説明

粉粒体流動性測定装置及びその方法

【課題】比較的大きな粒子径を有する粉粒体の流動性を正確に測定する粉粒体流動性測定装置を提供すること。
【解決手段】測定対象の粉粒体を受け入れる流入口、およびその粉粒体を排出する排出口を有する細管と、細管を振動させるためのバイブレータと、細管の振幅を測定する振動計と、細管の排出口から排出された粉粒体の重量を測定する重量計と、振動計と前記重量計からの測定信号を入力し、粉粒体の流動性を計算するコンピュータとから構成され、さらに細管の角度を0°から20°の範囲で調節する角度調節部を備えると共に、細管の排出口の径が、3mmから4mmの間の大きさになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体の平均粒子径が45μmから850μmという比較的大きな粒子径を持つ粉粒体の流動性を正確に測定する装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、高速増殖炉用MOX燃料の製造にあたっては、再処理工程から受け入れた硝酸ウラニルと硝酸プルトニウムの混合溶液から数百ミクロンのMOX(Pu02とU02の混合酸化物)粒子を製造し、次の工程で金型に入れて成型しているが、良好な成型体を得るには粒子を均一に充填する必要がある。このためには、MOX粒子の流動性を正確に測定する必要がある。MOX粒子のような粉粒体の流動性を正確に測定する装置として、従来より振動細管式の粉粒体流動性評価装置が知られている(特許文献1を参照)。
【特許文献1】WO 2006/115145 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の粉粒体流動性測定装置は、粒子径が250μmより小さい比較的径の小さな粉粒体の測定には有効であるが、造粒後のMOX粒子のように粒子径が250μm以上の比較的径の大きな粉粒体の場合には、必ずしも流動性を正確に測定することができなかった。
【0004】
本発明の目的は、造粒後のMOX粒子のように、粒子径が最大850μmという比較的大きな粒子を含む粉粒体であっても、その流動性を正確に測定できる粉粒体流動性測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの観点によれば、本発明の粉粒体流動性測定装置は、測定対象の粉粒体を貯めるためのホッパーと、前記ホッパーに接続され、粉粒体を受け入れる流入口、およびその粉粒体を排出する排出口を有する細管と、前記細管をその軸方向に対して垂直の方向に振動させるためのバイブレータと、前記細管の振幅を測定する振動計と、前記細管の排出口から排出された粉粒体の重量を測定する重量計と、前記振動計と前記重量計からの測定信号を入力し、粉粒体の流動性を計算するコンピュータとから構成される。本装置では、測定対象の粉粒体の粒径が45μmから850μmであって、細管の鉛直に対する角度が20°に設定されていると共に、細管の排出口の径が、3mmから4mmの間の大きさになっている。
【0006】
本発明の他の観点にかかる粉粒体流動性測定方法では、鉛直に対して20°に傾斜して振動している細管に、粒径が45μmから850μmの測定対象の粉粒体を一定量供給し、前記細管の振動の振幅、および3mmから4mmの径を有する、前記細管の排出口から排出される粉粒体の重量を測定し、それらの測定値に基づいて粉粒体の流動性を求めるようにしている。
【0007】
本発明に係る粉粒体流動性測定装置および方法は、粒径が45μmから850μmの範囲にある粉粒体の流動性測定に適しており、特に、使用済核燃料の再処理工程で造粒されるMOX(PuO2とUO2の混合酸化物)粒子の流動性測定に好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、細管を鉛直に対して20°傾斜させ、細管の排出口の径を3mmから4mmに設定しているので、粒径が45μmから850μmの粉粒体に対して、正確な流動性測定ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る振動細管式の粉粒体流動性測定装置の概略構成示している。図1(a)は、外見上の装置全体の模式図である。この装置は、実施例として特に詳細に説明する構成を除き、先に説明した国際公開公報であるWO 2006/115145 A1の図1の構成と同一である。また、この装置の基本的な動作についても、実施例として特に詳細に説明する動作を除いて上述の国際公開公報の図1に示された構成の動作と同一である。図1(b)は、角度調節機構101によって、図1(a)の細管10を鉛直に対して20°傾斜させるまでの状態を示している。この粉粒体流動性測定装置1は、測定対象の粉粒体を貯めるためのホッパー11と、粉粒体を排出させるガラス細管10と、ガラス細管10を細管の鉛直方向に対して垂直な方向に振動させる圧電素子すなわちバイブレータ12と、レーザを用いて細管の振動振幅を測定するためのレーザ振動計13およびその制御を行うコントローラ14と、排出粒子量すなわち重量を測定する重量計(ディジタルバランス)15と、レーザ振動計13と重量計15からの測定信号に基づいて流動性を測定評価するためのコンピュータ20から構成される。なお、符号100は細管の排出口であり、ガラス細管の先端で粒子の排出抵抗が最大になるよう先端が絞られている。
【0010】
コンピュータ20における流動性の測定評価には、流動性プロファイルを使用した。
【実施例】
【0011】
図1(a)の粉粒体流動性測定装置において、ガラス細管の内径を12mm、長さを180mmに設定した。粉粒体流動性測定装置の試験では、排出口径が2mm、3mmおよび4mmの3種類の細管を用意した。それぞれについて同一の条件で流動性の測定を行った。
【0012】
また、実際のMOX粒子の代わりにこれを模擬した粒子を使用した。模擬粒子は、ジルコニアの不定形粒子(粒子密度5800kg/mm3)であり、模擬粒子をふるいに通して、45μm以下、45〜106μm、106〜250μm、250〜425μm、425〜600μmおよび600〜850μmの6つの粒径範囲に分級したのち、表1に示すような組み合わせで、主成分および混入成分を混合し、測定用粉流体のサンプルとした。
【0013】
【表1】

【0014】
図1に示された装置を上述のように設定し、図2に示す手順で測定を行った。まず、細管の排出口径と傾斜角を調節した後(ステップS100)、排出口を可動式粒子落下防止板で塞いで(ステップS200)、この状態で,サンプル粒子を充填し(ステップS300)、初期充填状態のバラツキを抑えるために、バイブレータ12を用いて25秒間加振した(振動加速度300m/s2)(ステップS400)。その後,可動式粒子落下防止板を取り除き、振動周波数を330Hz(装置の共振周波数)で一定とし、振幅が一定の割合で増加する正弦波によりガラス細管10を振動させ、ガラス細管10の振動振幅をレーザ光線を利用した振動計13で計測すると共に、排出される粒子の質量流量を重量計15によって測定した(S500)。そして、これら振動系13の計測信号と重量計15の計測信号に基づいてサンプルの流動性プロファイルを求めた。なお、1回の試験時間は1分以内であり、連続して3回以上の試験を行った後、平均の流動性プロファイルを求めた。
【0015】
上述のようにして求めたサンプル粒子の典型的な流動性プロファイルを図3に示す。振動加速度が小さな領域では粒子は静止したままであるが、ある値を超えると粒子は急激に流れ始める。加速度をさらに上昇させていくと、質量流量はほぼ一定あるいは微増する傾向を示す。流動性プロファイルの傾きが最大となる2点を通る直線(図3の一点鎖線)を延長して、x軸と交わる点の振動加速度を流動閉始加速度(図3の臨界振動加速度)とした。
【0016】
上述のようにして測定した流動開始加速度(m/s2)と平均粒子径(μm)の関係を、図4乃至図6に示す。
【0017】
図4は、細管の傾斜角を0°にしたときの流動開始加速度と平均粒子径の関係を示したものである。流動閉始加速度は、粒子径の増加に伴い、一且減少して極小値を取り、再び増加する傾向がある。これは、粒子径が小さい場合には付着性が大きいため、粒子の流動を開始させるには、強い加振力が必要になるためである。粒子径が大きい場合には、粒子径に対する排出口径の比が小さくなり、断面積に対する周長の比が大きくなったため、管壁から受ける粒子の抵抗が増加したためと思われる。
【0018】
図5は細管の傾斜角を10°にしたときの流動開始加速度と平均粒子径の関係を示した図である。この場合も、傾斜角0°のときとほぼ同様の傾向が見られた。
【0019】
図6は細管の傾斜角を20°とした場合の、流動開始加速度と平均粒子径の関係を示している。細管の排出口径が3mmの場合には、今回の試験で使用した全てのサンプルに対して、流動開始加遠度の値が極端に大きくなったり、小さくなったりしないため、45μmから850μmまでの粒径範囲を通して、安定的な流動性評価が可能であることが分かった。
【0020】
以上、本発明について、好適な実施例に基づいて説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。例えば、上述の実施例では、細管の排出口径が3mmの場合と4mmの場合に良好な結果を得ているが、例えば細管の排出口径が3.5mmであってもほぼ同様の結果が得られることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る粉粒体流動性測定装置の概略構成図である。
【図2】本発明に係る粉粒体流動性測定方法の説明図である。
【図3】本発明の実施例で用いたサンプル粒子の典型的な流動性プロファイルを示す図である。
【図4】本発明の実施例において、細管の傾斜角を0°にしたときの流動開始加速度と平均粒子径の関係を示した図である。
【図5】本発明の実施例において、細管の傾斜角を10°にしたときの流動開始加速度と平均粒子径の関係を示した図である。
【図6】本発明の実施例において、細管の傾斜角を20°にしたときの流動開始加速度と平均粒子径の関係を示した図である。
【符号の説明】
【0022】
1 粉粒体流動性測定装置
10 細管
11 ホッパー
12 バイブレータ(圧電素子)
13 レーザ振動計
14 コントローラ
15 重量計(ディジタルバランス)
20 コンピュータ
21 表示装置
100 細管の排出口
101 細管の角度調節機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の粉粒体を貯めるためのホッパーと、前記ホッパーに接続され、粉粒体を受け入れる流入口、およびその粉粒体を排出する排出口を有する細管と、前記細管をその軸方向に対して垂直の方向に振動させるためのバイブレータと、前記細管の振幅を測定する振動計と、前記細管の排出口から排出された粉粒体の重量を測定する重量計と、前記振動計と前記重量計からの測定信号を入力し、粉粒体の流動性を計算するコンピュータとから構成される粉粒体流動性測定装置であって、
前記細管が、鉛直に対して20°の角度に傾斜していると共に、前記細管の排出口の径が、3mmから4mmの間の大きさにあることを特徴とする粉粒体流動性測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の粉粒体流動性測定装置において、前記粉粒体が、再処理工程において造粒されたMOX粒子であることを特徴とする粉粒体流動性測定装置。
【請求項3】
鉛直に対して20°に傾斜して振動している細管に、粒径が45μmから850μmの測定対象の粉粒体を一定量供給し、前記細管の振動の振幅、および前記細管の3mmから4mmの径を有する排出口から排出される粉粒体の重量を測定し、それらの測定値に基づいて粉粒体の流動性を求めることを特徴とする粉粒体流動性測定方法。
【請求項4】
請求項3に記載の粉粒体流動性測定方法において、前記粉粒体が、再処理工程において造粒されたMOX粒子であることを特徴とする粉粒体流動性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−112868(P2010−112868A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286339(P2008−286339)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月10日 発行の「粉体工学会誌2008年5月号(Vol.45,No.5)」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月20日 粉体工学会発行の「2008年度 春期研究発表会講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成20年5月21日 粉体工学会主催の「粉体工学会2008年度春期研究発表会」において文書をもって発表
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)