説明

粉体輸送方法および粉体輸送装置

【課題】流動性の悪い性状の粉体を連続して安定的に輸送することができる粉体輸送方法および粉体輸送装置を提供する。
【解決手段】粉体輸送装置1は、エアスライダ本体10の空気室12に供給される粉体2の輸送用流動化空気の他に、空気室12に空気圧縮機30から高圧のジェットガスが間欠的に供給される構造からなる。このジェットガスは、キャンバス13の搬送面上に堆積や固着した粉体2を上下に振動させることによって解砕する。これにより、粉体輸送装置1では、粉体2を連続して安定的に投入口18から排出口19まで輸送することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体の空気輸送を行うエアスライダを用いた粉体輸送方法および粉体輸送装置に関し、特に連続して安定的な粉体輸送を行うことができる粉体輸送方法および粉体輸送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、粉体を大量輸送するために、粉体を輸送用流動化空気によって輸送するエアスライダが多用されている。これは、エアスライダがメンテナンス性において良好であるとともに、輸送装置からの発塵防止、騒音対策、省設置スペースなどの問題に対して有利であることに起因している。
【0003】
図5は、従来のエアスライダを用いた粉体輸送装置を説明するための説明図である。図5に示すように、従来の粉体輸送装置100では、エアスライダ本体101の内部にある複数の微細孔を有する布や複数の板孔を有する金属板などからなるキャンバス102に対して、ブロア103から図中矢印Z0で示すように配管104を通して7キロパスカル程度の低圧力の輸送用流動化空気を、空気室105を介して輸送室106に供給する。
【0004】
これにより、図中白抜き矢印X1で示すように、輸送室106への供給口108から輸送室106の内部に供給された粉体107は流動化されてキャンバス102上を移動し、図中白抜き矢印X2で示すように、輸送室106の排出口109から排出される。このように、従来の粉体輸送装置100においては、輸送室106内の粉体107を流動化して輸送することが行われている。
【0005】
しかし、従来の粉体輸送装置100では、次のような場合に粉体107の輸送に関して不具合が発生することがあった。すなわち、粉体107の中に比較的粗い粒子が混在している場合や、粘り気のある悪い性状の粉体107を輸送する場合などに、次のような問題が発生していた。
【0006】
例えば、図5に示すように、上記のような場合においては、輸送室106内のキャンバス102に対して粉体107の附着や固着物107aの滞留などが生じ、粉体107の流れに不均一と不安定な状態が発生する。この場合には、ブロア103から空気室105に供給する輸送用流動化空気の増加などを図るための粉体輸送装置100の改造などが必要となるとともに、動力の増加によって電気エネルギー損失が増大してしまう。
【0007】
また、粉体輸送装置100の運転始動時においては、前回に輸送した際の残りの粉体107が湿度や湿気などによって輸送室106内のキャンバス102上に固着物107aとして堆積している場合がある。このような場合は、キャンバス102の微細孔や板孔が固着物107aによって塞がれていることにより、同様に粉体107の流動化が著しく悪くなり、不均一と不安定な状態が発生する。
【0008】
このように粉体107の流れに不均一と不安定な状態が発生した場合は、エアスライダ本体101に設けられた点検口(図示せず)から固着物107aを除去したり、上部カバー110を取り外してキャンバス102を掃除したりと、人力による清掃作業が必要となる。
【0009】
なお、このような固着物107aの存在や粉体流量の不安定化の問題は、粉体輸送系統の次工程にてトラブルを起こしやすくなる。すなわち、粉体輸送装置100の次工程にサイロやタンクなどの貯蔵設備があると、この貯蔵設備からの粉体107の抜き出しの際に粉体107の閉塞を起こすこととなる。
【0010】
このような閉塞の問題に対して、下記特許文献1に開示されているエアスライダでは、空気室の中に、先端側(排出口側)に行くほど空気孔の個数が密な分布となるように多孔状に空気孔が形成された中空ダクトを設けている。そして、この中空ダクトの周壁部の横から空気室の内部に空気孔を介して高圧の空気を噴射することによって、キャンバスの全体に対して均等に空気を通過させることで、閉塞の問題を解決する構成となっている。
【0011】
また、下記特許文献2に開示されているエアスライダでは、粉体の輸送方向に複数に分割された空気室から、それぞれ別々に輸送室へ吹き込み孔を介して輸送用流動化空気を供給するようにしている。これにより、複数の空気室の全体圧力を一定にバランスするようにして、閉塞の問題の解決を図ろうとしている。
【0012】
【特許文献1】特開平6−48567号公報
【特許文献2】実開昭60−23136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されているエアスライダでは、いずれの場合も粉体の附着性や固着性が非常に高い粉体群に対しては、十分に閉塞の問題を解決するには満足できる結果が得られないことがあった。
【0014】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、エアスライダを用いて流動性の悪い性状の粉体を輸送する場合でも、特にエアスライダを停止状態から起動あるいは再起動する際に、キャンバスへの固着物の堆積を防止して連続して安定的な粉体輸送を行うことができる粉体輸送方法および粉体輸送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的達成のため、本発明に係る粉体輸送方法は、粉体を供給口側から排出口側へ向けて輸送するための輸送室と、この輸送室の下部に設けられた空気室と、これら輸送室および空気室を仕切るとともに前記輸送室に臨む前記粉体の搬送面が形成されたキャンバスと、を備え、前記空気室から輸送用流動化空気を前記キャンバスを通して前記輸送室に供給することによって前記粉体を輸送するエアスライダを用いた粉体輸送方法であって、前記空気室から前記輸送用流動化空気よりも圧力の高いジェットガスを前記キャンバスに対して間欠的に供給することを特徴とする。
【0016】
本発明に係る粉体輸送方法は、上記のように構成されることにより、キャンバス上に堆積する粉体を間欠的にジェットガスにて除去することができ、流動性の悪い性状の粉体を輸送する場合や、エアスライダを停止状態から起動あるいは再起動する場合などにおいても、キャンバスへの粉体の固着や堆積を効果的に防止して、連続して安定的な粉体輸送を行うことが可能となる。
【0017】
また、ジェットガスは、例えば空気圧力が350乃至450キロパスカルであるとよい。
【0018】
また、エアスライダで輸送される粉体は、例えば炭酸カルシウム粉、セメントクリンカ粉、セメント、石炭灰およびセメント原料粉のうちの少なくとも一つであるとよい。
【0019】
本発明に係る粉体輸送装置は、粉体を供給口側から排出口側へ向けて輸送するための輸送室と、この輸送室の下部に設けられた空気室と、これら輸送室および空気室を仕切るとともに前記輸送室に臨む前記粉体の搬送面が形成されたキャンバスと、を備え、前記空気室から輸送用流動化空気を前記キャンバスを通して前記輸送室に供給することによって前記粉体を輸送するエアスライダを有する粉体輸送装置であって、前記空気室に前記輸送用流動化空気を供給する第1空気供給手段と、前記空気室に前記輸送用流動化空気よりも圧力の高いジェットガスを供給する第2空気供給手段とを備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る粉体輸送装置は、上記のように構成することにより、キャンバス上に堆積する粉体を第2空気供給手段からのジェットガスによって間欠的に除去することができ、流動性の悪い性状の粉体を輸送する場合や、エアスライダを停止状態から起動あるいは再起動する場合などにおいても、キャンバスへの粉体の固着や堆積を効果的に防止して、連続して安定的な粉体輸送を行うことが可能となる。
【0021】
また、例えば第2空気供給手段を制御して、空気室にジェットガスを間欠的に供給させる制御手段をさらに備えた構成とされていてもよい。
【0022】
また、第2空気供給手段は、例えば輸送室における供給口側および排出口側のそれぞれの近傍の搬送面に対し、ジェットガスを噴出させる噴出口を有する構成とされていてもよい。
【0023】
また、キャンバスは、空気室と輸送室との間を貫通する複数の微細孔を有する布、または空気室と輸送室との間を貫通する複数の板孔が形成された金属板からなる構成とされていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、流動性の悪い性状の粉体を輸送する場合や、エアスライダを停止状態から起動あるいは再起動する場合などにおいても、キャンバスへの粉体の固着や堆積を効果的に防止して、連続して安定的な粉体輸送を行うことができる。特に、粉体の輸送開始前にエアスライダの内部の点検や固着物の除去作業などが不要となり、大幅に省力化が図れるようになる。また、従来では点検や除去に作業員2名で1時間程度掛かっていた作業が、ほぼゼロに近い作業で済むと同時に、作業上の安全面も向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る粉体輸送方法および粉体輸送装置の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る粉体輸送方法を実現する粉体輸送装置の全体構成の例を説明するための説明図、図2は同粉体輸送装置のエアスライダ本体の断面を示す斜視図、図3は図1のA−A’断面図である。
【0027】
図1に示すように、粉体輸送装置1は、粉体2を輸送するエアスライダ本体10と、このエアスライダ本体10にエア配管21を介して接続されたブロア20と、エアスライダ本体10にガス配管31を介して接続された空気圧縮機30と、を備えて構成されている。
【0028】
なお、詳細は後述するが、ブロア20から粉体2の輸送のために導入される輸送用流動化空気は、図中矢印Z0で示すようにエア配管21を通って空気室12に供給される。また、空気圧縮機30からのジェットガスは、同様に図中矢印Z1で示すようにガス配管31を通って空気室12に供給される。そして、これらエア配管21およびガス配管31には、それぞれ輸送用流動化空気およびジェットガスの経路を開放/遮断するための低圧バルブ21aおよび高圧開閉弁31aが備えられている。
【0029】
エアスライダ本体10は、例えば上下二室構造になっており、粉体2を輸送する輸送空間を備える輸送室11と、粉体2を流動化させるための輸送用流動化空気の滞留する滞留空間を備える空気室12とを有する。なお、輸送室11は、上部カバー14により覆われており、空気室12は、底部15のカバーにより覆われている。
【0030】
また、これら輸送室11と空気室12との間には、輸送空間と滞留空間とを仕切るキャンバス13が設置されている。このキャンバス13は、図2に示すように、例えば布や金属板などからなり、輸送室11と空気室12との間を貫通する複数の微細孔や板孔が設けられて、輸送室11側の面が粉体2を輸送するための搬送面を構成する。
【0031】
したがって、この粉体輸送装置1では、空気室12にブロア20からエア配管21を通って輸送用流動化空気が供給され、空気室12に供給された輸送用流動化空気がキャンバス13の微細孔や板孔を通って輸送室11に吹き込まれることにより、キャンバス13の搬送面上の粉体2が流動化され輸送される。
【0032】
エアスライダ本体10は、粉体2の投入口18から図中白抜き矢印Y1で示す方向に輸送室11内に投入された粉体2が、図中白抜き矢印Y2で示す方向に輸送室11内から排出口19を通って排出されるように、所定の傾斜が付けられて粉体輸送装置1に設置されている。
【0033】
したがって、輸送室11内の粉体2は、ブロア20、エア配管21および空気室12を介してエアスライダ本体10に供給された輸送用流動化空気によってエアスライダ本体10内の空気が流動化されることで、液体のように投入口18側から排出口19側に向かってキャンバス13の搬送面上を流れる。
【0034】
ブロア20から供給される輸送用流動化空気は、一般的に空気圧力が5乃至10キロパスカル程度に設定されている。そして、空気室12に接続されるエア配管21は、図1および図3に示すように、空気室12内における輸送用流動化空気の圧力が均等になるように、空気室12に対して数カ所に等間隔にされて接続された噴出口21bによって空気室12と繋がっている。
【0035】
なお、本例の粉体輸送装置1にて輸送される粉体2は、例えば次のようなものである。すなわち、粉体2は、粉末度としての比表面積が3000乃至9000cm/gr、細度が45μ篩残分1乃至10重量%、水分が0乃至10重量%などで構成される。具体的な粉体2としては、炭酸カルシウム粉、セメントクリンカ粉、石炭灰、セメント製品粉およびセメント原料粉などが挙げられる。
【0036】
また、特に、粉体2として輸送時に附着や固着が激しいものとしては、凝集しやすい炭酸カルシウム粉、吸湿しやすいセメントクリンカ粉、水分を比較的多く含むセメント原料粉などが挙げられる。本例の粉体輸送装置1は、特にこれらの粉体2について適用すると好適である。
【0037】
なお、ブロア20から供給される輸送用流動化空気の噴出口21bは、少なくともエアスライダ本体10における粉体2の投入口18側の下部近傍におけるキャンバス13と対応する位置の空気室12に設けられる。そして、エアスライダ本体10からの輸送用流動化空気の排出ガスは、例えば輸送室11の排出口19側の上部から外部に排出されたり(図示せず)、排出口19から粉体2とともに外部に排出されたりする。この輸送用流動化空気は、粉体輸送装置1における粉体2の輸送時に、ブロア20から空気室12に対して連続的に供給される。
【0038】
また、本例の粉体輸送装置1では、例えば起動時に、エアスライダ本体10の空気室12に対して配管31を通してジェットガスを供給する空気圧縮機30が設けられている。ここで、ジェットガスとは、空気圧力の数値が輸送用流動化空気よりも遙かに高いものをいい、空気室12に接続されるガス配管31は、図1および図3に示すように、空気室12内における複数の任意の箇所に接続された噴出口31bによって空気室12と繋がっている。
【0039】
このジェットガスは、例えばパルス式の高圧のエアであり、粉体輸送装置1の起動開始から2乃至7秒の遅延時間を経過した後に0.1乃至1.0秒の間欠時間にのみ空気圧縮機30からガス配管31および高圧開閉弁31aを介して空気室12に対して供給され使用される。
【0040】
図4は、同粉体輸送装置における輸送用流動化空気とジェットガスの供給タイミングの例を示すタイミングチャートである。図4に示すように、例えば低圧バルブ21aが開放されるとともに輸送用流動化空気が空気室12に供給されてから3.0秒後に、高圧開閉弁31aを0.2秒ずつ、3.8秒間隔で開放すると、ジェットガスは間欠的に空気室12に供給される。この高圧開閉弁31aの開放/遮断の制御(すなわち、ジェットガスの間欠供給の開始/終了の制御)は、例えば粉体輸送装置1に備えられた図示しないCPUなどを有する制御装置により制御される。
【0041】
このように、ジェットガスを間欠的に供給し、供給時間、供給停止時間、供給タイミング時間などを適宜制御すれば、輸送用流動化空気とジェットガスの同時供給や時間差供給などを容易に行うことが可能となる。なお、このようなジェットガスの間欠供給の開始時期条件として、次のようなものが挙げられる。
【0042】
すなわち、粉体輸送装置1におけるジェットガスの間欠供給開始時期条件は、例えば運転始動の信号、ジェットガスの流量低下信号、エアスライダ本体10の上部カバー14からの発塵発生信号、脱気としての排気配管からの異常信号、エアスライダ本体10の輸送室11や空気室12内の空気圧力低下信号、点検者(パトローラ)による目視点検結果に基づく警告信号などの各種信号をトリガとして開始時期が決定される。
【0043】
また、ジェットガスの間欠供給の終了時期条件としては、次のようなものが挙げられる。すなわち、粉体輸送装置1におけるジェットガスの間欠供給終了時期条件は、例えばジェットガスの流量回復信号、エアスライダ本体10の上部カバー14からの発塵停止信号、脱気としての排気配管からの正常信号、エアスライダ本体10の輸送室11や空気室12内の空気圧力回復信号、点検者(パトローラ)による目視点検結果に基づく正常確認信号などの各種信号をトリガとして終了時期が決定される。
【0044】
このように、本例の粉体輸送装置1においては、空気圧縮機30から供給されるジェットガスの間欠供給の開始と終了の制御は、制御装置によって自動的に行われても、点検者などの手動操作によって実施されてもよい。
【0045】
そして、本例の粉体輸送装置1では、空気室12に間欠供給されたジェットガスの空気圧力によって、キャンバス13が振動動作する。これにより、仮にキャンバス13の搬送面上に粉体2が堆積あるいは固着した場合であっても、この粉体2に対して搬送面上で上下に弾ませる作用が起こる。このため、堆積や固着した粉体2が搬送面上から除去されて解砕されスムーズに輸送される。
【0046】
なお、ジェットガスの空気圧力は、例えば350乃至450キロパスカル程度に設定されている。本出願人の実験によると、空気圧力が450キロパスカルより大きいと動力の無駄な損失が大きくなり、空気圧力が350キロパスカルより小さいと安定的な粉体2の輸送ができなくなるという結果を得た。したがって、空気圧縮機30から供給されるジェットガスの噴出口31bと空気室12との圧力差は、350乃至450キロパスカル程度が必要であるとの結論に至った。
【0047】
また、高圧開閉弁31aを開放して空気圧縮機30からジェットガスを空気室12に供給している間は、例えば輸送用流動化空気は、エア配管21の低圧バルブ21aを開放したままの状態で、ブロア20によって空気室12に供給されるとよい。このジェットガスは、空気圧縮機30による圧縮空気であるため、輸送される粉体2などが空気と化学的に反応しない場合においてのみ適用することができるという制限があるが、ジェットガスは供給される高圧ガスとして原料コストが掛からないため安価に構成することができる。したがって、本例の粉体輸送装置1は、輸送用流動化空気と合わせてジェットガスを大気の空気により構成することができ、省資源化に貢献することができる。
【0048】
この粉体輸送装置1では、空気室12における噴出口31bの設置位置は、例えば1乃至6箇所に設定することができ、ジェットガスの供給周期は、1乃至10秒ごとに設定することができる。また、噴出口31bの口径は、10乃至30mmに設定可能で、噴出口31bの形状は、丸形や矩形状などに任意に設定することができる。なお、噴出口31bが空気室12にて4箇所以上設けられている場合は、等間隔に設置されるとよい。
【0049】
そして、噴出口31bと噴出口21bの空気室12における位置関係は、できるだけ交互且つ等間隔に設定されているとよい。しかし、これらの噴出口31b,21bが合わせて3箇所以下で設置されている場合は、エアスライダ本体10の輸送室11における粉体2の堆積や固着が発生しやすい位置に設置されるとよい。また、ジェットガスは、粉体輸送装置1を起動した直後から、30乃至180秒間の間に空気室12に供給されるとよい。
【0050】
さらに、ジェットガスは、エアスライダ本体10の空気室12の底部15から供給されるようにするとよい。空気室12の底部15からジェットガスを供給するようにすれば、キャンバス13に対して直角且つ効率よく間欠的にジェットガスを当てることができるからである。なお、キャンバス13は、ジェットガスが供給されているときは輸送室11の上方側に向けて膨らみ、ジェットガスが供給されていないときは空気室12の下方側に向けて凹む。このため、ジェットガスを空気室12の底部15から供給すると、最も効率よくキャンバス13を振動させることが可能となる。
【0051】
このようなジェットガスの供給動作を1乃至10秒ごとに繰り返すと、キャンバス13は上下に大きく振動することとなる。このように、キャンバス13の上下動と高圧力のジェットガスの間欠的な供給は、キャンバス13の搬送面に堆積あるいは固着した粉体2を解放・除去することができるので、例えば輸送室11において滞留している大きな粉体2の塊などを排出口19に向けて動かすことが可能となる。
【0052】
すなわち、キャンバス13の搬送面上に滞留している粉体2は、互いに附着して塊となり徐々に大きく成長する。このように大きくなった粉体2は、空気室12に間欠的に供給されるジェットガスによって、傾斜しているキャンバス13の搬送面上でゆっくりとした振動により跳ねるように解砕されて排出口19の方向に動いていく。
【0053】
また、搬送面上で互いに附着して重量が大きくなった粉体2は、キャンバス13の振動による上下動によって搬送面上で解砕される。そして、解砕された粉体2は、単体の粉体粒子よりも遙かに大きな運動エネルギーを得て、排出口19の方向へ搬送面上を流れることとなる。
【0054】
なお、ジェットガスが供給されておらず輸送用流動化空気のみが空気室12に供給されている場合は、大きくなった粉体2は、その大きな慣性力によってキャンバス13の搬送面上を移動しにくくなる。このような粉体2が複数個以上集まると、キャンバス13の搬送面上にダムのような堰き止め箇所を形成してしまい、他の粉体2が堰き止められてしまうこととなり、エアスライダ本体10の輸送室11内が閉塞状態となり、粉体2の輸送が行えなくなってしまう。
【0055】
しかし、本実施形態の粉体輸送方法を適用した粉体輸送装置1によれば、附着性や固着性の強い粉体2をエアスライダ本体10の輸送室11内にて輸送する場合であっても、輸送室11内部を粉体2が閉塞する現象はまったく起こらなくなるため、輸送に関する閉塞のトラブルを解消することが可能である。
【0056】
従来の粉体輸送装置では、キャンバスの搬送面上への粉体の堆積、あるいは附着や固着は、エアスライダの閉塞原因となっていた。本例の粉体輸送装置1では、特に装置の起動時にジェットガスを間欠的に供給して、キャンバス13の搬送面上に堆積や固着した粉体2を引き剥がして除去し、解砕することが可能となった。これにより、粉体2を連続して安定的に次工程に輸送することができるようになった。
【実施例】
【0057】
以下、本実施形態に係る粉体輸送方法を適用した粉体輸送装置1の実施例を説明する。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を省略する。本実施例の粉体輸送装置1にて輸送する粉体2は、ミルによって粉砕された炭酸カルシウム粉であり、CaOの成分が55重量%で、水分が0.1乃至2.0重量%の組成をもつ。
【0058】
この粉体2の粉体特性は、粉末度が8000cm/grで、細度が45μ篩残分1.7%で、流動性が22psiの粉体であり、粉体輸送装置1にて輸送され次工程である図示しない炭酸カルシウム粉の専用の貯蔵サイロに投入される。なお、このときの粉体輸送装置1における粉体2の輸送量は、8乃至12t/hrである。
【0059】
エアスライダ本体10は、上述したように輸送室11と空気室12の上下2室構造となっており、輸送室11は粉体2を輸送するための輸送空間を有し、空気室12は粉体2を流動化させるための輸送用流動化空気の滞留空間を有している。これら輸送室11および空気室12の間に設置されたキャンバス13は、本実施例では搬送面に向けて複数の微細孔を有する布により構成されている。そして、空気室12に供給された輸送用流動化空気がキャンバス13の微細孔を通って輸送室11側に供給され、搬送面上の粉体2を流動化させる。
【0060】
エアスライダ本体10は、粉体2の投入口18が粉体2の排出口19よりも高い位置にくるように、排出口19に向かって水平から約7°の傾斜角度を持つように粉体輸送装置1に設置されている。これにより、粉体2を流動化することと相乗効果を起こして、輸送室11内の粉体2が液体のように位置の低い排出口19側へ流れ、この排出口19から外部に排出される構造を実現する。
【0061】
輸送室11内の粉体2を流動化させるための輸送用流動化空気は、ブロア20から供給される7キロパスカル程度の空気圧力のものを使用している。なお、図3に示すエアスライダ本体10の寸法は、例えば幅25cm、長さ875cmで構成されている。そして、空気室12の底部15に、ブロア20からのエア配管21が空気圧力が均等になるように2箇所に等分割されて接続されている。
【0062】
また、エアスライダ本体10の輸送室11からの排気ガスは、粉体2の排出口19を介して粉体2とともに炭酸カルシウム粉の専用の貯蔵サイロに送られる。さらに、この排気ガスは、貯蔵サイロの天井部に設置されたバグフィルタ(図示せず)によって集塵された後に、大気へ放出される。
【0063】
本実施例の粉体輸送装置1では、図1および図3に示すように、エアスライダ本体10の空気室12の底部15に2箇所で接続された内径50mm程度のエア配管21を通して、輸送室11に輸送用流動化空気が供給される。また、空気室12の底部15に2箇所で接続された内径20mm程度のガス配管31を通して、約400キロパスカルの高圧力をもったジェットガスが空気圧縮機30から輸送室11に供給される。
【0064】
なお、エア配管21とガス配管31は、粉体2の輸送方向に沿ってそれぞれ互いに交互に配置されるように空気室12の底部15に接続されている。また、ガス配管31の空気室12の底部15における接続位置は、輸送室11のキャンバス13の搬送面上にて粉体2が堆積したり固着したりしやすい位置と対応する位置に設定されている。
【0065】
本実施例の粉体輸送装置1では、空気室12の底部15から空気室12内に高圧のジェットガスと低圧の輸送用流動化空気が供給されている。なお、低圧な輸送用流動化空気を供給するエア配管21は、ガス配管31と輸送方向に交互に空気室12に対して接続されていることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0066】
空気圧縮機30にて圧縮されたジェットガスは、リザーブタンク30aを通すことによって圧力変動が小さくなる。そして、リザーブタンク30aから空気室12までのガス配管31の途中箇所に、高圧開閉弁31aを設置する。この高圧開閉弁31aは、図4に示すような時間的な制御によって開閉時間の間隔が制御されるように構成されている。したがって、粉体輸送装置1の稼働状況などによりジェットガスを供給する時間間隔などは、高圧開閉弁31aに接続された図示しない制御装置などによって適宜変更することが可能である。
【0067】
なお、例えば粉体輸送装置1に粉体2を供給する粉砕ミル(図示せず)は、夜間のみの運転が主とされ、製品の出荷に応じた間欠運転が行われている。このため、粉砕運転の終了時や起動時に残存する粗い粒径の粉体2や、タンクやミル内部などでの長時間の貯蔵により粉体2同士が附着して粒径が大きくなった粉体2などの流れにくい粉体2が発生することとなる。これらの粉体2が原因となって、エアスライダ本体10の輸送室11内部での閉塞などのトラブルが発生しやすくなる。
【0068】
しかし、本実施例の粉体輸送装置1では、図4に示すように、例えば運転開始時から3.0秒の遅延時間を経て、高圧開閉弁31aを開放してジェットガスを間欠的に供給することにより、閉塞の問題を解消した。これにより、キャンバス13の搬送面上に堆積や固着した粉体2を効果的に除去・解砕・清掃することが可能となり、粉体2を連続して安定的に輸送することができるようになった。このため、従来の粉体輸送装置に比べて、次工程での貯蔵サイロからの粉体抜き出し装置などにおける閉塞に関するトラブルも大幅に減少させることが可能となった。
【0069】
ここで、図4を参照して、本実施例の粉体輸送装置1におけるジェットガスの供給タイミングについて詳細に説明する。粉体2の輸送を開始するために粉体輸送装置1を起動するに際して、まず、輸送用流動化空気の供給源であるブロア20を起動する。ブロア20の起動後に、制御装置によって直ぐに低圧バルブ21aを開き、エアスライダ本体10の空気室12に底部15から輸送用流動化空気を供給する。
【0070】
そして、低圧バルブ21aを開いてから3.0秒後に、あらかじめ起動しておいた空気圧縮機30のリザーブタンク30aからガス配管31を通して空気室12の底部15からジェットガスを供給するため、制御装置によって高圧開閉弁31aを開く。これにより、空気室12からキャンバス13に向けてジェットガスを噴射することができる。
【0071】
ジェットガスは、例えば0.2秒間のみ噴射して3.8秒間は噴射を停止するというように、高圧開閉弁31aを制御して間欠的に供給され、これによって、ジェットガスによるパルスエアが繰り返し発生する。したがって、ジェットガスは、4秒ごとに0.2秒間噴射されるパルスエアとして繰り返し供給される。そして、最初の供給から10回程度の供給/供給停止を繰り返した40秒間程度の供給動作の後に、高圧開閉弁31aを閉じてジェットガスの供給を停止する。
【0072】
このような一連のジェットガスの供給動作により、エアスライダ本体10の輸送室11の内部において、キャンバス13の搬送面上に堆積や固着していた粉体2は、除去されて解砕され、排出口19から次工程である炭酸カルシウム粉を貯蔵する貯蔵サイロへ連続して安定的に送られる。
【0073】
なお、ジェットガスの供給を停止した後、投入口18から粉体2をエアスライダ本体10に供給し、粉体輸送を開始する。この粉体輸送により、輸送室11内の粉体2は、キャンバス13の搬送面上を傾斜の下方(すなわち、排出口19側)へ向かって流れ、排出口19から排出されて次工程の炭酸カルシウム粉の貯蔵サイロへ連続して安定的に送られる。
【0074】
そして、輸送する粉体2を、粉末度が3200cm/grで、細度が45μ篩残分7.5重量%の普通セメントとして、上記条件と同様にして輸送を行ったところ、粉体2が堆積や固着することなく、何の問題もなく輸送することができた。さらに、比較対象例として粉砕された炭酸カルシウム粉を従来の粉体輸送装置にて輸送した。この場合、粒径の大きな粉体など流れにくい粉体やエアスライダ本体の輸送室内に残留した粉体などに、輸送のトラブルが発生した。
【0075】
これは、粉体輸送装置の運転停止中に、エアスライダ本体の輸送室内に残留した粉体などが、湿気等により互いに固着等して粒径が大きくなり、キャンバスの搬送面上にて流れにくい粉体となって、輸送室の内部にて閉塞などを起こしたことが原因と考えられる。したがって、従来の粉体輸送装置では、運転開始前などに、内部点検や粉体の除去などの人為的作業が必要不可欠であった。
【0076】
以上述べたように、本実施例の粉体輸送装置1では、キャンバス13への粉体2の固着や堆積を効果的に防止して、連続して安定的な粉体輸送を行うことができるとともに、点検や粉体除去などの人為的作業を不要とすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、粉体の輸送をエアスライダを用いて行う類の産業において有用である。例えば、工業製品の製造、食品、農業、土木建築など、輸送や貯蔵に関して、粉体のハンドリングや流れが不均一や不安定になりやすい分野の産業などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉体輸送方法を実現する粉体輸送装置の全体構成の例を説明するための説明図である。
【図2】同粉体輸送装置のエアスライダ本体の断面を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A’断面図である。
【図4】同粉体輸送装置における輸送用流動化空気とジェットガスの供給タイミングの例を示すタイミングチャートである。
【図5】従来のエアスライダを用いた粉体輸送装置を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0079】
1…粉体輸送装置、2…粉体、10…エアスライダ本体、11…輸送室、12…空気室、13…キャンバス、14…上部カバー、15…底部、18…投入口、19…排出口、20…ブロア、21…エア配管、21a…低圧バルブ、30…空気圧縮機、30a…リザーブタンク、31…ガス配管、31a…高圧開閉弁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を供給口側から排出口側へ向けて輸送するための輸送室と、この輸送室の下部に設けられた空気室と、これら輸送室および空気室を仕切るとともに前記輸送室に臨む前記粉体の搬送面が形成されたキャンバスと、を備え、前記空気室から輸送用流動化空気を前記キャンバスを通して前記輸送室に供給することによって前記粉体を輸送するエアスライダを用いた粉体輸送方法であって、
前記空気室から前記輸送用流動化空気よりも圧力の高いジェットガスを前記キャンバスに対して間欠的に供給する
ことを特徴とする粉体輸送方法。
【請求項2】
前記ジェットガスは、空気圧力が350乃至450キロパスカルであることを特徴とする請求項1記載の粉体輸送方法。
【請求項3】
前記エアスライダで輸送される粉体は、炭酸カルシウム粉、セメントクリンカ粉、セメント、石炭灰およびセメント原料粉のうちの少なくとも一つであることを特徴とする請求項1または2記載の粉体輸送方法。
【請求項4】
粉体を供給口側から排出口側へ向けて輸送するための輸送室と、この輸送室の下部に設けられた空気室と、これら輸送室および空気室を仕切るとともに前記輸送室に臨む前記粉体の搬送面が形成されたキャンバスと、を備え、前記空気室から輸送用流動化空気を前記キャンバスを通して前記輸送室に供給することによって前記粉体を輸送するエアスライダを有する粉体輸送装置であって、
前記空気室に前記輸送用流動化空気を供給する第1空気供給手段と、
前記空気室に前記輸送用流動化空気よりも圧力の高いジェットガスを供給する第2空気供給手段とを備えた
ことを特徴とする粉体輸送装置。
【請求項5】
前記第2空気供給手段を制御して、前記空気室に前記ジェットガスを間欠的に供給させる制御手段をさらに備えたことを特徴とする請求項4記載の粉体輸送装置。
【請求項6】
前記第2空気供給手段は、前記輸送室における前記供給口側および前記排出口側のそれぞれの近傍の前記搬送面に対し、前記ジェットガスを噴出させる噴出口を有することを特徴とする請求項4または5記載の粉体輸送装置。
【請求項7】
前記キャンバスは、前記空気室と前記輸送室との間を貫通する複数の微細孔を有する布、または前記空気室と前記輸送室との間を貫通する複数の板孔が形成された金属板からなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載の粉体輸送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−230825(P2008−230825A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76045(P2007−76045)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】