説明

粉体含有シート

【課題】粉体及び繊維材料を含み、低坪量であり、粉体の担持量を容易に高めることができると共に効率良く製造可能な粉体含有シートを提供すること。
【解決手段】本発明の粉体含有シート2は、粉体、繊維材料及び分子量1000万以上の中アニオン性高分子化合物を含み、坪量が50g/m2未満である。粉体としては、例えば消臭性能を有する粉体が用いられる。本発明の粉体含有シート2は、例えば、吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体及び繊維状物を含む低坪量の粉体含有シートに関する。
【背景技術】
【0002】
機能性を有する粉体を含む粉体含有シートを湿式抄造法により製造する技術が知られている。
例えば、消臭性能を有する粉体や、空気中の酸素と反応して発熱する被酸化性金属粉体を、繊維状物に担持させた機能性の粉体含有シートを製造する技術が知られている(特許文献1、2参照)。
しかし、厚みのある高坪量の繊維シートの場合には、使用する粉体を高い割合で繊維状物に定着させることができるが、厚みの薄い低坪量の繊維シートを製造する場合には、網を通って抜ける粉体が増加し、定着率が十分とは言えなかった。
即ち、粉体及び繊維状物を含む低坪量の粉体含有シートにおいては、粉体の担持量を容易に高めることができると共に製造も容易な粉体含有シートは未だ提供されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2006−307404号公報
【特許文献2】特開2005−344274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粉体及び繊維状物を含み、低坪量であり、粉体の担持量を容易に高めることができると共に効率良く製造可能な粉体含有シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粉体、繊維状物及び平均分子量1000万以上の中アニオン性高分子化合物を含み、坪量が50g/m2未満である粉体含有シートを提供することにより前記目的を達成したものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粉体及び繊維状物を含み、低坪量であり、粉体の担持量を容易に高めることができると共に粉体による機能の高い粉体含有シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本実施形態の粉体含有シートは、粉体、繊維状物及び特定の高分子化合物を含んでおり、湿式抄造により形成されたものである。また、粉体として、消臭性能を有する粉体を含んでいる。
【0008】
消臭性能を有する粉体としては、各種公知のものを含めて、特に制限なく用いることができる。例えば、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、酸化亜鉛、天然あるいは合成の各種アルミノ珪酸塩(セピオライト、ミズカナイト、ゼオライト)等が挙げられ、ゼオライト、特にハイシリカゼオライト、SiO2/Al23のモル比が30〜900であるゼオライトが好ましい。ハイシリカゼオライトに関しては、特開2007−44401に記載されている。、また、カンクリナイト様鉱物、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる消臭粒子を単独あるいは複数の粉体を組み合わせて用いることができる。
【0009】
消臭性能を有する粉体としては、(a)好ましくは抗菌性を有する金属を含む、カンクリナイト様鉱物、(b)架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマーを含むモノマー成分を共重合して得られる消臭粒子、(C)ハイシリカゼオライトを用いることが好ましい。
【0010】
前記(a)の粉体の詳細については、特開2006―307404号公報に記載されている。金属置換カンクリナイト様鉱物はその平均粒子径が、0.1〜200μm、特に0.4〜100μm、とりわけ1〜50μmであることが好ましい。なお、抄造成形体が、シート状であり、坪量50g/m2以下である場合には、金属置換カンクリナイト様鉱物はその平均粒子径は、粉体の脱落防止、シート表面の風合いの観点で、200μm以下、特に100μm以下、とりわけ1〜50μmであることが好ましい。一方、粉体の歩留り、生産速度、また、得られた紙を吸収性物品に使用する場合においては、排泄液の透過性の観点から、金属置換カンクリナイト様鉱物の平均粒子径は、0.1μm以上、特に0.4μm以上、とりわけ1μm以上であることが好ましい。
【0011】
平均粒子径は、例えばレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所製LA−920)を用い、相対屈折率1.16にて測定する。金属置換カンクリナイト様鉱物は非晶質であっても結晶質であってもよい。含硫黄系悪臭の消臭能向上の観点からは結晶質であることが好ましい。金属置換カンクリナイト様鉱物は、その製造条件に応じて針状結晶、板状結晶、柱状結晶等の集合体として得られる。また、それらの結晶が集合して球状、テトラボッド状、塊状の集合体等を形成していてもよく、それらの二次凝集体でもよい。針状の形態とは、太さが500nm以下で、長さが太さに対してアスペクト比で2.0以上のものをいう。板状の形態とは、厚さが300nm以下で、板径が厚さに対してアスペクト比で2.0以上のものをいう。柱状の形態とは、太さが50nm以上で、長さが太さに対してアスペクト比で1.0以上2.0未満のものをいう。
【0012】
前記(b)の消臭粒子について説明する。
架橋性ビニルモノマーは、ビニル基を二つ以上有するモノマーである。架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジビニルベンゼンが好ましい。モノマー成分中の架橋性ビニルモノマーの割合が大きいほど、BET比表面積の大きい消臭粒子が得られる。従って、全モノマー成分中における架橋性ビニルモノマーの割合は、5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、50重量%以上が更に好ましい。該割合の上限は、98重量%以下が好ましく、90重量%以下がより好ましい。
【0013】
ヘテロ芳香環を有するビニルモノマーは、ビニル基及びヘテロ芳香環を含む化合物であれば特に制限されない。ヘテロ芳香環とは、環状の有機化合物における環であって、構成要素として炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、窒素原子などを含むものをいう。窒素原子を含むものとしては、ピリジン、ピロール、キノリン等の窒素原子を環に1個有するもの、イミダゾール、ピリミジン、ピラジン、ピラゾール等の窒素原子を環に2個有するものが例示される。また、チオフェン、チアゾール等の硫黄原子を環に有するもの、フラン等の酸素を環に有するものが例示される。ヘテロ原子の有する孤立電子対が悪臭物質の吸着を高め、また、金属イオンの化学結合に関与するものと考えられる。これらの中でも、ピリジン、イミダゾール、ピリミジンが好ましい。ヘテロ芳香環を有するビニルモノマーとしては、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリミジン等が挙げられ、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが好ましい。
【0014】
十分に悪臭成分を吸着させるため、また十分な量の金属塩を担持させるために、全モノマー成分中のヘテロ芳香環を有するビニルモノマーの割合は、十分に大きいことが好ましく、具体的には、1重量%以上が好ましく、2重量%以上がより好ましく、4重量%以上が更に好ましい。また、消臭粒子のBET比表面積を大きくすることで吸収効果を高める場合には、全モノマー成分中のヘテロ芳香環を有するビニルモノマーの割合は、50重量%以下にすることが好ましく、30重量%以下にすることがより好ましい。
【0015】
前記(b)の消臭粒子においては、モノマー成分として、架橋性ビニルモノマー及びヘテロ芳香環を有するビニルモノマー以外に、これらと共重合可能な他のモノマーを用いることができる。該他のモノマーとしては、例えば、芳香族系ビニルモノマー、不飽和酸エステル、不飽和酸等が挙げられる。芳香族系ビニルモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルベンジルクロライド等が例示され、不飽和酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が例示され、不飽和酸としては、(メタ)アクリル酸が例示される。また、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等も用いることができる。これらの中では芳香族系ビニルモノマーが好適であり、特にスチレンが好ましい。
【0016】
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸又はメタクリル酸を意味する。
【0017】
前記(b)の消臭粒子のBET比表面積は、架橋性ビニルモノマーの割合や、重合に用いる有機溶剤の選定により任意に設定することができるが、大きいほど消臭効果が高い。高い物理消臭能を有する観点から、10m2/g以上であり、50m2/g以上が好ましく、100m2/g以上がより好ましく、200m2/g以上がさらに好ましい。BET比表面積の上限は特に限定されないが、800m2/g以下が好ましい。なおBET比表面積は、下記実施例に示すBET1点法により求めた値である。
【0018】
前記(b)の消臭粒子の粒径は特に規定されず、これが用いられる用途に応じて適当なものを選定することができる。消臭粒子の粒径は1〜500μmであることが好ましく、特に5〜100μmであることが好ましい。前記(b)の消臭粒子は、水中油型懸濁重合法又は沈殿重合法により製造することが好ましい。
【0019】
前記(C)の消臭粒子について説明する。
ハイシリカゼオライトに関しては、特開2007−44401号公報に記載されている。
ハイシリカゼオライトは、SiO2/Al23のモル比が30〜900、好ましくは100〜700、更に好ましくは200〜600のものである。金属置換カンクリナイト様鉱物としては、以下の組成式(1)で表されるものを用いることが好ましい。
sM(1)xOy・tM(2)2O・Al23・uSiO2・vRmQn・wH2O(1)
式中、M(1)は抗菌性を有する金属を表し、M(2)はNa、K及びHからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、RはNa、K、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の元素を表し、QはCO3、SO4、NO3、OH及びClからなる群より選ばれる1種以上の原子団を表し、sは0<s≦3、tは0≦t≦3(但し、s+t=0.5〜3である)、uは0.5≦u≦6、vは0<v≦2、wはw≧0、xは1≦x≦2、yは1≦y≦3、mは1≦m≦2、nは1≦n≦3を満たす。
【0020】
式(1)中、M(1)は、含硫黄系悪臭に対する消臭能の高さから好ましくはAg、Zn又はCuであることが好ましく、特にAgであることが好ましい。M(1)は一種類でもよく或いは二種類以上の組み合わせでもよい。M(1)が二種類以上の組み合わせである場合、sM(1)xOyの項は、各元素に対応した項ごとに分けて記載される。たとえば、M(1)が、金属元素D及びD'からなる場合、sM(1)xOyは、s1Dx1Oy1・s2Dx2Oy2(ただし、x1+x2=x、y1+y2=y、s1+s2=sである)と表される。その他の項についても同様である。
【0021】
M(2)は、高い消臭能の発現及び経済性の観点から、好ましくはNa及び/又はHである。Rは、M(2)と同様の観点から、好ましくはNa、Ca及びMgからなる群より選ばれる1種以上の金属元素であり、更に好ましくはNaである。Qは、粒子の形態制御の容易性の観点から、好ましくはCO3及び/又はNO3である。
【0022】
sは、高い消臭能の発現及び経済性の観点から、好ましくは0<s≦2、更に好ましくは0<s≦1である。tは、金属置換カンクリナイト様鉱物の水分散液(後述の1重量%水分散液)のpHを良好に保つ観点から、好ましくは0≦t≦2、更に好ましくは0≦t≦1である。s+tは、好ましくは0.5〜1.8、更に好ましくは0.6〜1.5である。uは、高い消臭能の発現の観点から、好ましくは0.5≦u≦5、更に好ましくは0.5≦u≦4である。vは、粒子形態制御の容易性の観点から、好ましくは0<v≦1.5、更に好ましくは0<v≦1である。wは金属置換カンクリナイト様鉱物に含まれる水の含有率(モル比)であり、金属置換カンクリナイト様鉱物の存在形態、たとえば、粉末状、スラリー状などの形態によって変化する。xとy、及びmとnは、それぞれ、M(1)とOとの組み合わせにより、及びRとQとの組み合わせに応じて任意に決まる。
【0023】
金属置換カンクリナイト様鉱物はその比表面積が、1m2/g以上70m2/g未満であることが好ましく、1〜65m2/gであることが更に好ましく、30〜65m2/gであることが一層好ましい。比表面積がこの範囲内であれば、抗菌性を有する金属を適度に固定又は担持させることができ、含硫黄系悪臭に対して優れた消臭能が発揮されるようになる。金属置換カンクリナイト様鉱物の比表面積は、例えば、後述するように、原料アルミノシリケート粒子(原料として用いられるアルミノシリケート粒子)を適度に酸処理することで、所定の範囲に調整することができる。比表面積は、フローソーブ2300型(島津製作所製)を使用して測定する。試料は0.1gとし、吸着ガスにN2/He=30/70(容積比)の混合ガスを用いる。
【0024】
消臭性能を有する粉体は、一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
繊維状物としては、湿式抄造可能なものが用いられ、例えば、特開2005−344274号公報の段落〔0019〕に列挙された各種のものを用いることができる。
各種の繊維の中でも、粉体の定着性、得られる粉体含有シートの柔軟性、液の透過・吸収性、製造コスト等の点から、針葉樹晒しクラフトパルプ(以下、NBKPともいう)、広葉樹晒しクラフトパルプ(以下、LBKPともいう)、古紙パルプ等の木材パルプ、HBAやマーセル化パルプ、架橋パルプなどの嵩高性の化学処理パルプ、コットンが好ましい。各種の繊維は、一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、木材パルプを用いる場合、レーヨン、リヨセル、テンセル、ポリビニルアルコール等の親水性繊維や少量の熱可塑性繊維を混合しても良い。木材パルプは、使用する繊維状物中の80重量%以上を占めることが好ましく、90重量%以上を占めることがより好ましい。
【0026】
繊維状物は、粉体の繊維状物への定着性を高め、得られた紙の風合いや、吸収性物品用途であれば排泄液の透過性の観点から、カナダ標準ろ水度(JIS P8121、以下、CSFともいう)が300ml以上であることが好ましく、より好ましくは350〜700ml、更に好ましくは400〜550mlである。CSFが上記範囲であると、製造時における粉体の繊維材料への定着性、および得られる抄造成形体の強度が良好であり、また、抄紙時における水抜け性や、乾燥効率が良好で有り、生産性に優れる。CSFは、木材パルプの叩解状態をコントロールすることにより調整できる。
なお、粉体含有シートが、経血や軟便のような、高粘性の液の透過を必要とする場合は、木材パルプとして、NBKPまたはLBKPと、HBAやマーセル化パルプ、架橋パルプなどの嵩高性の化学処理パルプを混合して用いることが好ましい。この場合、NBKPまたはLBKP/化学処理パルプの比率は、重量比で10/90〜60/40であって、また、排泄液の透過性の観点から、よりろ水度を高くする、すなわち、ろ水度は500〜900ml、更に600〜800mlであることが好ましい。
【0027】
本実施形態の粉体含有シートに含まれる前記特定の高分子化合物は、平均分子量1000万以上の中アニオン性の高分子化合物である。
従来、低坪量の粉体含有シートを湿式抄造により製造しようとする場合、抄造に用いるスラリー組成物中の繊維の濃度、例えば、丸網抄紙機においては、抄紙機のバット(抄き槽)に供給される繊維の濃度を、0.05〜1重量%程度と低くして抄いており、そのため、網を通って抜ける粉体が多く、粉体の定着率が不十分であった。抄造に用いるスラリー組成物中に高分子化合物を含有させることで、粉体の定着率を高めることができるが、従来用いられている高分子化合物では、低坪量の粉体含有シートに担持させる粉体の量を経済性や実用性を損なうことなく効率良く高めることが困難であった。本発明者らは、平均分子量1000万以上の中アニオン性の高分子化合物を用いることにより、粉体含有シートの低坪量性を維持しつつ、粉体の担持量を容易にコントロールできることを見出した(特に担持量の増大)。
【0028】
中アニオン性高分子化合物としては、アクリル系高分子化合物が好ましく、アクリルアミド−アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド部分加水分解物、アクリルアミド−2−アクリルアミド―2―メチルプロパンスルホン酸共重合体等を用いることができる。中アニオン性高分子化合物を使用することで、抄造する際における粉体の繊維状物に対する定着性を向上させることができる。
中アニオン性のアクリル系ポリアクリルアミド高分子化合物の中でも、アクリルアミド−アクリル酸共重合体でポリアクリル酸ナトリウムを用いる事が繊維状物の定着性向上及安全性、コストの面から好ましい。
【0029】
ここで、中アニオン性とは、コロイド等量値(meq/g)で−2.0〜−5.0であるものをいう。コロイド等量値の測定は以下のとおりである。
〔コロイド当量値の測定方法〕
50ppm水溶液(純水で希釈)に希釈したアニオン性高分子化合物を100mlメスシリンダーに採取して200mlビーカーに移す。回転子を入れて攪拌しながら2N水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業(株)製)0.5mlをホールピペットで加えた後、N/200メチルグリコールキトサン溶液(和光純薬工業(株)製)5mlをホールピペットで加える。トルイジンブルー指示薬(和光純薬工業(株)製)を2〜3滴入れ、N/400ポリビニルアルコール硫酸カリウム溶液(和光純薬工業(株)製)で滴定する。青色が赤紫色に変わり数秒経っても赤紫色が消えない点を終点とする。同様に純水にて空試験を行う(ブランク)。
コロイド当量値(meq/g)=〔アニオン性高分子化合物の測定値(ml)−空試験の滴定量(ml)〕/2
中アニオン性高分子化合物としては上述のものの中でも、平均分子量が1000万以上であり、好ましくは1300万〜2100万、より好ましくは1500万〜1900万であるものが好ましい。
中アニオン性高分子化合物は、一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
本実施形態で用いる中アニオン性高分子化合物は、平均分子量が1000万以上であり、好ましくは800〜5000万、より好ましくは1200万〜3000万である。尚、従来、紙や繊維等を湿式抄造により形成する場合に汎用されているアニオン性高分子化合物の平均分子量は、5万〜500万程度が一般的である。例えば、特許文献2の実施例1で用いているアニオン性化合物(カルボキシメチルセルロースナトリウム,第一工業製薬株式会社製,商品名「HE1500F」)の分子量も33万程度である。
【0031】
中アニオン性高分子化合物の平均分子量は次のようにして、測定することができる。
〔アニオン性高分子化合物の平均分子量の測定方法〕
アニオン性高分子化合物を1N塩化ナトリウム溶液で0.1%溶液に調整した溶液を、メートルグラスを用いて20mlとり、B型粘度計のBLアダプターを入れて粘度を測定する。粘度計の回転数は60rpmで3分後の粘度を読み取る。なお、調整および測定に用いる溶液の温度は25℃のものを用いる。
粘度測定値から(1)式を用いて固有粘度を求める。求めた固有粘度から(2)式を用いてアニオン性高分子化合物の平均分子量を算出する。
固有粘度η(m・Pa・s)=3.83×粘度測定値+0.64(1)
平均分子量MW={η÷(3.73×10-4)}1.515 (2)
【0032】
粉体含有シートに含まれる前記繊維状物の量は、粉体含有シートの厚み、要求される強度等に応じて適宜に決定することができ特に制限されないが、例えば、粉体含有シートの重量に対して、0.1%以上であることが消臭粒子定着の点から好ましくは、50重量%以下であることがシートの強度と風合いのバランスの点から好ましい。繊維状物のより好ましい含有率は、粉体含有シートの重量に対して、0.2〜40重量%である。
【0033】
粉体含有シートに含まれる前記粉体の量は、粉体の種類、大きさ、機能、粉体含有シートの具体的用途等に応じて適宜に決定することができ特に制限されないが、例えば、粉体含有シート中の繊維状物の重量に対して、0.1重量%以上であることが消臭性能等の点から好ましく、含有率は50重量%未満であることがシートの強度と風合いの点から好ましい。粉体のより好ましい含有率は、繊維状物の重量に対して0.5〜40重量%である。
【0034】
粉体含有シート中における中アニオン性高分子化合物の含有率は、定着させる粉体の種類と含有量、表面電位、シート中に含まれる他の剤の種類と量等に応じて適宜に決定することができ特に制限されないが、例えば、繊維状物の重量に対して0.001重量%以上であることが粉体の定着性の点から好ましく、繊維状物の重量に対して1.0重量%以下であることがシートの均一性と強度の点から好ましい。より好ましくは、繊維状物の重量に対して0.02〜0.5重量%である。
【0035】
本実施形態の粉体含有シートは、坪量が50g/m2未満である。
坪量を50g/m2未満とすることで、柔軟性、吸収性物品用途であれば液体透過性に富む粉体含有シートが得られる。
柔軟性、液体透過性の何れか一以上の向上等の観点から、粉体含有シートの坪量は、5g/m2以上が好ましく、50g/m2以下がより好ましい。また、粉体含有シートは、シートの強度の観点から、坪量が8g/m2以上、特に10g/m2以上であることが好ましい。
【0036】
粉体含有シートは、前記粉体、前記繊維状物及び前記中アニオン性高分子化合物に加え、湿潤紙力剤、乾燥紙力増強剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、分散剤(粘剤)、サイズ剤、微生物に対するスライムコントロール剤、ピッチコントロール剤、消泡剤、キレート剤、剥離剤等、他の成分を含んでいても良い。
【0037】
湿潤紙力剤としては、例えばポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリルアミド、でんぷん、尿素ホルムアミド樹脂、メラミンホルムアミド樹脂、ジアルデヒドでんぷん、グリオキサール変性ポリアミドアミン・エピクロルヒドリン樹脂等を用いることができる。
また、乾燥紙力増強剤としては、カチオン化でんぷん、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、ジアルデヒドでんぷん、植物ガム等を用いることができる。
湿潤紙力剤を配合することで、粉体含有シートに高い湿潤強度を付与することができる。湿潤強度を高めることは、粉体含有シートを例えば使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料として用いる場合に、尿等によって該粉体含有シートが濡れても破断しづらくなるという観点から有利である。従って、本発明の粉体含有シートを加工機に組み込んで製品を製造する場合にもトラブルが一層発生しづらくなる。湿潤紙力剤は、一種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
本実施形態の粉体含有シートは、前記粉体、前記繊維状物、前記中アニオン性高分子化合物及び水を含むスラリー組成物から、湿式抄造法により製造することができる。前記スラリー組成物の調整の手順には特に制限はないが、先ず、前記粉体、前記繊維状物及び前記水を、攪拌して混合し、その後の希釈工程において、前記中アニオン性の高分子化合物を混合することが好ましい。
【0039】
抄造に用いる希釈後のスラリー組成物(丸網抄紙機においては抄紙機のバット(抄き槽)のスラリー組成物)中の繊維状物の濃度は、0.05〜0.5重量%、特に0.1〜0.3重量%であることが好ましい。また、中アニオン性高分子化合物の添加量は、該スラリー組成物中の繊維状物の重量に対して、0.001〜0.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.005〜0.2重量%である。また、粉体の添加量は、該スラリー組成物中の繊維状物の重量に対して、0.1〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜20重量%である。
【0040】
このようにして抄造に用いるスラリー組成物を調整する際には、必要に応じて、サイズ剤、着色剤、填料、増粘剤、pHコントロール剤、嵩高剤等の抄紙の際に通常用いられる添加物を添加することもできる。
【0041】
前述のようにして得られたスラリー組成物を原料として湿式抄造を行い粉体含有シート(シート状の抄造成形体)を成形する。湿式抄造方法には、例えば連続抄紙式である円網抄紙機、長網抄紙機、短網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などを用いることができる。また手漉きによるバッチ方式を用いてもよい。前記のスラリー組成物と、該スラリー組成物と異なる組成の組成物とを用いた多層抄き合わせによって粉体含有シートを成形することもできる。また、前記のスラリー組成物を抄造して得られた粉体含有シートどうしを多層に貼り合わせたり、該粉体含有シートに前記のスラリー組成物と異なる組成を有する組成物から得られた繊維シートを貼り合わせることによって、多層の繊維シートを成形することもできる。
【0042】
抄造後の粉体含有シートは、抄造後の保形性の点や、機械的強度を維持する点から、含水率が70重量%以下、特に60重量%以下となるまで脱水させることが好ましい。脱水方法は例えば、吸引による脱水のほか、加圧空気を吹き付けて脱水する方法、加圧ロールや加圧板で加圧して脱水する方法等が挙げられる。
【0043】
粉体含有シートは、これを積極的に乾燥させて水分を分離することにより、長期の保存安定性を高めるとができる。粉体含有シートを乾燥させることは、乾燥後の繊維状物への粉体の担持力を高めてその脱落を抑える点等からも好ましい。粉体含有シートの乾燥方法は、粉体含有シートの厚さ、乾燥前の粉体含有シートの処理方法、乾燥前の含水率、乾燥後の含水率等に応じて適宜選択することができる。例えば、加熱構造体(発熱体)との接触、加熱空気や蒸気(過熱蒸気)の吹き付け、真空乾燥、電磁波加熱、通電加熱等が挙げられる。また、前述の脱水方法と組み合わせて両者を同時に実施することもできる。
【0044】
本実施形態の粉体含有シートは、用途に応じて適宜の大きさに切断してシート状のまま各種用途に用いることもでき、また、小さく切り刻んでだり、加工により他の形状に変形させて用いることもできる。
本実施形態の粉体含有シートは、例えば、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、吸収性パッドなどの吸収性物品の構成材料、壁紙、シーツ、押入シート、箪笥シート、下駄箱シート、マット、靴インソール、マスク、フィルター類、ラッピング食品の中敷シートなどとして使用することができる。粉体含有シートを、吸収性物品の構成材料として用いる場合には、該シートを、例えば表面シートと吸収体との間、該吸収体内、又は該吸収体と裏面シートとの間に配することができる。また、該シートで、綿状パルプや吸水性ポリマー等の吸収性素材を被覆して吸収体となし、該吸収体を吸収性物品に用いることもできる。表面シートは、吸収性物品の使用時に使用者の肌に対向する側に配されるものであり、一般に液透過性である。吸収体は、表面シートと裏面シートとの間に配されるものであり、一般に液保持性である。裏面シートは、吸収体を挟んで、表面シートと反対の側、つまり使用者の肌から遠い側に配されるものであり、一般に撥水性ないし液不透過性である。
【0045】
本発明は上記実施形態に制限されず、種々変更可能である。
本発明の粉体含有シートは、消臭性能を有する粉体を担持した粉体含有シート以外に、例えば、以下に示す各種機能性を有する粉体を含むものであっても良い。
例えば、被酸化性金属からなる粉体を含む発熱性能を有する粉体含有シートや、二酸化チタン、酸化亜鉛又はこれらの組み合わせ等の光触媒及びゼオライト、アルミナ、活性白土又はこれらの組み合わせ等の無機吸着剤等の粉体を用いた、光触媒機能を有する粉体含有シート、ゼオライト等の粉体を用いた、石油やアルコールの分離・分解用の粉体含有シート、マグネタイト等の磁性粉体からなる粉体を用いた粉体含有シート、酸化鉄からなる粉体を用いた、還元作用によって水素を発生する粉体含有シート、イオン交換樹脂からなる粉体を含いた、各種酵素の担体となる粉体含有シート、アパタイト等の粉体を用いた、生体複合材料用の粉体含有シート、炭酸カルシウム等の研磨剤からなる粉体を用いた、研磨機能を有する粉体含有シート等であっても良い。
その他、硫酸バリウム、酸化チタン、炭酸カルシウムなどの各種粉体を配合させることによって、隠蔽性の高いシートであってもよい。
【0046】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。以下の例中、特に断らない限り「%」は、「重量%」を意味する。
【実施例】
【0047】
〔消臭粒子の製造〕
消臭粒子(銀担持ポリマー)を、以下に示す水中油型懸濁重合法により得た。
ヘプタン296gにモノマー(ジビニルベンゼン/2−ビニルピリジン=75/25)592.7g及び2,2’―アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B、和光純薬工業(株)製)11.0gを溶解させ、これにポリビニルアルコール(ゴーセノールEG−30、日本合成化学工業(株)製)15.6gを溶かした1600gの水溶液を加えて重合槽に仕込んだ。モノマー混合物と有機溶剤の溶解度パラメータはそれぞれ9.37、7.40であり、その差は1.97であった。ホモジナイザーを用いて、5000rpmで10分間撹拌することで乳化し、これを128rpmの撹拌条件下、60℃で6時間加熱することで重合した。これに1−ブタノールを750g加えた後、減圧乾燥を行い、水と有機溶剤を除いた。このようにして得られた粒子100gに対し、水263g、イソプロパノール23g、酢酸銀0.5g、クエン酸1.0gを加え、室温で1時間撹拌し、担持処理を行った。これを濾過し、乾燥することによって消臭粒子を得た。消臭粒子の体積平均径は23.5μmであった。得られた消臭粒子のBET比表面積は、234m2/gであった。体積平均径及びBET比表面積は次の方法で測定した。
体積平均径:消臭粒子をヘキサンに分散させた状態でコールターカウンター(Coulter Corporation製)により測定した。
BET比表面積:フローソーブ2300(島津製作所製)を用いてBET1点法により求めた。吸着ガスは、窒素30体積%、ヘリウム70体積%のガスを用いた。試料の前処理として、120℃で10分間、吸着ガスの流通を行った。その後、試料が入ったセルを液体窒素で冷却し、吸着完了後室温まで昇温し、脱離した窒素量から試料の表面積を求めた。試料の質量で除して比表面積を求めた。
【0048】
銀イオン含有率:硝酸銀又は酢酸銀を担持した消臭粒子中の銀イオン含有率は、モノクロ励起EDX蛍光X線を用いて測定した。
【0049】
〔丸網抄紙機でのシート化〕
上記のようにして得た消臭粒子をそれぞれ用いて、該消臭粒子を担持した粉体含有シートを製造した(実施例1,2,比較例1,2)。
〔実施例1〕
針葉樹クラフトパルプに消臭粒子(銀担持ポリマー)を添加して十分混合し、スラリーを得た。パルプは叩解によってそのCSFが500mlに調整されたものを用いた。スラリー中におけるパルプ濃度は2%、消臭粒子の濃度はパルプに対して2%であった。更に、得られたスラリーの希釈を行い、希釈工程中に湿潤紙力剤(WS4024 星光PMC社製)を添加した後、高分子化合物(PAM−P、住友精化社製、中アニオン性アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、コロイド当量値 −2.2meq/g、平均分子量1700万)添加して0.15%スラリー原料を得た。湿潤紙力剤濃度はパルプに対して0.5%、高分子化合物濃度はパルプに対して0.025%であった。このスラリーを原料として丸網抄紙機を用いて抄紙を行い、粉体含有シートを得た。その坪量は30g/m2であった。粉体含有シート内の消臭粒子量は0.55g/m2、定着率は92%であった。
【0050】
〔実施例2〕
針葉樹クラフトパルプ90重量部と広葉樹クラフトパルプ10重量部に、消臭粒子(銀担持ポリマー)を添加して十分混合し、スラリーを得た。パルプは叩解によってそのCSFが500mlに調整されたものを用いた。スラリー中におけるパルプ濃度は2%、消臭粒子の濃度はパルプに対して7%であった。高分子化合物濃度はパルプに対して0.1%であった。このスラリーを原料として丸網抄紙機を用いて抄紙を行い以後実施例1と同様にして抄紙を行い、粉体含有シートを得た。その坪量は20g/m2であった。粉体含有シート内の消臭粒子量は1.3g/m2、定着率は93%であった。であった。
【0051】
〔実施例3〕
実施例2の高分子化合物に代えて、中アニオン性高分子化合物(アコフロック A125S MTアクアポリマー社製 中アニオン性アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、コロイド当量値 −3.2meq/g、平均分子量1000万)を添加して0.15%スラリー原料を得た。湿潤紙力剤濃度はパルプに対して0.5%、中アニオン性高分子化合物の濃度はパルプに対して0.1%であった。このスラリーを原料として丸網抄紙機を用いて抄紙を行い粉体含有シートを得た。その坪量は20g/m2であった。粉体含有シート内の消臭粒子量は1.13g/m2、定着率は81%であった。
【0052】
〔比較例1〕
実施例1の高分子化合物に代えて、弱アニオン性高分子化合物(アコフロック A95 MTアクアポリマー社製 弱アニオン性アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、コロイド当量値 −1.2meq/g、平均分子量1700万)を用いた以外は実施例1と同様にして粉体含有シートを得た。その坪量は30g/m2であった。粉体含有シート内の消臭粒子量は0.4g/m2、定着率は67%であった。
【0053】
〔比較例2〕
実施例2の高分子化合物に変えて、弱アニオン性高分子化合物(アコフロック A95 MTアクアポリマー社製 弱アニオン性アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、コロイド当量値 −1.2meq/g、平均分子量1700万)を用いた以外は、実施例2と同様にして粉体含有シートを得た。その坪量は20g/m2であった。粉体含有シート内の消臭粒子量は0.97g/m2、定着率は69%であった。
【0054】
〔比較例3〕
実施例2の高分子化合物に代えて分子量の異なる高分子化合物(DA4119 星光PMC社製 弱アニオン性アクリルアミド−アクリル酸ナトリウム共重合体、コロイド当量値 −0.6meq/g、平均分子量200万)を用いた以外は実施例2と同様にして粉体含有シートを得た。粉体含有シート内の消臭粒子量は0.56g/m2、定着率は40%であった。
【0055】
〔比較例4〕
実施例2と同じ配合で坪量を50g/m2に調整した粉体含有シートを得た。粉体含有シート内の消臭粒子量は3.43g/m2、定着率は98%であった。
【0056】
〔粉体(消臭粒子)の定着率の測定方法〕
粉体(消臭粒子)に金属が含まれる場合は、消臭粒子に含まれる金属(Ag、Si、Al、Zn等)の量をICP発光分析装置で測定して消臭粒子の量を求める。ICP発光分析装置での測定は、粉体含有シートを湿式分解した後、金属の量を測定して消臭粒子の定着率を求めたが、消臭粒子が燃焼しても残量する粒子を消臭抗菌シート添加している場合は灰分の金属の量を蛍光X線装置で測定して定着率を求めることも可能である。また、消臭粒子が活性炭等の金属を含まない場合は、ヨウ素吸着能から定着率を測定することも出来る。
【0057】
〔バルクソフトネス評価〕
実施例及び比較例で得られた各粉体含有シートについて、MD150mm、CD30mmの大きさの試験片を用意する。この試験片で直径45mmの円筒をつくり、重なり部において端部より約10mmの個所2ヵ所をステープルで止める。測定は、(株)オリエント社製テンシロン万能試験機(RTA100)を用い、円筒を圧縮速度100mm/分で圧縮したときに示す最大荷重をバルクソフトネスとする。各試験片についてn=3の平均値を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
〔評価用吸収性物品の製造〕
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた各粉体含有シート(消臭抗菌紙)を用いて、図1に示す構造の吸収性物品(軽失禁パッド)を作製した。
具体的には、2gのパルプ繊維の集合体に、高吸収性ポリマーを2g散布及び担持させて吸収性コア1を得た。この吸収性コア1を、粉体含有シート2で包んで吸収体3を形成した。そして、吸収体3を、表面シート4(芯がポリプロピレン、鞘が高密度ポリエチレン、芯/鞘=50/50重量%である複合繊維であって、繊維径2.2dtexである繊維を用いて作成したエアスルー不織布:25g/m2、繊維表面は界面活性剤で処理されている)と、裏面シート5(透湿フィルム:20g/m2。炭酸カルシウムと直鎖状低密度ポリエチレンを均一混合した後、溶融状態で押し出しフィルム化した後、延伸したもの。)とで挟み込んで、長さ190mm幅80mmの吸収性物品を得た。
なお、比較例4の粉体含有シートは、バルクソフトネスが高く吸収性物品用としては硬く適さない材料であるため、吸収性物品は作成しなかった。
【0060】
〔消臭能の評価方法〕
成人男性5名各100mlの尿を混合して500mlの人尿を調整する。前述のようにして得られた各吸収性物品に人尿30gを吸収させ、容積1.2リットルの密閉容器(タイトボックスNo.3:蝶プラ工業株式会社製)中に素早く入れて気密状態にした。60分後に該容器の蓋を開け、容器中の臭いを5名のモニターに評価させた。その評価基準は以下の通りである。5人の評価の平均を算出し、その値を臭気強度の官能値とした。官能値は、その値が小さいほど臭気が弱いことを意味する。なお、使用した人尿は、実施例及び比較例で全て同じものを用いた。評価結果を下記表2に示す。
【0061】
〔評価基準〕
3.0;尿特有の匂いを強く感じる
2.0;尿特有の匂いを感じる
1.0;匂いを感じるが、尿臭の匂いとは感じられない
0.0;匂いがしない
【0062】
【表2】

【0063】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜実施例3の粉体含有シートは、それぞれ、比較例1〜比較例2の粉体含有シート(消臭抗菌紙)よりも、多くの消臭粒子を含んでおり、消臭効果も高いことが判る。また、実施例1〜実施例3の粉体含有シート(消臭抗菌紙)は、それぞれ、比較例1〜比較例3の粉体含有シート(消臭抗菌紙)よりも消臭粒子定着率が高くなっており、製造時の消臭粒子のロスが少なかったことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る粉体含有シートを組み込んで製造した吸収性物品を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 吸収性コア
2 粉体含有シート
3 吸収体
4 表面シート
5 裏面シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体、繊維状物及び平均分子量1000万以上の中アニオン性高分子化合物を含み、坪量が50g/m2未満である粉体含有シート。
【請求項2】
前記中アニオン性高分子化合物が、アクリル系高分子化合物である請求項1記載の粉体含有シート。
【請求項3】
前記粉体が消臭性能を有する請求項1又は2記載の粉体含有シート。
【請求項4】
前記粉体含有シート中の前記粉体の含有率が0.1以上50重量%未満である請求項1〜3の何れかに記載の粉体含有シート。
【請求項5】
前記繊維状物のカナダ標準ろ水度(JIS P8121)が300ml以上である請求項1〜4の何れかに記載の粉体含有シート。

【図1】
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【公開番号】特開2009−228162(P2009−228162A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75408(P2008−75408)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】