説明

簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機

【課題】代掻き作業機で強制的に雑草などを水面上に浮遊分離した直後から、落水待ちなしで湛水状態のまま雑草及び雑草種子の回収作業ができるようにする。
【解決手段】手押しハンドル1、ホルダ2a、ホルダピン2b、雑草フェンス3、ガイドローラ4、滑走板5、調整装置6、透水性処理袋7、取込み口8、固定バンド9、支持棒11、牽引金具12及び取込み装置で構成し、圃場において組み立て、または解体し、人力、またトラクタによって水田雑草及び雑草種子を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湛水状態の水田において、雑草及び雑草種子の回収を主目的とする簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湛水状態の水田において代掻き直後から、水面上に浮遊分離している雑草及び雑草種子を効率よく回収する為の安価で簡便な機械装置がなかった。例えば、目的及び使用環境の異なる海上、または河川で油等の浮遊物を回収する装置のものがある。
【特許文献1】特開2000−126763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
解決しようとする問題点は、水面上に浮遊分離している雑草及び雑草種子は、圃場の排水口から水と一緒に流して回収処理するのが簡便である。しかし、代掻き直後の水は、土壌濁水状態にある為、河川の環境保全を考慮した場合、一旦その濁水を泥土と水に分離させてから排水する必要がある。このため、土水分離の為の沈澱期間を要することとなり、作業の中断を余儀なくされるという問題があった。
【0004】
また、水田に浮遊している雑草及び雑草種子は、微風においてもその影響を受け、一方の片隅に偏って団塊状に浮遊する。したがって、その雑草及び雑草種子が排水口から離れた位置に存在した場合、回収処理する作業が難しく、必要以上に時間が掛かるという問題があった。
【0005】
更にまた、水深が深い場合の回収作業において、人力による手押し、また牽引に大きな労力を必要とすることから、水田の湛水状態での水深を調整することは、必須であるが、落水にたよる以外に手段はないため長時間を必要とした。また降雨及び風によっても水深が大きく変動してしまい、常に水位が一定しないという問題も指摘される。
【0006】
本発明は、このような諸問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明装置はコンパクトに格納でき、搬送・組み立ても簡便にできるようにしたもので、代掻き直後の濁水が沈澱するまでの待ち時間や落水の待ち時間を要せず、また水深にも影響されることなく、回収処理作業を速やかに実施できるようにするものである。また回収した雑草及び雑草種子をコンパクトな袋に収納して能率的に収集・搬送できるようにしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機は、湛水状態の水田において、手押しハンドル、ホルダ、ホルダピン、滑走板、雑草フェンス、ガイドローラ、調整装置、透水性処理袋、取込み口、固定バンド及び支持棒で構成して組み立て使用するもので、左右の滑走板及び雑草フェンスによる組み合わせがV字型の配設であって、手押し、または牽引によって雑草及び雑草種子を回収する構成であることを特徴とする。
【0008】
上記によると、本体の発明品は作業時点で組み立て、格納及び搬送の時に解体して使用してもよい。また人力による手押し及びロープまたはトラクタによる牽引を推進力として、V字型の雑草フェンスに絞り込まれた雑草及び雑草種子が一点に流れ込み、備え付けの1個の透水性処理袋に回収される。満杯になったら畦畔などに配置し、その作業を繰返しながら回収する。
【0009】
請求項2記載の簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機は、前記請求項1において、駆動羽根、掻き込み羽根及び歯車による雑草及び雑草種子取込み装置が取込み口に備えてある構成であることを特徴とする。
【0010】
上記によると、本体の推進によって駆動羽根が土壌から回転する力を歯車に伝達し、2個の歯車調整によって回転数が、低速または高速のいずれかに設定されて掻き込み羽根を回転する。掻き込み羽根は、雑草及び雑草種子を強制的に処理袋へ掻き込んで回収する。
【0011】
請求項3記載の簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機は、前記請求項1において、調整装置によって水深に応じた雑草フェンスの高さが調整できる構成であることを特徴とする。
【0012】
上記によると、回収作業において、水深が深いほど水の抵抗を受けると同時に、押し寄せによる反動の水量が多くなって雑草及び雑草種子の団塊が拡散してしまう。それゆえ、水面上の雑草及び雑草種子が、雑草フェンスの反動による水量を抑えるべき適切な高さに設定して回収する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載による発明によれば、短時間で組み立て、または解体ができ、格納が小面積の場所で納まり、搬送も交通上安全である。また代掻き作業直後から、湛水状態で雑草及び雑草種子の回収作業の開始ができる。
【0014】
また、その作業において落水を必要としないメリットは、雑草及び雑草種子混入水及び濁水の流出がないこと、そして用水路及び排水路と連係している河川の汚濁防止の観点から環境保全にも貢献するという点である。
【0015】
請求項2記載による発明によれば、強制的に雑草及び雑草種子を取込んで処理することによって能率的な作業を可能とし、また処理袋をスムーズに満杯にすることができる。
【0016】
請求項3記載による発明によれば、水深の影響を受けること無く、また水量の多い場合にも落水待ちして水深を調整することなく、雑草及び雑草種子の回収作業ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る優れた簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機の実施の形態を図1から図5を参照にして説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明装置の実施例の正面図であって、図2は同じく平面図、図3は同じく側面図、また図4及び5は牽引の説明図である。
【0019】
本発明装置の組み立て手順を説明すると、例えば現場で、圃場の水深を確認した後、滑走板5に長さ90センチの雑草フェンス3は、高さ調整できる2箇所の調整装置6で固定し、その2個を左右V字型に配設する。次に長さ120センチの手押しハンドル1を左右のホルダ2aへ差し込み、ホルダピン2bで左右を留める。
【0020】
その次に、雑草及び雑草種子が一点に絞られて流れ込んでくるV字型接点端部に、取込み口8と雑草フェンス3を図示していないネジで固定する。次に、大きさが(幅)35×(長さ)70センチの透水性処理袋7を取込み口8に当て込んでから固定バンド9で押さえ込む。これで組み立てが完了し、通常の圃場での実施作業が可能な状態である。
【0021】
そこで圃場の水深が5センチ以上と深い場合の対応として、滑走板5の2箇所に固定されてある調整装置6において、水深によって取り付け高さが2段選択できるようになっているので、ほ場の水深条件に適切と思われる位置に設定し、雑草フェンス3をネジで固定する。
【0022】
続いて、取込み口8に備えられた取込み装置は、推進によって駆動羽根10aとその端部に設置の歯車10cが、土壌から回転する力を受けて、隣合わせの歯車10cと一体に設置の掻き込み羽根10bに伝達されて回転する。大きさの異なる2個の歯車10cを交換することによって低速、または高速による掻き込み羽根10bの回転設定ができる。それによって流れ込む雑草及び雑草種子を弛まなく透水性処理袋7へ強制的に押込んで満杯にする。
【0023】
回収作業中、透水性処理袋7が満杯になったら、手押しハンドル1の箇所に具備されてある支持棒11で本体が倒れないように支えた後、固定バンド9を解除し、透水性処理袋7を取り外し、図示していない紐で密封して、畦畔に配置する。再び、新たに透水性処理袋7を取込み口8に当て込んでから固定バンド9で押さえ込み、その後支持棒11を元に戻して収め、再び、この動作を繰返し回収作業を行う。
【0024】
また、透水性処理袋7による目的別の雑草及び雑草種子回収方法として、例えば、最初の回収作業の時に、目の粗い透水性処理袋7を用いて、浮遊している切り稾、発芽及び成長した雑草を回収して一巡した後、今度は目の細かい透水性処理袋7を用いて、主に雑草種子の回収を目的に行うことにより効果的な回収作業を可能とする。
【0025】
図4及び図5は、牽引を示している。人力、またはトラクタによって、当該機を牽引して作業をする場合、2ケ所のホルダ2aのピン2bを外して手押しハンドル1を取除き、代わりに雑草フェンス3の端部に具備しているそれぞれの牽引金具11に、ロープを取付けて牽引しながら回収作業ができることも兼ね備えてあることを示す。
【0026】
回収作業を終了し、本体を解体する場合は、先述の組み立て手順と逆の手順によって短時間でできる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
有機栽培米の生産において、除草剤を使用しない除草方法の代替手段としての活躍が期待される。また河川の除草剤汚染が進んでいる中、除草剤使用の削減、または使用しないコメ生産農家が多くなることは環境保全に対する貢献が大きい。そのうえ我が国は、水道水の水源を、河川に求める公共団体が多いので、農業用排水路と連係する河川に与える農薬汚染の影響は大きく、除草剤削減の重要性が改めて問われている。したがって、除草剤を使用しない除草方法の推進と普及は、農家のみならず社会の要請でもある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明装置の実施方法を示した正面図である。(実施例1)
【図2】同、実施方法を示した平面図である。(実施例2)
【図3】同、実施方法を示した側面図である。(実施例3)
【図4】同、人力による牽引の実施方法を示した説明図である。(実施例4)
【図5】同、トラクタによる牽引の実施方法を示した説明図である。(実施例5)
【符号の説明】
【0029】
1 手押しハンドル
2a ホルダ
2b ホルダピン
3 雑草フェンス
4 ガイドローラ
5 滑走板
6 調整装置
7 透水性処理袋
8 取込み口
9 固定バンド
10a 駆動羽根
10b 掻き込み羽根
10c 歯車
11 支持棒
12 牽引金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湛水状態の水田において、手押しハンドル、ホルダ、ホルダピン、滑走板、雑草フェンス、ガイドローラ、調整装置、透水性処理袋、取込み口、固定バンド、支持棒及び牽引金具で構成して組み立て使用するもので、左右の滑走板及び雑草フェンスによる組み合わせがV字型の配設であって、手押し、または牽引によって雑草及び雑草種子を回収することを特徴とする簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機。
【請求項2】
前記請求項1において、駆動羽根、掻き込み羽根及び歯車による雑草及び雑草種子取込み装置が取込み口に備えてあることを特徴とする簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機。
【請求項3】
前記請求項1において、調整装置によって水深に応じた雑草フェンスの高さが調整できることを特徴とする簡便組立式V字型水田雑草及び雑草種子回収処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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