説明

管閉塞方法

【課題】簡単な作業で安定した管閉塞状態を維持できるようにする。
【解決手段】活管状態のガス管Gの一部範囲を閉塞する管閉塞方法において、予め、高粘性を有する粘性体4を準備し、ガス管Gの一部範囲に相当する周壁に穴2を確保して、その穴2からガス管G内に、ガス管Gの内圧に対抗できる抵抗力をガス管Gとの間に作用自在な状態に粘性体4を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、何らかの理由でガス引込管等の枝管を閉塞する必要がある場合に、ガス本管のガスを止めるようなことの無い状態(活管状態)で実施できる管閉塞方法に関し、更に詳しく説明すれば、活管状態のガス管の一部範囲を閉塞する管閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の管閉塞方法としては、ガス管の周壁に穴を開けて、その穴からガスバッグをガス管内に挿入して、管内周に接当するように管内でガスバッグを膨らませて一時的に管閉塞を行う方法があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2000−346278号公報(図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の管閉塞方法によれば、ガスバッグは、ガス管内周面に当接するだけの関係であるから、当接面に隙間が出来てガス流通の原因となり、閉塞性が悪化する危険性がある。また、ガスバッグをガス管の穴を通して管内に挿入する際に、穴周辺に残ったバリ等で傷つけられて、ガスバッグが膨らまなかったり、傷部分で避けてたりして、何れにしても安定した閉塞状態を維持し難い問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、簡単に安定した管閉塞状態を維持し易い管閉塞方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、活管状態のガス管の一部範囲を閉塞する管閉塞方法において、予め、高粘性を有する粘性体を準備し、前記ガス管の前記一部範囲に相当する周壁に穴を確保して、その穴からガス管内に、前記ガス管の内圧に対抗できる抵抗力をガス管との間に作用自在な状態に前記粘性体を充填するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、予め、高粘性を有する粘性体を準備し、前記ガス管の前記一部範囲に相当する周壁に穴を確保(新規に設ける場合と、既にあるものを利用する場合とがある)して、その穴からガス管内に、前記ガス管の内圧に対抗できる抵抗力をガス管との間に作用自在な状態に前記粘性体を充填するから、ガス管内に充填された粘性体と、ガス管周面との付着作用によって、ガス管内をより確実に閉塞でき、且つ、その閉塞状態を持続することが可能となる。そして、作業そのものは、穴から前記粘性体を充填するだけの簡単なものであるから、極めて効率よく短期間にガス管閉塞を行うことができる。
また、上述のように粘性体充填作業は簡単な上、大掛かりな装置を使用しなくても実施でき、施工設備の簡素化を図ることができ、安価に管閉塞を行うことが可能となる。
更には、作業スペースも小さくてすむので、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記粘性体が、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している高分子物質であるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、上述の分子構造に加えて解離基の存在によって、ガス管内周面との接触部分での付着性がより高いものとなり、ガス管の閉塞性能をより高く且つ持続させることが可能となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記粘性体は、水溶性材料であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1〜2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、現場で入手し易い水によって前記粘性体を調製することができ、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
また、一時的なガス管閉塞を終えた後、ガス管を再度連通状態とする際に、例えば、水洗い等の簡単な手段によって充填された粘性体を洗い流すことができ、復旧作業をも簡単に実施できるようになる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記粘性体は、粘度が40000〜100000(mPa・s/25℃)で、チキソトロピック指数が4.0〜6.0であるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、本発明の第1〜3の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、粘性体の粘度が40000〜100000(mPa・s/25℃)であることで、ガス管内で充分な閉塞性を発揮することができる上、チキソトロピック指数が4.0〜6.0であることで、良好なチキソトロピック性が得られ、ガス管内への充填時には低粘性状態で抵抗無く充填でき、充填された後は高粘性状態に復帰して管内閉塞性を維持することができる。
即ち、極めて良好な管閉塞性と施工性との両方を満たすことができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記粘性体は、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースの少なくとも一種からなる水溶液で構成されているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、本発明の第1〜4の特徴構成による上述の作用効果を、夫々について、より好ましい状態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の管閉塞方法の対象となるガス管Gの設置状況を示している。
【0018】
ガス管Gは、地中に埋設されているガス本管G0からガス引込管G1を介して住戸Hに引き込まれ、住戸HのガスメータMを経てガス器具に連通する状態に設けられている。
そして、例えば、所定期間にわたって空き住戸となり、ガス供給を不要とする場合に、地上露出部分のガス引込管G1からガス漏れが生じないようにしておく等の理由で、前記ガス引込管G1を地中部分で閉塞して住戸側にその期間中にガスが流通しないようにしておくのに当該技術を使用することができる。
【0019】
ここでは、前記ガス引込管G1の立ち上がり部の上流側近傍において閉塞する例を挙げて説明する。
【0020】
[1]ガス引込管G1の上面が露出する状態に土被り部分の掘削を行う(図2(イ)参照)。
[2]ガス引込管G1の穴開け対象部に、密閉状態で穿孔可能とする穿孔補助具(不図示)を取り付けた状態で、穿孔具1によってガス引込管G1に穴2を穿孔する(図2(ロ)参照)。図には示していないが、前記穿孔補助具(例えば、ノーブロー袋等)を取り付けてあるので、活管状態でもガス漏れの無い状態で穿孔することができる。
[3]穴2に、充填具のノズル3を挿入して、そのノズル3を通して管閉塞用の粘性体4をガス引込管G1内に圧入する(図2(ハ)参照)。
前記粘性体4の圧入量Qは、図2(ハ)に示すように、ガス引込管G1の内空部全断面に充填された粘性体4群とガス引込管G1との付着力Σcが、前記粘性体4群に作用するガス圧Σqより大きくなるように設定された充填範囲Lと、ガス引込管G1の内空部断面積Aとを基に求めることができる。
具体例としては、Q≧L×Aで求めることができる。
[4]前記ノズル3を引き抜いてガス漏れが無い状態を確認して土を埋め戻す(図2(ニ)参照)。
【0021】
因みに、前記粘性体4は、例えば、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウムからなる粉末状の主剤〔例えば、日本純薬株式会社製のレオジック250H(商品名)〕を溶かした水溶液で構成されている。
この粘性体4は、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している高分子物質であり、静的な状態においては高粘性を維持している。また、チキソトロピック性を備えているため、降伏点以上の応力が作用した場合は見掛け粘度が低下して流動し易くなり、静置すると粘度が回復する性質がある。
従って、ガス引込管G1への圧入時には圧入力の作用で見掛け粘度が低下し、スムースに圧入できる一方、充填された後は、高粘度に復帰し、高いガス管閉塞作用を持続することができる。また、粘性体4そのものは、水溶性を有しており、上述の管閉塞方法を実施した後、再度、管を開通させるような場合、水洗い等によって粘性体4を容易に除去することが可能となる。
また、粘性体4に関する主剤濃度と水溶液粘度との関係は、図3に示す通りであり、主剤濃度が0.5重量%の場合8000〜12000(mPa・s/25℃)を示す。当該管閉塞方法に用いる場合、水溶液粘度が40000〜100000(mPa・s/25℃)の範囲が、特に好ましい。
そして、当該管閉塞方法に用いる粘性体4のチキソトロピック性の度合いは、チキソトロピック指数(6rpmの低シェア粘度/60rpmの高シェア粘度)が、4.0〜6.0の範囲が特に好ましい。
水溶液濃度とチキソトロピック指数との関係は、図4に示す通りである。
【0022】
本実施形態の管閉塞方法によれば、極めて効率よく短期間にガス管閉塞を行うことができると共に、施工設備の簡素化をも図れるから、安価に管閉塞を行うことが可能となる。
更には、作業スペースも小さくてすむので、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
〈1〉先の実施形態においては、管閉塞の対象管は、ガス引込管G1を挙げて説明したが、ガス引込管G1に限るものではなく、広くガス管G全般に適用することができる。
〈2〉前記粘性体4を圧入するためにガス管Gの一部範囲に相当する周壁に確保する穴2は、先の実施形態で説明したように、新たに設けるものに限らず、既に設けられている穴がある場合は、それを利用するものであってもよく、要するに、それらを含めて「ガス管の一部範囲に相当する周壁に穴を確保する」と表現するものである。また、新たに穴を設ける場合、その設け方は、公知の穿孔方法を採用することができる。
〈3〉前記粘性体4は、先の実施形態で説明した主成分が、ポリアクリル酸ナトリウムで構成された水溶液に限るものではなく、ポリアクリル酸ナトリウムに替えて、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸アンモニウム等を主成分としたもの〔(例えば、日本純薬株式会社製のジュリマーAC−16H(商品名)、ジュリマーAC−16HN(商品名)、ジュリマーAC−10SHN(商品名)、ジュリマーAC−30H(商品名)、レオジック252L(商品名)、レオジック835H(商品名)、レオジック830L(商品名)、レオジック305H(商品名)、レオジック306L(商品名)、ジュロンPW−110(商品名)、ジュロンPW−111(商品名)、ジュロンPW−150(商品名)等で、粉体ポリマーの場合は水で溶解して所定の粘度に調整したもの〕や、洗濯糊や、マヨネーズ、ワセリン、グリス等で構成されているものであってもよい。要するに、高粘性を有し、ガス管Gの一部範囲に充填した状態で、ガス管Gの内圧に対抗できる抵抗力をガス管Gとの間に作用させることができるものであればよく、それらを総称して粘性体4という。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガス管の設置状況を示す模式図
【図2】ガス管のメンテナンス手順を示す説明図
【図3】粘性体の主剤濃度と水溶液粘度との関係を示す図
【図4】粘性体の水溶液濃度とチキソトロピック指数との関係を示す図
【符号の説明】
【0027】
2 穴
4 粘性体
G ガス管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活管状態のガス管の一部範囲を閉塞する管閉塞方法であって、
予め、高粘性を有する粘性体を準備し、前記ガス管の前記一部範囲に相当する周壁に穴を確保して、その穴からガス管内に、前記ガス管の内圧に対抗できる抵抗力をガス管との間に作用自在な状態に前記粘性体を充填する管閉塞方法。
【請求項2】
前記粘性体は、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している高分子物質である請求項1に記載の管閉塞方法。
【請求項3】
前記粘性体は、水溶性材料である請求項1又は2に記載の管閉塞方法。
【請求項4】
前記粘性体は、粘度が40000〜100000(mPa・s/25℃)で、チキソトロピック指数が4.0〜6.0である請求項1〜3の何れか一項に記載の管閉塞方法。
【請求項5】
前記粘性体は、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースの少なくとも一種からなる水溶液で構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の管閉塞方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−164067(P2008−164067A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354589(P2006−354589)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(305028763)株式会社コスモマテリアル (14)
【Fターム(参考)】