説明

米飯添加用乳化液

【目的】米飯でオニギリをつくるときに重量のバラツキを少なくできる米飯用添加物を提供することである。
【構成】食酢と食用油が乳化性デンプンで乳化されていることを特徴とする米飯添加用乳化液

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、米飯に添加してその特性を向上させる乳化液、すなわち、米飯添加用乳化液に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、米飯の保存性を改善するために食酢を添加することは、すし飯などの調製のときに普通になされることである。また、米飯の保存中の老化を防止するために食用油を添加することも、業務用米飯などの製造に際してしばしばなされることである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、炊きあがった米飯をオニギリにしようとするときは、業務用の場合ではオニギリを機械でつくることが一般化しているが、握ってできるオニギリの個々の重量にバラツキが大きいという問題がある。例えば、ひとつ約100グラム前後のオニギリを40個ぐらい握ると、最大の重量のものと最小の重量のものとで約20グラムほどの重量の開きがでるのが普通である。
【0004】本発明の目的は、機械で握ってオニギリをつくったときに重量の開きが一段と小さくなるような米飯用の添加物を提供することである。
【0005】
【課題を解決する手段】本発明者は、前記の目的を達成しようといろいろ検討してようやく本発明にいたったものである。すなわち、本発明の米飯添加用乳化液は、食酢と食用油が乳化性デンプンを用いて水中油型に乳化されていることを特徴とする。
【0006】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で食酢は、アルコールを含む原料液を酢酸醗酵して得られる液である。通常、含有する有機酸は酢酸以外のものも含むが一般的には酢酸が主体である。含有割合は、限定的ではないが4〜15%くらいが普通である。食酢は、食品に添加する場合に他の食品との味の調和がはかりやすい。食酢の種類に限定はなく、具体的には、モルト酢・リンゴ酢・ワイン酢・米酢・ホワイトビネガーなどがあげられる。
【0007】次に、食用油は、食用に供しうる油であり、代表的にはサラダ油がある。油の種類としては、大豆油・ナタネ油・ヒマワリ油・米油・ゴマ油・パームオレイン油などがあげられる。食酢と食用油との使用割合は、製品中で、通常食酢10〜80%、食用油90〜10%くらいである。
【0008】次に、前記の食酢と食用油とを水中油型に乳化するための乳化性のデンプンとは、乳化性を保持できるようにしたデンプンであって、天然のデンプンにアルキル基を付加したカルボン酸(無水コハク酸など)でエステル化したものや、これらのエステル化デンプンを乳化性を失わない程度に部分加水分解しデキストリン化したものなどがあげられる。
【0009】本発明の乳化液は、食酢と食用油とが前記の乳化性のデンプンで乳化されている。このデンプンの割合は乳化液中、通常0.5〜10%くらいである。なお、本発明の乳化液は本発明の目的を損なわない範囲で他の任意の原料・成分を含むことができる。これらの原料・成分としては、例えば、ガム質(キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム・グアーガム・カラヤガムなど)、タンパク系乳化剤(卵黄、分離大豆タンパク、カゼインソーダ、酵素処理タンパクなど)、油包接したサイクロデキストリンやサイクロラクタム、レシチン類(レシチン、リゾレシチンなど)、着色料、着香料などがあげられる。
【0010】本発明の乳化液において、水中油型に乳化されて分散している油の粒子の平均粒子径は、この大きさに限定されるものではないが、通常0.4〜3ミクロン程度である。乳化性デンプンの乳化液中の割合は、通常は0.5〜10%くらいでよい。あまり少ないとオニギリの重量のバラツキを少なくしにくくなり、また、あまり多いと製品の粘度が高くなりすぎて米飯に混ぜる際に混ぜにくくなるからである。2〜7%くらいがより好ましい。
【0011】次に、本発明の米飯添加用の乳化液の代表的な製造方法を説明する。 まず、食酢を用意して、これに乳化性デンプン、さらに必要により他の補助原料を添加し、全体をほぼ均一に混合する。その中へ、食用油を注入しながら混合する。混合は、ホモミキサー・ホモゲナイザー・コロイドミルなどの公知の乳化機を使用すればよい。
【0012】ただし、乳化液の粘度は、できれば1000〜3000センチポイズ(cp)くらいとすると、米飯に添加混合するうえで都合がよい。本発明の乳化液は、米飯(ご飯)に混ぜてオニギリを機械でつくるときに、オニギリ1個あたりの重量のバラツキを格段と小さいものにすることができる。ご飯に混ぜるためには、炊きあがった後に混ぜる方法もあるが、米に水を加えて炊飯する際に炊飯用の水の中へ本発明の乳化液を添加しておくと、簡単に混ぜることができる。また、ご飯については前記の効果以外に、保存性の改善や老化の防止にも都合がよい。
【0013】ご飯に混ぜるときの乳化液の割合は、ご飯のできあがり重量中、約0.5〜4%程度でよい。
【0014】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。なお本発明において、「%」はすべて「重量%」を示す。
実施例1下記配合の原料をホモミキサーで水中油型に乳化して米飯添加用乳化液(油の平均粒子径は、約1ミクロン。粘度 約1850cp)を製造した。
原料の種類 配合(%)
モルト酢(酸度4%) 50大豆サラダ油 45乳化性デンプン 5─────────────────────合 計 100%実施例2下記配合の原料をホモミキサーで水中油型に乳化して米飯添加用乳化液(油の平均粒子径は、約0.6ミクロン。粘度 約2000cp)を製造した。
原料の種類 配合(%)
米酢(酸度5%) 50コーンサラダ油 46乳化性デンプン 4─────────────────────合 計 100%
【0015】
【試験例】米(生米)10合にその約1.5倍重量の水を加えて炊飯する。その炊飯用の水の中へ、できあがりのご飯の重量の1%になるように、実施例1の配合の乳化液を添加し、常法どおりに炊飯してご飯をつくった。このご飯を使用して、オニギリ成形機にかけて、1個の重量が95グラムをなるべく切れないようにしてオニギリを40個製造した。また、実施例1の配合の乳化液から乳化性デンプンのみを除き、その他はすべて上記の試験例の方法に従ってご飯を炊き、オニギリを製造した。
【0016】それぞれのオニギリの重量のバラツキを測定したところ、以下のとおりであった。
最小 最大 差 本発明品の場合 95グラム 106グラム 11グラム 比較品の場合 95グラム 115ラムム 20グラム本発明品の乳化液を使用した場合に、重量のバラツキが格段と少ないことが理解できる。
【0017】なお、本発明の乳化液を使用したオニギリは保存性も高く、かつ、老化もし難いものであった。
【0018】
【発明の効果】本発明の米飯添加用乳化液をご飯に使用すると、そのご飯でオニギリをつくるときに、できあがるオニギリの重量のバラツキを格段と少なくすることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】食酢と食用油が乳化性デンプンを用いて水中油型に乳化されていることを特徴とする米飯添加用乳化液

【公開番号】特開平6−197711
【公開日】平成6年(1994)7月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−173
【出願日】平成5年(1993)1月5日
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)