説明

粒子線治療装置

【課題】多葉コリメータのコリメータリーフの照射野形成の基準位置が正確に検出され高精度で容易に照射野が形成できる粒子線治療装置を構成する。
【解決手段】照射野中心の両側部に対向配置された一対のコリメータリーフ群と複数のコリメータリーフを一葉毎に上記照射野中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段と複数の位置検出器を設け、コリメータリーフの離反方向の位置規制を行う停止部材と、コリメータリーフの不整列を検出する一対の不整列検出部材とを備え、照射野を形成するとき、コリメータリーフの後端部を停止部材に当接させた位置に移動し続いて、各コリメータリーフを照射野中心側の接近方向の不整列検出部材にコリメータリーフの突起が当接しない所定の位置に移動する移動動作を行い、移動途中においてコリメータリーフの不整列検出部材への当接の有無によって複数のコリメータリーフの不整列の有無を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粒子線加速器で加速された粒子線を人体の病変部に照射することにより、病変部を治療する粒子線治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子線治療装置は、病変部に対し治療効果を得るために適正な粒子線量が照射できるとともに、病変部以外の正常部には照射障害が発生しないように、許容粒子線量以下になるように集中照射することが必要である。
粒子線治療装置は、粒子線が被照射体のみに照射されるように、粒子線の照射ヘッドと被照射体の間に、被照射体に対応して適正な照射野を形成する多葉コリメータが配置された構成となっている。
従来の粒子線治療装置としては、例えば、特許文献1に放射線治療装置として開示されている。特許文献1の放射線治療装置は、特許文献1の図3〜図6に示されているように、所定の大きさの照射野を形成する多分割絞り機構が示されている。
【0003】
特許文献1の図3〜図6に示された多分割絞り機構は、照射野の両側それぞれに、複数の多分割絞りが並列状態の微少な隙間で配置され、多分割絞り毎に照射野に対して接近方向または離反方向に駆動する駆動手段としてステッピングモータが使用され、多分割絞りの離反方向の両側には、移動範囲を規制するメカストッパが配置され、多分割絞りの位置の検出手段には、エンコーダとポテンショメータが使用されている。
制御装置としては、位置検出器の位置信号を処理する絞り位置検出器、設定する位置と各多分割絞りの位置信号とから各多分割絞りの位置を制御する多分割絞り制御器および多分割絞り機構の全体を制御する放射線治療装置コンソールを備えている。
【0004】
多分割絞りの原点位置設定処理は、多分割絞りをメカストッパに当たる位置またはメカストッパから一定距離の位置を基準位置とし、多分割絞りを基準位置まで移動したときのステッピングモータのパルス数を計数し、予め設定した原点復帰の基準点に対応した基準点信号と、ステッピングモータの停止した多分割絞りの位置の位置信号とを比較し両者が一致する点を原点復帰の基準点としている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−79574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の放射線治療装置は、上記のように構成され、多分割絞りの位置は、予め原点復帰の基準点に対応した基準点信号と、多分割絞りを移動させてマカストッパに当接して停止した位置までのステッピングモータのパルス数を計数して算出した位置信号とを比較し、一致する点を原点復帰の基準点としている。しかし、この方法で原点復帰した場合、ステッピングモータに脱調などが起こると、多分割絞りの位置を示すパルス数は、多分割絞りの移動距離に対応しなくなり、所要の照射野が形成できなくなる問題点があった。
また、多分割絞りがメカストッパに当接して停止した位置は、移動させるステッピングモータのパルス数から求められた位置に一致しているとは限らないので、全ての多分割絞りが確実に原点復帰できることが保証できないという問題点もあった。
【0007】
この発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、多葉コリメータのコリメータリーフの照射野形成の基準位置が正確に検出され、高精度で容易に照射野が形成できる粒子線治療装置を構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る粒子線治療装置の多葉コリメータは、位置検出用の突起を有する複数のコリメータリーフを並列状態で集合し、照射野中心の両側部に対向配置された一対のコリメータリーフ群と、複数のコリメータリーフを一葉毎に上記照射野中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段と、各コリメータリーフの位置を検出する複数の位置検出器と、複数のコリメータリーフの離反方向の位置規制を行う一対の停止部材と、複数のコリメータリーフを照射野中心側に移動させ、コリメータリーフの不整列を検出する一対の不整列検出部材と、位置検出器が検出した位置を処理する位置信号処理回路と、各コリメータリーフの基準位置を記憶するメモリを有し、多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器とを備え、照射野を形成するとき、複数のコリメータリーフを照射野の離反方向の一対の停止部材に当接させた位置に移動し、複数のコリメータリーフのそれぞれの位置を位置検出器により検出し、この検出位置を第1の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶し、続いて、各コリメータリーフを上記照射野中心への接近方向の上記不整列検出部材に上記コリメータリーフの突起が当接しない所定の位置に移動する移動動作を行い、移動途中においてコリメータリーフの不整列検出部材への当接の有無によって複数のコリメータリーフの不整列の有無を検出するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明の係る粒子線治療装置は、多葉コリメータの全てのコリメータリーフを照射野中心に対して離反方向の所定に位置に移動して照射野形成の基準となる第1の基準位置を設定し、各コリメータリーフを照射野中心への接近方向の不整列検出部材にコリメータリーフの突起が当接しない所定の位置に移動する移動動作を行ってコリメータリーフの不整列検出部材への当接の有無によって複数のコリメータリーフの不整列の有無を検出するので、不整列のコリメータリーフが確実に検出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図であり、図1(a)が平面図、図1(b)が正面図である。
図1(a)は多葉コリメータ10が照射野Sを形成した状態を示している。
多葉コリメータ10は、位置検出用突起11Sを有する複数のコリメータリーフ11a〜11nおよび位置検出用突起12Sを有する複数のコリメータリーフ12a〜12nをそれぞれ並列状態で集合し、上記照射野Sの中心の両側に対向配置され、照射野Sを形成する一対のコリメータリーフ群11、12と、一対のコリメータリーフ群11、12の移動をガイドする一対の側板13、14と、複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの照射野Sの中心に対して離反方向の位置規制を行う一対の停止部材15、16と、一対のコリメータリーフ群11、12を構成する複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの一葉毎に、照射野Sの中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段17、18と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの位置を検出する複数の位置検出器19、20と、複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを照射野Sの中心側に移動させ、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの不整列を検出する一対の不整列検出部材21、22と、位置検出器19、20が検出した位置を処理する位置信号処理回路3、4と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを駆動制御するコリメータリーフ位置制御器2と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの基準位置を記憶するメモリを有し、多葉コリメータ10を制御する多葉コリメータ制御器1とを備えている。
【0011】
上記コリメータリーフを駆動する駆動手段17、18は、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの一葉毎に設けられ、サーボモータまたはステッピングモータが使用される。駆動手段17a〜17n、位置検出器19a〜19nの符号a〜nは、コリメータリーフ11a〜11nの符号a〜nに対応し、駆動手段18a〜18n、位置検出器20a〜20nの符号a〜nは、コリメータリーフ12a〜12nの符号a〜nに対応した符号である。
また、駆動手段17、18は、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの移動中の駆動手段17、18が過負荷になり電流が大きくなったことによる過負荷信号で遮断され、停止するように構成されている。
【0012】
上記一対の不整列検出部材21、22は、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの互いに対向する先端部が当接しない所定の位置になったときに、不整列検出部材21は、コリメータリーフ11a〜11nの突起11Sに当接しない近接する位置に配置し、不整列検出部材22は、コリメータリーフ12a〜12nの突起12Sに当接しない近接する位置に配置している。
不整列検出部材21、22は、設定する照射野Sの大きさによっては、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの移動範囲が少なくなる場合を考慮して、任意の位置に設定できるように不整列検出部材移動手段23、24を備えている。
【0013】
次に、図1の構成の多葉コリメータ10の動作について説明する。
図2は多葉コリメータ10のコリメータリーフの移動動作時の状態を示す説明図である。コリメータリーフ群11はコリメータリーフ11a〜11nを集合したものであり、コリメータリーフ群12はコリメータリーフ12a〜12nを集合したものであり、個々のコリメータルーフの符号の図面への表示は省略している。
【0014】
各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの始動時の状態は、前回運転時に近い状態の図2(a)の状態で停止している。
始動時に図2(a)状態からコリメータリーフの『離反動作』と『接近動作』を行う。
『離反動作』はコリメータリーフ11a〜11nの突起11Sを停止部材15に当接させ、コリメータリーフ12a〜12nの突起を停止部材16に当接させた位置に移動する動作であり、
『接近動作』はコリメータリーフ11a〜11nの離反動作完了の状態からXaの距離だけ移動し、突起11Sを不整列検出部材21に当接させない所定の位置、コリメータリーフ12a〜12nの突起12Sを不整列検出部材22に当接させない所定の位置にそれぞれ移動する移動動作である。
【0015】
この構成における不整列状態検出動作は、
(1)各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの位置が前回運転時の図2(a)の状態から、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを照射野Sの中心に対して離反方向に移動させる『離反動作』を行い、停止部材15および停止部材16に当接させる位置に移動する。(コリメータリーフが正常動作すれば図2(b)の状態になる。)
(2)続いて、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを接近方向に移動させ、不整列検出部材21および不整列検出部材22に当接しない近接した所定の位置に移動させる。
・結果A:(1)の動作指令で図2(b)、(2)の動作指令で図2(c)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの移動動作は正常とし、照射野Sを設定する制御を行う。
・結果B:(1)の動作指令で図2(d)、(2)の動作指令で図2(e)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの11bが正常に移動しないで不整列状態が発生したと判定し、動作異常を表示し、多葉コリメータリーフ10の運転を停止する。
・結果C:(1)の動作指令で図2(d)、(2)の動作指令で図2(f)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの11bが離反動作で動作異常であり、接近動作で他のコリメータリーフと同様に移動するが、移動途中のXbの位置で他のコリメータリーフよりも早く不整列検出部材21に当接して停止した。この場合は動作異常の確認のために、上記(1)(2)の動作を繰り返す。その結果、図2(g)の状態になった場合は、コリメータリーフは正常動作に回復と判定し、照射野Sを設定する制御を行う。図2(g)の状態にならない場合は、不整列状態が発生したと判定し、動作異常を表示し、多葉コリメータリーフ10の運転を停止する。
【0016】
上記『離反動作』『接近動作』を行った結果、『接近動作』後のコリメータリーフの位置が図2(c)または図2(g)の状態の時には正常に動作していると判定し、『離反動作』後の各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの図2(b)に示す位置を照射野S形成の「第1の基準位置」として記憶し、コリメータリーフの位置が図2(c)または図2(g)に示す各コリメータリーフの位置を「第2の基準位置」として多葉コリメータ制御器1のメモリに記憶する。
コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの移動動作が正常または正常状態に回復したと判定し、上記の第1の基準位置、第2の基準位置のいずれかを照射野S形成の基準位置として照射野Sを形成する。
【0017】
上記のように、多葉コリメータ10の照射野Sの形成を、粒子線治療装置の運転開始のつど、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの『離反動作』『接近動作』を行い、コリメータリーフの動作状態と、照射野S形成の基準位置を設定することにより、不整列のコリメータリーフがある場合は、多葉コリメータ10の運転が停止され、コリメータリーフの不整列状態がなく正常な場合は、運転開始時に照射野S設定の基準位置を設定するので、高精度の照射野Sが短時間で設定できる粒子線治療装置が得られる。
【0018】
実施の形態2.
実施の形態1では、停止部材と不整列検出部材とにより各コリメータリーフの不整列状態を検出する構成であったが、実施の形態2は、不整列検出部材を設けないでコリメータリーフの不整列状態を検出する構成としたものである。
図3は実施の形態2の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図であり、図3(a)が平面図、図3(b)が正面図である。
【0019】
図3(a)は多葉コリメータ30が照射野Sを形成した状態を示している。
多葉コリメータ30は、複数のコリメータリーフ11a〜11nおよび複数のコリメータリーフ12a〜12nを並列状態で集合し、上記照射野Sの中心の両側に対向配置され、照射野Sを形成する一対のコリメータリーフ群11、12と、一対のコリメータリーフ群11、12の移動をガイドする一対の側板13、14と、複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの照射野Sの中心に対して離反方向の位置規制を行う一対の停止部材15、16と、一対のコリメータリーフ群11、12の構成する複数のコリメータリーフ11a〜11n、121a〜12nの一葉毎に、照射野Sの中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段17、18と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの位置を検出する複数の位置検出器19、20と、位置検出器19、20が検出した位置を処理する位置信号処理回路3、4と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを駆動制御するコリメータリーフ位置制御器2と、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの基準位置を記憶するメモリを有し、多葉コリメータ30を制御する多葉コリメータ制御器1とを備えた構成である。
【0020】
この実施の形態2の構成は、実施の形態1とは不整列検出部材を設けない点が異なり、その他の構成は実施の形態1の図1と同一であり、各部の詳細説明は省略する。
実施の形態2では、コリメータリーフの不整列状態の検出は、一対のコリメータリーフ群の互いに対向するコリメータリーフの先端部の位置によって不整列状態を検出する。
【0021】
次に、図3の構成の多葉コリメータ30の動作について説明する。
図4は多葉コリメータ30のコリメータリーフの移動動作時の状態を示す説明図である。コリメータリーフ群11はコリメータリーフ11a〜11nを集合したものであり、コリメータリーフ群12はコリメータリーフ12a〜12nを集合したものであり、図2の場合と同様に図面への表示は省略している。
以下の説明では、コリメータリーフの照射野側を「コリメータリーフ先端部」と呼称し、照射野Sの反対側を「コリメータリーフ後端部」と呼称して説明する。
【0022】
各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの始動時の状態は、前回運転時に近い状態の図4(a)の状態で停止している。
始動時に図4(a)状態からコリメータリーフの『離反動作』と『接近動作』を行う。
・『離反動作』:コリメータリーフ11a〜11nの後端部を停止部材15に当接させ、コリメータリーフ12a〜12nの後端部を停止部材16に当接させた位置に移動する動作である。
・『接近動作』:コリメータリーフ11a〜11nの離反動作の状態からXaの距離移動し、コリメータリーフ11a〜11nおよびコリメータリーフ12a〜12nの互いに対向する先端部に当接させない所定の位置に移動する動作である。
【0023】
この構成における不整列状態検出動作は、
(1)各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの位置が前回運転時の図4(a)の状態から、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを離反方向に移動させる『離反動作』を行い、停止部材15および停止部材16に当接させる位置に移動する。(コリメータリーフが正常動作すれば図4(b)の状態になる。)
(2)続いて、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを接近方向に移動させ、対向するコリメータリーフの先端部に当接しない近接した所定の位置に移動させる。
・結果A:(1)の動作指令で図4(b)、(2)の動作指令で図4(c)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの移動動作は正常とし、照射野Sを設定する制御を行う。
・結果B:(1)の動作指令で図4(d)、(2)の動作指令で図4(e)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの11bが正常に移動しないで不整列状態が発生したと判定し、動作異常を表示し、多葉コリメータリーフ30の運転を停止する。
・結果C:(1)の動作指令で図4(d)、(2)の動作指令で図4(f)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの11bが離反動作で動作異常であり、接近動作で他のコリメータリーフと同様に移動するが、移動途中のXbの位置で他のコリメータリーフよりも早く対向するコリメータリーフの先端部に当接して停止した。この場合は動作異常の確認のために、上記(1)(2)の動作を繰り返す。その結果、図4(g)の状態になった場合は、コリメータリーフは正常動作に回復と判定し、照射野Sを設定する制御を行う。図4(g)の状態にならない場合は、不整列状態が発生したと判定し、動作異常を表示し、多葉コリメータリーフ30の運転を停止する。
【0024】
上記『離反動作』『接近動作』を行った結果、『離反動作』後のコリメータリーフの位置が図4(b)の位置で、『接近動作』後のコリメータリーフの位置が図4(c)または図4(g)の状態の時には正常に動作していると判定し、『離反動作』後の各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの図4(b)に示す位置を照射野S形成の「第1の基準位置」として記憶し、『接近動作』後の図4(c)または図4(g)に示す各コリメータリーフの位置を「第2の基準位置」として多葉コリメータ制御器1のメモリに記憶する。
コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの移動動作が正常または正常状態に回復したと判定した場合は、上記の第1の基準位置、第2の基準位置のいずれかを照射野S形成の基準位置として照射野Sを形成動作を行う。
【0025】
上記のように、多葉コリメータ30の照射野Sの形成を、粒子線治療装置の運転開始のつど、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの『離反動作』『接近動作』を行い、コリメータリーフの動作状態を確認し、コリメータリーフに不整列がある場合は多葉コリメータ30の運転を停止し、コリメータリーフの不整列状態がなく正常な場合は、照射野S設定の基準位置をメモリに記憶された第1の基準位置または第2の基準位置として照射野を設定するので、高精度の照射野Sが確実に設定できる粒子線治療装置が得られる。
【0026】
実施の形態3.
実施の形態1では、停止部材と不整列検出部材とにより各コリメータリーフの不整列状態を検出する構成であり、実施の形態2では、不整列検出部材を設けないでコリメータリーフの不整列状態を検出し、特定する構成としたが、この実施の形態3は、不整列検出部材を移動可能に構成し、コリメータリーフの移動範囲を移動してコリメータリーフの不整列を検出する構成である。
図5は実施の形態3の多葉コリメータの構成を示す正面図である。
図5の多葉コリメータ50は、実施の形態1の図1に示す多葉コリメータ10の不整列検出部材をコリメータリーフ11a〜11nの突起11S、12Sの移動範囲を移動できる不整列検出機構40としたものである。
図5のコリメータリーフ群11、12、コリメータリーフ群11、12の移動をガイドする一対の側板13、14、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの照射野S中心に対して離反方向の位置規制を行う一対の停止部材15、16、複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの一葉毎に設けられた駆動手段17、18および位置検出器19、20、位置検出器19、20が検出した位置を処理する位置信号処理回路3、4、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを駆動制御するコリメータリーフ位置制御器2、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの基準位置を記憶するメモリを有し、多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器1は図1と同一である。
【0027】
不整列検出機構40は、停止部材15および停止部材16のそれぞれの上側部に一対の軸受47を配置し、両端部が軸受47に回転自在に支持され、中間位置の一方は右ねじ、他方は左ねじが加工された移動ねじ46に、照射野Sの中心に対して接近方向および離反方向に対称状態で移動させる移動ねじ受43、44を螺合し、移動ねじ受43、44にそれぞれコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの不整列状態を検出する不整列検出部材41および不整列検出部材42を装着し、移動ねじ46の一端に駆動モータ45を連結した構成である。
このように構成した不整列検出機構40は、駆動モータ45を正回転、逆回転することにより、不整列検出部材41、42が、接近方向または離反方向に移動する。
【0028】
図6は実施の形態2の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の多葉コリメータ50のコリメータリーフの移動動作の状態を示す説明図である。
図6の多葉コリメータ50の動作について説明する。
以下の説明では、コリメータリーフの照射野側を「コリメータリーフ先端部」と呼称し、照射野Sの反対側を「コリメータリーフ後端部」と呼称して説明する。
この構成における不整列状態検出動作は、
(1)各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nおよび不整列検出部材41および42の位置が前回運転時の図6(a)の状態から、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを照射野Sの中心に対して離反方向に移動させ、停止部材15および停止部材16に当接させる動作を指令する。(コリメータリーフが正常動作すれば図6(a)の状態になる。)
(2)不整列検出部材41および不整列検出部材42照射野Sの中心に対して離反方向に移動させ、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの突起11Sおよび12Sに当接させる動作を指令する。
・結果A:(1)の動作指令で図6(b)、(2)の動作指令で図6(c)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの移動動作は正常・・照射野Sを設定する制御を行う。
・結果B:(1)の動作指令で図6(d)、(2)の動作指令で図6(e)の状態の場合
「判定」:コリメータリーフの11bが正常に移動しないで不整列状態の発生と判定し、動作異常を表示し、多葉コリメータリーフ50の運転を停止する。
【0029】
このように不整列検出部材を移動可能に構成すると、コリメータリーフの移動動作が離反方向への移動のみでよくなり、照射野Sの設定時間が短縮できる。
【0030】
実施の形態4.
実施の形態1〜実施の形態3では、コリメータリーフの移動範囲を照射野Sの最大の場合を想定して、停止部材の位置を決めていたが、照射野Sが小さい場合にはコリメータリーフの移動範囲が必要以上に大きく、照射野Sの設定時間が長くなる欠点がある。
実施の形態4は、停止部材を可動式として照射野Sが小さくてよい場合には、停止部材を照射野Sに近づけた位置で照射野Sが設定できるように構成したものである。
【0031】
図7は実施の形態4の多葉コリメータの構成図であり、図7(a)平面図、図7(b)は不整列検出手段の位置決め状態の説明図であり、図7(a)側面図で方向から見た図である。図7の多葉コリメータ70は、実施の形態1の図1に示す多葉コリメータの構成の停止部材を移動可能に構成したものである。
図7において、コリメータリーフ群11、12、コリメータリーフ群11、12の移動をガイドする一対の側板13、14、複数のコリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの一葉毎に設けられた駆動手段17、18および位置検出器19、20、不整列検出手段21、22、位置検出器19、20が検出した位置を処理する位置信号処理回路3、4、コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nを駆動制御するコリメータリーフ位置制御器2、各コリメータリーフ11a〜11n、12a〜12nの基準位置を記憶するメモリを有し、多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器1は図1と同一である。
【0032】
一対の停止部材61、62を移動する停止部材移動機構60は、停止部材61と停止部材62の間の両側部にそれぞれ位置決め部材63を配置し、中間位置から一方側は右ねじ、他方側は左ねじが加工された一対の移動ねじ64を、停止部材15、16の両側部に移動ねじ受を配置して螺合し、一対の移動ねじ64の一端側の1本に停止部材移動モータ65を連結し、この他端側および他端側の移動ねじ64の他端部にギヤボックス66を装着し、ギヤボックス66の間は、移動ねじ64が同一回転となるように連結軸64aで連結している。
停止部材61、62の位置は、停止部材移動モータ65により設定位置に移動し、設定位置においてプランジャ68を動作させてピン69を位置決め部材69に挿入して設定する。
【0033】
このように、照射野Sの形成条件に合わせて停止部材61、62の設定位置が切り換えられるように構成すると、形成する照射野Sが小さくてもよい場合の照射野Sの設定時間が短かくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施の形態1の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図である。
【図2】実施の形態1の多葉コリメータのコリメータリーフの移動時の状態説明図である。
【図3】実施の形態2の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図である。
【図4】実施の形態2の多葉コリメータのコリメータリーフの移動時の状態説明図である。
【図5】実施の形態3の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図である。
【図6】実施の形態3の多葉コリメータのコリメータリーフの移動時の状態説明図である。
【図7】実施の形態4の粒子線治療装置の多葉コリメータ部分の構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 多葉コリメータ制御器、2 コリメータリーフ位置制御器、
3,4 位置信号処理回路、10 多葉コリメータ、11,12 コリメータリーフ群、
13,14 側板、15,16 停止部材、17,18 駆動手段、
19,20 位置検出器、21,22 不整列検出部材、
23,24 不整列検出部材移動手段、30 多葉コリメータリーフ、
40 不整列検出機構、41,42 不整列検出部材、43,44 移動ねじ受、
45 駆動モータ、46 移動ねじ、47 軸受、50 多葉コリメータ、
60 停止部材移動機構、61,62 停止部材、63 位置決め部材、
64 移動ねじ、65 停止部材移動モータ、66 ギアボックス、
67 停止部材位置検出器、68 プランジャ、69 ピン、70 多葉コリメータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子線を照射する照射ヘッド、被照射体が載置される治療台および被照射体のみに粒子線が照射されるように照射野を形成する多葉コリメータを備えた粒子線治療装置において、上記多葉コリメータは、位置検出用の突起を有する複数のコリメータリーフを並列状態で集合し、上記照射野中心の両側部に対向配置された一対のコリメータリーフ群と、上記複数のコリメータリーフを一葉毎に上記照射野中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段と、上記各コリメータリーフの位置を検出する複数の位置検出器と、上記複数のコリメータリーフの離反方向の位置規制を行う一対の停止部材と、上記複数のコリメータリーフを照射野中心側に移動させ、上記コリメータリーフの不整列を検出する一対の不整列検出部材と、上記位置検出器が検出した位置を処理する位置信号処理回路と、上記各コリメータリーフの基準位置を記憶するメモリを有し、上記多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器とを備え、
上記照射野を形成するとき、上記複数のコリメータリーフを上記照射野の離反方向の上記一対の停止部材に当接させた位置に移動し、上記複数のコリメータリーフのそれぞれの位置を上記位置検出器により検出し、この検出位置を第1の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶し、続いて、上記各コリメータリーフを上記照射野中心への接近方向の上記不整列検出部材に上記コリメータリーフの突起が当接しない所定の位置に移動する移動動作を行い、移動途中において上記コリメータリーフの上記不整列検出部材への当接の有無によって上記複数のコリメータリーフの不整列の有無を検出することを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項2】
上記各コリメータリーフを上記照射野中心に対して接近方向の上記不整列検出部材に接近した所定の位置への移動途中で上記コリメータリーフの停止がなかったとき、上記コリメータリーフの不整列状態なしとして、上記複数のコリメータリーフのそれぞれの位置を上記位置検出器により検出し、該検出位置を第2の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶することを特徴とする請求項1記載の粒子線治療装置。
【請求項3】
粒子線を照射する照射ヘッド、被照射体が載置される治療台および被照射体のみに粒子線が照射されるように照射野を形成する多葉コリメータを備えた粒子線治療装置において、上記多葉コリメータは、位置検出用の突起を有する複数のコリメータリーフを並列状態で集合し、上記照射野中心の両側部に対向配置された一対のコリメータリーフ群と、上記複数のコリメータリーフを一葉毎に上記照射野中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段と、上記各コリメータリーフの位置を検出する複数の位置検出器と、上記複数のコリメータリーフの離反方向の位置規制を行う一対の停止部材と、上記位置検出器が検出した位置を処理する位置信号処理回路と、上記各コリメータリーフの基準位置を記憶するメモリを有し、上記多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器とを備え、
上記照射野を形成するとき、上記複数のコリメータリーフを上記照射野の離反方向の上記一対の停止部材に当接させた位置に移動し、上記複数のコリメータリーフのそれぞれの位置を上記位置検出器により検出し、この検出位置を第1の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶し、続いて、上記各コリメータリーフを上記照射野中心への接近方向の対向する上記コリメータリーフの先端部が当接しない近接した所定の位置に移動する移動動作を行い、移動途中において上記複数のコリメータリーフのそれぞれの対向する先端部への当接の有無によって、上記複数のコリメータリーフの不整列の有無を検出することを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項4】
上記各コリメータリーフを上記照射野中心に対して接近方向の対向するコリメータリーフの先端部に接近した所定の位置まで移動し、移動途中で停止しなかったとき、上記コリメータリーフの不整列状態なしとして、上記各コリメータリーフの位置を上記位置検出器により検出し、該検出位置を第2の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶することを特徴とする請求項3記載の粒子線治療装置。
【請求項5】
粒子線を照射する照射ヘッド、被照射体が載置される治療台および被照射体のみに粒子線が照射されるように照射野を形成する多葉コリメータを備えた粒子線治療装置において、上記多葉コリメータは、位置検出用の突起を有する複数のコリメータリーフを並列状態で集合し、上記照射野中心の両側部に対向配置された一対のコリメータリーフ群と、上記複数のコリメータリーフを一葉毎に上記照射野中心に対して接近方向または離反方向に移動させる複数の駆動手段と、上記各コリメータリーフの位置を検出する複数の位置検出器と、上記複数のコリメータリーフの離反方向の位置規制を行う一対の停止部材と、上記コリメータリーフの移動範囲を走査し、上記コリメータリーフの不整列の有無を調査する一対の不整列検出機構と、上記位置検出器が検出した位置を処理する位置信号処理回路と、上記各コリメータリーフの基準位置を記憶するメモリを有し、上記多葉コリメータを制御する多葉コリメータ制御器とを備え、
上記照射野を形成するとき、上記複数のコリメータリーフを上記照射野の離反方向の上記一対の停止部材に当接させた位置に移動し、上記複数のコリメータリーフのそれぞれの位置を上記位置検出器により検出し、この検出位置を第1の基準位置として上記多葉コリメータ制御器のメモリに記憶し、続いて、上記一対のリーフ位置調査部材を上記コリメータリーフの上記突起の移動範囲に移動させて上記コリメータリーフの不整列状態の有無を検出することを特徴とする粒子線治療装置。
【請求項6】
上記コリメータリーフの不整列がないときに、上記第1の基準位置を照射野形成の基準位置として上記各コリメータリーフの照射野形成動作を行うことを特徴とする請求項1、請求項3、請求項5のいずれかに記載の粒子線治療装置。
【請求項7】
上記コリメータリーフの不整列がないときに、上記第2の基準位置を照射野形成の基準位置として上記各コリメータリーフの照射野形成動作を行うことを特徴とする請求項2または請求項4記載の粒子線治療装置。
【請求項8】
上記複数のコリメータリーフの照射野中心に対して離反方向の位置規制を行う一対の停止部材を任意の位置に設定する停止部材位置調整手段を備えたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の粒子線治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−195877(P2007−195877A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−20689(P2006−20689)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】