説明

管閉塞方法

【課題】 従来の管閉塞方法によれば、ガスメーターの立管より、2液型発泡ウレタン樹脂を注入し、ガス管内部で発泡させ、ガス本管をガス遮断させた場合、ガス本管まで発泡ウレタンが到達せずに、途中で発泡硬化してガス遮断が不可能となる問題点がある。
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、簡単に安定した管閉塞状態を維持し易い管閉塞方法を提供するところにある。
【解決手段】活管状態のガス本管G0のガスを閉塞する管閉塞方法において、予め高粘性を有する粘性体を準備し、メーターを取り外したガス引込管より粘性体を注入し、ガス本管まで入れて充填し、ガスを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば何らかの理由で、活管状態でガス本管のガスを止めなければならない場合、ガスメーターを取り外し、ガス引込管より、ガスの供給圧力に対抗しつつ、管閉塞用粘性樹脂を注入し、ガス本管を閉塞させる管閉塞方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の管閉塞方法としては、2液型の発泡ウレタン樹脂をガスメーターを外してメーター立管より注入し、内部で発泡硬化させる方法がある。
【0003】
【特許文献1】特開平08-075081
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の管閉塞方法によれば、ガスメーターの立管より、2液型発泡ウレタン樹脂を注入し、ガス管内部で発泡させ、ガス本管をガス遮断させた場合、ガス本管まで発泡ウレタンが到達せずに、途中で発泡硬化してガス遮断が不可能となる問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、簡単に安定した管閉塞状態を維持し易い管閉塞方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、活管状態のガス管の一部範囲を閉塞する管閉塞方法において、予め、高粘性を有する粘性体を準備し、ガスメーターを取り外し、ガス引込管よりガス本管内にガスの内圧に対抗できる抵抗力をガス管との間に作用自在な状態に前記粘性体を充填するところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、予め、高粘性を有する粘性体を準備し、ガスメーターを取り外したガス引込管を利用して、ガス管の内圧に対抗できる抵抗力をガス管との間に作用自在な状態に前記粘性体を充填するから、ガス管内に充填された粘性体と、ガス管周面との付着作用によって、ガス管内をより確実に閉塞でき、且つ、その閉塞状態を持続することが可能となる。
そして、作業そのものは、ガス引込管から前記粘性体を充填するだけの簡単なものであるから、極めて効率よく短期間にガス管閉塞を行うことができる。
また、上述のように粘性体充填作業は簡単な上、大掛かりな装置を使用しなくても実施でき、施工設備の簡素化を図ることができ、安価に管閉塞を行うことが可能となる。
更には、作業スペースも小さくてすむので、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記粘性体が、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している高分子物質であるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、上述の分子構造に加えて解離基の存在によって、ガス管内周面との接触部分での付着性がより高いものとなり、ガス管の閉塞性能をより高く且つ持続させることが可能となる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記粘性体は、水溶性材料であるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1〜2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、現場で入手し易い水によって前記粘性体を調製することができ、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
また、一時的なガス管閉塞を終えた後、ガス管を再度連通状態とする際に、例えば、水洗い等の簡単な手段によって充填された粘性体を洗い流すことができ、復旧作業をも簡単に実施できるようになる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記粘性体は、粘度が10000〜100000(mPa・s/25℃)で、チキソトロピック指数が4.0〜6.0であるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、本発明の第1〜3の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、粘性体の粘度が10000〜100000(mPa・s/25℃)であることで、ガス管内で充分な閉塞性を発揮することができる上、チキソトロピック指数が4.0〜6.0であることで、良好なチキソトロピック性が得られ、ガス管内への充填時には低粘性状態で抵抗無く充填でき、充填された後は高粘性状態に復帰して管内閉塞性を維持することができる。
即ち、極めて良好な管閉塞性と施工性との両方を満たすことができる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記粘性体は、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダの少なくとも一種からなる水溶液で構成されているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、本発明の第1〜4の特徴構成による上述の作用効果を、夫々について、より好ましい状態で実現することができる。
【0016】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の管閉塞方法の対象となるガス管Gの設置状況を示している。
【0018】
ガス管Gは、地中に埋設されているガス管本管G0からガス引込管G1を介して住戸Hに引き込まれ、住戸HのガスメーターMを経てガス器具に連通する状態に設けられている。そして、例えば、ガス本管G0でガス漏れ等が発生し、緊急に遮断しなければならない場合、ガス引込管G1から、前記粘性体をポンプ等で圧入し、ガス本管G0のガスを遮断することが出来る。ガスの緊急遮断方法として、当該技術を使用することが出来る。
【0019】
ここでは、前記ガス引込管G1の立ち上がり部の上流側近傍において閉塞する例を挙げて説明する。
【0020】
[1] ガス引込管G1とガスメーターMの接合ネジ部をノーブロー袋I等を使用して、ガ
ス漏れを起こさないように取り外す。(図2)
[2] ノーブロー袋内のガス引込管と、粘性体注入用ポンプ(J)又は、カートリッジに粘性体をつめて、ガンで押し出す。(図3)
[3] ガス引込管より、粘性体を注入し、ガス引込管を利用して、ガス本管まで閉塞させる。
ガス本管のガス遮断をする必要のある部位で、ガス引込管を利用することにより、ガス本管のガス供給を簡単に遮断出来る。
【0021】
因みに、前記粘性体は、例えば、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウムからなる粉末状の主剤〔例えば、日本純薬株式会社製のレオジック250H(商品名)〕を溶かした水溶液で構成されている。
この粘性体は、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している高分子物質であり、静的な状態においては高粘性を維持している。また、チキソトロピック性を備えているため、降伏点以上の応力が作用した場合は見掛け粘度が低下して流動し易くなり、静置すると粘度が回復する性質がある。
従って、ガス引込管G1への圧入時には圧入力の作用で見掛け粘度が低下し、スムースに圧入できる一方、充填された後は、高粘度に復帰し、高いガス管閉塞作用を持続することができる。また、粘性体そのものは、水溶性を有しており、上述の管閉塞方法を実施した後、再度、管を開通させるような場合、水洗い等によって粘性体を容易に除去することが可能となる。
また、粘性体に関する主剤濃度と水溶液粘度との関係は、図5に示す通りであり、主剤濃度が0.5重量%の場合8000〜12000(mPa・s/25℃)を示す。当該管閉塞方法に用いる場合、水溶液粘度が10000〜100000(mPa・s/25℃)の範囲が、特に好ましい。
そして、当該管閉塞方法に用いる粘性体のチキソトロピック性の度合いは、チキソトロピック指数(6rpmの低シェア粘度/60rpmの高シェア粘度)が、4.0〜6.0の範囲が特に好ましい。
水溶液濃度とチキソトロピック指数との関係は、図6に示す通りである。
又、注入装置としては、グリスを注入するポンプや、ニーダー等が使用可能であるし、シリコーンシーラント等に使用されるカートリッジに粘性体を充填し、市販のガンに装置し、ガス管内に圧入することが出来る。又、必要に応じて、目地剤注入用のコーキングガンも使用できる。
【0022】
本実施形態の管閉塞方法によれば、極めて効率よく短期間にガス管閉塞を行うことができると共に、施工設備の簡素化をも図れるから、安価に管閉塞を行うことが可能となる。
更には、作業スペースも小さくてすむので、あらゆる作業環境への適用が可能となる。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0024】
[1] 先の実施形態においては、管閉塞の対象管は、ガス引込管G1を挙げて説明したが、ガス引込管G1に限るものではなく、広くガス管G全般に適用することができる。
[2] 前記粘性体を圧入するために、ガス管Gの一部に新たに穴を設けて、粘性体4を注入すりことも可能であるし、既に設けられている穴がある場合は、それを利用するものであっても良い。
[3] 前記粘性体は、先の実施形態で説明した主成分が、ポリアクリル酸ナトリウムで構成された水溶液に限るものではなく、ポリアクリル酸ナトリウムに替えて、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、プロピレングリコール、ポリアクリル酸、アルギン酸ソーダ、ポリアクリル酸共重合体、ポリアクリル酸アンモニウム等を主成分としたもの〔例えば、日本純薬株式会社製のジュリマーAC−16H(商品名)、ジュリマーAC−16HN(商品名)、ジュリマーAC−10SHN(商品名)、ジュリマーAC−30H(商品名)、レオジック252L(商品名)、レオジック835H(商品名)、レオジック830L(商品名)、レオジック305H(商品名)、レオジック306L(商品名)、ジュロンPW−110(商品名)、ジュロンPW−111(商品名)、ジュロンPW−150(商品名) 等で、粉体ポリマーの場合は水で溶解して所定の粘度に調整したもの〕や、洗濯糊や、マヨネーズ、ワセリン、グリス等で構成されているものであってもよい。要するに、高粘性を有し、ガス管Gの一部範囲に充填した状態で、ガス管Gの内圧に対抗できる抵抗力をガス管Gとの間に作用させることができるものであればよく、それらを総称して粘性体という。
【0025】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0026】
以下に、本発明について実験結果を示して、さらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1
配管例を図7に示す。
20Aのガス引込管の長さを12mとして、ガス本管は150Aのガス管を使用した。低圧(3kPa)でガスを通流させながら、圧入ポンプで粘性体を充填した。
ポリアクリル酸ナトリウム共重合体である商品名レオジック835H(日本純薬株式会社)製)400gを水に溶解させ、2%水溶液を20リットル作成した。2%水溶液の粘度は、11000mPa・s/25℃であった。
市販の圧入ポンプで配管内に、上記の水溶液を圧入したところ、ガス本管のガスは遮断された。
【0028】
実施例2
配管例を図7に示す。
20Aのガス引込管の長さを12mとして、ガス本管は150Aのガス管を使用した。低圧(3kPa)でガスを通流させながら、圧入ポンプで粘性体を充填した。
ポリアクリル酸ナトリウム重合体である商品名レオジック250H(日本純薬株式会社製)400gを水に溶解させ、2%水溶液を20リットル作成した。2%水溶液の粘度は、12000mPa・s/25℃であった。
市販の圧入ポンプで配管内に、上記の水溶液を圧入したところ、ガス本管のガスは遮断された。
【0029】
比較例1
配管例を図7に示す。
20Aのガス引込管の長さを12mとして、ガス本管は150Aのガス管を使用した。低圧(3kPa)でガスを通流させながら、2液型発泡ウレタン樹脂によるガス遮断を行った。
2液発泡ウレタン型ガス遮断工法である商品名緊急遮断ツール(東邦ガス(材)製)を使用した。
20Aの配管の途中で発泡が起こり硬化したため、150Aの配管まで充分に入らずにガス遮断に到らなかった。
【0030】
〔結果〕
【表1】


「表1」で明らかなように、本発明は極めて高いガス遮断性能を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、ガスに限らず、すべての気体に対し効果的であり、緊急遮断方法として極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ガス管の設置状況を示す模式図
【図2】ノーブロー袋を利用しガスメーターを外した説明図
【図3】注入ポンプを結合させた説明図
【図4】粘性体を注入した説明図
【図5】粘性体の主剤濃度と水溶液粘度との関係を示す図
【図6】粘性体の水溶液濃度とチキソトロピック指数との関係を示す図
【図7】実施例及び比較例における実験装置図
【符号の説明】
【0033】
G0 ガス本管
G1 ガス引込管
G ガス管
M ガスメーター
5 ガス
I ノーブロー袋
J 粘性体圧入用ポンプ
2 粘性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活管状態のガス管の一部範囲を閉塞する管閉塞方法であって、予め、高粘性を有する
粘性体を準備し、又、ガスメーターを取り外し、ガス引込管を利用し、ガス本管までに管閉塞用粘性樹脂をガス管の内圧に対抗して注入し、前記ガス本管を閉塞する管閉塞方法。
【請求項2】
前記粘性体は、多分岐状の分子構造をもち、且つ、側鎖に多くの解離基が存在している
高分子物質である請求項1に記載の管閉塞方法。
【請求項3】
前記粘性体は、水溶性材料である請求項1又は2に記載の管閉塞方法。
【請求項4】
前記粘性体は、粘度が10000〜100000(mPa・s/25℃)で、チキソトロピック指数が4.0〜6.0である請求項1〜3の何れか一項に記載の管閉塞方法。
【請求項5】
前記粘性体は、主成分が、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、アルギン酸ソーダの少なくとも一種からなる水溶液で構成されている請求項1〜4の何れか一項に記載の管閉塞方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−52586(P2009−52586A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217310(P2007−217310)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(305028763)株式会社コスモマテリアル (14)
【Fターム(参考)】