管球、反射鏡付き管球、および照明装置
【課題】普及型管球と少なくとも同等の寿命と集光性とを、2個の扁平コイル(発光部)で構成したフィラメント体の管球で達成することで管球、反射鏡付き電球を提供する。
【解決手段】凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球の一種であるハロゲン電球であって、気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体60とを備え、フィラメント体60は、短軸SXと長軸LXとを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部62A,64Aが2個、所定の間隔D1を空けて配されてなるものである。ここで、各発光部内周の短軸長さSXが所定の範囲に、かつ、長軸長さLXを短軸長さSXで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲に定められている。
【解決手段】凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球の一種であるハロゲン電球であって、気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体60とを備え、フィラメント体60は、短軸SXと長軸LXとを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部62A,64Aが2個、所定の間隔D1を空けて配されてなるものである。ここで、各発光部内周の短軸長さSXが所定の範囲に、かつ、長軸長さLXを短軸長さSXで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲に定められている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管球、反射鏡付き管球、および照明装置に関し、特に、管球におけるフィラメント体の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
反射鏡付き管球の一種である反射鏡付きハロゲン電球は、凹面状をした反射面を有する反射鏡とハロゲン電球とを組み合わせてなるものであり、例えば、店舗などのスポット照明用として使用されている。
ハロゲン電球は、気密封止されたバルブ内にフィラメント体が収納されてなる構成を有している。ハロゲン電球を反射鏡と組み合わせて使用する場合には、フィラメント体をできるだけコンパクトにして、その発光領域を可能な限り反射鏡の焦点位置に集中させることによって、集光効率を向上させることができる。この場合に、発光領域を特に反射鏡の光軸方向に縮小することが、集光効率を向上させるためには効果的であることが知られている。
【0003】
しかしながら、一般的に、ハロゲン電球の定格電圧[V]、定格電力[W]、および定格寿命(例えば、3000時間)が決まると、これに応じて、フィラメント体を構成するタングステン線の線径や長さが実質的に定まってしまう。したがって、例えば、単純にタングステン線の長さを短縮することによってフィラメント体のコンパクト化を図ることは困難である。
【0004】
そこで、定格電圧100[V]以上のハロゲン電球において、実用化されているものは、一般的に、フィラメント体のコンパクト化を図るため二重巻きコイルが用いられている。また、特許文献1には、さらなるコンパクト化のため、フィラメント体として、三重巻きコイルを用いたハロゲン電球が開示されている。これによれば、タングステン線の長さが同じであれば、反射鏡の光軸方向におけるコイル全体の長さを短縮でき、もって集光効率が向上することとなるからである。
【0005】
しかしながら、コイルの重ね巻数を増やせば増やすほど、ハロゲン電球に外力(衝撃力)が加えられた際に生じるコイルの振動の振幅が大きくなり、これが原因で断線し易くなるといった問題が生じる。
この問題を解決しつつ、フィラメント体のコンパクト化(光軸方向の短縮化)を図れるハロゲン電球として、特許文献2には、複数個の一重コイルが全体的に反射鏡の光軸に対して対称となるように各々の一重コイルを反射鏡の光軸と平行に配したものが開示されている。これにより、当該複数個の一重コイルに相当するものを1個の一重コイルで作製した場合と比較して、光軸方向の長さが短縮されるので、集光効率が向上することとなる。また、各々のコイルは一重なので、上記振動に因る問題も軽減される。
【0006】
さらに、これを改善したものとして、特許文献3には、上記複数個の一重コイルの内の1個を、反射鏡の光軸に平行にかつ光軸を含む位置に配する構成としたハロゲン電球が開示されている。光軸位置にコイル(すなわち、発光部)が存するのと存しないのとでは得られる照度に大きな差が生じると、一般的に考えられているからである。
ところで、近年の店舗照明における演出手法の多様化から、反射鏡付きハロゲン電球が多用される傾向にあり、そのため、省エネルギ等の観点からも一層の集光効率の向上が求められている。
【0007】
そこで、本願の発明者らは、複数個の一重コイルの内の1個を反射鏡の光軸を含む位置に配すると共に、残りの一重コイルを前記光軸と交差する方向に間隔を置いて配し、かつ、各々の一重コイルを、素線を扁平な筒状に巻回してなるもの(以下、「扁平コイル」と称する。)としたフィラメント体を創作した。
これによれば、素線を円筒状に巻回してなる従来の一重コイルと比較して、(扁平な筒の短軸長さと円筒の直径とが等しいとした場合)1ターン当たりの素線長を長くすることができる関係上、タングステン線の素線長が同じであれば、コイル長を短くでき、もって、フィラメント体の光軸方向における一層の短縮化ができて集光効率をより向上することとなる。なお、コイルを扁平にすることにより、反射鏡の光軸と交差する方向の長さは、円筒状に巻回されたコイルよりも長くなるものの、集光効率の向上には、光軸と交差する方向よりも光軸方向に短縮する方の効果が大きいので問題はない。
【0008】
また、フィラメント体の短縮化の観点からは、コイルの個数は多いほど良いように思われるが、多くなり過ぎると、コイル間を電気的に接続すると共に各コイルを支持する支持構造体が複雑になり、また、コイルの支持構造体への組み付けが困難になって現実的ではない。
そこで、本願の発明者らは、複数個のコイルを光軸に対して対称的に配置できると共に、その内の一のコイルを光軸を含む位置に配することができる最小個数として3個の扁平コイルからなるフィラメント体を有するハロゲン電球を創作し、普及している二重巻コイルのフィラメント体を有するハロゲン電球(以下、「普及型管球」と称する。)と同等の集光性を得ることに成功した。
【特許文献1】特開2001−345077号公報
【特許文献2】特表平6−510881号公報
【特許文献3】特開2002−63869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、3個の扁平コイルからなるフィラメント体のハロゲン電球では、普及型管球よりも寿命が短くなってしまうことが判明した。これは、3個の扁平コイルの内の真ん中の扁平コイル(すなわち、光軸を含む位置に在るコイル)が、これ以外の2個の扁平コイルから発せられる赤外線で両側から熱せられることによって過熱状態となり、過度にタングステンが蒸発するためであると考えられた。
【0010】
これに対処するには、コイル同士の間隔を拡げればよいが、そうすると、集光性が低下してしまい、満足いく性能が得られなくなってしまうおそれがある。
また、2方向(両側)から加熱される扁平コイルを無くすため、2個の扁平コイルでフィラメント体を構成することも考えられるが、その場合、光軸に対する対称性を考慮した場合、光軸上に扁平コイルを配することができなくなって、やはり満足のいく集光性が得られないのではないかといった懸念がある。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、普及型管球と少なくとも同等の寿命と集光性とを、2個の扁平コイル(発光部)で構成したフィラメント体の管球で達成することを目的とする。また、本発明は、そのような管球を有する反射鏡付き管球、および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る管球は、凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球であって、気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体とを備え、前記フィラメント体は、短軸と長軸とを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部が2個、所定の間隔を空けて配されてなるものであり、各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る反射鏡付き管球は、反射鏡と、前記反射鏡内に組み込まれている、上記した管球とを有することを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る照明装置は、反射鏡を有する照明器具と、前記反射鏡内に組み込まれている、上記した管球とを有することを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る照明装置は、照明器具と、前記照明器具に取り付けられている、上記した反射鏡付き管球とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成からなる管球によれば、2個の発光部は、所定の間隔を空けて配され、各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあるので、普及型管球と少なくとも同等の集光性が得られる。また、コイル状をした発光部2個でフィラメント体を構成することとしたので、2以上の方向から加熱される発光部が無くなる。すなわち、過熱状態となる発光部が無くなることから、過熱に起因して生じる断線が防止でき、短寿命の問題を解消し得る。加えて、発光部の各々は一重コイル状をしているので、耐衝撃性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る照明装置10の概略構成を示す一部切欠き図である。なお、図1を含む全ての図面において、各部材間の縮尺は統一していない。
照明装置10は、例えば、住宅、店舗、あるいはスタジオ等におけるスポットライト照明として用いられる。照明装置10は、照明器具12と管球の一例として示すハロゲン電球14とを有する。
【0016】
照明器具12は、有底円筒状をした器具本体16と器具本体16に収納された反射鏡18とを有する。
器具本体16の底部には、ハロゲン電球14の口金30(図2参照)を取り付けるための受け具(図示せず)が設けられている。なお、器具本体16は、円筒状に限らず、種々の公知形状とすることができる。
【0017】
反射鏡18は、ハロゲン電球14を取替え可能とするため、器具本体16に対し、着脱可能である。
反射鏡18は、漏斗状をした硬質ガラス製基体20を有する。基体20において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分20Aには、反射面を構成する多層干渉膜22が形成されている。多層干渉膜22は、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。反射鏡18の開口径(ミラー径)は100mmであり、ビームの開き(ビーム角)が、中角(約20°)のものである。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
【0018】
反射鏡18は、基体20の開口部に設けられた前面ガラス24を有する。本例では、前面ガラス24は基体20に固着されており、ハロゲン電球14の取替えのため、基体20部分が器具本体16と着脱自在な構成となっているが、これに限らず、基体を器具本体に固定し、前面ガラスを基体に対し着脱自在な構成としても構わない。
ハロゲン電球14は、前記受け具(不図示)に取り付けられ、反射鏡18内に組み込まれて使用される。組み込まれた(取り付けられた)状態で、ハロゲン電球14の後述するバルブ26の中心軸Bが反射鏡18の光軸Rとが略同軸上に位置することとなる(中心軸Bと光軸Rとが略一致することとなる。)。ハロゲン電球14は、定格電圧が100[V]以上150[V]以下で、かつ定格電力が100[W]以下に設定された電球である。
【0019】
図2に、ハロゲン電球14の一部切欠き正面図を示す。
ハロゲン電球14は、気密封止されたバルブ26と、バルブ26の後述する封止部38側に接着剤28によって固着された、例えばE型の口金30とを有している。
バルブ26は、封止切りの残痕であるチップオフ部32、後述するフィラメント体60等を収納するフィラメント体収納部34、略円筒状をした筒部36、および公知のピンチシール法によって形成された封止部38がこの順に連なった構造をしている。
【0020】
フィラメント体収納部34は、図2に示すように、略回転楕円体形状をしている。ここで言う「略回転楕円体形状」とは、完全な回転楕円体形を含むことはもちろんのこと、ガラスの加工上ばらつく程度分、完全な回転楕円体形からずれた形状を含むことを意味している。なお、フィラメント体収納部は、上記した形状に限らず、例えば、略円筒形状や略球形状、あるいは略複合楕円体形状としても構わない。
【0021】
また、バルブの構造も上記したものに限らず、例えば、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、フィラメント体収納部、封止部がこの順に連なったものとすることができる。
なお、フィラメント体収納部34の外面には赤外線反射膜が形成されている。もっとも、この赤外線反射膜は必ずしも必要なものではなく、適宜形成されるものである。
【0022】
バルブ26内には、ハロゲン物質と希ガスとがそれぞれ所定量封入されている。これに加えて、窒素ガスを封入することとしても構わない。
封止部38内には、一対の金属箔40,42が封着されている。金属箔40,42はモリブデン製である。
金属箔40の一端部には外部リード線44の一端部が、金属箔42の一端部には外部リード線46の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。外部リード線44,46は、タングステン製である。外部リード線44,46の他端部は、バルブ26の外部に導出されていて、それぞれ、口金30の端子部48,50に電気的に接続されている。
【0023】
金属箔40の他端部には内部リード線52の一端部が、金属箔42の他端部には内部リード線54の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。内部リード線52,54は、タングステン製である。内部リード線52,54の一端部は、バルブ26の封止部38で支持されている。内部リード線52,54は、口金30を介して供給される外部電力をフィラメント体60に給電すると共に、フィラメント体60の一部を直接に支持する支持部材としての役割を果たす。
【0024】
図3に、フィラメント体60を支持する支持構造体を示す斜視図を、図4に、当該支持構造体にフィラメント体60が支持された状態を示す斜視図をそれぞれ示す。
図3に示すように、フィラメント体60の一部を直接に支持する支持部材としては他に、タングステンからなるサポート線56がある。
内部リード線52,54、サポート線56は、一対の円柱状ステムガラス57,59で挟持されている。これによって、サポート線56が支持されると共に、内部リード線52,54、サポート線56相互間の相対的な位置が保持されることとなる。
【0025】
図4に示すように、フィラメント体60は、第1フィラメントコイル62および第2フィラメントコイル64の2個のフィラメントコイルからなる。第1および第2フィラメントコイル62,64、タングステン線を、後述するように巻回したものである。
内部リード線52,54、サポート線56は、フィラメントコイル62,64の端部部分に挿入されて、フィラメントコイル62,64を支持するための「コ」字状に屈曲した部分(以下、この部分を「コイル支持部」と称する。)を1箇所または2箇所有する。
【0026】
ここで、第1フィラメントコイル62は、内部リード線52のコイル支持部52A(図3参照)とサポート線56のコイル支持部56A(図3参照)とで支持されている。
第2フィラメントコイル64は、サポート線56のコイル支持部56B(図3参照)と内部リード線54のコイル支持部54A(図3参照)とで支持されている。
また、図4から明らかなように、第1フィラメントコイル62と第2フィラメントコイル64の一端部同士は、サポート線56で電気的に接続されている。すなわち、第1フィラメントコイル62と第2フィラメントコイル64は、サポート線56によって直列に接続されている。
【0027】
図4に示す状態で、内部リード線52,54から給電すると、第1および第2フィラメントコイル62,64は、コイル支持部が挿入されている部分では発光せずに(非発光部)、コイル支持部間で発光する。ここで、各フィラメントコイル62,64におけるコイル支持部間の部分(すなわち、発光する部分)を、それぞれ第1発光部62A、第2発光部64Aと規定することとする。すなわち、フィラメント体60は、一重のコイル状をした2個の発光部62A,64Aを有している。
【0028】
また、図4に示すように、第1、第2フィラメントコイル62,64(第1、第2発光部62A,64A)は、扁平な筒状に巻回されてなる一重コイル(以下、「扁平コイル」と略称する。)状をしている。このような形状にしたのは、以下の理由による。すなわち、特許文献2や特許文献3に記載されているような、円筒状に巻回されてなる従来の一重コイル(以下、「円筒コイル」と略称する。)と比較して、(扁平な筒の短軸長と円筒の直径が等しいとした場合)1ターン当たりの素線長を長くすることができる関係上、タングステン線の素線長が同じであれば、コイル長を短縮でき、もって、反射鏡の光軸方向(バルブの中心軸方向)におけるフィラメントコイル(発光部)の縮小化が図れることとなるからである。なお、コイルを扁平にすることにより、反射鏡の光軸と交差する方向の長さは、円筒状に巻回されたコイルよりも長くなるものの、集光効率の向上には、光軸と交差する方向よりも光軸方向に短縮する方の効果が大きいので問題はない。
【0029】
扁平コイルであるフィラメントコイル62,64は、以下のようにして作製される。
すなわち、図5に示すように、円柱状をした芯線(マンドレル)66を複数本(図示例では3本)、平行かつ一列に密着させて並べたものの外周に、タングステン線68を巻回した後、芯線66を抜いて作製する。
図6の上部に示すのは、第1フィラメントコイル62をそのコイル軸心CX方向から視た平面図を模式的に表したものであり、図6の下部に示すのは、同正面図を模式的に表したものである。
【0030】
第1、2フィラメントコイル62,64は略同一形態なので、第1フィラメントコイル62を代表にして説明する。
図6の上部に示すように、第1フィラメントコイル62は、そのコイル軸心CX方向から見て、平行に配された2本の線分の対応する端同士を半円で結んでなる、いわゆる(陸上競技の)トラック形状をしている。この形状は、上記した作製方法に由来するものであり、芯線66の本数が多いほど、より扁平したトラック形状となる。すなわち、芯線66の本数で、扁平の度合い(扁平率)を調整することができる。
【0031】
ここで、扁平率は、第1フィラメントコイル62内周における長軸LXの長さを短軸SXの長さで除して得られる値と規定する。本例では、上記した製作法を採る関係上、扁平率は整数の値となる。
また、上述したとおり、図6の下部に示すように、第1フィラメントコイル62は、コイル支持部52Aとコイル支持部56A(図3、図4)で支持された両端部部分の非発光部62Bと両コイル支持部52A,56A間部分の発光部62Aとを有している。
【0032】
図7の上部に示すのは、内部リード線52,54、サポート線56に取り付けられた状態の第1、第2フィラメントコイル62,64を、バルブ26の中心軸B(図1、図2)方向から見た平面図を模式的に表したものであり、図7の下部に示すのは、同正面図を模式的に表したものである。なお、ハロゲン電球14を反射鏡18に組み込んだ状態においては、図7は、反射鏡18の光軸R(図1)方向から、第1、第2フィラメントコイル62,64を見た図とも言える。ここで、図7は、第1、第2フィラメントコイル62,64間の配置位置の関係等を説明する目的で用いるため、本図において、内部リード線52,54の図示は省略し、サポート線56は、第1、第2フィラメントコイル62,64間の電気的な接続関係を示す目的で、単に線で表した。また、下部の正面図では、第1、第2フィラメントコイル62,64の第1、第2発光部62A,64Aを実線で、非発光部62B,64Bを二点鎖線でそれぞれ表した。
【0033】
図7に示すように、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とが、各々のコイル軸心CXが中心軸Bに略平行となり、かつ、両コイルの長軸LX同士が略平行となる姿勢で配されてフィラメント体60が構成されている。また、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とは、所定のコイル間隔(発光部間隔)D1を空けて配されている。さらに、中心軸Bに関する対称性を考慮して、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とは、中心軸Bから略等距離の位置に配されている。
【0034】
このように、フィラメント体を構成するフィラメントコイル(発光部)の個数を2個とすることにより、当然のことながら、2以上の方向から加熱される(すなわち、2個以上のフィラメントコイルが発生する赤外線によって加熱される)フィラメントコイル(発光部)が無くなる。すなわち、過熱状態となるフィラメントコイル(発光部)が無くなることから、過熱に起因して生じる断線が防止でき、短寿命の問題を解消し得るものである。
【0035】
しかしながら、中心軸B(光軸R)に関する対称性を考慮した場合、中心軸B(光軸R)を含む位置にフィラメントコイルを配することができないので、満足できる集光効率が得られないのではないかと懸念された。
そこで、本願発明者らが、検討を重ねた結果、短軸長さ(長軸長さ)、扁平率、および発光部間隔(コイル間隔)を適切な値にすることにより、普及型ハロゲン電球と同等の集光効率と寿命が達成できるハロゲン電球を得ることに成功した。
【0036】
図8に、そのようなハロゲン電球の仕様の一例を示す。
図8において、No.3〜14が実施例に係るハロゲン電球(以下、「実施例電球」と称する。)である。ここで、No.3〜8は、コイル間隔(発光部間隔)D1=2.5[mm]、短軸長さSX=0.35[mm]とした上で、扁平率を3,4,5,6,8,10と変化させたフィラメント体を有するハロゲン電球である。No.9〜14は、コイル間隔(発光部間隔)D1=2.5[mm]、扁平率=3とした上で、短軸長さSXを、本図に示す範囲で変化させたフィラメント体を有するハロゲン電球である。なお、No.3〜14に係る実施例電球の各フィラメントコイルにおける巻線間隔(ピッチ)は全て同様とした。また、各フィラメントコイルの発光部を形成する部分のタングステン線も略同じ長さとした。したがって、短軸長さと扁平率とが決まれば、発光部全長(有効コイル長)は必然的に決まることとなる。
【0037】
図8において、No.1は、実用化されている反射鏡付きハロゲン電球(松下電器産業株式会社製、品番JDR110V65WKM/5E11)を構成するハロゲン電球(以下、「基準電球」と称する。)であり、二重コイルのフィラメント体を有するものである。
また、No.2は、比較例として示すハロゲン電球(以下、「比較電球」と称する。)であり、図9に示すように、第1〜第3フィラメントコイル202,204,206(第1〜第3発光部202A,204A,206A)からなるフィラメント体200を有するものである。図9は図7に準じて描いた図であり、比較電球は、第2フィラメントコイル204(第2発光部204A)を、その軸心CXがバルブ26の中心軸Bと略一致するように配すると共に、その両側に対照的に第1および第3フィラメントコイル202,206(第1および第3発光部202A,206A)をコイル間隔(発光部間隔)D2を空けて配置したものである。
【0038】
ここで、集光性の評価は以下のようにして行った。上記反射鏡付きハロゲン電球(品番JDR110V65WKM/5E11)から、付属しているハロゲン電球を取り外し、実施例電球、比較電球を取り付けて試験に用いた。定格電圧110[V]、定格電力65[W]で点灯させて、反射鏡付きハロゲン電球から距離1[m]離れた照射面における中心照度[lx]を測定した。そして、上記反射鏡付きハロゲン電球で得られる中心照度を「100」とした場合における相対照度に関し、No.2〜14の電球について調査した。
【0039】
図8に示すように、No.1〜14の電球は、全て光束が同じ(1100[lm])なので、相対照度の値が大きい程、集光性に優れていることになる。
比較電球(No.2)は、相対照度が155と集光性に優れているものの、寿命が500[h]と、基準電球(No.1)よりも極端に短くなっている。これは、上述したように、第2フィラメントコイル204(第2発光部204A)が、第1および第3のフィラメントコイル202,206(第1および第3発光部202A,206A)から発せられる赤外線で両側から熱せられることによって過熱状態となり、過度にタングステンが蒸発するためであると考えられている。これに対処するには、コイル同士の間隔D2を拡げればよいが、少し拡げただけで、集光性が極端に低下してしまい、満足いく性能が得られなくなってしまうことが確認されている。
【0040】
これに対し、実施例電球(No.3〜14)によれば、基準電球(No.1)と同等かそれ以上の集光性が得られると共に、基準電球(No.1)と同等の寿命を達成している。なお、実施例電球(No.3〜14)は、一重コイルのみでフィラメント体を構成している関係上、二重コイルでフィラメント体を構成している基準電球(No.1)よりも、耐衝撃性が改善されていることは言うまでもない。
【0041】
図9に示す結果から、この場合に、短軸長さを0.35[mm]とした場合には、少なくとも扁平率が3あれば、基準電球(No.1)よりも高い集光性が得られることが分かる(実施例電球No.3〜8)。
また、扁平率が3であれば、短軸長さが少なくとも0.35[mm]あれば、基準電球(No.1)よりも高い集光性が得られることが分かる(実施例電球No.9〜14)。
(変形例1)
図7に示した例では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)は、そのコイル軸心CXをバルブ26の中心軸Bと略平行になるように配したが、これに限らず、図10に示すように、コイル軸心CXを中心軸Bに対して傾けて、両コイル軸心CX間の間隔が、前記反射鏡18(図1)の反射面20Aから遠ざかるほど狭くなるような姿勢で、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)を配することとしても構わない。なお、図10に示す変形例1に係るフィラメント体70は、フィラメントコイルの配置関係が異なる以外は、図7に示したフィラメント体60と基本的に同じなので、同様の構成部分については、同じ符号を付して、その説明については省略する。また、次に述べる変形例2,3に係るフィラメント体も、フィラメントコイルの配置関係が異なる以外は、図7に示したフィラメント体60と基本的に同じなので、同様の構成部分については、同じ符号を付して、その説明については省略することとする。
【0042】
また、図10に示すのとは逆に、両コイル軸心CX間の間隔が、前記反射鏡18(図1)の反射面20Aから遠ざかるほど広くなるような姿勢で、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)を配することとしても構わない。
(変形例2)
図11に変形例2に係るフィラメント体72を示す。
【0043】
図7に示したフィラメント体60では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)は、そのコイル軸心CXをバルブ26の中心軸Bと略平行になるように配しているのに対し、変形例2に係るフィラメント体72では、そのコイル軸心CXがバルブ26の中心軸Bと略直交するように配している点が異なる。
(変形例3)
図12に変形例3に係るフィラメント体74を示す。
【0044】
図7に示したフィラメント体60では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)の2個を、バルブ26の中心軸Bと略直交する方向に間隔を空けて並べたのに対し、変形例3に係るフィラメント体74では、バルブ26の中心軸Bの方向に間隔を空けて並べている点が異なる。
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る反射鏡付きハロゲン電球100の概略構成を示す縦断面図である。
【0045】
反射鏡付きハロゲン電球100は、反射鏡一体型のハロゲン電球であるが、これに用いているハロゲン電球102は、主として口金が異なる以外は、実施の形態1に係るハロゲン電球14(図2)と基本的に同じ構成なので、共通部分には、同じ符号を付して、その説明については省略する。
反射鏡104は、硬質ガラスまたは石英ガラス等からなり、漏斗状をした基体106を有する。基体106において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分106Aには、反射面を構成する多層干渉膜108が形成されている。多層干渉膜108は、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。反射鏡104の開口径(ミラー径)は100mmである。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
【0046】
反射鏡104は、基体106の開口部に設けられた前面ガラス110を有する。前面ガラス110は、基体106に公知の止め金具112によって係止されている。なお、止め金具112に代えて、接着剤で固着してもよい。あるいは、両方を併用しても構わない。もっとも、前面ガラスは、反射鏡付きハロゲン電球の必須の構成部材ではなく、無くても構わない。
【0047】
基体106のネック部106Bは、ハロゲン電球102の口金114の端子部116,118とは反対側に設けられた基体受け部122と嵌合された上、接着剤124で固着されている。
なお、基体106の口金114への取り付けに先立って、バルブ26が、口金114に取り付けられている。言うまでも無く、口金114にバルブ26と基体106(反射鏡104)とが取り付けられた状態で(すなわち、反射鏡104内にハロゲン電球102が組み込まれた状態で)、バルブ26の中心軸と反射鏡104の光軸とが略同軸上に位置する(前記中心軸と前記光軸とが略一致する)こととなる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態1では、反射鏡を備える照明器具とハロゲン電球とで照明装置を構成したが、これに限らず、反射鏡を有しない照明器具と反射鏡付きハロゲン電球とで照明装置を構成することとしても構わない。具体的には、例えば、図1に示す照明装置における反射鏡18とハロゲン電球14の代わりに、図13に示す反射鏡付きハロゲン電球100を取り付けて、照明装置を構成することとしても構わない。
(2)フィラメントコイルは、上記したトラック形状に限らず、他の扁平形状でも構わない。要は、互いに直交する長軸と短軸を有する扁平な横断面をした筒状に巻回されていれば構わない。また、扁平率も整数に限らず、任意の小数をとり得る。
【0049】
ここで、本発明において「短軸と長軸とを有する扁平な横断面」とは、以下に記すような形状のものを含む。当該形状について図14を参照しながら説明する。なお、図14では、短軸に符号「SX」を、長軸に符号「LX」を、また、短軸および長軸の両軸と略直交する中心軸(すなわち、コイル軸心)に符号「CX」をそれぞれ付している。
(i)同図(a)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、上記したトラック形状のもの、つまり二つの平行な線分とそれらの各々の両端を略半円で結んだもの。
【0050】
(ii)同図(b)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、円形を押し潰した形状のもの。
(iii)同図(c)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略楕円形状のもの
(iv)同図(d)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略長方形のもの。但し、四隅は、加工上、丸みを帯びる。
【0051】
(v)その他、コイル軸心CX方向から見て、上記(i)〜(iv)に類似した形状のもの。例えば上記(i)において、同図(e)に示すように、二つの平行な線分が内方向に湾曲していても上記(i)に類似した形状として含む。また、ここでは、加工ばらつきによる上記(i)〜(iv)の変形形状も含む。
(3)上記実施の形態では、管球の一例としてハロゲン電球を示したが、本発明は、ハロゲン電球以外の管球にも適用可能である。要は、フィラメント体に電流を流して白熱発光させる光源であれば構わないのである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る管球は、例えば、反射鏡に組み込まれて使用される管球として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1に係る照明装置の概略構成を示す一部切欠き図である。
【図2】上記照明装置を構成するハロゲン電球を示す図である。
【図3】上記ハロゲン電球におけるフィラメント体の支持構造を示す斜視図である。
【図4】上記支持構造にフィラメント体が支持された状態を示す斜視図である。
【図5】上記フィラメント体を構成するフィラメントコイルの製作方法を説明するための図である。
【図6】フィラメントコイルの平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図7】上記フィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図8】フィラメント体が2重コイルからなるハロゲン電球(基準電球)、フィラメント体が1重コイル3個からなるハロゲン電球(比較電球)、およびフィラメント体が1重コイル2個からなるハロゲン電球(実施例電球)の比較一覧を示す図である。
【図9】上記比較電球におけるフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図10】上記実施の形態1の変形例1に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図11】上記実施の形態1の変形例2に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図12】上記実施の形態1の変形例3に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図13】実施の形態2に係る反射鏡付きハロゲン電球の概略構成を示す図である。
【図14】扁平な筒(状)の横断面の形状を例示した図である。
【符号の説明】
【0054】
10 照明装置
12 照明器具
14,102 ハロゲン電球
18,104 反射鏡
26 バルブ
60,70,72,74 フィラメント体
62,64 フィラメントコイル
62A,64A 発光部
100 反射鏡付きハロゲン電球
【技術分野】
【0001】
本発明は、管球、反射鏡付き管球、および照明装置に関し、特に、管球におけるフィラメント体の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
反射鏡付き管球の一種である反射鏡付きハロゲン電球は、凹面状をした反射面を有する反射鏡とハロゲン電球とを組み合わせてなるものであり、例えば、店舗などのスポット照明用として使用されている。
ハロゲン電球は、気密封止されたバルブ内にフィラメント体が収納されてなる構成を有している。ハロゲン電球を反射鏡と組み合わせて使用する場合には、フィラメント体をできるだけコンパクトにして、その発光領域を可能な限り反射鏡の焦点位置に集中させることによって、集光効率を向上させることができる。この場合に、発光領域を特に反射鏡の光軸方向に縮小することが、集光効率を向上させるためには効果的であることが知られている。
【0003】
しかしながら、一般的に、ハロゲン電球の定格電圧[V]、定格電力[W]、および定格寿命(例えば、3000時間)が決まると、これに応じて、フィラメント体を構成するタングステン線の線径や長さが実質的に定まってしまう。したがって、例えば、単純にタングステン線の長さを短縮することによってフィラメント体のコンパクト化を図ることは困難である。
【0004】
そこで、定格電圧100[V]以上のハロゲン電球において、実用化されているものは、一般的に、フィラメント体のコンパクト化を図るため二重巻きコイルが用いられている。また、特許文献1には、さらなるコンパクト化のため、フィラメント体として、三重巻きコイルを用いたハロゲン電球が開示されている。これによれば、タングステン線の長さが同じであれば、反射鏡の光軸方向におけるコイル全体の長さを短縮でき、もって集光効率が向上することとなるからである。
【0005】
しかしながら、コイルの重ね巻数を増やせば増やすほど、ハロゲン電球に外力(衝撃力)が加えられた際に生じるコイルの振動の振幅が大きくなり、これが原因で断線し易くなるといった問題が生じる。
この問題を解決しつつ、フィラメント体のコンパクト化(光軸方向の短縮化)を図れるハロゲン電球として、特許文献2には、複数個の一重コイルが全体的に反射鏡の光軸に対して対称となるように各々の一重コイルを反射鏡の光軸と平行に配したものが開示されている。これにより、当該複数個の一重コイルに相当するものを1個の一重コイルで作製した場合と比較して、光軸方向の長さが短縮されるので、集光効率が向上することとなる。また、各々のコイルは一重なので、上記振動に因る問題も軽減される。
【0006】
さらに、これを改善したものとして、特許文献3には、上記複数個の一重コイルの内の1個を、反射鏡の光軸に平行にかつ光軸を含む位置に配する構成としたハロゲン電球が開示されている。光軸位置にコイル(すなわち、発光部)が存するのと存しないのとでは得られる照度に大きな差が生じると、一般的に考えられているからである。
ところで、近年の店舗照明における演出手法の多様化から、反射鏡付きハロゲン電球が多用される傾向にあり、そのため、省エネルギ等の観点からも一層の集光効率の向上が求められている。
【0007】
そこで、本願の発明者らは、複数個の一重コイルの内の1個を反射鏡の光軸を含む位置に配すると共に、残りの一重コイルを前記光軸と交差する方向に間隔を置いて配し、かつ、各々の一重コイルを、素線を扁平な筒状に巻回してなるもの(以下、「扁平コイル」と称する。)としたフィラメント体を創作した。
これによれば、素線を円筒状に巻回してなる従来の一重コイルと比較して、(扁平な筒の短軸長さと円筒の直径とが等しいとした場合)1ターン当たりの素線長を長くすることができる関係上、タングステン線の素線長が同じであれば、コイル長を短くでき、もって、フィラメント体の光軸方向における一層の短縮化ができて集光効率をより向上することとなる。なお、コイルを扁平にすることにより、反射鏡の光軸と交差する方向の長さは、円筒状に巻回されたコイルよりも長くなるものの、集光効率の向上には、光軸と交差する方向よりも光軸方向に短縮する方の効果が大きいので問題はない。
【0008】
また、フィラメント体の短縮化の観点からは、コイルの個数は多いほど良いように思われるが、多くなり過ぎると、コイル間を電気的に接続すると共に各コイルを支持する支持構造体が複雑になり、また、コイルの支持構造体への組み付けが困難になって現実的ではない。
そこで、本願の発明者らは、複数個のコイルを光軸に対して対称的に配置できると共に、その内の一のコイルを光軸を含む位置に配することができる最小個数として3個の扁平コイルからなるフィラメント体を有するハロゲン電球を創作し、普及している二重巻コイルのフィラメント体を有するハロゲン電球(以下、「普及型管球」と称する。)と同等の集光性を得ることに成功した。
【特許文献1】特開2001−345077号公報
【特許文献2】特表平6−510881号公報
【特許文献3】特開2002−63869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、3個の扁平コイルからなるフィラメント体のハロゲン電球では、普及型管球よりも寿命が短くなってしまうことが判明した。これは、3個の扁平コイルの内の真ん中の扁平コイル(すなわち、光軸を含む位置に在るコイル)が、これ以外の2個の扁平コイルから発せられる赤外線で両側から熱せられることによって過熱状態となり、過度にタングステンが蒸発するためであると考えられた。
【0010】
これに対処するには、コイル同士の間隔を拡げればよいが、そうすると、集光性が低下してしまい、満足いく性能が得られなくなってしまうおそれがある。
また、2方向(両側)から加熱される扁平コイルを無くすため、2個の扁平コイルでフィラメント体を構成することも考えられるが、その場合、光軸に対する対称性を考慮した場合、光軸上に扁平コイルを配することができなくなって、やはり満足のいく集光性が得られないのではないかといった懸念がある。
【0011】
本発明は、上記した課題に鑑み、普及型管球と少なくとも同等の寿命と集光性とを、2個の扁平コイル(発光部)で構成したフィラメント体の管球で達成することを目的とする。また、本発明は、そのような管球を有する反射鏡付き管球、および照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明に係る管球は、凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球であって、気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体とを備え、前記フィラメント体は、短軸と長軸とを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部が2個、所定の間隔を空けて配されてなるものであり、各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するため、本発明に係る反射鏡付き管球は、反射鏡と、前記反射鏡内に組み込まれている、上記した管球とを有することを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る照明装置は、反射鏡を有する照明器具と、前記反射鏡内に組み込まれている、上記した管球とを有することを特徴とする。
上記の目的を達成するため、本発明に係る照明装置は、照明器具と、前記照明器具に取り付けられている、上記した反射鏡付き管球とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記構成からなる管球によれば、2個の発光部は、所定の間隔を空けて配され、各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあるので、普及型管球と少なくとも同等の集光性が得られる。また、コイル状をした発光部2個でフィラメント体を構成することとしたので、2以上の方向から加熱される発光部が無くなる。すなわち、過熱状態となる発光部が無くなることから、過熱に起因して生じる断線が防止でき、短寿命の問題を解消し得る。加えて、発光部の各々は一重コイル状をしているので、耐衝撃性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1に係る照明装置10の概略構成を示す一部切欠き図である。なお、図1を含む全ての図面において、各部材間の縮尺は統一していない。
照明装置10は、例えば、住宅、店舗、あるいはスタジオ等におけるスポットライト照明として用いられる。照明装置10は、照明器具12と管球の一例として示すハロゲン電球14とを有する。
【0016】
照明器具12は、有底円筒状をした器具本体16と器具本体16に収納された反射鏡18とを有する。
器具本体16の底部には、ハロゲン電球14の口金30(図2参照)を取り付けるための受け具(図示せず)が設けられている。なお、器具本体16は、円筒状に限らず、種々の公知形状とすることができる。
【0017】
反射鏡18は、ハロゲン電球14を取替え可能とするため、器具本体16に対し、着脱可能である。
反射鏡18は、漏斗状をした硬質ガラス製基体20を有する。基体20において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分20Aには、反射面を構成する多層干渉膜22が形成されている。多層干渉膜22は、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。反射鏡18の開口径(ミラー径)は100mmであり、ビームの開き(ビーム角)が、中角(約20°)のものである。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
【0018】
反射鏡18は、基体20の開口部に設けられた前面ガラス24を有する。本例では、前面ガラス24は基体20に固着されており、ハロゲン電球14の取替えのため、基体20部分が器具本体16と着脱自在な構成となっているが、これに限らず、基体を器具本体に固定し、前面ガラスを基体に対し着脱自在な構成としても構わない。
ハロゲン電球14は、前記受け具(不図示)に取り付けられ、反射鏡18内に組み込まれて使用される。組み込まれた(取り付けられた)状態で、ハロゲン電球14の後述するバルブ26の中心軸Bが反射鏡18の光軸Rとが略同軸上に位置することとなる(中心軸Bと光軸Rとが略一致することとなる。)。ハロゲン電球14は、定格電圧が100[V]以上150[V]以下で、かつ定格電力が100[W]以下に設定された電球である。
【0019】
図2に、ハロゲン電球14の一部切欠き正面図を示す。
ハロゲン電球14は、気密封止されたバルブ26と、バルブ26の後述する封止部38側に接着剤28によって固着された、例えばE型の口金30とを有している。
バルブ26は、封止切りの残痕であるチップオフ部32、後述するフィラメント体60等を収納するフィラメント体収納部34、略円筒状をした筒部36、および公知のピンチシール法によって形成された封止部38がこの順に連なった構造をしている。
【0020】
フィラメント体収納部34は、図2に示すように、略回転楕円体形状をしている。ここで言う「略回転楕円体形状」とは、完全な回転楕円体形を含むことはもちろんのこと、ガラスの加工上ばらつく程度分、完全な回転楕円体形からずれた形状を含むことを意味している。なお、フィラメント体収納部は、上記した形状に限らず、例えば、略円筒形状や略球形状、あるいは略複合楕円体形状としても構わない。
【0021】
また、バルブの構造も上記したものに限らず、例えば、チップオフ部(場合によっては無い場合もある)、フィラメント体収納部、封止部がこの順に連なったものとすることができる。
なお、フィラメント体収納部34の外面には赤外線反射膜が形成されている。もっとも、この赤外線反射膜は必ずしも必要なものではなく、適宜形成されるものである。
【0022】
バルブ26内には、ハロゲン物質と希ガスとがそれぞれ所定量封入されている。これに加えて、窒素ガスを封入することとしても構わない。
封止部38内には、一対の金属箔40,42が封着されている。金属箔40,42はモリブデン製である。
金属箔40の一端部には外部リード線44の一端部が、金属箔42の一端部には外部リード線46の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。外部リード線44,46は、タングステン製である。外部リード線44,46の他端部は、バルブ26の外部に導出されていて、それぞれ、口金30の端子部48,50に電気的に接続されている。
【0023】
金属箔40の他端部には内部リード線52の一端部が、金属箔42の他端部には内部リード線54の一端部が、それぞれ接合されて電気的に接続されている。内部リード線52,54は、タングステン製である。内部リード線52,54の一端部は、バルブ26の封止部38で支持されている。内部リード線52,54は、口金30を介して供給される外部電力をフィラメント体60に給電すると共に、フィラメント体60の一部を直接に支持する支持部材としての役割を果たす。
【0024】
図3に、フィラメント体60を支持する支持構造体を示す斜視図を、図4に、当該支持構造体にフィラメント体60が支持された状態を示す斜視図をそれぞれ示す。
図3に示すように、フィラメント体60の一部を直接に支持する支持部材としては他に、タングステンからなるサポート線56がある。
内部リード線52,54、サポート線56は、一対の円柱状ステムガラス57,59で挟持されている。これによって、サポート線56が支持されると共に、内部リード線52,54、サポート線56相互間の相対的な位置が保持されることとなる。
【0025】
図4に示すように、フィラメント体60は、第1フィラメントコイル62および第2フィラメントコイル64の2個のフィラメントコイルからなる。第1および第2フィラメントコイル62,64、タングステン線を、後述するように巻回したものである。
内部リード線52,54、サポート線56は、フィラメントコイル62,64の端部部分に挿入されて、フィラメントコイル62,64を支持するための「コ」字状に屈曲した部分(以下、この部分を「コイル支持部」と称する。)を1箇所または2箇所有する。
【0026】
ここで、第1フィラメントコイル62は、内部リード線52のコイル支持部52A(図3参照)とサポート線56のコイル支持部56A(図3参照)とで支持されている。
第2フィラメントコイル64は、サポート線56のコイル支持部56B(図3参照)と内部リード線54のコイル支持部54A(図3参照)とで支持されている。
また、図4から明らかなように、第1フィラメントコイル62と第2フィラメントコイル64の一端部同士は、サポート線56で電気的に接続されている。すなわち、第1フィラメントコイル62と第2フィラメントコイル64は、サポート線56によって直列に接続されている。
【0027】
図4に示す状態で、内部リード線52,54から給電すると、第1および第2フィラメントコイル62,64は、コイル支持部が挿入されている部分では発光せずに(非発光部)、コイル支持部間で発光する。ここで、各フィラメントコイル62,64におけるコイル支持部間の部分(すなわち、発光する部分)を、それぞれ第1発光部62A、第2発光部64Aと規定することとする。すなわち、フィラメント体60は、一重のコイル状をした2個の発光部62A,64Aを有している。
【0028】
また、図4に示すように、第1、第2フィラメントコイル62,64(第1、第2発光部62A,64A)は、扁平な筒状に巻回されてなる一重コイル(以下、「扁平コイル」と略称する。)状をしている。このような形状にしたのは、以下の理由による。すなわち、特許文献2や特許文献3に記載されているような、円筒状に巻回されてなる従来の一重コイル(以下、「円筒コイル」と略称する。)と比較して、(扁平な筒の短軸長と円筒の直径が等しいとした場合)1ターン当たりの素線長を長くすることができる関係上、タングステン線の素線長が同じであれば、コイル長を短縮でき、もって、反射鏡の光軸方向(バルブの中心軸方向)におけるフィラメントコイル(発光部)の縮小化が図れることとなるからである。なお、コイルを扁平にすることにより、反射鏡の光軸と交差する方向の長さは、円筒状に巻回されたコイルよりも長くなるものの、集光効率の向上には、光軸と交差する方向よりも光軸方向に短縮する方の効果が大きいので問題はない。
【0029】
扁平コイルであるフィラメントコイル62,64は、以下のようにして作製される。
すなわち、図5に示すように、円柱状をした芯線(マンドレル)66を複数本(図示例では3本)、平行かつ一列に密着させて並べたものの外周に、タングステン線68を巻回した後、芯線66を抜いて作製する。
図6の上部に示すのは、第1フィラメントコイル62をそのコイル軸心CX方向から視た平面図を模式的に表したものであり、図6の下部に示すのは、同正面図を模式的に表したものである。
【0030】
第1、2フィラメントコイル62,64は略同一形態なので、第1フィラメントコイル62を代表にして説明する。
図6の上部に示すように、第1フィラメントコイル62は、そのコイル軸心CX方向から見て、平行に配された2本の線分の対応する端同士を半円で結んでなる、いわゆる(陸上競技の)トラック形状をしている。この形状は、上記した作製方法に由来するものであり、芯線66の本数が多いほど、より扁平したトラック形状となる。すなわち、芯線66の本数で、扁平の度合い(扁平率)を調整することができる。
【0031】
ここで、扁平率は、第1フィラメントコイル62内周における長軸LXの長さを短軸SXの長さで除して得られる値と規定する。本例では、上記した製作法を採る関係上、扁平率は整数の値となる。
また、上述したとおり、図6の下部に示すように、第1フィラメントコイル62は、コイル支持部52Aとコイル支持部56A(図3、図4)で支持された両端部部分の非発光部62Bと両コイル支持部52A,56A間部分の発光部62Aとを有している。
【0032】
図7の上部に示すのは、内部リード線52,54、サポート線56に取り付けられた状態の第1、第2フィラメントコイル62,64を、バルブ26の中心軸B(図1、図2)方向から見た平面図を模式的に表したものであり、図7の下部に示すのは、同正面図を模式的に表したものである。なお、ハロゲン電球14を反射鏡18に組み込んだ状態においては、図7は、反射鏡18の光軸R(図1)方向から、第1、第2フィラメントコイル62,64を見た図とも言える。ここで、図7は、第1、第2フィラメントコイル62,64間の配置位置の関係等を説明する目的で用いるため、本図において、内部リード線52,54の図示は省略し、サポート線56は、第1、第2フィラメントコイル62,64間の電気的な接続関係を示す目的で、単に線で表した。また、下部の正面図では、第1、第2フィラメントコイル62,64の第1、第2発光部62A,64Aを実線で、非発光部62B,64Bを二点鎖線でそれぞれ表した。
【0033】
図7に示すように、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とが、各々のコイル軸心CXが中心軸Bに略平行となり、かつ、両コイルの長軸LX同士が略平行となる姿勢で配されてフィラメント体60が構成されている。また、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とは、所定のコイル間隔(発光部間隔)D1を空けて配されている。さらに、中心軸Bに関する対称性を考慮して、第1フィラメントコイル62(第1発光部62A)と第2フィラメントコイル64(第2発光部64A)とは、中心軸Bから略等距離の位置に配されている。
【0034】
このように、フィラメント体を構成するフィラメントコイル(発光部)の個数を2個とすることにより、当然のことながら、2以上の方向から加熱される(すなわち、2個以上のフィラメントコイルが発生する赤外線によって加熱される)フィラメントコイル(発光部)が無くなる。すなわち、過熱状態となるフィラメントコイル(発光部)が無くなることから、過熱に起因して生じる断線が防止でき、短寿命の問題を解消し得るものである。
【0035】
しかしながら、中心軸B(光軸R)に関する対称性を考慮した場合、中心軸B(光軸R)を含む位置にフィラメントコイルを配することができないので、満足できる集光効率が得られないのではないかと懸念された。
そこで、本願発明者らが、検討を重ねた結果、短軸長さ(長軸長さ)、扁平率、および発光部間隔(コイル間隔)を適切な値にすることにより、普及型ハロゲン電球と同等の集光効率と寿命が達成できるハロゲン電球を得ることに成功した。
【0036】
図8に、そのようなハロゲン電球の仕様の一例を示す。
図8において、No.3〜14が実施例に係るハロゲン電球(以下、「実施例電球」と称する。)である。ここで、No.3〜8は、コイル間隔(発光部間隔)D1=2.5[mm]、短軸長さSX=0.35[mm]とした上で、扁平率を3,4,5,6,8,10と変化させたフィラメント体を有するハロゲン電球である。No.9〜14は、コイル間隔(発光部間隔)D1=2.5[mm]、扁平率=3とした上で、短軸長さSXを、本図に示す範囲で変化させたフィラメント体を有するハロゲン電球である。なお、No.3〜14に係る実施例電球の各フィラメントコイルにおける巻線間隔(ピッチ)は全て同様とした。また、各フィラメントコイルの発光部を形成する部分のタングステン線も略同じ長さとした。したがって、短軸長さと扁平率とが決まれば、発光部全長(有効コイル長)は必然的に決まることとなる。
【0037】
図8において、No.1は、実用化されている反射鏡付きハロゲン電球(松下電器産業株式会社製、品番JDR110V65WKM/5E11)を構成するハロゲン電球(以下、「基準電球」と称する。)であり、二重コイルのフィラメント体を有するものである。
また、No.2は、比較例として示すハロゲン電球(以下、「比較電球」と称する。)であり、図9に示すように、第1〜第3フィラメントコイル202,204,206(第1〜第3発光部202A,204A,206A)からなるフィラメント体200を有するものである。図9は図7に準じて描いた図であり、比較電球は、第2フィラメントコイル204(第2発光部204A)を、その軸心CXがバルブ26の中心軸Bと略一致するように配すると共に、その両側に対照的に第1および第3フィラメントコイル202,206(第1および第3発光部202A,206A)をコイル間隔(発光部間隔)D2を空けて配置したものである。
【0038】
ここで、集光性の評価は以下のようにして行った。上記反射鏡付きハロゲン電球(品番JDR110V65WKM/5E11)から、付属しているハロゲン電球を取り外し、実施例電球、比較電球を取り付けて試験に用いた。定格電圧110[V]、定格電力65[W]で点灯させて、反射鏡付きハロゲン電球から距離1[m]離れた照射面における中心照度[lx]を測定した。そして、上記反射鏡付きハロゲン電球で得られる中心照度を「100」とした場合における相対照度に関し、No.2〜14の電球について調査した。
【0039】
図8に示すように、No.1〜14の電球は、全て光束が同じ(1100[lm])なので、相対照度の値が大きい程、集光性に優れていることになる。
比較電球(No.2)は、相対照度が155と集光性に優れているものの、寿命が500[h]と、基準電球(No.1)よりも極端に短くなっている。これは、上述したように、第2フィラメントコイル204(第2発光部204A)が、第1および第3のフィラメントコイル202,206(第1および第3発光部202A,206A)から発せられる赤外線で両側から熱せられることによって過熱状態となり、過度にタングステンが蒸発するためであると考えられている。これに対処するには、コイル同士の間隔D2を拡げればよいが、少し拡げただけで、集光性が極端に低下してしまい、満足いく性能が得られなくなってしまうことが確認されている。
【0040】
これに対し、実施例電球(No.3〜14)によれば、基準電球(No.1)と同等かそれ以上の集光性が得られると共に、基準電球(No.1)と同等の寿命を達成している。なお、実施例電球(No.3〜14)は、一重コイルのみでフィラメント体を構成している関係上、二重コイルでフィラメント体を構成している基準電球(No.1)よりも、耐衝撃性が改善されていることは言うまでもない。
【0041】
図9に示す結果から、この場合に、短軸長さを0.35[mm]とした場合には、少なくとも扁平率が3あれば、基準電球(No.1)よりも高い集光性が得られることが分かる(実施例電球No.3〜8)。
また、扁平率が3であれば、短軸長さが少なくとも0.35[mm]あれば、基準電球(No.1)よりも高い集光性が得られることが分かる(実施例電球No.9〜14)。
(変形例1)
図7に示した例では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)は、そのコイル軸心CXをバルブ26の中心軸Bと略平行になるように配したが、これに限らず、図10に示すように、コイル軸心CXを中心軸Bに対して傾けて、両コイル軸心CX間の間隔が、前記反射鏡18(図1)の反射面20Aから遠ざかるほど狭くなるような姿勢で、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)を配することとしても構わない。なお、図10に示す変形例1に係るフィラメント体70は、フィラメントコイルの配置関係が異なる以外は、図7に示したフィラメント体60と基本的に同じなので、同様の構成部分については、同じ符号を付して、その説明については省略する。また、次に述べる変形例2,3に係るフィラメント体も、フィラメントコイルの配置関係が異なる以外は、図7に示したフィラメント体60と基本的に同じなので、同様の構成部分については、同じ符号を付して、その説明については省略することとする。
【0042】
また、図10に示すのとは逆に、両コイル軸心CX間の間隔が、前記反射鏡18(図1)の反射面20Aから遠ざかるほど広くなるような姿勢で、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)を配することとしても構わない。
(変形例2)
図11に変形例2に係るフィラメント体72を示す。
【0043】
図7に示したフィラメント体60では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)は、そのコイル軸心CXをバルブ26の中心軸Bと略平行になるように配しているのに対し、変形例2に係るフィラメント体72では、そのコイル軸心CXがバルブ26の中心軸Bと略直交するように配している点が異なる。
(変形例3)
図12に変形例3に係るフィラメント体74を示す。
【0044】
図7に示したフィラメント体60では、第1および第2フィラメントコイル64,66(発光部64A,66A)の2個を、バルブ26の中心軸Bと略直交する方向に間隔を空けて並べたのに対し、変形例3に係るフィラメント体74では、バルブ26の中心軸Bの方向に間隔を空けて並べている点が異なる。
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る反射鏡付きハロゲン電球100の概略構成を示す縦断面図である。
【0045】
反射鏡付きハロゲン電球100は、反射鏡一体型のハロゲン電球であるが、これに用いているハロゲン電球102は、主として口金が異なる以外は、実施の形態1に係るハロゲン電球14(図2)と基本的に同じ構成なので、共通部分には、同じ符号を付して、その説明については省略する。
反射鏡104は、硬質ガラスまたは石英ガラス等からなり、漏斗状をした基体106を有する。基体106において回転楕円面または回転放物面等に形成された凹面部分106Aには、反射面を構成する多層干渉膜108が形成されている。多層干渉膜108は、アルミニウムやクロム等の金属膜の他、二酸化ケイ素(SiO2)、二酸化チタン(TiO2)、フッ化マグネシウム(MgF)、硫化亜鉛(ZnS)等で形成することができる。反射鏡104の開口径(ミラー径)は100mmである。なお、反射面には必要に応じてファセットを形成してもよい。
【0046】
反射鏡104は、基体106の開口部に設けられた前面ガラス110を有する。前面ガラス110は、基体106に公知の止め金具112によって係止されている。なお、止め金具112に代えて、接着剤で固着してもよい。あるいは、両方を併用しても構わない。もっとも、前面ガラスは、反射鏡付きハロゲン電球の必須の構成部材ではなく、無くても構わない。
【0047】
基体106のネック部106Bは、ハロゲン電球102の口金114の端子部116,118とは反対側に設けられた基体受け部122と嵌合された上、接着剤124で固着されている。
なお、基体106の口金114への取り付けに先立って、バルブ26が、口金114に取り付けられている。言うまでも無く、口金114にバルブ26と基体106(反射鏡104)とが取り付けられた状態で(すなわち、反射鏡104内にハロゲン電球102が組み込まれた状態で)、バルブ26の中心軸と反射鏡104の光軸とが略同軸上に位置する(前記中心軸と前記光軸とが略一致する)こととなる。
【0048】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は、上記した形態に限らないことは勿論であり、例えば、以下の形態とすることもできる。
(1)上記実施の形態1では、反射鏡を備える照明器具とハロゲン電球とで照明装置を構成したが、これに限らず、反射鏡を有しない照明器具と反射鏡付きハロゲン電球とで照明装置を構成することとしても構わない。具体的には、例えば、図1に示す照明装置における反射鏡18とハロゲン電球14の代わりに、図13に示す反射鏡付きハロゲン電球100を取り付けて、照明装置を構成することとしても構わない。
(2)フィラメントコイルは、上記したトラック形状に限らず、他の扁平形状でも構わない。要は、互いに直交する長軸と短軸を有する扁平な横断面をした筒状に巻回されていれば構わない。また、扁平率も整数に限らず、任意の小数をとり得る。
【0049】
ここで、本発明において「短軸と長軸とを有する扁平な横断面」とは、以下に記すような形状のものを含む。当該形状について図14を参照しながら説明する。なお、図14では、短軸に符号「SX」を、長軸に符号「LX」を、また、短軸および長軸の両軸と略直交する中心軸(すなわち、コイル軸心)に符号「CX」をそれぞれ付している。
(i)同図(a)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、上記したトラック形状のもの、つまり二つの平行な線分とそれらの各々の両端を略半円で結んだもの。
【0050】
(ii)同図(b)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、円形を押し潰した形状のもの。
(iii)同図(c)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略楕円形状のもの
(iv)同図(d)に示すように、コイル軸心CX方向から見て、略長方形のもの。但し、四隅は、加工上、丸みを帯びる。
【0051】
(v)その他、コイル軸心CX方向から見て、上記(i)〜(iv)に類似した形状のもの。例えば上記(i)において、同図(e)に示すように、二つの平行な線分が内方向に湾曲していても上記(i)に類似した形状として含む。また、ここでは、加工ばらつきによる上記(i)〜(iv)の変形形状も含む。
(3)上記実施の形態では、管球の一例としてハロゲン電球を示したが、本発明は、ハロゲン電球以外の管球にも適用可能である。要は、フィラメント体に電流を流して白熱発光させる光源であれば構わないのである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る管球は、例えば、反射鏡に組み込まれて使用される管球として好適に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1に係る照明装置の概略構成を示す一部切欠き図である。
【図2】上記照明装置を構成するハロゲン電球を示す図である。
【図3】上記ハロゲン電球におけるフィラメント体の支持構造を示す斜視図である。
【図4】上記支持構造にフィラメント体が支持された状態を示す斜視図である。
【図5】上記フィラメント体を構成するフィラメントコイルの製作方法を説明するための図である。
【図6】フィラメントコイルの平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図7】上記フィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図8】フィラメント体が2重コイルからなるハロゲン電球(基準電球)、フィラメント体が1重コイル3個からなるハロゲン電球(比較電球)、およびフィラメント体が1重コイル2個からなるハロゲン電球(実施例電球)の比較一覧を示す図である。
【図9】上記比較電球におけるフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図10】上記実施の形態1の変形例1に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図11】上記実施の形態1の変形例2に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図12】上記実施の形態1の変形例3に係るフィラメント体の平面図(上部)と正面図(下部)を表す模式図である。
【図13】実施の形態2に係る反射鏡付きハロゲン電球の概略構成を示す図である。
【図14】扁平な筒(状)の横断面の形状を例示した図である。
【符号の説明】
【0054】
10 照明装置
12 照明器具
14,102 ハロゲン電球
18,104 反射鏡
26 バルブ
60,70,72,74 フィラメント体
62,64 フィラメントコイル
62A,64A 発光部
100 反射鏡付きハロゲン電球
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球であって、
気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体とを備え、
前記フィラメント体は、短軸と長軸とを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部が2個、所定の間隔を空けて配されてなるものであり、
各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあることを特徴とする管球。
【請求項2】
反射鏡と、
前記反射鏡内に組み込まれている、請求項1記載の管球と、
を有することを特徴とする反射鏡付き管球。
【請求項3】
反射鏡を有する照明器具と、
前記反射鏡内に組み込まれている、請求項1記載の管球と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
照明器具と、
前記照明器具に取り付けられている、請求項2記載の反射鏡付き管球と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項1】
凹面状の反射面を有する反射鏡内に組み込まれて使用される管球であって、
気密封止されたバルブと当該バルブ内に設けられたフィラメント体とを備え、
前記フィラメント体は、短軸と長軸とを有する扁平な横断面の筒状に巻回されてなる一重のコイル状をした発光部が2個、所定の間隔を空けて配されてなるものであり、
各発光部内周の短軸長さが所定の範囲にあり、かつ、各発光部内周の長軸長さを短軸長さで除して得られる扁平率が所定の大きさの範囲にあることを特徴とする管球。
【請求項2】
反射鏡と、
前記反射鏡内に組み込まれている、請求項1記載の管球と、
を有することを特徴とする反射鏡付き管球。
【請求項3】
反射鏡を有する照明器具と、
前記反射鏡内に組み込まれている、請求項1記載の管球と、
を有することを特徴とする照明装置。
【請求項4】
照明器具と、
前記照明器具に取り付けられている、請求項2記載の反射鏡付き管球と、
を有することを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−16206(P2008−16206A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−183067(P2006−183067)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
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