簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セット
【課題】 演奏者の口周りと口当て部との間から空気が漏れることを防止でき、また、音や音色を豊かにすること。
【解決手段】 本体部11と、この本体部11の上部に設けられた口当て部12と、この口当て部を介して演奏者が吹くことにより音を発するとともに、本体部11により囲われる位置に設けられた発音部15とを備えて簡易吹奏楽器10が構成されている。口当て部12は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域42を備えている。当接端部領域42は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備えている。発音部15は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせるようになっている。
【解決手段】 本体部11と、この本体部11の上部に設けられた口当て部12と、この口当て部を介して演奏者が吹くことにより音を発するとともに、本体部11により囲われる位置に設けられた発音部15とを備えて簡易吹奏楽器10が構成されている。口当て部12は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域42を備えている。当接端部領域42は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備えている。発音部15は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットに係り、更に詳しくは、演奏を簡単に行うことができ、リハビリテーション等に利用し易い簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
各福祉施設や医療施設においては、脳の機能や身体機能の低下抑制、改善を図るための種々のリハビリテーションが採用されている。このようなリハビリテーションとして、近時、音楽療法と称される試みが行われてきている。この音楽療法は、療法士や介助者と共に、複数人の高齢者等により簡単な楽器を用いて楽曲を演奏し、脳機能や運動障害を改善して療養効果を得るものである。
【0003】
ところで、比較的簡単に発音可能な楽器として、図18に示される吹奏楽器80が知られている。同図において、吹奏楽器80は、ホーン状に形成された金属製の本体部81と、この本体部81の同図中上端側に設けられた口当て部82と、本体部81の内部に設けられた単一のリード等からなる発音部83とを備え、口当て部82に口を当てて吹くことにより、一の高さの音を発するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記吹奏楽器80を利用する場合、以下の(1)〜(6)に述べる不都合を招来する。
【0005】
(1)口当て部82は、正面視したときに、口に当接する領域82A(図18中上端領域)が同図中左右方向に延びる仮想平面F1上に形成される。ところが、人間の口及びその周辺は湾曲するように膨らんだ形状をなすので、口当て部82の左右両側と口周辺との間に隙間が空き、吹いたり吸ったりした空気が漏れて音の大きさが弱くなり易くなる。
特に、高齢者等にあっては、肺機能が低下している場合があるため、音を発することができなくなり、ひいては、音楽療法に対する意欲が低下して療養効果を十分に得られなくなる虞がある。
【0006】
(2)発音部83を介して発せられる音が単音のため単調となって豊かさが感じられず、また、音色を変化させ難い。このため、福祉施設等において、高齢者等に対して演奏に興味をもたせることが困難となる。
【0007】
(3)本体部81は、正面視したときに、その開口81A側の領域すなわち図18中下端領域が同図中左右方向に延びる仮想平面F2上に形成される。このため、吹奏楽器80を立てて開口81Aを下向きとして水平面上に載置すると、当該水平面により開口81Aが閉塞され、演奏によって本体部81内や発音部83周りに付着した水分や唾液が乾燥し難くなり、衛生上の問題を惹起せしめることとなる。
【0008】
(4)前記口に当接する領域82A及び本体部81の開口81A側は、平面視で円状の外形を有するので、吹奏楽器80を横置きとした場合に転がり易くなる。これにより、吹奏楽器80が不用意に床等に落下し、これを踏んで転倒や怪我の原因となる。
【0009】
(5)演奏時に本体部を握ったときに、手の平で本体部81が滑る傾向がある。特に、高齢者等は握力が低下している場合があるので、本体部81を把持することが困難となり、これによっても、演奏に対する興味を損なわせることとなる。
【0010】
(6)前記吹奏楽器80は、一の高さの音のみ発するものである。従って、楽曲を演奏するため、相互に音高や音程が異なるように複数個の吹奏楽器80を用いる場合がある。
ところが、このような場合にあっては、各吹奏楽器80の本体部81が金属色で統一されるとともに、略相似形となるように形成されるので、各吹奏楽器80の音高や音程の違いを外観によって認識することが困難となる。この結果、所望の音高等の吹奏楽器80を探す時間が必要となり、演奏される楽曲のリズム感が低下することとなる。
【0011】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、演奏者の口周りと口当て部との間から空気が漏れることを防止でき、演奏を行い易くすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、音や音色を豊かにすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、本体部の内部や発音部を乾燥させ易くしたりして衛生状態を良好に保つことができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0014】
更に本発明の目的は、不用意な転がりを防止でき、床面等に落下することを回避することができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0015】
また、他の本発明の目的は、演奏時に本体部を持ち易くすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0016】
更に、本発明の他の目的は、複数個の簡易吹奏楽器を用いたときに、音高等の違いを容易に認識することができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記口当て部の当接端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備える、という構成が採用されている。
【0018】
また、本発明は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記発音部は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせる、という構成も採用される。
【0019】
本発明において、前記口当て部は、本体部に着脱自在に取り付けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0020】
また、前記本体部は、所定の水平面上に開口側が位置するように載置したときに、当該開口側に本体部の内外を通じる隙間を形成する形状に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0021】
更に、前記本体部の開口を形成する端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に膨らむ湾曲形状を備えることが好ましい。
【0022】
また、前記本体部は、その外部と発音部とを通じる通路を含み、当該通路は、発音部に対向する本体部の領域に設けられる、という構成を採用するとよい。
【0023】
更に、前記本体部は、前記開口側に向かって平面視した形状が次第に略楕円状に変化する筒状に形成することができる。
【0024】
また、前記本体部と口当て部との間に、外側に突出する境界形成体を設けるとよい。
【0025】
更に、本発明の簡易吹奏楽器セットは、前記簡易吹奏楽器を複数個備え、
前記各簡易吹奏楽器に、音高、音程又は音調の識別手段を設ける、という構成が採用されている。
【0026】
また、前記識別手段は、各簡易吹奏楽器に色彩、模様、文字、マークの何れか又はこれらの任意の組み合わせを付することにより構成されるとよい。
【0027】
更に、前記各簡易吹奏楽器は、整列保持部材を介して集合保持され、この集合保持状態で各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能に設けられる、という構成も採ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、口当て部における当接端部領域の湾曲形状により、演奏者の口及びその周辺に沿うように当接端部領域を当接させることができる。これにより、演奏時に、演奏者の口周辺と当接端部領域との間に隙間が生じて空気が漏れ難くなり、発音の大きさが低下することを防止することができる。特に、肺機能が低下している高齢者等であっても、音を容易に発することができるようになり、音楽療法等に意欲的に取り組むよう促進させることが可能となる。
【0029】
また、唸り現象を生じさせて音を発するので、音や音色に表現力を付与して演奏者や聴取者に豊かな感覚を生じさせることができる。これにより、簡易吹奏楽器に対して興味を持たせ易くなり、音楽療法を行い易くすることが可能となる。
【0030】
更に、本体部に口当て部を着脱自在とした場合、演奏者毎に口当て部を交換することができ、一の簡易吹奏楽器を複数人で用いても、口当て部を衛生的に保って演奏を行うことができる。
【0031】
また、本体部の内外を通じる隙間を開口側に形成する形状としたから、本体部の開口側を水平面上に載置したときに、隙間を介して通気性を維持することができる。これにより、演奏によって発音部や本体部の内側に付着した水分等が乾燥し易くなり、衛生的に好ましい状態とすることが可能となる。
【0032】
更に、本体部の開口を形成する端部領域を前記湾曲形状としたので、前述の本体部の内外を通じる隙間を開口の左右両側に簡単に形成することができる。しかも、開口を形成する端部領域を手の平で塞ぐようにした場合、当該端部領域が手の平に馴染むようになり、開口を塞いだり開いたりして音色を変化させるような演奏を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、本体部における発音部に対向する領域に通路を設けたから、水分が特に付着し易い発音部付近の通気性をより向上でき、発音部周りを効果的に乾燥させて衛生状態をより良好に維持することができる。しかも、演奏時に通路からも音を放射でき、音がこもった状態となることを回避して音質向上を図ることも可能となる。また、演奏者が手で通路を塞いだり開いたりすることができ、これによっても、音色を容易に変化させることが可能となる。
【0034】
更に、本体部を前述のように略楕円状に変化する筒状体としたから、本体部を握ったときの手の平の感触をより良い状態としつつ、本体部が不用意に転がり難くなって床等に落下することを防止でき、本体部を踏んで転んだりすることを回避することが可能となる。
【0035】
また、本体部と口当て部との間に外側に突出する境界形成体を設けたから、当該境界形成体に指を掛けることが可能となり、握力が低下しても本体部を楽に把持することができる。
【0036】
更に、複数個の簡易吹奏楽器に識別手段を設けたから、音高等が異なる簡易吹奏楽器を容易に見分けることができ、楽曲の演奏をスムースにリズム感良く行えるようになる。また、例えば、和音の組み合わせが認識できるように識別手段を設けることができ、演奏する楽曲を簡単により良くすることが可能となる。
【0037】
また、色彩等により識別手段を構成したから、例えば、音楽療法において、複数の高齢者等に対し、音高等が異なる簡易吹奏楽器を一個ずつ演奏させる場合、指揮者が楽曲に併せて色彩等を指示すれば当該楽曲を演奏することができる。これにより、各高齢者等が譜面を見たり覚えたりする負担を軽減しつつ、楽曲の完成度を高め、高齢者等に充実感を付与して療養効果がより良く得られるものと期待される。
【0038】
更に、各簡易吹奏楽器を整列保持部材を介して集合保持した場合、各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能として当該演奏のバリエーションを増やすことができる。
【0039】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「正面視」とは、簡易吹奏楽器を図1に示される方向から見た状態、すなわち、本体部の開口側が水平面上に載置し、口当て部の当接端部領域が上部に位置する状態を意味する。また、「側面視」とは、前記正面視した状態に対して側方から見た状態、「平面視」とは、前記正面視した状態に対して上方から見た状態を意味する。
更に、特に明示しない限り、「左」、「右」、「上」、「下」は、図1を基準とし、「前」は、図2中左側を示す一方、「後」は、同図中右側について用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1には、本発明に係る簡易吹奏楽器の一態様となる概略正面図が示され、図2には、その右側面図が示されている。また、図3には、図1の分解正面図が示され、図4には、図2の分解右側面図が示されている。これらの図において、簡易吹奏楽器10は、上下方向に延びる本体部11と、この本体部11の上部に設けられた口当て部12と、本体部11と口当て部12との間に設けられた境界形成体14と、本体部11により囲われる位置すなわち本体部11の内側に位置する発音部15とを備えて構成されている。
【0042】
前記本体部11は、図5及び図6にも示されるように、上下方向に開通する筒状に形成されたホーン体17と、このホーン体17に挿入されるとともに、前記発音体15を支持する支持体18とを備えて構成されている。
【0043】
前記ホーン体17は、ホーン体17の口当て部12側となる上部位置には開放部19が形成され、この開放部19は、図7にも示されるように、平面視で略円形をなす上端部19Aにより形成されている。また、図8に示されるように、口当て部12と反対側となる下部位置には開口20が形成され、この開口20を形成する端部領域20Aは、左右方向に長軸を有する略楕円形に形成されている。この楕円の長軸寸法d1及び短軸寸法d2(図7参照)は、前記上端部19Aの直径寸法d3よりもそれぞれ大きく設定されている。従って、ホーン体17は、正面視及び側面視で、末広がり状の外観形状を呈する(図1,2参照)とともに、平面形状が下方に向かって略円状から略楕円状に次第に変化するように形成されている。
【0044】
前記開口20を形成する端部領域20Aは、図1のように正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に下方に膨らむ湾曲形状を備え、図2のように側面視したときに、前後方向(同図中左右方向)両側より中央部が次第に上方に凹む湾曲形状を備えている。
【0045】
図5及び図6に示されるように、ホーン体17の上側内周面には、前記支持体18を保持する略円筒状の保持筒22が連なっている。保持筒22の下部には、内向きフランジ部23が周方向に沿って連設され、この内向きフランジ23上に支持体18が位置するようになっている。また、ホーン体17は、その上側前部領域に通路としての多数の穴24を備え、当該穴24によりホーン体17の内外での通気性を確保するようになっている。
【0046】
前記支持体18は、ホーン体17の開放部19側に嵌り込む上部形成体26と、この上部形成体26の下面に連なって上下方向に沿って延びる中間形成体27と、この中間形成体27に連なる下部形成体28と、上部形成体26及び下部形成体28の外周にそれぞれ設けられたゴム等の弾性体からなる二つのOリング29,29とを備えて構成されている。
【0047】
前記上部形成体26は、図4及び図9にも示されるように、上下方向中間部に段部31を有する外周部32と、この外周部32の下部に連なる底部33とを備えた上部開放型の皿状に形成されている。段部31は、支持体18をホーン体17に装着したときに、前記上端部19Aに着座するようになっている。また、段部31より下方の外周部32の外側には、前記Oリング29を受容する周溝34が形成されている。
【0048】
前記中間形成体27は、前面側(図9中左面側)で前記発音部15を支持するブロック状に設けられ、左右幅が前記開放部19の内径と略同一となり、前後幅が前記左右幅の約1/3程度に形成されている。中間形成体27及び前記底部33には、図5に示されるように、上下に延びる左右一対の溝36,36が形成されている。各溝36,36は、上部形成体26側と発音体15側、すなわち、上方と前方とを開放する形状を備えている。
【0049】
前記下部形成体28は、図9及び図10に示されるように、上下に開通するリング状に設けられ、その外周面側に前記Oリング29を受容する周溝37が形成されている。
【0050】
前記各Oリング29,29のうち、上部形成体26に装着されたOリング29は、ホーン体17の上部内周面に密着する一方、下部形成体28に装着されたOリング29は、保持筒22の内周面に密着するように設けられている。これにより、支持体18がホーン体17内でがたつきがないように支持され、これらが一体的に取り扱えるようになっている。
【0051】
前記口当て部12は、図3〜図5に示されるように、上方に向かって次第に拡がる形状を備えた筒状の周壁部39と、この周壁部39の下部に連設された段差形成部40と、この段差形成部40より下方に延びる円筒状部41とを備え、上下に開通するように設けられている。
【0052】
前記周壁部39は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域42を上部に備えている。この当接端部領域42は、図1のように正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に下方に凹む湾曲形状を備え、図2のように側面視したときに、前後方向(同図中左右方向)両側より中央部が次第に上方に膨らむ湾曲形状を備えている。当接端部領域42は、図11に示されるように、平面視で略円形をなし、その直径寸法d4は、前記端部領域20Aの短軸寸法d2より小さく、前記上端部19Aの直径寸法d3(図7参照)より大きく設定されている。また、当接端部領域42の直径寸法d4は、一般成人の演奏者における唇の上下幅より大きく、当該唇の左右両側を中央に向かって窄めたときに、唇全体が周壁部39内に受容される程度の大きさとなっている。
【0053】
図5に示されるように、口当て部12を本体部11に装着した状態で、周壁部39の下端が前記外周部32の上端に着座するとともに、段差形成部40の外側が前記段部31の内側に着座するようになっている。また、円筒状部41の外側には、外周部32の内周面に密着するOリング44が設けられている。このOリング44により、口当て部12が本体部11に一体的に取り付けられるとともに、意図的な外力を付与することで口当て部12が本体部11に対して着脱自在となる。
【0054】
前記境界形成体14は、前記支持体18における外周部32の左右両側から外側に突出する一対の片部材45,45により形成されている。各片部材45,45は、先端に向かって上向きに湾曲する形状を備えている。また、各片部材45,45は、図11に示されるように、平面視で略半円弧状にそれぞれ形成され、それらの先端間距離L1は、前記端部領域20Aの長軸寸法d1より小さく、前記当接端部領域42の直径寸法d4より大きく設定されている。ここで、一方の片部材45には、貫通穴46が設けられており、この貫通穴46に図示しないストラップ等を挿通できるようになっている。
【0055】
前記発音部15は、図3及び図9に示されるように、前記中間形成体27の前面側に沿ってねじ止め固定される板状の保持板48と、この保持板48における前記各溝36,36の前方にそれぞれ形成された左右一対のスロット49,49と、各スロット49,49の後方にそれぞれ設けられた左右一対の細片状のリード50,50とを備え、ホーン体17の穴24に対向するように配置される。各リード50,50は、各スロット49,49と同様に上下方向に細長い形状に設けられているとともに、各スロット49,49の下方における保持板48の後面で片持ち支持されている。各リード50,50は、溝36,36からスロット49,49に向かって流れる空気の流れによって振動し、当該振動により発音するようになっている。
【0056】
ここで、各リード50,50は、相互に異なる音高、具体的には、周波数が約1〜10Hz程度異なる音を発するように設定されている。このように、異なる周波数の音を発することにより、一の高さの音の強弱が周期的に変調するように聞こえる唸り現象を生じるようになる。なお、各リード50,50の発する音高を異なるようにするには、各リード50,50の厚み若しくは外形寸法を僅かに相違させればよいが、厚みを相違させた方が取り付け工程上有利となる。
【0057】
次に、前記簡易吹奏楽器10の利用方法について説明する。
簡易吹奏楽器10を演奏する場合、一方の手で本体部11を掴みながら、口当て部12の当接端部領域42を演奏者の口及びその周辺に当接させる。このとき、演奏者から見て前記穴24を上向き又は下向きとし、前記片部材45,45を左右方向に向けることにより、当接端部領域42が演奏者の口周辺に沿うように当接する態様となる。
この態様を更に詳述すると、一般に、人間の口は左右方向中央部が膨出する外形をなすので、当該中央部を当接端部領域42の凹んだ部分が受容するように当接する。これにより、当接端部領域42の左右両側と、演奏者の口及びその周辺との間に隙間が生じ難くなり、それらが馴染むように接触することとなる。
【0058】
この状態で、演奏者が口から吹くことにより、口当て部12の内側及び前記各溝36,36を通って発音部15のスロット49,49に空気が流れる。この空気の流れにより、各リード50,50が振動し、これらが前述のように音を発することで、唸り現象を生じて表現力を有する豊かな音を奏することとなる。この音は、本体部11の開口20だけでなくから穴24からも放射され、本体部11内での音のこもりが抑制される。
【0059】
ここで、簡易吹奏楽器10の演奏時において、演奏者が手を用いることにより音色を変化させることができる。
例えば、本体部11を一方の手で持ちながら、他方の手で開口20を周期的に開閉したり、他方の手と開口20との間に若干隙間を空けた状態を維持しながら演奏したりすることができる。この際、開口20が前述のように湾曲した端部領域20Aにより形成されるので、手の平を若干丸めるようにして開口20を容易に塞ぐこと可能となる。
また、各穴24について、開口20と同様に他方の手で開閉或いは隙間を維持できる他、本体部11を持つ手で各穴24の開閉等を行いつつ、他方の手で開口20の開閉等を同時に行うこともできる。
このように、何れか一方の手若しくは両手で開口20及び各穴24を操作することにより、音色にバリエーションを持たせることが可能となる。
【0060】
ところで、簡易吹奏楽器10を机上等の水平面上に載置する場合、当該水平面上に開口20側が位置するように載置することができる。すなわち、図1及び図2に示される二点鎖線を水平面Hとすると、前記端部領域20Aの前後二箇所が水平面Hに接して自立姿勢が保たれるとともに、端部領域20Aの左右両側と水平面Hとの間に、本体部11の内外を通じる隙間Sを形成するようになっている。この隙間Sにより、本体部11内の通気性を確保できる他、前記穴24及び隙間Sを通じて上下方向に沿って通気が行われるようになり、本体部11内や発音部15に付着した水分等の乾燥性を高めて衛生的に保つことが可能となる。
【0061】
また、図12に示されるように、水平面h上に簡易吹奏楽器10を横置きとした場合、口当て部12の端部当接領域42側と本体部11の開口20側とが水平面hに接するようになる。この状態において、簡易吹奏楽器10を転がすような意図しない外力が付与されても、開口20を形成する端部領域20Aが前述のように略楕円状をなすので、前記転がり方向と反対方向の抗力が生じる他、前記片部材45の先端が水平面hに当接し、前記転がりを規制するようになっている。
【0062】
従って、このような実施形態によれば、口当て部12の当接端部領域42が口及びその周辺に沿って馴染むように当接するので、それらの間から演奏者の吹いた空気が効率良くリード50,50に向かって流れることとなる。従って、吹く力が低下した高齢者等であっても、発音量を十分に確保した演奏を容易に行うことができる。
【0063】
また、図1に示されるように、簡易吹奏楽器10を水平面H上に自立させた状態で本体部11を掴むときに、各片部材45,45の下側から指を掛けるようすることができる。しかも、本体部11の開口20側の平面形状が楕円状をなすので、手の平とホーン体17外周面とが馴染み易くなる。これにより、握力が低下している者であっても、簡易吹奏楽器10を簡単に持ち上げて口に当てることが可能となる。
【0064】
更に、開口20側の形状や境界形成体14の片部材45により、簡易吹奏楽器10の転がりを防止する手段を構成したので、床等に落下して不用意な位置に転がり、これを踏んで転倒等することを防止することができる。
【0065】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0066】
例えば、前記口当て部12は、単一とは限らずに複数個用意してもよい。これにより、一個の簡易吹奏楽器10を複数人で使用する場合、演奏者毎に口当て部12を変えることにより、当該口当て部12を衛生的に維持することができる。また、口当て部12は、種々の設計変更が可能であり、例えば、図13〜図15に示されるタイプのものに代替したり、前記実施形態のものと選択的に用いてもよい。図13〜図15に示される口当て部12は、周壁部52を扁平なリング状に形成し、その上端部を当接端部領域53としたものである。
【0067】
また、口当て部12は、種々の材料により構成でき、例えば、ポリエチレン等の焼却処分時に有害ガスの発生を回避可能な材料や洗浄後に再利用可能なプラスチック等の材料、紙等の再生処理やリサイクル可能な材料により構成することができる。このような材料を用いれば、演奏する度に口当て部12を容易に交換でき、より衛生的に保つことが可能となる。
【0068】
また、前記簡易吹奏楽器10を複数個用いることにより簡易吹奏楽器セットを構成し、各簡易吹奏楽器10の音の高さ音階に従ってそれぞれ設定したり、音程や音調がそれぞれ相違するように設定することが例示できる。このとき、図16に示されるように、各簡易吹奏楽器10の同図中右側の片部材45には、音高、音程又は音調の識別手段としてのマーク56が設けられる。このマーク56を視認することにより、各簡易吹奏楽器10の音高等の違いを容易に認識できるようになっている。これにより、指揮者等がプラカード等を介してマーク56を演奏者に見せることにより、演奏者が演奏すべき音高の簡易吹奏楽器10を知得できるようになり、音楽の専門的な知識や譜面を見たりすることなく所望の楽曲を演奏することが可能となる。また、和音の組み合わせ、例えば、「ドミ」、「ドソ」、「ドファ」といった二つの音や、「ドミソ」、「ドファラ」といった三つの音毎に同じマーク56を付することにより、簡単に和音を演奏することも可能となる。
なお、前記識別手段は、図示構成例に限られるものでなく、図16に示されるもの以外のマークや文字を付したり、片部材45以外の本体部11や口当て部12にマークを付してもよい。また、各簡易吹奏楽器10における本体部11や口当て部12の色彩や模様を変えたり、それらを任意に組み合わせたりすることにより識別手段を構成してもよい。要する、外観によって音高等の違いを認識できるように識別手段が設けられていれば足りる。
【0069】
更に、複数個の簡易吹奏楽器10を用いる場合、図17に示されるように、整列保持部材57を介して各簡易吹奏楽器10を集合保持させてもよい。この整列保持部材57は、各簡易吹奏楽器10のホーン体17が挿入される複数の穴58を備えている。各穴58の内周面は、ホーン体17の外周に沿うテーパ面により形成されている。各穴58に簡易吹奏楽器10を取り付ける場合、先ず、ホーン体17だけを穴58の図17中下側から挿通し、その後、ホーン体17の開放部19側に支持体18を挿入保持させればよい。これにより、各簡易吹奏楽器10を集合保持され、この状態で、各簡易吹奏楽器10を交互に演奏できるようになる。
【0070】
また、前記発音部15は、種々の設計変更が可能であり、例えば、各リード50,50の上端側(口当て部12側)を保持板48に片持ち支持させてもよい。これにより、口当て部12を介して吸うことにより音を発するようになる。また、一方のリード50の上端側を片持ち支持させ、他方のリード50の下端側を片持ち支持させることにより、吹く及び吸うことにより発音させてもよい。更に、リード50を一本だけとして、吹く又は吸うことにより音を発するようにしてもよい。但し、前記実施形態のようなリード50,50を用いた方が、唸り現象を生じさせることができる点で有利となる。
【0071】
更に、前記端部領域20Aの形状は、例えば、正面視で波状若しくは凸凹状とし、水平面H(図1及び2参照)側に隙間を形成するようにしてもよい。但し、前記実施形態のような湾曲形状とした方が、手の平で端部領域20Aを閉塞し易くなる点で有利となる。
【0072】
また、前記ホーン体17において、通路を多数の穴24により構成したが、メッシュやネット等に通路を形成してもよい。
【0073】
更に、前記実施形態では、Oリング29,44を用いて異なる二部材を連結する構成としたが、これに代えて、前記二部材を着脱自在とする嵌合構造若しくは係合構造に代替することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、主として、福祉施設や医療施設等でリハビリテーションや音楽療法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施形態に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】図1の分解図。
【図4】図2の分解図。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図。
【図6】図3のB−B線に沿う断面図。
【図7】本体部を構成するホーン体の平面図。
【図8】図7の底面図。
【図9】図3のC−C線に沿う断面図。
【図10】本体部を構成する支持体の底面図。
【図11】図1の平面図。
【図12】前記簡易吹奏楽器を横置きした状態の説明図。
【図13】変形例に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【図14】変形例に係る簡易吹奏楽器の側面図。
【図15】(A)は、変形例に係る簡易吹奏楽器の口当て部の正面図、(B)は、(A)の正面断面図、(C)は、図13の平面図。
【図16】簡易吹奏楽器セットの平面図。
【図17】簡易吹奏楽器セットの変形例を示す正面図。
【図18】従来例に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【符号の説明】
【0076】
10・・・簡易吹奏楽器、11・・・本体部、12・・・口当て部、14・・・境界形成体、15・・・発音部、19・・・上端部、20・・・開口、20A・・・端部領域、24・・・穴(通路)、42,53・・・当接端部領域、56・・・マーク(識別手段)、57・・・整列保持部材、S・・・隙間、H・・・水平面
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットに係り、更に詳しくは、演奏を簡単に行うことができ、リハビリテーション等に利用し易い簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットに関する。
【背景技術】
【0002】
各福祉施設や医療施設においては、脳の機能や身体機能の低下抑制、改善を図るための種々のリハビリテーションが採用されている。このようなリハビリテーションとして、近時、音楽療法と称される試みが行われてきている。この音楽療法は、療法士や介助者と共に、複数人の高齢者等により簡単な楽器を用いて楽曲を演奏し、脳機能や運動障害を改善して療養効果を得るものである。
【0003】
ところで、比較的簡単に発音可能な楽器として、図18に示される吹奏楽器80が知られている。同図において、吹奏楽器80は、ホーン状に形成された金属製の本体部81と、この本体部81の同図中上端側に設けられた口当て部82と、本体部81の内部に設けられた単一のリード等からなる発音部83とを備え、口当て部82に口を当てて吹くことにより、一の高さの音を発するようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記吹奏楽器80を利用する場合、以下の(1)〜(6)に述べる不都合を招来する。
【0005】
(1)口当て部82は、正面視したときに、口に当接する領域82A(図18中上端領域)が同図中左右方向に延びる仮想平面F1上に形成される。ところが、人間の口及びその周辺は湾曲するように膨らんだ形状をなすので、口当て部82の左右両側と口周辺との間に隙間が空き、吹いたり吸ったりした空気が漏れて音の大きさが弱くなり易くなる。
特に、高齢者等にあっては、肺機能が低下している場合があるため、音を発することができなくなり、ひいては、音楽療法に対する意欲が低下して療養効果を十分に得られなくなる虞がある。
【0006】
(2)発音部83を介して発せられる音が単音のため単調となって豊かさが感じられず、また、音色を変化させ難い。このため、福祉施設等において、高齢者等に対して演奏に興味をもたせることが困難となる。
【0007】
(3)本体部81は、正面視したときに、その開口81A側の領域すなわち図18中下端領域が同図中左右方向に延びる仮想平面F2上に形成される。このため、吹奏楽器80を立てて開口81Aを下向きとして水平面上に載置すると、当該水平面により開口81Aが閉塞され、演奏によって本体部81内や発音部83周りに付着した水分や唾液が乾燥し難くなり、衛生上の問題を惹起せしめることとなる。
【0008】
(4)前記口に当接する領域82A及び本体部81の開口81A側は、平面視で円状の外形を有するので、吹奏楽器80を横置きとした場合に転がり易くなる。これにより、吹奏楽器80が不用意に床等に落下し、これを踏んで転倒や怪我の原因となる。
【0009】
(5)演奏時に本体部を握ったときに、手の平で本体部81が滑る傾向がある。特に、高齢者等は握力が低下している場合があるので、本体部81を把持することが困難となり、これによっても、演奏に対する興味を損なわせることとなる。
【0010】
(6)前記吹奏楽器80は、一の高さの音のみ発するものである。従って、楽曲を演奏するため、相互に音高や音程が異なるように複数個の吹奏楽器80を用いる場合がある。
ところが、このような場合にあっては、各吹奏楽器80の本体部81が金属色で統一されるとともに、略相似形となるように形成されるので、各吹奏楽器80の音高や音程の違いを外観によって認識することが困難となる。この結果、所望の音高等の吹奏楽器80を探す時間が必要となり、演奏される楽曲のリズム感が低下することとなる。
【0011】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、演奏者の口周りと口当て部との間から空気が漏れることを防止でき、演奏を行い易くすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、音や音色を豊かにすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0013】
本発明の更に他の目的は、本体部の内部や発音部を乾燥させ易くしたりして衛生状態を良好に保つことができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0014】
更に本発明の目的は、不用意な転がりを防止でき、床面等に落下することを回避することができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0015】
また、他の本発明の目的は、演奏時に本体部を持ち易くすることができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【0016】
更に、本発明の他の目的は、複数個の簡易吹奏楽器を用いたときに、音高等の違いを容易に認識することができる簡易吹奏楽器及び簡易吹奏楽器セットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため、本発明は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記口当て部の当接端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備える、という構成が採用されている。
【0018】
また、本発明は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記発音部は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせる、という構成も採用される。
【0019】
本発明において、前記口当て部は、本体部に着脱自在に取り付けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0020】
また、前記本体部は、所定の水平面上に開口側が位置するように載置したときに、当該開口側に本体部の内外を通じる隙間を形成する形状に設けられる、という構成も好ましくは採用される。
【0021】
更に、前記本体部の開口を形成する端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に膨らむ湾曲形状を備えることが好ましい。
【0022】
また、前記本体部は、その外部と発音部とを通じる通路を含み、当該通路は、発音部に対向する本体部の領域に設けられる、という構成を採用するとよい。
【0023】
更に、前記本体部は、前記開口側に向かって平面視した形状が次第に略楕円状に変化する筒状に形成することができる。
【0024】
また、前記本体部と口当て部との間に、外側に突出する境界形成体を設けるとよい。
【0025】
更に、本発明の簡易吹奏楽器セットは、前記簡易吹奏楽器を複数個備え、
前記各簡易吹奏楽器に、音高、音程又は音調の識別手段を設ける、という構成が採用されている。
【0026】
また、前記識別手段は、各簡易吹奏楽器に色彩、模様、文字、マークの何れか又はこれらの任意の組み合わせを付することにより構成されるとよい。
【0027】
更に、前記各簡易吹奏楽器は、整列保持部材を介して集合保持され、この集合保持状態で各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能に設けられる、という構成も採ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、口当て部における当接端部領域の湾曲形状により、演奏者の口及びその周辺に沿うように当接端部領域を当接させることができる。これにより、演奏時に、演奏者の口周辺と当接端部領域との間に隙間が生じて空気が漏れ難くなり、発音の大きさが低下することを防止することができる。特に、肺機能が低下している高齢者等であっても、音を容易に発することができるようになり、音楽療法等に意欲的に取り組むよう促進させることが可能となる。
【0029】
また、唸り現象を生じさせて音を発するので、音や音色に表現力を付与して演奏者や聴取者に豊かな感覚を生じさせることができる。これにより、簡易吹奏楽器に対して興味を持たせ易くなり、音楽療法を行い易くすることが可能となる。
【0030】
更に、本体部に口当て部を着脱自在とした場合、演奏者毎に口当て部を交換することができ、一の簡易吹奏楽器を複数人で用いても、口当て部を衛生的に保って演奏を行うことができる。
【0031】
また、本体部の内外を通じる隙間を開口側に形成する形状としたから、本体部の開口側を水平面上に載置したときに、隙間を介して通気性を維持することができる。これにより、演奏によって発音部や本体部の内側に付着した水分等が乾燥し易くなり、衛生的に好ましい状態とすることが可能となる。
【0032】
更に、本体部の開口を形成する端部領域を前記湾曲形状としたので、前述の本体部の内外を通じる隙間を開口の左右両側に簡単に形成することができる。しかも、開口を形成する端部領域を手の平で塞ぐようにした場合、当該端部領域が手の平に馴染むようになり、開口を塞いだり開いたりして音色を変化させるような演奏を容易に行うことが可能となる。
【0033】
また、本体部における発音部に対向する領域に通路を設けたから、水分が特に付着し易い発音部付近の通気性をより向上でき、発音部周りを効果的に乾燥させて衛生状態をより良好に維持することができる。しかも、演奏時に通路からも音を放射でき、音がこもった状態となることを回避して音質向上を図ることも可能となる。また、演奏者が手で通路を塞いだり開いたりすることができ、これによっても、音色を容易に変化させることが可能となる。
【0034】
更に、本体部を前述のように略楕円状に変化する筒状体としたから、本体部を握ったときの手の平の感触をより良い状態としつつ、本体部が不用意に転がり難くなって床等に落下することを防止でき、本体部を踏んで転んだりすることを回避することが可能となる。
【0035】
また、本体部と口当て部との間に外側に突出する境界形成体を設けたから、当該境界形成体に指を掛けることが可能となり、握力が低下しても本体部を楽に把持することができる。
【0036】
更に、複数個の簡易吹奏楽器に識別手段を設けたから、音高等が異なる簡易吹奏楽器を容易に見分けることができ、楽曲の演奏をスムースにリズム感良く行えるようになる。また、例えば、和音の組み合わせが認識できるように識別手段を設けることができ、演奏する楽曲を簡単により良くすることが可能となる。
【0037】
また、色彩等により識別手段を構成したから、例えば、音楽療法において、複数の高齢者等に対し、音高等が異なる簡易吹奏楽器を一個ずつ演奏させる場合、指揮者が楽曲に併せて色彩等を指示すれば当該楽曲を演奏することができる。これにより、各高齢者等が譜面を見たり覚えたりする負担を軽減しつつ、楽曲の完成度を高め、高齢者等に充実感を付与して療養効果がより良く得られるものと期待される。
【0038】
更に、各簡易吹奏楽器を整列保持部材を介して集合保持した場合、各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能として当該演奏のバリエーションを増やすことができる。
【0039】
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「正面視」とは、簡易吹奏楽器を図1に示される方向から見た状態、すなわち、本体部の開口側が水平面上に載置し、口当て部の当接端部領域が上部に位置する状態を意味する。また、「側面視」とは、前記正面視した状態に対して側方から見た状態、「平面視」とは、前記正面視した状態に対して上方から見た状態を意味する。
更に、特に明示しない限り、「左」、「右」、「上」、「下」は、図1を基準とし、「前」は、図2中左側を示す一方、「後」は、同図中右側について用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0041】
図1には、本発明に係る簡易吹奏楽器の一態様となる概略正面図が示され、図2には、その右側面図が示されている。また、図3には、図1の分解正面図が示され、図4には、図2の分解右側面図が示されている。これらの図において、簡易吹奏楽器10は、上下方向に延びる本体部11と、この本体部11の上部に設けられた口当て部12と、本体部11と口当て部12との間に設けられた境界形成体14と、本体部11により囲われる位置すなわち本体部11の内側に位置する発音部15とを備えて構成されている。
【0042】
前記本体部11は、図5及び図6にも示されるように、上下方向に開通する筒状に形成されたホーン体17と、このホーン体17に挿入されるとともに、前記発音体15を支持する支持体18とを備えて構成されている。
【0043】
前記ホーン体17は、ホーン体17の口当て部12側となる上部位置には開放部19が形成され、この開放部19は、図7にも示されるように、平面視で略円形をなす上端部19Aにより形成されている。また、図8に示されるように、口当て部12と反対側となる下部位置には開口20が形成され、この開口20を形成する端部領域20Aは、左右方向に長軸を有する略楕円形に形成されている。この楕円の長軸寸法d1及び短軸寸法d2(図7参照)は、前記上端部19Aの直径寸法d3よりもそれぞれ大きく設定されている。従って、ホーン体17は、正面視及び側面視で、末広がり状の外観形状を呈する(図1,2参照)とともに、平面形状が下方に向かって略円状から略楕円状に次第に変化するように形成されている。
【0044】
前記開口20を形成する端部領域20Aは、図1のように正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に下方に膨らむ湾曲形状を備え、図2のように側面視したときに、前後方向(同図中左右方向)両側より中央部が次第に上方に凹む湾曲形状を備えている。
【0045】
図5及び図6に示されるように、ホーン体17の上側内周面には、前記支持体18を保持する略円筒状の保持筒22が連なっている。保持筒22の下部には、内向きフランジ部23が周方向に沿って連設され、この内向きフランジ23上に支持体18が位置するようになっている。また、ホーン体17は、その上側前部領域に通路としての多数の穴24を備え、当該穴24によりホーン体17の内外での通気性を確保するようになっている。
【0046】
前記支持体18は、ホーン体17の開放部19側に嵌り込む上部形成体26と、この上部形成体26の下面に連なって上下方向に沿って延びる中間形成体27と、この中間形成体27に連なる下部形成体28と、上部形成体26及び下部形成体28の外周にそれぞれ設けられたゴム等の弾性体からなる二つのOリング29,29とを備えて構成されている。
【0047】
前記上部形成体26は、図4及び図9にも示されるように、上下方向中間部に段部31を有する外周部32と、この外周部32の下部に連なる底部33とを備えた上部開放型の皿状に形成されている。段部31は、支持体18をホーン体17に装着したときに、前記上端部19Aに着座するようになっている。また、段部31より下方の外周部32の外側には、前記Oリング29を受容する周溝34が形成されている。
【0048】
前記中間形成体27は、前面側(図9中左面側)で前記発音部15を支持するブロック状に設けられ、左右幅が前記開放部19の内径と略同一となり、前後幅が前記左右幅の約1/3程度に形成されている。中間形成体27及び前記底部33には、図5に示されるように、上下に延びる左右一対の溝36,36が形成されている。各溝36,36は、上部形成体26側と発音体15側、すなわち、上方と前方とを開放する形状を備えている。
【0049】
前記下部形成体28は、図9及び図10に示されるように、上下に開通するリング状に設けられ、その外周面側に前記Oリング29を受容する周溝37が形成されている。
【0050】
前記各Oリング29,29のうち、上部形成体26に装着されたOリング29は、ホーン体17の上部内周面に密着する一方、下部形成体28に装着されたOリング29は、保持筒22の内周面に密着するように設けられている。これにより、支持体18がホーン体17内でがたつきがないように支持され、これらが一体的に取り扱えるようになっている。
【0051】
前記口当て部12は、図3〜図5に示されるように、上方に向かって次第に拡がる形状を備えた筒状の周壁部39と、この周壁部39の下部に連設された段差形成部40と、この段差形成部40より下方に延びる円筒状部41とを備え、上下に開通するように設けられている。
【0052】
前記周壁部39は、演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域42を上部に備えている。この当接端部領域42は、図1のように正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に下方に凹む湾曲形状を備え、図2のように側面視したときに、前後方向(同図中左右方向)両側より中央部が次第に上方に膨らむ湾曲形状を備えている。当接端部領域42は、図11に示されるように、平面視で略円形をなし、その直径寸法d4は、前記端部領域20Aの短軸寸法d2より小さく、前記上端部19Aの直径寸法d3(図7参照)より大きく設定されている。また、当接端部領域42の直径寸法d4は、一般成人の演奏者における唇の上下幅より大きく、当該唇の左右両側を中央に向かって窄めたときに、唇全体が周壁部39内に受容される程度の大きさとなっている。
【0053】
図5に示されるように、口当て部12を本体部11に装着した状態で、周壁部39の下端が前記外周部32の上端に着座するとともに、段差形成部40の外側が前記段部31の内側に着座するようになっている。また、円筒状部41の外側には、外周部32の内周面に密着するOリング44が設けられている。このOリング44により、口当て部12が本体部11に一体的に取り付けられるとともに、意図的な外力を付与することで口当て部12が本体部11に対して着脱自在となる。
【0054】
前記境界形成体14は、前記支持体18における外周部32の左右両側から外側に突出する一対の片部材45,45により形成されている。各片部材45,45は、先端に向かって上向きに湾曲する形状を備えている。また、各片部材45,45は、図11に示されるように、平面視で略半円弧状にそれぞれ形成され、それらの先端間距離L1は、前記端部領域20Aの長軸寸法d1より小さく、前記当接端部領域42の直径寸法d4より大きく設定されている。ここで、一方の片部材45には、貫通穴46が設けられており、この貫通穴46に図示しないストラップ等を挿通できるようになっている。
【0055】
前記発音部15は、図3及び図9に示されるように、前記中間形成体27の前面側に沿ってねじ止め固定される板状の保持板48と、この保持板48における前記各溝36,36の前方にそれぞれ形成された左右一対のスロット49,49と、各スロット49,49の後方にそれぞれ設けられた左右一対の細片状のリード50,50とを備え、ホーン体17の穴24に対向するように配置される。各リード50,50は、各スロット49,49と同様に上下方向に細長い形状に設けられているとともに、各スロット49,49の下方における保持板48の後面で片持ち支持されている。各リード50,50は、溝36,36からスロット49,49に向かって流れる空気の流れによって振動し、当該振動により発音するようになっている。
【0056】
ここで、各リード50,50は、相互に異なる音高、具体的には、周波数が約1〜10Hz程度異なる音を発するように設定されている。このように、異なる周波数の音を発することにより、一の高さの音の強弱が周期的に変調するように聞こえる唸り現象を生じるようになる。なお、各リード50,50の発する音高を異なるようにするには、各リード50,50の厚み若しくは外形寸法を僅かに相違させればよいが、厚みを相違させた方が取り付け工程上有利となる。
【0057】
次に、前記簡易吹奏楽器10の利用方法について説明する。
簡易吹奏楽器10を演奏する場合、一方の手で本体部11を掴みながら、口当て部12の当接端部領域42を演奏者の口及びその周辺に当接させる。このとき、演奏者から見て前記穴24を上向き又は下向きとし、前記片部材45,45を左右方向に向けることにより、当接端部領域42が演奏者の口周辺に沿うように当接する態様となる。
この態様を更に詳述すると、一般に、人間の口は左右方向中央部が膨出する外形をなすので、当該中央部を当接端部領域42の凹んだ部分が受容するように当接する。これにより、当接端部領域42の左右両側と、演奏者の口及びその周辺との間に隙間が生じ難くなり、それらが馴染むように接触することとなる。
【0058】
この状態で、演奏者が口から吹くことにより、口当て部12の内側及び前記各溝36,36を通って発音部15のスロット49,49に空気が流れる。この空気の流れにより、各リード50,50が振動し、これらが前述のように音を発することで、唸り現象を生じて表現力を有する豊かな音を奏することとなる。この音は、本体部11の開口20だけでなくから穴24からも放射され、本体部11内での音のこもりが抑制される。
【0059】
ここで、簡易吹奏楽器10の演奏時において、演奏者が手を用いることにより音色を変化させることができる。
例えば、本体部11を一方の手で持ちながら、他方の手で開口20を周期的に開閉したり、他方の手と開口20との間に若干隙間を空けた状態を維持しながら演奏したりすることができる。この際、開口20が前述のように湾曲した端部領域20Aにより形成されるので、手の平を若干丸めるようにして開口20を容易に塞ぐこと可能となる。
また、各穴24について、開口20と同様に他方の手で開閉或いは隙間を維持できる他、本体部11を持つ手で各穴24の開閉等を行いつつ、他方の手で開口20の開閉等を同時に行うこともできる。
このように、何れか一方の手若しくは両手で開口20及び各穴24を操作することにより、音色にバリエーションを持たせることが可能となる。
【0060】
ところで、簡易吹奏楽器10を机上等の水平面上に載置する場合、当該水平面上に開口20側が位置するように載置することができる。すなわち、図1及び図2に示される二点鎖線を水平面Hとすると、前記端部領域20Aの前後二箇所が水平面Hに接して自立姿勢が保たれるとともに、端部領域20Aの左右両側と水平面Hとの間に、本体部11の内外を通じる隙間Sを形成するようになっている。この隙間Sにより、本体部11内の通気性を確保できる他、前記穴24及び隙間Sを通じて上下方向に沿って通気が行われるようになり、本体部11内や発音部15に付着した水分等の乾燥性を高めて衛生的に保つことが可能となる。
【0061】
また、図12に示されるように、水平面h上に簡易吹奏楽器10を横置きとした場合、口当て部12の端部当接領域42側と本体部11の開口20側とが水平面hに接するようになる。この状態において、簡易吹奏楽器10を転がすような意図しない外力が付与されても、開口20を形成する端部領域20Aが前述のように略楕円状をなすので、前記転がり方向と反対方向の抗力が生じる他、前記片部材45の先端が水平面hに当接し、前記転がりを規制するようになっている。
【0062】
従って、このような実施形態によれば、口当て部12の当接端部領域42が口及びその周辺に沿って馴染むように当接するので、それらの間から演奏者の吹いた空気が効率良くリード50,50に向かって流れることとなる。従って、吹く力が低下した高齢者等であっても、発音量を十分に確保した演奏を容易に行うことができる。
【0063】
また、図1に示されるように、簡易吹奏楽器10を水平面H上に自立させた状態で本体部11を掴むときに、各片部材45,45の下側から指を掛けるようすることができる。しかも、本体部11の開口20側の平面形状が楕円状をなすので、手の平とホーン体17外周面とが馴染み易くなる。これにより、握力が低下している者であっても、簡易吹奏楽器10を簡単に持ち上げて口に当てることが可能となる。
【0064】
更に、開口20側の形状や境界形成体14の片部材45により、簡易吹奏楽器10の転がりを防止する手段を構成したので、床等に落下して不用意な位置に転がり、これを踏んで転倒等することを防止することができる。
【0065】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態に対し、形状、位置若しくは方向、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0066】
例えば、前記口当て部12は、単一とは限らずに複数個用意してもよい。これにより、一個の簡易吹奏楽器10を複数人で使用する場合、演奏者毎に口当て部12を変えることにより、当該口当て部12を衛生的に維持することができる。また、口当て部12は、種々の設計変更が可能であり、例えば、図13〜図15に示されるタイプのものに代替したり、前記実施形態のものと選択的に用いてもよい。図13〜図15に示される口当て部12は、周壁部52を扁平なリング状に形成し、その上端部を当接端部領域53としたものである。
【0067】
また、口当て部12は、種々の材料により構成でき、例えば、ポリエチレン等の焼却処分時に有害ガスの発生を回避可能な材料や洗浄後に再利用可能なプラスチック等の材料、紙等の再生処理やリサイクル可能な材料により構成することができる。このような材料を用いれば、演奏する度に口当て部12を容易に交換でき、より衛生的に保つことが可能となる。
【0068】
また、前記簡易吹奏楽器10を複数個用いることにより簡易吹奏楽器セットを構成し、各簡易吹奏楽器10の音の高さ音階に従ってそれぞれ設定したり、音程や音調がそれぞれ相違するように設定することが例示できる。このとき、図16に示されるように、各簡易吹奏楽器10の同図中右側の片部材45には、音高、音程又は音調の識別手段としてのマーク56が設けられる。このマーク56を視認することにより、各簡易吹奏楽器10の音高等の違いを容易に認識できるようになっている。これにより、指揮者等がプラカード等を介してマーク56を演奏者に見せることにより、演奏者が演奏すべき音高の簡易吹奏楽器10を知得できるようになり、音楽の専門的な知識や譜面を見たりすることなく所望の楽曲を演奏することが可能となる。また、和音の組み合わせ、例えば、「ドミ」、「ドソ」、「ドファ」といった二つの音や、「ドミソ」、「ドファラ」といった三つの音毎に同じマーク56を付することにより、簡単に和音を演奏することも可能となる。
なお、前記識別手段は、図示構成例に限られるものでなく、図16に示されるもの以外のマークや文字を付したり、片部材45以外の本体部11や口当て部12にマークを付してもよい。また、各簡易吹奏楽器10における本体部11や口当て部12の色彩や模様を変えたり、それらを任意に組み合わせたりすることにより識別手段を構成してもよい。要する、外観によって音高等の違いを認識できるように識別手段が設けられていれば足りる。
【0069】
更に、複数個の簡易吹奏楽器10を用いる場合、図17に示されるように、整列保持部材57を介して各簡易吹奏楽器10を集合保持させてもよい。この整列保持部材57は、各簡易吹奏楽器10のホーン体17が挿入される複数の穴58を備えている。各穴58の内周面は、ホーン体17の外周に沿うテーパ面により形成されている。各穴58に簡易吹奏楽器10を取り付ける場合、先ず、ホーン体17だけを穴58の図17中下側から挿通し、その後、ホーン体17の開放部19側に支持体18を挿入保持させればよい。これにより、各簡易吹奏楽器10を集合保持され、この状態で、各簡易吹奏楽器10を交互に演奏できるようになる。
【0070】
また、前記発音部15は、種々の設計変更が可能であり、例えば、各リード50,50の上端側(口当て部12側)を保持板48に片持ち支持させてもよい。これにより、口当て部12を介して吸うことにより音を発するようになる。また、一方のリード50の上端側を片持ち支持させ、他方のリード50の下端側を片持ち支持させることにより、吹く及び吸うことにより発音させてもよい。更に、リード50を一本だけとして、吹く又は吸うことにより音を発するようにしてもよい。但し、前記実施形態のようなリード50,50を用いた方が、唸り現象を生じさせることができる点で有利となる。
【0071】
更に、前記端部領域20Aの形状は、例えば、正面視で波状若しくは凸凹状とし、水平面H(図1及び2参照)側に隙間を形成するようにしてもよい。但し、前記実施形態のような湾曲形状とした方が、手の平で端部領域20Aを閉塞し易くなる点で有利となる。
【0072】
また、前記ホーン体17において、通路を多数の穴24により構成したが、メッシュやネット等に通路を形成してもよい。
【0073】
更に、前記実施形態では、Oリング29,44を用いて異なる二部材を連結する構成としたが、これに代えて、前記二部材を着脱自在とする嵌合構造若しくは係合構造に代替することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、主として、福祉施設や医療施設等でリハビリテーションや音楽療法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】実施形態に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【図2】図1の右側面図。
【図3】図1の分解図。
【図4】図2の分解図。
【図5】図2のA−A線に沿う断面図。
【図6】図3のB−B線に沿う断面図。
【図7】本体部を構成するホーン体の平面図。
【図8】図7の底面図。
【図9】図3のC−C線に沿う断面図。
【図10】本体部を構成する支持体の底面図。
【図11】図1の平面図。
【図12】前記簡易吹奏楽器を横置きした状態の説明図。
【図13】変形例に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【図14】変形例に係る簡易吹奏楽器の側面図。
【図15】(A)は、変形例に係る簡易吹奏楽器の口当て部の正面図、(B)は、(A)の正面断面図、(C)は、図13の平面図。
【図16】簡易吹奏楽器セットの平面図。
【図17】簡易吹奏楽器セットの変形例を示す正面図。
【図18】従来例に係る簡易吹奏楽器の正面図。
【符号の説明】
【0076】
10・・・簡易吹奏楽器、11・・・本体部、12・・・口当て部、14・・・境界形成体、15・・・発音部、19・・・上端部、20・・・開口、20A・・・端部領域、24・・・穴(通路)、42,53・・・当接端部領域、56・・・マーク(識別手段)、57・・・整列保持部材、S・・・隙間、H・・・水平面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記口当て部の当接端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備えていることを特徴とする簡易吹奏楽器。
【請求項2】
演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記発音部は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせることを特徴とする簡易吹奏楽器。
【請求項3】
前記口当て部は、本体部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易吹奏楽器。
【請求項4】
前記本体部は、所定の水平面上に開口側が位置するように載置したときに、当該開口側に本体部の内外を通じる隙間を形成する形状に設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の簡易吹奏楽器。
【請求項5】
前記本体部の開口を形成する端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に膨らむ湾曲形状を備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項6】
前記本体部は、その外部と発音部とを通じる通路を含み、当該通路は、発音部に対向する本体部の領域に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項7】
前記本体部は、前記開口側に向かって平面視した形状が次第に略楕円状に変化する筒状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項8】
前記本体部と口当て部との間に、外側に突出する境界形成体を設けたことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の簡易吹奏楽器を複数個備えた簡易吹奏楽器セットであって、
前記各簡易吹奏楽器に、音高、音程又は音調の識別手段を設けたことを特徴とする簡易吹奏楽器セット。
【請求項10】
前記識別手段は、各簡易吹奏楽器に色彩、模様、文字、マークの何れか又はこれらの任意の組み合わせを付することにより構成されていることを特徴とする請求項9記載の簡易吹奏楽器セット。
【請求項11】
前記各簡易吹奏楽器は、整列保持部材を介して集合保持され、この集合保持状態で各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能に設けられていることを特徴とする請求項9又は10記載の簡易吹奏楽器セット。
【請求項1】
演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記口当て部の当接端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に凹む湾曲形状を備えていることを特徴とする簡易吹奏楽器。
【請求項2】
演奏者の口及びその周辺に当接される当接端部領域を備えた口当て部と、この口当て部を介して演奏者が吹く又は吸うことにより音を発する発音部と、この発音部を囲う位置に設けられるとともに、前記口当て部と反対側に開口が形成された本体部とを備え、
前記発音部は、周波数の異なる複数の音を同時に発して唸り現象を生じさせることを特徴とする簡易吹奏楽器。
【請求項3】
前記口当て部は、本体部に着脱自在に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の簡易吹奏楽器。
【請求項4】
前記本体部は、所定の水平面上に開口側が位置するように載置したときに、当該開口側に本体部の内外を通じる隙間を形成する形状に設けられていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の簡易吹奏楽器。
【請求項5】
前記本体部の開口を形成する端部領域は、正面視したときに、左右方向両側より中央部が次第に膨らむ湾曲形状を備えていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項6】
前記本体部は、その外部と発音部とを通じる通路を含み、当該通路は、発音部に対向する本体部の領域に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項7】
前記本体部は、前記開口側に向かって平面視した形状が次第に略楕円状に変化する筒状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項8】
前記本体部と口当て部との間に、外側に突出する境界形成体を設けたことを特徴とする請求項1ないし7の何れかに記載の簡易吹奏楽器。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れかに記載の簡易吹奏楽器を複数個備えた簡易吹奏楽器セットであって、
前記各簡易吹奏楽器に、音高、音程又は音調の識別手段を設けたことを特徴とする簡易吹奏楽器セット。
【請求項10】
前記識別手段は、各簡易吹奏楽器に色彩、模様、文字、マークの何れか又はこれらの任意の組み合わせを付することにより構成されていることを特徴とする請求項9記載の簡易吹奏楽器セット。
【請求項11】
前記各簡易吹奏楽器は、整列保持部材を介して集合保持され、この集合保持状態で各簡易吹奏楽器を交互に演奏可能に設けられていることを特徴とする請求項9又は10記載の簡易吹奏楽器セット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
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【図18】
【公開番号】特開2006−171476(P2006−171476A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365211(P2004−365211)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
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