説明

粒子の充填配置方法

【課題】表示媒体とする粒子を確実に充填配置することができる粒子の充填配置方法を提供する。
【解決手段】基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、マスク上に、粒子を載せる粒子載置ステップと、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子の充填配置方法であって、粒子移動部材12の、マスク11上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である粒子移動部材を、マスク面に対して垂直方向に配置して、マスク面との接触部位をマスク面に接触させて移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示用パネルの製造方法に関し、より詳細には、基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、マスク上に粒子を載せる粒子載置ステップと、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、基板上の複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する情報表示用パネルの表示媒体とする粒子の充填配置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、少なくとも一方の情報表示画面領域が透明な2枚の基板を対向配置した基板間の情報表示画面領域を、隔壁で区切って形成した複数の領域に、表示媒体とする粒子群を配置し、この粒子を移動させて情報を表示する情報表示用パネルが知られている。
【0003】
そして、上述した情報表示用パネルを製造する際に実行される粒子配置工程で、スクリーンおよび板状部材を用いて粒子を配置する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、情報表示用パネルのパネル基板に形成した隔壁上にスクリーンを配置し、スクリーン上に載せた表示媒体とする粒子を板状部材でスクリーン上を移動させながらスクリーンの開口部から落下させる。これにより、パネル基板上の隔壁で囲まれた領域(セル)内に粒子を配置する技術である。このようにスクリーンおよび板状部材による粒子配置工程を行えば、情報表示用パネルを製造する際に、効率良くセル内に粒子を配置することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−148381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1に開示された技術では、板状の粒子移動部材を、進行方向側に倒すような角度を持って配置した場合、粒子移動部材の移動方向が変わるときには、その角度を逆側に変える必要があり、往復させる場合には移動方向が変わる度に角度切替あるいは板状の粒子移動部材の向きの切替が必要であった。
【0006】
板状の粒子移動部材を、マスクに対して垂直となるように配置した場合、粒子移動部材の移動方向が変わってもその角度を変える必要がないため、往復させる場合に角度切替あるいは板状の粒子移動部材の向きの切替を行う必要はないが、粒子移動部材をマスクに押し付けながら移動してマスク上の粒子群を移動しようとすると、スティック−スリップを起こして滑らかな移動が行えずに、粒子移動部材が通過した後のマスク上に粒子残りが見られ、基板上のセルの一部に粒子群の充填不足が見られることがあったり、隔壁上に配置したマスクの位置がずれて所定通りの粒子充填が行えないことがあったりする不具合があった。
【0007】
本発明の目的は上述した問題点を解消して、粒子移動部材を往復移動させて粒子の充填配置を実行しても、粒子移動部材の角度の切替や向きの切替を行うことなく、また、1枚目の基板に対して粒子の充填配置を終了した後、次に2枚目の基板に対して粒子の充填配置を実行するに際して、粒子移動部材の移動開始位置を元に戻す必要がなく、さらにまた、粒子移動部材にスティック−スリップを発生することなく、表示媒体とする粒子を確実に充填配置することができる粒子の充填配置方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の粒子の充填配置方法は、2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示用パネルの製造において、前記基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、前記複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、前記マスク上に、前記粒子を載せる粒子載置ステップと、前記マスク上に載置された前記粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、前記マスクの開口部を介して、前記複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子の充填配置方法であって、前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状が、前記マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、前記マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である粒子移動部材を、前記マスク面に対して垂直方向に配置して、前記マスク面との接触部位を前記マスク面に接触させて移動させることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の粒子の充填配置方法の好適例としては、前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記粒子移動部材の固定端となる部位から、前記マスク面との接触部位までの距離L2と、前記粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2であること、前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位の両側にそれぞれ対称に配置される第1の平坦面に対応する辺部がいずれも、前記マスク面と45°〜85°の範囲の角度を形成するようにしてあること、前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位の両側にそれぞれ対称に配置される複数の平坦面に対応する辺部を有する場合、前記マスク面との接触部位から最も離れた部位である第1の平坦面に対応する辺部が、前記マスク面と45°〜85°の範囲の角度を形成するようにしてあるとともに、前記マスク面との接触部位に隣接する両側の部位である第2の平坦面に対応する辺部が、前記マスク面と10°〜45°の範囲の角度を形成するようにしてあること、前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位が直線部であること、前記粒子動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位が曲線部であること、前記粒子移動部材の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲であること、1枚目の基板に対して粒子の充填配置方法を実行した後、2枚目の基板に対して粒子の充填配置方法を実行するに際して、前記マスクの下にあった前記1枚目の基板を前記マスク下から移動した後、前記2枚目の基板をマスク下に配置し、前記マスク上の一端に移動している粒子移動部材の位置を、前記マスク上の他端に移動しないで、前記2枚目の基板に対する粒子の充填配置を実行すること、がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、粒子移動部材の、マスク上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である粒子移動部材を、マスク面に対して垂直方向に配置して、マスク面との接触部位をマスク面に接触させて移動させることで、板状の粒子移動部材をマスク面に対して垂直(90°)にした状態にしたときに粒子移動部材の両側面が、マスク面に所定角度を形成するようにしたので、粒子移動部材を進行方向側に倒れるように配置しなくても良好な粒子充填が行えるとともに、粒子移動部材の進行方向が変わっても固定角度を切り替える必要がなく、効率的な粒子充填を行うことができる。
【0011】
また、粒子移動部材の、マスク上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状において、粒子移動部材の固定端となる部位から、マスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2である場合、および、粒子移動部材の、マスク上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状において、マスク面との接触部位の両側にそれぞれ対称に配置される第1の平坦面に対応する辺部がいずれも、マスク面と45°〜85°の範囲の角度を形成するようにしてある場合は、マスクに載せた粒子群を移動させた後のマスク面に粒子が残ることを抑制した粒子移動が行えるようになるとともに、粒子移動部材を往復させる際、移動方向を切り替えるたびに実施していた粒子移動部材の角度調整工程を実行する必要がなくなり、効率的な粒子充填工程が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法の対象となる粒子を表示媒体とする情報表示用パネルの一例を説明するための図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法の対象となる粒子を表示媒体とする情報表示用パネルの他の一例を説明するための図である。
【図3】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法の一例を説明するための図である。
【図4】本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材の一例を説明するための図である。
【図5】本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材の他の例を説明するための図である。
【図6】本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材のさらに他の例を説明するための図である。
【図7】本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材のさらに他の例を説明するための図である。
【図8】(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法における粒子移動部材と粒子群との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<本発明の粒子の充填配置方法の対象となるパネル構造について>
まず、本発明の粒子の充填配置方法の対象となる表示媒体として粒子を用いる情報表示用パネルの一例である帯電粒子駆動型情報表示用パネルの基本的な構成について説明する。この情報表示用パネルでは、対向する2枚の基板間に配置した帯電性粒子を含んだ粒子として構成した表示媒体に電界が付与される。付与された電界方向にそって、表示媒体が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体が電界方向の変化によって移動方向が切り換わることにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体が、均一に移動し、かつ、表示情報を書き換える時あるいは表示した情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する粒子にかかる力は、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力の他に、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0014】
本発明の粒子の充填配置方法の対象となる帯電粒子駆動型の情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)〜図2(a)、(b)に基づき説明する。
【0015】
図1(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セル7において、背面側基板1の情報表示画面領域に設けた電極5(ストライプ電極)と観察側基板2の透明な情報表示画面領域に設けた透明電極6(ストライプ電極)とが対向直交交差して形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図1(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図1(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示しているが、セルと画素とを対応させない構成にすることもできる。
【0016】
図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成した少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ白色粒子群3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ黒色粒子群3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1の情報表示画面領域に設けた電極5(TFT(薄膜トランジスタ)付き画素電極)と基板2の透明な情報表示画面領域に設けた透明な電極6(共通電極)との間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色粒子群3Wを観察者に視認させて白色の表示を、あるいは、図2(b)に示すように黒色粒子群3Bを観察者に視認させて黒色の表示を白黒のドットでマトリックス表示している。なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。また、8は接着剤である。さらに、ここではセルと画素(ドット)とが1対1に対応する例を示しているが、セルと画素とを対応させない構成にすることもできる。
【0017】
<本発明の粒子の充填配置方法について>
本発明の粒子の充填配置方法における特徴部分は、上述した情報表示用パネルの製造において、表示媒体とする粒子を、2枚の基板間の所定の領域に充填配置する際に、マスク上に載置された粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、マスクの開口部を介して、基板上の複数の領域に充填する粒子充填ステップにおいて、マスク上に載置された粒子に触れる部分にあたる粒子移動部材の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通り軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である粒子移動部材を、マスク面に対して垂直方向に配置して、マスク面との接触部位をマスク面に接触させて移動させる点にある。
【0018】
図3(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法の一例を説明するための図である。図3(a)〜(d)に示す例に従って本発明の粒子の充填配置方法の一例を説明すると、まず、図3(a)に示すように、マスク11を基板1上に形成した隔壁4の頂上と接地させて配置し、マスク11上に、白色粒子群3W、および、この白色粒子群3Wと触れる部分にあたる粒子移動部材の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である、粒子移動部材12を、マスク面に対して垂直方向に、白色粒子群3Wの左側の起点に配置する。次に、図3(b)に示すように、マスク11上に載せた白色粒子群3Wを、粒子移動部材12をマスク面に押し当てた状態で図中右側へ移動する往移動させることにより、終点まで移動させる。この粒子移動部材12の往移動により、マスク11の開口部11−1から落下した白色粒子群3Wは、基板1上で隔壁4で囲まれて形成されたセル7内に配置される。次に、図3(c)に示すように、マスク11上に残った白色粒子群3Wに対し、粒子移動部材12の起点を右側に移動させる。次に、図3(d)に示すように、マスク11上に残った白色粒子群3Wを、粒子移動部材12をマスク11上で図中左側へ移動させる復移動をさせて、元の位置に戻している。この粒子移動部材12の復移動でも、マスク11の開口部11−1から落下した白色粒子群3Wは、セル7内に重ねて配置される。なお、11−2はマスク11のマスク部である。
【0019】
上述した粒子移動部材12の往移動、復移動を数回繰り返すことにより、本発明の粒子の充填配置方法を実行している。なお、上述した例では、復移動において、往移動の後マスク11上に残った白色粒子群3Wを充填配置した例を示したが、復移動において、新たな白色粒子群3Wを追加して、マスク11上残った白色粒子群と追加した白色粒子群との混合物である白色粒子群3Wをセル7内に充填配置するよう構成することもできる。また、図3における往移動において、粒子移動部材に押されてマスク上を移動している最中にマスクの開口部からマスク下に落下しないで、マスク上に残ったまま図中右側まで移動した粒子群はそのままさらに図中右側に移動させて、復移動の際には使用しない粒子群としてしまい、図中右側に移動している粒子移動部材が復移動を開始する前に、粒子移動部材の手前前方(図3(c)に示した位置に対応する)のマスク上に新しい白色粒子群3Wを復移動を追加して、この新しい白色粒子群3Wを復移動の際に、セル7内に充填配置するよう構成することもできる。
【0020】
上述した本発明の粒子の充填配置方法によれば、粒子移動部材12として、マスク上に載せてある粒子と触れる部分にあたる粒子移動部材12の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である、粒子移動部材12を、マスク面に対して垂直方向に配置することで、往移動、復移動を数回繰り返すために粒子移動部材12の起点を変える際に、単にその位置を変えるだけで、従来のように傾き角度を移動方向に応じて変更させる必要がないため、従来よりも簡単に粒子の充填配置をすることができる。
【0021】
<本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材について>
図4〜図7はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法で用いる粒子移動部材の一例を説明するための図である。図4〜図7に示す例においては、固定部分が肉厚で、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が左右対称な粒子移動部材12、具体的には、固定用治具13により保持された板状(図中紙面に垂直な方向に同じ断面が連続する形状)の粒子移動部材12において、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が、マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、マスク面との接触部位に向かって、その幅が徐々に小さくなる形状の粒子移動部材12を用いている。
【0022】
図4に示す例では、略二等辺六角形の断面形状であって、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が二等辺台形で、両側にマスク面と角度θ1(θ1=45°)を有する第1の平坦部12−1を有するとともに、先端の接触部位としての平坦面12−3がマスク面に接する粒子移動部材12を示している。図4に示す例において、粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2であることが好ましい。また、マスク面と第1の平坦部12−1とのなす角度θ1は45°≦θ1≦85°であることが好ましい。さらに、平坦面12−3の幅Wが0.2mm≦W≦5mmであることが好ましい。さらにまた、粒子移動部材12の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲であることが好ましい。いずれも、粒子移動部材12をマスク面に対して垂直方向に立てた状態で移動させても、スティック−スリップを起こしにくくなるためである。
【0023】
図5に示す例では、略二等辺五角形の断面形状であって、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が曲率部を頂点とする略二等辺三角形で、両側にマスク面と角度θ1を有する第1の平坦部12−1を有するとともに、先端の曲面(曲率部)12−4がマスク面に接する粒子移動部材12を示している。図5に示す例において、粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2であることが好ましい。また、この場合、マスク面との接触部が曲率を有する曲面なので、第1の平板部12−1から先端に繋がる面がマスク面となる角度は徐々に小さくなる形態となるので、マスク面と第1の平坦部12−1とのなす角度θ1が45°≦θ1≦85°であることが好ましい。さらに、先端の曲面12−4の曲率半径Rが0.2mm≦R≦2.5mmであることが好ましい。さらにまた、粒子移動部材12の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲であることが好ましい。いずれも、粒子移動部材12をマスク面に対して垂直方向に立てた状態で移動させても、スティック−スリップを起こしにくくなるためである。
【0024】
図6に示す例では、略二等辺八角形の断面形状であって、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が二等辺六角形で、両側にマスク面と角度θ1を有する第1の平坦部12−1と角度θ2を有する第2の平坦部12−2とを有するとともに、先端の平坦面12−3がマスク面に接する粒子移動部材12を示している。図6に示す例において、粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2であることが好ましい。また、マスク面と第1の平坦部12−1とのなす角度θ1が45°≦θ1≦85°であり、マスク面と第2の平坦部12−2とのなす角度θ2が10°≦θ2≦45°であることが好ましい。さらに、平坦面12−3の幅Wが0.2mm≦W≦5mmであることが好ましい。さらにまた、粒子移動部材12の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲であることが好ましい。いずれも、粒子移動部材12をマスク面に対して垂直方向に立てた状態で移動させても、スティック−スリップを起こしにくくなるためである。
【0025】
図7に示す例では、略二等辺七角形の断面形状であって、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が曲率部を頂点とする略二等辺五角形で、両側にマスク面と角度θ1を有する第1の平坦部12−1と角度θ2を有する第2の平坦部12−2とを有するとともに、先端の曲面12−4がマスク面に接する粒子移動部材12を示している。図7に示す例において、粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2であることが好ましい。また、マスク面と第1の平坦部12−1とのなす角度θ1が45°≦θ1≦85°であり、マスク面と第2の平坦部12−2とのなす角度θ2が10°≦θ2≦45°であることが好ましい。さらに、先端の曲面12−4の曲率半径Rが0.2mm≦R≦2.5mmであることが好ましい。さらにまた、粒子移動部材12の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲であることが好ましい。いずれも、粒子移動部材12をマスク面に対して垂直方向に立てた状態で移動させても、スティック−スリップを起こしにくくなるためである。
【0026】
図4〜図7に示した粒子移動部材12において、移動させる粒子群と当たる粒子移動部材12の第1の平坦部12−1がマスク面となす角度θ1は、45°〜85°の範囲が好ましい。45°より小さいと移動できる粒子量が少なくなる不都合があること、そして、85°より大きいと、滑らかに粒子移動部材を移動させることができなくなるためか、粒子移動部材が通過した後のマスク面に粒子残りが見られる場合があり、粒子群を均一に移動できていない不都合がある。
【0027】
また、粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2となるようにすることが好ましい。これで、マスク11との接地部分の両側面がマスク面と形成する角度を90°より小さくしたことと相まって、粒子移動部材12をマスク面に対して垂直方向に配置しても、スティック−スリップを抑制して、粒子移動部材12を滑らかに移動させ、粒子群を均一に移動させることができる。
【0028】
さらに、マスク面と当たる粒子移動部材面は、平坦面12−3であればその幅Wを0.2mm〜5mmの範囲とすること、曲面12−4であれば曲率半径Rを0.2mm〜2.5mmの範囲とすることが好ましい。これで、スティック−スリップを抑制して、粒子移動部材12を滑らかに移動させ、粒子移動部材が通過した後のマスク面に粒子を残すことを抑制して、粒子群を均一に移動させることができる。
【0029】
粒子移動部材12とする板状部材は、天然ゴムやスチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、ウレタンゴムなどの合成ゴムおよびポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド樹脂などの弾性を有する高分子材料を主体に構成することが好ましい。また、前記高分子材料で成形後、例えば、シリコーン樹脂およびその誘導体やフッ素樹脂およびその誘導体などの摩擦抵抗が小さい材料の薄膜をマスクと接する部分の表面や当該粒子移動部材で移動させる粒子と接する部分の表面に形成すると、粒子移動部材をマスク上を滑らかに移動できたり、粒子を滑らかに移動できたりするので好ましい。
【0030】
前記した弾性を有する高分子材料の弾性は、JIS−A硬度で、70°〜90°の範囲で示される弾性であることが好ましい。JIS−A硬度が70°未満では、マスク面に押し付けられた時の変形が大きすぎて粒子移動部材を滑らかに移動できなくなる場合がある不都合があり、JIS−A硬度が90°を超えると粒子移動部材12とマスク面との間に挟まれた粒子が損傷して、情報表示用パネルの表示媒体として機能しなくなるおそれがある。
【0031】
<本発明の粒子の充填配置方法におけるセルおよびマスクについて>
本発明が対象とする情報表示用パネルにおけるセル開口の大きさは、長方形であれば、1辺の長さが50μm〜1000μm程度、好ましくは100μm〜300μm程度であり、ハニカム(六角形)形状の場合は、向かい合う頂点の距離が100μm〜1000μm程度、好ましくは100μm〜300μm程度である。
【0032】
基板間空間を複数の領域に区切って、例えばセルを形成するための隔壁の配置は、格子状、ハニカム状、網目状などにすることができる。セルの横断面形状は、四角形、三角形、六角形、階段型八角形等の多角形や、円形、楕円形、レーストラック形等いずれでも良いし、複数の形状を組み合わせても良い。非表示部となる隔壁の占める割合を小さくできる点からは四角形、階段型八角形や六角形が好ましく、表示媒体を構成する粒子を移動しやすくできる点からは曲線を有する形状が好ましい。前記二つの点から角丸付きの四角形や角丸付きの六角形、角丸付きの階段型八角形が好ましく用いられる。
【0033】
隔壁の形成材料としては、レジスト材が好適であり、液状レジスト材やドライフィルムレジスト材が用いられる。ドライフィルムレジスト材の一例として、アルフォNIT2(ニチゴーモートン社製)やPDF300(新日鐵化学社製)を使用することができる。
【0034】
マスク(マスク本体)は、材料にステンレス鋼(SUS)、ニッケル、アルミニウム、鉄、銅等の金属やこれらの合金を用いたメタルマスクや、汎用プラスチックを用いた樹脂製マスクおよびメタルと樹脂とを組み合わせた積層マスクなどが用いられる。メタルマスクの一部に絶縁部材を設けて部分的に絶縁性部材を有する導電性メタルマスクとしたり、樹脂製マスクの一部に導電部材を設けた部分的に導電性部分を有する樹脂製マスクとしたりすることができる。マスクの厚さは10μm〜200μmの薄いものが好ましく強度的に優れたメタルマスクが好適である。隔壁上に接するように配置したマスクを隔壁から引き離す際にスムーズに引き離させるように、マスク裏面側は表面粗さRaが1μm〜10μmとなるようにするのが好ましい。
【0035】
マスクの開口は、セル開口部を囲む隔壁がマスクの開口部に露出しなければよく、その形状はどのような形状であっても良い。マスク目詰まりが起きにくい角丸付き四角形、角丸付き六角形、楕円形、円形、レーストラック形などが好ましく用いられる。さらにその形状はセル開口形状に合わせるか円形状、楕円形状、レーストラック形状のいずれかにするのが好ましい。
【0036】
<本発明の対象となる情報表示用パネルの電極について>
必要に応じて配置する電極用の導電膜としては、観察側基板の透明な情報表示画面領域には透明な導電膜を設ける必要があり、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の透明導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)等の透明導電性高分子類で形成した導電膜が挙げられ、必要に応じてパターニングして用いる。
【0037】
情報表示画面領域外や背面側基板に設ける電極用の導電膜は透明であってもよいし、透明でなくてもよく、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム、亜鉛ドープ酸化インジウム(IZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、導電性酸化錫、導電性酸化亜鉛等の導電金属酸化物類、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、poly(3,4-ethylenedioxythiophene)-poly-(styrenesulfonate)(PEDOT:PSS)等の導電性高分子類や、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム等の金属や、これらの金属を主成分とする合金が挙げられ、必要に応じてパターニングして用いる。
【0038】
電極用の導電膜の形成方法としては、上記例示の材料をスパッタリング法、真空蒸着法、CVD(化学蒸着)法、塗布法等で薄膜状に形成する方法や金属箔(例えば圧延銅箔)をラミネートする方法、導電剤を溶媒や合成樹脂バインダーに混合して塗布したりする方法が用いられる。パターン形成可能で導電性である上記材料を好適に用いることができる。なお、観察側基板の透明な情報表示画面領域に設ける透明な導電膜の厚さは、導電性が確保でき光透過性に支障がなければ良く、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。また、情報表示画面領域外や背面側基板に設ける導電膜の厚さは、導電性が確保できれば良く、0.01μm〜10μmが好ましく、0.05μm〜5μmがより好ましい。
【0039】
透明導電膜として好適なITO等の金属酸化物系材料は、金属材料に比べて可とう性が小さい。ITO等の金属酸化物系材料でライン状の導電膜を構成する場合には、透明導電膜中での断線防止のため、金属細線と併用することが好ましい。この金属細線の幅は、1μm〜10μmとすれば表示視認性の妨げとならないので好ましい。情報表示画面領域外や背面側基板に設ける導電膜は光透過性を考慮する必要がないので電気抵抗が小さく、可とう性にも優れた前記金属材料が好適に用いられる。また、情報表示画面領域外や背面側基板に設ける導電膜の厚さは電気抵抗および生産性、コストの観点から、0.01μm〜10μmに設計される。
【0040】
<本発明の粒子の充填配置方法で用いる表示媒体とする粒子群について>
本発明の粒子の充填配置方法を適用する情報表示用パネルにおいて表示媒体を構成する粒子群は、平均粒子径d(0.5)が、1μm〜20μmの範囲であり、一種類の粒子で構成したり、複数種類の粒子を組み合せて構成したりする。平均粒子径d(0.5)がこの範囲より大きいと表示上の鮮明さに欠け、この範囲より小さいと粒子同士の凝集力が大きくなりすぎるために表示媒体としての移動に支障をきたすようになる。
【0041】
さらに、表示媒体を構成する粒子(粒子群)の粒子径分布に関して、下記式に示される粒子径分布Spanを5未満、好ましくは3未満とする。
Span=(d(0.9)−d(0.1))/d(0.5)
(但し、d(0.5)は粒子の50%がこれより大きく、50%がこれより小さいという粒子径をμmで表した数値、d(0.1)はこれ以下の粒子の比率が10%である粒子径をμmで表した数値、d(0.9)はこれ以下の粒子が90%である粒子径をμmで表した数値である。)
Spanを5以下の範囲に納めることにより、表示媒体を構成する粒子のサイズが揃い、表示媒体としての均一な移動が可能となる。
【0042】
さらにまた、表示媒体として複数の粒子群を使用する場合には、使用した粒子群の内、最大の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)に対する、最小の平均粒子径d(0.5)を示す粒子群の平均粒子径d(0.5)の比を10以下とする。たとえ粒子径分布Spanを小さくしたとしても、複数の粒子群は表示媒体として互いに反対方向に動くので、互いの粒子群を構成している粒子サイズが近い方が表示媒体として容易に移動できるようになるので好適であり、それがこの範囲となる。
【0043】
なお、上記の粒子径分布および粒子径は、レーザー回折/散乱法などから求めることができる。測定対象となる粒子にレーザー光を照射すると空間的に回折/散乱光の光強度分布パターンが生じ、この光強度パターンは粒子径と対応関係があることから、粒子径および粒子径分布が測定できる。
ここで、粒子径および粒子径分布は、体積基準分布から得られたものである。具体的には、Mastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.)測定機を用いて、窒素気流中に粒子群を投入し、付属の解析ソフト(Mie理論を用いた体積基準分布を基本としたソフト)にて、平均粒子径および粒子径分布の測定を行うことができる。
【0044】
さらに、帯電性粒子を含んだ粒子群を表示媒体として、気体中空間(真空を含む)で駆動させる方式とする場合には、パネル基板間の表示媒体を取り巻く空隙部分の気体の管理が重要であり、表示安定性向上に寄与する。具体的には、空隙部分の気体の湿度について、25℃における相対湿度を60%RH以下、好ましくは50%RH以下とすることが重要である。
この空隙部分とは、対向する2枚の基板に挟まれる部分から、電極、表示媒体の占有部分、隔壁の占有部分、パネル基板間のシール部分を除いた、いわゆる表示媒体が接する気体部分を指すものとする。
空隙部分の気体は、先に述べた湿度領域であれば、その種類は問わないが、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、乾燥ヘリウム、乾燥二酸化炭素、乾燥メタンなどが好適である。この気体は、その湿度が保持されるようにパネル基板間に封入することが必要であり、例えば、表示媒体の充填、パネルの組み立てなどを所定湿度環境下にて行い、さらに、外からの湿度侵入を防ぐシール剤、シール方法を施すことが肝要である。
【0045】
本発明の対象とする情報表示用パネルの基板と基板との間隔は、表示媒体が駆動できて、表示コントラストを維持できればよく、表示媒体とする粒子群を構成する粒子の大きさや充填量に合わせて調整される。
表示媒体とする粒子群に帯電性粒子を用いる場合は、基板と基板との間隔は10μm〜200μm、好ましくは10μm〜100μmの範囲で調整される。さらに、基板間の気体中空間(真空を含む)における表示媒体の体積占有率は5〜70%が好ましく、さらに好ましくは5〜60%である。70%を超える場合には表示媒体としての粒子の移動に支障をきたし、5%未満の場合にはコントラストが不明確となり易い。
【0046】
本発明に係る情報表示用パネルに用いる表示媒体とする粒子群は、帯電性粒子を含む粒子群としたり、導電性粒子を含む粒子群としたり、半導体性粒子を含む粒子群としたりすることができる。これらの粒子群に対して、例えば、電界を付与したり、電荷を注入したり、正孔を注入したりすることによってこれらの粒子群を表示媒体として移動させることができ、この表示媒体を視認することによって表示された情報を認識する。
【0047】
<本発明の粒子の充填配置方法における粒子移動部材と粒子群との関係について>
図8(a)〜(d)はそれぞれ本発明の粒子の充填配置方法における粒子移動部材と粒子群との関係を説明するための図である。図8(a)に示す例では、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が曲率部を頂点とする略二等辺三角形であり、曲面(線接触)が変形して形成する面接触状態で移動する粒子移動部材12を示している。図8(b)に示す例では、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が略二等辺台形であり、平面が形成する面接触状態で移動する粒子移動部材12を示している。図8(c)に示す例では、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が曲率部を頂点とする略二等辺五角形であり、曲面(線接触)が変形して形成する面接触状態で移動する粒子移動部材12を示している。図8(d)に示す例では、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が略二等辺六角形であり、平面が形成する面接触状態で移動する粒子移動部材12を示している。
【0048】
図8(a)〜(d)に示す例ではいずれの例においても、粒子移動部材12により前方に押された粒子群が形成する山は、図中矢印で示すように粒子移動部材12の先端面とマスク面との間隙部分に移動し、粒子移動部材12の先端面でマスクの開口部に押し込まれるようにしてマスク下に落とされると推察している。また、図8(a)〜(d)において、マスク面と第1の平坦部12−1とのなす角度θ1が45°≦θ1≦85°であることが好ましい。さらに、図8(c)、(d)において、マスク面と第2の平坦部12−2とのなす角度θ2が10°≦θ2≦45°であることが好ましい。
【実施例】
【0049】
下記にて作製した白色粒子群を、厚さ80μmで、直径100μmの円形の開口部をパネル基板上のセル開口の位置に対応させて設けたステンレス(SUS304)製のマスク本体を用いて、ITO電極付きガラス基板上に形成した高さ50μmの隔壁によって囲まれた320μm×320μmの正方形セル内に充填配置し、情報表示画面領域全体に粒子群が均一に配置されているかどうかを50倍程度に拡大した顕微鏡観察によって確認して評価した。各実施例および比較例において、10枚の基板に対して白色粒子充填工程を実施して、粒子充填工程を終了した10枚の基板について評価した。
【0050】
粒子充填工程は、実施例1〜11、比較例1〜5、参考例1〜3に示すように、材質や断面形状(マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状)が異なる板状部材をそれぞれ固定用ホルダーに固定した粒子移動部材を用いて実施した。いずれの例においても、粒子移動部材の2往復(往移動−復移動−往移動−復移動)をもって粒子充填工程を終了とし、マスクを取り外した後の基板を観察して、白色粒子群の充填状態を評価するとともに、粒子充填工程におけるマスクの配置を起点とし、マスクの取り外しを終点とした所要時間について比較し、その効率について評価した。結果を表1−1、表1−2に示した。
【0051】
(マスクの構成)
実施例および比較例で用いたマスクは、マスク本体を枠体に張力付与部材で取り付けた構成であり、枠体には、厚さが1mmのステンレス鋼板(SUS304)を中空になるように折り曲げたパイプ構造のものを採用し、張力付与部材には、線径50μmのステンレス繊維メッシュを採用した。マスクの枠体を上下に移動する昇降装置に固定してパネル基板上の隔壁頂上に対するマスク本体の配置位置を調整した。隔壁頂上と接触する側の面の表面粗さRaを5μm程度にしたステンレス製マスク本体を、ステンレス繊維メッシュで張力を付与した状態で、中空のステンレス製枠体に固定したマスクを用いて粒子群をセル内に充填配置した。
【0052】
(白色粒子群)
ポリメチルペンテンポリマー(TPX−R18:三井化学社製)100重量部と、着色剤として二酸化チタン(タイペークCR−90:石原産業社製)100重量部と、負帯電の荷電制御剤としてフェノール系縮合物(ボントロンE89:オリエント化学製)5重量部とを2軸混練機により溶融混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマチック(株)製)で細かく粉砕し、分級機(MDS−2:日本ニュ−マチック工業)を用いて分級し、溶融球状化装置(MR−10:日本ニュ−マチック工業)を用いて溶融球状化し、平均粒子径が、9.5μmの負帯電性の白色粒子群を得た。
【0053】
【表1−1】

【0054】
【表1−2】

【0055】
(結果1)
板状の粒子移動部材を、マスク面に対して垂直方向に配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにした実施例1〜11および比較例1、4、5、参考例1、2、3では、板状の粒子移動部材(断面形状:長方形)を、マスク面に対して60°傾けて配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにした比較例2および3に比べて、粒子移動部材の移動方向を切り替える度に、粒子移動部材とマスクとで形成する角度を60°に調整する工程が不要なため、粒子移動部材を2往復させて実行した実施例の粒子充填工程においてはその所要時間を20%短縮でき、効率を向上できることが分かった。
【0056】
(結果2)
板状の粒子移動部材を、マスク面に対して垂直方向に配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにした実施例1〜11および比較例1、4、5において、比較例1では、板状の粒子移動部材(断面形状:長方形)の1辺をマスク面に接するようにして、マスク面に対して垂直(90°)に配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにした。比較例1では、白色粒子群を充填し終えた10枚すべてのガラス基板において、白色粒子が充填されていないセルが見られた。また、比較例4、5では、板状の粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1との関係が、L1≧L2となるようにしたが、白色粒子群を充填し終えた10枚のガラス基板中の数枚において、白色粒子が充填されていないセルが見られた。
【0057】
断面形状が長方形であり、固定端となる部位からマスク面との接触部位までの厚さが同じであることや、移動するマスク上の粒子群と接する部分である、移動方向側の面がマスク面と形成する角度が90°であることが、良好な粒子充填を行えなかった要因と推察される。さらにまた、参考例1、2、3では、マスク面と接する平坦面の両側に、マスク面と鋭角を形成する第1の平坦部を有し、マスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状が二等辺多角形の粒子移動部材を用いたが、白色粒子群を充填し終えた10枚のガラス基板のうちの1枚ではあるが、白色粒子群が充填されていないセルが見られた。L1≧L2の関係を満たさなかったために、粒子移動部材をマスクに押し付けながら移動させたときに、わずかながらスティック−スリップが発生したことが原因と推察される。
【0058】
(結果3)
板状の粒子移動部材を、マスク面に対して60°傾けた配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにした比較例2(断面形状:角Rなし長方形)および比較例3(断面形状:角R付き長方形)でも、白色粒子群を充填し終えた10枚のガラス基板中の数枚において、白色粒子群が充填されていないセルが見られた。粒子移動部材をマスク面に対して60°傾けて配置した状態で移動させたのでスティック−スリップは発生しなかったが、ここで用いた板状の粒子移動部材(断面形状:長方形)がマスク面と接する部分は角部であり、マスク面に押し付けられた時に変形して面接触を形成するものの線接触に近い接触状態であるとともに、マスクに接触している部分を挟んだ両側の面が形成する角度が90°であるため、マスクに接触している部分を挟んだ両側の面が鋭角を形成する実施例1〜11や、参考例1、2、3の場合と比べると、粒子がマスクの開口部に押し込まれる状況に差があり、これが良好な粒子充填を行えなかった要因と推察される。
【0059】
(結果のまとめ1)
以上の結果から、板状の粒子移動部材を、マスク面に対して垂直に配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにすれば、傾けて配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動する場合に比べて、粒子移動部材の移動方向を切り替える際に、板状の粒子移動部材が粒子群と接する面とマスク面との接触角度を調整する工程が不要になり、粒子移動部材を数回往復させる粒子充填工程の効率が向上することが分かった。
【0060】
また、板状の粒子移動部材のマスク上の粒子と触れる部分の幅方向断面形状を、長方形ではなく、先端部分に向かって幅が小さくなる、左右対称な二等辺多角形とし、この二等辺部分に挟まれる平面または曲面をマスクへ押し当ててマスクと板状の粒子移動部材とを面接触させるとともにマスク面に対して垂直(90°)に配置した状態で移動させて、マスク上の粒子群を移動するようにすれば、粒子移動部材を数回往復させる粒子充填工程の効率を向上できるとともに、所定量の粒子群を、基板上のセル内に確実に充填して配置することができる粒子充填工程となることが分かった。
【0061】
(結果のまとめ2)
また、以上の結果から、本発明に係る粒子移動部材の形状によれば、充填する粒子群と接する面が、マスク面に対して形成する角度が鋭角となるように配置されるとともに、マスクと接する平坦面とは直角ではなく鋭角を形成するので、粒子群と接する面が粒子群を押し出す機能と、マスクと接する面(平坦面または曲面)が、粒子をマスクの開口部内へ押し込む機能とが効果的に機能するようになって、好適な粒子充填工程が得られると推察される。さらに、板状の粒子移動部材の固定端となる部位からマスク面との接触部位までの距離L2と、粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1との関係が、L1≧L2の関係を満たすようにすることによって、板状の粒子移動部材をマスクに押し付けながら移動させるときのスティック−スリップ発生が抑制され、さらに好適な粒子充填工程となることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の粒子の充填配置方法を用いて作製した情報表示用パネルは、ノートパソコン、電子手帳、PDA(Personal Digital Assistants)と呼ばれる携帯型情報機器、携帯電話、ハンディターミナル等のモバイル機器の表示部、電子書籍、電子新聞等の電子ペーパー、看板、ポスター、黒板(ホワイトボード)等の掲示板、電子卓上計算機、家電製品、自動車用品等の表示部、ポイントカード、ICカード等のカード表示部、電子広告、情報ボード、電子POP(Point Of Presence, Point Of Purchase advertising)、電子値札、電子棚札、電子楽譜、RF−ID機器の表示部のほか、POS端末、カーナビゲーション装置、時計など様々な電子機器の表示部に好適に用いられる。他に、リライタブルペーパーとしても好適に用いられる。
【符号の説明】
【0063】
1、2 パネル基板
3W 白色粒子群
3Wa 白色粒子
3B 黒色粒子群
3Ba 黒色粒子
4 隔壁
5、6 電極
7 セル
8 接着剤
11 マスク
11−1 開口部
11−2 マスク部
12 粒子移動部材
12−1 第1の平坦部
12−2 第2の平坦部
12−3 平坦面
12−4 R付き曲面
13 固定用治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の基板間に配置した粒子を表示媒体として情報を表示する情報表示用パネルの製造において、前記基板の情報表示画面領域を複数の領域に区切る隔壁上に、前記複数の領域に対応した開口部を有するマスクを配置するマスク配置ステップと、前記マスク上に、前記粒子を載せる粒子載置ステップと、前記マスク上に載置された前記粒子を、板状の粒子移動部材で移動させながら、前記マスクの開口部を介して、前記複数の領域に充填する粒子充填ステップと、を有する粒子の充填配置方法であって、
前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の幅方向断面形状が、前記マスク面との接触部位の中心を通る軸に対して線対称の形状であるとともに、前記マスク面との接触部位に向かってその幅が徐々に小さくなる形状である粒子移動部材を、前記マスク面に対して垂直方向に配置して、前記マスク面との接触部位を前記マスク面に接触させて移動させる、粒子の充填配置方法。
【請求項2】
前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記粒子移動部材の固定端となる部位から、前記マスク面との接触部位までの距離L2と、前記粒子移動部材の固定端となる部位における幅L1とが、L1≧L2である、請求項1に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項3】
前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位の両側にそれぞれ対称に配置される第1の平坦面に対応する辺部がいずれも、前記マスク面と45°〜85°の範囲の角度を形成するようにしてある、請求項1または2に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項4】
前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位の両側にそれぞれ対称に配置される複数の平坦面に対応する辺部を有する場合、前記マスク面との接触部位から最も離れた部位である第1の平坦面に対応する辺部が、前記マスク面と45°〜85°の範囲の角度を形成するようにしてあるとともに、前記マスク面との接触部位に隣接する両側の部位である第2の平坦面に対応する辺部が、前記マスク面と10°〜45°の範囲の角度を形成するようにしてある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項5】
前記粒子移動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位が直線部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項6】
前記粒子動部材の、前記マスク上に載置された粒子に触れる部分の前記幅方向断面形状において、前記マスク面との接触部位が曲線部である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項7】
前記粒子移動部材の弾性が、JIS−A硬度で70°〜90°の範囲である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子の充填配置方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子の充填配置方法であって、
1枚目の基板に対して粒子の充填配置方法を実行した後、2枚目の基板に対して粒子の充填配置方法を実行するに際して、前記マスクの下にあった前記1枚目の基板を前記マスク下から移動した後、前記2枚目の基板をマスク下に配置し、前記マスク上の一端に移動している粒子移動部材の位置を、前記マスク上の他端に移動しないで、前記2枚目の基板に対する粒子の充填配置を実行する、粒子の充填配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−37568(P2012−37568A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174589(P2010−174589)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】