説明

管式熱交換器の伝熱管洗浄装置

【課題】伝熱管洗浄装置について、構成機器の数を少なくし、かつ、安価な機器を用いることで、導入コストの低減を図ることを課題とする。
【解決手段】管式熱交換器1の伝熱管内に洗浄体19を通過させることにより、伝熱管内を洗浄する伝熱管洗浄装置100であって、従来、三方弁によって行っていた動作を、二方弁20と、従来から用いていた逆止弁21との組み合わせによって実現することで、導入コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管式熱交換器の伝熱管内面を洗浄する洗浄装置に関し、特に、伝熱管内に洗浄体(スポンジボールなど。以下同様)を通すことにより伝熱管内面を洗浄する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機や発電プラントなどに使用されている管式熱交換器では、例えば、伝熱管内に冷却水を通して熱交換を行っている。冷却水としては、通常、淡水や海水が用いられるが、運転に伴い、伝熱管内面にスケール(カルシウム、二酸化ケイ素など)やスライム(細菌などに由来する粘性物質)などの異物が付着し、伝熱性能が低下するという問題がある。
【0003】
この伝熱性能低下を防止する方法として、例えば、各伝熱管の内面を作業者が手作業によりブラシでこすって洗浄する方法がある。この方法は、分解洗浄(COP(Cleaning out of place))と呼ばれている。しかし、伝熱管の内面の洗浄は頻繁(例えば毎日)に行う必要があり、労力や人件費などの面から、この方法はデメリットが大きい。
【0004】
また、伝熱性能低下を防止する他の方法として、冷却水中に洗浄体を含有させ、冷却水と共に洗浄体を伝熱管内に通し、伝熱管内面に付着したスケールやスライムなどを洗浄体によって除去する洗浄方法が広く知られている。この方法は、定置洗浄(CIP(Cleaning in place))と呼ばれている。なお、洗浄体の直径は、伝熱管の内径よりも少し大きいのが一般的である。
【0005】
洗浄体を用いた従来の洗浄装置として、例えば、図2に示す特許文献1に開示されている管式熱交換器の伝熱管洗浄装置がある。これによれば、混合部114から入口冷却水112に混入された清掃媒体(洗浄体)は、管式熱交換器110の伝熱管内を洗浄しながら通過した後、出口冷却水116の管路に設置された篩装置118によって分離され、分岐流122として分離器124へと流れ、分離器124の内部に設置された篩により捕捉される。次に、分離器124及び容器128の出入口の弁132、134、136、138を閉止して通水遮断状態にし、分離器124と容器128間に設置された弁126を開放することにより清掃媒体を分離器124から容器128へと移動させる。その後、弁126を閉止し、弁146を閉止、弁132、134、136、138を開放してポンプ130を起動することにより、清掃媒体を再び入口冷却水112に混入させる。以上の操作を繰り返すことにより伝熱管洗浄を行う。
【0006】
また、図3に示す特許文献2に開示されている管式熱交換器の伝熱管洗浄装置では、切替弁235、237をそれぞれボール注入管210、214側に切替え、注入ポンプ213を運転してボール回収器230内のボール(洗浄体)をボール投入口211から冷却水入口管203に注入する。冷却水とともに移動するボールは熱交換器204の伝熱管205内を洗浄しながら通過し、一旦、ボール捕集器220内に捕集(捕捉)される。次に、切替弁235をボール取出管209側、切替弁237を排出管238側に切り替えることにより、排出管238を通る排水流れが生じ、これによりボール捕集器220内のボールはボール取出管209を通ってボール回収器230内に回収される。これを繰り返すことにより伝熱管洗浄を行う。
【0007】
また、図4に示す特許文献3に開示されている管式熱交換器の伝熱管洗浄装置では、三方弁316を導管332と導管333が接続される側に切り替え、循環ポンプ313を運転して回収器315内のスポンジボールを冷却水入口管302に圧入する。冷却水とともに移動するスポンジボールは管式熱交換器301の伝熱管内を洗浄しながら通過し、捕集器310にて捕集され、循環ポンプ313により捕集器出口弁311を通って吸引され、回収器315を通過し、ボール圧入弁331を通って再び冷却水入口管302に圧入される。洗浄は所定時間連続的に行われ、洗浄終了後は、三方弁316を導管332とバイパス管路322が接続される側に切り替え、搬送水流がバイパス管路322を通るようにして回収器315内にスポンジボールを回収する。なお、回収器315内のバイパス管路322側にはスポンジボール回収用のバスケット(複数の小さな穴の開いた容器)が設けられている。所定の回収時間経過後、循環ポンプ313を停止して洗浄を終了するが、このときに冷却水が逆流しないように逆止弁321が設置されている。
【0008】
なお、伝熱管洗浄装置は、伝熱管内面を洗浄することで熱交換効率の低下を防止し、省エネルギーに貢献するものである。そして、伝熱管洗浄装置は、投資対効果が高いことが導入の条件となるので、省エネルギー効果があっても、装置価格が高いと導入に至らないことが多い。したがって、伝熱管洗浄装置は、低価格化が普及拡大のために必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭63−143497号公報
【特許文献2】特許3890505号公報
【特許文献3】特公平7−31032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そのような状況において、前記した従来技術には以下のような問題がある。
まず、特許文献1に開示された伝熱管洗浄装置では、清掃媒体の混入・回収動作を行うために6台の弁を使用するなど構成機器の数が多く、また、管式熱交換器の出入口配管に接続する配管本数が3本と多いため、装置価格及び現地配管工事費が高くなるという問題がある。また、洗浄運転が、清掃媒体を一度分離器に回収し、弁操作の後、容器に移してから再び送り出すバッチ式運転のため、洗浄時間が長くなるという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に開示された伝熱管洗浄装置では、二方弁よりも高価な三方弁を3台使用しており、さらに、熱交換器の出入口配管に接続する配管本数が3本と多いため、装置価格及び現地配管工事費が高くなるという問題がある。また、特許文献1の場合と同様、バッチ式運転のため、洗浄時間が長くなるという問題がある。さらに、ボール回収器にボールを回収するときに貴重な冷却水を系外に排水するため、補給水量の著しい増加を招きランニングコストが増大するという問題もある。
【0012】
また、特許文献3に開示された伝熱管洗浄装置では、構成機器の数が少なく、管式熱交換器の出入口配管に接続する配管本数も2本と少ないが、スポンジボールの圧入・回収の切り替えに高価な三方弁を使用しており、装置価格が高くなるという問題がある。また、高層ビルなどに設置された空調用冷凍機設備などでは、冷却塔を高層ビル屋上に設置し、冷凍機を1階又は地下に設置する場合が多く、冷凍機用管式熱交換器の冷却水出入口配管には高い水頭圧がかかっている。よって、これに接続する伝熱管洗浄装置にも高い耐圧が要求されるが、高耐圧型の三方弁は、二方弁と違って標準タイプとして手に入りにくいため、特注となって極めて高価になってしまうという問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、伝熱管洗浄装置について、構成機器の数を少なくし、かつ、安価な機器を用いることで、導入コストの低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明は、管式熱交換器の伝熱管内に洗浄体を通過させることにより、伝熱管内を洗浄する伝熱管洗浄装置であって、従来、三方弁によって行っていた動作を、二方弁と、従来から用いていた逆止弁との組み合わせによって実現する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、伝熱管洗浄装置について、構成機器の数を少なくし、かつ、安価な機器を用いることで、導入コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態にかかる伝熱管洗浄装置の系統図である。
【図2】従来の伝熱管洗浄装置の系統図である。
【図3】従来の他の伝熱管洗浄装置の系統図である。
【図4】従来の他の伝熱管洗浄装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する。)について詳細に説明する。図1は、標準的な空調設備の冷凍機(例えばターボ冷凍機や吸収式冷凍機)に使用されている管式熱交換器に設置する本実施形態の伝熱管洗浄装置の系統図である。
【0018】
標準的な空調設備の冷却水系統は、管式熱交換器1(ターボ冷凍機の場合は凝縮器、吸収式冷凍機の場合は吸収器及び凝縮器と呼ばれる。)と、冷却水を外気との熱交換により冷却する冷却塔2と、冷却水を循環させる冷却水ポンプ3と、それらを繋ぐ管側流体入口配管4及び管側流体出口配管5とを備えて構成されている。
【0019】
本発明の伝熱管洗浄装置100は、主に、管側流体出口配管5に設置された分離器6と、移送ポンプ11、手動弁12、回収器13、二方弁20、逆止弁21、回収配管9、注入配管10から構成されている。また、洗浄体19としては通常、スポンジボールが使用される。
【0020】
分離器6には、冷却水中の洗浄体19を捕捉分離するためのセパレータ7が傾斜して設置されている。また、分離器6は、下流部から分岐流として冷却水と共に洗浄体19を取り出す取出口8を備えている。この取出口8は、回収配管9に接続されている。なお、分離器6としては、これ以外に様々な構造のものが実用化されており、それらを用いてもよい。
【0021】
移送ポンプ11は、分離器6の取出口8から分岐流として洗浄体19を取り出し、その洗浄体19を、回収器13を通過させて再度、管側流体入口配管4に注入したり、回収器13内に回収したりするための洗浄体移送手段である。
【0022】
手動弁12は、通常、開にして使用するが、回収器13における作業者による洗浄体19の出し入れの作業時には閉にする。
【0023】
回収器13には、洗浄体入口16、通過出口17、回収出口18の3つの出入口が設けられており、洗浄体入口16と回収出口18との間には冷却水のみ通過させ、洗浄体19を捕捉回収するバスケット14が設けられている。また、作業者が洗浄体19を出し入れするときに開けるための蓋15が設けられている。
【0024】
二方弁20は、洗浄体19を通過させる必要があるため、通常、ボール弁やダイアフラム弁、ゲート弁等を用いるが、洗浄体19を通過させることができるものであれば、何を用いてもよい。また、二方弁20は、電気や空気圧などを駆動源とするタイプのものであってもよいし、あるいは、手動操作を行うタイプのものであってもよい。
【0025】
逆止弁21は、二方弁20と共に、伝熱管洗浄装置100における重要な構成要素である。つまり、従来、洗浄体の循環、回収の流路切替えを高価な三方弁で行っていたものを、伝熱管洗浄装置100では、逆止弁21と安価な二方弁20との組み合わせで実現する。なお、この逆止弁21は、移送ポンプ11が停止したときに冷却水の逆流を防止するために必要なもので、従来から用いられているもの(例えば、特許文献3の逆止弁21(本願の図4の逆止弁321))であり、三方弁を二方弁にしたことで追加されるものではないため、コストアップの要因とはならない。
【0026】
逆止弁21としては、二方弁20が開の状態で移送ポンプ11が起動しているときに、弁体(逆止弁21)を閉から開にするために必要な差圧である最低開口差圧DPmin(弁の固有値)が下記(1)式を満たすものを選定する必要がある。
DPmin >P1−P2 ・・・・(1)
【0027】
なお、P1は、二方弁20が開の状態での逆止弁21の弁体の入口側(回収器13側)にかかる圧力(冷却水による圧力。以下同様)である。また、P2は、二方弁20が開の状態での逆止弁21の弁体の出口側(接続点23側)にかかる圧力である。以下、近似的に考えて、二方弁20が開の状態において、回収器13内の圧力もP1であるものとし、接続点23(二方弁20の下流側と逆止弁21の下流側との接続点)での圧力もP2であるものとして説明する。
【0028】
逆止弁21としては、機能、価格等を考慮し、弁体にボールを用いたボール式のものが通常使用されるが、(1)式を満たすものであれば他の形式のものであってもよい。また、逆止弁21は、市販品に限るものではなく、同様の作用をする製作品であってもよい。
【0029】
ここで、三方弁の場合と同様に、逆止弁21と二方弁20との組み合わせによって、流路の切り替えが可能であることについて詳細に説明する。移送ポンプ11を起動し、二方弁20を開にすると、冷却水は洗浄体入口16から回収器13内に流入し、そのまま通過出口17から出て、二方弁20、接続点23を通過し、注入配管10を経て管側流体入口配管4へ流入する。
【0030】
このとき、逆止弁21の入口側には圧力P1(回収器13内の圧力)がかかり、逆止弁21の出口側には圧力P2(接続点23の圧力)がかかる。そして、(1)式を満たす逆止弁21を用いている場合、逆止弁21の最低開口差圧DPminが差圧(P1−P2)より大きいので、逆止弁21は閉のままとなり、冷却水は二方弁20側のみを通過する(逆止弁21側を通過しない)。
【0031】
補足説明すると、二方弁20を開にすると、移送ポンプ11により送出される洗浄体19を含む冷却水は、圧力損失が少ない流路として、前記のとおり、洗浄体入口16→回収器13内→通過出口17→二方弁20→接続点23へと順々に通流するので、回収器13内の圧力P1は高い値ではない。このため、最低開口差圧DPminが通常程度の逆止弁21を使用していれば、(1)式を満たすことになり、逆止弁21は閉のままとなる。ちなみに、二方弁20としては、圧力損失の少ない仕様(条件)の弁が選択されるとともに、二方弁20が開であれば逆止弁21が閉となるような仕様(条件)の弁が選択される。
【0032】
一方、二方弁20を閉にすると、冷却水は、当然ながら、二方弁20を通過できないので、移送ポンプ11が起動していると、回収器13内の圧力が高くなり、逆止弁21が開になって、冷却水は逆止弁21側のみを通過する。
このように、最低開口差圧が(1)式を満たす逆止弁21と二方弁20を組み合わせることにより、従来のように高価な三方弁を使用しなくても、流路を適切に切り替えることが可能となる。
【0033】
なお、逆止弁21が開のときに、閉であった二方弁20を開にすると、回収器13内の圧力が低くなってP1となり、(1)式からわかるように、逆止弁21は閉になる。ちなみに、二方弁20として、二方弁20が開であれば逆止弁21が閉となるような仕様(条件)の弁が選択されることは前記したとおりである。なお、この条件は、「移送ポンプ11が起動し、二方弁20が開となった状態のとき、その弁体を閉から開にする最低開口差圧DPminが、回収器13内における流体の圧力から、注入配管10と逆止弁下流配管22との接続点23における流体の圧力を引いた差圧以上である(請求項2参照)」に合致するものである。
【0034】
次に、伝熱管洗浄装置100の動作について説明する。伝熱管洗浄装置100の動作は、洗浄体19を循環させて伝熱管洗浄を行う循環運転動作と、洗浄体19を回収器13内に回収する回収運転動作とに分けることができる。
【0035】
最初に、循環運転動作について説明する。まず、二方弁20と手動弁12を閉とし、回収器13の蓋15を開け、バスケット14内に洗浄体19を所定量(例えば、30〜40個程度)入れ、蓋15を閉める。次に、手動弁12を開とし、移送ポンプ11を起動する。これにより、冷却水は、分離器6の取出口8から回収配管9、移送ポンプ11、手動弁12を通り、洗浄体入口16から回収器13内に流入し、バスケット14を通過して回収出口18から出て逆止弁21を通過し、接続点23から注入配管10を通過して管側流体入口配管4内に流入する。前記のとおり、二方弁20と逆止弁21は、二方弁20が開になれば逆止弁21が閉になり、二方弁20が閉になれば逆止弁21が開になる関係を有する。なお、逆止弁21を通る冷却水に洗浄体19は含まれていない。
【0036】
この状態で、二方弁20を開にすると、前記したように逆止弁21が閉となり、冷却水の流れが洗浄体入口16から通過出口17、二方弁20、接続点23、注入配管10へと切り替わり、バスケット14内の洗浄体19は冷却水の流れにのって上記流路を通って管側流体入口配管4内へ注入される。なお、洗浄体入口16と通過出口17の中心軸をずらしておけば、回収器13内に冷却水の渦ができ、バスケット14内の洗浄体19を通過出口17から回収器13の外により早く出すことができる。また、この図1の例では回収器13内の上部には、洗浄体入口16から通過出口17に向かう冷却水の流れが生じ、この流れにより発生する負圧により回収器13の中部および下部の冷却水が洗浄体19を伴って吸い上げられ、この結果、通過出口17からは、洗浄体19を含む冷却水が流出する。
【0037】
ちなみに、冷却水と洗浄体19(冷却水を吸収している洗浄体19)の密度(比重)の関係については、両者は同じ程度か、あるいは、洗浄体19の密度が少し高い程度がよい。
【0038】
なお、洗浄体19の密度の方が冷却水の密度より過度に高いと洗浄体19が沈降しやすくなるので、回収器13で回収した洗浄体19を回収器13内に生じる流れを利用して上方の通過出口17から排出することが困難になる。また、冷却水の流速にもよるが、洗浄体19が冷却水中の下方に沈降するため、複数の伝熱管のうち下方の伝熱管に洗浄体19が入り込みやすく、複数の伝熱管を均等に洗浄できないという事態が予想される。
【0039】
一方、洗浄体19の密度の方が冷却水の密度よりも過度に低いと、洗浄体19が冷却水中の上方に浮上するため、冷却水の流速にもよるが、複数の伝熱管のうち上方の伝熱管に洗浄体19が入り込みやすく、複数の伝熱管を均等に洗浄できないという事態が予想される。
【0040】
そこで、冷却水と洗浄体19の密度が同程度か、あるいは、洗浄体19の密度のほうが少し高いと、回収器13内の洗浄体19を通過出口17から効率よく排出し、また、複数の伝熱管に洗浄体19が均等に入り複数の伝熱管を均等に洗浄できるという効果が期待できる。
【0041】
動作の説明に戻って、洗浄体19は、管側流体入口配管4内に流入した後、管式熱交換器1の伝熱管内面を洗浄しながら通過し、管側流体出口配管5に設置されている分離器6にて捕捉分離され、取出口8から出て、回収配管9を通って移送ポンプ11により、前記経路を通って管側流体入口配管4内に再度注入される。これを所定時間(例えば20分程度)続けることにより、バッチ式運転と異なり効率よく連続洗浄運転を行うことができる。
【0042】
続いて、回収運転動作について説明する。回収運転動作では、二方弁20を閉じることにより、冷却水は、洗浄体入口16からバスケット14を通過し、回収出口18から出て、逆止弁21を通って接続点23を経由して注入配管10を通過し、管側流体入口配管4に流入する。冷却水中の洗浄体19は、バスケット14によって次々に捕捉され、所定時間(例えば20分程度)運転することにより全てがバスケット14内に回収される。
【0043】
所定時間の運転後、移送ポンプ11を停止して一連の洗浄運転は終了となる。なお、移送ポンプ11を停止すると逆止弁21が閉となり、冷却水の逆流は防止されるので、洗浄体19が回収器13内から分離器6側へ流出することはない。
【0044】
また、二方弁20の下流側配管を水平(または水平に準ずる状態)に配置し、これに逆止弁下流配管22を接続点23において上方から接続するのが好ましい。この構造により、二方弁20を通過した洗浄体19が逆止弁下流配管22内に入り込んで滞留することを防止でき、よりスムーズな洗浄体19の循環が可能となる。
【0045】
このように、本実施形態の伝熱管洗浄装置100によれば、構成機器の数を少なくし、かつ、高価な三方弁ではなく安価な二方弁20を用いることで、導入コストの低減を図ることができる。その際、二方弁20を、所定の最低開口差圧を有する逆止弁21と組み合わせることにより、高価な三方弁と同様の動作を実現できる。
【0046】
また、構成機器の数が少ないため、及び、三方弁よりも動作や制御が単純な二方弁20を用いることで、故障確率を低く抑えることができる。
また、高性能で安価な伝熱管洗浄装置100を実現できるので、その導入を促進し、省エネルギーやCO削減による地球温暖化対策に貢献できる。
【0047】
また、高層ビルなどに設置された空調用冷凍機設備への導入を考えた場合、伝熱管洗浄装置100では、特注で高価な高耐圧型の三方弁を用いる必要がなく、標準で安価な高耐圧型の二方弁を用いることができるので、その導入を大きく促進することができる。
【0048】
以上で本実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明は、冷凍機設備だけでなく、発電プラントなどにも適用することができる。
その他、具体的な構成や内容などについて、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 管式熱交換器
2 冷却塔
3 冷却水ポンプ
4 管側流体入口配管
5 管側流体出口配管
6 分離器
7 セパレータ
8 取出口
9 回収配管
10 注入配管
11 移送ポンプ
12 手動弁
13 回収器
14 バスケット
15 蓋
16 洗浄体入口
17 通過出口
18 回収出口
19 洗浄体
20 二方弁
21 逆止弁
22 逆止弁下流配管
23 接続点
100 伝熱管洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管式熱交換器の伝熱管内に洗浄体を通過させることにより、前記伝熱管内を洗浄する伝熱管洗浄装置であって、
前記洗浄体を流体と共に移送する移送ポンプと、
前記移送ポンプの吐出側に設けられ、内部に前記洗浄体を捕捉するバスケットを備え、前記移送ポンプの吐出口と配管接続される洗浄体入口、前記バスケットを介さず前記洗浄体をそのまま通過させる通過出口、及び、前記バスケットを介する回収出口を備えた回収器と、
前記回収器の通過出口側の配管に接続される二方弁と、
前記回収器の回収出口側の配管に接続される逆止弁と、
前記二方弁の下流側から前記管式熱交換器の管側流体入口配管に合流接続する注入配管と、
前記逆止弁の下流側から前記注入配管に合流接続する逆止弁下流配管と、
前記管式熱交換器の管側流体出口配管に設置され、流体中の前記洗浄体を分離する手段を内蔵し、分離した前記洗浄体を分岐流として取り出す取出口を備えた分離器と、
前記取出口と前記移送ポンプの吸込口とを接続する回収配管と、
を備えることを特徴とする管式熱交換器の伝熱管洗浄装置。
【請求項2】
前記逆止弁において、
前記移送ポンプが起動し、前記二方弁が開となった状態のとき、その弁体を閉から開にする最低開口差圧が、前記回収器内における流体の圧力から、前記注入配管と前記逆止弁下流配管との接続点における流体の圧力を引いた差圧以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の伝熱管洗浄装置。
【請求項3】
前記注入配管と前記逆止弁下流配管との接続点において、
前記逆止弁下流配管は、前記注入配管に対して、上方から接続している
ことを特徴とする請求項2記載の管式熱交換器の伝熱管洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21719(P2012−21719A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160689(P2010−160689)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【出願人】(504368284)日神エンジニアリングサービス株式会社 (3)