説明

管路更生方法

【課題】新設管同士の連結作業を簡便かつ低コストの下に行い得るようにする。
【解決手段】新設管2同士を連結する連結部材3として、板材4の一方の面の所定位置に、弾性材からなる管固定部材5を設けるとともに、この板材4の一辺側に、その板面から、管固定部材5を設けた板面側に所定角度をもって立ち上がるように屈曲させたテーパ部6を形成したものを採用した。この連結部材3を、先に既設管1内に搬入した新設管2aの搬入口側の新設管2a外面と、既設管1内面との間の隙間に設けておくと、新たに搬入した新設管2bが、このテーパ部6によって新設管2aと同軸に案内され、両新設管2a、2bの連結がスムーズになされる。また、この新設管2の端面に予め止水部材7を設けておくと連結とともに止水処理も完了するため、作業が簡便なものとなって、作業コストの低減を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、老朽化した上下水道・農業用水路等の既設管や隧道の内側に新設管を配管してこの既設管の内面を更生する管路更生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道・農業用水路等の既設管等は、年月の経過とともに老朽化してその内面に凹凸が生じ、水理特性(管路内での流水の摩擦特性、流速等)が低下する。この水理特性が低下すると、管路内の流量が低下する等の問題を生じることがあるため、定期的に既設管の更生工事を行ってその問題の防止を図るようにしている。
【0003】
この更生工事の一つとして、既設管の中に新設管を設ける工法(パイプインパイプ工法)がある。この工法は、更生する既設管の一端側から新設管を一本ずつ搬入し、この新設管を既設管内で順次連結するものである。
【0004】
一般的な新設管の両端部には、受け口と挿し口がそれぞれ形成されており、一方の受け口に他方の挿し口を挿し込んで連結がなされる。そして、この受け口には管体の外径方向に突出する継手部が形成されている。このため、新設管の敷設の際には、この継手部の突出量を考慮して、呼び径の小さい新設管を採用する必要がある。その結果、通水断面積が小さくなり、更生前と比較して、流量が却って低下する問題が生じ得る。また、前記継手部は、管体の端部にこの管体よりも外径の大きいリング状の部材を溶接等で接合して形成する必要があり、この接合工程にコストを要するという問題もある。
【0005】
これらの問題を解決するため、出願人は、本願出願時点では未公開ながら(下記特許文献1を参照)、図4及び5に示すように、既設管1内に新設管2a、2bをその端面同士が対向するように配置するとともに、両新設管2a、2bに介在するように、既設管1とこの新設管2との間の隙間を調節するスペーサ9を設け、このスペーサ9の調節によって前記隙間を所定間隔に保つとともに、新設管2a、2b同士を順次連結する構成を提案した。
【0006】
このスペーサ9は、図6に示すように、既設管1の内面と、新設管2の外面とにそれぞれ当接する当接板10と、両当接板10、10に介在する軸体11および調節ボルト12とを有し、この調節ボルト12は連結した新設管2の両端面の間に配置されている。そして、作業者が、この新設管2の内側からこの調節ボルト12の軸体11へのねじ込み量を調節することによって、両当接板10、10の間隔(突っ張りの長さ)を調節する。
【0007】
この構成は、両新設管2a、2bが直接連結されるのではなく、スペーサ9を介して連結されるので、この新設管2の端部に管体同士を連結するための継手部を形成する必要がない。このため、この継手部の厚みに起因して、新設管2の呼び径を小さくする必要がなく、この更生後の十分な流量を確保することができる。また、継手部を形成しない分だけ、この新設管2の製造コストの低減を図り得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特願2008−150266号(未公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に示す敷設方法は、対向するように並べて配置した新設管2a、2bの両端部の間に、調節ボルト12等のように、既設管1と新設管2との間の隙間を調節するための部材を配置するものであって、この部材の幅の大きさよりも前記両端部を接近させることはできない。このため、両端部の間に調節ボルト12の頭部12aの大きさ程度の大きな隙間(通常、数センチメートル)が生じる。この隙間は、調節ボルト12による調節の後に、コーキング剤を充填する等の止水処理によって塞ぐ必要があるが、この隙間が広く、コーキング剤等の充填作業に熟練と時間を要するため、作業コストの上昇を招きやすい。
【0010】
そこで、この発明は、新設管同士の連結作業を簡便かつ低コストの下に行い得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、この発明は、既設管内に先に搬入した新設管の搬入口側の端部に、前記既設管と新設管との間に所定の隙間を確保するとともに前記新設管同士を連結する連結部材を設け、この連結部材を設けた新設管に、新たに既設管内に搬入した新設管の端部を突き当てるようにして、前記連結部材を介して新設管同士を連結し、この連結作業を順次行うことにより前記既設管の内面を更生する管路更生方法において、前記連結部材は、板材の一方の面に管固定部材を設け、この板材の他方の面を突起物のないフラット面とし、この連結部材を、前記既設管と、この既設管内に先に搬入した前記新設管との間の隙間に、前記板材の他方の面が新設管の外周面に接し、前記管固定部材が既設管の内面に接するように挿し込み、その後、新たにこの既設管内に搬入した前記新設管を、先に搬入した新設管と同軸で、前記新設管の外周面が前記板材の他方の面に接し、前記両新設管の端部同士を当接するように押し込んで、この新設管同士を連結する構成を採用した。
【0012】
この構成においては、前記板材の他方の面がフラット面であって、特許文献1に係る発明の構成に示す調節ボルトの頭部のような突起物がない。このため、この突起物に遮られることなく、前記新設管の端部同士を互いに当接するまで接近させることができる。このとき、この端部同士の隙間は、上記特許文献1に示す構成においてボルトを用いる構成と比較して大幅に狭く、前記止水処理に要する作業工数を大幅に減らすことができ作業コストの低減を図ることができる。
【0013】
また、前記管固定部材の厚みは、前記既設管と新設管との間の隙間の大きさを考慮した上で、予め決定しておく。このように所定厚みの管固定部材を予め板材に設けておくことによって、新設管の敷設後に、既設管と新設管の間の隙間の大きさを調節する必要がなく、現場での作業工数を削減することができる。
【0014】
この管固定部材の素材は特に限定されないが、硬質ゴム等のように前記隙間を確保できる程度の強度を有しつつ、前記連結部材の挿し込みをスムーズに行うことができる程度の弾性を有する素材で構成することが好ましい。
【0015】
この連結部材を設ける位置は適宜決定することができるが、例えば、新設管の下方側に複数箇所設けて、この新設管の荷重を十分支持しつつ、この新設管の上方側にも複数箇所設けて、既設管と新設管の間の隙間に中込材を注入した際におけるこの新設管の浮き止めを図るようにするのが好ましい。さらに、この新設管の横方向へのたわみを防止するために、その両横側にも設けるのがより好ましい。
【0016】
また前記構成においては、前記連結部材の前記搬入口側の端部を、板面から前記既設管に向けて所定角度をもって立ち上がるように屈曲させたテーパ部とするのが好ましい。
【0017】
この既設管内に敷設した新設管の端部に前記連結部材を設け、この新設管に、新たに搬入した新設管を連結する際に、この新たに搬入した新設管の端部が前記テーパ部の内面側に当接する。そうすると、両新設管の軸心が多少ずれていても、新たに搬入した前記新設管が、既に敷設した前記新設管の管軸と同軸となるように誘導され、この両新設管の連結をスムーズに行うことができる。
【0018】
また、前記各構成においては、前記新設管の端面に、止水部材を設け、連結した新設管とで、この止水部材が挟み込まれるように突き合わせるようにするのが好ましい。
【0019】
このように止水部材を予め設けておくと、前記新設管の端面同士を突き合わせるとともに、止水処理がなされるため、連結作業後にコーキング剤等による止水処理が不要となって作業効率が非常に高い。この止水部材の素材としては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)を採用することができる。このSBRは、前記端面の突き合わせ箇所の隙間を確実に塞ぐので、既設管と新設管との間の隙間に中込材を注入する際にこの中込材が新設管内に漏れたり、流水が新設管外へしみ出したりするのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明は、既設管内に敷設する新設管同士を、この新設管側に突起物を有さない板状の連結部材で連結するので、この新設管の端部同士を当接するまで接近させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明に係る管路更生方法の作業手順を示す側面図であって、(a)は新設管同士の連結前、(b)は連結後
【図2】本願発明で用いる連結部材の斜視図
【図3】図1(a)のA−A断面図
【図4】従来発明に係る管路更生方法の作業手順を示す側面図
【図5】図4のB−B断面図
【図6】従来技術に係る連結箇所の要部を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明に係る管路更生方法の作業手順を図1に示す。この管路更生方法は、老朽化した既設管1の内部に、図示しない管搬送用のカゴ台車を用いて新設管2を搬入し、それらを順次連結部材3で連結することによってなされる。この新設管2には継手部が形成されていないため、その連結は連結部材3で行う。
【0023】
その連結部材3には、図2に示すようにステンレス鋼からなる長方形の板材4の一方の面の所定位置に、弾性材からなる管固定部材5が設けられている。そして、この板材4の一辺側に、その板面から、管固定部材5を設けた板面側に所定角度(約30度)をもって立ち上がるように屈曲させたテーパ部6が形成されている。
【0024】
また、連結する新設管2の一方の端面には、スチレンブタジエンゴム(SBR)からなる断面が山形状の止水部材7が設けられ、この新設管2を連結した際に、前記山形状の頂部が対向する新設管2の端面に押し付けられて、その連結部の水密が確保される。この止水部材7としては、SBR以外に、耐候性・耐薬品性に優れるとともにその素材自体に粘着性を有するブチル系パッキング材も採用し得る。SBRと同様に高い水密性を確保し得るからである。また、これ以外にも、水密性を確保するのに用いられる公知の止水部材7を幅広く採用し得る。
【0025】
この連結作業においては、先に既設管1内に搬入した新設管2aの搬入口側の新設管2a外面と、既設管1内面との間の隙間に、板材4のテーパ部6の先端が既設管1内面方向に向くようにして、このテーパ部6を形成した辺側と反対側の辺側から、この板材4を挿し込む(図1(a)を参照)。その際、管固定部材5の弾性力に抗して前記隙間に挿し込む必要があるが、例えばハンマ等で板材4に打撃を与えることにより、その挿し込みをスムーズに行うことができる。
【0026】
次に、既設管1内に新たに搬入した新設管2bを前記カゴ台車で、先に搬入して連結が既に完了した新設管2aの近くまで搬送し、図示しない専用治具を用いて両新設管2a、2b同士をさらに接近させる。そうすると、新たに搬入した新設管2bの端部が、この連結部材3のテーパ部6に当接して、この当接力によって両新設管2a、2bが同軸となるようにこの新設管2bを誘導し、この連結部材3を介して両新設管2a、2bが連結される。この連結作業を順次行った後、既設管1と新設管2の間の隙間にモルタル8を注入して一連の作業を完了する(同図(b)を参照)。
【0027】
この連結部材3の板材4の大きさ、及び管固定部材5の大きさ及びその数は、この連結部材3を新設管2のどの位置に設けるかによって適宜変更することができ、板材4及び管固定部材5の厚みも、新設管2a、2b同士を確実に連結しつつ、この新設管2を既設管1内に固定することができるのであれば、適宜変更することができる。
【0028】
また、この連結部材3の挿し込み位置も既設管1及び新設管2の断面形状を考慮して適宜変更することができ、例えば、図3に示すように連結部材3を新設管2の下側、左右両側、上側の合計4箇所に設けることができる。このように配置すれば、下側の連結部材3で新設管2の荷重を支えつつ、左右両側の連結部材3、3で連結した新設管2が横方向に変位するのを防止し、さらに、上側の連結部材3でモルタル8の注入の際に、この新設管2が浮力によって浮き上がるのを防止することができる。
【0029】
この連結部材3の板材4及び管固定部材5の形状・厚みは図2に記載したものに限定されず、図3にその断面図で示したように、一枚の板材4の上に複数個の管固定部材5を設けて新設管2をより安定して支持するようにしたり、テーパ部6の屈曲角度を適宜変えて、連結の際の新設管2の誘導を一層スムーズに行い得るようにしたりすることもできる。
【0030】
本願発明の構成では、既設管1と新設管2との間の隙間の大きさは、その隙間に挿し込んだ連結部材3の厚み程度であるため、従来発明(特願2008−150266号)において、締結力を発揮するために所定以上の長さの軸体と調節ボルトを必要とするスペーサを用いる構成と比較して、前記隙間の大きさを一層小さくし得る。このため、その分だけ呼び径の大きい新設管2を採用して、水理特性をさらに高めることができる。また、前記隙間に注入するモルタル8の量をさらに減らせるというメリットもある。
【0031】
また、この既設管1は地下に埋設されているため、地下水位が高い状況下においては、この既設管1の外周面に高い水圧がかかって変形又は破損する恐れがある。そこで、既設管1の管体にウィープホール(逆流防止弁と土砂流入を防ぐフィルタの付いた水抜き管)を設けるとともに、新設管2の前記ウィープホール位置に対応する箇所に開口部を形成してこのウィープホールを接続し、既設管1の外側の水をこの新設管2内に導き、前記変形等を防止するようにすることもできる。
【0032】
なお、上記の実施形態においては、既設管1及び新設管2の断面形状が馬蹄形の場合について示したが、本願発明は当然ながら、管断面形状が円形等の他形状の場合にも適用できる。
【符号の説明】
【0033】
1 既設管
2 新設管
2a (先に既設管内に搬入した)新設管
2b (新たに既設管内に搬入した)新設管
3 連結部材
4 板材
5 管固定部材
6 テーパ部
7 止水部材
8 モルタル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設管(1)内に先に搬入した新設管(2a)の搬入口側の端部に、前記既設管(1)と新設管(2)との間に所定の隙間を確保するとともに前記新設管(2)同士を連結する連結部材(3)を設け、この連結部材(3)を設けた新設管(2a)に、新たに既設管内に搬入した新設管(2b)の端部を突き当てるようにして、前記連結部材(3)を介して新設管(2)同士を連結し、この連結作業を順次行うことにより前記既設管(1)の内面を更生する管路更生方法において、
前記連結部材(3)は、板材(4)の一方の面に管固定部材(5)を設け、この板材(4)の他方の面を突起物のないフラット面とし、この連結部材(3)を、前記既設管(1)と、この既設管(1)内に先に搬入した前記新設管(2a)との間の隙間に、前記板材(4)の他方の面が新設管(2a)の外周面に接し、前記管固定部材(5)が既設管(1)の内面に接するように挿し込み、その後、新たにこの既設管(1)内に搬入した前記新設管(2b)を、先に搬入した新設管(2a)と同軸で、前記新設管(2b)の外周面が前記板材(4)の他方の面に接し、前記両新設管(2a、2b)の端部同士を当接するように押し込んで、この新設管(2)同士を連結するようにしたことを特徴とする管路更生方法。
【請求項2】
前記板材(4)の前記搬入口側の端部を、この板材(4)の板面から前記既設管(1)側に、所定角度をもって立ち上がるように屈曲させたテーパ部(6)としたことを特徴とする請求項1に記載の管路更生方法。
【請求項3】
前記新設管(2a)の端面に、止水部材(7)を設け、連結した新設管(2b)とで、この止水部材(7)が挟み込まれるように突き合わせたことを特徴とする請求項1又は2に記載の管路更生方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−106612(P2011−106612A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263896(P2009−263896)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)