説明

粒子移動型表示装置、および帯電粒子

【課題】分散液体と帯電粒子の被覆層と表示面の被覆層とを最適に組み合わせ、実用的で表示メモリ性に優れた粒子移動型表示装置を提供する。
【解決手段】隔壁15によって対向間隙を設定された観察側基板13aと背面側基板13bとの間隔に、帯電粒子11を分散させた分散液体12が充填されている。帯電粒子11は、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとが共重合した被覆層を種粒子の表面に形成してある。表示面16a、16bは、シリコン変成アクリル樹脂の被覆層で被覆されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液体中を帯電粒子が移動して表示面の被覆状態を変化させる粒子移動型表示装置、詳しくは帯電粒子と表示面とを覆う被覆層の分子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の発達に伴い、低消費電力且つ薄型の表示装置のニーズが増しており、中でもバックライトの不必要な省電力性、広視野角の視認性等の観点から電気泳動表示装置が期待されている。
【0003】
特許文献1には、反射型の電気泳動表示装置が提案されている。ここでは、観察側基板と背面側基板との間の隔壁で仕切られた画素空間に、黒色の帯電粒子を分散した白色の分散液体を充填している。厚み方向に電界を形成して分散液体中で帯電粒子を浮上/着底させることにより、帯電粒子の黒色と分散液体の白色とを用いた二階調の表示を行う。
【0004】
特許文献2には、透明な分散液体中で帯電粒子を平面方向に移動させる電気泳動表示装置が示される。ここでは、隔壁で仕切られた画素空間の底面に表示面が設定され、表示面の帯電粒子による被覆状態を変化させて中間階調を表示する。
【0005】
特許文献3には、走査型プローブ顕微鏡を用いて、分散液体中における帯電粒子と分散液体界面との相互作用を直接評価する方法が示される。
【0006】
【特許文献1】米国特許第3612758号明細書
【特許文献2】特開平9−185087号公報
【特許文献3】特開2004−325487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気泳動表示装置は、分散液体中に形成された電界に応答して帯電粒子が分散液体中を移動して、分散液体の界面である表示面や隔壁面を被覆することにより、必要な画素表示を形成する。そして、電界の印加が解除されても、帯電粒子は、そのまま表示面や隔壁面から移動せず画素表示を保持する。これにより、液晶表示装置に用いるような保持電圧が無くとも画像表示を長期間保持できる表示メモリ性を実現している。
【0008】
従って、帯電粒子には適度な凝集性と分散性とのバランスが要求される。凝集性が過剰だと、帯電粒子が二次元三次元の凝集塊を形成して表示面を均一に被覆できないし、分散性が過剰だと、帯電粒子による表示面の被覆状態を長期間保持できないからである。
【0009】
また、帯電粒子と表示面との間には適度な引力性が要求される。引力性が過剰であれば、表示状態の保持性が強固に過ぎて、表示状態の変更に過大な電圧印加が必要となるし、引力性が過小だと、表示面の被覆状態を長期間保持できないからである。
【0010】
ところで、帯電粒子は、着色状態、比重、成形性等の観点から材料が限られてくる。帯電粒子の種粒子として市販の量産品を採用することがコスト的に有利な場合もある。従って、それほど適正とは言えない材料の帯電粒子に必要な帯電性能を確保させたり、分散液体中での安定性を高めたり、適度な表示メモリ性を備えさせたりするために、被覆層で表面を覆うことが提案された。
【0011】
しかし、それぞれ無数の選択肢を有する分散液体、帯電粒子の被覆層、表示面の被覆層の組み合わせから、最適な組み合わせを見出すことは容易ではない。1つ1つの組み合わせについて実際に電気泳動表示装置のセルを試作して、評価することは、時間的、コスト的に現実的とは言えない。選択可能な設計要素、化学組成、混合比率が膨大だし、長期的な書き替え性能の評価も不可欠だからである。
【0012】
本発明は、分散液体と帯電粒子の被覆層と表示面の被覆層とを最適に組み合わせ、実用的で表示メモリ性に優れた粒子移動型表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の粒子移動型表示装置は、帯電状態で分散液体に分散された帯電粒子と、前記分散液体に電界を形成して前記帯電粒子を移動させる電極手段とを備えたものである。前記分散液体中での前記帯電粒子同士の接触過程と離間過程とにおける相互作用がヒステリシス性を示す被覆層を前記帯電粒子に形成してある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粒子移動型表示装置では、帯電粒子同士が一定の距離以内に接近するまでは相互に反発して離反する方向の相互作用を生じる。しかし、一度、一定の距離以内に接近すると引力性を生じて帯電粒子の集合状態が保持され、分離するためにいくらかの力が必要である。このため、帯電粒子が表示面を被覆した状態では、被覆し、積層した集合形態で帯電粒子の相互の位置関係が保持される。しかし、電界を作用させて帯電粒子を分離させると、相互の反発力によって分散液体中に分散して凝集状態にはならない。
【0015】
従って、電界に応じた緻密な表示面の被覆状態と、分散液体中での分散状態による速やかな移動と、電界解除後の表示面における表示メモリ性とが実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の粒子移動型表示装置の一実施形態である電気泳動表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。本発明の粒子移動型表示装置は、以下に説明する実施形態の限定的な構成には限定されない。分散液体に電界を印加して帯電粒子を移動させる限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実現可能である。
【0017】
ここでは、1画素2階調の表示を行う実施形態を説明するが、表示面の帯電粒子による被覆状態を他段階に設定して多階調(グレースケール)表示を行ってもよい。RGBカラーフィルタ層を配置した3個の副画素で1画素を構成して、副画素の階調バランスにより画素のフルカラー表示を行ってもよい。背面側に反射面を配置して反射型としてもよく、背面側にバックライトを配置して透過型としてもよい。
【0018】
なお、特許文献1〜3に示される電気泳動表示装置の一般的な構造、材料、制御、駆動回路等については一部図示を省略し、詳細な説明も省略する。
【0019】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。
【0020】
図1の(a)に示すように、第1実施形態の電気泳動表示装置100は、透明な分散液体12中を帯電粒子11が水平に移動する。隔壁15によって対向間隙を設定された観察側基板13aと背面側基板13bとの間隔に、帯電粒子11を分散させた分散液体12が充填されている。帯電粒子11の移動空間は、隔壁15によって格子状に仕切られて1つの画素空間を形成している。帯電粒子11の移動空間の底に配置された絶縁層16の界面に表示面16a、16bが設定されている。表示面16aの絶縁層16下に第2電極14bが配置され、表示面16bの絶縁層16下に第1電極14aが配置されている。
【0021】
帯電粒子11は、分散液体12中で正極性に帯電しており、第1電極14aと第2電極14bとの間に形成される水平方向の電界に駆動されて電気泳動する。図1の(a)に示すように、第2電極14bを正電位にすると、帯電粒子11が表示面16aから追い払われて、表示面16aが露出する。しかし、図1の(b)に示すように、第1電極14aを正電位にすると、帯電粒子11が表示面16bから追い払われて、表示面16bが露出する。
【0022】
絶縁層16はほぼ透明で、帯電粒子11、第1電極14a、第2電極14bはそれぞれ着色されている。このように構成された画素が格子状に多数配置され、画素ごとに電界を設定できるため、電気泳動表示装置100は、全体として画像を表示できる。電気泳動表示装置100は、反射型・広視野角で高コントラストな表示を実現できる。
【0023】
帯電粒子11は、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとが共重合した被覆層を種粒子の表面に形成してある。表示面16a、16bは、シリコン変成アクリル樹脂の被覆層で被覆されている。
【0024】
<第2実施形態>
図2は第2実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。第2実施形態の電気泳動表示装置200は、着色された分散液体12中を帯電粒子11が垂直に移動する。電気泳動表示装置200は、隔壁15を挟んで対向する観察側基板113aと背面側基板113bとの間隔に、帯電粒子11を分散させた分散液体12が充填されている。帯電粒子11の移動空間は、隔壁15によって格子状に仕切られて1つの画素を形成している。
【0025】
帯電粒子11の移動空間の底に表示面116bが配置され、表示面116bに帯電粒子11を集める第2電極114bが背面側基板113bに配置される。帯電粒子11の移動空間の天井に表示面116aが配置され、表示面116aに帯電粒子11を集める第1電極114aが観察側基板113aに配置される。
【0026】
帯電粒子11は、分散液体12中で正極性に帯電しており、第1電極114aと第2電極114bとの間に形成される垂直方向の電界に駆動されて電気泳動する。図2の(a)に示すように、第1電極114aを正電位にすると、帯電粒子11が表示面116aから追い払われて、上方から観察基板113a越しに分散液体12が観察される。しかし、図2の(b)に示すように、第2電極114bを正電位にすると、帯電粒子11が表示面116bから追い払われて、上方から観察基板113a越しに帯電粒子11が観察される。
【0027】
分散液体12は不透明で帯電粒子11とは異なる色に着色されている。このように構成された画素が格子状に多数配置され、画素ごとに電界を設定できるため、電気泳動表示装置200は、全体として画像を表示できる。電気泳動表示装置200は、反射型・広視野角で高コントラストな表示を実現できる。
【0028】
帯電粒子11は、第1実施形態と同様に、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとが共重合した被覆層を種粒子の表面に形成してある。表示面116a、116bは、第1実施形態と同様に、シリコン変成アクリル樹脂の被覆層で被覆されている。
【0029】
<帯電粒子>
図1の(a)に示すように、駆動電圧の印加中、帯電粒子11が単分散状態となって、もしくは複数の帯電粒子11が集合した状態で第1電極14a−第2電極14b間を移動する。また、駆動電圧を除去すると、帯電粒子11は単分散状態のまま、もしくは複数の帯電粒子11が集合した状態になる。その際、帯電粒子11は、画素内のいずれかの空間位置もしくは画素内の任意の内側表面に少なくとも一時的にその位置が固定され、その結果として画素表示状態が保存される。このような表示状態を保存する機能を表示メモリ性と呼ぶ。
【0030】
帯電粒子11は、その構成化学種が異なる種粒子、もしくは種粒子の表面になされている被覆の材料や被覆様式が異なる粒子を種々用いる。帯電粒子11は、その種類によってはメモリ性が消失する、もしくは逆に増大しすぎるなど、異なるメモリ性を示す場合がある。メモリ性が増大しすぎる場合、いったん画素内の内側表面にその位置が固定されると、高電圧を再度印加しても固定位置から一切移動せず固着したままになってしまう。
【0031】
また、画素内に塗布される薄膜材料によっても同様にメモリ性が異なる場合がある。従って、もし適当な測定条件下で相互作用力の直接測定が可能になった場合、種々の材料条件で当該測定を行うことで、メモリ性が適切に発現されるための材料条件が導き出されることが期待される。
【0032】
以上の点から、表示そのものを担う帯電粒子11間、もしくは帯電粒子11と画素内部の任意の内側表面との間に、何らかの相互作用力が介在する事が推察される。この相互作用力を直接に測定できれば、帯電粒子11間、もしくは帯電粒子11と画素内部の任意の内側表面との間にどのような力がどのように作用するかを正確に評価できる。これにより、相互作用の機構を明らかして、電気泳動表示装置100の基本性能を確定できる。
【0033】
本願発明者は、上記の課題に対して鋭意検討を重ねた結果、走査型プローブ顕微鏡を用いて、電気泳動表示装置100のメモリ性を評価する方法を得た。走査型プローブ顕微鏡の片持ち梁の先端に帯電粒子11を固定し、他の帯電粒子11を固定した平面基板を用いて、分散液体12中における帯電粒子11同士の相互作用を直接に測定した。また、片持ち梁の先端に帯電粒子11を固定し、電気泳動表示装置100の画素内部の表面層を固定した平面基板を用いて、分散液体12中における帯電粒子11と表面層と相互作用を直接に測定した。
【0034】
いずれも電気泳動表示装置100で用いられる分散液体12中に浸漬し、ナノメートルスケールで空間的に両者を接近・分離させた。その際に片持ち梁に発生する力学的変形を光学的に検出することで、帯電粒子11間、あるいは帯電粒子11と表面層との間に作用する力を評価できることを確認した。
【0035】
以下に説明する相互作用の測定では、走査型プローブ顕微鏡で用いる片持ち梁の先端に帯電粒子11を固定した検出子と、薄膜であるところの被測定子とを用いる。薄膜は、さらに別個に用意した帯電粒子11もしくは別個に用意した前記画素内部表面層として使用する材料からなる。そして、検出子と被測定子とを空間的に接近させる際に生じる両者の相互作用を測定する工程と、両者が空隙なく密着した後に検出子を被測定子より引き離した際に生じる両者の相互作用を測定する工程とを有する。
【0036】
また、以下に説明する相互作用の測定においては、以下に挙げるうちの少なくとも1項目以上を評価項目とする。
(1)検出子が被測定子に接近する際におよび離脱する際に両者間に斥力もしくは引力のいずれが発生するかを評価する。
(2)相互作用が両者間の距離が近距離もしくは長距離のいずれで発生するかを評価する。
(3)相互作用が一定回数の連続測定において出現する頻度を評価する。
【0037】
<実験概要>
図3は構成単位R、Rの組み合わせ例の一覧表、図4は構成単位R、Rの別の組み合わせ例の一覧表、図5は構成単位R、Rの組み合わせ例の一覧表である。図6は原子間力顕微鏡を用いたフォースカーブ測定装置の構成の説明図、図7は帯電粒子を接着した粒子付きプローブ先端の斜視図、図8は帯電粒子を接着した粒子固定化基板の平面図である。図9はフォースカーブの説明図である。
【0038】
本実験では、電気泳動表示装置100の表示を担う帯電粒子11と同様に形成した帯電粒子31(図7)を用いた。帯電粒子31同士、および帯電粒子31と画素空間の内側表面との間に作用する力を、電気泳動表示装置100の画素における駆動環境と同様の条件下で、直接かつ正確に測定した。これにより、図1に示す帯電粒子11の被覆層の材料と、表示面16a、16bの被覆層の材料とを選択した。
【0039】
帯電粒子31(図7)は、好適には球状であり、その直径は10ミクロンから0.1ミクロン程度のものを用いる。帯電粒子31の材質は特に制限をしないが、例えばシリカのような無機材料、ポリスチレンのような有機材料、及びそれらを複数含有する複合体でもよい。また、帯電粒子31の種粒子として市販の粒子を用いることができる。例えば、積水化学工業(株)製のミクロパール(登録商標)、ナトコ(株)製のナトコスペーサー粒子(登録商標)、日本触媒化学工業(株)製のエポカラー粒子(登録商標)がある。総研化学(株)製のケミスノー(登録商標)、GE東芝シリコン(株)製のトスパール(登録商標)、積水化成品工業製のテクポリマー(登録商標)等もある。しかし、これらに特に限定されるものではない。
【0040】
帯電粒子31は、種粒子の表面が化学式(1)で表される構成単位からなる重合体で被覆されている、もしくは化学式(1)および化学式(2)で表される構成単位からなる共重合体を構成単位とする重合体で被覆されている。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
化学式(1)で表される構成単位からなる重合体は、特に限定はされない。しかし、具体的には、構成単位R、Rは、例えば図3に示す表1のような化学組成の組み合わせから選択できる。図4に示す表2のような化学組成の組み合わせでもよい。化学式(1)で表される構成単位は、化学式(1)で表される2種類以上の構成単位を混合してもよい。化学式(1)で表される構成単位からなる重合体の重量平均分子量は1000〜2000000が好ましく、さらに好適には2000〜500000である。
【0044】
化学式(1)および化学式(2)で表される構成単位からなる共重合体を構成単位とする重合体の場合も、化学式(1)における構成単位R、Rの組み合わせは、上記の表1、表2から選択できる。そして、化学式(2)で表される構成単位R、Rの組み合わせは、例えば図5に示す表3のような化学組成の組み合わせから選択できる。
【0045】
そして、化学式(1)で表される構成単位と化学式(2)で表される構成単位との含有割合は、99重量%:1重量%〜10重量%:90重量%とすることができる。好ましくは97重量%:3重量%〜30重量%:70重量%である。ここで言う含有割合とは、化学式(1)で表される構成単位のモノマーの重量と化学式(2)で表される構成単位のモノマーの重量との混合比率(各構成単位のモノマーの重量%)である。また、共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体が挙げられ、その重量平均分子量は1000〜2000000が好ましく、さらに好適には2000〜500000である。
【0046】
このような重合体または共重合体を用いた帯電粒子31の表面被覆方法は、被覆する前の種粒子の種類に応じて公知の被覆方法を選択できる。具体例として示すと、任意の粒子を種粒子として、重合体あるいは共重合体のモノマーをシード重合させる方法がある。種粒子の表面に重合体あるいは共重合体をグラフト重合させる方法、カップリング剤によるカップリング基を介して種粒子の表面を重合体あるいは共重合体で被覆する方法もある。あるいは、重合体を溶媒に溶解させた溶液で種粒子の表面を被覆し溶媒を除去する方法もある。
【0047】
各実験1〜6で用いる帯電粒子31には、上記のごとく、その表面を覆って上述の重合体または共重合体による被覆層が形成される。被覆層の厚みは1nm以上200nm以下が好ましく、さらに好適には3nm以上、50nm以下である。被覆層の厚みが1nm未満の場合、帯電粒子31の表面の一部が未被覆となって、帯電粒子31の帯電特性や表面物性に影響が及ぶ可能性があるので好ましくない。
【0048】
被覆層の厚みが200nmを超える場合、選択する重合体の構造によっては、帯電粒子31の極性が極端に変化して、分散液体中で凝集が生じる。あるいは、下記のごとく帯電粒子31が顔料や染料を含有する場合は、その色度が低下・変化するなどの可能性がある。これらにより好ましくない。
【0049】
本実験で用いる帯電粒子31の種粒子には、無機もしくは有機の顔料および染料から選ばれた少なくとも1種を含有させて必要な着色を行っている。
【0050】
<被覆層の評価方法>
本実験における被覆層の評価方法は、特許文献3に記載の手法に準拠している。図6では、本実験で使用するところの、除震台56に積載した走査型プローブ顕微鏡の一種である原子間力顕微鏡300およびその測定の様子を示す。
【0051】
図6に示すように、電気泳動表示装置100(図1)の画素空間で使用される分散液体12と同様に調製された分散液体58を、分散液体58に対して化学的に安定な測定用容器57に入れる。分散液体58中には、検出子としての粒子付きプローブ54と、被測定子としての粒子固定化基板53とを浸漬する。
【0052】
粒子付きプローブ54は、図7に示すように、帯電粒子31がその先端に接着固定された片持ち梁である。粒子付きプローブ54は、走査型プローブ顕微鏡で用いる片持ち梁の先端部32に帯電粒子31を接着固定して作製する。
【0053】
粒子固定化基板53は、図8に示すように、接着性材料部分(エポキシ接着剤)42を介在させて帯電粒子31が固定化された平面基板41である。被測定子として帯電粒子31を用いる場合、帯電粒子31を平面基板41に接着性材料部分42を介在して固定化して被測定子とする。固化した接着性材料部分42の頭頂部には帯電粒子31が固定化される。そののち、平面基板41を図6に示す測定用容器57に固定する。
【0054】
接着性材料部分42に使用する接着性材料は、測定で用いられる分散液体58に対して溶解・膨潤・不純物溶出等が認められない材料を用いている。また、帯電粒子31を固定化した接着性材料部分42の占有面積は、平面基板41の全面積の50%以下、更に好適には10%以下である。これにより、実際の電気泳動表示装置100(図1)内の画素区画に近似した測定環境を保証する。
【0055】
帯電粒子31を固定化するのに使用される平面基板41は、特にその材質を問わない。しかし、ガラスや石英などの所謂ソリッドな基板のほか、PET、PPS、PI、PEN、PES、PEI、PAR、PEEK等のフィルム状基板、ステンレス、アルミニウムなどの金属板を用いることも可能である。更に、前記基板・フィルムを2種以上積層して形成した複合基板であってもよい。また、平面基板41の最表部には、必要に応じてSiO、アルミ、ITOなどを蒸着する工程、または有機材料からなり、かつ実際に使用される分散液体58に対して溶解・膨潤・不純物溶出等が認められない薄膜材料を塗布する工程等が入ってもよい。
【0056】
図6に示すように、測定用容器57の底面に粒子固定化基板53を固定して、粒子付きプローブ54を粒子固定化基板53に向かって接近させる。具体的には、粒子付きプローブ54を原子間力顕微鏡300のピエゾ装置55に装着し、粒子付きプローブ53を粒子固定化基板53上で走査する。粒子固定化基板53に固定化された帯電粒子31と粒子付きプローブ54の帯電粒子31とがXY平面において同一位置となるところで当該粒子付プローブ54の走査を停止させる。
【0057】
そして、Zピエゾ50を操作して、粒子固定化基板53へ粒子付きプローブ54を“接近させる”−“接触させる”−“離脱させる”各過程を実行する。これらの各過程における粒子付きプローブ54の片持ち梁変位をレーザ光51の反射変位として、4分割センサ52を通して記録する。これにより、図9に示すようなフォースカーブが測定される。
【0058】
図9は、フォースカーブの典型的な一例である。図9の横軸は、粒子付きプローブ54が装着されたZピエゾ50のZ方向への移動量、縦軸は、粒子付きプローブ54の片持ち梁変位量である。縦軸は、本実験で用いた粒子付きプローブ54の片持ち梁ばね定数を用いて換算することで、「力」へ記述し直すことができる。例えば、粒子付きプローブ54が粒子固定化基板53に接近(61)し、接触し(62)、再度両者が引き離される(63)。このとき、何らかの付着機構が働いて、フォースカーブの“離脱”時もしくは“離脱”後に、粒子付きプローブ54が負の方向に片持ち梁が撓む変化(64)が現れる場合がある。このとき、“離脱”時に係る力や影響のおよぶ距離を算出することが可能となる。
【0059】
一方、図8に示す帯電粒子31に代えて被測定子として薄膜を用いる場合、その材料は電気泳動表示装置100(図1)の画素空間の表面被覆に用いる有機もしくは無機の薄膜材料から選択される。薄膜材料の例としては、有機系薄膜材料としてはアクリル系、メタクリル系、ビニル系、ウレタン系、アミン系、イミド系、エーテル系、エポキシ系等の単一ポリマーを用いることができる。これらの共重合もしくは混合ポリマー、またはそれらの前駆体も用いることができる。また、無機系薄膜材料としては、金属、金属酸化物、炭素系、窒化物、シリコン系、シリコン酸化物系等を用いることができる。なお、薄膜材料を塗布後に加熱、紫外線等の光照射等の工程が入ってもよい。このようにして選択された薄膜材料を平面基板41に塗布し、その後、平面基板41を測定用容器57に固定する。
【0060】
被測定子として薄膜を用いる場合も、検出子として粒子付きプローブ54を用いる。そして、図6に示すように、被測定子であるところの薄膜基板(53)を測定用容器57の中で分散液体58に浸漬する。薄膜基板(53)は、電気泳動表示装置100の画素空間の表面被覆に用いる有機もしくは無機の薄膜を平面基板41に形成して準備される。測定用容器57の底面に固定された薄膜基板(53)に向かって、粒子付きプローブ54を接近させる。
【0061】
具体的には、粒子付きプローブ54を原子間力顕微鏡300のピエゾ装置55に装着し、粒子付きプローブ53を薄膜基板(53)上で走査する。薄膜基板(53)に固定化された薄膜のある個所で走査を停止し、薄膜基板(53)へ粒子付きプローブ54を“接近させる”−“接触させる”−“離脱させる”各過程を実行する。この各過程における粒子付きプローブ54の片持ち梁変位を記録して、フォースカーブを測定する。
【0062】
なお、被測定子として帯電粒子31を用いる場合も、被測定子として薄膜を用いる場合も、測定用容器57に測定時の温度を制御する治具を設置することで、一定の温度環境下での測定が可能となる。
【0063】
以下、個別の実験例を更に詳細に説明するが、以下の記載内容を持って本発明におけるいずれの実施態様も制限されない。また、以下の実験例において使用する分散液体58は、特に記載がない限りは、主成分が脂肪族炭化水素溶媒であるエクソン社製のアイソパーH(商標)である。アイソパーH(商標)100重量部に、ハリマ化成(株)製のネオトール125H(商標)2.5重量部、旭化成(株)製のアサプレン1205(商標)0.8重量部を24時間混合攪拌した。その後、0.2μmのPTFE製メンブランフィルターを使って加圧濾過した。ネオトール125H(商標)は、ロジンエステルとして、アサプレン1205(商標)は、スチレンブタジエン共重合体として混合した。
【0064】
<実験1>
図10は実験1におけるフォースカーブの測定結果である。実験1においては、検出子を帯電粒子、被測定子を帯電粒子として、帯電粒子間の相互作用を測定する。
【0065】
実験1で用いる帯電粒子31を帯電粒子Aと称する。帯電粒子Aの種粒子は、ポリメチルメタクリレート85重量部およびカーボンブラック(平均粒系0.02μm)15重量部からなる平均粒系2.7μmの着色重合体粒子である。この種粒子の表面に、グラフト重合法により厚み20nmの被覆層を形成した。
【0066】
化学式(1)における構成単位R、Rの組み合わせ(R、R)を(−CH、−CH−CF)とした。このような構成単位の重合体(重量平均分子量=100000)を、モノマーとしてトリフルオロエチルメタクリレートを用いてグラフト重合させた。
【0067】
このように被覆層を形成した帯電粒子Aを用いて、実験1における帯電粒子Aの有する相互作用の検出子を以下の工程で作製する。当該検出子は、被覆層を形成した帯電粒子Aを原子間力顕微鏡300の粒子付きプローブ54(図6)の先端に接着したものである。接着に使用するエポキシ接着剤は常温で固化し、かつ固化後は分散液体58に対して物理的・化学的に安定なものを選択する必要がある。実験1では、電子顕微鏡試料作製用の2液混合型エポキシ接着剤であるGatan社製のG−1Epoxy(登録商標)を使用した。
【0068】
まず、エポキシ接着剤の2液を混ぜ、細い針金先端をペンチで破断した細線先端に微量のエポキシ液滴を付着させる。このとき、エポキシ液滴は、表面張力で球体となる。一方、使用する粒子付きプローブ54は、帯電粒子A間に働く力の大きさにより変えなければならない。実験1では、コンタクトモード原子間力顕微鏡用カンチレバーとして、Digital Instruments社製のチップ無しSiセンサのばね定数0.06N/mのものを使用した。このセンサを以下片持ち梁と称する。
【0069】
光学顕微鏡下で片持ち梁の先端と細線先端のエポキシ液滴とを接触させて極微量のエポキシを片持ち梁先端に転写する。転写するエポキシの量は、固定化させたい帯電粒子Aの半径程度の大きさになるよう調整する。次に、片持ち梁を原子間力顕微鏡300の粒子付きプローブ54を取り付けるホルダーに装着し、予めガラス基板上にばらまいた帯電粒子Aの上に接触させる。これにより、帯電粒子Aがエポキシ液滴を介して片持ち梁の先端に付着する。そのまま室温デシケータ中で1週間静置してエポキシが常温固化するのを待って、帯電粒子Aが先端に接着固定された片持ち梁(粒子付きプローブ54)が作製される。このようにして実験1における検出子が作製される。
【0070】
次に、実験1における被測定子である粒子固定化基板53の作製方法を述べる。洗浄済みの1インチ×1.5インチガラス基板の全面に、透明有機薄膜#1を厚さ0.1μmに塗布してキュアを行う。透明有機薄膜#1は、ポリジメチルシロキサン共重合体がアクリル樹脂に含有される合成樹脂組成物であって、電気泳動表示装置100の画素内部の表面に均一塗布されるものと同一材料である。
【0071】
引き続き、図8に示すように、粒子付きプローブ54作製に用いた2液混合型エポキシ接着剤を、断面積1mmの金属円柱を用いて点状に平面基板41に塗布する。その際、平面基板41全体の面積のうちエポキシ接着剤部分が占める割合が10%以下になるように調整する。その後、粒子付きプローブ54作製で用いたものと同様の帯電粒子Aを、平面基板41上に乾式撒布し、平面基板41ごと50℃にて30分加熱して当該エポキシ接着剤を加熱固化させたあと、そのまま室温デシケータ中で1日程度静置させる。次に、分散液体58にて平面基板41を洗浄して、平面基板41上で未固定の帯電粒子Aを除去する。
【0072】
次に、図6に示すように、粒子固定化基板53を測定用容器57の底面に螺子で固定し、また、粒子付きプローブ54を原子間力顕微鏡300のヘッド部に装着する。次に原子間力顕微鏡300のZピエゾ50を駆動し、粒子付きプローブ54を粒子固定化基板53へ近づける。そして、ピエゾ装置55により粒子付きプローブ54を走査し、粒子固定化基板53に固定化された帯電粒子A上に粒子付きプローブ54に固定化された帯電粒子Aが位置した位置で走査を止める。その位置でのZピエゾ50の正確なZ位置およびXY面内座標をチェックする。
【0073】
次に、測定用容器57に分散液体58を入れて、粒子付きプローブ54を粒子固定化基板53上の固定化された帯電粒子Aに向かって下降させる。粒子付きプローブ54のz方向を変位させ、フォースカーブ、すなわち“接近”−“接触”−“離脱”の過程における粒子付きプローブ54の変位を記録する。
【0074】
フォースカーブの測定結果を図10に示す。図10に示すように、粒子付きプローブ54が粒子固定化基板53の帯電粒子Aに接近する際、粒子付きプローブ54に撓みが発生していない。このことは、帯電粒子A同士が接近過程で反発性を示さないことを意味する。
【0075】
さらに、両者がいったん接触したのち、離脱過程に入ると、両者の距離がほぼ10nm程度以内の間で下方にスパイク71が生じている。これは、粒子付きプローブ54と粒子固定化基板53との間に貼りつき力が発生し、さらに、粒子付きプローブ54を引き離すと両者が離脱するという状況を意味する。この距離10nm程度以内での貼りつきは、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が90%超である。また、さらに両者の距離が離れる際、距離が約50nm程度で新たなスパイク72が発生する。これは距離10nm程度での貼りつきとは異なるモードでの貼りつき力の発生を意味しており、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が70%である。
【0076】
実験1で用いた帯電粒子Aを用いて、透明有機薄膜#1を画素内部に均一塗布した電気泳動表示装置100においては、表示保持性が50%を示す。つまり、駆動電圧除去後、完全な表示メモリが出来ず、光学反射率が最大輝度の50%にまで低下してしまう。また、多数の帯電粒子A同士が相互に固着して電圧印加によっても単分散状態に移行しない。
【0077】
<実験2>
図11は実験2におけるフォースカーブの測定結果である。実験2においては、検出子を帯電粒子、被測定子を帯電粒子として、帯電粒子間の相互作用を測定する。
【0078】
実験2で用いる帯電粒子Bは、実験1と同じ種粒子を用いて、被覆層の材料を実験1とは異ならせた。化学式(1)の構成単位と化学式(2)の構成単位とを重量比で90:10とした共重合体を、モノマーとしてトリフロロエチルメタクリレートとラウリルメタクリレートを用いて種粒子の表面でグラフト重合させて被覆層を形成した。被覆層の厚みは20nmである。化学式(1)の(R、R)は実験1と同じ(−CH、−CH−CF)であるが、化学式(2)の(R、R)は(−CH、−C1225)としている。
【0079】
また、粒子付きプローブ54および粒子固定化基板53は、実験1に記載の方法に準拠して作製した。フォースカーブの測定も実験1に記載の方法に準拠して行った。フォースカーブの測定結果を図11に示す。図11に示すように、粒子付きプローブ54の帯電粒子Bを粒子固定化基板53の帯電粒子B上に位置させ、粒子付きプローブ54を固定化帯電粒子Bに徐々に接近させると、距離10nm程度以内で両者が反発しあっていく状況が示される。この接近時の斥力発生は、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が100%となる。
【0080】
次に、両者を完全に付着させ、更にここから粒子付きプローブ54を固定化帯電粒子Bから離脱させる過程で、同図で下方にスパイク81が生じている。これは、粒子付きプローブ54と粒子固定化基板53との間に貼りつき力が発生し、さらに粒子付きプローブ54を引き離すと、距離10nm程度以内で両者が離脱するという状況を意味している。この離脱時貼りつきの発生は、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が100%となる。なお、実験1で見られた両者の距離が約50nm程度で発生する貼りつきは、実験2では、10%以下の低頻度で発生する。
【0081】
実験2で用いた帯電粒子Bを用いて、透明有機薄膜#1を画素内部に均一塗布した電気泳動表示装置100においては、表示保持性が90%超を示す。つまり、駆動電圧除去後、ほぼ完全な表示メモリが達成されて光学反射率が最大輝度の90%超となる。また、多数の帯電粒子B同士が電圧印加によって容易に単分散状態に移行して、速やかに移動する。
【0082】
従って、化学式(1)で構成単位が示されるフッ素樹脂の被覆層は、化学式(2)で構成単位が示される非フッ素系アルキル基アクリル酸モノマーと共重合させることが望ましい。共重合によって帯電粒子Bの分散性、電界応答性、表示メモリ性が高められるからである。
【0083】
<実験3>
図12は実験3におけるフォースカーブの測定結果である。実験3においては、検出子を帯電粒子、被測定子を薄膜として、両者間の相互作用を測定する。
【0084】
実験3で用いる帯電粒子Bは実験2と同じものである。粒子付きプローブ54および粒子固定化基板53は、実験1に記載の方法に準拠して作製した。また、実験3で被測定子として用いる薄膜は、実験1で用いた透明有機薄膜#1である。透明有機薄膜#1は、シリコン含有アルキル側鎖を添加したシリコン変成アクリル樹脂である。
【0085】
UVオゾン処理により洗浄したシリコンウエハ(面方位は問わない)の全面に透明有機薄膜#1を厚さ0.1μmになるよう塗布してキュアを行う。次に、シリコンウエハを切断して、実験1で用いた測定用容器57の底面に電子顕微鏡用エポキシ接着剤を用いて固定した。実験3におけるフォースカーブ測定は、被測定子が実験3で作製した薄膜である以外は、実験1に記載の方法に準拠して行った。
【0086】
フォースカーブの測定結果を図12に示す。図12に示すように、粒子付きプローブ54を透明有機薄膜#1上に位置させ、粒子付きプローブ54を透明有機薄膜#1に徐々に接近させると、実験2の帯電粒子B同士の場合と同様に、距離10nm程度で両者が反発しあっていく状況が示される。この接近時の斥力発生は、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が100%となる。
【0087】
次に両者を完全に付着させ、更にここから粒子付きプローブ54を透明有機薄膜#1から離脱させる過程で、同図で両者間の距離が約10nm離れる間に下方にスパイク91が生じている。これは粒子付きプローブ54と透明有機薄膜#1の間に貼りつき力が発生し、さらに粒子付きプローブ54を引き離すと、距離10nm程度以内で両者が離脱するという状況を意味する。この離脱時貼りつきの発生は、同一実験での繰り返し測定において発生頻度が20%となる。なお、実験1で見られた両者の距離が約50nm程度で発生する貼りつき92は、実験3では20%程度の頻度で出現した。
【0088】
実験3に用いた帯電粒子Bを用いて、透明有機薄膜#1を画素内部に均一塗布した電気泳動表示装置100においては、表示保持性が90%超を示す。つまり、駆動電圧除去後、ほぼ完全な表示メモリが達成され、光学反射率が最大輝度の90%超となる。
【0089】
なお、透明有機薄膜#1におけるシリコン含有量は、20%〜40%が望ましい。20%、30%、40%にて図12のフォースカーブが測定され、10%では図13のフォースカーブが測定されたからである。また、シリコン含有量が40%を越えると、成膜後の膜が一様な連続膜にならず、ちょうどシリコンで出来た「オイル」が基板にへばりついているような状態になるからである。さらにシリコン含有量を増すと、成膜した基板も白濁する傾向となり、溶剤によってはそこに溶け出す可能性もあるからである。
【0090】
<実験4>
図13は実験4におけるフォースカーブの測定結果である。実験4においては、検出子を帯電粒子、被測定子を薄膜として、両者間の相互作用を測定する。
【0091】
実験4で用いる帯電粒子Bは実験3と同じものであるが、薄膜が実験3とは異なる。粒子付きプローブ54は、実験1に準拠して作製した。
【0092】
実験4における被測定子としての薄膜は、実験3において用いた透明有機薄膜#1と同一の化学的な基本骨格構造を有するアクリル樹脂である。しかし、シリコン含有アルキル側鎖を添加していないので、アクリル樹脂の一部の分子群が異なる透明有機薄膜#2である。UVオゾン処理により洗浄したシリコンウエハ(面方位は問わない)の全面に透明有機薄膜#2を厚さ0.1μmになるよう塗布してキュアを行う。透明有機薄膜#2は、シロキサン共重合体を含むシリコン化合物を含有しないアクリル系合成樹脂組成物である。
【0093】
次に、実験3に記載の方法に準拠してフォースカーブ測定を行った。
【0094】
フォースカーブの測定結果を図13に示す。図13に示すように、粒子付きプローブ54が薄膜に接近する際、粒子付きプローブ54には、薄膜との距離が10nm程度に接近すると両者間に反発力が働く方向に撓みが発生する。さらに、両者がいったん接触したのちに離脱過程に入ると、両者の距離が略10nm程度の間で反発力が働く方向に撓み生じている。これは、粒子付きプローブ54と薄膜の間に貼りつき力が発生せずに、両者が離脱するという状況を意味する。なお、実験1で見られた両者の距離が約50nm程度で発生する貼りつきは実験4では発生しなかった。
【0095】
実験4に用いた帯電粒子Bを用いて、透明有機薄膜#2を画素内部に均一塗布した電気泳動表示装置100においては、表示保持性が30%程度を示す。つまり、駆動電圧除去後、完全な表示メモリが出来ず、光学反射率が最大輝度の30%程度にまで低下する。
【0096】
<実験5>
図14は実験5におけるフォースカーブの測定結果である。実験5においては、検出子を帯電粒子、被測定子を薄膜として、両者間の相互作用を測定する。
【0097】
実験5で用いる帯電粒子Bは実験3、実験4と同じものであるが、薄膜が実験3、実験4とは異なる。粒子付きプローブ54は、実験1に準拠して作製した。
【0098】
実験5における被測定子としての薄膜は、炭素系蒸着膜を用いる。UVオゾン処理により洗浄したシリコンウエハ(面方位は問わない)全面に炭素膜を厚さ5nmになるよう真空蒸着した。
【0099】
次に、実験3、実験4に記載の方法に準拠してフォースカーブ測定を行った。
【0100】
フォースカーブの測定結果を図14に示す。図14に示すように、粒子付きプローブ54が薄膜に接近する際、粒子付きプローブ54と薄膜との距離が12nm程度に接近すると粒子付きプローブ54が撓みはじめて両者間に引力1101が働くことを示す。さらに両者が接近すると、粒子付きプローブ54は急激に撓んで薄膜に吸着1102される。この両者接近時での引力は同一実験での繰り返し測定において発生頻度が70%超である。
【0101】
次に両者が離脱する過程に入ると、両者の距離が20nm程度の間で下方に大きなスパイク1103が生じている。これは、粒子付きプローブ54と薄膜との間に貼りつき力が発生し、さらに粒子付きプローブ54を引き離すと、両者の距離20nm程度で両者が離脱するという状況を意味する。この距離20nm程度での貼りつきは同一実験での繰り返し測定において発生頻度は100%である。
【0102】
実験5では実験1〜4には見られない接近時での引力発生が認められた。また、離脱時の貼りつき力も実験1〜4に比較してその発生頻度が大きく増大しているので、定性的には検出子と被測定子との間に強力な相互作用が作用していると推察できる。
【0103】
実験5に用いた帯電粒子Bを用いて、炭素系蒸着膜を画素内部に形成した電気泳動表示装置100においては、表示保持性がほぼ100%となるが、帯電粒子Bを電圧印加によって表示面から排除しようとしても、帯電粒子Bの一部が表示面に固着して移動しない。
【0104】
<実験6>
図15は実験6におけるフォースカーブの測定結果である。実験6においては、検出子を帯電粒子、被測定子を薄膜として、両者間の相互作用を測定する。
【0105】
実験6で用いる帯電粒子Bと薄膜とは実験5と同じであるが、分散液体58に出光興産(株)製のポリブタジエンを4.5重量部添加した。粒子付きプローブ54は、実験1に準拠して作製した。被測定子としての薄膜は、炭素系蒸着膜で、実験5に準拠して作製した。但し、用いる分散液体58は、実験1〜実験5で用いた分散液体58に出光興産(株)製のポリブタジエンを4.5重量部添加したものとした。次に、実験3〜5に記載の方法に準拠してフォースカーブ測定を行った。
【0106】
フォースカーブの測定結果を図15に示す。図15に示すように、粒子付きプローブ54が薄膜に接近する際、粒子付きプローブ54が薄膜との間に斥力、引力とも作用しない。さらに両者が接近したのちに離脱しても、両者の間に斥力、引力とも作用しない。この状態の発生頻度は100%超である。
【0107】
実験6で用いた帯電粒子Bを用いて、炭素系蒸着薄膜を画素内部に形成し、分散液体12に出光興産(株)製のポリブタジエンを4.5重量部添加した電気泳動表示装置100においては、表示保持性を全く示さない。
【0108】
<実験のまとめ>
図16は実験1〜実験6の結果の一覧表である。
【0109】
図16に示すように、電気泳動表示装置100の駆動に用いる帯電粒子31同士、もしくは帯電粒子31と画素空間の内壁に塗布する薄膜との間に発生する好ましい相互作用は以下である。(実験2、実験3)
(1)帯電粒子が測定対象に接近する際に両者間に斥力が発生する。
(2)帯電粒子が測定対象から離脱する際、その距離がほぼ10nmの範囲内の近距離で貼り付き力が発生する。
(3)離脱する際の近距離の貼り付き力は、一定回数の連続測定において高頻度に出現する。
(4)帯電粒子が測定対象から離脱する際、その距離がほぼ10nm以上の長距離において貼り付き力が全く発生しないか、一定回数の連続測定において低頻度で出現する。
【0110】
上記(1)〜(4)を満たす材料の組み合わせにおいて、選択的に、当該材料を用いて作製した電気泳動表示装置100が表示メモリ性を示す。
【0111】
また、帯電粒子31の被覆層は、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーのみの重合体よりも、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとの共重合体が望ましい(実験2)。
【0112】
また、画素空間の表面被覆層は、シリコン含有アルキル側鎖を添加したシリコン変成アクリル樹脂が望ましい(実験3)。
【0113】
なお、実験2におけるフッ化アルキル基アクリル酸モノマーの側鎖Rを異ならせた実験では、側鎖Rを「−CH−(CF10」とした場合に、実験2と同程度の高いメモリ性が確認された。しかし、側鎖Rを「−CF」、「−(CF−F」、「−(CF−F」とした場合には、実験2よりもメモリ性が少し低下した。
【0114】
また、実験2におけるフッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとの混合比を異ならせた実験では、両者の混合比を「90/10」とした場合に帯電粒子のζ電位が−55〜−76mVとなり、高いメモリ性が確認された。しかし、混合比を「80/20」とした場合のζ電位は−28mVとなり、メモリ性が少し低下した。混合比を「60/40」とした場合のζ電位は+18mVとなり、メモリ性が失われた。従って、被覆層としてのフッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとの混合比は、90/10〜70/30が望ましい。
【0115】
すなわち、原子間力顕微鏡300を用いた相互作用力の直接測定により、例えば電気泳動表示装置100における表示そのものを担う帯電粒子31同士の相互作用を予め測定可能となる。従って、実際の電気泳動表示装置100を作製する毎に、帯電粒子31を電気泳動表示装置100に封入して駆動試験をせずとも、電気泳動表示装置100基本性能を確定できる。ひいては装置開発工程全体のコスト低減・開発に要する時間の短縮に貢献する。
【0116】
本実施形態の相互作用の測定方法は、帯電粒子31を走査型プローブ顕微鏡で用いる片持ち梁の先端に固定した検出子と、さらに別個に用意した帯電粒子31もしくは別個に用意した薄膜であるところの被測定子とを用いる。帯電粒子31は、表面が化学式(1)で表される構成単位からなる重合体で被覆されている、もしくは化学式(1)および(2)で表される構成単位からなる共重合体を構成単位とする重合体で被覆されている。そして、検出子と被測定子を空間的に接近させる際に生じる、検出子の被測定子に対する作用過程を測定する工程と、引き続き両者が空隙なく密着した後に検出子を被測定子より引き離した際に生じる検出子の被測定子からの脱離過程を測定する工程とからなる。
【0117】
本実施形態の相互作用の測定方法は、以下に挙げるうちの少なくとも1項目以上を評価項目とする。
(1)前記検出子が前記被測定子に接近する際にもしくは離脱する際に両者間に斥力もしくは引力のいずれが発生するかを評価項目とする。
(2)当該作用が両者間の距離が近距離もしくは長距離のいずれで発生するかを評価項目とする。
(3)当該作用が一定回数の連続測定において出現する頻度を評価項目とする。
【0118】
ところで、一般的に帯電粒子は、そのコアおよび被覆層の化学構造の重畳で帯電性が決まる。そのときは、敢えて例えば平行平板電極間に粒子を閉じ込めて高電圧場に曝すなどの帯電処理をしなくとも、粒子全体で微量なチャージがその表面に現れる。実験1乃至6におけるフォースカーブは、この「自発的な」帯電がある状態で測定している。ただし、1粒子あたりの帯電量は微量であり、環境によって大きく左右される。帯電粒子の帯電量測定は、例えば接触電位差測定、ζ電位測定など各種の方法によって直接に確認することも可能である。
【0119】
ここで、上記の近距離貼り付き力の結果(作用距離10nm程度で生じる20〜100pNレベルの貼り付き力)を非水系のDLVO理論により説明する。帯電粒子は、その周囲に電気二重層を形成する。非水系において電気二重層を有する2粒子間に働く力Ftotal(電気二重層を持つ粒子間の全相互作用)は、反発的な相互作用FRと、粒子間に働く引力FAとの和で表される。そして、反発的な相互作用FR(ζ電位=100mV、粒子径=2.7μmと仮定)は、電気二重層の厚さ(Debye長)を計算して得られる。この力Ftotalを2粒子間の距離でプロットしてみると、2つの粒子間距離が10nm程度に接近するときに働く力Ftotalは、上述したpNオーダーの引力となっている。
【0120】
<発明との対応>
第1実施形態の電気泳動表示装置100は、帯電状態で分散液体12に分散された帯電粒子11と、分散液体12に電界を形成して帯電粒子11を移動させる第1電極14a、第2電極14bとを備える。分散液体12中での帯電粒子11同士の接触過程と離間過程とにおける相互作用がヒステリシス性を示す被覆層を帯電粒子11に形成した。
【0121】
電気泳動表示装置100では、帯電粒子11同士が接触するまでは相互に反発して離反する方向の相互作用を生じる。しかし、一度接触すると引力性を生じて帯電粒子11の集合状態が保持され、分離するためにいくらかの力が必要である。このため、帯電粒子11が表示面16aを被覆した状態では、被覆し、積層した集合状態で帯電粒子11の相互の位置関係が保持される。しかし、電界を作用させて帯電粒子11を分離させると、相互の反発力によって分散液体12中に分散して凝集状態にはならない。
【0122】
従って、電界に応じた帯電粒子11による緻密な表示面16aの被覆状態と、分散液体12中での分散状態による速やかな移動と、電界解除後の表示面16aにおける表示メモリ性とが実現される。
【0123】
電気泳動表示装置100は、分散液体12の界面に配置されて、移動した帯電粒子11によって被覆される表示面16aを備える。分散液体12中での帯電粒子11と表示面16aとの接触過程と離間過程とにおける相互作用がヒステリシス性を示す被覆層を表示面16aに形成した。
【0124】
電気泳動表示装置100は、観察側に配置された透明な観察側基板13aと、表示面16aを囲んで帯電粒子11の移動空間を仕切る隔壁15が形成された背面側基板13bとを備える。隔壁15の表面と表示面16aとが一体の被覆層によって覆われている。
【0125】
帯電粒子11同士、また帯電粒子11と表示面16aとの間の相互作用は、相互に接近する過程で反発性を示し、接触を離間させる過程で引力性を示し、離間した後に引力性を示さない。
【0126】
帯電粒子31は、電気泳動表示装置100に使用される。帯電粒子31は、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとが共重合した被覆層を種粒子の表面に有する。
【0127】
ここで、水素原子またはメチル基をRとし、水素原子またはフッ素原子をBとし、0〜30の整数であるx、yを用いて[−(CH )x −(CF )y −B]と表される側鎖をRとする。帯電粒子31の被覆層は、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーが化学式(1)で表される。
【0128】
【化5】

【0129】
また、水素原子またはメチル基をRとし、水素原子または炭素数1〜25のアルキル基をRとして、非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーが化学式(2)で表される。
【0130】
【化6】

【0131】
帯電粒子31は、側鎖における単位構造CHの水素原子をフッ素原子または単位構造CFで置換してもよい。
【0132】
帯電粒子31は、側鎖における単位構造CFのフッ素原子を単位構造CFで置換してもよい。
【0133】
帯電粒子31は、分散液体58中における帯電粒子31と帯電粒子31との接触過程と離間過程とで相互作用がヒステリシス性を示す。
【0134】
帯電粒子31は、被覆層の厚みが1nm以上200nm以下である。
【0135】
帯電粒子31の種粒子は、無機もしくは有機の顔料および染料から選ばれた少なくとも1種を含有して着色している。
【0136】
第1実施形態の電気泳動表示装置100は、帯電粒子31と、脂肪族炭化水素溶媒を主成分とする分散液体58と、分散液体58の界面に配置されて帯電粒子31に被覆される表示面16aとを備えてもよい。表示面16aは、シリコン変成アクリル樹脂の被覆層で被覆されている。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】第1実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。
【図2】第2実施形態の電気泳動表示装置の構成を説明する断面図である。
【図3】構成単位R、Rの組み合わせ例の一覧表である。
【図4】構成単位R、Rの別の組み合わせ例の一覧表である。
【図5】構成単位R、Rの組み合わせ例の一覧表である。
【図6】原子間力顕微鏡を用いたフォースカーブ測定装置の構成の説明図である。
【図7】帯電粒子を接着した粒子付きプローブ先端の斜視図である。
【図8】帯電粒子を接着した粒子固定化基板の平面図である。
【図9】フォースカーブの説明図である。
【図10】実験1におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図11】実験2におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図12】実験3におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図13】実験4におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図14】実験5におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図15】実験6におけるフォースカーブの測定結果の線図である。
【図16】実験1〜実験6の結果の一覧表である。
【符号の説明】
【0138】
11、31 帯電粒子
12、58 分散液体
13a 観察側基板
13b 背面側基板
14a、14b 電極手段(第1電極、第2電極)
15 隔壁
16 絶縁層
41 平面基板
42 接着性材料部分(エポキシ接着剤)
50 Zピエゾ
51 レーザ光
52 4分割CCDセンサ
53 粒子固定化基板
54 粒子付きプローブ
55 ピエゾ装置
57 測定用容器
100,200 電気泳動表示装置
300 原子間力顕微鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電状態で分散液体に分散された帯電粒子と、
前記分散液体に電界を形成して前記帯電粒子を移動させる電極手段と、を備えた粒子移動型表示装置において、
前記分散液体中での前記帯電粒子同士の接触過程と離間過程とにおける相互作用がヒステリシス性を示す被覆層を前記帯電粒子に形成したことを特徴とする粒子移動型表示装置。
【請求項2】
前記分散液体の界面に配置されて、移動した前記帯電粒子によって被覆される表示面を備え、
前記分散液体中での前記帯電粒子と前記表示面との接触過程と離間過程とにおける相互作用がヒステリシス性を示す被覆層を前記表示面に形成したことを特徴とする請求項1記載の粒子移動型表示装置。
【請求項3】
観察側に配置された透明な観察側基板と、
前記表示面を囲んで前記帯電粒子の移動空間を仕切る隔壁が形成された背面側基板と、を備え、
前記隔壁の表面と前記表示面とが一体の前記被覆層によって覆われていることを特徴とする請求項2記載の粒子移動型表示装置。
【請求項4】
前記相互作用は、接近する過程で反発性を示し、接触を離間させる過程で引力性を示し、離間した後に引力性を示さないことを特徴とする請求項1乃至3いずれか1項記載の粒子移動型表示装置。
【請求項5】
粒子移動型表示装置に用いる帯電粒子が、種粒子の表面に、フッ化アルキル基アクリル酸モノマーと非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーとが共重合した被覆層を有することを特徴とする帯電粒子。
【請求項6】
水素原子またはメチル基をRとし、
水素原子またはフッ素原子をBとし、0から30までの整数であるx、yを用いて[−(CH )x −(CF )y −B]と表される側鎖をRとして、
前記フッ化アルキル基アクリル酸モノマーが化学式(1)で表され、
【化1】

水素原子またはメチル基をRとし、
水素原子または炭素数1から25までのアルキル基をRとして、
前記非フッ化アルキル基アクリル酸モノマーが化学式(2)で表される被覆層を有することを特徴とする請求項5記載の帯電粒子。
【化2】

【請求項7】
前記側鎖における単位構造CHの水素原子がフッ素原子または単位構造CFで置換される被覆層を有することを特徴とする請求項6記載の帯電粒子。
【請求項8】
前記側鎖における単位構造CFのフッ素原子が単位構造CFで置換される被覆層を有することを特徴とする請求項6記載の帯電粒子。
【請求項9】
前記分散液体中における前記帯電粒子と前記帯電粒子との接触過程と離間過程とで相互作用がヒステリシス性を示すことを特徴とする請求項5乃至8いずれか1項記載の帯電粒子。
【請求項10】
前記相互作用は、接近する過程で反発性を示し、接触を離間させる過程で引力性を示し、離間した後に引力性を示さないことを特徴とする請求項9記載の帯電粒子。
【請求項11】
前記被覆層の厚みが1nm以上200nm以下であることを特徴とする請求項9または10記載の帯電粒子。
【請求項12】
前記種粒子は、無機もしくは有機の顔料および染料から選ばれた少なくとも1種を含有して着色していることを特徴とする請求項5乃至11いずれか1項記載の帯電粒子。
【請求項13】
請求項5乃至11いずれか1項記載の帯電粒子と、
脂肪族炭化水素溶媒を主成分とする前記分散液体と、
前記分散液体の界面に配置されて前記帯電粒子に被覆される表示面と、を備え、
前記表示面は、シリコン変成アクリル樹脂の被覆層で被覆されていることを特徴とする粒子移動型表示装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2007−304216(P2007−304216A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130840(P2006−130840)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)