺動自在に貫通支持され、且つ、その上下動範囲の任意の位置又は特定の複数位置で選択的に固定連結可能に構成されている。
【0035】
そのため、前記導入作業筒15B内から設定送り込み位置に送り込まれる管内検査機器Aを保持した保持手段D1は、分岐軸芯Yから水道管1の管軸芯X方向に沿って上流側に偏倚した部位に位置することになり、設定送り込み位置の下流側に、分岐軸芯Y方向に沿う姿勢にある管内検査機器Aが水道管1の管軸芯X方向に沿う姿勢に変更するためのスペースを確保することができる。
【0036】
前記導入作業ケース15の板フランジ15Aに対して導入作業筒15Bを上下方向に取付け位置変更可能に固定連結する位置変更固定手段は、前記導入作業筒15Bの外周面に、それの筒軸芯方向に水密状態で摺動可能で、且つその摺動範囲の任意の位置又は特定の複数位置で選択的に水圧に抗してボルト等で締付け固定可能な連結部材16を設けるとともに、この連結部材16を、前記板フランジ15Aにボルト17を介して水密状態で固定連結して構成されている。
【0037】
前記移送手段D2は、導入作業ケース15の導入作業筒15Bの天板部15bに対して水密状態で上下方向に摺動自在に貫通支持された挿入棒18から構成されているとともに、前記挿入棒18の上端には操作ハンドル18Aが設けられている。
【0038】
前記移動案内手段D3は、分岐軸芯Y方向に沿う姿勢にある管内検査機器Aの管軸芯X方向で下流側に位置する半周面を受止め可能な半円筒状で、且つ、前記保持手段D1から分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接又は近接する状態で少なくとも前記下流側部位P又は当該下流側部位Pに相当する箇所にまで傾斜姿勢で延出された移動案内部材19から構成されている。
【0039】
前記保持手段D1には、分岐軸芯Y方向に沿う姿勢にある管内検査機器Aの管軸芯X方向で上流側に位置する半周面を受止め可能な状態で挿入棒19の下端部に取付けられる半円筒状の固定カバー20と、当該固定カバー20との間に管内検査機器Aの収納空間Sを形成する状態で前記固定カバー20の送り込み方向上手側の基端部に設けた取付けアーム21に対して揺動開閉自在に枢支連結される可動カバー22とが備えられているとともに、前記固定カバー20には、水道水が通過可能な複数の通水孔20aが形成されている。
【0040】
前記可動カバー22は、固定カバー20の先端(下端)が水道管1の内壁底面に当接した設定送り込み位置で開動操作されたとき、当該可動カバー22の先端部が分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接位置する長さに形成され、当該可動カバー22をもって前記移動案内手段D3の移動案内部材19が兼用構成されている。
【0041】
前記可動カバー22を水圧に抗して閉じ姿勢に保持する閉じ操作状態と可動カバー22を水圧によって開き作動させる開き操作状態とに切り替え操作するカバー開閉操作手段D4が設けられ、このカバー開閉操作手段D4には、繰り出し及び巻取り操作可能な索状体の一例で、管外に設置されるワイヤドラム24から導出されたワイヤ25が備えられている。
【0042】
前記ワイヤ25は、前記管内検査機器Aの外径よりも大なる間隔を隔てて可動カバー22の先端側外面におけるカバー幅方向(半円筒状の可動カバー22における両側壁部の端面を結ぶ方向)の両側部位に先端が止着された一対のワイヤ25から構成され、両ワイヤ25は、固定カバー20の上下中間部の外面におけるカバー幅方向(半円筒状の固定カバー20における両側壁部の端面を結ぶ方向)の両側部位に設けたガイドプーリー26を経由し、且つ、前記導入作業ケース15の導入作業筒15Bの天板部15bに形成された水密導出口部を通して管外のワイヤドラム24に巻き取られている。
【0043】
前記移送手段D2の挿入棒18を押し込み操作して前記固定カバー20の先端が水道管1の内壁底面に当接する設定送り込み位置にまで送り込んだ時点で、前記カバー開閉操作手段D4のワイヤ25を繰り出し操作すると、固定カバー20の通水孔20aを通して管内検査機器Aの上流側の周面部分には水圧が作用しているため、この管内検査機器Aに作用している水圧で可動カバー22が開動側に揺動すると同時に、当該可動カバー22と固定カバー20との対向面間に収納さていた管内検査機器Aが水圧で押し出される。
【0044】
そして、前記可動カバー22が最大開動位置に到達した時点で、可動カバー22の先端が分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位P又はそれの下流側近傍位置に当接し、管内検査機器Aが可動カバー22の内面に沿って分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pから水道管1の管軸芯X側に離れた位置を通して下流側に移動案内されるため、前記分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに対して管内検査機器Aの外周面が衝突したり、或いは、管内検査機器Aから導出されるケーブル33が摺接することを抑制することができる。
【0045】
また、管内検査作業終了時に管内検査機器Aを設定送り込み位置にある固定カバー20内に回収する際、可動カバー22の先端側外面におけるカバー幅方向の両側部位から固定カバー20の中間部外面におけるカバー幅方向の両側部位にわたって、管内検査機器Aの外径よりも大なる間隔を隔てて一対のワイヤ25が配設されているため、この一対のワイヤ25と回収される管内検査機器Aとの接触によって当該管内検査機器Aの回収姿勢を修正することができ、管内検査機器Aを固定カバー20内にスムーズに回収することができる。
【0046】
前記管内検査機器Aには、水道管1の内壁面を撮影するテレビカメラ30と、撮影対象の水道管1の内壁面を照明する管内照明具31と、推進力を付与するための水平スラスタ32等が装備されているとともに、この管内検査機器Aの全長が前記分岐口2の直径及び水道管1の内径よりも大に構成されている。
【0047】
前記管内検査機器Aには、電源線や映像信号線、制御信号線等からなるケーブル33が導出され、このケーブル33は、前記取付けアーム21に設けたケーブルガイド34を経由し、且つ、前記導入作業ケース15の導入作業筒15Bの天板部15bに形成された水密導出口部を通して管外に設置されるケーブルドラム35に巻き取られている。
【0048】
尚、当該第1実施形態では、前記移動案内手段D3の移動案内部材19を兼用構成する可動カバー22を、設定送り込み位置で開動操作したとき、当該可動カバー22の先端部が分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接位置する長さに形成したが、前記可動カバー22を前記下流側部位Pよりも下流側に突出する長さに構成してもよい。
【0049】
また、当該第1実施形態では、前記可動カバー22を設定送り込み位置で開動操作したとき、当該可動カバー22の先端部を分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接させたが、前記可動カバー22を揺動開閉自在に枢支する枢支部において、可動カバー22を設定送り込み位置で開動操作したとき、当該可動カバー22の先端部が分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに対して非接触となる開き位置で停止するように最大開き角度を規制してもよい。
【0050】
さらに、前記固定カバー20との間で管内検査機器Aの収納空間Sを形成する可動カバー22の内面に、可動カバー22の先端部が分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接したときの衝撃を緩和するゴム層等の緩衝層を形成してもよい。
【0051】
〔第2実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記移動案内手段D3の移動案内部材19を兼用構成する可動カバー22を、前記分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに直接当接する直線状に構成したが、図8に示すように、前記可動カバー22の先端側部位を、分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pを管軸芯X側に迂回する状態で当該下流側部位Pよりも下流側の水道管1の内壁面に当接可能な弧状又は多角形状に構成してもよい。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0052】
〔第3実施形態〕
上述の第1実施形態では、前記保持手段D1の可動カバー22を移動案内手段D3の移動案内部材19に兼用構成したが、図9に示すように、前記移送手段D2の挿入棒18に設けた取付け部18Bに、分岐軸芯Y方向に沿う姿勢にある管内検査機器Aの管軸芯X方向で下流側に位置する半周面を受止め可能な閉じ状態と、前記分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pに当接又は近接する状態で少なくとも前記保持手段D1から下流側部位P又は当該下流側部位Pに相当する箇所にまで傾斜姿勢で延出される開き状態とに揺動切替え可能な移動案内部材19を取付けてもよい。
【0053】
前記移動案内部材19は、前記閉じ状態において、保持手段D1の固定カバー20との間で管内検査機器Aを分岐軸芯Y方向に沿う姿勢で保持するための押え部材に兼用構成されている。
尚、その他の構成は、第1実施形態で説明した構成と同一であるから、同一の構成箇所には、第1実施形態と同一の番号を付記してそれの説明は省略する。
【0054】
〔その他の実施形態〕
(1)上述の実施形態では、前記水道管1内を移動自在な管内作業機器の一例として管内検査機器Aを例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、管内作業機器Aとしては水道管1内に存在する異物を管外に吸引除去する管内異物除去具等であってもよい。
【0055】
(2)上述の実施形態では、前記仕切弁4に管内導入装置Dの導入作業ケース15を取付けたが、前記仕切弁4の下流側に短管等の連結管が連結されている場合には、この連結管に導入作業ケース15を取付けてもよく、更に、前記仕切弁4が存在しない場合には、前記分岐管部3に導入作業ケース15を直接取付けてもよい。
【0056】
(3)上述の実施形態では、水道管1の管壁に、水道水の流れを維持した不断水状態で管内検査機器Aを管内に導入するための分岐口(穿孔口)2を貫通形成したが、検査対象領域の水道管1に分岐管部3が存在し、この分岐管部3に副弁を介して消火栓等の流体機器が取付けられている場合には、この既存の副弁から流体機器を撤去して管内導入装置Dの導入作業ケース15を取付けてもよい。
【0057】
(4)上述の実施形態では、前記水道管1に、分岐管部3を備えた分割構造の管継手Bを取付けてある配管構造を例に挙げて説明したが、前記分岐管部3が水道管1に一体形成されている配管構造に本発明の技術を適用してもよい。
【0058】
(5)上述の実施形態では、前記分岐口2の直径及び水道管1の内径よりも大なる全長に構成された管内検査機器Aを例示したが、この管内検査機器等の管内作業機器Aの全長は、前記分岐口2の直径及び水道管1の内径よりも小に構成されていてもよい。
この場合、前記送り込む移送手段D2で設定送り込み位置に送り込まれた管内作業機器Aの全体が水道管等の流体管1内に臨むことになる。
【0059】
(6)上述の実施形態では、前記保持手段D1を、設定送り込み位置に送り込まれたときに管内作業機器Aの保持力が自動的又は人為操作で解除されるように構成したが、設定送り込み位置に到達する前段階において、管内作業機器Aの保持力が流体圧によって徐々に解除されるように構成してもよい。
また、前記保持手段D1としては、設定送り込み位置に送り込まれたときに管内作業機器Aを下流側に機械力で強制的に押し出す強制押出手段を備えたものであってもよい。
要するに、前記保持手段D1としては、管内作業機器Aを分岐管部3の分岐軸芯Y方向に沿った又は分岐軸芯Y方向に略沿った姿勢で着脱可能に保持することのできるものであれば、如何なる構造のものを用いてもよい。
【0060】
(7)上述の実施形態では、前記移送手段D2を、導入作業ケース15の導入作業筒15Bの天板部15bに対して水密状態で上下方向に摺動自在に貫通支持された挿入棒18から構成したが、流体圧シリンダーやネジ式伸縮機構等の機械力で保持手段D1を待機位置と設定送り込み位置とに切り替えるように構成してもよい。
要するに、前記移送手段D2としては、前記保持手段D1を分岐軸芯Y方向に沿って分岐管部3から流体管1内に少なくとも管内作業機器Aの一部が臨む設定送り込み位置にまで送り込むことのできるものであれば、如何なる構造のものを用いてもよい。
【0061】
(8)上述の実施形態では、前記移動案内手段D3の移動案内部材19の横断面形状を半円弧状又はそれに類似する形状に構成したが、この移動案内部材19を偏平板状に構成してもよく、さらに、前記移動案内部材19を複数本の移動ガイド棒や複数の通水孔を備えた部材から構成してもよい。
要するに、前記移動案内手段D3としては、設定送り込み位置にある保持手段D1から保持解除されて少なくとも流体圧(流体圧と強制押出力で押出してもよい)で押し出される管内作業機器Aを流体管1の分岐口2の内周面側開口周縁2aにおける下流側部位Pから流体管1の管軸芯X側に離れた位置を通して下流側に移動案内することのできるものであれば、如何なる構造のものを用いてもよい。
【0062】
(9)上述の実施形態では、前記流体管として水道管を例に挙げて説明したが、この流体管としては下水管やガス管等であってもよい。
【符号の説明】
【0063】
A 管内作業機器(管内検査機器)
D1 保持手段
D2 移送手段
D3 移動案内手段
D4 カバー開閉操作手段
P 下流側部位
X 管軸芯
Y 分岐軸芯
1 流体管(水道管)
2 分岐口
2a 内周面側開口周縁
3 分岐管部
15 導入作業ケース
19 移動案内部材
20 固定カバー
22 可動カバー
25 索状体(ワイヤ)
30 テレビカメラ
31 管内照明具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管内を移動可能な管内作業機器を前記流体管に形成された分岐口に連通する分岐管部から導入する管内導入装置であって、
前記分岐管部の下流側に接続可能な導入作業ケースに、前記管内作業機器を分岐管部の分岐軸芯方向に沿った姿勢で着脱可能に保持する保持手段と、前記保持手段を分岐軸芯方向に沿って分岐管部から流体管内に少なくとも管内作業機器の一部が臨む設定送り込み位置にまで送り込む移送手段と、前記設定送り込み位置にある保持手段から保持解除されて流体圧で押し出される管内作業機器を流体管の分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位から流体管の管軸芯側に離れた位置を通して下流側に移動案内する移動案内手段とが設けられているとともに、前記移動案内手段が、前記保持手段又は移送手段から分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位に当接又は近接する状態で少なくとも前記下流側部位又は当該下流側部位に相当する箇所にまで延出された移動案内部材から構成されている管内導入装置。
【請求項2】
前記保持手段には、前記移送手段に取付けられる固定カバーと当該固定カバーとの間に管内作業機器の収納空間を形成する状態で前記固定カバーの送り込み方向上手側の基端部に対して開閉自在に連結される可動カバーとが備えられているとともに、前記可動カバーが、設定送り込み位置で開動操作された可動カバーの先端が少なくとも分岐口の内周面側開口周縁における下流側部位又は当該下流側部位に相当する箇所に位置する長さに形成され、当該可動カバーをもって前記移動案内手段の移動案内部材が構成されている請求項1記載の管内導入装置。
【請求項3】
前記可動カバーを流体圧に抗して閉じ姿勢に保持する閉じ操作状態と可動カバーを流体圧によって開き作動させる開き操作状態とに切り替え操作するカバー開閉操作手段が設けられている請求項2記載の管内導入装置。
【請求項4】
前記カバー開閉操作手段には、繰り出し及び巻取り操作可能な索状体が備えられ、この索状体は、前記管内作業機器の外径よりも大なる間隔を隔てて可動カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位から固定カバーの外面におけるカバー幅方向の両側部位を経由して導入作業ケース側に導出されている請求項3記載の管内導入装置。
【請求項5】
前記分岐口の直径が流体管の内径と略同じに構成されているとともに、前記管内作業機器の全長が前記分岐口の直径よりも大に構成されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の管内導入装置。
【請求項6】
前記管内作業機器には、管内撮像用のカメラと管内照明具が装備されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の管内導入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−184822(P2012−184822A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49323(P2011−49323)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【出願人】(397012923)大成機工株式会社 (16)