説明

粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する方法

【課題】粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する方法であって、a)水性アルジトールアセタール組成物であって、該水性アルジトールアセタール組成物の総質量に対して、40質量%ないし75質量%の固形分含有率(SC)を有する組成物と、固体形態又は液体形態の酸化防止剤、或いは、1種又はそれより多くの酸化防止剤を含む、固体形態又は液体形態の酸化防止剤組成物とを、他の成分の存在下又は非存在下で混合すること、及びb)前記a)の下で得られた混合物を乾燥することからなる方法に関するものである。本方法は、改良された密度特性、粒径特性及び流動特性を有する粉末状アルジトールアセタール組成物を得ることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細粉状又は粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する新規方法に関するものである。
本発明は更に、前記方法により得ることができ、そして、特に密度特性、粒径特性及び/又は流動特性において改良された特性を有する粉末状アルジトールアセタール組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジベンジリデンソルビトール及びその誘導体のようなアルジトールアセタールが、添加剤として、特にオリオレフィンのようなプラスチックのための核剤又は透明化剤として使用され得ることは、広く知られている。
これらの生成物は更に、化粧又は医薬用途のための組成物、接着剤又は塗料のような種々の材料のためのゲル化剤又は粘度改良剤として使用される。これらの組成物は更に、接着剤の、又は化粧品材料、例えば、体臭防止剤若しくは芳香剤のスティックとして、製品に配合することができる。
アルジトールアセタールの工業的使用に伴う主な欠点の一つは、これらの生成物の非常に細粉状で且つ非常に付着性の性質に関するものである。
特に流動性問題を引き起こす前記性質は、特に、前記生成物が、それらの合成時において、非常に微細で且つ、大体において著しい疎水性の、個々の又は“一次”粒子の形態で、自然に結晶化するという事実に関連付けられる。
一例として、ソルビトールジアセタールは、長さが15μm未満、一般的には5μmないし10μmで且つ、直径が2μm未満、一般的には0.3μmないし1μmの針状又は柱状の形態で、自然に結晶化する。
【0003】
この微細な粒径は、一般的には、合成媒体の中和、洗浄及びその後の濾過からなる次の工業的工程の間、保持される。
それは、とりわけ、乾燥条件に、そして使用される乾燥装置に、そして特にアルデトールジアセタールの合成の間に使用され得る如何なる微量の有機溶剤をも除去することに対する有り得る要求に応じて、次の工業的乾燥工程の全部又は一部の間、更に保持される。
ある時期において、実際、乾燥の間、粉末内で、一次粒子の凝集塊の形成が有るかもしれないし、又は、無いかもしれない。
何れにしても、前記乾燥の間、このような凝集塊が存在しようとしまいと、市場に供された工業的アルジトールアセタールは全て、この非常な細粉状で且つ付着性の性質を示す。これは、移送、梱包、秤量、混合、貯蔵、清浄化などの工業的操作における困難性を生じさせる。
特に、アルジトールアセタール粉末は、貯蔵槽及び/又は移送配管内で“アーチ”を容易に形成する、即ち“架橋”する傾向がある。これは、工業的ユニット、例えば、プラスチックの又はプラスチック用添加剤の製造のために意図されたユニットの供給ホッパー及び秤量システムにおいて、それらの輸送、秤量及び/又は排出を阻止するか又は遅らせる。
【0004】
用語“プラスチック”は、とりわけ、ポリオレフィン、特に、プロピレン及び/又はエチレンをベースとする全てのポリマー、ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、ビニル樹脂、アクリル樹脂及びそれらの混合物を意味することを意図している。
粉末状形態のアルジトールアセタールの流動に関する前記問題は、今までは、工業的実施において、製造者及び/又はこれらの生成物の使用者において、適切な装置、例えば、内側コーティングがテフロン(登録商標)で被覆されている特殊な空気供給システム又は
ホッパーを使用することにより、解決されたのみであった。
このような装置は高価で及び/又は複雑であり得るという事実以外に、それらは、上述の“アーチ”現象或いは、少なくとも、ホッパー、秤量システム又は、プラスチック若しくはゲル化された材料を製造するためのユニットに混合物をスクリュー搬送する、下流のスパイラルコンベヤー、における凝塊現象を、常に阻止することができるわけではない。
更に、実際、アルジトールアセタールをその中に導入し、そしてそれらを十分に秤量することが可能な材料組成物において、アルジトールアセタールは、乏しい分散性を示し得る。この現象は、特にプラスチック及びゲル化された材料において、ある程度、前記材料の最終特性(一般的外観、官能特性、光学特性、機械的特性等の特性)の阻害又は不均一を生じさせる。
種々の技術が、アルジトールアセタールの、特にジベンジリデンソルビトール及びその誘導体の、乏しい分散性に由来する上述の問題を克服するために提案された。例えば、特開昭58−101131号公報は、アニオン性界面活性剤の存在下でテレフタル酸を用いて前処理されたアルジトールジアセタールを乾燥すること及び、その後に微粉砕することを記載している。
【0005】
特開昭60−253646号公報に開示されているように、溶剤中のアルジトールジアセタールゲルの凍結乾燥もまた、推奨された。そのようにして得られた凍結乾燥された生成物は、出発アルジトールジアセタールと比較して、如何なる場合でも、非常に甚だしく減少した(約1/3)、低い、即ち、100g/Lの桁の“パックされた嵩”密度を有している。
より近年、欧州特許出願公開第569198号明細書は、特に、最大でも30μmに等しい“d97”指数により特徴付けられる“超微細”粒径を有する生成物を得る目的で、流動床と超高速タービン(ジェットミル)とを組み合わせた適する装置による、凝集塊を含むアルジトールジアセタール組成物の超微細粉砕を提案した。
前記文献の実施例2を読むと、登録商標“ミラッド(Millad)3905”のジベンジリデンソルビトールに適用されるこのような超微細粉砕処理は、生成物の“パックされた嵩”密度における非常に甚だしい減少(約1/3.3)を伴うことは明らかである。
更により近年に、アルジトールジアセタールの分散性を改良する目的で、他の形態の技術、特に:
アルジトールジアセタールと特定のホスフィットとの混合物(前記混合物は、事前に、溶剤に溶解されている)をベースとする微粉末の乾燥/噴霧による製造(欧州特許出願公開第651006号明細書)、又は
特に、湿潤アルジトールジアセタールの瞬間乾燥装置において大規模に乾燥すること及び粉砕すること[得られる乾燥され/粉砕された生成物は、非常に低い残留水含有率(0.01%)及び、約200g/Lの桁の見かけ密度を有している](特開平09−048783号公報)
が推奨された。
これから、プラスチック及び他の材料中におけるアルジトールアセタールの良好な分散性を保証するために推奨される手段は、特に、それらが特殊な乾燥材料、特殊な粉砕材料及び/又は特殊な溶剤の使用を含むという事実に起因して、一般的に、煩雑及び/又は高価であるか、或いは、危険でさえあることとなる。
【0006】
加えて、前記の如く、これらの手段は一般的に、アルジトールアセタールの密度を甚だしく減少させる目的又は効果を有し、この事は、それらの粉塵性及び危険性(爆発及び吸入)を増加させ、そして、それらの流動性を低下させる。
近年、アルジトールジアセタール組成物の流動性を、前記組成物の他の物理的特性、官能的特性及び/又は用途的特性を減少させることなく、或いは、更に同時に改良しつつ、改良する目的で、種々の提案が成された。
これは、このような組成物の流動性及び/又は安定性を改良する目的で、トコフェロー
ル及びポリオールから選択された添加剤の使用を推奨する国際特許出願公開第99/033776号パンフレットの場合である。
非常に好ましくは、添加剤とアルジトールアセタール粉末との混合は、低温条件下で行われ、そして前記低温条件は、次の配合及び/又は緻密化工程(この工程は、都合良くは、非常に高度に緻密な生成物を生じさせるコンパクト化工程からなる)の間、維持される。
一方で、欧州特許出願公開第962459号明細書は、結合剤が表面のみならず内側の前記粒子に均一に分散しているアルジトールジアセタール組成物を記載している。このような分散は、溶剤中でのアルジトールジアセタールの前膨潤を用いる方法を行った後でのみ得ることができる。
【0007】
溶剤は水であってよいと言われているが、しかし、実際には、前記文献の非常に多くの実施例の全ては、後に、直接又は間接に、極性(エタノール、メタノール)及び/又は“脂環式炭化水素”型のもの(シクロヘキサン)であってよい有機溶剤中で膨潤されるアルジトールジアセタール粉末から出発することを想定している。
溶剤中のアルジトールジアセタールの分散物又は“スラリー”は、その後、結合剤(前記実施例の殆どにおいて、脂肪酸又は非脂肪酸である)と均一に混合される。
一般的にほぼ80℃の乾燥温度で行われる混合物の顆粒化を行う前に、前記混合物中に含まれ得る如何なる有機溶媒をも除去するのが良いので、前記方法は煩雑である。
これらの実施例において、前記組成物は、粉末を再び得る目的で、ハウスホールドミキサーにより10分間、直接粉砕されるので、乾燥工程の終了時に直接得られる顆粒化された組成物の特性、特に密度特性、流動特性及び粒径特性は、如何なる場合においても詳細には与えられない。そのように粉砕されたこれらの最終組成物の特性のみが示される。
欧州特許出願公開第964029号明細書は、結合剤を使用して、初期粉末の(非常な)高緻密化及び、結合剤(ジアセタールの各粒子を完全に又は部分的に、接着するか又は更に被覆するために必要である)による、その成分粒子の凝集をさせるような所定条件、特に所定の圧力及び温度条件下で、アルジトールジアセタール粉末を顆粒化し、そして製剤化する方法を記載している。
アルジトールジアセタール組成物の圧力下での顆粒化/製剤化は、特に、前記特許の実施例に記載されているように、押出機において行うことができる。
これらの実施例の全てにおいて、押出前に、比較的高温(180℃)で種々の結合剤と混合されているアルジトールジアセタール粉末が使用される。押出機においてまだ顆粒化されていない中間混合物の詳細な特性、特に密度特性、流動特性及び粒径特性は、与えられていない。
【特許文献1】特開昭58−101131号公報
【特許文献2】特開昭60−253646号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第569198号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第651006号明細書
【特許文献5】特開平09−048783号公報
【特許文献6】国際特許出願公開第99/033776号パンフレット
【特許文献7】欧州特許出願公開第962459号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第964029号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在の工業的要求に対応する物理的特性のみならず外観的特性を示すアルジトールアセタール組成物、特にジベンジリデンソルビトール(“DBS”)及びその誘導体の組成物を、簡単で、危険が無く、そして比較的安価に提供することを可能にする手段であって、特に、
a)如何なる有機溶剤も必要とせず、従って、有機溶剤の除去の必要がない、
b)微細粉末を含む、細粉末形態のアルジトールアセタールを事前に用意する必要がない、
c)破砕又は粉砕のための、押出のための、コンパクト化のための、非常な高温(≧180℃)における乾燥のための装置等のような、特定の物理的処理手段を次に用意する必要がない、
d)密度特性及び粒径特性並びに非付着性が、移送、梱包、秤量、混合、貯蔵、清浄化などの工業的プロセスのために特に適している組成物を得ることを可能にする、
e)例えば、プラスチック又はゲル化された材料のための添加剤分野における実用特性が損なわれていないか、又は更に改良されている組成物を得ることを可能にする、そして
f)規制のみならず工業的及び商業的観点からの組成及び官能特性をまた、使用者の要求に完全に適する組成物を得ることを可能にする、
手段が見出された。
この手段は、二つの特定の生成物、即ち、1)その水性の故に、固体材料におけるその濃度又は固形分含有率(SC)の故に選択されたアルジトールアセタール組成物、並びに2)1種又はそれより多くの酸化防止剤、を互いに一緒にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
より正確には、本発明の対象は、粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する方法であって、
a)水性アルジトールアセタール組成物であって、該水性アルジトールアセタール組成物の総質量に対して、40質量%ないし75質量%、特に45質量%ないし72質量%の固形分含有率(SC)を有する組成物と、
固体形態又は液体形態の酸化防止剤、或いは、1種又はそれより多くの酸化防止剤を含む、固体形態又は液体形態の酸化防止剤組成物
とを、他の成分の存在下又は非存在下で混合すること、及び
b)前記a)の下で得られた混合物を乾燥すること
からなる方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の目的のために、用語“アルジトールアセタール”は、特に、アルジトールジアセタール、とりわけ、5個又は6個の炭素原子を含むアルジトールのベンゾイックアルデヒドベンズアルデヒドとの脱水縮合から得られたものを意味することを意図している。
前記アルジトールは、特に、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、リビトール、アラビトール及びイジトールからなる群から選択することができる。それは、例えば、カルボキシル基を導入することにより、例えば、その鎖の末端の炭素原子について変性することができ、従って、グルコネート又はキシロネートからなることができる。
本発明に従い使用することができるアルジトールアセタールを製造する目的のために使用されるベンゾイックアルデヒドは、特に、ベンズアルデヒド又は1−ナフトアルデヒド、或いは、それらそれぞれの誘導体の何れか一つであってよい。
好ましくは、使用されるベンゾイックアルデヒドは、ベンズアルデヒド又はその誘導体の何れか一つ、例えば、芳香環の一つ又はそれより多くの位置が、アルキル基、アルコキシ基、ビス−オキシ−アルキレン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子、チオアルキル基又はスルホアルキル基で置換されたものである。
ベンズアルデヒドが複数位置で置換されている場合、その置換基は、同一であってもよいし、又は、同一でなくてもよい。前記置換基は更に、芳香族ベンズアルデヒド部分と共に炭素−又はヘテロ環式を形成し得る。
【0011】
都合良くは、ベンズアルデヒドは、一つ、二つ又は三つの場所がアルキル基、特にメチル基又はエチル基により、ハロゲン基により、特に塩素化された又は弗素化された基により、ヒドロキシル基により及び/又はアルコキシ基、特にメトキシ基により、置換されて
いる。置換は、特に好ましくは、ベンズアルデヒドの2−(オルト)位、3−(メタ)位及び/又は4−(パラ)位においてである。
好ましくは、アルジトールアセタールは、1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)ソルビトール(以下、“DBS”と記載する)、1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)キシリトール(以下、“DBX”と記載する)及びそれらの誘導体、特にアルキル化された及び/又はハロゲン化された誘導体、好ましくは、DBS及びそのアルキル化された誘導体から選択されたアルジトールジアセタールである。
特に都合良くは、アルジトールジアセタールは、DBSのメチル化された誘導体、特に、ソルビトールと、最低限、その環の3位又は4位がメチル化されているベンズアルデヒド(それぞれ、“メタ”位又は“パラ”位)との脱水縮合により得られるものから選択される。
DBSのアルキル置換された誘導体は、好ましくは、
1,3:2,4−ジ(4−エチルベンジリデン)ソルビトール、
1,3:2,4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、
1,3:2,4−ジ(3−メチルベンジリデン)ソルビトール、及び
1,3:2,4−ジ(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール
である。
【0012】
表現“水性アルジトールアセタール組成物”は、液相が有機溶剤を含まないか又は極僅かの有機溶剤(類)を含む如何なる組成物をも意味することを意図している。これは、例えば、水と、前記液相中に存在し得る全ての有機溶剤との質量比が2/1より大きい、好ましくは3/1より大きい、そして最も特別には5/1又は10/1より大きいことを意味する。水性アルジトールアセタール組成物は、好ましくは、如何なる有機溶剤をも含まないか又は実質的に含まない。
特徴的には、前記水性組成物の固形分(SC)は、水性組成物の総質量に対して、40%ないし75%、特に45%ないし72%である。SCは、都合良くは、45%ないし65%であってよい。SCの別の例は、47%ないし72%、48%ないし72%、そして50%ないし65%である。
これらの値は、好ましくは、一般的に、水相における前記生成物の合成媒体により構成されるアルジトールアセタール分散物又は“スラリー”の値よりも極めて高い。
いずれにしても、これらの値は、市販のアルジトールアセタール粉末の非常に高いSC値(>95%)とは本質的に区別される。
本発明に従い使用される水性アルジトールアセタールは、製剤化されておらず、そして粉砕されておらず、そして自由に流動しない湿潤物質として、非常に都合良く提供される。
【0013】
好ましい実施態様において、前記組成物は、水性媒体中での合成後に得られる、アルジトールアセタールのフィルターケーキである。
用語“フィルターケーキ”は、中和されていても又は中和されていなくてもよい元の合成媒体により構成されるところの分散物又は“スラリー”中に含まれる水相を部分的に除去するための濾過、圧縮及び/又は何れかの他の等価な方法からなる少なくとも一つの工程を行ったところの、中和されていても又は中和されていなくてもよい、如何なる組成物をも意味することを意図している。
この水相の除去は、都合良くは、その最終位置において、ベルトプレスを備え得る真空ベルトフィルターにより、また真空下で、行うことができる。
元の水性分散物から構成される過程で、前記フィルターケーキは、特に、前記ケーキに対して水及び/又は水性組成物を噴霧する方法により、少なくとも一つの洗浄工程及び/又は一つの中和工程を行っても又は行わなくてもよい。非常に都合良くは、これらの洗浄方法及び中和方法のために使用される水は、熱く、そして約30℃ないし90℃、特に約40℃ないし85℃の温度を有する。
本発明に従い使用されるフィルターケーキは、ある程度粗い、しかしながら、その湿潤且つ非粉砕の性質を変性しない断片化からなる少なくとも一つの工程を行っても又は行わなくてもよい。このような工程は、特に綱線により行われ、フィルターの又はプレスのベルトから外されたときに、ケーキが断片化する。それはまた、“塊−破砕”又は“アーチ−破砕”型の装置で行われてもよい。
【0014】
一例として、前記フィルターケーキは、約50%のSC及び45〜50℃の温度を有し、濾過、洗浄(加熱条件下)、中和(加熱条件下)、圧縮及び、最後に粗い断片化工程[これらの工程は、比較的低いSC(<10%)を持つMDBSの水性懸濁液を使用して行われる]から得られる1,3:2,4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール(“MDBS”)からなっていてよい。
フィルターケーキは、例えば、米国特許出願公開第5023354号明細書に記載されたように製造することができる。従って、本発明の好ましい実施態様は、使用される水性アルジトールアセタール組成物が、下記工程:
唯一の溶剤として水を含む水性媒体中で、そして酸触媒の存在下で、前記溶剤中に、撹拌下、ベンゾイックアルデヒドと、5個又は6個の炭素原子を有するアルジトールとを、ベンゾイックアルデヒドとアルジトールとの初期モル比を2/1未満として、導入することによりアセタール化すること、
所望により、塩基により、固体と液相からなる水性懸濁液の形態にある、得られた混合物を中和すること、及び
所望により、分離された固相を温水で洗浄すること、及び
次いで、最終生成物のフィルターケーキをその湿潤形態で得るために、濾過すること、からなる方法であって、
前記酸触媒が、アリールスルホン酸からなる群から選択され、アリールスルホン酸とベンゾイックアルデヒドとは、初期に0.6を越えるモル比にあり、そして
前記アセタール化が、約45℃未満の温度で行われる、
方法により製造される方法に関するものである。
【0015】
下記の好ましい実施態様は、フィルターケーキの製造に関するものである。
(1)アルジトールは好ましくは、水溶液の形態の反応媒体中に導入され、後者におけるアルジトールの濃度は、約30%を越えない。
(2)アルジトールは、水性媒体中に導入される場合に、水溶液の形態にあり、前記水溶液におけるアルジトールの濃度は、20%ないし30%である。
(3)酸触媒は、フェニルスルホン酸及びナフチルスルホン酸からなる群から選択される。
(4)酸触媒は、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、5−スルホサリチルサン及びナフタレンスルホン酸からなる群から選択される。
(5)ベンゾイックアルデヒドは、非置換の又は、1個又は4個の炭素原子を有する低級アルキル基からなる群から選択された少なくとも一つの置換基によりフェニル核が置換されたベンズアルデヒドである。
(6)ベンゾイックアルデヒドは、メチル基又はエチル基によりフェニル核が置換されたベンズアルデヒドである。
(7)ジベンジリデンソルビトールの製造のためには、アルジトールはソルビトールであり、そしてベンゾイックアルデヒドはベンズアルデヒドである。
(8)ビス[パラ−エチルベンジリデン]ソルビトールの製造のためには、アルジトールはソルビトールであり、そしてベンゾイックアルデヒドはパラ−エチルベンズアルデヒドである。
(9)ビス[パラ−メチルベンジリデン]ソルビトールの製造のためには、アルジトールはソルビトールであり、そしてベンゾイックアルデヒドはパラ−メチルベンズアルデヒドである。
(10)ビス[3,4−ジメチルベンジリデン]ソルビトールの製造のためには、アルジトールはソルビトールであり、そしてベンゾイックアルデヒドは3,4−ジメチルベンズアルデヒドである。
(11)ジベンジリデンキシリトールの製造のためには、アルジトールはキシリトールであり、そしてベンゾイックアルデヒドはベンズアルデヒドである。
(12)アリールスルホン酸/ベンゾイックアルデヒドの初期モル比は、0.6/1ないし1.5/1である。
(13)アリールスルホン酸/ベンゾイックアルデヒドの初期モル比は、0.6/1ないし1/1である。
(14)アセタール化は、温度15℃ないし45℃で行われる。
(15)アセタール化は、温度20℃ないし40℃で行われる。
(16)アセタール化は、温度30℃ないし40℃で行われる。
(17)一旦、アセタール化が終了したとき、得られた反応媒体は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び重炭酸ナトリウムからなる群から選択されたアルカリ剤により、約7ないし7.5のpH値に中和される。
【0016】
フィルターケーキの製造のための好ましい実施例を以下に記載する。
一般的条件:
ソルビトールの濃度:約25質量%。
触媒:パラトルエンスルホン酸(APTS)、酸/ソルビトールモル比=1.25。
温度:約30℃。 時間:約5時間30分。
二重外被及び、3枚回転翼を取り付けた回転撹拌装置を備えた円筒状2L反応容器内に、乾燥物25%を有するソルビトール水溶液728g(1モル)、パラトルエンスルホン酸215g(1.25モル)及びベンズアルデヒド190.8g(1.8モル)を導入する。
この水性混合物を、撹拌下、温度30℃となし、その後、前記条件下で、約5時間30分、維持する。それにより得られた反応媒体を、7.2近辺のpH値が達成されるまで、10%水酸化ナトリウム溶液により中和し、その後、真空下、ブフナー型のフィルターで濾過する。その後、得られたフィルターケーキを、所望により、温水(約60℃)に再懸濁し、その後、再び濾過する。得られたフィルターケーキは、乾燥物約50%を含む。
本発明において、水性アルジトールアセタール組成物、例えば上記フィルターケーキは、次いで、固体又は液体形態の酸化防止剤と、又は、固体又は液体形態の酸化防止剤組成物と混合される。
用語“酸化防止剤”は、特に、既に記載されたか、或いは、プラスチック又は、ゲル化された材料を安定化するために使用される、アルジトールアセタールとの組み合わせを含む、全ての酸化防止剤を意味することを意図している。
【0017】
これらの化合物は、書籍“プラスチック添加剤ハンドブック”(2001年)カールハンザー出版、ミュンヘン(ドイツ国)の第5版の標題“酸化防止剤”の第1章に記載されたものに、又は、これらの化合物の少なくとも何れか2種のどのような混合物にも、特に相当し得る。
それらは、特に、その化学構造が上述の書籍の第1章第98頁ないし第108頁に対応する文章に与えられたものの一つに相当する化合物であってよい。
第一の変法において、酸化防止剤は、好ましくは脂肪酸の長いアルキル鎖を含まないフェノール系酸化防止剤である。
第二の変法において、前記酸化防止剤は、20℃で固体である化合物、好ましくは、100℃ないし140℃の融点を有する化合物である。
特に都合良くは、前記酸化防止剤は、脂肪酸の長いアルキル鎖を含まず、そして100℃ないし140℃の融点を有するフェノール系酸化防止剤である。
最も好ましくは、前記酸化防止剤は、下記の構造を有し、そして以下(AO−18)として記載されているテトラキス[メチレン(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシシンナメート)]メタンである。
【化1】

【0018】
本発明の対象である方法における特殊な条件下で、前記化合物と、例えばMDBSフィルターケーキのような水性アルジトールアセタール組成物とを混合することは、慣用の乾燥工程の後、慣用のMDBS粉末に関して、同時に、
甚だしく増加したパックされた嵩密度、
甚だしく増加した粒径、
甚だしく改良された、プラスチック中の分散性、
付着能の欠如、及びそれ故、
改良された流動性
を有する粉末状組成物を得ることを可能にすることができることが今や見出された。
これは、得られた粉末状組成物の官能特性(特に、色特性及び臭い特性)並びに用途特性(特に、プラスチック用の核剤又は透明化剤として)を悪化させることはない。
これは、同様の条件下で、これらの効果の全てを同時に提供すること及び/又は、それらを同程度に提供することを可能としない、ステアリン酸カルシウムのような添加剤とは異なっている。
これは、第一に、市販のMDBS粉末と、第二に、同じ酸化防止剤(AO−18)との単純な物理的混合物からなる組成物とも異なっている。
本発明の対象である方法の範囲内において、上で定義された水性アルジトールアセタール組成物と酸化防止剤又は酸化防止剤組成物とを、水性アルジトールアセタール組成物の乾燥質量と酸化防止剤又は酸化防止剤組成物の乾燥質量として表現された、50/1ないし4/1の質量比で混合することが好ましい。
更により都合良くは、この質量比は25/1ないし5/1、特に20/1ないし6/1である。
前記のように、前記酸化防止剤又は酸化防止剤組成物は、固体又は液体形態で使用することができる。
【0019】
一例として、上述の酸化防止剤(AO−18)のような酸化防止剤の粉末と、上記のように50%SCを含み且つ断片化されたMDBSフィルターケーキとを、断片化装置の直後に配置された“アーチ−破砕”型の装置内で混合することが可能である。
更に、既に中和されているが、しかしまだ、ベルトフィルター又はベルトプレスにより処理されている途中であり、そして、特に、断片化工程をまだ少しも行っていないMDBSケーキ上に、予め溶融された(AO−18)酸化防止剤を粉砕、分散又は噴霧することが可能である。
本発明の方法の混合工程a)は、数秒ないし数時間、持続し得る。
その後、自由に流動しない湿潤材料である得られた混合物を乾燥し、且つ粉末状の組成物にする目的で、乾燥工程b)が行われる。
この工程b)は、真空乾燥機、流動床乾燥機、圧空乾燥機、“フラッシュ”乾燥機、高
周波乾燥機などのような如何なる装置においても行うことができる。
特に好ましい実施態様において、それは、比較的低温、即ち、ほぼ150℃、好ましくは50℃ないし150℃、特に55℃ないし145℃で行われる。前記乾燥工程b)の間に、この混合物により到達される最高温度は、都合良くは90℃ないし145℃、特に110℃ないし140℃である。
【0020】
この結果として、改良された物理的特性、特に、
自由に流動し、
他の場所で定義されるであろうところの、少なくとも0.30kg/L、好ましくは0.35kg/Lないし0.55kg/Lのパックされた嵩密度を有し、及び/又は
他の場所で定義されるであろうところの、30ミクロンを越える、特に、35ミクロンないし100ミクロンの粒径指数“d97”を有する、
粉末状アルジトールアセタール組成物を得ることを可能にする手段が提供される。
この手段は、特に、新規な工業生成物として、粉末状アルジトールアセタール組成物であって、少なくとも1種のフェノール系酸化防止剤2質量%ないし20質量%を含み、これらの%は、前記組成物の全乾燥質量に対する酸化防止剤の全乾燥質量%として表わされるものであるところの組成物を製造することを可能にする。
フェノール系酸化防止剤は、特に、脂肪酸の長いアルキル鎖を含まず、及び/又は、20℃で固体である化合物であってよい。
好ましくは、前記粉末状組成物は自由に流動する。
非常に都合良くは、この新規組成物は更に、アルジトールアセタールがDBS又はDBSのアルキル化された誘導体から選択されており、そして、フェノール系酸化防止剤が敍述の酸化防止剤(AO−18)、即ち、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシシンナメート)]メタンであることにより、特徴付けられる。
上述の全ての組成物は、プラスチック又はゲル化された材料を製造又は安定化するために、或いは、前記プラスチック又はゲル化された材料のために意図された添加剤を製造するために、特に適している。
【実施例】
【0021】
下記実施例により、本発明を更に徹底的に理解することが可能であり、下記実施例は、本発明を制限することを意図するものではなく、単に説明のためのみに与えられる。
実施例1:
本発明において使用することができる水性アルジトールアセタール組成物は、SC5%を含む、MDBSの微粒子の分散物から製造された。この分散物は、例えば、米国特許出願公開第5023354号明細書の一般的教示により、水相中で合成することができる。
前記分散物は、株式会社パネヴィス ビーブイ(Pannevis BV)により供給されたRT−型真空ベルトフィルターを通して濾過された。同じ装置内で、その後、熱水(約80℃)を噴霧することによりフィルターケーキを洗浄し、その後、これまた熱い、ナトリウム含有水溶液を噴霧することにより中和し、そして最後に、これ故真空下で機能し、そして4本の圧縮空気で駆動される圧縮ローラーを備えたベルトプレスで圧縮した。
そのようにして得られた中和されたフィルターケーキは、約50%の固形分含有率(SC)及び、約45℃の温度を有していた。
装置から取り外されたとき、それは、取り外し方向に対して横方向に伸びた一組、3本の直径1.5mmのステンレススチールワイヤーにより、断片化された。
そのようにして断片化されたMDBSケーキは、スクレーパーアームを備え、そして株式会社パリ(Pari)により供給された“アーチ−破砕/秤量”型のD217DMR100装置内に直接落下した。従って、それは、選択されたSCを有し、本発明の方法において使用することができる水性アルジトールジアセタール組成物を構成した。
この水性組成物は、同じアーチ−破砕装置内で、粉末状の、市販品を入手し得る酸化防止剤(AO−18)[=株式会社チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング
インコーポレーテッド(Ciba Specialty Chemicals Inc.)により販売された、イルガノックス(IRGANOX)1010(登録商標)]と混合された。
【0022】
混合工程a)は、ここで、第一に、MDBSフィルターケーキと酸化防止剤との、乾燥物基準により表現された約6.7/1の質量比を用いて行われた。
この工程は、その後乾燥装置に供給するコンベヤワームにおいて、約5時間継続した。
本発明における乾燥工程b)は、ここで、株式会社ゲドゥ(Guedu)により提供され、そして2バールの圧力下(温度:約140℃)で蒸気を供給されるジャケットを備えた2360リットルの総容量を持つ真空乾燥機内で行われた。乾燥は、混合物が到達した温度が少なくとも130℃、特に133±2℃になるまで、維持された。
約14時間乾燥後、酸化防止剤(AO−18)約13.4%(乾燥物基準)を含むアルジトールアセタール(この場合は、MDBS)の粉末状組成物であって、
自由に流動し、
付着能を有せず、
市販のMDBS粉末の官能特性と少なくとも同等の官能特性、特に、白色性及び臭い特性を有し、綿毛状の又はペレット化されたポリマーへの混和性及び分散性について更に改良された特性を示す
組成物が、本実施例において得られた。
この新規なMDBS組成物(以下“組成物A”と記載する)は更に、改良された密度特性及び粒径特性、特に、パックされた嵩特性及び“d97”粒径特性を有していた。
パックされた嵩密度は、USP薬局方の段落“<616>嵩密度及びタップされた密度(BULK DENSITY AND TAPPED DENSITY)”に述べられたもののような一般的な原理により、従来通りに調査された。
【0023】
本実施例において、kg/Lで表わされる、パックされた嵩密度又はパックされた物の見かけ容積マスは、以下の手法に基づいて、ジェイ.エンゲルスマン アクチエンゲゼルシャフト(J.Engelsmann AG)により提供された“STAV2003”−型のタップ型容積計により決定された。
粉末を含有するシリンダー(標準化された250mL秤量シリンダー)が、最初の10タップシリーズに付された。そのようにしてタップされた粉末の見かけ密度が、その後、決定された。
同じシリンダー内に導入された同じ粉末であるが、しかし、それぞれ、20タップ、30タップ、40タップ、50タップ、100タップ、150タップ、200タップ、250タップ及び、最後に500タップされた粉末の見かけ密度が、同様の方法により決定された。
問題となっている粉末のタップされた密度は、そのようにして決定された最高値(kg/Lによる)に相当し、この“最大”値はシリンダーが500タップされる前でさえも到達され得、そして、例えば、この値は、100タップを用いて行われた試験と500タップを用いて行われた試験との間において、殆ど変化しなかった。
従って、本発明の実施例1により得られた本発明の組成物Aは、0.45kg/Lのタップされた密度を有していた。
【0024】
粉末の“d97”粒径指数は、粉末の最大粒径を説明するために数十年間、慣用的に使用されてきた、ミクロン(μm)で表わされた値である。
より正確には、粉末が、ここで、Xμmの“d97”により特徴付けられる場合、これは、前記粉末を構成する粒子の97容積%が、前記Xμm未満の粒径を有することを意味し、前記粒径は、ここで、液相レーザー回折粒径測定及び、以下に記載した方法により決定された。
この方法によると、検査すべき粉末状組成物50mgが、2分間の撹拌(600rpm
の電磁撹拌機)と共に、水[取扱い前に気泡が除去されており(ヘリウムを用いて脱気した)、そして、本実施例においては、株式会社セピック エスエー(Seppic SA)により提供されたノナロックス(Nonarox)1030(登録商標)であるところのエトキシル化されたアルキルフェノール型の非イオン性界面活性剤0.2質量%を含む]20mLに分散された。得られた分散物を、周囲温度において、15分間及び出力50Wの超音波処理に付した。
そのようにして処理された前記分散物の粒径特性は、本実施例においては、小容積モジュールを備え、そして、周囲温度において、キャリヤ媒体として、ノナロックス1030を0.08質量%含む脱ガスされた水を使用する、ベックマン コールター(Beckman Coulter)社からの“コールターLS230”型のレーザー粒径測定機により決定された。
レーザー粒径測定機の取扱いマニュアルの推奨に基づいて、“ブランク”が、このキャリヤ媒体に対して実行された。
粒径測定は、計算方法として非常に一般的に使用されるフラウンホーファー理論に基づいて、そしてPIDS(偏光強度回折散乱)モジュールを選択することにより行った。ポンプ速度は、位置30に設定した。各分析の持続時間は90秒であった。各組成物に対して、3回の分析を行った。
【0025】
上記で詳細に与えられた方法に基づいて、本発明の組成物Aに対して、97.3μmの平均“d97”指数値が得られた。
電子顕微鏡で走査することにより、前記組成物Aは、非凝集一次MDBS粒子と一緒に、寸法が非常に変動しており且つ一般的に約10μmないし数百μmである、非常に多数の凝集物を示した。
340倍の倍率で、走査電子顕微鏡[クァンタ(Quanta)FEG200]において組成物Aの写真が撮影された場合に、形状がおよそ卵形又は更にほぼ球形であり、寸法が一般的に約30μmないし120μmであり、そして、相互に捕捉された多数の一次MDBS粒子から作られた多くの凝集物の存在が観察された。与えられた“d97”値、即ち、ほぼ100μmが上で見出されたことにより、これらの凝集物は、分散物の及び、粒径測定の目的のために又は粒径測定中に使用された分散及び処理の、いずれにせよ劇的な条件により、実質的に破壊されなかった、十分に固体であることが結論され得る。
用途試験は更に、組成物Aは核剤として、そして特に、ポリオレフィンのための透明化剤として、完全に良好に使用することができることを示した。
特に、同一条件下で、この組成物Aは、市販のMDBS粉末よりも、ポリオレフィン組成物において、より著しく“白斑”を生じなかった。
【0026】
実施例2:
組成物Aについて上記したように、本発明の組成物Bないし組成物D並びに比較例としてのT1及びT2のタップされた密度特性及び“d97”粒径指数値特性を決定した。
これらの組成物は、それぞれ、下記の方法により得られた。
組成物B
混合物を乾燥するための条件が、前記混合物が約16時間(約14時間の代わり)で133±2℃程度の温度に到達するように変更されたこと以外は、SC50%を含むMDBSフィルターケーキから、組成物Aの条件と同じ条件下で得ることができた。
組成物C
a)MDBSフィルターケーキ(SC50%を含む)とイルガノックス(IRGANOX)1010(登録商標)との質量比(乾燥基準による)が8/1(6.7/1の代わり)であり、そして、b)乾燥が約17時間30分持続したこと以外は、組成物Aの条件と同じ条件下で得ることができた。
組成物D
a)MDBSフィルターケーキ(SC50%を含む)とイルガノックス1010(登録
商標)との質量比(乾燥基準による)が10/1(6.7/1の代わり)であり、そして、b)乾燥が約13時間10分持続したこと以外は、組成物Aの条件と同じ条件下で得ることができた。
比較例T1
0.3kg/L未満のタップされた密度及び30μm未満の“d97”指数を有する市販のMDBS粉末と、イルガノックス1010(登録商標)酸化防止剤とを、MDBS粉末と酸化防止剤粉末との質量比(乾燥基準による)が10/1で、30℃で5時間、単純に物理的に混合することにより得ることができた。
比較例T2
6.7/1の質量比(乾燥基準による)により、MDBSフィルターケーキと混合する添加剤が、フェノール系酸化防止剤ではないが、しかしステアリン酸カルシウムであること以外は、組成物Aの条件と同じ条件下で得ることができた。
【0027】
以下の表は、組成物Aないし組成物D、組成物T1及び組成物T2の、タップされた密度(kg/Lによる“TD”)及び“d97”粒径指数(μmによる“d97”)の平均値に関するものである。
┌─────┬────────┬───────┐
│ │TD(kg/L)│d97(μm)│
├─────┼────────┼───────┤
│組成物A │ 0.45 │ 93.5 │
├─────┼────────┼───────┤
│組成物B │ 0.47 │ 62.3 │
├─────┼────────┼───────┤
│組成物C │ 0.47 │ 58.4 │
├─────┼────────┼───────┤
│組成物D │ 0.48 │ 67.4 │
├─────┼────────┼───────┤
│組成物T1│ 0.28 │ 43.1 │
├─────┼────────┼───────┤
│組成物T2│ 0.30 │ 24.3 │
└─────┴────────┴───────┘
これらの結果は、本発明の方法を行うことにより、同時にそして著しく改良された密度特性及び粒径特性を有する粉末状アルジトールアセタール組成物を得ることができることを裏付けている。
この改良は、市販のアルジトールアセタール粉末と酸化防止剤との単純な物理的混合物(組成物T1)により達成することはできない。
イルガノックス1010(登録商標)酸化防止剤をステアリン酸カルシウムで置換したもの(組成物T2)もまた、ここで予想される如何なる条件下においても、このような改良を達成することを可能にしない。
この置換は更に、ステアリン酸カルシウムそのものの性質と関連する所定の付着能を有する組成物T2の自由流動性能力を低下させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状アルジトールアセタール組成物を製造する方法であって、
a)水性アルジトールアセタール組成物であって、該水性アルジトールアセタール組成物の総質量に対して、40質量%ないし75質量%の固形分含有率(SC)を有する組成物と、
固体形態又は液体形態の酸化防止剤、或いは、1種又はそれより多くの酸化防止剤を含む、固体形態又は液体形態の酸化防止剤組成物
とを、他の成分の存在下又は非存在下で混合すること、及び
b)前記a)の下で得られた混合物を乾燥すること
からなる方法。
【請求項2】
前記アルジトールアセタールが1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)ソルビトール(“DBS”)又はその誘導体、或いは、1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)キシリトール(“DBX”)又はその誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルジトールアセタールが、
1,3:2,4−ジ(4−エチルベンジリデン)ソルビトール、
1,3:2,4−ジ(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、
1,3:2,4−ジ(3−メチルベンジリデン)ソルビトール、又は
1,3:2,4−ジ(3,4−ジメチルベンジリデン)ソルビトール
である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記水性アルジトールアセタール組成物が、水性媒体中でアルジトールアセタールを合成した後に得られるフィルターケーキである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記酸化防止剤がフェノール誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記酸化防止剤が20℃で固体である化合物である、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記酸化防止剤が、脂肪酸の長いアルキル鎖を含まず、そして100℃ないし140℃の融点を有するフェノール誘導体である、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記酸化防止剤が、テトラキス[メチレン(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
工程a)において、前記水性アルジトールアセタール組成物と前記酸化防止剤又は酸化防止剤組成物とが、該水性アルジトールアセタール組成物の乾燥質量に対する該酸化防止剤又は酸化防止剤組成物の乾燥質量として表わされるところの、50/1ないし4/1の質量比で混合される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記質量比が25/1ないし5/1である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
工程b)が、最大でも150℃に等しい温度で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
乾燥工程b)において、前記混合物により達成される最も高い温度が90℃ないし145℃
である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも0.30kg/Lに等しい、タップされた密度を持つ、請求項1記載の方法
により得られた粉末状アルジトールアセタール組成物。
【請求項14】
30ミクロンより大きい“d97”粒径指数を有する、請求項1記載の方法により得られた粉末状アルジトールアセタール組成物。
【請求項15】
粉末状アルジトールアセタール組成物であって、
1種又はそれより多くの酸化防止剤2質量%ないし20質量%を含み、これらの%は、前記組成物の全乾燥質量に対する酸化防止剤の全乾燥質量%として表わされるものであり、
0.35kg/Lないし0.55kg/Lのタップされた密度を持ち、そして
35ミクロンないし100ミクロンの“d97”粒径指数を有する
組成物。
【請求項16】
前記酸化防止剤が、アルキル長鎖の脂肪酸を含まない、及び/又は、20℃で固体であるフェノール誘導体である、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記アルジトールアセタールが1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)ソルビトール又は1,3:2,4−ジ(ベンジリデン)ソルビトールのアルキル化された誘導体であり、そして
前記フェノール系酸化防止剤がテトラキス[メチレン(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタンである、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
プラスチック又はゲル化された材料を製造するための、或いは、前記プラスチック又はゲル化された材料のために意図された添加剤を製造するための、請求項1記載の方法により得られる粉末状アルジトールアセタール組成物の使用。
【請求項19】
前記水性アルジトールアセタール組成物が、該水性アルジトールアセタール組成物の総質量に対して、47質量%ないし72質量%の固形分含有率(SC)を有する、請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2008−505864(P2008−505864A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519774(P2007−519774)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/053052
【国際公開番号】WO2006/005681
【国際公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【Fターム(参考)】