簡易剥離可能な剥離シートを備えた貼付剤
【課題】 左右に引張るだけで剥離シートのみが分断される貼付剤において、剥離シートが剥がしやすい貼付剤を提供すること。
【解決手段】 本発明は、伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤に関する。
【解決手段】 本発明は、伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤に関する。更に詳しくは、高齢者でも手を汚すことなく、またパップ剤や硬膏剤等の貼付剤にシワがよったりすることなく、きれいに簡単に患部に貼着することができる利便性に優れた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が進むと共に、事務の合理化で各種コンピュータが利用されその結果、腰や肩、膝、肘等に痛みを訴える人が増加する傾向にあり、その対症療法として湿布剤や硬膏剤等が広く利用されている。一般に、湿布剤や硬膏剤等の貼付剤は、支持体、膏体および剥離シートが積層された構造になっているが、使用時に剥離シートを剥がすことが困難であり、とくに使用頻度の高い高齢者にとって問題があった。
これらを改善するため、例えば、2枚の剥離シートを貼付剤の中央部で合わせ、その合わせ目から折り曲げ、プルタブ部分を設けることにより、剥離シートの剥離を容易にした貼付剤(特許文献1)や、剥離シートに波形や鋸刃形などの山部と谷部とからなる形状に切れ込み線を設け、貼付剤全体を折り曲げることによって該山部が把持部となり、剥離シートの剥離を容易にした貼付剤(特許文献2)が挙げられる。前者の貼付剤は、プルタブ部分の形成にコストがかかり、また形成されたプルタブが引っかかりとなるため、取扱いに注意が必要であった。また、後者の貼付剤は、剥離シートが貼付剤を折り曲げたときに剥離する程度の剛性を有している必要があり、剥離シートの材質に一定の制約を伴っていた。
【0003】
一方、消毒パッドを有する絆創膏の分野ではあるが、破線状の切込みを施した1枚の剥離用薄板を用い、これを左右に引っ張り2枚に分断して用いる救急絆創膏が知られている(特許文献3)。しかし、この分断した剥離用薄板を剥離するには、救急絆創膏自体を湾曲させるなどの動作や手の持ち替えが必要であり、必ずしも使用性(貼り易さ)に優れたものとはいえない。
そして貼付剤の分野においては、左右に引っ張るだけで剥離シートのみを分断できる使用性(貼り易さ)に優れた貼付剤(特許文献4)が知られているが、より優れた使用性(貼り易さ)を追い求める高齢者を中心とする消費者のニーズはますます高度化し、より簡便な剥離作業を可能にする、より高機能な貼付剤の提供が求められている。
【特許文献1】特表平7−500751号公報
【特許文献2】実開平1−165023号公報
【特許文献3】実開昭50−133797号公報
【特許文献4】特開平8−112305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、従来の左右に引っ張って剥離シートのみを分断する貼付剤において、さらに使用性(貼り易さ)に優れ、剥離シートを剥がす作業が容易な貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、剥離シートの分断される位置の近傍に、貼付剤を左右に引張ったときに開口する切り込み部を1または2以上設けておくと、分断された剥離シートがきれいにめくれ上がることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、切り込み部がT字状である、前記の貼付剤に関する。
また本発明は、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されてなる、前記の貼付剤に関する。
さらに本発明は、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される、前記の貼付剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記の構成を採用することにより、剥離シートや支持体の端を爪で探る等の剥離開始作業を要することなく、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートが分断されるとともに、切り込み部の存在により、分断された剥離シートの端部が良好にめくれ上がるため、剥離シートを摘んで剥がす作業が極めて容易となる。しかも良好なめくれ上がりにより、膏体の一部がより広く露出されるため、このより広く露出した膏体の露出部を患部に直接あてて、貼付剤を持ち替えずに貼着する作業(いわゆるワンタッチ貼着)がより一層容易になる。
さらに、貼付剤を左右に引っ張り、手を持ち替えずにワンタッチで患部に貼着する使用法を剥離シートおよび/または支持体に明示することにより、貼付剤の使用性(貼り易さ)をより高めることができ、貼付剤をさらに高機能なものとすることができる。
本発明の貼付剤を左右に引張った際、剥離シートがうまくめくれ上がるのは、まず剥離シートが分断部で分断されると同時に切り込み部において開口が形成され、該切り込み部から空気が剥離シートと膏体との間に入り込み、この空気がめくり上がりを助長するものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において分断部とは、貼付剤を左右に引っ張った際に剥離シートが分断される部位をいう。これは剥離シートの略中央部や周辺部等の所望の位置に設けることができる。本発明の分断部は、典型的には、いわゆるハーフカットなどとも称される剥離シートを貫通せずに薄くした薄肉切断部、所定間隔に剥離シートを切り込んだミシン目状切断部、その他弱化線などといわれるもの、さらには剥離シートの端部にI字状やV字状などに形成した切り欠き(ノッチ)などが挙げられる。この場合、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される。さらに本発明における剥離シートは、完全に分断された2枚の剥離シートからなる態様をも含むが、貼付剤の保形性、薬効成分の蒸散防止などの観点から、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであるものが好ましい。
【0009】
分断部を薄肉切断部やミシン目状切断部とした場合、剥離シートが分断されるように、略中央部や周辺部等に剥離シートを横断するように設けられ、該分断部の形状は、S字状、波形状、鋸刃形状等の形状、さらに例えば、分断部全体が鋸刃形状で、該鋸刃の各刃にあたる部分がさらに鋸刃形状や波形状であるなど、前記の形状を組合せたものでもよい。とくに山部と谷部とを形成してなるS字状、波形状、鋸刃形状等が好ましい。ある山部とそれに隣接する山部との間の距離(ストローク)が比較的長いものの場合(ストローク数が少ない場合)、剥離シートの分断後に形成される切片が大きくつまみやすい。
【0010】
本発明において切り込み部とは、貼付剤を引っ張ったときに開口し、この開口部が剥離シートのめくれ上がりに寄与する形状であれば、とくに限定されないが、典型的には、直線状、T字状、V字状、ハの字状等が挙げられる。また全ての切り込み部が同じ形状である必要はなく、複数の形状の切り込み部が組み合わされていてもよい。とくに、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されていることが好ましい。
【0011】
前記切り込み部は、分断部の近傍に1または2以上形成され、貼付剤の未使用時においては閉じた状態であることが好ましい。貼付剤を左右に引張った際に開口部を形成するものであればどのような形状でもよいが、典型的には、剥離シートを貫通した切り込み、ハーフカット状の薄肉部、ミシン目状切り込み部などが挙げられる。
【0012】
本発明の貼付剤は、支持体、膏体および剥離シートから構成されているが、これらは以下に述べるとおり、従来から用いられているものを利用できる。
【0013】
すなわち、本発明の貼付剤にかかる剥離シートとしては、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム、合成樹脂や合成紙、合成繊維等にシリコン加工したシリコン加工紙、アルミ箔、クラフト紙にポリエチレン等をラミネートしたラミネート加工紙等の無色または着色したものが用いられる。
【0014】
前記剥離シートの厚みは、10μm〜75μm、好ましくは12μm〜40μm、更に好ましくは15μm〜35μmの範囲で形成されるのが好ましい。剥離シートの厚みが小さすぎると剥離シートが膏体に絡んだり、また剥離シートが薄くて滑り易いため摘みにくかったり、更に、製造に際して剥離シートが直ぐに分断されてしまい、作業性等が低下したり、また、膏体上に剥離シートを貼着する場合、剥離シートに皺が寄り易くなる傾向にある。また、剥離シートの厚みが大きすぎると剥離等に際して剥離シートが摘み易くなるものの、分断が困難となり、また、製造に際して原反シートを切断することが困難となり、作業性等が低下する傾向にある。
剥離シートの引張り強度は、10g/cm〜140g/cm、好ましくは20g/cm〜100g/cm、更に好ましくは30g/cm〜60g/cmの範囲とするのが好ましい。剥離シートの引張り強度が小さすぎると製造に際して、剥離シートが途中で切断してしまい、連続して膏体上に剥離シートを貼着することができなくなり、またパップ剤や硬膏剤等の貼付剤を包装袋の中に入れる場合にも、容易に剥離シートが分断され、更に歩留りが低下する傾向が現れやすい。また、引張り強度が大きすぎると使用するに際して容易に剥離シートを分断することが困難となり、使用性が低下する傾向にある。
なお、引っ張り強度の測定は、例えば、引っ張り試験機AGS−100B(島津製作所製)を用い、標点間距離100mmを持って剥離シートを幅50mmのチャックで挟持させ、100mm/分で引張り、破断時の荷重を測定して行なうことができる。
さらに、剥離シートの厚み10μm〜75μm、引張り強度10g/cm〜140g/cmとした場合、上記の作業性、使用性のほか、剥離シートの弾力や剥離シートに設けた切り込み部の作用とも相俟って、めくれ上がりが良好となり膏体をより広く露出することができる。
また、剥離シートの左右部分に引き裂き方法を明確にするため、矢印等の図形や文字、記号等の表示部を設けてもよく、また、着色等してもよい。このような表示や着色などによって、例えば、貼付剤を左右に引っ張り、手を持ち替えずにワンタッチで患部に貼着する方法を剥離シートに明示することにより、貼付剤の使用方法を確認しながら使用することができるなど、より使用性(貼り易さ)が高まる。なお、前記の表示部は支持体に設けてもよい。
【0015】
剥離シートは、さらにエンボス加工されていてもよく、典型的には、剥離シートの全面または局部的な箇所、例えば分断部を引き裂く際に手で摘み易い箇所、引き裂いた剥離シートを剥離する際に摘み易い箇所等にエンボスが形成される。エンボスの形状は、滑ることなく手で摘み易くするものであればとくに限定されるものではないが、例えば、格子状、丸形状、角形状、星形状等その他種々の形状に形成することができる。
剥離シートにエンボス加工された剥離シートでは部分的に強度が異なるために、めくれ上がりが良好となり、さらに切り込み部を設けた場合、エンボス加工の凹凸と切り込み部とが相俟って、より変化に富んだ良好なめくれ上がりとなって、膏体面の露出がより大きくなり、剥離シートを摘む際に利便性がさらに高まる。さらに平面的でないめくれ上がりにより、剥離シートが膏体へ再付着しにくくなるという利点もある。
【0016】
本発明の貼付剤にかかる支持体としては、貼付剤を左右に引張った際、剥離シートが分断されてもなお分断されない支持体であればよい。また、剥離シートとして分断部を有する1枚の剥離シートを用いる場合は、該貼付剤を左右に引っ張ったときに剥離シートのみが分断部で分断される程度に剥離シートと前記支持体の伸縮率の差がなければならないが、分断時の剥離シートの良好なめくれ上がりのためには、その差は0.3%以上であることが好ましい。
支持体としては、例えば、織布、編布、不織布、不織紙等の伸縮性のもの等が挙げられる。具体的な材料としては、紙、綿、大麻、黄麻等の靱皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等のセルロース繊維、羊毛等の獣毛繊維や、絹繊維、羽毛繊維等のタンパク繊維等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維や再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維やプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール(PBT)繊維、ポリイミド繊維等が利用できる。
前記支持体は、厚さ、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質や貼付時の感触、患部の密閉性、薬物の支持体への移行等を考慮して適宜選択される。
【0017】
本発明の貼付剤にかかる膏体は、基材に薬物を含有または付着等させることにより、外用のパップ剤や硬膏剤等の貼付剤として有効に利用させるものである。膏体は、皮膚への薬効効果が十分得られるように水分を含有し、かつ粘着性を有し、常温またはそれ以上の温度においても軟化し膏体が皮膚に残らない適度な凝集性を有するように形成される。
【0018】
また膏体は、増粘剤や湿潤剤等を用いて調製されるが、増粘剤としては、水分を30%〜80%安定に保持でき、かつ保水性を有することが望ましい。この具体例としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンサンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子等が好適に用いられる。
【0019】
とくに、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるからである。更に、平均重合度20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。平均重合度が20000より小さくなるにつれ増粘効果が乏しくなり十分なゲル強度が得られなくなる傾向が現れだし、平均重合度が70000より大きくなるにつれ増粘効果が強すぎ作業性が低下する傾向にある。また、前記水溶性高分子を2種類以上併用することにより、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成し、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0020】
湿潤剤として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール等や、充填剤として、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等を添加してもよい。また、溶解補助剤または吸収促進剤として、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等や、薬効補助剤として、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等を添加してもよい。更に、必要に応じて、安定化剤や抗酸化剤、乳化剤等を添加してもよい。
【0021】
その他必要に応じて、架橋剤や重合剤等を添加してもよい。膏体を強固にするとともに保水性を持たせることができる。この架橋剤や重合剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤にポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩を適用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物、Ca、Mg、Al等の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物等の多価金属化合物等が好適に用いられる。また、増粘剤にポリビニルアルコールを適用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の化合物等の錯化物等が好適に用いられる。
【0022】
また、増粘剤にポリビニルピロリドンを適用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物またはそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸およびその誘導体)等が好適に用いられる。また、増粘剤にポリエチレンオキサイドを適用した場合は、パーキオサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を適用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等が好適に用いられる。増粘剤にゼラチンを適用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン等のアルデヒド類、グリオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類等が好適に用いられる。
【0023】
また、増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを適用した場合、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウム等の多価金属塩が添加されるのが好ましい。とくに、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。架橋反応が促進される。 架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(または水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量が好ましい。多価金属塩の濃度が低すぎると反応が遅すぎてゲル強度が低くなる傾向が現れだし、多価金属塩の濃度が高すぎると反応が速すぎてゲル化が不均一になり作業性が低下する傾向にある。
【0024】
パップ剤としては、皮膚密着性がよいこと、有効成分の皮膚吸収を高めること、水分を可及的に多く含有していること、膏体中の水分が蒸発するとき皮膚から熱を奪うが、この発熱量が清涼感を与え、また角質層が内部から蒸散してくる水分子によって水和され、薬物の吸収が促進されること、常温またはその近辺の温度でもだれないこと、剥がす時に痛くなく汚れが残らないこと、べとつかないこと等が挙げられる。このため、膏体は、増粘剤5重量%〜20重量%、好ましくは10重量%〜15重量%、湿潤剤5重量%〜40重量%、充填剤20重量%以下、水10重量%〜80重量%、溶解補助剤0〜8重量%、薬物5重量%以下、好ましくは0.5重量%〜5重量%とされるのが好ましい。
【0025】
また、硬膏剤等に適用する場合、この基材としては、アクリル系共重合体、A−B−A型ブロック共重合体、脂環族系石油樹脂、軟化剤を有するものが好適に用いられる。更にA−B型ブロック共重合体やその他のポリブテンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー、NBRポリイソブチレン、ポリアルキアクリレート、合成イソプレン等の熱可塑性弾性剤等や、テルペン系樹脂、石油系樹脂、ロジン、水添ロジン、ロジン・水添ロジンエステルなどの粘着性付与剤、流動パラフィン、オリーブ油、大豆油、牛脂、トン脂等の動植物油、ポリブテン、液状ポリイソブチレン、低級イソプレン、ワックスなどの接着力・保持力調整剤、酸化チタン、酸化亜鉛、メタケイ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの充填剤等が配合される。
【0026】
A−B−A型ブロック共重合体としては、モノビニル置換芳香族化合物Aと共役ジオレフィン共重合体Bとのブロック共重合体が好適に用いられる。具体的にはシェル化学社製のカリフレックスTR−1101、カリフレックスTR−1107、カリフレックスTR−1111等、フィリップペトロリアム製のソルプレン418やソルプレン311等であり、その配合量は膏体組成物中10〜40重量部であり、好ましくは15〜30重量部である。
【0027】
本発明の貼付剤に含有し得る薬物としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド、ハッカ油、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、スリンダク、トルメチン、ロベンザリット、ペニシラミン、フェンプフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、チアプロフェン、スプロフェン、フェルビナク、ケトロラク、オキサプロジン、エトドラク、ザルトプロフィン、ピロキシカム、ペンタゾシン、塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール等およびそのエステル誘導体または塩より選ばれた少なくとも1種の非ステロイド系抗炎症薬や、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、フルオシニド、フルオシノロンアセトニド、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、吉草酸ベタメタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾン、コハク酸デキサメタゾン、プレドニゾロン21−(2E、6E)ファルネシート、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、アムシノニド、吉草酸デキサメタゾン、ハルシノニド、ブテソニド、プロピオン酸アルクロメタゾン等のステロイド系抗炎症薬等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
薬物は、必要に応じて2種類以上併用することも可能である。また、これらの薬物は必要に応じてエステル体に誘導された化合物、アミド体に誘導された化合物、アセタール体に誘導された化合物、あるいは医学的に許容される無機塩、有機塩の形態でもって膏体に含有または付着されてもよい。薬物の量は、患者に適用した際にあらかじめ設定された有効量を患部に適用できるように、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤の種類、用途等に応じて適宜選択される。
なお、本発明の貼付剤において、薬物を全く含まずに冷湿布等として用いることも可能である。
【0029】
以下に、本発明の貼付剤を図面を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら図面に限定されるものではない。
本発明の貼付剤は、典型的には、図1に示すとおりの貼付剤である。すなわち、伸縮性を有する支持体2と、前記支持体2の一面の略全面に展着された膏体3と、前記膏体3の全面に貼着された剥離シート4とを備え、左右に引張るだけで前記剥離シート4のみが分断部10で分断される貼付剤1であって、前記分断部10の近傍に複数の切り込み部20を備えている。同図において、分断部10は、鋸刃状のミシン目状切断部で、貼付剤1の略中央部に位置し、ストローク数は3.5である。また剥離シート4の分断後、切片5となる部分に切り込み部20の一部が掛かっている。切り込み部20は、T字状であり、該T字の縦棒が、貼付剤1の左右の引張り方向(図1の左右方向)と平行で、該縦棒の先端が分断部10に向けて配されている。
【0030】
貼付剤1の両端部を把持し、支持体2と共に剥離シート4を左右に引張ると、分断部10で剥離シート4を分断することができる。また、このとき分断部10の近傍に形成した切り込み部20が開口し、該開口から空気が剥離シート4と膏体3との間に入り込み、この空気が剥離シート4の膏体3からの離脱を助長する。また、裂けた切り込み部20が剥離シート4の折れ曲がりを極めて容易にする。そして膏体3がより大きく露出されることから、この露出された膏体3を患部にあてながら、めくれた剥離シート4の切片5をつまみながら剥がし、患部に貼付剤1を貼着する。これにより、従来よりも簡便に、膏体3を大きく露出させ、剥離シート4を容易に剥がすことができ、手を汚すことなく、また貼付剤1にシワがよったりすることはなくきれいに貼着することができる。
【0031】
また本発明の貼付剤には、図2〜8に示す種々の態様が包含される。
図2では、図1の態様と同様、T字状の切り込み部20が、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配置されているが、1つの切片5の内部(鋸刃状の左右の各先端の幅内)に1つの切り込み部20の全体が位置している点で異なる。
【0032】
図3では、直線状の切り込み部20が、切片5の三角形部分の底辺付近に配置されており、貼付剤の左右の引張り方向に対して垂直に配置されている。
図4では、分断部が波型のハーフカットであり、T字状の切り込み部20が図1と同様に配置されている。
【0033】
図5および図6では、分断部がS字状(逆S字)(図5)または鋸刃状(図6)のハーフカットであり、T字状の切り込み部20がT字の縦棒が貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配置されている。
図7では、分断部は直線状と曲線とを組合せた形状をしており、T字状の切り込み部20が配置されている。
図8では、分断部は直線状と鋸刃型とを組合せた形状をしており、T字状の切り込み部20が配置されている。
図5〜8で示した貼付剤では、切片5が比較的大きく形成されるため、剥離シートを剥がす際に把持しやすい。
【0034】
図9〜12で示した貼付剤は、さらなる実施態様を示している。図9では、分断部10の山部の角度が大きく、また、切り込み部20が分断部10の中央線に沿って1列配置され、さらに切片5の中に1列加わるように配置されている。図10では、分断部10の山部の角度が約70〜90度で、分断部10の中央線に平行に2本、垂直に1本の切り込み部20が山部に配置されている。図11および12では、分断部10の中央線に平行に3本の切り込み部20が山部に配置されており、山部の1つの稜線に2箇所の連結がある態様(図11)と1箇所の連結がある態様(図12)である。
【実施例】
【0035】
50〜70歳の健康成人10名に、前記図1〜3の形状および配置の切り込み部を備えた貼付剤の両端を把持し左右に引張ってもらい、そのときの「剥離シートの摘み易さ」および「貼付のし易さ」について、比較例(図1において切り込み部がないもの)と比べてどれだけ好ましいか下記基準にしたがい採点をしてもらった。採点結果の平均値を表1に示す。
【表1】
【0036】
採点基準:
剥離シートの摘み易さ
3:比較例に比べ非常に摘み易い
2:比較例に比べ摘み易い
1:比較例と同程度である
貼付のし易さ
3:比較例に比べ非常に貼付し易い
2:比較例に比べ貼付し易い
1:比較例と同程度である
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤に関し、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤を左右に引張るだけで剥離シートを簡単に分断でき、剥離シートのめくれた部分を患部に貼着するだけで、高齢者でも簡単に手を汚すことなく、かつシワがよったりすることなくきれいに貼着することができる低原価で量産性に適したパップ剤や硬膏剤等の貼付剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図2】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図3】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図4】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図5】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図6】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図7】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図8】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図9】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図10】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図11】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図12】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【符号の説明】
【0039】
1 貼付剤
2 支持体
3 膏体
4 剥離シート
5 切片
10 分断部
20 切り込み部
【技術分野】
【0001】
本発明は、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤に関する。更に詳しくは、高齢者でも手を汚すことなく、またパップ剤や硬膏剤等の貼付剤にシワがよったりすることなく、きれいに簡単に患部に貼着することができる利便性に優れた貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化社会が進むと共に、事務の合理化で各種コンピュータが利用されその結果、腰や肩、膝、肘等に痛みを訴える人が増加する傾向にあり、その対症療法として湿布剤や硬膏剤等が広く利用されている。一般に、湿布剤や硬膏剤等の貼付剤は、支持体、膏体および剥離シートが積層された構造になっているが、使用時に剥離シートを剥がすことが困難であり、とくに使用頻度の高い高齢者にとって問題があった。
これらを改善するため、例えば、2枚の剥離シートを貼付剤の中央部で合わせ、その合わせ目から折り曲げ、プルタブ部分を設けることにより、剥離シートの剥離を容易にした貼付剤(特許文献1)や、剥離シートに波形や鋸刃形などの山部と谷部とからなる形状に切れ込み線を設け、貼付剤全体を折り曲げることによって該山部が把持部となり、剥離シートの剥離を容易にした貼付剤(特許文献2)が挙げられる。前者の貼付剤は、プルタブ部分の形成にコストがかかり、また形成されたプルタブが引っかかりとなるため、取扱いに注意が必要であった。また、後者の貼付剤は、剥離シートが貼付剤を折り曲げたときに剥離する程度の剛性を有している必要があり、剥離シートの材質に一定の制約を伴っていた。
【0003】
一方、消毒パッドを有する絆創膏の分野ではあるが、破線状の切込みを施した1枚の剥離用薄板を用い、これを左右に引っ張り2枚に分断して用いる救急絆創膏が知られている(特許文献3)。しかし、この分断した剥離用薄板を剥離するには、救急絆創膏自体を湾曲させるなどの動作や手の持ち替えが必要であり、必ずしも使用性(貼り易さ)に優れたものとはいえない。
そして貼付剤の分野においては、左右に引っ張るだけで剥離シートのみを分断できる使用性(貼り易さ)に優れた貼付剤(特許文献4)が知られているが、より優れた使用性(貼り易さ)を追い求める高齢者を中心とする消費者のニーズはますます高度化し、より簡便な剥離作業を可能にする、より高機能な貼付剤の提供が求められている。
【特許文献1】特表平7−500751号公報
【特許文献2】実開平1−165023号公報
【特許文献3】実開昭50−133797号公報
【特許文献4】特開平8−112305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって本発明は、従来の左右に引っ張って剥離シートのみを分断する貼付剤において、さらに使用性(貼り易さ)に優れ、剥離シートを剥がす作業が容易な貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、剥離シートの分断される位置の近傍に、貼付剤を左右に引張ったときに開口する切り込み部を1または2以上設けておくと、分断された剥離シートがきれいにめくれ上がることを見出し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤に関する。
さらに本発明は、切り込み部がT字状である、前記の貼付剤に関する。
また本発明は、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されてなる、前記の貼付剤に関する。
さらに本発明は、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される、前記の貼付剤に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、上記の構成を採用することにより、剥離シートや支持体の端を爪で探る等の剥離開始作業を要することなく、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートが分断されるとともに、切り込み部の存在により、分断された剥離シートの端部が良好にめくれ上がるため、剥離シートを摘んで剥がす作業が極めて容易となる。しかも良好なめくれ上がりにより、膏体の一部がより広く露出されるため、このより広く露出した膏体の露出部を患部に直接あてて、貼付剤を持ち替えずに貼着する作業(いわゆるワンタッチ貼着)がより一層容易になる。
さらに、貼付剤を左右に引っ張り、手を持ち替えずにワンタッチで患部に貼着する使用法を剥離シートおよび/または支持体に明示することにより、貼付剤の使用性(貼り易さ)をより高めることができ、貼付剤をさらに高機能なものとすることができる。
本発明の貼付剤を左右に引張った際、剥離シートがうまくめくれ上がるのは、まず剥離シートが分断部で分断されると同時に切り込み部において開口が形成され、該切り込み部から空気が剥離シートと膏体との間に入り込み、この空気がめくり上がりを助長するものと考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において分断部とは、貼付剤を左右に引っ張った際に剥離シートが分断される部位をいう。これは剥離シートの略中央部や周辺部等の所望の位置に設けることができる。本発明の分断部は、典型的には、いわゆるハーフカットなどとも称される剥離シートを貫通せずに薄くした薄肉切断部、所定間隔に剥離シートを切り込んだミシン目状切断部、その他弱化線などといわれるもの、さらには剥離シートの端部にI字状やV字状などに形成した切り欠き(ノッチ)などが挙げられる。この場合、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される。さらに本発明における剥離シートは、完全に分断された2枚の剥離シートからなる態様をも含むが、貼付剤の保形性、薬効成分の蒸散防止などの観点から、剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであるものが好ましい。
【0009】
分断部を薄肉切断部やミシン目状切断部とした場合、剥離シートが分断されるように、略中央部や周辺部等に剥離シートを横断するように設けられ、該分断部の形状は、S字状、波形状、鋸刃形状等の形状、さらに例えば、分断部全体が鋸刃形状で、該鋸刃の各刃にあたる部分がさらに鋸刃形状や波形状であるなど、前記の形状を組合せたものでもよい。とくに山部と谷部とを形成してなるS字状、波形状、鋸刃形状等が好ましい。ある山部とそれに隣接する山部との間の距離(ストローク)が比較的長いものの場合(ストローク数が少ない場合)、剥離シートの分断後に形成される切片が大きくつまみやすい。
【0010】
本発明において切り込み部とは、貼付剤を引っ張ったときに開口し、この開口部が剥離シートのめくれ上がりに寄与する形状であれば、とくに限定されないが、典型的には、直線状、T字状、V字状、ハの字状等が挙げられる。また全ての切り込み部が同じ形状である必要はなく、複数の形状の切り込み部が組み合わされていてもよい。とくに、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されていることが好ましい。
【0011】
前記切り込み部は、分断部の近傍に1または2以上形成され、貼付剤の未使用時においては閉じた状態であることが好ましい。貼付剤を左右に引張った際に開口部を形成するものであればどのような形状でもよいが、典型的には、剥離シートを貫通した切り込み、ハーフカット状の薄肉部、ミシン目状切り込み部などが挙げられる。
【0012】
本発明の貼付剤は、支持体、膏体および剥離シートから構成されているが、これらは以下に述べるとおり、従来から用いられているものを利用できる。
【0013】
すなわち、本発明の貼付剤にかかる剥離シートとしては、無延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のプラスチックフィルム、合成樹脂や合成紙、合成繊維等にシリコン加工したシリコン加工紙、アルミ箔、クラフト紙にポリエチレン等をラミネートしたラミネート加工紙等の無色または着色したものが用いられる。
【0014】
前記剥離シートの厚みは、10μm〜75μm、好ましくは12μm〜40μm、更に好ましくは15μm〜35μmの範囲で形成されるのが好ましい。剥離シートの厚みが小さすぎると剥離シートが膏体に絡んだり、また剥離シートが薄くて滑り易いため摘みにくかったり、更に、製造に際して剥離シートが直ぐに分断されてしまい、作業性等が低下したり、また、膏体上に剥離シートを貼着する場合、剥離シートに皺が寄り易くなる傾向にある。また、剥離シートの厚みが大きすぎると剥離等に際して剥離シートが摘み易くなるものの、分断が困難となり、また、製造に際して原反シートを切断することが困難となり、作業性等が低下する傾向にある。
剥離シートの引張り強度は、10g/cm〜140g/cm、好ましくは20g/cm〜100g/cm、更に好ましくは30g/cm〜60g/cmの範囲とするのが好ましい。剥離シートの引張り強度が小さすぎると製造に際して、剥離シートが途中で切断してしまい、連続して膏体上に剥離シートを貼着することができなくなり、またパップ剤や硬膏剤等の貼付剤を包装袋の中に入れる場合にも、容易に剥離シートが分断され、更に歩留りが低下する傾向が現れやすい。また、引張り強度が大きすぎると使用するに際して容易に剥離シートを分断することが困難となり、使用性が低下する傾向にある。
なお、引っ張り強度の測定は、例えば、引っ張り試験機AGS−100B(島津製作所製)を用い、標点間距離100mmを持って剥離シートを幅50mmのチャックで挟持させ、100mm/分で引張り、破断時の荷重を測定して行なうことができる。
さらに、剥離シートの厚み10μm〜75μm、引張り強度10g/cm〜140g/cmとした場合、上記の作業性、使用性のほか、剥離シートの弾力や剥離シートに設けた切り込み部の作用とも相俟って、めくれ上がりが良好となり膏体をより広く露出することができる。
また、剥離シートの左右部分に引き裂き方法を明確にするため、矢印等の図形や文字、記号等の表示部を設けてもよく、また、着色等してもよい。このような表示や着色などによって、例えば、貼付剤を左右に引っ張り、手を持ち替えずにワンタッチで患部に貼着する方法を剥離シートに明示することにより、貼付剤の使用方法を確認しながら使用することができるなど、より使用性(貼り易さ)が高まる。なお、前記の表示部は支持体に設けてもよい。
【0015】
剥離シートは、さらにエンボス加工されていてもよく、典型的には、剥離シートの全面または局部的な箇所、例えば分断部を引き裂く際に手で摘み易い箇所、引き裂いた剥離シートを剥離する際に摘み易い箇所等にエンボスが形成される。エンボスの形状は、滑ることなく手で摘み易くするものであればとくに限定されるものではないが、例えば、格子状、丸形状、角形状、星形状等その他種々の形状に形成することができる。
剥離シートにエンボス加工された剥離シートでは部分的に強度が異なるために、めくれ上がりが良好となり、さらに切り込み部を設けた場合、エンボス加工の凹凸と切り込み部とが相俟って、より変化に富んだ良好なめくれ上がりとなって、膏体面の露出がより大きくなり、剥離シートを摘む際に利便性がさらに高まる。さらに平面的でないめくれ上がりにより、剥離シートが膏体へ再付着しにくくなるという利点もある。
【0016】
本発明の貼付剤にかかる支持体としては、貼付剤を左右に引張った際、剥離シートが分断されてもなお分断されない支持体であればよい。また、剥離シートとして分断部を有する1枚の剥離シートを用いる場合は、該貼付剤を左右に引っ張ったときに剥離シートのみが分断部で分断される程度に剥離シートと前記支持体の伸縮率の差がなければならないが、分断時の剥離シートの良好なめくれ上がりのためには、その差は0.3%以上であることが好ましい。
支持体としては、例えば、織布、編布、不織布、不織紙等の伸縮性のもの等が挙げられる。具体的な材料としては、紙、綿、大麻、黄麻等の靱皮繊維、マニラ麻等の葉脈繊維等のセルロース繊維、羊毛等の獣毛繊維や、絹繊維、羽毛繊維等のタンパク繊維等の天然繊維、レーヨン、キュプラ等の再生セルロース繊維や再生タンパク繊維等の再生繊維、酢酸セルロース繊維やプロミックス等の半合成繊維、ナイロンアラミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維等、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ポリビニルアルコール繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリウレタン繊維、ポリオキシメチレン繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリパラフェニレンベンズビスチアゾール(PBT)繊維、ポリイミド繊維等が利用できる。
前記支持体は、厚さ、伸び、引張り強さ、作業性などの物理的性質や貼付時の感触、患部の密閉性、薬物の支持体への移行等を考慮して適宜選択される。
【0017】
本発明の貼付剤にかかる膏体は、基材に薬物を含有または付着等させることにより、外用のパップ剤や硬膏剤等の貼付剤として有効に利用させるものである。膏体は、皮膚への薬効効果が十分得られるように水分を含有し、かつ粘着性を有し、常温またはそれ以上の温度においても軟化し膏体が皮膚に残らない適度な凝集性を有するように形成される。
【0018】
また膏体は、増粘剤や湿潤剤等を用いて調製されるが、増粘剤としては、水分を30%〜80%安定に保持でき、かつ保水性を有することが望ましい。この具体例としては、グァーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、寒天、アラビアガム、トラガカントガム、カラヤガム、ペクチン、澱粉等の植物系、ザンサンガム、アカシアガム等の微生物系、ゼラチン、コラーゲン等の動物系等の天然高分子、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、ジアルデヒドデンプン等のデンプン系等の半合成高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメタクリレート等のビニル系、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル系、その他ポリエチレンオキサイド、メチルビニルエーテル/無水マイレン酸共重合体等の合成高分子等の水溶性高分子等が好適に用いられる。
【0019】
とくに、ポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。ゲル強度が強く、かつ保水性に優れるからである。更に、平均重合度20000〜70000のポリアクリル酸ナトリウムが好ましい。平均重合度が20000より小さくなるにつれ増粘効果が乏しくなり十分なゲル強度が得られなくなる傾向が現れだし、平均重合度が70000より大きくなるにつれ増粘効果が強すぎ作業性が低下する傾向にある。また、前記水溶性高分子を2種類以上併用することにより、例えば、ポリアクリル酸ナトリウムの強イオン高分子と高分子コンプレックスを形成し、より一層ゲル強度の大きい弾性ゲルを得ることができる。
【0020】
湿潤剤として、グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール等や、充填剤として、カオリン、酸化亜鉛、タルク、チタン、ベントナイト、珪酸アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、メタ珪酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等を添加してもよい。また、溶解補助剤または吸収促進剤として、炭酸プロピレン、クロタミトン、l−メントール、ハッカ油、リモネン、ジイソプロピルアジペート等や、薬効補助剤として、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、チモール、ハッカ油、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等を添加してもよい。更に、必要に応じて、安定化剤や抗酸化剤、乳化剤等を添加してもよい。
【0021】
その他必要に応じて、架橋剤や重合剤等を添加してもよい。膏体を強固にするとともに保水性を持たせることができる。この架橋剤や重合剤は、増粘剤等の種類に応じて適宜選択される。例えば、増粘剤にポリアクリル酸またはポリアクリル酸塩を適用した場合は、分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する化合物、Ca、Mg、Al等の塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、ステアリン酸塩等の有機酸塩、酸化亜鉛、無水珪酸等の酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物等の多価金属化合物等が好適に用いられる。また、増粘剤にポリビニルアルコールを適用した場合は、アジピン酸、チオグリコール酸、エポキシ化合物(エピクロルヒドリン)、アルデヒド類、N−メチロール化合物、Al、Ti、Zr、Sn、V、Cu、B、Cr等の化合物等の錯化物等が好適に用いられる。
【0022】
また、増粘剤にポリビニルピロリドンを適用した場合は、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリアシッド化合物またはそのアルカリ金属塩(ポリアクリル酸やタンニン酸およびその誘導体)等が好適に用いられる。また、増粘剤にポリエチレンオキサイドを適用した場合は、パーキオサイド、ポリスルホンアザイド等が好適に用いられる。また、増粘剤にメチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体を適用した場合は、多官能ヒドロキシ化合物、ポリアミン、ヨウ素、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、鉄、水銀、鉛塩等が好適に用いられる。増粘剤にゼラチンを適用した場合は、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ジアルデヒドデンプン等のアルデヒド類、グリオキサール、ブタジエンオキシド等のジエポキシド類、ジビニルケトン等のジケトン類、ジイソシアネート類等が好適に用いられる。
【0023】
また、増粘剤にポリアクリル酸ナトリウムを適用した場合、架橋剤として、水酸化リチウム、水酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、ほう酸ナトリウム等の多価金属塩が添加されるのが好ましい。とくに、亜鉛塩、アルミニウム塩が好ましい。架橋反応が促進される。 架橋剤として添加される多価金属塩の濃度は、増粘剤(または水溶性高分子)1当量に対し0.5〜1.5当量が好ましい。多価金属塩の濃度が低すぎると反応が遅すぎてゲル強度が低くなる傾向が現れだし、多価金属塩の濃度が高すぎると反応が速すぎてゲル化が不均一になり作業性が低下する傾向にある。
【0024】
パップ剤としては、皮膚密着性がよいこと、有効成分の皮膚吸収を高めること、水分を可及的に多く含有していること、膏体中の水分が蒸発するとき皮膚から熱を奪うが、この発熱量が清涼感を与え、また角質層が内部から蒸散してくる水分子によって水和され、薬物の吸収が促進されること、常温またはその近辺の温度でもだれないこと、剥がす時に痛くなく汚れが残らないこと、べとつかないこと等が挙げられる。このため、膏体は、増粘剤5重量%〜20重量%、好ましくは10重量%〜15重量%、湿潤剤5重量%〜40重量%、充填剤20重量%以下、水10重量%〜80重量%、溶解補助剤0〜8重量%、薬物5重量%以下、好ましくは0.5重量%〜5重量%とされるのが好ましい。
【0025】
また、硬膏剤等に適用する場合、この基材としては、アクリル系共重合体、A−B−A型ブロック共重合体、脂環族系石油樹脂、軟化剤を有するものが好適に用いられる。更にA−B型ブロック共重合体やその他のポリブテンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、天然ゴム、スチレン−ブタジエンコポリマー、NBRポリイソブチレン、ポリアルキアクリレート、合成イソプレン等の熱可塑性弾性剤等や、テルペン系樹脂、石油系樹脂、ロジン、水添ロジン、ロジン・水添ロジンエステルなどの粘着性付与剤、流動パラフィン、オリーブ油、大豆油、牛脂、トン脂等の動植物油、ポリブテン、液状ポリイソブチレン、低級イソプレン、ワックスなどの接着力・保持力調整剤、酸化チタン、酸化亜鉛、メタケイ酸アルミニウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウムなどの充填剤等が配合される。
【0026】
A−B−A型ブロック共重合体としては、モノビニル置換芳香族化合物Aと共役ジオレフィン共重合体Bとのブロック共重合体が好適に用いられる。具体的にはシェル化学社製のカリフレックスTR−1101、カリフレックスTR−1107、カリフレックスTR−1111等、フィリップペトロリアム製のソルプレン418やソルプレン311等であり、その配合量は膏体組成物中10〜40重量部であり、好ましくは15〜30重量部である。
【0027】
本発明の貼付剤に含有し得る薬物としては、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、l−メントール、トウガラシエキス、ノニル酸ワニリルアミド、ハッカ油、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、スリンダク、トルメチン、ロベンザリット、ペニシラミン、フェンプフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、チアプロフェン、スプロフェン、フェルビナク、ケトロラク、オキサプロジン、エトドラク、ザルトプロフィン、ピロキシカム、ペンタゾシン、塩酸ブプレノルフィン、酒石酸ブトルファノール等およびそのエステル誘導体または塩より選ばれた少なくとも1種の非ステロイド系抗炎症薬や、プレドニゾロン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、ベタメタゾン、フルオシニド、フルオシノロンアセトニド、吉草酸酢酸プレドニゾロン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸ジフルコルトロン、ジフルプレドナート、吉草酸ベタメタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ベタメタゾン、プロピオン酸クロベタゾン、コハク酸デキサメタゾン、プレドニゾロン21−(2E、6E)ファルネシート、吉草酸ヒドロコルチゾン、酢酸ジフロラゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、アムシノニド、吉草酸デキサメタゾン、ハルシノニド、ブテソニド、プロピオン酸アルクロメタゾン等のステロイド系抗炎症薬等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
薬物は、必要に応じて2種類以上併用することも可能である。また、これらの薬物は必要に応じてエステル体に誘導された化合物、アミド体に誘導された化合物、アセタール体に誘導された化合物、あるいは医学的に許容される無機塩、有機塩の形態でもって膏体に含有または付着されてもよい。薬物の量は、患者に適用した際にあらかじめ設定された有効量を患部に適用できるように、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤の種類、用途等に応じて適宜選択される。
なお、本発明の貼付剤において、薬物を全く含まずに冷湿布等として用いることも可能である。
【0029】
以下に、本発明の貼付剤を図面を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明はこれら図面に限定されるものではない。
本発明の貼付剤は、典型的には、図1に示すとおりの貼付剤である。すなわち、伸縮性を有する支持体2と、前記支持体2の一面の略全面に展着された膏体3と、前記膏体3の全面に貼着された剥離シート4とを備え、左右に引張るだけで前記剥離シート4のみが分断部10で分断される貼付剤1であって、前記分断部10の近傍に複数の切り込み部20を備えている。同図において、分断部10は、鋸刃状のミシン目状切断部で、貼付剤1の略中央部に位置し、ストローク数は3.5である。また剥離シート4の分断後、切片5となる部分に切り込み部20の一部が掛かっている。切り込み部20は、T字状であり、該T字の縦棒が、貼付剤1の左右の引張り方向(図1の左右方向)と平行で、該縦棒の先端が分断部10に向けて配されている。
【0030】
貼付剤1の両端部を把持し、支持体2と共に剥離シート4を左右に引張ると、分断部10で剥離シート4を分断することができる。また、このとき分断部10の近傍に形成した切り込み部20が開口し、該開口から空気が剥離シート4と膏体3との間に入り込み、この空気が剥離シート4の膏体3からの離脱を助長する。また、裂けた切り込み部20が剥離シート4の折れ曲がりを極めて容易にする。そして膏体3がより大きく露出されることから、この露出された膏体3を患部にあてながら、めくれた剥離シート4の切片5をつまみながら剥がし、患部に貼付剤1を貼着する。これにより、従来よりも簡便に、膏体3を大きく露出させ、剥離シート4を容易に剥がすことができ、手を汚すことなく、また貼付剤1にシワがよったりすることはなくきれいに貼着することができる。
【0031】
また本発明の貼付剤には、図2〜8に示す種々の態様が包含される。
図2では、図1の態様と同様、T字状の切り込み部20が、T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配置されているが、1つの切片5の内部(鋸刃状の左右の各先端の幅内)に1つの切り込み部20の全体が位置している点で異なる。
【0032】
図3では、直線状の切り込み部20が、切片5の三角形部分の底辺付近に配置されており、貼付剤の左右の引張り方向に対して垂直に配置されている。
図4では、分断部が波型のハーフカットであり、T字状の切り込み部20が図1と同様に配置されている。
【0033】
図5および図6では、分断部がS字状(逆S字)(図5)または鋸刃状(図6)のハーフカットであり、T字状の切り込み部20がT字の縦棒が貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配置されている。
図7では、分断部は直線状と曲線とを組合せた形状をしており、T字状の切り込み部20が配置されている。
図8では、分断部は直線状と鋸刃型とを組合せた形状をしており、T字状の切り込み部20が配置されている。
図5〜8で示した貼付剤では、切片5が比較的大きく形成されるため、剥離シートを剥がす際に把持しやすい。
【0034】
図9〜12で示した貼付剤は、さらなる実施態様を示している。図9では、分断部10の山部の角度が大きく、また、切り込み部20が分断部10の中央線に沿って1列配置され、さらに切片5の中に1列加わるように配置されている。図10では、分断部10の山部の角度が約70〜90度で、分断部10の中央線に平行に2本、垂直に1本の切り込み部20が山部に配置されている。図11および12では、分断部10の中央線に平行に3本の切り込み部20が山部に配置されており、山部の1つの稜線に2箇所の連結がある態様(図11)と1箇所の連結がある態様(図12)である。
【実施例】
【0035】
50〜70歳の健康成人10名に、前記図1〜3の形状および配置の切り込み部を備えた貼付剤の両端を把持し左右に引張ってもらい、そのときの「剥離シートの摘み易さ」および「貼付のし易さ」について、比較例(図1において切り込み部がないもの)と比べてどれだけ好ましいか下記基準にしたがい採点をしてもらった。採点結果の平均値を表1に示す。
【表1】
【0036】
採点基準:
剥離シートの摘み易さ
3:比較例に比べ非常に摘み易い
2:比較例に比べ摘み易い
1:比較例と同程度である
貼付のし易さ
3:比較例に比べ非常に貼付し易い
2:比較例に比べ貼付し易い
1:比較例と同程度である
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤に関し、パップ剤や硬膏剤等の貼付剤を左右に引張るだけで剥離シートを簡単に分断でき、剥離シートのめくれた部分を患部に貼着するだけで、高齢者でも簡単に手を汚すことなく、かつシワがよったりすることなくきれいに貼着することができる低原価で量産性に適したパップ剤や硬膏剤等の貼付剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図2】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図3】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図4】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図5】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図6】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図7】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図8】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図9】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図10】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図11】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【図12】本発明の貼付剤の一態様を示す説明図(正面図)である。
【符号の説明】
【0039】
1 貼付剤
2 支持体
3 膏体
4 剥離シート
5 切片
10 分断部
20 切り込み部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤。
【請求項2】
切り込み部がT字状である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されてなる、請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される、請求項1〜3に記載の貼付剤。
【請求項1】
伸縮性を有する支持体と、前記支持体の一面の略全面に展着された膏体と、前記膏体の全面に貼着された剥離シートとを備え、左右に引張るだけで前記剥離シートのみが分断部で分断される貼付剤であって、前記分断部がS字状、波形状または鋸刃形状であり、該分断部の近傍に、前記貼付剤を左右に引張ると開口する切り込み部を1または2以上備えた、前記貼付剤。
【請求項2】
切り込み部がT字状である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
T字の縦棒が、貼付剤の左右の引張り方向と平行で、該縦棒の先端が分断部に向けて配されてなる、請求項2に記載の貼付剤。
【請求項4】
剥離シートが分断部を有する1枚の剥離シートであり、貼付剤を左右に引っ張るだけで剥離シートと支持体との伸び率の違いにより剥離シートのみが前記分断部で分断される、請求項1〜3に記載の貼付剤。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2007−75601(P2007−75601A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222444(P2006−222444)
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【出願人】(591230664)丸東産業株式会社 (9)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(000160522)久光製薬株式会社 (121)
【出願人】(591230664)丸東産業株式会社 (9)
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