説明

管継手の接続方法及びその接続に用いる接続治具

【課題】配管内に圧力があっても短時間に、しかも圧力流体のこぼれ量を少なくして確実に結合することが出来、簡単な構成により大きな推力を得ることが出来る管継手の接続方法及びその接続に用いる接続治具を提供する。
【解決手段】一対の継手2a,2bには、治具本体4に設けられた一対のフック状の係止爪5と係脱可能な係止部(図示省略)、または着脱可能な係止部材6,7を設けるものである。治具本体4は、左右一対の並列した支持フレーム8a,8bの両端に、前記係止部(図示省略)、または係止部材6,7に係合する一対のフック状の係止爪5を構成する固定爪9と前記支持フレーム8a,8bに沿って移動可能な可動爪10とを設け、前記左右一対の支持フレーム8a,8bと可動爪10とは、リンク機構11及び左右一対の操作レバー12を介して回転自在に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、管継手の接続方法及びその接続に用いる接続治具に係わり、更に詳しくは例えば、流体が流動する配管が接続された一対の継手の接続部同士を容易に嵌合接続することを可能とした管継手の接続方法及びその接続に用いる接続治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体(例えば、液体または気体)等が流動する配管に接続された一対の継手の接続部同士を接続しようとする場合、配管に圧力が掛かっている状態(例えば、1MPa程度)で継手の接続部同士を接続しようとすると、継手の結合力はシール面積に圧力を乗じたものであることから結合力が大きくなり、人手では結合できなくなってしまう場合が多い。
【0003】
この対策として、先ず配管内の圧力を抜き、配管内の圧力を下げて結合する方法も考えられるが、圧力抜きを繰返し行わなければならない事が多く、圧力流体が供給される場合には、圧力が下がらずに結合できないと言う問題があった。
【0004】
次に、ねじ締結を利用して結合力以上の推力を発生させて結合する方法もあるが、ねじを回転させるため、結合に時間が掛かり、結合途中において圧力流体のこぼれる量が多いと言う問題があった。
【0005】
更に、継手にレバー等を取付け、てこの原理等により推力を発生させて結合させる方法もあるが、推力を大きくしようとすると継手が大きくなって邪魔になり、また継手が大きくならないようにすると大きな推力を得ることが出来ないと言う問題があった(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−301983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、配管内に圧力があっても短時間に、しかも圧力流体のこぼれ量を少なくして確実に結合することが出来、簡単な構成により大きな推力を得ることが出来る管継手の接続方法及びその接続に用いる接続治具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の管継手の接続方法は、流体が流動する配管が接続された一対の継手の接続部同士を嵌合接続する管継手の接続方法であって、前記一対の継手にそれぞれ形成された係止部、または一対の継手にそれぞれ取付けられた係止部材に、治具本体に設けられた一対の固定爪及び可動爪から成る係止爪をそれぞれ係止させ、この一対の係止爪をリンク機構及び操作レバーにより接近する方向に操作し、前記一対の継手の接続部を嵌合接続することを要旨とするものである。
【0008】
また、この発明の管継手の接続治具は、流体が流動する配管が接続された一対の継手の接続部同士を嵌合接続する管継手の接続治具であって、前記一対の継手に、治具本体に設けられた一対の固定爪及び可動爪から成る係止爪と係脱可能な係止部、または着脱可能な係止部材を設け、前記治具本体は、左右一対の並列した支持フレームの両端に、前記係止部、または係止部材に係合する前記固定爪と前記支持フレームに沿って移動可能な可動爪とを設け、前記左右一対の支持フレームと可動爪とをリンク機構及び操作レバーを介して回転自在に連結したことを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記リンク機構のリンクの一端をピンを介して左右一対の支持フレームに回転自在に連結すると共に、前記操作レバーの先端をピンを介して前記可動爪に連結し、前記リンクの他端を操作レバーの先端近傍にピンを介して回転自在に連結するものである。
【0010】
前記係止部は、一対の継手の表面に形成された凹部または凸部であり、また前記係止部材は、一対の継手の表面に嵌合する分割された受け部材と、この受け部材を連結固定する締結部材とで構成したものである。
【0011】
また、前記治具本体または係止部材に、上下位置決め部材を設け、前記治具本体の左右一対の並列した支持フレームの間隔を調整可能に構成したり、前記治具本体の固定爪と可動爪との距離を調節可能に構成することも可能である。
【0012】
このように、治具本体は、左右一対の支持フレームと可動爪とをリンク機構及び操作レバーを介して回転自在に連結したことにより、配管内に圧力があっても短時間に、しかも圧力流体のこぼれ量を少なくして確実に結合することが出来るものである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、上記のように構成したので以下のような優れた効果を奏するものである。(a).配管内に圧力があっても短時間に、しかも圧力流体のこぼれ量を少なくして確実に結合することが出来る。
(b).簡単な構成により大きな推力を得ることが出来ると共に、結合操作を容易に行うことが出来る。
(c). 治具本体は、一対の継手の接続部同士を結合する時以外は、治具本体を継手から取外すことが出来るので邪魔にならず、取り扱いも容易である。
(d).治具本体または係止部材に、上下位置決め部材を設け、操作レバーに掛かる力の向きを一定としたことで、一対の継手の接続部同士の結合操作を容易にすることが出来る。
(e).一対の継手に取付ける係止部材を同一形態としたことで、治具本体の取付け方向を選ぶ必要がない。この結果、継手を大きくすることがなく、配管内に圧力が掛かっていても簡便に継手を結合させることが可能となり、環境を汚すことがない管継手にすることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態の一例を説明する。
【0015】
図1は、この発明の管継手の接続方法を実施するための接続前の一対の継手に治具本体を装着した状態の中心線O−Oで半断面にした平面図、図2は図1の正面図、図3は接続後の一対の継手と治具本体との中心線O−Oで半断面にした平面図、図4は図3の正面図を示している。
【0016】
前記流体(この実施形態では液体を使用する場合について説明するが、気体について使用する場合についても適用可能である)が流動する配管1a,1bが接続された一対の継手2a,2b(雌用と雄用)の接続部3a,3b同士を嵌合接続する場合、この発明の接続治具の治具本体4を装着して行うものである。
【0017】
前記一対の継手2a,2bには、前記治具本体4に設けられた一対のフック状の係止爪5と係脱可能な係止部(図示省略)、または図6及び図7に示すような着脱可能な係止部材6,7を設けるものである。
【0018】
また前記治具本体4は、図1〜図4及び図8〜図12に示すように、左右一対の並列した支持フレーム8a,8bの両端に、前記係止部(図示省略)、または係止部材6,7に係合する一対のフック状の係止爪5を構成する固定爪9と前記支持フレーム8a,8bに沿って移動可能な可動爪10とを設け、前記左右一対の支持フレーム8a,8bと可動爪10とは、リンク機構11及び左右一対の操作レバー12を介して回転自在に連結されている。
【0019】
前記図示しない係止部は、一対の継手2a,2bの表面に形成された凹部または凸部であり、また前記係止部材6,7は、図6及び図7に示すように、一対の継手2a,2bの半円状の表面に嵌合する分割された受け部材13a,13bと、この受け部材13a,13bの両端フランジ部を連結固定するボルト・ナット等の締結部材14とで構成されている。
【0020】
また前記治具本体4または係止部材6,7に上下位置決め部材15を設け、操作レバー12に掛かる力の向きを一定にし、一対の継手2a,2bの接続部3a,3b同士の結合操作を容易にすることが出来るようにしている。
【0021】
前記リンク機構11は、左右一対のリンク16の一端をピン17を介して左右一対の支持フレーム8a,8bに回転自在に連結すると共に、前記操作レバー12の先端をピン18を介して前記可動爪10に連結し、前記リンク16の他端を操作レバー12の先端近傍にピン19を介して回転自在に連結してある。
【0022】
前記左右一対のリンク16は、連結部材20及びボルト等の締結部材21により連結され、また左右一対の操作レバー12の中央及び後端側は、前記連結部材20と同一長さに形成された棒状または板状の連結部材23a,23b及びボルト等の締結部材24により連結されている。
【0023】
前記左右一対の支持フレーム8a,8bの可動爪10側(図8〜図11の右側)の側面には、所定の長さの長穴25が形成され、この長穴25には、前記可動爪10を内側に固定したスライダー22が摺動可能に嵌合され、この可動爪10及びスライダー22に、前記操作レバー12の先端がピン18を介して回転自在に連結されている。
【0024】
従って、操作レバー12が図8及び図9に示すように、左右一対の支持フレーム8a,8bに対して立ち上がった状態(この発明の実施形態では略75°)から、図8〜図12に示すように操作レバー12を矢印X方向に旋回させると、前記支持フレーム8a,8bに連結されたリンク16の一端のピン17を支点として、リンク16は時計方向(右回り)に旋回し、これと同時に操作レバー12の先端にピン18を介して連結された可動爪10は、スライダー22を介して長穴25に沿って固定爪9側に移動し、これにより固定爪9と可動爪10とで、一対の継手2a,2bの表面に形成された係止部、または係止部材6,7に係合して一対の継手2a,2bの接続部3a,3b同士を引き寄せながら嵌合接続するものである。
【0025】
また、一対の継手2a,2bの接続部3a,3bが嵌合接続した状態で、前記操作レバー12を図10〜図12の状態から反時計方向(Z方向)に旋回させると、可動爪10はスライダー22を介して長穴25に沿って後退し、固定爪9と可動爪10とは一対の継手2a,2bの表面に形成された係止部、または係止部材6,7から離脱し、治具本体4を一対の継手2a,2bから取外すことが出来る。
【0026】
なお、上述した治具本体4の左右一対の並列した支持フレーム8a,8bの間隔を調整する場合には、左右一対のリンク16を連結する連結部材20を分割するか、中間部材を介在させてボルト等の締結部材21により連結し、また左右一対の操作レバー12を連結する連結部材23a,23bを分割するか、中間部材を介在させてボルト等の締結部材24により連結した構成にしておくことで、支持フレーム8a,8bの間隔を調整することも可能となり、一対の継手2a,2bの径が変化した場合でも対応させることが出来る。
【0027】
また、前記治具本体4の固定爪9と可動爪10との距離を調節する場合には、長穴25に沿ってスライドするスライダー22の位置を規制することで容易に行うことが出来る。例えば、長穴25内に所定の長さのスペーサ等を介在させておくことで容易に行うことが出来、これにより継手2a,2b間の距離が変化した場合でも対応させることが出来るものである。
【0028】
次に、この発明の実施形態による管継手の接続方法について説明する。
先ず図1及び図2に示すように、予め一対の継手2a,2bの所定位置に、受け部材13a,13bと締結部材14とで構成される係止部材6,7を装着する。そして、配管1a,1bが接続された一対の継手2a,2b(雌用と雄用)の接続部3a,3b同士が結合開始位置状態、即ち、継手2aの接続部3aに継手2bの接続部3bを嵌合させた状態で治具本体4を上部側から被せ、一対のフック状の係止爪5を構成する固定爪9と可動爪10を前記係止部材6,7に係止させる。
【0029】
この図1及び図2の状態から、操作レバー12を矢印X方向に旋回させると、前記支持フレーム8a,8bに連結されたリンク16の一端のピン17を支点として、てこの原理によりリンク16は時計方向(右回り)に旋回し、これと同時に操作レバー12の先端にピン18を介して連結された可動爪10は、スライダー22を介して長穴25に沿って固定爪9側に移動し、これにより固定爪9と可動爪10とで、一対の継手2a,2bの係止部材6,7に係合している一対の継手2a,2bの接続部3a,3b同士をスプリング26a,26bを圧縮させながら引き寄せ、更に継手2aの接続部3aに設けたスリーブ27に設けた係合用球体28が継手2bの接続部3bに形成した嵌合凹部29に係合した時、嵌合接続が完了する。
【0030】
このような状態で、一対の継手2a,2b(雌用と雄用)の接続部3a,3b同士は、配管1a,1b内を流動する液体をこぼすことなく確実に、しかも簡単に接続させることが出来るものである。
【0031】
また、継手2a,2bの接続部3a,3bの接続が完了した後には、配管経路において治具本体4が邪魔になることがあるため、継手2a,2bから治具本体4を取外すことが望ましい。この場合には、上述したように、一対の継手2a,2bの接続部3a,3bが嵌合接続した状態で、前記操作レバー12を図10〜図12の状態から反時計方向(Z方向)に旋回させると、可動爪10はスライダー22を介して長穴25に沿って後退し、固定爪9と可動爪10とは一対の継手2a,2bの表面に形成された係止部、または一対の継手2a,2bにそれぞれ取付けられた係止部材6,7から離脱し、治具本体4を一対の継手2a,2bから簡単に取外すことが出来る。
【0032】
以上のように、一対の継手2a,2bにそれぞれ形成された係止部、または一対の継手2a,2bにそれぞれ取付けられた係止部材6,7に、治具本体4に設けられた一対の係止爪5を構成する固定爪9と可動爪10をそれぞれ係止させ、この一対の固定爪9と可動爪10をリンク機構11及び左右一対の操作レバー12により接近する方向に操作し、前記一対の継手2a,2bの接続部3a,3bを嵌合接続するようにしたので、配管1a,1b内に圧力があっても短時間に、しかも圧力流体のこぼれ量を少なくして確実に結合することが出来る。
【0033】
また、簡単な構成により大きな推力を得ることが出来ると共に、結合操作を容易に行うことが出来る。また治具本体4は、一対の継手2a,2bの接続部3a,3b同士を結合する時以外は、治具本体4を継手2a,2bから取外すことが出来るので邪魔にならず、取り扱いも容易である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の管継手の接続方法を実施するための接続前の一対の継手に治具本体を装着した状態の中心線O−Oで半断面にした平面図である。
【図2】図1の正面図である。
【図3】接続後の一対の継手と治具本体との中心線O−Oで半断面にした平面図である。
【図4】図3の正面図である。
【図5】継手の半断面図である。
【図6】雌側の継手に装着する係止部材の正面図である。
【図7】雄側の継手に装着する係止部材の正面図である。
【図8】治具本体の操作前の平面図である。
【図9】図8の正面図である。
【図10】治具本体の操作後の平面図である。
【図11】図10の正面図である。
【図12】図10の側面図である。
【符号の説明】
【0035】
1a,1b 配管 2a,2b 継手
3a,3b 接続部 4 治具本体
5 係止爪 6,7 係止部材
8a,8b 支持フレーム 9 固定爪
10 可動爪 11 リンク機構
12 操作レバー
13a,13b 受け部材 14 締結部材
15 上下位置決め部材 16 リンク
17 ピン 18 ピン
19 ピン 20 連結部材
21 締結部材 22 スライダー
23a,23b 連結部材 24 締結部材
25 長穴
26a,26b スプリング 27 スリーブ
28 係合用球体 29 嵌合凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動する配管が接続された一対の継手の接続部同士を嵌合接続する管継手の接続方法であって、
前記一対の継手にそれぞれ形成された係止部、または一対の継手にそれぞれ取付けられた係止部材に、治具本体に設けられた一対の固定爪及び可動爪から成る係止爪をそれぞれ係止させ、この一対の係止爪をリンク機構及び操作レバーにより接近する方向に操作し、前記一対の継手の接続部を嵌合接続することを特徴とする管継手の接続方法。
【請求項2】
流体が流動する配管が接続された一対の継手の接続部同士を嵌合接続する管継手の接続治具であって、
前記一対の継手に、治具本体に設けられた一対の固定爪及び可動爪から成る係止爪と係脱可能な係止部、または着脱可能な係止部材を設け、前記治具本体は、左右一対の並列した支持フレームの両端に、前記係止部、または係止部材に係合する前記固定爪と前記支持フレームに沿って移動可能な可動爪とを設け、前記左右一対の支持フレームと可動爪とをリンク機構及び操作レバーを介して回転自在に連結したことを特徴とする管継手の接続治具。
【請求項3】
前記リンク機構のリンクの一端をピンを介して左右一対の支持フレームに回転自在に連結すると共に、前記操作レバーの先端をピンを介して前記可動爪に連結し、前記リンクの他端を操作レバーの先端近傍にピンを介して回転自在に連結した請求項2に記載の管継手の接続治具。
【請求項4】
前記係止部は、一対の継手の表面に形成された凹部または凸部である請求項2または3に記載の管継手の接続治具。
【請求項5】
前記係止部材は、一対の継手の表面に嵌合する分割された受け部材と、この受け部材を連結固定する締結部材とで構成した請求項2または3に記載の管継手の接続治具。
【請求項6】
前記治具本体または係止部材に、上下位置決め部材を設けた請求項2,3または5に記載の管継手の接続治具。
【請求項7】
前記治具本体の左右一対の並列した支持フレームの間隔を調整可能に構成した請求項2,3,4,5または6に記載の管継手の接続治具。
【請求項8】
前記治具本体の固定爪と可動爪との距離を調節可能に構成した請求項2,3,4,5,6または7に記載の管継手の接続治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−102919(P2006−102919A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−296535(P2004−296535)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】