説明

簡易装着帯

【課題】一人で容易に装着できる構成でありながら、あたかも従来の帯の結び方で装着しているかのように見える極めて実用性に優れた簡易装着帯を提供することを目的とする。
【解決手段】帯部1と帯結び部2とからなり、前記帯部1の長手方向一側1aの前記帯部1の長手方向他側1bとの重合面で、装着した際に身体の正面に配される帯前4の裏面となる位置に、前記面ファスナの雌雄の一方側3aを付設し、前記帯部1の長手方向他側1bに、胴まわり寸法に応じて前記面ファスナの雌雄の一方側3aの係止位置を調整し得る長さを有する面ファスナの雌雄の他方3bを付設し、前記帯結び部2に前記帯部1を挿通する帯挿通部5を設け、この帯挿通部5に前記帯部1を挿通してこの帯部1に対して前記帯結び部2をスライド自在に設けた簡易装着帯。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一人でも容易に装着することが出来る着物の帯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
着物を着付ける際の厄介な作業の一つとして、帯の装着作業が挙げられる。
【0003】
帯の装着は非常に煩雑なものであり、また、結び方も様々な種類があるので、普段、着物を着ない人などは、なかなか結び方が覚えることができず、また、一旦習得しても、たまにしか着物を着ないので、せっかく覚えた帯の結び方を忘れてしまったりして帯をきちんと装着することができない人が多い。
【0004】
また、帯は、きちんと形作って装着しないと、せっかくの着物の美しさを損ねてしまったり、また、しっかりと結ばないと着用中に着物が着崩れてしまったりすることもあり、非常に装着時には技術を必要とするものでもある。
【0005】
従って、これらの普段、着物を着ない人などは、美容室や着物の着付け専門店に行ったり、知り合いの熟練者などに依頼したりして装着しているのが現状であり、このような人たちにとって、着物は手軽に着ることができないものであり、よって、このような着付け時の煩雑さが更なる着物離れの原因のひとつとなっている。
【0006】
そのため、着物を気軽に着るための様々な提案がされており、帯に関しても、一人で簡単に装着することができるよう特許文献1,2などに示される様々な提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−063686号公報
【特許文献2】特開2009−275311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来、提案されているものは、確かに一人でも容易に着用することができるものであるが、見た目で明らかに本来の帯とは異なるものが多く、従来の帯が持つ見た目の美しさや品格を踏襲するものがない。
【0009】
そこで、本発明は、一人で容易に装着できる構成でありながら、あたかも従来の帯の結び方で装着しているかのように見える極めて実用性に優れた簡易装着帯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
帯部1と帯結び部2とからなり、この帯部1の長手方向一側1aの一面側に面ファスナの雌雄の一方側3aを設け、この帯部1の長手方向他側1bの他面側に前記面ファスナの雌雄の他方側3bを設け、この帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを身体の正面側で重合し、前記面ファスナの雌雄3a,3bで係着して装着する簡易装着帯において、前記帯部1の長手方向一側1aの前記帯部1の長手方向他側1bとの重合面で、装着した際に身体の正面に配される帯前4の裏面となる位置に、前記面ファスナの雌雄の一方側3aを付設し、前記帯部1の長手方向他側1bに、胴まわり寸法に応じて前記面ファスナの雌雄の一方側3aの係止位置を調整し得る長さを有する面ファスナの雌雄の他方側3bを付設し、前記帯結び部2に前記帯部1を挿通する帯挿通部5を設け、この帯挿通部5に前記帯部1を挿通してこの帯部1に対して前記帯結び部2をスライド自在に設けたことを特徴とする簡易装着帯に係るものである。
【0012】
また、前記帯部1の長手方向一側1aの先端部から、前記面ファスナの雌雄の一方側3aを付設した位置までの長さは、この面ファスナの雌雄の一方側3aを身体の正面に配して前記帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを重合した際に、この帯部1の長手方向一側1aの先端部が身体の側方若しくは背面に配する長さに設定したことを特徴とする請求項1記載の簡易装着帯に係るものである。
【0013】
また、前記面ファスナの雌雄の他方側3bの長手方向寸法は、前記面ファスナの雌雄の一方側3aの長手方向寸法に比して長く設定し、この面ファスナの雌雄の一方側3aを前記面ファスナの雌雄の他方側3bの先端側に係止した際は、前記帯部1の胴まわり寸法が最大寸法となり、この面ファスナの雌雄の一方側3aを前記面ファスナの雌雄の他方側3bの基端側に係止した際は、前記帯部1の胴まわり寸法が最小寸法となる胴まわり寸法調整可能な長さに設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の簡易装着帯に係るものである。
【0014】
また、前記面ファスナの雌雄の他方側3bの長さは、前記帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを身体の正面側で重合させ、この長手方向一側1aに付設した前記面ファスナの雌雄の一方側3aを、前記長手方向他側1bに付設した前記面ファスナの雌雄の他方側3bに、前記帯部1の胴まわり寸法が最大寸法となる位置で係着した際に、前記帯部1の長手方向一側1aに隠蔽される長さに設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の簡易装着帯に係るものである。
【0015】
また、前記帯結び部2は、装着した際に、手先に見える手先部6を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の簡易装着帯に係るものである。
【0016】
また、前記帯部1の長手方向一側1aの端部に面ファスナの雌雄の一方側7aを付設し、前記帯結び部2若しくは前記手先部6の内側面に前記面ファスナの雌雄の一方側7aと係合する面ファスナの雌雄の他方側7bを付設して、前記帯部1の長手方向一側1aの端部を前記帯結び部2若しくは前記手先部6に係脱自在に設けたことを特徴とする請求項5記載の簡易装着帯に係るものである。
【0017】
また、前記手先部6は、この手先部6の外側面に帯締め8を挿通支持する帯締め通し部9を設けたことを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載の簡易装着帯に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、着用者の胴まわり寸法に合わせて面ファスナの係止位置を調整して係着するだけの極めて簡単な作業で身体に装着することができる。
【0019】
即ち、帯部の長手方向他側に胴まわり寸法を調整し得る長さを有する面ファスナの雌雄の他方側を付設したことにより、この面ファスナの雌雄の他方側と、帯部の長手方向一側に付設した面ファスナの雌雄の一方側の係合位置を調整することで簡単にサイズ調整ができ、例えば、胴まわりが大きい人は、長手方向一側の面ファスナの雌雄の一方側を長手方向他側の面ファスナの雌雄の他方側の先端側で係合させ、また例えば、胴まわりが小さい人は、長手方向一側の面ファスナの雌雄の一方側を長手方向他側の面ファスナの雌雄の他方側の基端側で係合させるだけの極めて容易なサイズ調整作業をするだけで、きちんと帯を胴回り寸法に合わせて装着することができる。
【0020】
しかも、帯を装着する際に、帯前の裏面となる位置に付設した面ファスナの雌雄の一方側が目印となり、例えば、表の柄の位置を確認しなくとも、面ファスナを身体の正面に配して重ね合わせることで帯前がきちんと身体の正面に配されるので、帯の装着位置を一度で決定することができるので、余計な位置調整などの手間がかからない。
【0021】
また、帯部の帯前の位置が正面となるように帯部を胴回り方向に動かした際に、帯結び部も一緒に動いてしまい、身体の背面中心からずれてしまうことがあるが、帯部に対して帯結び部をスライド自在に設けたことで、容易に帯結び部の位置を調整することができ、従って、装着した際には、帯前がきちんと正面に配され、帯結び部の位置もきちんと背面中心に配されるので、見た目にも従来の帯と遜色無い美しさを装っている。
【0022】
このように、本発明は、特殊な技術を必要とせず、一人で容易に装着することができ、しかも、装着時の帯の装着状態も美しく見える実用性に優れた簡易装着帯となる。
【0023】
また、請求項2記載の発明においては、帯部の長手方向一側の端部、即ち、装着した際の帯部の重合端部が正面側からは見えない位置に配されることで、着用した際に、見た目に美しい簡易装着帯となる。
【0024】
また、請求項3記載の発明においては、細身の人から、太身の人まで、幅広い体型に対応することができる実用性に優れた簡易装着帯となる。
【0025】
また、請求項4記載の発明においては、胴まわり寸法の調整可能範囲内で装着した場合は、面ファスナが常に帯部の長手方向一側によって隠蔽されるので、表面に露出することがなく見た目を損ねず、装着時の体裁の良さを保つことができる。
【0026】
また、請求項5記載の発明においては、あたかも従来の一本の帯で結んでいるかのように見える、体裁の良い簡易装着帯となる。
【0027】
また、請求項6載の発明においては、例えば、細身の人は、帯部の外側に配した先端部をお太鼓の中に収納できるので帯部の先端側が垂れ下がることが無いが、例えば、胴まわりの大きい人は、帯部を装着した際に、帯部の外側に配した先端部をお太鼓に届かず収納できない場合もあるが、このような場合でも、前記帯部の長手方向一側の端部に付設した面ファスナの雌雄の一方側と、前記帯結び部若しくは前記手先部の内側面に付設した面ファスナの雌雄の他方側とを係着することで、帯部の先端側をお太鼓の中に収納しなくとも垂れ下がることが無くなり、帯締めを結ぶ際に、一々帯部を押える必要もなく、簡単に帯締めを結ぶことができる。
【0028】
また、請求項7載の発明においては、一々背面に手を回すことなく、予め挿通しておいた帯締めを結ぶだけで簡単に帯締めが装着でき、更に、例えば、この帯締めを挿通支持する帯締め通し部を手先部の高さ位置中央に設けることで、一々高さを調整することなく、常に帯の真ん中で結ぶことができ、見た目も良くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施例を示す説明正面である。
【図2】本実施例を示す説明背面である。
【図3】本実施例の帯挿通部を示す説明図である。
【図4】本実施例の装着状態を示す説明平面図である。
【図5】本実施例の装着状態を示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0031】
帯結び部2に設けた帯挿通部5に帯部1を挿通し、帯部1と帯結び部2と一体化し、この一体化した状態で帯結び部2を身体の背面側に配し、帯部1を着用者の身体に巻き着けるようにして正面側で重合させて装着する。
【0032】
この際、例えば、帯部1の長手方向他側1bを内側に配し、帯部1の長手方向一側1aを外側に配し、帯部1の長手方向一側1aに付設した面ファスナの雌雄の一方側3aを着用者の胴まわり寸法に合わせて面ファスナの雌雄の他方側3bに係止位置を調整して係着するだけで容易に装着することができる。
【0033】
しかも、このとき、帯部1の長手方向一側1aに設けた面ファスナの雌雄の一方側3aが目印となり、これを身体の正面に配するように位置を調整して装着することで、一々帯前4の位置を確認しなくとも、帯前4がきちんと正面に配されることとなる。
【0034】
しかも、胴まわり寸法の調整によって、身体の背面に配した帯結び部2の位置がずれてしまった場合でも、この帯結び部2が帯部1に対してスライド自在に設けた構成と成っているので、身体の正面に配した帯前4の位置を動かさずとも、帯結び部2をスライド移動させて位置調整することで背面中央に配することができ、装着時の見た目を損ねない、体裁の良い優れた簡易装着帯となる。
【実施例】
【0035】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0036】
本実施例は、帯部1と帯結び部2とからなり、この帯部1の長手方向一側1aの一面側に面ファスナの雌雄の一方側3aを設け、この帯部1の長手方向他側1bの他面側に前記面ファスナの雌雄の他方側3bを設け、この帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを身体の正面側で重合し、前記面ファスナの雌雄3a,3bで係着して装着する簡易装着帯において、前記帯部1の長手方向一側1aの前記帯部1の長手方向他側1bとの重合面で、装着した際に身体の正面に配される帯前4の裏面となる位置に、前記面ファスナの雌雄の一方側3aを付設し、前記帯部1の長手方向他側1bに、胴まわり寸法に応じて前記面ファスナの雌雄の一方側3aの係止位置を調整し得る長さを有する面ファスナの雌雄の他方側3bを付設し、前記帯結び部2に前記帯部1を挿通する帯挿通部5を設け、この帯挿通部5に前記帯部1を挿通してこの帯部1に対して前記帯結び部2をスライド自在に設けた簡易装着帯である。
【0037】
具体的には、帯部1は、従来の一本の帯を装着する際に、幅方向に二つ折りして装着するのと同じような外観を装うために、後述する帯結び部2の半分の帯幅に設定し、あたかも従来の一本の帯を用いて装着しているかのように見える構成としている。
【0038】
また、この帯部1は、装着する際に身体に反時計回りに巻き着ける、即ち身体の背面側から右側を通して正面側に巻き着ける長手方向一側1aと、装着する際に身体に時計回りに巻き着ける、即ち身体の背面側から左側を通して正面側に巻き着ける長手方向他側1bとからなり、これらを身体の正面側で、長手方向一側1aを外側に、長手方向他側1bを内側に配して重合させて装着する構成としている。
【0039】
また、これら帯部1の両側1a,1b夫々の重合面、即ち、長手方向一側1aの裏面と、長手方向他側1bの表面には、夫々互いに係合する面ファスナの雌雄3a,3bの一方側を付設しており、本実施例では、長手方向一側1aに面ファスナの雄側3aを付設し、長手方向他側1bに面ファスナの雌側3bを付設した構成としている。
【0040】
更に詳しく説明すると、帯部1の長手方向一側1aの裏面に付設した面ファスナの雄側3aは、帯を装着した際に、身体の正面に配される帯前4のちょうど裏側に位置するところに付設している。
【0041】
従って、この面ファスナの雄側3aが目印となり、帯部1の裏面側からでも表面側の帯前4の位置が分かる構成となっている。そのため、この面ファスナの雄側3aが長すぎると、帯前4の位置が曖昧になってしまい、きちんと身体の正面に配することができなくなり、また、短すぎると、面ファスナ3としての接着能力が低下してしまう。
【0042】
また、面ファスナの雄側3aが面ファスナの雌側3bよりも長いと、面ファスナの雌側3bと係合させた際に、この面ファスナの雌側3bからはみ出してしまい、面ファスナの雄側3aの表面が着物の表面に当接し擦れることで着物を傷めてしまう可能性があるので、本実施例では、面ファスナの雄側3aの長さを、面ファスナの雌側3bの長さよりも短い長さに設定している。
【0043】
従って、この面ファスナの雄側3aは、帯前4の目印となり、且つ面ファスナ3としての役割も果たし、更に面ファスナの雌側3bよりも短い長さの最適な寸法に設定するのが良く、具体的には5cm〜10cm程度が好ましく、本実施例では、この面ファスナの雄側3aの形状を幅5cm、長さ8cm程度の長方形状に形成している。
【0044】
このように、面ファスナの雄側3aの長さを短い長さに設定することで、帯前4の位置をきちんと身体の正面に配することも容易にでき、また、帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを重合した際、面ファスナの雄側3aが面ファスナの雌側3bからはみ出すことがなく、従って、着物を傷める心配がなく、また更に帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを重合する際も、係合しようとする位置と違うところで面ファスナ3a,3bが係着してしまう不具合も生じず、面ファスナの雄側3aを面ファスナの雌側3bの所定の位置にスムーズに係合することができ、従って、帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを容易に重合することができる。
【0045】
また、上述したように面ファスナの雄側3aは、この帯部1を装着した際に身体の正面に配される帯前4の裏面となる位置に付設されているが、この面ファスナの雄側3aを付設した帯前4の裏面となる位置とは、前記帯部1の長手方向一側1aの先端部から、この面ファスナの雄側3aを身体の正面に配して帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを重合した際に、この帯部1の長手方向一側1aの先端部が身体の側方若しくは背面に配する長さ分だけ離れた位置に設定している。
【0046】
従って、この面ファスナの雄側3aを目印にして、帯前4を身体の正面に配するようにして装着することで、一々、帯部1の長手方向一側1aの先端部の位置を気にしながら装着しなくとも、常に長手方向一側1aの先端部は身体の側方若しくは背面に位置することとなる。
【0047】
具体的には、細身の人が装着した場合は、帯部1の長手方向一側1aの先端部が身体の背面、即ち、帯結び部2に到達し、太身の人でも側方に前記先端部が側方に位置するので、正面側から見た際には、帯部1の端部が見えず、あたかも従来の帯を装着しているかのように見せることができ、体裁を損ねることが無い簡易装着帯となる。
【0048】
一方、この面ファスナの雄側3aと係合する面ファスナの雌側3bは、この帯部1の長手方向他側1bの表面側先端部に付設しており、具体的には、長手方向他側1bの先端と、面ファスナの雌3bの先端とを合わせた面一状態となるように付設している。
【0049】
また、この面ファスナの雌側3bは、着用者の胴まわり寸法に応じて面ファスナの雄側3aの係止位置を調整し得る長さを有した帯状に形成しており、言い換えると、面ファスナの雌側3bの長手方向寸法は、面ファスナの雄側3aの長手方向寸法に比して長く設定し、この面ファスナの雄側3aを面ファスナの雌側3bの先端側に係止した際は、帯部1の胴まわり寸法が最大寸法となり、この面ファスナの雄側3aを面ファスナの雌側3bの基端側に係止した際は、帯部1の胴まわり寸法が最小寸法となる胴まわり寸法調整可能な長さに設定している。
【0050】
即ち、細身の人の場合は、面ファスナの雄側3aを正面に配し、長手方向他側1bを時計回り方向に引っ張り、面ファスナの雌側3bの基端側と係止させ、また、太身の人の場合は、面ファスナの雄側3aを正面に配し、長手方向他側1bを反時計回り方向に引っ張り、面ファスナの雌側3bの先端側と係止させることで帯部1の寸法を容易に胴まわり寸法に合わせる調整ができる構成としている。
【0051】
また更に、この面ファスナの雌側3bの長さは、帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを身体の正面側で重合させ、面ファスナの雄側3aを、この面ファスナの雌側3bの先端部、即ち帯部1の胴まわり寸法が最大寸法となる位置で係着した際に、帯部1の長手方向一側1aに隠蔽される長さに設定している。
【0052】
具体的には、本実施例では、この面ファスナの雌側3bの長さを35cmに設定し、従って、面ファスナの雄側3aとの係止位置の調整によって胴まわり寸法の調整幅を25cm〜30cmの範囲で可能としている。
【0053】
このような長さに設定することで、細身の体型から太身の体型まで幅広い体型に装着可能となり、しかも、この胴まわり寸法の調整可能範囲内で装着した場合は、面ファスナの雌側3bが常に帯部1の長手方向一側1aによって隠蔽されるので、表面に露出することがなく見た目を損ねず、装着時の体裁の良さを保つことができる。
【0054】
このように構成した帯部1にスライド自在に設ける帯結び部2は、一片の長方形状に形成した生地を折りたたみ縫着して、この生地の長手方向一側1aでお太鼓部10を形成し、他側で太鼓垂れ部11を形成したお太鼓結び形状に構成としている。
【0055】
具体的には、お太鼓部10を形成した生地の長手方向一側1aの先端側にタック12を形成して先端側が窄んだ形状に形成し、この先端側を窄ませたことによって、お太鼓部10の上部両側の肩部13が稍下方に落ち込む形状に形成している。
【0056】
また、太鼓垂れ部11の内側面(装着した際に身体側となる面)に帯挿通部5を設けた構成としている。
【0057】
この帯挿通部5は、帯部1の幅よりも稍広い幅の布地を太鼓垂れ部11に上下部のみを縫着し、左右方向、即ち胴まわり方向を開口し、帯部1を挿通可能な状態に構成している。
【0058】
また、帯挿通部5は、お太鼓部10を形成した生地の長手方向一側1aの先端側によって隠蔽される位置に設けたので、外側からこの帯挿通部5が見えることはなく、外観を損ねることがない構成としている。
【0059】
このようにお太鼓部10と太鼓垂れ部11を形成した帯結び部2に手先部6を設けて、装着した際に、より一層、あたかも従来の一本の帯で袋帯結びをしているかのように見える構成としている。
【0060】
また、この手先部6の表側、即ちお太鼓部10側の略中央には、帯締め8を挿通支持する帯締め通し部9を設けている。
【0061】
この帯締め通し部9に予め帯締め8を挿通状態にして装着することで、帯を装着した後に、一々後に手を回してお太鼓部10の中に帯締め8を通すという煩わしい作業が不要となり、特に着物を着用した際は、この手を後に回しての作業が困難であり、このように予め帯締め8をお太鼓部10に挿通状態とすることで、極めて装着時の作業性が向上する。
【0062】
また、帯締め通し部9は、手先部6の高さ位置中央に設けたので、一々お太鼓部10に手を回して高さを中央に合わせる調整をしなくとも、簡単に帯部1の中央で帯締め8を結ぶだけで、帯締め8を全周に渡って、きちんと帯部1の高さ方向中央位置に配することができる。
【0063】
また、本実施例では、帯部1の長手方向一側1aの端部に面ファスナの雌雄の一方側7aを付設し、帯結び部2若しくは手先部6の内側面に前記面ファスナの雌雄の一方側7aと係合する面ファスナの雌雄の他方7bを付設して、帯部1の長手方向一側1aの先端部を帯結び部2若しくは手先部6に係脱自在に設けた構成としている。
【0064】
具体的には、帯部1の長手方向一側1aの表面側先端部に面ファスナの雄側7aを付設し、手先部6の内側面、即ち、装着した際に身体側に向いている面の端部に面ファスナの雌側7bを付設し、これらの面ファスナの雄側7aと面ファスナの雌側7bとを係合することで帯部1の長手方向一側1aの先端側を帯に仮止め可能な構成としている。
【0065】
更に具体的に説明すると、例えば、前述した帯締め8を締める際、細身の人は、帯部1の長手方向一側1aの先端部が身体の背面、即ち、帯結び部2に到達し、お太鼓部10に収納係止される状態となるので、この帯部1の先端部が垂れ下がったままの状態となることは無いが、太身の人は、先端部がそこまで届かないので、係止することができず、手で押えていないと垂れ下がってしまい、帯締めの際に、締めにくくなってしまう。しかしながら、本実施例では、お太鼓部10に収納係止できなくとも、上述のように、帯部1の長手方向一側1aの表面側先端部に面ファスナの雄側7aを付設し、手先部6の内側面、即ち、装着した際に身体側に向いている面の端部に面ファスナの雌側7bを付設したので、これらの面ファスナの雌雄7a,7bを係合することで、一々手で押さえつけなくとも、簡単に帯部1の先端部を係止でき、帯締めがし易くなる極めて作業性に優れた簡易装着帯となる。
【0066】
次に、上述のように構成した本実施例の装着方法を以下に説明する。
【0067】
本実施例を装着する際は、太鼓垂れ部11に設けた帯挿通部5に、帯部1を挿通し、また、手先部6に設けた帯締め通し部9に、予め、帯締め8を挿通した状態としておく。
【0068】
このように準備した本実施例を、帯結び部2となるお太鼓部を身体の背面側に配し、先ず、帯部1の長手方向他側1bを、身体の背面側から左側を通して身体に巻き着けるようにして正面側に配し、帯部1の長手方向一側1aを、身体の背面側から右側を通して身体に巻き着けるようにして身体の正面側で帯部1の長手方向他側1bが内側、長手方向一側1aが外側に配するようにして重合する。
【0069】
この際に、帯部1の長手方向一側1aに付設した面ファスナの雄側3aを、身体の正面に配するように帯部1の長手方向他側1bに付設した面ファスナの雌側3bとの係止位置を調整して係着する。
【0070】
具体的には、例えば、細身の人は、長手方向一側1aに付設した面ファスナの雄側3aを、長手方向他側1bに付設した面ファスナの雌側3bの基端側で係着させ、例えば、太身の人は、長手方向一側1aに付設した面ファスナの雄側3aを、長手方向他側1bに付設した面ファスナの雌側3bの先端側で係着させることで、胴まわり寸法に応じて容易に装着することができる。
【0071】
また、帯部1の長手方向一側1aと長手方向他側1bとを身体の正面側で重合させる際には、長手方向一側1aに付設した面ファスナの雄側3aが身体の正面に位置するようにして装着する。この面ファスナの雄側3aを身体の正面に配することで、この面ファスナの雄側3aの裏側となる帯部1の表面の帯前4が身体の正面に配され、装着した際の見た目を損なわず、体裁の良いものとなる。
【0072】
即ち、一々、帯部1の表面側を確認しなくとも、帯前4のちょうど裏側に付設した面ファスナの雄側3aを目印にすることで、容易に帯前4を身体の正面に配することができることとなる。
【0073】
また、この帯前4を身体の正面に配することで、この帯前4から長手方向一側1aの先端部までの長さがきちんと確保され、従って、長手方向一側1aの先端側をきちんと帯結び部2に収納係止、若しくは、この長手方向一側1aの先端部に付設した面ファスナの雄側7aを手先部6に付設した面ファスナの雌側7bに係止することができ、一々手で押えていなくとも長手方向一側1aの先端側が垂れ下がったままの状態となることが無い。
【0074】
このように帯部1を身体に装着し、帯前4の位置もきちんと正面に配した際に、この胴まわり寸法の調整によって、帯結び部2の位置がずれてしまった場合でも、この帯結び部2が帯部1に対してスライド自在に設けた構成と成っているので、身体の正面に配した帯前の位置を動かさずとも、帯結び部2をスライド移動させて身体の背面中央に位置するように位置調整を行う。
【0075】
そして、最後に、予め帯締め通し部9に挿通しておいた帯締め8を帯前4の位置で結ぶことで装着作業が終了となる。
【0076】
このように、本実施例は、極めて容易な作業で、しかも、一人で帯を装着することができ、更に、装着した状態が、あたかも従来の一本の帯で結んでいるかのように見える体裁の良い優れた簡易装着帯となる。
【0077】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0078】
1 帯部
2 帯結び部
3a 面ファスナの雌雄の一方側
3b 面ファスナの雌雄の他方側
4 帯前
5 帯挿通部
6 手先部
7a 面ファスナの雌雄の一方側
7b 面ファスナの雌雄の他方側
8 帯締め
9 帯締め通し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯部と帯結び部とからなり、この帯部の長手方向一側の一面側に面ファスナの雌雄の一方側を設け、この帯部の長手方向他側の他面側に前記面ファスナの雌雄の他方側を設け、この帯部の長手方向一側と長手方向他側とを身体の正面側で重合し、前記面ファスナの雌雄で係着して装着する簡易装着帯において、前記帯部の長手方向一側の前記帯部の長手方向他側との重合面で、装着した際に身体の正面に配される帯前の裏面となる位置に、前記面ファスナの雌雄の一方側を付設し、前記帯部の長手方向他側に、胴まわり寸法に応じて前記面ファスナの雌雄の一方側の係止位置を調整し得る長さを有する面ファスナの雌雄の他方側を付設し、前記帯結び部に前記帯部を挿通する帯挿通部を設け、この帯挿通部に前記帯部を挿通してこの帯部に対して前記帯結び部をスライド自在に設けたことを特徴とする簡易装着帯。
【請求項2】
前記帯部の長手方向一側の先端部から、前記面ファスナの雌雄の一方側を付設した位置までの長さは、この面ファスナの雌雄の一方側を身体の正面に配して前記帯部の長手方向一側と長手方向他側とを重合した際に、この帯部の長手方向一側の先端部が身体の側方若しくは背面に配する長さに設定したことを特徴とする請求項1記載の簡易装着帯。
【請求項3】
前記面ファスナの雌雄の他方側の長手方向寸法は、前記面ファスナの雌雄の一方側の長手方向寸法に比して長く設定し、この面ファスナの雌雄の一方側を前記面ファスナの雌雄の他方側の先端側に係止した際は、前記帯部の胴まわり寸法が最大寸法となり、この面ファスナの雌雄の一方側を前記面ファスナの雌雄の他方側の基端側に係止した際は、前記帯部の胴まわり寸法が最小寸法となる胴まわり寸法調整可能な長さに設定したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の簡易装着帯。
【請求項4】
前記面ファスナの雌雄の他方側の長さは、前記帯部の長手方向一側と長手方向他側とを身体の正面側で重合させ、この長手方向一側に付設した前記面ファスナの雌雄の一方側を、前記長手方向他側に付設した前記面ファスナの雌雄の他方側に、前記帯部の胴まわり寸法が最大寸法となる位置で係着した際に、前記帯部の長手方向一側に隠蔽される長さに設定したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の簡易装着帯。
【請求項5】
前記帯結び部は、装着した際に、手先に見える手先部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の簡易装着帯。
【請求項6】
前記帯部の長手方向一側の端部に面ファスナの雌雄の一方側を付設し、前記帯結び部若しくは前記手先部の内側面に前記面ファスナの雌雄の一方側と係合する面ファスナの雌雄の他方側を付設して、前記帯部の長手方向一側の端部を前記帯結び部若しくは前記手先部に係脱自在に設けたことを特徴とする請求項5記載の簡易装着帯。
【請求項7】
前記手先部は、この手先部の外側面に帯締めを挿通支持する帯締め通し部を設けたことを特徴とする請求項5,6のいずれか1項に記載の簡易装着帯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−214198(P2011−214198A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84240(P2010−84240)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(500147805)株式会社 きものブレイン (13)