説明

管路内布設ケーブル引抜き前処理治具及び工法

【課題】大掛かりな作業機材を使用することなく、管路内面とケーブルの固着部分を解放することができる管路内布設ケーブル引抜き前処理治具及び工法を提供する。
【解決手段】管路20内に挿入できる外径と、管路内に布設されたケーブル22を挿通できる内径を有する筒体12の少なくとも一端側にワイヤー接続部14を設けた治具10を使用する。管路20内に布設されたケーブル22を引き抜くのに先立って、管路20の一端側で、治具10のワイヤー接続部14に管路内に通したワイヤー26を接続すると共に、治具10の筒体12にケーブル22を挿通する。その後、管路20の他端側でワイヤー26を牽引することにより治具10を管路20の一端側から他端側まで移動させ、これによって管路20内面とケーブル22の固着部分24を解放する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内に布設されたケーブルを引き抜く前に、管路内面とケーブルの固着部分を解放するのに使用する管路内布設ケーブル引抜き前処理治具と、それを用いた管路内布設ケーブル引抜き前処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地下管路内に布設された電力ケーブルや通信ケーブルは、老朽化したり不具合が発生したりした場合には、管路内から撤去する必要がある。撤去方法は、管路の一端側でケーブルを牽引して引き抜くことになるが、管路内の残留物(堆積物等)よって管路内面とケーブルが固着していると、ケーブルの許容張力内の牽引力では、ケーブルを引き抜くことが不可能な場合が生じる。このような場合は、路面を掘削して管路とケーブルを一緒に撤去するか、管路内にケーブルを残置するしか方法がなく、いずれの方法も後工程に支障をきたすことになる。
【0003】
この問題を解決するものとして、特許文献1には、管路とケーブルの固着部分を解放してから、ケーブルを引き抜く工法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−224112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示されている工法は、油圧ユニット、推進管、推進装置、切削ビットなどの大掛かりな作業機材が必要になり、コストがかかるという難点がある。
【0006】
また、ケーブル布設管路は通常、公共道路の路盤の下に埋設され、適当距離毎にマンホールが設置されている。ケーブルの引抜き工事に際しては、路面にあるマンホール蓋をあけて、マンホールの中と外で作業をすることになるが、路上及びマンホール内の作業スペースには制限があるため、極力コンパクトな作業機材を使用することが望ましい。特許文献1の工法では作業機材が大掛かりになるため、作業スペースを確保することが困難である。
【0007】
本発明の目的は、大掛かりな作業機材を使用することなく、管路内面とケーブルの固着部分を解放することができる管路内布設ケーブル引抜き前処理治具と、それを用いた管路内布設ケーブル引抜き前処理工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る管路内布設ケーブル引抜き前処理治具は、管路内に挿入できる外径と、管路内に布設されたケーブルを挿通できる内径を有する筒体の少なくとも一端側にワイヤー接続部を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る治具は、ワイヤー接続部が、筒体の半周以内の領域に周方向に間隔をあけて、一端につき2つ設けられていることが好ましい。
【0010】
また本発明に係る治具は、筒体のワイヤー接続部が設けられた半周以内の領域と反対側の領域の内周面に、両端から中央部に向かって盛り上がるスロープが設けられていることが、さらに好ましい。
【0011】
また、本発明に係る管路内布設ケーブル引抜き前処理工法は、管路内に布設されたケーブルを引き抜くのに先立って、管路の一端側で、前記治具のワイヤー接続部に前記管路内に通したワイヤーを接続すると共に、前記治具の筒体に前記ケーブルを挿通し、その後、管路の他端側で前記ワイヤーを牽引することにより前記治具を管路の一端側から他端側まで移動させ、これによって管路内面とケーブルの固着部分を解放することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーブルを挿通した治具を管路内に引き通すだけで、管路内面とケーブルの固着部分を解放することができる。したがって大掛かりな装置を使用することなく、簡単に効率よく管路内面とケーブルの固着部分を解放して、ケーブルの引抜きを確実に行うことができる。また、マンホールの内外に設置する作業機材は、ワイヤーを引き取るウィンチ程度の小型なもので済むため、作業スペースの確保も容易である。また工期の短縮も可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は本発明に係る管路内布設ケーブル引抜き前処理治具の一実施形態を示す。この治具10は、鋼製の筒体12の両端にワイヤー接続部14を設けたものである。筒体12の管路内に挿入できる外径と、管路内に布設されたケーブルを挿通できる内径を有している。筒体12の外径は管路の内半径より大きいことが好ましく、筒体12の内径はケーブルを十分余裕をもって挿通できる大きさであることが好ましい。筒体12の長さは管路の内径と同等かそれより若干長い程度でよい。
【0014】
ワイヤー接続部14は、ワイヤー接続用の穴14aを形成した鋼板片14bを、筒体12の端部に溶接することにより設けられている。鋼板片14bは、筒体12の内面に円弧状の介在片16を溶接し、その介在片16の内面に溶接することで、筒体12に固定されている。ワイヤー接続部14は、筒体12の半周以内の領域に周方向に間隔をあけて、一端につき2つずつ設けられている。
【0015】
また、筒体12のワイヤー接続部14が設けられた半周以内の領域と反対側の領域の内周面には、筒体12の両端から中央部に向かって盛り上がるスロープ18が設けられている。スロープ18は、なだらかな山の形に成形した薄い鋼板を筒体12の内面に溶接することにより形成されている。
【0016】
図2は、図1の治具10を用いた管路内布設ケーブル引抜き前処理工法の一実施形態を示す。地下の管路20内に布設されたケーブル22を引き抜こうとする場合、管路20内の残留物24(堆積物等)によって管路20とケーブル22が固着していて、引き抜けないことがある。治具10は、このような場合にケーブルの引抜き作業を行う前に使用される。
【0017】
まず、管路20内に牽引用のワイヤー26を通し、管路の一端側(通常はマンホール内)で、前記ワイヤー26の牽引方向後端側に治具10の一端側のワイヤー接続部14を接続すると共に、治具10の筒体12にケーブル22を挿通する。ワイヤー接続部14とワイヤー26との接続は、汎用の接続金具(図示せず)を介して行われる。
【0018】
その後、管路20の他端側で、ワイヤー26を矢印P方向に牽引すると、治具10が、筒体12内にケーブル22を挿通したまま管路20内を移動する(ケーブル22は移動しない)。治具10が、管路20とケーブル22が残留物24により固着した位置にくると、ワイヤー26の牽引力で筒体12が管路20とケーブル22の間に食い込んで、固着部分を引き剥がすように作用する。このため、管路とケーブルの固着部分を容易に解放することができる。このようにして、治具10を管路20の一端側から他端側まで移動させれば、管路とケーブルの固着部分はなくなるので、その後、ケーブルを牽引すれば、容易に引き抜くことができる。
【0019】
図1(B)、(D)に示したように、筒体12の内面にスロープ18を設けておくと、ケーブル22がスロープ18によって持ち上げられるため、筒体12が管路20とケーブル22の間に食い込みやすくなり、固着部分の解放をよりスムーズに行うことができる。
【0020】
また、ワイヤー接続部14を筒体12の一端につき2つ設けておくと、ワイヤー26で治具10を引っ張ったときに治具10の回転が抑制され、ワイヤー接続部14とケーブル22の干渉を防止できる。
【0021】
また、2つのワイヤー接続部14を筒体12の半周以内の領域に設けておくと、他の半周の領域が管路20とケーブル22の間に入り込むので、管路とケーブルの引き剥がしをより確実に行うことができる。
【0022】
また、2つのワイヤー接続部14を筒体12の半周以内の領域に設けておくと、治具10が図3に示すように前のめりの状態で移動するようになるので、この点からも、管路とケーブルの引き剥がしをより確実に行うことができる。
【0023】
なお、この実施形態では、治具10の後端側のワイヤー接続部14にもワイヤー28を接続したが、このワイヤー28は、先端側のワイヤー26の牽引では管路とケーブルの固着部分がどうしても解放できないときに、あるいは必要に応じて、治具10を元の位置又は任意の位置に引き戻すためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る管路内布設ケーブル引抜き前処理治具の一実施形態を示す、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図、(D)は(B)のD−D線断面図。
【図2】本発明に係る管路内布設ケーブル引抜き前処理工法の一実施形態を示す、(A)は管路切開側面図、(B)は管路切開平面図。
【図3】図2の実施形態における治具の傾き状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0025】
10:管路内布設ケーブル引抜き前処理治具
12:筒体
14:ワイヤー接続部
16:介在片
18:スロープ
20:管路
22:ケーブル
24:残留物
26:ワイヤー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路内に挿入できる外径と、管路内に布設されたケーブルを挿通できる内径を有する筒体の少なくとも一端側にワイヤー接続部を設けたことを特徴とする管路内布設ケーブルの引抜き前処理治具。
【請求項2】
ワイヤー接続部が、筒体の半周以内の領域に周方向に間隔をあけて、一端につき2つ設けられていることを特徴とする請求項1記載の引抜き前処理治具。
【請求項3】
筒体のワイヤー接続部が設けられた半周以内の領域と反対側の領域の内周面に、両端から中央部に向かって盛り上がるスロープを設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の引抜き前処理治具。
【請求項4】
管路内に布設されたケーブルを引き抜くのに先立って、管路の一端側で、請求項1〜3のいずれかに記載の治具のワイヤー接続部に前記管路内に通したワイヤーを接続すると共に、前記治具の筒体に前記ケーブルを挿通し、その後、管路の他端側で前記ワイヤーを牽引することにより前記治具を管路の一端側から他端側まで移動させ、これによって管路内面とケーブルの固着部分を解放することを特徴とする管路内布設ケーブル引抜き前処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−215284(P2007−215284A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−30926(P2006−30926)
【出願日】平成18年2月8日(2006.2.8)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)