説明

管理装置および管理方法

【課題】情報処理システムに量的なパラメータの変化を伴う変更がなされる場合でも情報処理システムの構成のより正確なまたはより効率的な管理を可能とする。
【解決手段】管理装置100は、電力に関するデータセンタの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する変更内容取得部106と、変更内容取得部106によって取得された変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDを仮関連情報保持部120から抽出する関連構成抽出部110と、変更内容取得部106によって取得された変更の内容に基づいて、関連構成抽出部110によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算する変化量演算部112と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理装置および管理方法に関し、特に情報処理システムの構成の変更を扱う管理装置および管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データセンタなど情報処理システムの構成は、提供するサービスの複雑化や大規模化に伴い年々複雑になってきており、またその構成要素の数も膨大となってきている。また、サーバ、ストレージ、ネットワーク機器等の構成要素について、近年の技術革新に伴ってそれらの性能の向上のスピードが増したこともあり、そのような構成要素の追加や更新なども頻繁に行われている。
【0003】
このような状況において、情報処理システムをミスなく効率的に運営すべき管理者への負担が増大している。そこで例えば特許文献1には、構成変化の前後において属性が完全には一致しないネットワーク機器について、類似度を用いることでネットワークの構成情報を管理する手法が提案されている。この手法によりネットワーク管理の側面からは幾分管理者の負担が軽減されうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−034915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案される手法はネットワーク管理に特化した手法であるから、情報処理システムを他の側面から管理する場合には適用が難しい。例えば特許文献1で提案される手法ではネットワークノードのIPアドレスやMACアドレスを使用して類似度が計算される。このIPアドレスやMACアドレスはノードを特定するための識別用のパラメータであって電力やメモリ容量などの量的なパラメータではない。
【0006】
したがって、情報処理システムに量的なパラメータの変化を伴う変更を加える場合、管理者はシステムの設計図や配線図などを片手に人手でその変更の影響を調査することが考えられる。この場合、時間がかかりすぎ、またミスも発生しやすくなる。
【0007】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、情報処理システムに量的なパラメータの変化を伴う変更がなされる場合でも情報処理システムの構成のより正確なまたはより効率的な管理を可能とする管理技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は管理装置に関する。この管理装置は、情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDとを対応付けて保持する関連情報保持部と、電力に関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する変更内容取得部と、変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDを関連情報保持部から抽出する関連構成抽出部と、変更内容取得部によって取得された変更の内容に基づいて、関連構成抽出部によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算する変化量演算部と、を備える。
【0009】
この態様によると、変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素の情報およびその構成要素において取り扱われる電力の変化量の情報を得ることができる。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、管理装置である。この装置は、情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素とリソースに関して関連する構成要素を特定するリソース関連IDとを対応付けて保持する関連情報保持部と、リソースに関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する変更内容取得部と、変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素とリソースに関して関連する構成要素を特定するリソース関連IDを関連情報保持部から抽出する関連構成抽出部と、変更内容取得部によって取得された変更の内容に基づいて、関連構成抽出部によって抽出されたリソース関連IDが特定する構成要素において取り扱われるリソースの変化量を演算する変化量演算部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を装置、方法、システム、プログラム、プログラムを格納した記録媒体などの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、情報処理システムに量的なパラメータの変化を伴う変更がなされる場合でも情報処理システムの構成のより正確なまたはより効率的な管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る管理装置の管理対象であるデータセンタの構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態に係る管理装置の機能および構成を示すブロック図である。
【図3】図2の要素情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図4】図2の関連情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図5】図2の履歴保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図6】仮関連情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図7】仮要素情報保持部の一例を示すデータ構造図である。
【図8】仮関連情報保持部の別の一例を示すデータ構造図である。
【図9】変更比較画面の代表画面図である。
【図10】警告画面の代表画面図である。
【図11】履歴表示画面の代表画面図である。
【図12】図2の管理装置における一連の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0015】
図1は、実施の形態に係る管理装置の管理対象であるデータセンタ2の構成を示す模式図である。データセンタ2は、サーバやストレージやネットワーク機器やコンセントや分電盤などの構成要素からなる情報処理システムである。データセンタ2は、第1分電盤4、第2分電盤6、第1コンセント8、第2コンセント10、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16、ネットワーク18、を備える。
【0016】
第1分電盤4、第2分電盤6はそれぞれ外部の送電線20と電気的に接続され、送電線20から電力の供給を受ける。第1コンセント8、第2コンセント10はそれぞれ第1分電盤4、第2分電盤6と接続され、第1分電盤4、第2分電盤6から電力の供給を受ける。図1ではコンセントはひとつの分電盤から電力の供給を受ける場合が示されるが、コンセントは複数の分電盤から電力の供給を受けてもよい。
【0017】
第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16それぞれのプラグは第1コンセント8の対応する差し込み口に差し込まれ、第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はいずれも第1コンセント8から電力の供給を受ける。第1サーバ12、第1ストレージ14、第2サーバ16はイントラネットなどのネットワーク18に接続される。ネットワーク18はインターネットなどの外部ネットワーク(不図示)と接続される。
【0018】
このようにデータセンタ2には、データセンタ2において電力供給の元となる分電盤から、供給された電力が最終的に使用されるサーバやストレージに至るまでの電力供給網が形成されている。以下、データセンタ2において電力供給の元により近い側を電力供給網の上流、そうでない側を下流と定義する。
【0019】
本実施の形態に係る管理装置は、電力に関するデータセンタ2の構成の変更が企画されるとき、その変更によってデータセンタ2の各構成要素において取り扱われる電力がどのように変化するかをユーザ、この場合は変更の担当者やデータセンタ2の管理者、に提示する。電力に関するデータセンタ2の構成の変更は、電力の供給を必要とする新たな構成要素のデータセンタ2への追加と、消費電力の変化を伴う既存の構成要素の更新と、既存の構成要素と新たな構成要素との置換と、既存の構成要素の削除と、を含む。
【0020】
例えば、消費電力が200Wの第2ストレージ22をデータセンタ2に追加し、第2ストレージ22のプラグを第2コンセント10に接続するという変更(以下、第2ストレージ22に係る変更と称す)が企画されている場合、データセンタ2の管理者はその変更の内容を管理装置に入力する。管理装置は、その変更の結果取り扱う電力が変化する構成要素とその変化量とをデータセンタ2における電力の供給関係から導き出し、管理者に提示する。特に管理装置は第2コンセント10について、第2コンセント10から第2ストレージ22に電力を供給するとした場合に第2コンセント10が別の構成要素にさらに供給できる電力(以下、供給余力と称す)を管理者に提示する。また管理装置は第2分電盤6について、第2ストレージ22追加の結果第2分電盤6が供給すべき電力にも変化があることおよびその変化量を管理者に提示する。
【0021】
これにより、管理者は電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的に影響を受けうる構成要素およびその影響の度合いを、自ら配線図等をたどるような場合と比べてより速く正確に知ることができる。また、意図しない構成要素に変更の影響が及ぼされていないかを把握できる。
【0022】
図1に示されるデータセンタ2の構成は本実施の形態を説明するための単純化した例であるが、現在、多くの情報処理システムの構成は上記の通り複雑になってきており、また構成要素の数も膨大となってきている。そのような情報処理システムの電力供給網もまた複雑、大規模化している。したがって、管理者が自ら人手で構成の変更の影響を調べるのでは時間がかかりすぎ、またミスも発生しやすい。そこで本実施の形態に係る管理装置によると、そのような変更の影響をより速く正確に把握できる。
【0023】
本実施の形態に係る管理装置はネットワーク18または外部ネットワークに接続された管理サーバとしてデータセンタ2の内部または外部に設けられてもよい。あるいはまた、第1サーバ12や第2サーバ16が管理装置の役割を果たしてもよい。
【0024】
図2は、本実施の形態に係る管理装置100の機能および構成を示すブロック図である。ここに示す各ブロックは、ハードウエア的には、コンピュータのCPU(central processing unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウエア的にはプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウエア、ソフトウエアの組合せによっていろいろなかたちで実現できることは、本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0025】
管理装置100はキーボード、マウスなどの入力装置102と接続され、またディスプレイなどの表示装置104と接続される。また管理装置100はネットワーク18と接続される。
管理装置100は、変更内容取得部106、情報仮更新部108、関連構成抽出部110、変化量演算部112、通知部114、決定受付部116、関連情報保持部118、仮関連情報保持部120、要素情報保持部122、仮要素情報保持部124、安全性判定部126、警告情報生成部128、履歴保持部130、履歴更新部132、を含む。
【0026】
図3は、要素情報保持部122の一例を示すデータ構造図である。要素情報保持部122は、管理装置100の管理対象であるデータセンタ2の構成要素についての情報を保持する。要素情報保持部122は、構成要素を特定する構成要素IDと、その構成要素の名と、その構成要素の種類と、その構成要素に対応する変更履歴IDと、その構成要素が電力を供給できる構成要素である場合は供給できる電力の最大値(以下、最大供給電力と称す)と、供給余力と、その構成要素が電力を必要とする構成要素である場合はその構成要素が必要とする必要電力と、その構成要素が電力を消費する場合はその消費電力と、を対応付けて保持する。図3において構成要素名のフィールド内の括弧内の符号は、対応する構成要素の符号である。
【0027】
変更履歴IDは、過去に行われた電力に関するデータセンタ2の構成の変更を特定するIDである。要素情報保持部122は、構成要素IDによって特定される構成要素が過去に行われた電力に関するデータセンタ2の構成の変更において変更対象とされた場合は、その構成要素IDと、その変更を特定する変更履歴IDと、を対応付けて保持する。
【0028】
構成要素の必要電力は、構成要素がサーバやストレージなどの電力を消費する機器の場合はその消費電力を含む。また、コンセントなどの2次電源は、分電盤から電力の供給を受けると共にサーバやストレージや他のコンセントに電力を供給する。したがって、構成要素が2次電源である場合の必要電力は、その構成要素が供給すべき電力、すなわちその構成要素によって電力が供給される構成要素の必要電力の合計である。
【0029】
構成要素の種類は、分電盤、2次電源、サーバ、ストレージ、ドキュメントを含み、より大きくは分電盤や2次電源やサーバやストレージなどの物理的な構成要素とドキュメントや電子ファイルやコンピュータプログラムなどの電子データとを含む。電子データはデータセンタ2のストレージやサーバに保持されてもよい。物理的な構成要素はさらに電力の取り扱われ方の観点から、分電盤などの電力供給網の最上流に位置する供給要素と2次電源などの電力を仲介する仲介要素とサーバやストレージなどの電力を消費する消費要素とに分けられる。
【0030】
図4は、関連情報保持部118の一例を示すデータ構造図である。関連情報保持部118はデータセンタ2における構成要素間の電力の供給関係についての情報を保持する。関連情報保持部118は、構成要素IDと、その構成要素IDが特定する構成要素に電力を供給する構成要素を特定する電力供給元IDの群である電力供給元ID群と、その構成要素IDが特定する構成要素が電力を供給する構成要素を特定する電力供給先IDの群である電力供給先ID群と、その構成要素IDが特定する構成要素についてのドキュメントを特定するデータ関連IDと、を対応付けて保持する。
【0031】
電力供給元ID、電力供給先IDはそれぞれ、対応する構成要素IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDである。
構成要素についてのドキュメントは例えば構成要素がサーバである場合はそのサーバの設計書である。あるいはまた、ドキュメントはデータセンタ2全体の設計書であってもよい。
【0032】
図5は、履歴保持部130の一例を示すデータ構造図である。履歴保持部130は、過去に行われた電力に関するデータセンタ2の構成の変更の履歴を保持する。履歴保持部130は、変更履歴IDと、その変更履歴IDが特定する過去の変更の内容と、その変更履歴IDが特定する過去の変更が行われた日付と、その変更履歴IDが特定する過去の変更の理由と、を対応付けて保持する。
【0033】
図2に戻る。
変更内容取得部106は、電力に関するデータセンタ2の構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する。変更内容取得部106は、変更情報受付部134、変更対象抽出部136、変更内容抽出部138、仮保持部更新部142、を含む。
【0034】
変更情報受付部134は、管理者が入力装置102を介して入力するまたは管理者がネットワーク18を介して送信する変更に関する情報を受け付ける。この変更に関する情報は、企画されている電力に関するデータセンタ2の構成の変更に関する情報であり、どの構成要素が変更対象とされるかについての情報および変更対象の構成要素において変更後に扱われる電力の情報を含む。
【0035】
変更対象抽出部136は、変更情報受付部134によって受け付けられた変更に関する情報から、どの構成要素が変更対象とされるかについての情報を抽出する。変更対象抽出部136は抽出された情報に基づき変更対象IDを取得する。なお、特にデータセンタ2に構成要素を追加する場合、追加する構成要素にはこの段階で構成要素IDが付与され、変更対象抽出部136はこの付与された構成要素IDを変更対象IDとして取得する。
【0036】
変更内容抽出部138は、変更情報受付部134によって受け付けられた変更に関する情報から、変更対象の構成要素において変更後に扱われる電力の情報を抽出する。データセンタ2にサーバやストレージなどの電力消費を伴う構成要素を追加する場合、変更内容抽出部138は追加されるサーバやストレージの消費電力の情報を取得する。
【0037】
例えば第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合、変更対象抽出部136は変更対象IDとして第2ストレージ22に付与された構成要素ID「1008」と第2コンセント10の構成要素ID「1005」とを取得する。変更内容抽出部138は、第2ストレージ22の消費電力の値「200W」を取得する。
【0038】
仮保持部更新部142は、変更情報受付部134が変更に関する情報を受け付けると、そのとき関連情報保持部118、要素情報保持部122それぞれに保持されている情報を仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に複製する。特に、仮保持部更新部142は仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に保持される情報がそれぞれ関連情報保持部118、要素情報保持部122に保持される情報と同一となるように仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124を更新する。したがって、仮関連情報保持部120は図4に示される関連情報保持部118と同様のデータ構造を有する。仮要素情報保持部124は、図3に示される要素情報保持部122と同様のデータ構造を有する。
【0039】
情報仮更新部108は、仮保持部更新部142によって複製が行われた仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124を、変更情報受付部134によって受け付けられた変更に関する情報に基づいて更新する。特に情報仮更新部108は変更対象IDと変更対象の構成要素において変更後に扱われる電力とを仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に反映させる。
【0040】
例えば第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合、情報仮更新部108は第2ストレージ22に対応する新たなエントリを仮要素情報保持部124に設け、そのエントリにおいて第2ストレージ22に付与された構成要素ID「1008」と第2ストレージ22の名「ストレージ2」と第2ストレージ22の種類「消費要素」と必要電力「200(W)」と消費電力「200(W)」とを対応付ける。
【0041】
また情報仮更新部108は、第2ストレージ22に対応する新たなエントリを仮関連情報保持部120に設け、そのエントリの電力供給元ID群に第2ストレージ22に電力を供給することとなる第2コンセント10を特定する構成要素ID「1005」を含め、データ関連ID群にシステム全体の設計書を特定する構成要素ID「1011」を含める。また情報仮更新部108は、第2コンセント10を特定する構成要素ID「1005」に対応する電力供給先ID群に、第2ストレージ22の構成要素ID「1008」を追加する。後述の図6、図7はそれぞれ、この更新が行われた仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124を示す。
【0042】
関連構成抽出部110は、情報仮更新部108によって仮関連情報保持部120が更新されると、変更対象抽出部136によって取得された変更対象IDに対応する電力供給元IDおよびデータ関連IDを仮関連情報保持部120から抽出する。関連構成抽出部110は、抽出された電力供給元IDが特定する構成要素に電力を供給する構成要素があればその構成要素の構成要素IDを仮関連情報保持部120から抽出する。すなわち、関連構成抽出部110は、抽出された電力供給元IDを仮関連情報保持部120における構成要素IDとしたときに、それに対応する電力供給元IDがあればそれを抽出する。関連構成抽出部110は、抽出された電力供給元IDが特定する構成要素に電力を供給する構成要素がなくなるまで上記の抽出処理を繰り返す。
【0043】
すなわち、関連構成抽出部110は変更対象IDが特定する構成要素よりも電力供給網においてより上流の構成要素を、最上流の構成要素に到達するまで検索し、その検索で見つかった構成要素を特定する構成要素IDを抽出する。
【0044】
後述する変化量演算部112においては、変更対象IDおよび関連構成抽出部110によって抽出された電力供給元IDについて電力の変化量の演算が行われるので、変更対象IDおよび関連構成抽出部110によって抽出された電力供給元IDを演算対象IDと総称する。
【0045】
なお、データセンタ2の構成要素の削除の場合は、情報仮更新部108によって仮関連情報保持部120から削除対象の構成要素に対応するエントリが削除される。この場合、関連構成抽出部110は、元の関連情報保持部118を参照することによって変更対象ID(削除対象の構成要素を特定する構成要素ID)に対応する電力供給元IDおよびデータ関連IDを抽出する。あるいはまた、後述の図8に示されるように、関連構成抽出部110は仮関連情報保持部120から、電力供給先ID群に変更対象IDを含む構成要素IDを抽出してもよい。
【0046】
例えば第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合、関連構成抽出部110は図6に示される仮関連情報保持部120から、第2ストレージ22の構成要素ID「1008」に対応する電力供給元ID「1005」およびデータ関連ID「1011」を抽出する。また関連構成抽出部110は図6に示される仮関連情報保持部120から、第2コンセント10の構成要素ID「1005」に対応する電力供給元ID「1002」およびデータ関連ID「1011」を抽出する。また関連構成抽出部110は図6に示される仮関連情報保持部120を参照し、第2分電盤6の構成要素ID「1002」に対応する電力供給元IDを検索するが、そのようなIDはないのでそこでIDの抽出を終了する。すなわちこの例では、演算対象IDは「1008」、「1005」、「1002」である。
【0047】
変化量演算部112は、変更内容抽出部138によって取得された情報に基づいて、演算対象IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算する。この変化量はゼロの場合もあればゼロでない場合もある。ゼロの場合はその構成要素が電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的には影響を受けないということであり、ゼロでない場合はその構成要素が電力に関するデータセンタ2の構成の変更によって電力的に影響を受けるということである。
変化量演算部112は、演算対象選択部144、差分演算部146、電力情報仮更新部148、を含む。
【0048】
演算対象選択部144は、演算対象IDのなからひとつの演算対象IDを電力供給網の下流側から順番に選択する。以下、演算対象選択部144によって選択された演算対象IDが特定する構成要素を、演算対象構成要素と称す。
差分演算部146は、演算対象構成要素に対応する電力供給先IDを仮関連情報保持部120から抽出する。差分演算部146は仮要素情報保持部124を参照し、抽出された電力供給先IDが特定する構成要素の必要電力を、抽出された電力供給先IDの全てについて合計する。差分演算部146は、この必要電力の合計値に、演算対象構成要素の消費電力を足し合わせて演算対象構成要素についての変更後必要電力を得る。
【0049】
差分演算部146は仮要素情報保持部124を参照し、変更後必要電力と、演算対象構成要素の仮要素情報保持部124にその時点で登録されている必要電力と、の差分(以下、必要電力変化量と称す)を演算する。また差分演算部146は、変更後必要電力と最大供給電力との差分を演算する。
【0050】
電力情報仮更新部148は、変更後必要電力を演算対象構成要素の必要電力として仮要素情報保持部124に登録する。また電力情報仮更新部148は、差分演算部146によって演算された変更後必要電力と最大供給電力との差分を、演算対象構成要素の変更後の供給余力として仮要素情報保持部124に登録する。
【0051】
例えば第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合、演算対象選択部144はまず消費要素であり電力供給網の最下流に位置する第2ストレージ22に対応する演算対象ID「1008」を選択する。図6に示される仮関連情報保持部120を参照すると演算対象ID「1008」に対応する電力供給先IDはないが、図7に示される仮要素情報保持部124を参照すると第2ストレージ22の消費電力は「200(W)」である。差分演算部146は、第2ストレージ22について、0(W)+200(W)=200(W)を変更後必要電力として算出する。この変更後必要電力は第2ストレージ22に対応して仮要素情報保持部124に登録されている必要電力と同じなので、電力情報仮更新部148は第2ストレージ22に対応する必要電力を実質的に更新しないかまたは同じ値を登録する。
【0052】
次に演算対象選択部144は、仲介要素である第2コンセント10に対応する演算対象ID「1005」を選択する。差分演算部146は、演算対象ID「1005」に対応する電力供給先ID「1008」を、図6に示される仮関連情報保持部120から抽出する。差分演算部146は図7に示される仮要素情報保持部124を参照し、抽出された電力供給先ID「1008」が特定する第2ストレージ22の必要電力の値「200(W)」を得る。差分演算部146は図7に示される仮要素情報保持部124を参照し、第2コンセント10の消費電力の値「0(W)」を得る。差分演算部146は、第2コンセント10について、200(W)+0(W)=200(W)を変更後必要電力として算出する。
【0053】
差分演算部146は第2コンセント10についての必要電力変化量として200(W)−0(W)=+200(W)を算出する。差分演算部146は第2コンセント10についての変更後の供給余力として500(W)−200(W)=300(W)を算出する。
電力情報仮更新部148は、仮要素情報保持部124の第2コンセント10に対応する必要電力の値を「200(W)」に更新する。電力情報仮更新部148は、仮要素情報保持部124の第2コンセント10に対応する供給余力の値を「300(W)」に更新する。
【0054】
次に演算対象選択部144は、供給要素である第2分電盤6に対応する演算対象ID「1002」を選択する。差分演算部146は、演算対象ID「1002」に対応する電力供給先ID「1005」を、図6に示される仮関連情報保持部120から抽出する。差分演算部146は電力情報仮更新部148によって上記の通り更新済みの仮要素情報保持部124を参照し、抽出された電力供給先ID「1005」が特定する第2コンセント10の必要電力の値「200(W)」を得る。差分演算部146は仮要素情報保持部124を参照し、第2分電盤6の消費電力の値「0(W)」を得る。差分演算部146は、第2分電盤6について、200(W)+0(W)=200(W)を変更後必要電力として算出する。
【0055】
差分演算部146は第2分電盤6についての必要電力変化量として200(W)−0(W)=+200(W)を算出する。差分演算部146は第2分電盤6についての変更後の供給余力として1500(W)−200(W)=1300(W)を算出する。
電力情報仮更新部148は、仮要素情報保持部124の第2分電盤6に対応する必要電力の値を「200(W)」に更新する。電力情報仮更新部148は、仮要素情報保持部124の第2分電盤6に対応する供給余力の値を「1300(W)」に更新する。
【0056】
変化量演算部112において、関連構成抽出部110によって抽出された電力供給元IDだけでなく変更対象IDも演算対象に含めている。この場合、第1コンセント8から電力を供給する装置と第2コンセント10から電力を供給する装置とを入れ替えた場合等に対応できる。例えば第1サーバ12を第1コンセント8から第2コンセント10につなぎ替える変更について、変更対象IDは「1003」、「1004」、「1005」である。情報仮更新部108によって仮関連情報保持部120の第1サーバ12に対応する電力供給元ID群が「1003」から「1005」に変更される。したがって関連構成抽出部110によって抽出される電力供給元IDは「1001」、「1002」、「1005」であり、この中には実際に必要電力が変更になる第1コンセント8を特定する構成要素ID「1003」は含まれない。そこで演算対象IDに変更対象IDを含めることにより、このような場合でも第1コンセント8について変化量の演算が行われるようにした。
【0057】
安全性判定部126は、電力情報仮更新部148によって更新された仮要素情報保持部124を参照し、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が存在する場合、その構成要素の構成要素IDおよび構成要素名を警告情報生成部128に渡す。
警告情報生成部128は、渡された構成要素IDおよび構成要素名を含む警告情報を生成する。
【0058】
通知部114は、演算対象IDが特定する構成要素の情報とその構成要素について変化量演算部112によって演算された電力の変化量とを対応付けてユーザに通知する。通知部114は、表示制御部150、履歴参照部156、を含む。
【0059】
表示制御部150は、演算対象IDのうち特に関連構成抽出部110によって抽出された電力供給元IDが特定する構成要素の名とその構成要素についての変更後必要電力、必要電力変化量および変更後の供給余力とを表示装置104に表示させる。また表示制御部150は、変更対象IDが特定する構成要素の情報と、その構成要素について関連構成抽出部110によって抽出されたデータ関連IDが特定する電子データの情報と、を対応付けて表示装置104に表示させる。
なお、管理装置100は表示制御部150が表示装置104に表示させるのと同様の情報を電子メールやウェブページの形でネットワーク18を介して提供してもよい。
【0060】
例えば表示制御部150は、管理者から入力装置102を介して、管理者が変更の影響を確認したいと望む構成要素の指定を受け付ける。表示制御部150は、指定された構成要素について変更の前後における電力的な状態を表示する変更比較画面300(図9で後述)を表示装置104に表示させる。表示制御部150は、変更前の電力的な状態の情報を取得するために要素情報保持部122を参照する。表示制御部150は、変更後の電力的な状態の情報を変化量演算部112および仮要素情報保持部124から取得する。
変更後の電力的な状態の情報は、指定された構成要素についての変更後必要電力、必要電力変化量および変更後の供給余力、ならびに指定された構成要素と電力をやりとりする別の構成要素の名、変更後必要電力、必要電力変化量および変更後の供給余力を含む。
【0061】
表示制御部150はまた、警告情報生成部128によって生成された警告情報を図10で後述する警告画面330の形で表示装置104に表示させる。
【0062】
管理者が変更比較画面300のなかで履歴を確認したい構成要素の名をクリック等により指定すると、あるいはまた管理者が他の手段によって履歴を確認したい構成要素を指定すると、履歴参照部156はその指定を受け付ける。履歴参照部156は、指定された構成要素が変更対象とされている変更の内容を履歴保持部130から抽出し、抽出された履歴を表示装置104に表示させる。
【0063】
履歴参照部156は指定された構成要素に対応する変更履歴IDを要素情報保持部122から抽出する。履歴参照部156は、抽出された変更履歴IDが特定する過去の変更の内容、日付および理由を履歴保持部130から抽出する。履歴参照部156は、抽出された変更の内容、日付および理由を指定された構成要素に対応付け、図11で後述する履歴表示画面340の形で表示装置104に表示させる。
【0064】
決定受付部116は、電力に関するデータセンタ2の構成の変更について保持部に保持される情報を更新するための指令を、入力装置102を介して受け付ける。例えば、管理者は、実際に変更が行われた後または変更が承認された後、上記の指令を入力装置102を介して決定受付部116に入力してもよい。
また決定受付部116は、情報を破棄する指令を受け付けた場合、仮関連情報保持部120および仮要素情報保持部124に保持される情報を破棄する。
【0065】
決定受付部116は更新の指令を受け付けると、仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124の内容をそれぞれ関連情報保持部118、要素情報保持部122に反映させる。特に決定受付部116は関連情報保持部118、要素情報保持部122それぞれに保持される情報を仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に保持される情報で上書きする。
決定受付部116は新たに変更履歴IDを採番し、反映後の要素情報保持部122において、変更対象抽出部136によって取得された変更対象IDが特定する構成要素にその採番された変更履歴IDを対応付ける。
【0066】
履歴更新部132は、決定受付部116によって更新の指令が受け付けられると、変更内容取得部106によって取得される情報に基づいて履歴保持部130を更新する。履歴保持部130は、決定受付部116において新たに採番された変更履歴IDと、変更内容取得部106によって取得された変更の内容と、決定受付部116が更新の指令を受け付けた日付と、管理者によって入力されてもよい変更の理由と、を対応付けて履歴保持部130に登録する。
【0067】
図6は、仮関連情報保持部120の一例を示すデータ構造図である。図6において灰色のエントリや要素は、第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合の例において情報仮更新部108によって更新された部分である。実線の楕円で囲まれるIDは、第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合の例における演算対象IDである。実線の三角形で囲まれるIDは変更対象IDである。破線の楕円で囲まれるIDは、関連構成抽出部110が抽出するデータ関連IDである。
【0068】
図7は、仮要素情報保持部124の一例を示すデータ構造図である。図7において灰色のエントリは、第2ストレージ22に係る変更が企画されている場合の例において情報仮更新部108によって更新された部分である。
【0069】
図8は、仮関連情報保持部120の別の一例を示すデータ構造図である。図8において取消線が施されたエントリは、データセンタ2の構成要素の削除が企画される場合に、情報仮更新部108によって削除されるエントリである。電力供給先ID群に含まれる斜体で示されるIDは、削除対象の構成要素の構成要素IDであり、関連構成抽出部110はこのIDに対応する構成要素ID「1003」を演算対象IDとして抽出できることを示す。
【0070】
図9は、変更比較画面300の代表画面図である。変更比較画面300は、管理者によって指定された構成要素の名を表示する対象構成要素名表示領域306と、変更前の電力的な状態の情報を表示する変更前情報表示領域302と、変更後の電力的な状態の情報を表示する変更後情報表示領域304と、を有する。
【0071】
変更前情報表示領域302は、最新の構成変更日および変更者の情報を表示する変更前基本情報表示領域308と、指定された構成要素自身の変更前の電力的な情報、例えば種類や必要電力や供給余力を表示する変更前自己情報表示領域310と、指定された構成要素と変更前に電力の受給関係にある構成要素の情報を表示する変更前電力関連情報表示領域312と、を有する。
【0072】
変更前電力関連情報表示領域312は変更前の状態について、指定された構成要素に電力を供給する構成要素の情報、例えば構成要素名や必要電力や供給余力を表示する変更前電力供給元情報表示領域314と、指定された構成要素が電力を供給する構成要素の情報、例えば構成要素名や必要電力や供給余力を表示する変更前電力供給先情報表示領域316と、を有する。
【0073】
変更後情報表示領域304は、構成の変更が予定される日および変更者の情報を表示する変更後基本情報表示領域318と、指定された構成要素自身の変更後の電力的な情報、例えば種類や変更後必要電力や必要電力変化量や変更後の供給余力を表示する変更後自己情報表示領域320と、指定された構成要素と変更後に電力の受給関係にある構成要素の情報を表示する変更後電力関連情報表示領域322と、指定された構成要素に関連する電子データの情報を表示するデータ関連情報表示領域328と、を有する。
【0074】
変更後電力関連情報表示領域322は変更後の状態について、指定された構成要素に電力を供給する構成要素の情報、例えば構成要素名や変更後必要電力や必要電力変化量や変更後の供給余力を表示する変更後電力供給元情報表示領域324と、指定された構成要素が電力を供給する構成要素の情報、例えば構成要素名や変更後必要電力や必要電力変化量や変更後の供給余力を表示する変更後電力供給先情報表示領域326と、を有する。
表示制御部150は、指定された構成要素について関連構成抽出部110によってデータ関連IDが抽出されていれば、そのデータ関連IDが特定する電子データの名を仮要素情報保持部124から抽出してデータ関連情報表示領域328に表示させる。
【0075】
図10は、警告画面330の代表画面図である。警告画面330は、警告対象となる構成要素の構成要素IDおよび名332を表示し、その構成要素について必要電力が最大供給電力を超える旨を表示する。
【0076】
図11は、履歴表示画面340の代表画面図である。履歴表示画面340は、履歴表示対象として指定された構成要素について、その構成要素の名を表示する履歴対象名表示領域341と、過去の変更の日付を表示する日付表示領域342と、過去の変更の内容を表示する内容表示領域344と、過去の変更の理由を表示する理由表示領域345と、を有する。
【0077】
上述の実施の形態において、保持部の例は、ハードディスクやメモリである。また、本明細書の記載に基づき、各部を、図示しないCPUや、インストールされたアプリケーションプログラムのモジュールや、システムプログラムのモジュールや、ハードディスクから読み出したデータの内容を一時的に記憶するメモリなどにより実現できることは本明細書に触れた当業者には理解されるところである。
【0078】
以上の構成による管理装置100の動作を説明する。
図12は、管理装置100における一連の処理を示すフローチャートである。変更内容取得部106は、変更対象IDおよび変更の内容を取得する(S202)。情報仮更新部108は、変更対象IDおよび変更の内容を仮関連情報保持部120、仮要素情報保持部124に登録する(S204)。関連構成抽出部110は、変更対象IDに対応する電力供給元IDを抽出する(S206)。変化量演算部112は、演算対象IDの全てについて必要電力の変化量の演算が行われていない場合(S208のN)、そのような演算がまだ行われていない演算対象IDをひとつ選択する(S210)。変化量演算部112は、選択された演算対象IDが特定する構成要素について、変更後必要電力、必要電力変化量および供給余力を演算し(S212)、ステップS208に処理を戻す。演算対象IDの全てについて必要電力の変化量の演算が行われた場合(S208のY)、通知部114は演算結果を表示装置104に表示させる(S214)。
【0079】
本実施の形態に係る管理装置100によると、電力に関するデータセンタ2の構成の変更について、管理者によって変更対象として指定された構成要素だけでなくその構成要素と電力をやりとりする構成要素についても、その構成要素で取り扱われる電力の変化量が演算され、その結果が管理者に通知される。したがって、管理者が変更の内容を管理装置100に入力する段階では気付いていないかもしれない変更の影響を管理者に通知することができる。特に管理者は、変更対象として指定していないが変更の影響が及びうる構成要素の情報およびその構成要素で取り扱われる電力の変化量を知ることができる。これにより、管理者はより正確に変更の影響を把握でき、特に変更の影響が意図しない構成要素にまで及ぶ場合はそれを事前に察知できる。
【0080】
第2ストレージ22に係る変更が企画されている例では、管理者は図9に示される変更比較画面300を参照することにより、変更対象として指定した第2コンセント10、第2ストレージ22だけでなく、第2分電盤6にも変更の影響が及ぶこと、および第2分電盤6の必要電力が0(W)から200(W)になり、供給余力が1300(W)になること、を把握できる。
【0081】
また、本実施の形態に係る管理装置100によると、管理者によって指定された構成要素が変更対象とされている変更の内容を履歴保持部130から抽出して管理者に通知する。したがって、管理者は過去の変更を参照し、変更の経緯を理解したうえで新たな変更を企画することができる。
【0082】
変更の経緯の把握について、例えば以下のような状況を考える。
甲氏は半年前に乙社会計システムの担当に着任した。乙社会計システムは3年に一度データベース(サーバ名:kaikei_db)のバージョンアップを行う方針であり、この度甲氏が初めてバージョンアップを行うこととなった。
【0083】
ここで本実施の形態に係る管理装置100の特に履歴参照機能を使用しない場合、甲氏はバージョンアップ作業に成功しない可能性がある。その理由としては例えば、サーバ名に”_”を含むデータベースはバージョンアップすることができないことなどがある。甲氏はこのような理由を技術調査などで明らかにしなければならない。
【0084】
過去のバージョンアップ作業では成功していることから、甲氏が前任者へのヒアリングを行えば、作業前にサーバ名を”kaikeidb”に変更後、正常にバージョンアップを完了したことや、その後、別作業の際にもとのサーバ名”kaikei_db”に変更したことや、そのために現在の状態では正常にバージョンアップが行えないこと、などが判明するかもしれない。しかしながら以上の手順では、バージョンアップに失敗、ヒアリング、再度バージョンアップという手続を踏まなければならないので非効率的である。
【0085】
これに対して本実施の形態に係る管理装置100の履歴参照機能を使用すると、甲氏は過去の経緯を把握した上でバージョンアップに臨むことができるので、技術調査やヒアリング等は不要となり、よりスムーズにバージョンアップ作業を行うことができる。
【0086】
また、本実施の形態に係る管理装置100では、電力に関するデータセンタ2の構成の変更の結果、必要電力が最大供給電力を超える構成要素が生じる場合、その構成要素の情報を管理者に通知する。したがって、管理者はその通知を受けて必要電力が最大供給電力を超えないように変更の内容を修正できる。
【0087】
例えば図1に示されるデータセンタ2について、第2ストレージ22に第1コンセント8から電力を供給することとすると、第1コンセント8の必要電力は「700(W)」となり最大供給電力「600(W)」を超える。管理装置100はこの場合、管理者に第1コンセント8の必要電力が最大供給電力を超える旨を通知する。したがって、コンセントに定格を超える負荷が接続されることを未然に防ぐことができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る管理装置100は、変更対象として指定された構成要素と関連する電子データの情報を管理者に通知する。したがって、例えばサーバやストレージを追加した結果システム全体の設計書を更新しなければならない場合に、そのことが管理者に自動的に通知される。その結果、設計書更新忘れ等のミスの発生を抑えることができる。
【0089】
以上、実施の形態に係る管理装置100の構成と動作について説明した。この実施の形態は例示であり、その各構成要素や各処理の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0090】
実施の形態では、電力に関する情報処理システムの構成の変更が扱われる場合について説明したが、これに限られず、情報処理システムの量的なパラメータすなわちリソースに関する情報処理システムの構成の変更が扱われてもよい。情報処理システムのリソースは例えば電力、CPU使用率、一時メモリの記憶容量またはハードディスクドライブの記憶容量である。
【0091】
実施の形態では、管理装置100は、ある構成要素に電力を供給する構成要素はひとつだけであり、ある構成要素が電力を供給する構成要素は複数存在しうる木構造の電力供給網を有するデータセンタ2を扱う場合について説明したが、これに限られず、例えばネットワーク状の電力供給網を有する情報処理システムを扱ってもよい。
【0092】
実施の形態では、関連情報保持部118、仮関連情報保持部120は電力供給元ID群と電力供給先ID群とを含む場合について説明したが、これに限られず、いずれか一方のみを含んでもよい。
【符号の説明】
【0093】
2 データセンタ、 100 管理装置、 102 入力装置、 104 表示装置、 106 変更内容取得部、 108 情報仮更新部、 110 関連構成抽出部、 112 変化量演算部、 114 通知部、 116 決定受付部、 118 関連情報保持部、 120 仮関連情報保持部、 122 要素情報保持部、 124 仮要素情報保持部、 126 安全性判定部、 128 警告情報生成部、 130 履歴保持部、 132 履歴更新部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDとを対応付けて保持する関連情報保持部と、
電力に関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する変更内容取得部と、
前記変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDを前記関連情報保持部から抽出する関連構成抽出部と、
前記変更内容取得部によって取得された変更の内容に基づいて、前記関連構成抽出部によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算する変化量演算部と、を備えることを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記関連構成抽出部によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素の情報と前記変化量演算部によって演算された電力の変化量とを対応付けてユーザに通知する通知部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
電力に関する情報処理システムの構成の変更の履歴を保持する履歴保持部をさらに備え、
前記通知部は、指定された構成要素が変更対象とされている変更の内容を前記履歴保持部から抽出し、抽出された履歴をユーザに通知することを特徴とする請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記変化量演算部は、前記関連構成抽出部によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素が他の構成要素に電力を供給する構成要素である場合、その構成要素が供給する電力の変化量を演算し、
前記通知部は、前記変化量演算部における演算の結果、他の構成要素に電力を供給する構成要素が供給すべき電力が所定のしきい値を超えた場合、その構成要素の情報を含む警告情報をユーザに通知することを特徴とする請求項2または3に記載の管理装置。
【請求項5】
情報処理システムの構成要素は物理的な構成要素と電子データとを含み、
前記関連情報保持部は、情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素と関連する電子データを特定するデータ関連IDとを対応付けて保持し、
前記関連構成抽出部は、前記変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素と関連する電子データを特定するデータ関連IDを前記関連情報保持部から抽出し、
前記通知部は、前記関連構成抽出部によって抽出されたデータ関連IDが特定する電子データの情報をユーザに通知することを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の管理装置。
【請求項6】
前記変更内容取得部は、変更対象の構成要素が必要とする電力の情報を取得し、
前記関連構成抽出部は、前記変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素に電力を供給する構成要素を特定する電力関連IDを前記関連情報保持部から抽出し、
前記変化量演算部は、前記変更内容取得部によって取得された電力の情報に基づいて、前記関連構成抽出部によって抽出された電力関連IDが特定する構成要素が供給する電力の変化量を演算することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の管理装置。
【請求項7】
情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDとを対応付けて関連情報保持部に保持させるステップと、
電力に関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得するステップと、
取得された変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDを前記関連情報保持部から抽出するステップと、
取得された変更の内容に基づいて、抽出された電力関連IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算するステップと、を含むことを特徴とする管理方法。
【請求項8】
情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDとを対応付けて関連情報保持部に保持させる機能と、
電力に関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する機能と、
取得された変更対象IDが特定する構成要素と電力をやりとりする構成要素を特定する電力関連IDを前記関連情報保持部から抽出する機能と、
取得された変更の内容に基づいて、抽出された電力関連IDが特定する構成要素において取り扱われる電力の変化量を演算する機能と、をコンピュータに実現させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項9】
情報処理システムの構成要素を特定する構成要素IDとその構成要素とリソースに関して関連する構成要素を特定するリソース関連IDとを対応付けて保持する関連情報保持部と、
リソースに関する情報処理システムの構成の変更について、変更対象の構成要素を特定する変更対象IDと変更対象の構成要素についての変更の内容とを取得する変更内容取得部と、
前記変更内容取得部によって取得された変更対象IDが特定する構成要素とリソースに関して関連する構成要素を特定するリソース関連IDを前記関連情報保持部から抽出する関連構成抽出部と、
前記変更内容取得部によって取得された変更の内容に基づいて、前記関連構成抽出部によって抽出されたリソース関連IDが特定する構成要素において取り扱われるリソースの変化量を演算する変化量演算部と、を備えることを特徴とする管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−155431(P2012−155431A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12553(P2011−12553)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)