説明

粉体吸入具

【課題】粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入可能であるうえ、比較的単純な構造を有し、低コストかつ効率よく製造することが可能な粉体吸入具を提供する。
【解決手段】粉体吸入具1は、吸入口4および粉体収容部5を有する容器本体2と、容器本体2の周面に形成された外気流入口8と、容器本体2内に外気流入口8と対向するように設けられ、内部空間を、外気流入口8と連通する第1の空気通路10および吸入口4と連通する第2の空気通路11に区分けする仕切部材9と、第1の空気通路10に設けられ、外気流入口8からの空気が吸入口4に向けて流れるのを遮断する遮断壁部12とを備える。仕切部材9の後端部が粉体収容部5の最奥部から所定の距離aをあけて配置されており、外気流入口8からの空気が第1の空気通路10を通って粉体収容部5に供給されるとともに、粉体混合空気が第2の空気通路11を通って吸入口4に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、息の吸い込みによって粉体を吸入するための粉体吸入具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、粉末状をなす薬剤などの粉体を体内に吸入する場合には、粉体吸入具が用いられ、様々な種類の粉体吸入具が提案されている。この粉体吸入具では、粉体を吸入する場合、吸引口をくわえて息を吸込むことにより、外部の空気を内部に流入させ、内部に充填されている粉体と空気とを混合させることにより、粉体を空気とともに吸引口から吸入するようになっている。
【0003】
この種の粉体吸入具には、内部に充填されている1回分の分量の粉体を、一回の吸引で全てを体内に吸入させるタイプのものと、複数回の吸引により、少量ずつ複数回に分けて吸引させるタイプのものとが存在する。粉体の種類、例えば、確実に患部まで到達させる必要のある粉体、刺激の強い粉体などは、1回分の分量の粉体を少量ずつに分けて吸入させることが好ましく、また、タバコの煙に代わり、粉体を吸引することにより喫煙しているような感覚が得られるようにしたものでも、通常のタバコのように、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入させるようにすることが嗜好性の観点から好ましい。
【0004】
このような粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入することができるタイプの粉体吸入具として、特許文献1に記載の粉体吸入具が提案されている。この特許文献1に記載の粉体吸入具は、図15に示すように、カプセルボディ100、キャップ101、および吸込側ボディ102の3つの部材によって構成されており、カプセルボディ100内の粉体収容室103と吸込側ボディ端部の吸引口104との間には、第1の粉体滞留室105および第2の粉体滞留室106が設けられている。また、吸込側ボディ102には、第1の粉体滞留室105に外部の空気を希釈空気として吸込む希釈空気吸込通路107が設けられている。
【0005】
上記した構成により、特許文献1に記載の粉体吸入具では、粉体収容室103から流出した粉体混合空気を第1、第2の粉体滞留室105,106に滞留させ、かつ、希釈空気吸込通路107によって、第1、第2の粉体滞留室105,106を連通する粉体混合空気通路108に流通する粉体混合空気の勢いを弱くすることができ、また、空気中に含まれる粉体の混合割合を小さくすることが可能となっている。この結果、1回の息の吸込みでは、粉体収容室103内に収容された粉体の一部だけが吸引口104を介して吸入され、1回分の分量の粉体を複数回に分けて吸入させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−165884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した特許文献1に記載の粉体吸入具は、カプセルボディ100、キャップ101、および吸込側ボディ102の3つの部材によって構成されているとともに、それらの内部に、複数の粉体収容室や粉体貯留室を形成する必要があるため、その構造が複雑であり、粉体吸入具を製造するためには、部材点数を多くする必要がある。よって、部材点数の増加により製造コストがかかるとともに、各部材の組み立ては工数・手間のかかる面倒な作業であるため、製造効率も低下するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記した問題に着目してなされたもので、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入可能な粉体吸入具において、比較的単純な構造を有し、低コストかつ効率よく製造することが可能な粉体吸入具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、一端部に吸入口を有するとともに、他端部の内部空間に粉体を収容する粉体収容部を有する中空の容器本体と、前記容器本体の周面に形成され、前記吸入口からの空気の吸い込みにより外部の空気を前記容器本体内に流入させる外気流入口と、前記容器本体内に前記外気流入口と対向するように設けられ、少なくとも前記粉体収容部側の内部空間を、前記外気流入口と連通する第1の空気通路および前記第1の空気通路と反対側の前記吸入口と連通する第2の空気通路に区分けする仕切部材と、前記第1の空気通路に設けられ、前記外気流入口からの空気が前記吸入口に向けて流れるのを遮断する遮断壁部とを備え、前記仕切部材は、前記粉体収容部側の端部が前記粉体収容部の最奥部から所定の距離aをあけて配置されており、前記外気流入口からの空気が第1の空気通路を通って前記粉体収容部に供給されるとともに、空気中に粉体が混入した粉体混合空気が第2の空気通路を通って前記吸入口に供給される粉体吸入具により達成される。
【0010】
本発明の好ましい実施態様においては、前記容器本体は、一端部に前記吸入口を有するとともに他端部に開口を有する筒状部材と、前記開口を塞ぐように前記筒状部材に着脱可能に取り付けられる内部に前記粉体収容部を備えた有底筒状のカートリッジ部材とにより構成されていることを特徴としている。
【0011】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記仕切部材は、前記第2の空気通路側の側面に、前記吸入口に向かって高く傾斜する傾斜部を備えていることを特徴としている。
【0012】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記仕切部材の前記粉体収容部側の端部から前記粉体収容部の最奥部までの距離aと、前記外気流入口から前記粉体収容部までの距離bとの比a/bが、0.13以上0.78以下であることを特徴としている。
【0013】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記容器本体の周面には、前記外気流入口を覆うようにメッシュ状のテープが巻かれていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粉体吸入具によれば、1回分の分量の粉体を複数回に分けて吸入させることができるうえ、単純な構造を有しているため、低コストかつ効率よくこれを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態である粉体吸入具の外観を示す斜視図である。
【図2】図1の側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図5】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図6】筒状部材の側面図である。
【図7】筒状部材の正面図である。
【図8】仕切部材の側面図である。
【図9】仕切部材の正面図である。
【図10】仕切部材の平面図である。
【図11】キャップの平面図である。
【図12】キャップの正面図である。
【図13】キャップの断面図である。
【図14】比較例の粉体吸入具の構成を示す断面図である。
【図15】従来技術の粉体吸入具の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1〜図3は、本発明の一実施形態である粉体吸入具1の外観構成を、図4および図5は、図1〜図3の粉体吸入具1の内部構成を、それぞれ示している。なお、以下では、図1のXY方向を上下方向と、UV方向を前後方向と、ST方向を左右方向として説明している。
【0017】
図示例の粉体吸入具1は、粉体の吸入口4と粉体収容部5とを有する容器本体2と、容器本体2の吸入口4を覆うキャップ3とを備えた構成のものであり、吸入口4からの息の吸い込みによって、粉末状をなす薬剤などの粉体を体内に吸入するために用いられるものである。この粉体吸入具1は、容易に持ち運びすることができるよう細長い短棒形状の外観を有しており、また、粉体吸入具1は、長手方向を垂直にした姿勢で、粉体収容部5を下にして机上などに立てて載置できるようになっている。なお、図中、13は、容器本体2(筒状部材6)の外周面に設けられたマークであり、マーク13を上向きに向けることにより、当該粉体吸入具1を好適に使用することができるようになっている。このマーク13は、後述する外気流入口8から右方向に90°をなす位置に設けられている。
【0018】
容器本体2は、一端部に吸入口4を有している一方、他端部は閉鎖された中空形状のものであり、他端部側の内部空間に粉体を収容する粉体収容部5を有している。吸入口4と粉体収容部5とは、内部空間を介して連通している。本実施形態では、容器本体2は、筒状部材6(図6〜図8に示す)と、筒状部材6に着脱可能に取り付けられるカートリッジ部材7とにより構成されている。
【0019】
筒状部材6は、図1〜図7に示すように、一端部に前記吸引口4を有しているとともに、他端部に開口60を有する略円筒状のものである。筒状部材6の内部は、一端部側の吸引口4から他端部側の開口60まで至る空洞(内部空間)となっており、後述するカートリッジ部材7の内部空間(粉体収容部5)と連通している。この筒状部材6は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂材料を用いて形成されている。
【0020】
筒状部材6の他端開口60側の外周面には、カートリッジ部材7の内周面に形成された雌ネジ部71に螺合する雄ネジ部61が形成されている。カートリッジ部材7を筒状部材6の開口60を塞ぐように取り付けて、両ネジ部61,71を螺合することにより、カートリッジ部材7を筒状部材6に着脱可能に装着することが可能となっている。
【0021】
カートリッジ部材7は、図1〜図5に示すように、一端部が開口するとともに、他端部が閉塞して底部72となっている容器状のものであり、内部に粉体を収容して保持する空間を備えている。このカートリッジ部材7の内部空間が、粉体を収容可能な前記粉体収容部5として機能し、該粉体吸入具1により吸入すべき分量の粉体を収容することが可能な大きさに形成されている。カートリッジ部材7の一端部側の開口70は、粉体の供給口として機能しており、カートリッジ部材7を筒状部材6に取り付けることで、粉体収容部5に相対する筒状部材6の吸入口4に、筒状部材6の内部空間を介して、後述する粉体の搬送体として作用する流入空気を介して粉体を供給することが可能となっている。
【0022】
カートリッジ部材7の一端開口70側の内周面には、雌ネジ部71が形成されており、この雌ネジ部71は、筒状部材6の外周面に形成された雄ネジ部61に螺合可能である。カートリッジ部材7は、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂材料を用いて形成されており、内部空間(粉体収容部5)に収容されている粉体が外部から見えるように、透明状または半透明状に形成されている。これにより、外部から、粉体収容部5内に収容されている粉体の残存量を目視により確かめることが可能であり、カートリッジ部材7に収容されている粉体の残存量が少なくなった場合には、該カートリッジ部材7を、粉体が十分に収容された他のカートリッジ部材7に付け替えることにより、引き続き、使用することが可能である。粉体収容部5内に収容される粉体としては、例えばビタミン剤やブデソニドなどの粉末状の薬剤、粉末タバコなどを好適に例示することができる。
【0023】
なお、本実施形態では、容器本体2を、別部材の筒状部材6とカートリッジ部材7とにより構成しているが、必ずしも別部材で構成する必要はなく、筒状部材6とカートリッジ部材7とを一体形成した一つの部材により容器本体2を構成するようにしてもよい。
【0024】
筒状部材6の一端部側は、図4〜図7に示すように、口でくわえやすいように外形が扁平な形状に形成されており、吸入口4は、筒状部材6の円筒部分62より前方に突き出た断面視略楕円状の扁平部分63の筒壁に、径方向に貫通するように2つ形成されている。各吸入口4は、筒状部材6の内部空間と連通しており、筒状部材6の扁平部分63を口でくわえ、息を吸い込むことにより、各吸入口4から粉体が体内に吸入される。
【0025】
筒状部材6の他端開口60側の周面には、雄ネジ部61よりも前方側の位置に、外部から空気を取り込むための外気流入口8が形成されている。この外気流入口8は、筒状部材6の円筒部分62の筒壁に径方向に貫通するように形成されており、筒状部材6の内部空間と連通し、各吸入口4からの空気の吸い込みにより、外部の空気が外気流入口8より筒状部材6内に流入するようになっている。
【0026】
筒状部材6の周面には、外気流入口8を覆うようにメッシュ状のテープ(図示せず)が巻かれている。このメッシュ状のテープは、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などの樹脂材料により形成されており、筒状部材6外の空気が外気流入口8より筒状部材6内に流入することを許容している一方、筒状部材6内の粉体が外気流入口8から筒状部材6外に流出することを規制している。
【0027】
筒状部材6内には、平板状の仕切部材9が設けられており、仕切部材9の一方の板面が外気流入口8と対向している。この仕切部材9は、筒状部材6の他端開口60から挿入され、筒状部材6の他端開口60側の内周面には、外気流入口8から左右90°をなす位置に、仕切部材9の幅方向両端部の外形に合致する形状の溝部64が形成されている。この各溝部64に、仕切部材9の幅方向両端部を嵌め込むことにより、仕切部材9が筒状部材6内に保持されている。なお、仕切部材9は、本実施形態では、筒状部材6内に水平に保持されているが、必ずしも水平である必要はなく、斜め上方または斜め下方に傾斜しているなどしていてもよい。
【0028】
この仕切部材9により、筒状部材6の少なくとも他端開口60側の内部空間(容器本体2の少なくとも粉体収容部5側の内部空間)が、左右2つの空気通路10,11に区分けされている。仕切部材9の一方の板面に接する第1の空気通路10は、外気流入口8と連通しており、外気流入口8より流入した空気は第1の空気通路10を流れる。また、第1の空気通路10と反対側の仕切部材9の他方の板面に接する第2の空気通路11は、各吸入口4と連通している。
【0029】
第1の空気通路10には、外気流入口8よりも前方側の位置に、外気流入口8からの空気が各吸入口4に向けて流れるのを遮断する遮断壁部12が設けられている。この遮断壁部12は、本実施形態では、筒状部材6の内周面に一体に形成されており、断面視略半円状を有し、その下面が仕切部材9の一方の板面上に当接している。これにより、外気流入口8より流入した空気は、第1の空気通路10を、粉体収容部5に向けて流れる。
【0030】
なお、遮断壁部12は、本実施形態では、筒状部材6内を吸入口4付近まで延びているが、必ずしも吸入口4付近まで延びている必要はない。また、遮断壁部12が筒状部材6と一体に形成されているが、仕切部材9の一方の板面と、筒状部材6の外気流入口8側の内周面との間に介在して、第1の空気通路10において吸入口4への空気の流れを遮断するのであれば、遮断壁部12を筒状部材6とは別部材により構成してもよい。
【0031】
仕切部材9は、粉体収容部5側の端部(後端部)が、粉体収容部5の最奥部(つまりは、カートリッジ部7の底部72)から所定の距離aをあけて配置されている。このように、仕切部材9の後端部が粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)から所定の距離aをあけて配置されていることで、外気流入口8から流入した流入空気は、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れた後、仕切部材9の後端部において、粉体収容部5との間の空間で、反対側の第2の空気通路11へ向けて180°旋回し、第2の空気通路11を各吸入口4に向けて流れるようになる。ここで、流入した空気が、第1の空気通路10から第2の空気通路11に旋回するときには、粉体収容部5の表面側(前方側)の一部の粉体だけが流入空気と接触し、流入空気中に粉体が混入する。よって、この粉体が混入した粉体混合空気が第2の空気通路11を各吸入口4に向けて流れることで、粉体が各吸入口4に供給され、粉体収容部5の粉体が各吸入口4を介して体内に吸入される。
【0032】
このように、本実施形態では、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れる流入空気を、仕切部材9を介して反対側の第2の空気通路11へ180°旋回させることにより、粉体収容部5の表面側の一部の粉体だけを流入空気に混入させ、その他の粉体は粉体収容部5に停留させている。よって、一回の吸引動作では、粉体収容部5の一部の粉体だけが各吸入口4に供給されるので、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入させることが可能となっている。
【0033】
仕切部材9の後端部から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離aが長くなればなるほど、粉体収容部5に向かう流入空気の勢いは弱くなり、粉体収容部5まで流入空気が届きづらくなるため、流入空気の旋回時に流入空気に混入される粉体の割合が小さくなり過ぎることになる。そうすると、一回の吸引動作により各吸入口4に供給される粉体の量が大幅に減少してしまうため、吸引しても体内に安定した量の粉体を吸入させることができなくなるなど、粉体吸入具として性能状の問題が生じる。一方、距離aが短くなればなるほど、粉体収容部5に向かう流入空気の勢いが増し、粉体収容部5に勢いよく流入空気が流れ込むため、流入空気に混入される粉体の割合が大きくなり過ぎることになる。そうすると、一回の吸引動作により多量の粉体が各吸入口4に供給されてしまうため、これでは、想定した回数よりも少ない回数で1回分の分量の粉体が体内に吸入されてしまうという問題が生じる。
【0034】
このように、仕切部材9の後端部から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離aに応じて、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れる流入空気の勢いが変化し、吸入口4に供給される粉体の量が変化するので、当該距離aは、使用者の好み、粉体の種類などに応じて適宜調整する必要があるところ、1mm以上21mm以下の範囲が好ましく、6mm以上21mm以下の範囲がより好ましく、11mm以上16mm以下の範囲がさらに好ましく、16mmを最も好ましい値として挙げることができる。
【0035】
また、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離bも、長くなればなるほど、粉体収容部5に向かう流入空気の勢いは弱くなり、粉体収容部5まで流入空気が届きづらくなるため、流入空気の旋回時に流入空気に混入される粉体の割合が小さくなり過ぎる。一方、距離bが短くなればなるほど、粉体収容部5に向かう流入空気の勢いが増し、粉体収容部5に勢いよく流入空気が流れ込むため、流入空気に混入される粉体の割合が大きくなり過ぎる。このように、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離bに応じても、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れる流入空気の勢いが変化し、各吸入口4に供給される粉体の量が変化するので、同様に、当該距離bについても、使用者の好み、粉体の種類などに応じて適宜調整する必要があり、21mm以上85mm以下の範囲が好ましく、27mm以上45mm以下の範囲がより好ましく、27mm以上33mm以下の範囲がさらに好ましく、27mmを最も好ましい値として挙げることができる。
【0036】
また、以上のことを考慮すると、仕切部材9の後端部から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離aと、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離bとの比a/bは、0.01〜1.00の範囲にあることが好ましく、0.13〜0.78の範囲にあることがより好ましく、0.33〜0.59の範囲にあることがより好ましく、0.59を最も好ましい値として挙げることができる。
【0037】
第2の空気通路11に接する仕切部材9の他方の板面には、図8〜図10に示すように、傾斜部90が一体形成されている。傾斜部90は、仕切部材9の下端から吸入口4に向かって高くなるように傾斜する第1の傾斜部91と、第1の傾斜部91の上端に連続して形成され、吸入口4に向かって低くなるように傾斜する第2の傾斜部92とを備えている。第1の傾斜部91および第2の傾斜部92の上端は、仕切部材9の高さのほぼ中央まで達しており、第1の傾斜部91の傾斜角度は第2の傾斜部92の傾斜角度よりも急になっている。当該粉体吸入具1を取り扱う際には、粉体吸入具1を斜めに傾けてしまうことがあり、この場合、粉体収容部5の粉体が粉収容部5から吸入口4に向けて流れ出てしまって、吸入口4から粉体が外部にこぼれるおそれがある。この場合でも、この第1の傾斜部91により粉体が第2の空気通路11に流れ出ることを規制することで、粉体が容易に吸入口4に到達して吸入口4から外部にこぼれてしまうことが防止されるようになっている。
【0038】
キャップ3は、図11〜図13に詳細に示すように、一端部が開口している一方、他端部が閉鎖された円筒状のものである。キャップ3の一端部側の開口30は、筒状部材6の扁平部分63を挿入可能な大きさに形成されており、筒状部材6の扁平部分63は、キャップ3内に保持されている。キャップ3の底部31には、筒状部材6の扁平部分63の外形に合致する形状の溝部32が形成されており、この溝部32に、筒状部材6の扁平部分63が嵌め込まれることでしっかりと保持されている。キャップ3の一端開口30側の内周面には、環状の抜止め33が一体形成されている。筒状部材6の扁平部分63がキャップ3内に挿入されたとき、筒状部材6の外周面に一体形成された環状凸部65が抜止め33を乗り越えることにより、キャップ3が筒状部材6に固定されている。
【0039】
次に、上記した構成を有する粉体吸入具の使用方法について説明する。まず、容器本体2(筒状部材6)からキャップ3を外し、マーク13が上向きに向くように容器本体2(筒状部材6)を手で持つ。この状態で、使用者は吸入口4をくわえて息を吸い込む。これにより、空気(外気)が、図5に示す矢示Pのように、外気流入口8から第1の空気通路10に流入し、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れる。そして、粉体収容部5付近まで流れた空気は、第2の空気通路11に向けて180°旋回する。この際、空気は、粉体収容部5の表面側の粉体と混ざって粉体混合空気となり、第2の空気通路11を吸入口4に向けて流れる。これにより、各吸入口4から体内に粉体が供給される。
【0040】
本実施形態の粉体吸入具によれば、仕切部材9を粉体収容部5に対して略垂直に設け、外気流入口8から第1の空気通路10に流入し、第1の空気通路10を粉体収容部5に向けて流れる流入空気を、仕切部材9を介して反対側の第2の空気通路11へ180°旋回させることにより、粉体収容部5の表面側の一部の粉体だけを流入空気に混入させ、その他の粉体は粉体収容部5に停留させている。このように、一回の吸引動作では、粉体収容部5の一部の粉体だけが吸入口4に供給されるので、一回の吸引動作による粉体の供給量を少量にすることができる。これにより、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入させることが可能であるので、粉体の種類が、例えば、確実に患部まで到達させる必要のある粉体、刺激の強い粉体などの場合、一回分の分量の粉体を気管などに付着させることなく、ほぼ全てを体内の患部まで安定して到達させることができる。また、粉体としてビタミン剤などを用い、タバコの煙に代わり、粉体を吸引することにより喫煙しているような感覚が得られるようにしたものの場合、通常のタバコのように、何回も繰り返して吸入動作を行うことができるから、嗜好性の向上も実現できる。
【0041】
また、使用により、粉体収容部5内の粉体が全て吸入された場合には、カートリッジ部材7を、筒状部材6から取り外し、粉体が十分に収容された新たなカートリッジ部材7に付け替えることにより、継続して、使用することができる。
【0042】
また、本実施形態の粉体吸入具によれば、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入させることができるうえ、公知技術と比べると、単純な構造になっているため、低コストかつ効率よくこれを製造することができる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例のみに限定されない。まず、本発明の粉体吸入具(図5を参照)について、吸入口4に空気吸引装置を接続し、吸引により、外気流入口8から容器本体2内に空気(外気)を流入させた。このとき、外気流入口8から容器本体2内に流入する空気の流速を1620mL/minに設定した。この流速はフローメーターにより測定した。吸引動作は2秒間行い、これを9回繰り返し行った。なお、流速1620mL/min(つまり、54mL/2sec)は、一般に、喫煙者が一回の吸引でタバコを吸う吸引量に相当する。吸引動作により、吸入口4から導出された粉体をフラスコに採取し、吸引動作3回毎に導出された粉体の重量を測定した。粉体収容部5には、予め、500mgのビタミン剤の粉末を収容した。その結果を表1に示す。なお、比較例として、図14に示すように、外気流入口の位置だけを本発明の粉体吸入具(図5を参照)とは変えた粉体吸入具についても、同様の吸引動作を行った。その結果も併せて表1に示す。図14の粉体吸入具では、外気流入口80は、粉体収容部5の直上に設けられている。図14中、20は容器本体を、40は吸入口を、50は、粉体収容部を、それぞれ示している。なお、本実施例では、粉体吸入具は、粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)から吸入口4までの距離が約84mm、粉体収容部5の径が約8mm、カートリッジ部7の奥行きが約18.6mm、外気流入口8の径が2mm、粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)から外気流入口8までの距離が約59mmとなっている。
【0044】
【表1】

【0045】
表1から分かるように、容器本体20内に流入した空気の流路が図14の矢印Qで示すようにほぼ直線状となる比較例の粉体吸入具では、9回吸引動作を行うと、粉体収容部50の粉体のほぼ全てが吸入される一方で、本発明の粉体吸入具では、9回吸引動作を行った後でも、まだ、粉体収容部5には多量の粉体が残存していることが分かる。よって、本発明の粉体吸入具では、粉体を少量ずつ複数回に分けて吸入させることが可能であることが確認できる。
【0046】
また、本発明の粉体吸入具(図5を参照)において、仕切部材9の粉体収容部5側の端部(後端部)から粉体収容部5の最奥部(つまりは、カートリッジ部7の底部72)までの距離aを、それぞれ6mm、11mm、16mm、21mmに設定した構成のものを用意し、それぞれの粉体吸入具を実施例A〜Dとした。実施例A〜Dの粉体吸入具について、上記した条件と同じ条件で吸入口4から空気を吸引し、外気流入口8から容器本体2内に空気(外気)を流入させる吸引動作を15回繰り返し行った。吸引動作により、各粉体吸入具の吸入口4から導出された粉体をそれぞれ別々のフラスコに採取し、吸引動作3回毎に導出された粉体の重量を測定した。その結果を表2に示す。
【0047】
【表2】

【0048】
表2から分かるように、仕切部材9の後端部から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離aが長いと、吸引動作により各吸入口4に供給される粉体の量が非常に少なく、吸引動作により体内に安定した量の粉体を吸入できない一方、距離aが短くなると、吸引動作により、より多くの粉体が各吸入口4に供給されることが確認された。これにより、当該距離aは、6mm以上21mm以下の範囲が好ましく、11mm以上16mm以下の範囲がより好ましく、16mmが最も好ましいことが確認された。
【0049】
また、本発明の粉体吸入具(図5を参照)において、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(つまりは、カートリッジ部7の底部72)までの距離bを、それぞれ27mm、33mm、39mm、45mmに設定した構成のものを用意し、それぞれの粉体吸入具を実施例E〜Hとした。実施例E〜Hの粉体吸入具について、上記した条件と同じ条件で吸入口4から空気を吸引し、外気流入口8から容器本体2内に空気(外気)を流入させる吸引動作を15回繰り返し行った。吸引動作により、各粉体吸入具の吸入口4から導出された粉体をそれぞれ別々のフラスコに採取し、吸引動作3回毎に導出された粉体の重量を測定した。その結果を表3に示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3から分かるように、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離bが長いと、吸引動作により各吸入口4に供給される粉体の量が少なくなる一方、距離bが短くなると、吸引動作により、より多くの粉体が各吸入口4に供給されることが確認された。これにより、当該距離bは、27mm以上45mm以下の範囲とするのが好ましく、27mm以上33mm以下の範囲とするのがより好ましく、27mmが最も好ましい値であることが確認された。
【0052】
以上のことを考慮すると、仕切部材9の後端部から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離aと、外気流入口8から粉体収容部5の最奥部(カートリッジ部7の底部72)までの距離bとの比a/bは、0.13〜0.78の範囲にあることが好ましく、0.33〜0.59の範囲にあることがより好ましく、0.59が最も好ましいことが分かる。
【符号の説明】
【0053】
1 粉体吸入具
2 容器本体
4 吸入口
5 粉体収容部
6 筒状部材
7 カートリッジ部材
8 外気流入口
9 仕切部材
10 第1の空気通路
11 第2の空気通路
90 傾斜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部に吸入口を有するとともに、他端部側の内部空間に粉体を収容する粉体収容部を有する中空の容器本体と、
前記容器本体の周面に形成され、前記吸入口からの空気の吸い込みにより外部の空気を前記容器本体内に流入させる外気流入口と、
前記容器本体内に前記外気流入口と対向するように設けられ、少なくとも前記粉体収容部側の内部空間を、前記外気流入口と連通する第1の空気通路および前記第1の空気通路と反対側の前記吸入口と連通する第2の空気通路に区分けする仕切部材と、
前記第1の空気通路に設けられ、前記外気流入口からの空気が前記吸入口に向けて流れるのを遮断する遮断壁部とを備え、
前記仕切部材は、前記粉体収容部側の端部が前記粉体収容部の最奥部から所定の距離aをあけて配置されており、前記外気流入口からの空気が第1の空気通路を通って前記粉体収容部に供給されるとともに、空気中に粉体が混入した粉体混合空気が第2の空気通路を通って前記吸入口に供給される粉体吸入具。
【請求項2】
前記容器本体は、一端部に前記吸入口を有するとともに他端部に開口を有する筒状部材と、前記開口を塞ぐように前記筒状部材に着脱可能に取り付けられる内部に前記粉体収容部を備えた有底筒状のカートリッジ部材とにより構成されていることを特徴とする請求項1に記載の粉体吸入具。
【請求項3】
前記仕切部材は、前記第2の空気通路側の側面に、前記吸入口に向かって高く傾斜する傾斜部を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の粉体吸入具。
【請求項4】
前記仕切部材の前記粉体収容部側の端部から前記粉体収容部の最奥部までの距離aと、前記外気流入口から前記粉体収容部までの距離bとの比a/bが、0.13以上0.78以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の粉体吸入具。
【請求項5】
前記容器本体の周面には、前記外気流入口を覆うようにメッシュ状のテープが巻かれていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粉体吸入具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−205858(P2012−205858A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75986(P2011−75986)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)